説明

熱収縮性ポリエステル系フィルムおよび熱収縮性ラベル

【課題】ペットボトルなどの再生原料を用いても印刷抜けの少ない、熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供するものである。
【解決手段】ペットボトル再生原料を含む基層の少なくとも片面に、ペットボトル再生原料を含まない層を積層した熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、80℃の温水中に10秒浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が30%以上で、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下であり、ペットボトル再生原料を含まない層を印刷面とする、少なくとも一軸に延伸した熱収縮性ポリエステル系フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境問題、資源の有効活用に対応した、ペットボトルのリサイクルに役立つ熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットボトル容器などの胴ラベルや、ガラス容器などのキャップシール用の熱収縮フィルムとしてポリスチレン、ポリエステル系のフィルムが主として用いられている。熱収縮性ポリスチレン系フィルムは、熱収縮性ポリエステル系フィルムに比べると安価で収縮処理が比較的容易に行なえることから主に汎用タイプとして使用されている。一方、熱収縮性ポリエステル系フィルムはポリスチレン系フィルムに比べ、耐熱性に優れ、フィルムの光沢が良く、収縮後の締め付け応力が高いなどの特徴から主に高品位を要求される用途で使用されている。
【0003】
一方、環境問題や資源の有効活用の観点から、ペットボトルなどのポリエステル再生原料をリサイクルする動きが活発であり、熱収縮性ポリエステル系フィルムにあってはその利用が可能なものの一つである。例えば、特許文献1には、ポリエチレンテレフタレート製容器由来の樹脂と非晶性ポリエステル樹脂からなる熱収縮性フィルム材料の発明が記載されている。
【0004】
しかし、ペットボトルなどからなるポリエチレンテレフタレート再生原料はさまざまな容器が混合されたものであり、ラベルやキャップなどの異種ポリマーの他、流通や再生工程で付着した砂などが混入している。その再生原料を用いたフィルムには前記混入物を核とした突起が形成され、印刷抜けの不良が発生するという問題がある。
【特許文献1】特開2004−196918
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ペットボトルなどの再生原料を用いても印刷抜けの少ない、熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し得た本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ペットボトル再生原料を含む基層の少なくとも片面に、ペットボトル再生原料を含まない層を積層した熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、80℃の温水中に10秒浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が30%以上で、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下であり、ペットボトル再生原料を含まない層を印刷面とすることを特徴としている。
【0007】
上記フィルムは印刷面となる面のペットボトルの再生原料を含まない層の厚みが4μm以上であり、基層のペットボトル再生原料の含有量が40質量%以下あることが好ましい実施形態である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ペットボトルの再生原料を用いているにも関わらず、良好な印刷性や機械的強度を有しており、環境問題や資源の有効活用の点からも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ペットボトル再生原料を含む基層の少なくとも片面に、ペットボトル再生原料を含まない層を積層した熱収縮性ポリエステル系フィルムである。ペットボトル再生原料は、その再生工程で異種素材の分別や洗浄が行なわれているが、キャップや印刷ラベルが混入したり、ペットボトルに付着した砂などが混入したりする。その再生原料を使用しフィルムを製膜した場合、これらの異物は核となりフィルム上に0.1乃至数μmの突起を形成する。このフィルムにグラビア版等によりインキを転写印刷しようとした場合、突起の周りに浮きが発生してこの部分のインキが転移されず、印刷抜けとなってしまう。
【0010】
しかし、本発明では熱収縮性ポリエステル系フィルムを多層構成とし、ペットボトル再生原料を含む層とは別に、少なくとも印刷面にペットボトル再生原料を含まない層を積層することにより印刷抜けを改善したフィルムを得ることができる。上記フィルムの印刷面となるペットボトル再生原料を含まない層の厚みは4μm以上であることが好ましい。この層厚みが4μmより薄くなると、基層のペットボトル再生原料に起因する突起を覆い隠す効果が低下して印刷抜けが多くなるためである。より好ましいペットボトル再生原料を含まない層の厚みは6μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。両面印刷を施す場合には表裏両面に4μm以上のペットボトル再生原料を含まない層を設ける必要がある。
【0011】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、80℃の温水中における主収縮方向の熱収縮率が30%以上である。この熱収縮率が30%に満たないものは、ラベルとしてボトルなどの容器に被覆収縮させた時に容器に密着しない部分が発生し不良となるためである。より好ましい主収縮方向の熱収縮率は40%以上であり、さらに好ましくは50%以上である。
【0012】
また、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下である。この収縮率が10%を超えるものは容器に被覆収縮させた時にラベルの縦退けが大きく、それにより外観が悪いばかりかラベルの位置が安定しないためである。より好ましい主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は8%以下であり、さらに好ましくは6%以下である。
【0013】
本発明においては、基層へのペットボトル再生原料の添加率は40質量%以下が好ましい。より好ましくは30質量%以下である。ペットボトル再生原料は、異種素材や砂などの異物混入の問題がある他に、溶融粘度、分子量、分子量分布、モノマー組成、結晶化度、重合触媒の種類や添加量などが相違する様々なペットボトルからなるものであることから、これらの物性が再生原料の生産ロット毎に広くばらついている。このような再生原料を40質量%以上添加したフィルムは品質のばらつきが大きく、熱収縮性ラベルとして必要な熱収縮率や機械的強度が得られない場合がある。基層へのペットボトル再生原料の添加率の下限については特に制限はないが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。
【0014】
しかし、本発明においては、熱収縮フィルムを多層構成とし、ペットボトル再生原料の添加量を制限すると共に、ペットボトル再生原料を含まない層を設けることにより、熱収縮率や機械的強度を確保するものである。より好ましいペットボトル再生原料の添加量はフィルム全体で25質量%以下であり、基層とペットボトル再生原料を添加しない層の比率を調整することにより達成できる。好ましい層比率は40:60〜95:5である。さらに好ましいペットボトル再生原料の添加量はフィルム全体で20質量%以下である。
【0015】
添加量の下限については特に制限はないが、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である再生原料の使用比率が高いほど、ペットボトルのリサイクル効率が高くなり環境問題、資源の有効活用の観点から好ましい。
【0016】
ここでいうペットボトル再生原料とは、ペットボトルなどのポリエチレンテレフタレート容器の再生原料をいい、マテリアル再生原料、ケミカル再生原料があるがそのいずれも使用できる。一方のみを用いても混合して用いても構わない。
【0017】
本発明においてフィルムの極限粘度は、0.61dl/g以上であることが好ましい。フィルムの極限粘度を0.61dl/g以上にすることにより、フィルムの機械的強度や耐破れ性が向上し、印刷加工や溶剤接着加工時に破断などの不良が低減できるからである。フィルムの極限粘度を0.61dl/g以上にするためには、例えば、使用するポリエステルに高分子量の原料を用いることで達成できる。本発明においては基層と印刷層で極限粘度が異なる場合があるが、フィルム全体として極限粘度が0.61dl/g以上であれば構わない。なお、フィルムのより好ましい極限粘度は0.63dl/g以上である。
【0018】
なお、本発明において機械的強度は、後述の実施例の評価方法における初期破断率が好ましくは70%以下、より好ましくは25%以下である。好ましい機械的強度は、前述の層構成とペットボトル再生原料の混合量、フィルムの極限粘度を制御することにより得ることができる。
【0019】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとして有する。フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等を考慮すれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムの構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットが50モル%以上となるように選択することが好ましい。従って、多価カルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルからなる成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100%モル中、エチレングリコール成分を50モル%以上、とすることが好ましい。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0020】
エステルユニットにおいて多価アルコール成分を形成するための多価アルコール類としては、上記エチレングリコールの他に、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1, 4−ブタンジオール、1, 6―ヘキサンジオール、3−メチル−1, 5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1, 5−ペタンジオール、2, 2−ジエチル−1, 3−プロパンジオール、1, 9−ノナンジオール、1, 10−デカンジオ−ル等の脂肪族ジオール、1, 4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、等も併用可能である。
【0021】
また、多価カルボン酸成分を形成するための多価カルボン酸類としては、上述のテレフタル酸およびそのエステルの他に、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸等が利用可能である。芳香族ジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタレン−1, 4−もしくは−2, 6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やテレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステル等の誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等や、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価カルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0022】
この他、多価アルコール類、多価カルボン酸類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してもよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットが、カルボン酸成分であり、かつ、アルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、1, 4−シクロヘキサンジメタノール成分量や、他の多価アルコール成分の量は、多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、各多価カルボン酸成分の量を計算する際も、多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%とする。
【0023】
エチレンテレフタレートユニット以外のユニットを構成する好ましい成分としては、エチレンテレフタレートユニットによる高結晶性を低下させて、低温熱収縮性や溶剤接着性を確保することのできるものが好ましい。このような結晶性低下成分としては、多価カルボン酸成分では、イソフタル酸、ナフタレン−1, 4−もしくは−2, 6−ジカルボン酸が、多価アルコール成分では、ネオペンチルグリコール、1, 4−シクロヘキサンジメタノール、1, 4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールが好ましいものとして挙げられる。これらの結晶性低下成分の併用によって、フィルムの熱収縮特性と、耐破れ性および溶剤接着性を、バランス良く向上させることができる。特に、溶剤接着性の観点からは、少なくとも表面層となる層に、これらの好ましい成分の少なくとも1種から構成されるユニットを含むポリエステルを原料の一部として用いることが望ましい。原料ポリエステルの構成ユニット100モル%中、これらの結晶性低下成分を含むユニットは、10モル%以上とすることが好ましく、12モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましい。多価カルボン酸成分の合計量を100モル%、多価アルコール成分の合計量を100モル%としたとき、ネオペンチルグリコール及び/又は1, 4−シクロヘキサンジメタノールを10〜30モル%含有し、かつ1,4−ブタンジオール及び/又は1,3−プロパンジオールを5〜30モル%含有することが特に好ましい実施様態である。
【0024】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。重合触媒としては、慣用の種々の触媒が使用でき、例えばチタン系触媒(チタニウムテトラブトキシド等)、 アンチモン系触媒(三酸化アンチモン等)、 ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウム等)、 コバルト系触媒(酢酸コバルト等)等があげられる。
【0025】
また、熱収縮性フィルムの易滑性を向上させるために、例えば、二酸化チタン、微粒子状シリカ、カオリン、炭酸カルシウムなどの無機滑剤、また例えば、長鎖脂肪酸エステルなどの有機滑剤を添加してもよい。また、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、静電防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0026】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造するには、以下の方法が望ましい。まず、チップ状のPETボトルリサイクル原料とそれ以外のポリエステル原料を用意し、これらをホッパドライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥する。その後、適宜混合して、押出機から、200〜300℃の温度でフィルム状に押し出す。あるいは、未乾燥のチップをベント式押出機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押し出す。多層構成の積層フィルムにする方法には、共押出しすればよい。PETボトルリサイクル原料は、公知の方法で洗浄、粉砕されたチップ状のものを用いるとよい。
【0027】
押出しに際してはTダイ法、チューブラ法等、既存のどの方法を採用しても構わない。押出後は、キャスティングロールで急冷して未延伸フィルムを得る。なお、「未延伸フィルム」には、製造工程でのフィルム送りのために必要な張力が作用したフィルムも含まれる。上記押出機とキャスティングロールの間に電極を配設して、電極とキャスティングロールとの間に電圧を印加することにより、静電気的にフィルムをロールに密着させることが、フィルムの厚み斑抑制の観点から好ましい。
【0028】
上記未延伸フィルムに対して延伸処理を行なう。延伸処理は、上記キャスティングロール等による冷却後、連続して行ってもよいし、冷却後、一旦ロール状に巻き取り、その後行なってもよい。なお、最大収縮方向がフィルム横(幅)方向であることが、生産効率上、実用的であるので、以下、最大収縮方向を横方向とする場合の延伸法の例を示す。最大収縮方向をフィルム縦(長手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を90°変える等、通常の操作に準じて延伸することができる。
【0029】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを、テンター等を用いて横方向に延伸する際、延伸工程に先立って、フィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内のある温度になるまで加熱し、Tg−20℃〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で、2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍に延伸する。その後、50℃〜110℃の範囲内の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜15%の緩和をさせながら熱処理し、必要に応じて40℃〜100℃の範囲内の所定温度でさらに熱処理をして、熱収縮性ポリエステル系フィルムを得る。
【0030】
延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施してもよい。このように2軸延伸を行なう場合は、遂次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて、再延伸を行ってもよい。また、遂次2軸延伸においては、延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横等のいずれの方式でもよい。
【0031】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは特に限定されないが、例えばラベル用熱収縮性ポリエステル系フィルムとしては、全体厚が20μm以上、好ましくは25μm以上であって、300μm以下、好ましくは200μm以下とすることが推奨される。
【0032】
上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを熱収縮性ラベルとするには、公知のチューブ状成形装置を用いて、フィルム片端の片面の端縁から少し内側に接着用溶剤を所定幅で塗布し、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着し、チューブに加工する。このチューブを所定長さに裁断して本発明の熱収縮性ラベルとすることができる。
【0033】
フィルムの接着は、フィルムの一部を溶融させる溶融接着法を採用することも可能であるが、ラベルの熱収縮特性の変動等を抑制する観点からは、溶剤を用いて行なうことが好ましい。使用し得る溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トチメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;フェノール等のフェノール類;テトラヒドロフラン等のフラン類;1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;等の有機溶剤が挙げられるが、中でも、安全性が高い点で、1,3−ジオキソランやテトラヒドロフランが望ましい。この熱収縮性ラベルは、PETボトル等の容器に装着した後、公知の熱収縮手段(熱風トンネルやスチームトンネル等)で熱収縮させて被覆させることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するもの
ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。また、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0035】
(1)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、95℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、その後、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である。最も収縮率の大きい方向を最大収縮方向とする。
熱収縮率(%)=(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)×100
【0036】
(2)印刷性
東谷鉄工所社製PAS型印刷機を使用し、東洋インキ製造社製のインキ(シュリンクEX草色)を150線×30μ×20%のグラビアロールを使用し、速度100m/分でフィルムに印刷を行ない、拡大鏡(15倍)で印刷面を拡大し、1平方センチメートル当たりのインキピンホール数を数え、以下の判断基準で評価した。
○: 0〜10ヶ
△:11〜50ヶ
×:51ヶ以上
【0037】
(3)機械強度
30℃×相対湿度85%の雰囲気下で28日間保管した後の最大収縮方向に直交する方向について引張り試験(試験片幅:15mm、試験片長さ:120mm、チャック間距離:20mm、引張り速度200m/分、温度23℃、サンプル数:20)を行ない伸度5%以下で破断した試験片数を数え、以下の判断基準で評価した。なお、伸度5%以下で破断した試験片数の全試験片数に対する割合(%)を初期破断率とした。
○:0〜5本 (初期破断率 0〜25%)
△:6〜14本 (初期破断率 30〜70%)
×:15〜20本 (初期破断率 75〜100%)
【0038】
(4)極限粘度
試料(チップまたはフィルム)0.1gを精秤して、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒に溶解した後、オストワルド粘度計を用い30±0.1℃で測定する。極限粘度[η]は、下式(Huggins式)によって求められる。
【0039】
[数1] ηSP/c=[η]+k[η]2
kはいわゆるHugginsの定数であり、溶質分子間の流体力学的相互作用の尺度である。
[η]は数個の濃度が異なる溶液の粘度測定からηSP/cをcに対してプロットし、
得られた直線をc→0に補概して求める。
ηSP濃度がcの時の比粘度である。
【0040】
実験1
基層には、ポリエステルA:10質量%、ポリエステルB:55質量%、ポリエステルC:10質量%、ポリエステルD:25質量%を混合したポリエステル系樹脂を用い、表裏外層には、ポリエステルA:35質量%、ポリエステルB:55質量%、ポリエステルC:10質量%を混合したポリエステル系樹脂を、それぞれを別々の単軸押出機によって270℃で溶融し、Tダイから共押出し、チルロールで冷却して、3層構造の未延伸フィルムを得た(厚み:200μm) この未延伸フィルムを88℃で10秒間予熱した後、テンターで横方向に80℃で3.9倍延伸し、続いて78℃で10秒間熱処理を行って、厚さ50μm(基層:25μm/表裏層:各12μm)の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。使用したポリエステル系樹脂の組成・内容を表1に示す。表1中、TPAはテレフタル酸を、EGはエチレングリコールを、BDは1,4−ブタンジオールを、NPGはネオペンチルグリコールを意味する。また、フィルムの特性を表2に示した。
【0041】
実験2〜4
表裏層の厚みを変更した以外は実験1と同じ方法で、厚さ50μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。フィルムの特性を表2に示した。
【0042】
実験5
基層にはポリエステルB:40質量%、ポリエステルC:10質量%、ポリエステルD:50%を混合したポリエステル系樹脂を用い、表裏層にはポリエステルA:35%、ポリエステルB:55質量%、ポリエステルC:10質量%を混合したポリエステル系樹脂を用い、表裏層がそれぞれ4μmとした以外は実施例1と同様な方法で、厚さ50μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。フィルムの特性を表2に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の熱収縮性ポリエステルフィルムは、ペットボトル再生原料を使用しているにもかかわらず、従来のフィルムと同等な品質を有するため、環境にやさしい熱収縮性ラベル用フィルムとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットボトル再生原料を含む基層の少なくとも片面に、ペットボトル再生原料を含まない層を積層した熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、80℃の温水中に10秒浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が30%以上で、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下であり、ペットボトル再生原料を含まない層を少なくとも片面側最表層とすることを特徴とする、少なくとも一軸に延伸した熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
ペットボトル再生原料を含まない層を少なくとも片面側最表層とし、該層の厚みが4μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
基層中のペットボトル再生原料の含有量が40質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
フィルムの極限粘度が0.61dl/g以上である請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
ペットボトル再生原料を含まない層を印刷面とすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
前記請求項1から請求項5のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムより作成された熱収縮性ラベル。

【公開番号】特開2006−289727(P2006−289727A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112176(P2005−112176)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】