説明

熱切断加工機の集塵装置

【課題】集塵槽のY軸方向の両端部での熱切断加工時の集塵能力が同等であり、かつ集塵槽の中央部でも集塵能力が低下しない熱切断加工機の集塵装置の提供。
【解決手段】 ワークテーブル上方にX軸及びY軸方向へ移動位置決め自在の加工ヘッドを設けた熱切断加工機において、前記ワークテーブルの下方で上方に開口した複数の集塵室を設け、該集塵室の左右両側に集塵機に連通する吸引口を設け、該吸引口を前記集塵室の中央方向へ進退可能に設けたことを特徴とする熱切断加工機の集塵装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱切断加工機の集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱切断加工機の集塵装置として、上部にワークWを載置可能な開口を有すると共に下部に集塵槽を備えたワークテーブルを備え、このワークテーブルに載置したワークWを熱切断するトーチヘッドをX、Y軸方向に移動自在に設けた熱切断加工機において、前記集塵槽をX軸方向に適宜な間隔をもって設けた隔壁により複数に分割し、この分割された集塵槽のY軸方向の一方の側壁に排出口を設け、この排出口に連通する移動ダクトを、前記トーチヘッドのX軸方向の移動に連動して移動自在に設けたことを特徴とする熱切断加工機の集塵装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−333583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1の熱切断加工機の集塵装置では、粉塵を排出するための排出口がY軸方向の一方の側壁側にしかないため、排出口近傍の熱切断加工時の集塵能力は良好であるが、排出口から離隔した集塵槽の中央部から反対側の側壁に近い位置における熱切断加工時の集塵能力が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は上述の如き問題を解決する為に成されたものであり、本発明の課題は、集塵槽のY軸方向の両端部での熱切断加工時の集塵能力が同等であり、かつ集塵槽の中央部でも集塵能力が低下しない熱切断加工機の集塵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の熱切断加工機の集塵装置はワークテーブル上方にX軸及びY軸方向へ移動位置決め自在の加工ヘッドを設けた熱切断加工機において、前記ワークテーブルの下方で上方に開口した複数の集塵室を設け、該集塵室の左右両側に集塵機に連通する吸引口を設け、該吸引口を前記集塵室の中央方向へ進退可能に設けたことを特徴とする熱切断加工機の集塵装置。
【発明の効果】
【0007】
本願発明の熱切断加工機の集塵装置によれば、集塵装置のY軸方向の両端部での熱切断加工時の集塵能力が同等であり、かつ集塵装置のY軸方向中央部における加工時には、集塵装置の吸引口を両側から加工位置に接近させることができるので集塵装置のY軸方向中央部における集塵能力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明に係る熱切断加工機の外観を示す斜視図で、複数個の集塵装置上部のワークテーブルを除外して示した図。
【図2】1図における集塵装置の部分の拡大図。
【図3】図1におけるA−A断面図で、本願発明に係る熱切断加工機の集塵装置の吸引口が集塵装置のY軸方向の両端部に位置した状態を示した図。
【図4】図1におけるA−A断面図で、本願発明に係る熱切断加工機の集塵装置の吸引口がY軸方向の両端部から中央部に前進した状態を示した図。
【図5】本願発明に係る熱切断加工機の集塵装置の左側の集塵装置37Lが前進した状態を説明する透視図。
【図6】本願発明に係る熱切断加工機の左側の集塵装置37Lの外観図。
【図7】本願発明に係る熱切断加工機の左側の集塵装置37Lにおいて、吸引口が後退した状態において上部シュータを除外した図。
【図8】本願発明に係る熱切断加工機の集塵装置のダンパー開閉機構が開いた状態を示した図。
【図9】本願発明に係る熱切断加工機の集塵装置の説明図で、図示省略のダクトに連通する集塵装置のダンパー開閉機構が閉じた状態を示した図。
【図10】本願発明に係る熱切断加工機の集塵装置に使用した蛇腹のイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0010】
図1は、本願発明に係る熱切断加工機の一例としてのレーザ加工機1の外観を示す斜視図であって、ワークテーブル21(図3参照)を除外して示した図である。すなわち、ワークテーブル21は図3、4に示す様に、長方形の枠部材23と、この枠部材23に着脱交換自在の複数枚のワーク支持板(図示省略)からなるものである。
【0011】
図1、図3を参照するに、前記レーザ加工機1はX軸方向に延伸する基台3を有し、この基台3の左右(図3、4におけるY軸方向)の側壁5、7には、X軸方向(図3、4において紙面に直交する方向)に延伸したX軸ガイドレール9、11が設けてある。
【0012】
前記左右のX軸ガイドレール9、11には、X軸キャリッジ13の左右の脚部13a、13bの下部に設けたガイド部材(図示省略)が移動自在に係合させてある。
【0013】
また、前記X軸ガイド部材9、11の上方の前記側壁5、7には、X軸ガイド部材9、11に沿って平行に延伸するラック15a、15bが設けてある。そして、このラック15a、15bに係合するピニオンギヤ(図示省略)を備えたX軸駆動手段として、周知の数値制御装置(図示省略)の制御の下に回転駆動されるX軸駆動モータ(図示省略)が前記左右の脚部13a、13bにそれぞれ設けてある。
【0014】
前記X軸キャリッジ13の左右の脚部13a、13bの上部には、前記基台3の上方をY軸方向に跨いだ梁部13cが一体的に設けてあり、この梁部13cにはY軸方向に延伸するY軸レール17が設けてある。そして、このY軸レール17に沿って移動自在に設けたY軸キャリッジ(図示省略)に上下方向(Z軸方向)に昇降位置決め自在のZ軸キャリッジ(図示省略)が設けてある。なお、前記Y軸キャリッジ(図示省略)およびZ軸キャリッジ(図示省略)は、前記数値制御装置(図示省略)の制御の下に回転駆動されるY軸駆動モータとZ軸駆動モータにより移動位置決めされるように構成してある。
【0015】
前記Z軸キャリッジ(図示省略)には、集光用光学系(図示省略)を内蔵したレーザ加工ヘッド31が一体的に設けてあり、この集光用光学系にレーザ発振器(図示省略)から出射されたレーザ光が複数のミラーからなる伝送光学系(図示省略)を介して入射されるように設けてある。
【0016】
上記構成により、レーザ加工ヘッド31は、前記X軸キャリッジ13とY軸キャリッジを適宜に移動位置決めすることにより、前記ワークテーブル21上に載置されたワークW上方の所望の位置に移動位置決めすることができる。また、Z軸キャリッジ(図示省略)を昇降させることにより、ワークWに集光するレーザ光の焦点位置を適宜に調節することができる。
【0017】
図1、2を参照するに、レーザ加工機1のワークテーブル21の下方には、上方に開口した4個の集塵室33a〜33dが、X軸方向に隣接して設けてある。
【0018】
前記4個の集塵室33a〜33dには、それぞれ左右一対の集塵装置37(L、R)が設けてある。この4個の集塵室33a〜33dに設けられた集塵装置37(L、R)は左右対称の同様な構成からなるので、代表して集塵室33aに設けられた左側の集塵装置37Lの構成を以下に説明する。
【0019】
図3、4を参照するに、集塵室33aの左側の側壁5に集塵機(図示省略)に連通する吸引口35’を備えた左側の集塵装置37Lが設けてある。なお、図3に示した吸引口35’は、吸引口の位置を理解しやすい様に模式的に円形で示したものであり実際の吸引口35の形状とは相違している。
【0020】
図5〜図9を参照するに、左側の集塵装置37Lは、前記側壁5の内側に締結部材(図示省略)を介して一体的に固定した基板39を有し、この基板39の下部にはY軸方向に平行にかつ水平に延伸する前後一対のスライドレール取付部材41が一体的に設けてあり、そして、このスライドレール取付部材41には、Y軸方向に平行にかつ水平に延伸する前後一対のスライドレール43を設けてある。
【0021】
図5〜図8に示される様に、前記前後一対のスライドレール43に係合するスライド部材45に、直角三角形の底辺を下部側に、かつ斜辺部が前記集塵室33aのY軸方向の中心側に向く様に配置した板材からなる一対の吸引口保持体47の底辺部がボルト49により固定してある。
【0022】
また、前記一対の吸引口保持体47の内側には、蛇腹保持体53が設けてあって、この蛇腹保持体53に耐熱性素材で製作した伸縮自在で断面が長方形の蛇腹51の先端部がボルト54により連結固定してある。
【0023】
また、蛇腹保持体53は蛇腹51の先端部の両脇に、蛇腹51の長方形の吸入口断面と平行に設けた排気導入壁52に連結保持すると同時に、排気導入壁52は吸引口保持体47に例えば溶接により一体的に接合してある。
【0024】
蛇腹51の他端部は、前記基板39の内側に固定したダンパーフレーム56にボルト58により固定してある。
【0025】
また、前記蛇腹保持体53の前方下部には、前記集塵室33aの中央部方向へ向かって下降する斜面(30°程度の斜面)を備えた下段シューター57が設けてある。この下段シューター57は、下段シューター57の左端部の係合段部53b(図5、7において左側の端部)の先端が前記蛇腹保持体53の前面に係合当接するように設けてある。
【0026】
図3、図4及び図8に示す如く、前記基板39の内壁には、前記下段シューター57側へ伸縮作動するするピストンロッド61を備えた一対の流体圧シリンダ59が平行かつ水平に設けてある。そして、この流体圧シリンダ59のピストンロッド61の先端に前記下段シューター57の係合段部53bがボルト63を介して連結固定してある。
【0027】
前記下段シューター57の上方で、かつ前記蛇腹51の上方には、下段シューター57と同様に集塵室33aの中央部方向へ向かって下降する斜面を備えた上段シューター65が、前記吸引口保持体47に一体的に設けた取付けフランジ部47fにボルト67により固定してある。この上段シューター65の斜面の下端部は前記下段シューター57左端部の若干上方に位置する様に設計されており、下段シューター57と上段シューター65の下端部との間に長方形の吸引口35を形成している。
【0028】
また、上段シューター65は吸引口保持体47に取り付けた状態において、上段シューター65の裏面が前記排気導入壁52の上部に当接係合し、前記吸引口35から吸引される粉塵を前記蛇腹51の先端部の入口へ案内する流路69を形成するように設けてある。
【0029】
上段シューター65は前記吸引口保持体47に設けた係合凸部47tに係合する係合穴を備えており、この係合凸部47tとの係合により、上段シューター65の取り付け位置を正確にすることができる。なお、上段シューター65の斜面の傾斜は前記下段シューター57より大きく(60°程度の斜面)設けてある。
【0030】
図7〜図9によく表れているように、前記ダンパーフレーム56には流体圧シリンダ71により回動自在の可動羽根73を備えたダンパー75が設けてある。可動羽根73は回転軸77に設けてあり、この回転軸77は流体圧シリンダ71で回動される駆動レバー79に連結してある。
【0031】
上記構成のダンパー75において、ダンパー75を閉止状態にするには、図8、図9に示すように、流体圧シリンダ71を作動させてピストンロッドを伸張させることにより、駆動レバーが時計方向に回動して可動羽根73が垂直になり、ダンパー75を閉状態にすることができる。また、開状態にするにはピストンロッドを退縮させることにより、可動羽根73が水平になり開状態にすることができる。
【0032】
また、前記左側の集塵装置37Lは、流体圧シリンダ59を作動させて、ピストンロッド61を伸張させることにより、一対の吸引口保持体47がスライドレール43に係合するスライド部材45と共にスライドレール43に沿って右方(図3、4において右側)へ前進するので、集塵室33aの中央部へ前進させることができる(図5に示す状態)。同様に、流体圧シリンダ59を作動させて、ピストンロッド61を退縮させることにより、左側の集塵装置37Lを集塵室33aを左端部へ後退させることができる(図7に示す状態)。
【0033】
以上に、左側の集塵装置37Lについての動作について説明したが、右側の集塵装置37Rは、同様な構成で左右対称のものであるから、その動作が左右反対方向になるだけで全く同一の動作をする。
【0034】
再度、図1、3、4を参照するに、前記集塵室33a〜33dの底部には、切断加工により発生したスクラップまたは切断製品等を受けるスクラップボックス81が設置してある。
【0035】
前記スクラップボックス81の上部の周囲は前記集塵室33a〜33dの下部に気密状態になるように係合当接しており、前記集塵装置37(L、R)が作動して粉塵を排出する場合に、排気が基台3の下部から集塵室の外部へ漏洩して集塵効率が低下しない様に設けてある。なお、スクラップボックス81を基台3の下部からX軸方向の外方への移動が容易にできるように車輪83が設けてある。
【符号の説明】
【0036】
1 レーザ加工機
3 基台
5、7 側壁
9 X軸ガイドレール
11 X軸ガイドレール
13 X軸キャリッジ
13a、13b 脚部
15a、15b ラック
17 Y軸レール
21 ワークテーブル
23 枠部材
31 レーザ加工ヘッド
33a〜33d 集塵室
35、35’ 吸引口
37(L、R) 集塵装置
39 基板
41 スライドレール取付部材
43 スライドレール
45 スライド部材
47 吸引口保持体
47t 係合凸部
47f 取付けフランジ部
49 ボルト
51 蛇腹
52 排気導入壁
53 蛇腹保持体
53b 係合段部
54 ボルト
56 ダンパーフレーム
57 下段シューター
58 ボルト
59 流体圧シリンダ
61 ピストンロッド
63 ボルト
65 上段シューター
67 ボルト
69 流路
71 流体圧シリンダ
73 可動羽根
75 ダンパー
77 回転軸
79 駆動レバー
81 搬出手段
83 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークテーブル上方にX軸及びY軸方向へ移動位置決め自在の加工ヘッド31を設けた熱切断加工機1において、前記ワークテーブルの下方で上方に開口した複数の集塵室33を設け、該集塵室の左右両側に集塵機に連通する吸引口35を設け、該吸引口を前記集塵室の中央方向へ進退可能に設けたことを特徴とする熱切断加工機の集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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