説明

熱収縮性ポリエステル系フィルム

本発明は、収縮工程における収縮均一性を確保して外観品質に優れるうえ、印刷潰れなどの発生がなく、収縮工程における生産コストを節減し、生産性を向上させることが可能な熱収縮性ポリエステル系フィルムを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮特性を有するポリエステル系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルムは、瓶や缶などの各種容器、およびパイプや棒などの長尺物の被覆、結合または外装のための各種包装材またはラベル用として使用されるもので、主にポリエステルからなっている。
【0003】
熱収縮性フィルムは、加熱により収縮する性質を用いて、各種容器、例えばPET容器、ポリエチレン容器、ガラス容器などの収縮(集積)包装、収縮ラベル、キャップシールなどの目的で使用されている。
【0004】
ラベルなどを製造するためには、通常、原料重合体を連続的に溶融押出して未延伸フィルムを製造し、その後、延伸して熱収縮性フィルムロールを得る。このロールからフィルムを繰り出しながら所望の幅にスリットし、更にロール上に巻き戻す。続いて、各種製品名などの文字情報または図案を印刷する。印刷終了の後には、溶剤接着などの手段によってフィルムの左右端部を互いに重ね合わせて接合することによりチューブを製造する(チュービング工程)。この際、スリット工程と印刷工程は、順序が逆の場合もある。得られたチューブ状のフィルムは、更にロール上に巻き戻された後、後続工程で繰り出してチューブを適当な長さに裁断すると、所望する長さのチューブ状のラベルになり、このラベルの一方の開口部を接合すると、袋になる。
【0005】
こうして得られたラベルや袋などを容器に被せ、スチームを吹き出して熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)、または熱風を吹き出して熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベヤーなどにのせて通過させ、ラベルや袋などが強固に密着した最終製品、すなわちラベル化容器を得ることができる。
【0006】
熱収縮性フィルムを用いた当該製品の製造において、フィルム形成後の後工程、例えば、印刷工程や、例えばラベルや袋などを容器に被せて収縮トンネルを通過させる工程などはいずれも所定の熱を伴う工程である。特に最終的に行われる収縮工程は、スチームや熱風などの加熱手段に関わらず、熱を伴い、この際、ラベル損傷や印刷損傷などが誘発されるおそれがあり、物性の変化を引き起こすおそれもある。これにより、ラベル衝撃性などが弱化するなど、製品の信頼度を低下させる問題が発生している。
【0007】
また、スチームトンネルまたは熱風トンネルを用いた収縮工程は、トンネルの入口からトンネルの出口までスチームまたは熱風の噴射が行われるが、両端とトンネルの中央部はその温度において均一ではない。このようなトンネル内温度の変化により、ラベルの収縮度が若干異なる。
【0008】
また、収縮トンネルまたは熱風トンネルを用いた収縮工程を経た後、ラベルが均一に収縮して容器に密着しなければならない。しかし、実際には、ラベルが歪んだり潰れたりする現象が起こる。
【0009】
このような現象は、与えられた温度の下で一定の時間均一な収縮を引き起こさなかった結果であって、このような収縮度の差異、すなわち収縮の不均一はラベル外観の不良を生じさせ、重度の場合には印刷潰れなどを発生させる。
収縮の不均一は、収縮工程を延伸させ且つ生産性の低下をもたらすこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、外部から熱が加えられたとき、低温で収縮が起って熱によるフィルムの損傷を最小化することが可能な熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することにある。
【0011】
また、本発明は、最大限の収縮率を達成するのに必要な温度を低くすることにより、熱によるラベルの損傷、印刷損傷、およびフィルム物性の劣化などを防止することが可能な熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供するものである。
【0012】
また、本発明は、主収縮方向(すなわち、幅方向(Transverse Direction、TD)において温度変化による変形率が向上した熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【0013】
また、本発明は、主収縮方向(すなわち、TD)において温度変化による収縮変形速度が向上し、低温で最大収縮変形が起こるため、一定の温度範囲で均一な収縮を可能とする熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【0014】
また、本発明は、一定の温度下で時間経過に伴う均一な収縮率を提供することが可能な熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【0015】
また、本発明は、収縮均一性を確保して収縮工程以後の印刷品質を確保することができ且つ生産性を向上させることが可能な熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、室温および所定の初期荷重(0.125Kg/mm)下で固定され、所定の昇温速度(2.5℃/sec)での加熱により収縮させられたフィルムの応力を測定することによって得られる、温度に対する収縮応力のグラフにおいて、初期荷重と同じ値の収縮応力を示す最初の温度として定義される、主収縮方向の収縮開始温度が、72〜88℃である、熱収縮性ポリエステル系フィルムが提供される。
【0017】
本発明の他の態様によれば、下記式1によって表される主収縮方向(すなわち、TD)における収縮速度が0.5〜3.5%/℃である、熱収縮性ポリエステル系フィルムが提供される。
[式1]
収縮速度=ΔL/ΔT
(上記式は、70〜85℃の温度範囲内で、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化をリニア可変作動トランス(LVDT;Linear Variable Differential Transformer)によって測定することにより得られるものであり、ここで、ΔTは温度変化値であり、ΔLは主収縮方向(すなわち、TD)の変形率である。)
【0018】
本発明の別の態様によれば、所定の長手方向の熱収縮および熱応力を、熱収縮応力試験機器によって測定したとき、95℃で5秒以内の時間経過に伴う主収縮方向の収縮率の変化速度が4.0〜10.0%/secである、熱収縮性ポリエステル系フィルムが提供される。
【0019】
本発明の好適な態様によれば、下記式1によって表される主収縮方向(すなわち、TD)における収縮速度が0.5〜3.5%/℃である、熱収縮性ポリエステル系フィルムが提供される。
[式1]
収縮速度=ΔL/ΔT
(上記式は、70〜85℃の温度範囲内で、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化をLVDTによって測定することにより得られるものであり、ΔTは温度変化値であり、ΔLは主収縮方向(すなわち、TD)の変形率である。)
【0020】
別の好適な態様では、所定の長手方向の熱収縮および熱応力を測定するための熱収縮応力試験機器によって測定したとき、95℃で5秒以内の時間経過に伴う主収縮方向の収縮率の変化速度が4.0〜10.0%/secである、熱収縮性ポリエステル系フィルムが提供される。
【0021】
本発明の態様によれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、主収縮方向の最大収縮発現温度が85〜100℃であり、主収縮方向の最大収縮応力が0.65〜1.30kg/mmであってもよい。
最大収縮発現温度は次のように定義される:室温および所定の初期荷重(0.125Kg/mm)下で固定され、所定の昇温速度(2.5℃/sec)での加熱により収縮させられたフィルムの応力を測定することによって得られる、温度に対する収縮応力のグラフにおいて、最大の収縮応力値を示す最初の温度。
最大収縮応力は次のように定義される:室温および所定の初期荷重(0.125Kg/mm)下で固定され、所定の昇温速度(2.5℃/sec)での加熱によって収縮させられたフィルムの応力を測定することによって得られる、温度に対する収縮応力のグラフにおける最大の収縮応力値。
【0022】
本発明の態様によれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、動的熱機械分析方法によって測定される主収縮方向の動的ガラス転移温度が90〜100℃であり、固有粘度が0.60〜0.70dL/gであってもよい。
【0023】
本発明の態様によれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、下記式2によって表される主収縮方向(すなわち、TD)の収縮変形速度が3.5〜8.5であってもよい。
[式2]
収縮変形速度=dL/dT
(上記式は、リニア可変作動トランス(LVDT)によって測定される、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化を示す上記式1によって表される、30〜90℃の温度範囲内の温度変化に応じた主収縮方向(すなわち、TD)の変形率を微分した値であり、測定温度範囲内の最大変形速度値を意味する。)
【0024】
この際、主収縮方向(すなわち、TD)の収縮変形速度が最大値を示す時点の温度範囲は80〜88℃であってもよい。
【0025】
本発明の上記態様によれば、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは60%以上の熱収縮率を有することができる(95度、10秒間、自由状態)
【0026】
本発明の態様によれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、95℃で主収縮方向の収縮応力が0.6〜1.3kg/mmであってもよい。
【0027】
本発明の態様によれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジカルボン酸を少なくとも一つ含むジカルボン酸成分、およびエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオールを少なくとも一つ含むジオール成分から得られるコポリエステルの中から選ばれた少なくとも1種のコポリエステル;またはホモポリエステルとコポリエステルとの混合物を含んでなるものでありうる。ここで、コポリエステルは、テレフタル酸モノマー約80モル%以上を含むジカルボン酸モノマー、およびエチレングリコール以外のモノマー14〜24モル%を含むジオールモノマーからなってもよい。
【0028】
また、本発明の態様に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、コポリエステルは、ガラス転移温度が67〜77℃であり、固有粘度が0.60〜0.70dL/gであってもよい。
【0029】
また、本発明の態様に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、ホモポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリトリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0030】
また、本発明の態様に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、コポリエステルは、ポリエステルの全量に対して85〜93重量%で含まれてもよい。
【0031】
本発明の態様に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、200〜350℃でポリエステルを押し出し、80〜100℃で予熱した後、70〜95℃で幅方向に延伸させる工程を含んで製造されてもよい。この際、ポリエステルを押し出した後、機械的方向(MD)に自然発生する自然延伸比と付加的な0.1〜5%とを含む延伸比で機械的方向に更に延伸する工程を経てもよい。
【0032】
本発明の態様に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステルを押し出し、予熱した後、幅方向に延伸させ、その後に、熱処理する工程を含んでなり、熱処理の温度を予熱の温度より低く設定して行う方法により製造されてもよい。
【0033】
この際、予熱の温度は80〜100℃であってもよく、かつ、熱処理の温度は室温〜95℃であってもよい。
【0034】
本発明の一態様では、ポリエステルを押出および延伸して熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、ポリエステルを200〜350℃で押し出し、押し出されたポリエステルシートを得る段階と;上記押し出されたポリエステルシートを80〜100℃で予熱する段階と;上記ポリエステルシートを70〜95℃で幅方向(TD)に延伸する段階と;を含み、上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、下記のように定義される主収縮方向の収縮開始温度が72〜88℃である、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法が提供される。
収縮開始温度は次のように定義される:室温および所定の初期荷重(0.125Kg/mm)下で固定され、所定の昇温速度(2.5℃/sec)での加熱によって収縮させられたフィルムの応力を測定することによって得られる温度に対する収縮応力のグラフにおいて、初期荷重と同じ値の収縮応力を示す最初の温度。
【0035】
本発明の他の一態様では、ポリエステルを押出および延伸して熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、ポリエステルを200〜350℃で押し出し、押し出されたポリエステルシートを得る段階と、押し出されたシートを予熱する段階と、上記ポリエステルシートを延伸する段階と、上記ポリエステルシートを熱処理する段階とを含んでなり、熱処理の温度を予熱の温度より低く設定し、下記式1によって表される主収縮方向(すなわち、TD)の収縮速度が0.5〜3.5%/℃である、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法が提供される。
[式1]
収縮速度=ΔL/ΔT
(上記式は、70〜85℃の温度範囲内で、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化をLVDTによって測定することにより得られるものであり、ΔTは温度変化値であり、ΔLは主収縮方向(すなわち、TD)の変形率である。)
【0036】
本発明の他の一態様では、ポリエステルを押出および延伸して熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、ポリエステルを200〜350℃で押し出す段階と、押し出されたシートを予熱する段階と、延伸する段階と、熱処理する段階とを含んでなり、熱処理の温度を予熱の温度より低く設定し、所定の長手方向の熱収縮応力を測定するための熱収縮応力試験機器によって測定したとき、95℃で5秒以内の時間経過に伴う主収縮方向の収縮率の変化速度が4.0〜10.0%/secである、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法が提供される。
【0037】
本発明の態様に係る製造方法において、ポリエステルを押し出す段階の後に、機械的方向(MD)に自然発生する自然延伸比と付加的な0.1〜5%とを含む延伸比で機械的方向に延伸する段階を更に含んでもよい。
【0038】
本発明の態様に係る製造方法において、予熱の温度は80〜100℃であってもよく、かつ、熱処理の温度は室温〜95℃であってもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の一態様に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、低い温度下で収縮を起こすことにより、最終収縮工程上で発生するラベル損傷、印刷損傷、物性の劣化などを防止することができ、フィルムの最大の収縮率に達するまでの温度を最小化することによりラベル損傷、印刷損傷、物性の劣化などを更に防止することができるうえ、工程効率を向上させることができる。
【0040】
本発明の一態様に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、一定の温度下で時間経過に伴う収縮率の変化速度が速いことにより、短時間内に均一な収縮を起こすので収縮工程中の収縮不均一の発生を減らすことができるため、ラベル外観の不良率を低め、印刷潰れなどの発生がなく、結果として生産性を向上させることができる。
【0041】
本発明の一態様に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、一定の温度範囲内で均一な収縮変形速度を示し、収縮速度が向上して収縮工程中の収縮不均一の発生を減らすことができるため、ラベル外観の欠陥が改善および低減され、印刷潰れなどの発生がなく、結果として生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1によって得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムを熱応力測定器を用いて温度変化による主収縮方向の収縮応力値の変化を示すグラフである。
【図2】実施例11によって得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムを熱機械分析器によって分析した結果を示すグラフである。
【図3】実施例15によって得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムをTestrite MKV Shrinkage−Force Tester(Testrite Ltd)によって分析した結果を示すグラフ(時間による収縮率の変化)である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
収縮フィルムは、低温一軸延伸によって極大の一軸配向を成し、且つ熱処理による残留応力の解消部分を排除して一軸配向された分子鎖がそのままその残留応力を留めていて、最終収縮工程でその残留応力の力により収縮が行われる原理で製造される。
【0044】
ポリエステル系収縮フィルムは、コポリエステルを含む組成を押し出して得られることが一般的であり、ここで、コポリエステルは特に熱に弱いという問題がある。
【0045】
このように原料的な問題によって、熱収縮性ポリエステル系フィルムは熱に弱いという問題を抱えている。
【0046】
本発明の一態様によれば、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、次のように定義される主収縮方向の収縮開始温度が72〜88℃である。
収縮開始温度:室温および所定の初期荷重の下で固定され、所定の昇温速度での加熱により収縮させられたフィルムの応力を測定することによって得られる温度に対する収縮応力のグラフにおいて、初期荷重と同じ値の収縮応力を示す最初の温度。
【0047】
このようなグラフを実現することが可能な測定機器の一例としては、熱収縮応力試験機を挙げることができる。
【0048】
熱収縮応力試験機で収縮性フィルムの温度変化による収縮特性を確認するため、所定の荷重でフィルムを固定して、所定の昇温速度で熱を加えながら温度変化に伴う収縮による応力の変化を測定する。
【0049】
このような方法による測定グラフを図1に示したので、図1を参照して説明すると、グラフ上の最初時点は初期に設定された荷重値Lsであり、昇温すると、初期にはフィルムが軟化して応力値が初期荷重Lsに比べて減少した後、一定の温度に達すると、フィルムがぴんと張りながら収縮が始まる。この際、初期荷重Lsと同じ値の収縮応力値が観察されるが、この時点を収縮開始温度Tsと定義する。
【0050】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、このような主収縮方向の収縮開始温度が72〜88℃である。
【0051】
上記収縮開始温度が72℃より低いと、熱に対する形態安定性が低下して印刷および加工工程中に印刷ラベルの歪みなどの発生により取り扱いが困難である。一方、収縮開始温度が88℃より高いと、収縮工程中に高温で長時間の処理が必要なのでラベル損傷をもたらし、工程費用が高くなるという問題が発生しうる。
【0052】
また、本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、主収縮方向の最大収縮発現温度が85〜100℃の範囲内で観察されるので、ここで、最大収縮発現温度は、次のように定義できる:室温および所定の初期荷重下で固定され、所定の昇温速度での加熱により収縮させられたフィルムの応力を測定することによって得られる温度に対する収縮応力のグラフにおける、最大の収縮応力値を示す最初の温度。
【0053】
また、このときの収縮応力値は最大収縮応力として定義され、その値は0.65〜1.30kg/mmに測定されうる。
【0054】
これを図1に示した熱収縮応力試験機による温度変化による収縮応力値の変化グラフを参照して説明すると、収縮性フィルムの収縮が開始すると、一定の温度までは収縮応力が上昇する曲線を描き、最大の収縮応力値Smaxを示す温度 T(Smax)以後にはその値が下方曲線を描く。
【0055】
ここで、最大収縮応力値Smaxが発現される温度T(Smax)が高い場合、収縮工程において高温の熱処理が要求され、これは収縮工程における熱処理完結に必要な温度と連動して収縮工程の効率に影響を与える。
【0056】
このような観点で、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの主収縮方向のが85〜100℃の低い最大収縮応力発現温度を有し得、容器に対するラベルの結束力の点から、最大収縮応力は0.65〜1.30kg/mmであり得る。
【0057】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの主収縮方向の収縮開始温度、最大収縮発現温度および最大収縮応力の分析に適用された原理と、この原理から得られる収縮開始温度、最大収縮発現温度および最大収縮応力の定義は、次のとおりである。
(1)原理
高分子鎖は、延伸工程を経ながら配向および結晶化がなされ、結晶領域と非晶領域に大別される構造を持つ。延伸された高分子に熱を加えると、高分子鎖に残存する応力の弛緩現象が現れ、元々の形態に戻る収縮現象が現れるが、このような収縮を妨害する力を収縮応力といい、収縮応力が高いほど同一の条件下で温度による収縮率は高くなる。
【0058】
室温および所定の初期荷重下でフィルムを固定し、所定の昇温速度で熱を加えた場合の、温度変化に応じた膨張および収縮による試料の応力変化を、リニア可変作動トランス(LVDT)によって測定する。
【0059】
このような原理を用いて温度変化によるフィルムの収縮応力に対する情報を得ることができる。この際、昇温速度は高分子鎖の残存応力弛緩速度に依存するので、本発明では、2.5℃/secの昇温速度で温度変化による収縮応力値を測定した。
【0060】
測定されたグラフは、図1に示したようなパターンを示し、初期荷重値Lsと同じ収縮応力値が最初に観察される時点の温度を収縮開始温度Ts、グラフのピークに該当する値が現れるときの温度を最大収縮発現温度T(Smax)、このときの応力値を最大収縮応力Smaxとしてそれぞれ定義する。
【0061】
以上のような原理を実現する機器の一例として、以下の実施例および比較例では熱収縮応力試験機(KE−2、Kanebo Eng.社)を使用した。
【0062】
収縮工程において収縮のために加えられる熱は、部分的に温度勾配を有するので、このような温度勾配によって、容器が収縮トンネルを通りながら多いあるいは少ない収縮が起こる差異が生ずる。このような収縮不均一は、品質の安定性の側面で好ましくなく、一つのラベル中でも収縮不均一が発生するおそれがあって、ラベル外観が不良で印刷潰れなどが発生しうる。
【0063】
本発明の一態様によれば、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、下記式1によって表される主収縮方向(すなわち、TD)の収縮速度が0.5〜3.5%/℃である。
[式1]
収縮速度=ΔL/ΔT
上記式は、70〜85℃の温度範囲内で、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化をリニア可変作動トランス(LVDT)によって測定することにより得られるもので、ΔTは温度変化値、ΔLは主収縮方向(すなわち、TD)の変形率である。
【0064】
このような原理を実現することが可能な測定機器の一例としては、熱機械分析器を挙げることができる。
【0065】
熱機械分析器を用いた測定のために、試料に温度プログラムを適用して所定の加重下で試料の変形を測定する。本発明に係る熱収縮性フィルムでは、70〜85℃の温度範囲内の温度変化に応じた主収縮方向(すなわち、TD)における変形率値が0.5〜3.5%/℃である。
【0066】
上記収縮速度が0.5%/℃より小さいと、収縮が不完全に起ってラベルの結束力が低下し、ラベルの上端および下端部位でラベルの潰れを発生させるおそれがあり、一方、上記収縮速度が3.5%/℃より大きいと、過剰収縮応力により容器が潰れるという問題が発生しうる。
【0067】
また、本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記式1によって得られる値を微分して得られる下記式2で表される主収縮方向(すなわち、TD)の収縮変形速度が3.5〜8.5であり、最大の収縮変形速度が得られる温度範囲は80〜88℃である。
[式2]
収縮変形速度=dL/dT
上記式は、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化をリニア可変作動トランス(LVDT)によって測定することにより得られる上記式1による値を微分して得られるもので、30〜90℃の温度範囲内で測定した温度による主収縮方向(すなわち、TD)の変形率を微分した値である。この値は、測定温度範囲内の最大収縮変形速度値を意味する。
【0068】
この値もまた、30〜90℃の温度範囲内で熱機械分析器を用いて得られる。
【0069】
このような広い温度変化範囲にも拘らず、主収縮方向(すなわち、TD)の収縮変形速度が3.5〜8.5の場合であれば、温度変動による収縮不均一を減少させることができ、その結果、収縮均一化を成し遂げることができるという側面で有利である。
【0070】
また、最大の収縮変形速度値が得られる範囲が80〜88℃と低いので、熱風またはスチームを用いた収縮トンネルを通過する間の温度勾配による収縮不均一の問題を解決できる。
【0071】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの主収縮方向(すなわち、TD)における収縮速度、収縮変形速度、最大収縮変形温度の測定の原理とこの原理から得られる収縮速度、収縮変形速度、最大収縮変形温度の定義は、次のとおりである。
(1)原理
温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化をリニア可変作動トランス(LVDT)によって測定することにより得られるもので、温度による主収縮方向(すなわち、TD)の変形率は下記式1で表され、これを収縮速度として定義する。
[式1]
収縮速度=ΔL/ΔT
(式中、ΔTは温度変化値であり、ΔLは、主収縮方向(すなわち、TD)の変形率であって、70〜85℃の温度範囲内の値である。
上記式1の値を微分すると、下記式2の値が得られる。その得られた最大値を収縮変形速度として定義する。
[式2]
収縮変形速度=dL/dT
(上記値は、30〜90℃の温度範囲内の温度変化に応じた主収縮方向(すなわち、TD)における変形率を微分した値であり、測定温度範囲内の最大値を求める。)
【0072】
このように式2によって得られる収縮変形速度のうち、収縮変形速度が最大に起こる温度を最大収縮変形温度として定義する。
【0073】
測定に用いられ、以上のような原理を実現する機器の一例として、熱機械分析器(Thermomechanical Analyze)が挙げられる。
【0074】
収縮フィルムの収縮工程は熱風またはスチームを用い、一定の時間、収縮トンネル内で行われる。この際、時間経過に伴ってラベルの収縮は不均一になり、このような収縮不均一はラベル外観の不良をもたらし、印刷潰れなどを発生させるおそれがある。
【0075】
本発明の一態様によれば、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、所定の長手方向の熱収縮および熱応力を測定するための熱収縮応力試験機器によって測定したとき、95℃で5秒以内の時間経過に伴う主収縮方向の収縮率変化速度が4.0〜10.0%/secの熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
【0076】
ここでの熱収縮応力試験機器の一例としては、Testrite MKV Shrinkage−Force Testerを挙げることができる。
【0077】
Testerite MKV Shrinkage−Force Testerの場合、通常は糸やコードなどの熱的応力を試験するために用いられる。なぜなら、糸やコードの収縮率は収縮フィルムで要求する収縮率に比べてずっと低いので、不変状態では、収縮フィルムをそのまま該当試験機器に適用することができないからである。
【0078】
このような点において、熱収縮応力試験機器を用いて一定の温度下での時間経過に伴う収縮率を評価するためには、まず、最大収縮率測定範囲(35.8%)を確認して測定可能長さの変化の範囲を求める。最大収縮率測定範囲を確認すると、機器的に許容可能な最大試料長さは設定されているので、これから測定可能な最大試料長さおよび長さ変化の範囲を計算することができる。測定試料の最大収縮可能長さを確認して機器上最大可能な範囲内で試料の長さを任意に定める。選定された一定の長さの試料を測定機器内で扁平に広がった状態に維持するために一定の荷重を与えて一定の温度で時間による収縮率を測定する。この際、測定機器は、機器上に設定された試料長さを基準として収縮率を計算するので、測定された収縮率を更に長さ変形値で換算して時間による長さ変形値を求め、これを実際測定試料の長さで割ることにより、測定試料の長さ変形率を求めることができる。これらから時間経過に伴う収縮率の変化速度を計算することができる。
【0079】
このような一定の温度下での時間経過に伴う収縮率の変化速度が持つ意味は、温度に対する収縮均一性および生産速度に関連するので、本発明の好適な態様による熱収縮性ポリエステル系フィルムは、このような方法による一定の温度で一定の時間経過に伴う主収縮方向の収縮率の変化速度が4.0〜10.0%/secである。特に、実際の収縮工程における滞留時間を考慮したとき、好ましくは5秒以内の時間経過に伴う主収縮方向の収縮率の変化速度が4.0〜10.0%/secである。
【0080】
もし一定の温度下における時間による収縮率の変化速度が4.0%/sec未満だと、要求される収縮特性を得るために長時間の熱処理または高温の熱処理が必要なので、結果として生産速度の低下または工程費用の上昇をもたらすと同時にラベルの物性低下をもたらし、一方、収縮率変化速度が10.0%/secより大きいと、瞬間的な収縮により容器に応力が集中して容器の潰れ現象を発生させるおそれがある。
【0081】
また、本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上述した機器によって測定したときの主収縮方向の収縮応力が0.6〜1.3kg/mmであってもよい。ラベルが容器に密着するために必要な力は、上記の収縮応力の値から推定できる。このような範囲の収縮応力値を有することが、容器密着性および容器におけるラベルの安定な形態維持の側面で有利でありうる。
【0082】
本発明によれば、このような試験は、収縮ラベルが加工される温度範囲と熱による溶融が起こらない温度範囲を考慮して95℃の温度下で行ったものである。
【0083】
このような物性を満足する熱収縮性ポリエステル系フィルムは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジカルボン酸を少なくとも一つ含むジカルボン酸成分、およびエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、採りメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオールを少なくとも一つ含むジオール成分から得られるコポリエステルの中から選ばれた少なくとも1種のコポリエステル;またはホモポリエステルとコポリエステルとの混合物から得られてもよい。
【0084】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、主収縮方向(すなわち、TD)の熱収縮率が60%以上(95℃、10秒、自由状態、温水)であって、形状的に単純なものから屈曲の激しい容器の製作など高熱収縮率を必要とする容器などの製作にも有用に使用することができる。
【0085】
この際、上記コポリエステルは、テレフタル酸モノマーを80モル%以上含むジカルボン酸モノマーと、エチレングリコール以外のモノマーを12〜24モル%含むジオールモノマーとから構成されうる。コポリエステルのうち、エチレングリコールモノマー以外のモノマーは、ポリエステルポリマーの結晶性を低下させることにより収縮率を高める機能をするもので、該当モノマーの比率が上記範囲以内のものが、フィルム製造工程の際に乾燥工程、フィルム加工性、溶融特性および物性を制御する側面で有利でありうる。
【0086】
本発明において、上記コポリエステル自体は、一般に行われているポリエステルの製造方法によって製造することができる。例えば、ジカルボン酸に対してジオールを直接反応させる直接エステル化法や、ジカルボン酸のジメチルエステルにジオールを作用させるエステル交換法などを挙げることができる。
【0087】
本発明の態様によれば、コポリエステルは、ガラス転移温度が67〜77℃であり、固有粘度が0.60〜0.70dL/gである。この際、ガラス転移温度は重合体の製造に使用されたモノマーの組成によって調節でき、固有粘度は重合度によって異なるので、本発明では、このような調節によってガラス転移温度と固有粘度が上記範囲内にあるコポリエステルを使用することができる。
【0088】
一方、2種以上のポリエステル、すなわちポリエステル樹脂の混合物であれば、ポリエステル樹脂混合物の全体ジカルボン酸モノマーの80モル%以上がテレフタル酸であり、ポリエステル混合物の全体ジオールモノマーの14〜24モル%がエチレングリコール以外のモノマーであるものを使用することができる。
【0089】
その一例として、本発明では、ホモポリエステルとしてポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、このようなポリブチレンテレフタレート樹脂とコポリエステルとの混合物を用いてフィルムを製造することができる。この際、コポリエステルの含量は全体ポリエステル樹脂の85〜93重量%であり、ポリブチレンテレフタレートの含量は全体ポリエステル樹脂の7〜15重量%でありうる。
【0090】
コポリエステルの含量が低すぎると、熱収縮率および収縮応力が低くて容器に対するラベルの結束力が低下し、一方、コポリエステルの含量が高すぎると、収縮応力が高くなり、収縮工程中にラベルによる容器の潰れ現象が発生しうる。
【0091】
通常、収縮フィルムの商業的使用の際には、収縮フィルムを溶剤で溶かして付ける方式の接着方式を採用するが、ポリブチレンテレフタレートの含量が低すぎると、溶剤接着力が低下して商業的使用が難しくなる恐れがある。これに対し、ポリブチレンテレフタレートの含量が高すぎると、主収縮方向(すなわち、幅方向(TD))に対する収縮率が低くなり、主収縮方向に対して垂直の方向(すなわち、機械的方向(MD))の機械的物性(強伸度)の低下が発生するおそれがある。通常、フィルムは、商業的使用の際に多くのロール工程を経ることにより機械的方向の機械的物性が要求され、機械的物性が悪ければ、フィルムの切れまたは破断などが発生しうる。
【0092】
ホモポリマーとしてポリブチレンテレフタレートの代わりに、またはこれに加えてポリトリエチレンテレフタレートを使用することもできる。
【0093】
その他に、フィルムの製造において滑り性を改善するために、二酸化ケイ素、二酸化チタン、シリカ粉末、炭酸カルシウムなどの滑剤を添加してもよく、必要に応じて帯電防止剤、老化防止剤、紫外線防止剤、染料などの各種添加剤を添加することもできる。
【0094】
上記特性を有する本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、例えば、下記の製造工程によって製造できる。
【0095】
ポリエステルフィルムを製造するための材料を、通常の乾燥機を用いて乾燥させた後、200〜350℃で押し出す。上記押出のためにT−ダイ押出法またはチューブラー押出法などの公知のいずれの方法でも使用することができる。
【0096】
押し出された生成物を、例えば、正電荷接触法などの方法で急速冷却させて未延伸フィルムを得る。
【0097】
このような未延伸フィルムは、機械的方向に自然進行するローラーなどを経た後、予熱し、幅方向に延伸した後、熱処理を行う。
【0098】
この際、予熱の温度より熱処理の温度が低くなるように行う場合、収縮フィルムに対する残存応力が高くなり、収縮率および収縮速度が高くなる。
【0099】
好ましい一例としては、予熱の温度は80〜100℃であってよく、かつ、熱処理の温度は室温〜95℃の範囲内で、調節できる。この際、延伸温度はポリマー鎖に残存する延伸応力に関連し、収縮工程の際に残存応力の緩和に影響を及ぼすという点で収縮開始温度などと関連があるので、収縮開始温度を低め且つ最大収縮発現温度を低めるためには、予熱処理時の温度を80〜100℃とし、延伸温度を70〜95℃にして行うことできる。
【0100】
好ましくは、予熱以前に機械的方向に自然進行することにより発生する延伸比に加えて0.1〜5%の延伸倍率で更に機械的方向に延伸を行うと、フィルムの機械的方向の物性を改善することができる。これは収縮均一性の側面でも有利でありうる。
【0101】
上記幅方向への延伸は、元来の長さに対して3.0〜5.0倍となるように行われうる。
【0102】
収縮フィルムの延伸比率が低いと、収縮率が低下するおそれがあり、収縮フィルムの延伸比率が高すぎると、破断が生じ、あるいはあまり物性の向上を期待することが難しくて延伸比増加の意味がないので、延伸比は元来の長さに対して約3.0倍〜約5.0倍の範囲内で選定することができる。
【0103】
上記延伸方法としては通常の装置が使用され、ロール延伸、テンター延伸、チューブラー延伸などの公知の方法を適用することができる。
【0104】
こうして得られた本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、主収縮方向のガラス転移温度が90〜100℃であり、固有粘度が0.60〜0.70dL/gであり、ここでのガラス転移温度は動的熱機械分析方法(DMTA)による動的ガラス転移温度である。
【0105】
特に、上記ガラス転移温度と固有粘度を満足するコポリエステル樹脂を原料樹脂として用いて得られたフィルムのガラス転移温度と固有粘度が、このような範囲内たりえる。
【0106】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
本発明で使用された評価法は、下記のとおりである。
(1)固有粘度(IV)
フェノールとテトラクロロエタンとの50/50混合溶媒(20mL)に試料200mgを入れて約110℃で1時間混合物を加熱した後、30℃で測定した。
(2)DMTA法によるガラス転移温度
幅10mm、長さ30mm(主収縮方向)の試料に対して初期荷重2.5Nを与え、流動による試料の変形を防ぐために試料を維持する力としての静的力を2.5Nにして昇温温度2℃/minにて0〜150℃の温度範囲で測定周波数10Hz、流動力2.5%にして動的熱機械分析器(EPLEXOR500、Gabo社)を用いて貯蔵モジュラス(Storage Modulus)E’と損失モジュラス(Loss Modulus)E”を求め、下記式3によって損失タンゼント(Loss tangent)tanδを求める。この際、最大tanδ値に該当する温度を動的ガラス転移温度(Tg)とした。
[式3]


(3)熱収縮率
フィルムを20cm×20cmの四角形に裁断し、95℃±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間熱収縮させた後、フィルムのMD、TDの数値を測定し、下記式4によって熱収縮率を求めた。
[式4]


(4)収縮開始温度、最大収縮発現温度、最大収縮応力
熱収縮応力試験機(KE−2、Kanebo Eng.社)を用いて幅4mm(MD)、長さ50mm(TD)のフィルム試料を初期荷重0.125kg/mmにて固定し、昇温速度2.5℃/secで昇温しながら温度による収縮応力を測定してグラフ化した。
【0107】
このグラフにおいて、初期荷重0.125kg/mmと同一の収縮応力値が最初に出る時点における温度を収縮開始温度Ts、最大収縮応力値が最初に出る時点における温度を最大収縮発現温度TS(max)、このときの応力値を最大収縮応力Smaxとしてそれぞれ定義した。
(5)収縮速度、収縮変形速度、最大収縮変形温度
熱機械分析器(Diamond TMA、Perkin Elmer社製)を用いて幅4mm(MD)、長さ15mm(TD)の規格でフィルム試料を準備し、試料に対して2mN/μMの荷重を与え、昇温速度10℃/minで30〜90℃の範囲における温度変化による主収縮方向(すなわち、TD)の変形率を測定し、70〜85℃の範囲における温度による主収縮方向(すなわち、TD)の長さの変動率を計算して収縮速度を求めた。
【0108】
熱機械分析器によって測定した、温度による主収縮方向の長さ変動を、図2に示したグラフ、すなわち温度による探針の変化率(Probe position)のグラフで示す。
【0109】
これを下記式5を用いて換算すると、各温度における収縮率を計算することができる。
[式5]


例えば、図2のグラフより、探針の変化率(Probe position)が−5.0mmの場合、収縮率は{1−((15mm+(−5mm))/15mm)}×100=33.3%と計算される。ここで、15mmは試料の主収縮方向(すなわち、TD)の長さである。
【0110】
一方、30〜90℃の温度範囲内において、温度変化に応じた主収縮方向(すなわち、TD)の試料の変形率を測定した後、これを微分して収縮変形速度を示すグラフを得て、最大値を収縮変形速度として定義した。
【0111】
また、収縮変形速度を示すグラフにおいて、最大収縮変形速度が現れる温度を測定し、これを最大収縮変形温度とした。
(6)一定の温度下における一定の時間による収縮率変化速度
Testrite MKV Shrinkage−Force Tester(Testrite Ltd製品、最大収縮率測定範囲35.8%、基準試料長さ250mm)を用いて収縮率を評価するが、但し、本機器は糸やコードの収縮率を評価するためのもので、収縮フィルムに対する熱収縮率の評価のためには次のように試料の調製、および結果値に対する補正、換算などの過程が必要である。
具体的には、次のとおりである。
−試料の製作:長さ(主収縮方向)120mm、幅15mm
−試料の固定:試料の長手方向に両端10mmずつを、当該測定温度で熱による変形が発生しないフィルムでそれぞれ結束させ、熱による収縮が発生する試料、すなわち実施例および比較例による試料の長さが100mmとなるようにし、試料を扁平にするために、熱による変形が発生しないフィルムで結束された一端に初期荷重20g/mmを与え、測定機器の正中央部に位置するように測定機器に取り付ける。
【0112】
この際、熱によって収縮が発生する試料の長さを100mmと選定したのは、当該試験機器の最大収縮率の測定範囲を確認した結果、35.8%であり、当該機器の測定可能な長さ変形値は89.5mmであり、これから収縮率による試料の最大長さを計算した結果、最も安定的に収縮率を測定することができたためである。
【0113】
試料の最大長さは収縮率によって異なり、収縮率による最大試料長さを計算すると、次のとおりである。
例えば、上記測定条件で収縮率が70%であるフィルムの場合には、最大試料長さは127.9mm(89.5mm/0.7)であり、収縮率が80%であるフィルムの場合には、最大試料長さは111.9mm(89.5mm/0.8)である。
【0114】
したがって、基準試料長さである250mmにおける上記最大収縮率から推定された測定可能な長さ変形値に基づき、70%以上の高収縮に対する収縮率を測定することが可能な試料の長さが100mmの場合に最も安定的に測定を行うことができる。従って、試料の長さを100mmに設定した。
−測定方法:95℃の条件下で一定の荷重を与えた状態で時間による収縮率を測定器によって測定する。
−結果値に対する補正:測定機器内に設定された試料長さ(250mm)を基準として測定された測定試料の長さ変形値を求め、これを更に測定試料の長さを基準とした値で換算して収縮率を求める。
測定試料の長さ変形率が10%と測定された場合、
測定試料の実際長さ変形値=250mm×0.1=25mm
測定試料の長さ変形率=25mm/100mm×100=25%
【0115】
このように得られた測定試料の長さ変形率を収縮率として定義した。
−結果の分析:測定試料の製作のために熱による変形が発生しないフィルムで結束させることにより発生しうる収縮挙動解釈の混線を防止するために、時間による収縮率を計算するにおいて測定試料の収縮が開始する時点直前の時間を「0」秒とし、これから5秒となる時点までの収縮率を測定機器の値から換算して下記式6による収縮率変化速度を計算した。
[式6]


(7)収縮応力
Testrite MKV Shrinkage−Force Tester(Testrite Ltd)を用いて95℃の温度下で時間による主収縮方向の収縮応力を測定し、これを試料の断面積で割って下記式7によって収縮応力値を求めた。
【0116】
この際、試料の幅は15mmとし、試料を扁平に固定するために、初期荷重は20g/mmを与えた。
[式7]


例)収縮応力測定値:10N(1.02Kg=10/9.8Kg)
試料の断面積:0.75mm(試料が幅15mm、厚さ50μmの場合)
収縮応力(Kg/mm)=1.02/0.75=1.36
(8)収縮均一性の評価
収縮フィルムに図案を印刷し、溶剤を用いて端部を接着させることにより製造されたラベルを容器に被せてスチーム型収縮トンネルを通過させて製造された最終製品(ラベル化容器)のラベル外観不良および印刷潰れによる不良の個数を数えることにより、収縮均一性を評価した。
【0117】
スチームトンネルの長さは1.5mであり、内部を通過する容器のラベルを収縮させることができるように、長さ1.2mの噴射管を上下2つずつ左右に設置し、圧力を0.2barにしてスチームを噴射した。スチーム温度はトンネル入口部分の温度と出口部分の温度をそれぞれ調節することができるように、温度コントローラーおよび加熱器が取り付けられており、入口温度は77℃、出口温度は86℃にそれぞれ設定し、トンネル内のラベルが被せられた容器の滞留時間を5秒にしてラベルを収縮させることにより、最終製品(ラベル化容器)における外観不良および印刷潰れ不良の発生個数を測定して収縮均一性を測定した。
1000個の試料を用意し、正常製品の比率を収縮均一性として定義して、下記式8によってこれを求めた。
[式8]


(9)容器製作による収縮工程特性
収縮フィルムに図案を印刷し、溶剤を用いて端部を接着させて製造されたラベルを容器に被せてスチーム型収縮トンネルを通過させて製造された最終製品(ラベル化容器)のラベル外観不良および印刷潰れによる不良の個数を数えた。
【0118】
この際、スチームトンネルの長さは1.5mであり、内部を通過する容器のラベルを収縮させることができるように長さ1.2mの噴射管を上下2つずつ左右に設置し、圧力を0.2barにしてスチームを噴射した。スチーム温度はトンネル入口部分の温度と出口部分の温度をそれぞれ調節することができるように、温度コントローラーおよび加熱器が取り付けられている。
【0119】
トンネル入口温度は80℃、出口温度は90℃とそれぞれ設定し、トンネル内ラベルが被せられた容器の滞留時間を5秒にしてラベルを収縮させて最終製品(ラベル化容器)における外観不良および印刷潰れ不良の発生個数を測定することにより、高温の収縮均一性(収率A)を測定した。
【0120】
また、トンネル入口温度は75℃、出口温度は84℃とそれぞれ設定し、トンネル内ラベルが被せられた容器の滞留時間を4秒にしてラベルを収縮させることにより、最終製品(ラベル化容器)における外観不良および印刷潰れ不良の発生個数を測定して低温の収縮均一性(収率B)を測定した。
1000個の試料を用意し、正常製品の比率を収縮均一性として定義して、下記式9によってこれを求めた。
[式9]


相対工程効率(R)=(収率B/収率A)×100(%)
【0121】
<実施例1>
二塩基酸成分としてテレフタル酸100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール100モル%とネオペンチルグリコール24モル%を用い、触媒として三酸化アンチモン0.05モル(酸成分に対して)を用いて直接エステル化法によって重縮合した。こうして得られた重合物に平均粒径2.7μmの二酸化珪素粉末500ppmを含有して従来の方法によって乾燥させ、固有粘度0.67dL/g、ガラス転移温度76℃のコポリエステルを製造した。
【0122】
一方、テレフタル酸100モル%および1,4−ブタンジオール100モル%を用い、触媒としてはテトラブチルチタネート0.015重量部を投入してポリブチレンテレフタレート樹脂を得た(固有粘度0.97dL/g、ガラス転移温度30℃)。
【0123】
上記コポリマー90wt%とポリブチレンフタレート10wt%をブレンドして280℃で押出器から押し出し、急速冷却させた後、固形化させて未延伸フィルムを得た。
【0124】
上記未延伸フィルムを、機械的方向に移送されるローラーを経て温度85℃の予熱を経て75℃で幅に対して4.0倍延伸させた後、室温の熱処理を経てフィルムを製造した。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表1に示す。
【0125】
<実施例2>
実施例1と同一の方法によって得た未延伸フィルムを使用した。
上記未延伸フィルムを、機械的方向に自然発生する延伸比が3%の延伸ロールを経る過程において(自然延伸比+0.5%)の延伸比で機械的方向に延伸させた後、実施例1と同一の方法で厚さ50μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。このフィルムの物性値を表1に示す。
【0126】
<実施例3>
実施例1と同一の方法によって得た未延伸フィルムを使用した。
上記未延伸フィルムを、機械的方向に移送されるローラーを経て温度95℃の予熱を経て87℃で幅に対して4.0倍延伸させた以外は、実施例1と同一の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表1に示す。
【0127】
<実施例4>
実施例1と同一の方法によって得た未延伸フィルムを使用した。
上記未延伸フィルムを、機械的方向に自然発生する延伸比が3%の延伸ロールを経る過程において(自然延伸比+4.5%)の延伸比で機械的方向に延伸させた後、実施例3と同一の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表1に示す。
【0128】
<実施例5〜8>
実施例1〜4と同一の方法によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るが、但し、予熱の温度を100℃となるようにした。
【0129】
<実施例9および10>
実施例2および実施例4と同一の方法によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るが、但し、機械的方向の延伸比率を(自然延伸比+1.0%)に調節した。
【0130】
<参照実施例1および2>
実施例2および実施例4と同一の方法によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るが、但し、機械的方向の延伸比率を(自然延伸比+7.0%)に調節した。
【0131】
<比較例1および2>
実施例1および2と同一の方法によって熱収縮性フィルムを製造するが、但し、予熱の温度を102℃とし、幅方向延伸時の温度を96℃とした。
【表1】

【0132】
上記物性測定結果から明らかなように、熱収縮応力試験機を用いて測定した主収縮方向の収縮開始温度が72〜88℃の熱収縮性フィルムは、収縮工程への適用の際に高低温収縮均一性が高くて相対工程効率が高いことが分かる。これにより、収縮工程の低温化および生産速度の向上によってコストよび品質の側面で優れることが分かる。
【0133】
しかも、最大収縮応力発現温度が85〜100℃であるので、収縮工程上の低温化による工程費用の節減が可能である。
【0134】
図1は、熱収縮応力試験機を用いて測定した、実施例1の熱収縮性ポリエステル系フィルムの主収縮方向の温度に対する収縮応力の変化を示すグラフである。

<実施例11>
二塩基酸成分としてテレフタル酸100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール100モル%およびネオペンチルグリコール24モル%を用い、触媒として三酸化アンチモン0.05モル(酸成分に対して)を用いて直接エステル化法によって重縮合した。こうして得られた重合物に平均粒径2.7μmの二酸化珪素粉末500ppmを含有して従来の方法で乾燥させ、固有粘度0.67dL/g、ガラス転移温度76℃のコポリエステルを製造した。
【0135】
一方、テレフタル酸100モル%、1,4−ブタンジオール100モル%を使用し、触媒としてはテトラブチルチタネート0.015重量部を投入してポリブチレンテレフタレート樹脂を得た(固有粘度0.97dL/g、ガラス転移温度30℃)。
【0136】
上記コポリエステル90wt%とポリブチレンテレフタレート10wt%とをブレンドして280℃の押出器から押し出し、急速冷却させた後、固形化させて未延伸フィルムを収得した。
【0137】
連続的に上記未延伸フィルムを、機械的方向に移送されるローラーを経て移送し、温度87℃の予熱を経た後、82℃で幅に対して4.0倍延伸させた後、室温の熱処理を経てフィルムを製造した。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表2に示す。

<実施例12>
実施例11と同一の方法によって得た未延伸フィルムを使用した。
連続的に上記未延伸フィルムを、機械的方向に移送されるローラーを経て移送させる際、自然発生する延伸比に0.4%を加えた延伸比で更に機械的方向に延伸させた後、実施例11と同一の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムは、厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表2に示す。

<実施例13>
実施例11と同一の方法によって得た未延伸フィルムを使用した。
予熱を95℃で実施し、熱処理を87℃で実施した以外は、実施例11と同一の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表2に示す。

<実施例14>
実施例13と同一の方法によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造したが、但し、押し出した未延伸フィルムを、機械的方向に自然発生する延伸比が3%の延伸ロールを経る過程において(自然延伸比+3.4%)の延伸比で機械的方向に延伸させた。
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表2に示す。

<参照実施例3および4>
実施例12および実施例14と同一の方法によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るが、但し、機械的方向の延伸比率を(自然延伸比+7%)に調節した。
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表2に示す。

<比較例3および4>
実施例11および実施例12と同一の方法によって熱収縮性フィルムを得るが、但し、予熱温度を85℃とし、熱処理の温度を95℃とした。
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表2に示す。
【表2】

【0138】
上記物性測定結果、収縮速度が0.5〜3.5%/℃の場合、最終製品の収縮均一性に優れて製品の生産性を向上させることができる。
【0139】
また、収縮変形速度が3.5〜8.5であり、最大収縮変形温度が80〜88℃である場合、収縮均一性に優れることが分かる。
【0140】
図2は、実施例11から得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムを熱機械分析器を用いて温度変化による変形率を測定したグラフを示す。

<実施例15>
二塩基酸成分としてテレフタル酸100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール100モル%とネオペンチルグリコール24モル%を用い、触媒として三酸化アンチモン0.05モル(酸成分に対して)を用いて直接エステル化法によって重縮合した。こうして得られた重合物に平均粒径2.7μmの二酸化珪素粉末500ppmを含有して従来の方法で乾燥させ、固有粘度0.67dL/g、ガラス転移温度76℃のコポリエステルを製造した。
【0141】
一方、テレフタル酸100モル%、1,4−ブタンジオール100モル%、触媒としてのテトラブチルチタネート0.015重量部を重合に付し、ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た(固有粘度0.97dL/g、ガラス転移温度30℃)。
【0142】
上記コポリエステル91wt%とポリブチレンテレフタレート9wt%とをブレンドして280℃の押出器から押し出し、急速冷却させた後、固形化させて未延伸フィルムを収得した。
【0143】
上記未延伸フィルムを、機械的方向に移送されるローラーを経て移送し、温度87℃の予熱を経た後、82℃で幅に対して4.0倍延伸させた後、室温〜60℃の熱処理を経てフィルムを製造した。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表3に示す。
【0144】
<実施例16>
実施例15と同一の方法によって得た未延伸フィルムを使用した。
連続的に、上記未延伸フィルムを、機械的方向に移送されるローラーを経て移送させる際、自然発生する延伸比に0.4%を加えた延伸比で更に機械的方向に延伸させた後、実施例15と同一の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表3に示す。
【0145】
<実施例17>
実施例15と同一の方法によって得た未延伸フィルムを使用した。
予熱未延伸フィルムを95℃で予熱し、87℃で幅に対して4.0倍延伸させた後、熱処理85℃で加熱した以外は、実施例15と同一の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表3に示す。
【0146】
<実施例18>
実施例17と同一の方法によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造したが、但し、押し出した未延伸フィルムを、機械的方向に自然発生する延伸比が3%の延伸ロールを経る過程において(自然延伸比+3%)の延伸比で機械的方向に延伸させた。
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表3に示す。
【0147】
<参照実施例5および6>
実施例16および実施例18と同一の方法によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るが、但し、機械的方向の延伸比率を(自然延伸比+7%)に調節した。
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表3に示す。
【0148】
<比較例5および6>
実施例15および実施例16と同一の方法によって熱収縮性フィルムを得るが、但し、予熱温度を90℃とし、熱処理の温度を96℃とした。
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。このフィルムの物性値を表3に示す。
【表3】

【0149】
上記物性測定結果、一定の温度下で一定の時間経過による主収縮方向の収縮率変化速度が4.0〜10.0%/secの場合、収縮均一性に優れることが分かる。
【0150】
また、主収縮方向の収縮応力が0.6〜1.3kg/mmの場合、収縮均一性に優れることが分かる。
【0151】
図3は、実施例15から得られた熱収縮性ポリエステル系フィルムをTestrite MKW Shrinkage−Force Tester(Testirte Ltd.)によって分析した結果グラフ(時間による収縮率の変化)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温および所定の初期荷重(0.125Kg/mm)下で固定され、所定の昇温速度(2.5℃/sec)での加熱により収縮させられたフィルムの応力を測定することによって得られる、温度に対する収縮応力のグラフにおいて、初期荷重と同じ値の収縮応力を示す最初の温度として定義される、主収縮方向の収縮開始温度が、72〜88℃である、熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
下記式1によって表される主収縮方向としての幅方向における収縮速度が0.5〜3.5%/℃である、熱収縮性ポリエステル系フィルム。
[式1]
収縮速度=ΔL/ΔT
(上記式は、70〜85℃の温度範囲内で、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化をリニア可変作動トランスによって測定することにより得られるものであり、ここで、ΔTは温度変化値であり、ΔLは主収縮方向としての幅方向における変形率である。)
【請求項3】
所定の長手方向の熱収縮応力を、熱収縮応力試験機器によって測定したとき、95℃で5秒以内の時間経過に伴う主収縮方向の収縮率変化速度が4.0〜10.0%/secである、熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
下記式1によって決定される主収縮方向としての幅方向における収縮速度が0.5〜3.5%/℃であることを特徴とする、請求項1または3に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
[式1]
収縮速度=ΔL/ΔT
(上記式は、70〜85℃の温度範囲内で、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化をリニア可変作動トランスによって測定することにより得られるものであり、ここで、ΔTは温度変化値であり、ΔLは、主収縮方向としての幅方向における変形率である。)
【請求項5】
所定の長手方向の熱収縮応力を、熱収縮応力試験機器によって測定したとき、95℃で5秒以内の時間経過に伴う主収縮方向の収縮率変化速度が4.0〜10.0%/secであることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
室温および所定の初期荷重(0.125Kg/mm)下で固定され、所定の昇温速度(2.5℃/sec)での加熱によって収縮させられたフィルムの応力を測定することによって得られる、温度に対する収縮応力のグラフにおいて、最大の収縮応力値として定義される、主収縮方向の最大収縮応力が0.65〜1.30kg/mmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項7】
動的熱機械分析方法によって測定される主収縮方向の動的ガラス転移温度が90〜100℃であり、固有粘度が0.60〜0.70dL/gであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項8】
下記式2によって表される主収縮方向としての幅方向における収縮変形速度が3.5〜8.5であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
[式2]
収縮変形速度=dL/dT
(上記値は、リニア可変作動トランスを用いて測定される、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化を示す上記式1によって表される、30〜90℃の温度範囲内の温度変化に応じた主収縮方向としての幅方向における変形率を微分した値であり、測定温度範囲内の最大変形速度値を示す。)
【請求項9】
主収縮方向としての幅方向における収縮変形速度が最大値が現れる温度範囲が80〜88℃であることを特徴とする、請求項8に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項10】
主収縮方向(TD)の熱収縮率が60%(95℃、10秒、自由状態)以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項11】
95℃での主収縮方向の収縮応力が0.6〜1.3kg/mmであることを特徴とする、請求項3に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項12】
95℃での主収縮方向の収縮応力が0.6〜1.3kg/mmであることを特徴とする、請求項5に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項13】
熱収縮性ポリエステル系フィルムは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびジフェニルエーテルジカルボン酸から選択される1種以上を含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールから選択される1種以上を含むジオール成分とから得られるコポリエステルから選ばれる1種以上のコポリエステル;またはホモポリエステルとコポリエステルとの混合物を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項14】
上記コポリエステルは、テレフタル酸モノマー約80モル%以上を含むジカルボン酸モノマー、およびエチレングリコール以外のモノマー約14〜24モル%を含むジオールモノマーを含有することを特徴とする、請求項13に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項15】
上記コポリエステルは、ガラス転移温度が67〜77℃であり、固有粘度が0.60〜0.70dL/gであることを特徴とする、請求項14に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項16】
上記ホモポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリトリエチレンテレフタレートを含むことを特徴とする、請求項13に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項17】
コポリエステルは、ポリエステル全量に対して85〜93重量%の量で用いられることを特徴とする、請求項13に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項18】
上記ポリエステルを、200〜350℃での押出、80〜100℃での予熱、およびその後の70〜95℃での幅方向における延伸に付すことによって製造されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項19】
上記押し出されたポリエステルを、機械的方向に自然発生する自然延伸比と付加的な0.1〜5%とを含む延伸比で機械的方向に更に延伸することを特徴とする、請求項18に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項20】
上記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記ポリエステルを、押出、予熱、幅方向における延伸、およびその後の熱処理に付すことによって製造され、上記熱処理の温度は、上記予熱の温度より低く設定されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項21】
上記予熱は80〜100℃で実施され、上記熱処理は室温〜95℃の温度範囲内で実施されることを特徴とする、請求項20に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項22】
ポリエステルを押出および延伸して熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、
ポリエステルを200〜350℃で押し出して、押し出されたポリエステルシートを得る段階と、
上記押し出されたポリエステルシートを80〜100℃で予熱する段階と、
上記ポリエステルシートを70〜95℃で幅方向に延伸する段階とを含み、
室温および所定の初期荷重(0.125Kg/mm)下で固定され、所定の昇温速度(2.5℃/sec)での加熱により収縮させられたフィルムの応力を測定して得られる、温度に対する収縮応力のグラフにおいて、初期荷重と同じ値の収縮応力を示す最初の温度として定義される、主収縮方向の収縮開始温度が72〜88℃であることを特徴とする、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項23】
ポリエステルを押出および延伸して熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、
ポリエステルを200〜350℃で押し出して、押し出されたポリエステルシートを得る段階と、
上記押し出されたシートを予熱する段階と、
上記ポリエステルシートを延伸する段階と、
上記ポリエステルシートを熱処理する段階とを含み、
熱処理の温度を予熱の温度より低く設定し、下記式1によって表される主収縮方向としての幅方向における収縮速度が0.5〜3.5%/℃であることを特徴とする、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
[式1]
収縮速度=ΔL/ΔT
(上記式は、70〜85℃の温度範囲内で、温度変化に応じた試料の膨張および収縮による寸法変化をリニア可変作動トランス(LVDT)によって測定することにより得られるものであり、ΔTは温度変化値であり、ΔLは、主収縮方向としての幅方向における変形率でである。)
【請求項24】
ポリエステルを押出および延伸して熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、
ポリエステルを200〜350℃で押し出して、押し出されたポリエステルシートを得る段階と、
上記押し出されたポリエステルシートを予熱する段階と、
上記ポリエステルシートを延伸する段階と、
上記ポリエステルシートを熱処理する段階とを含み、
熱処理の温度を予熱の温度より低く設定し、所定の長手方向の熱収縮応力を、熱収縮応力試験機器によって測定したとき、95℃で5秒以内の時間経過に伴う主収縮方向の収縮率変化速度が4.0〜10.0%/secであることを特徴とする、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項25】
ポリエステルを押し出す段階の後に、機械的方向に自然発生する自然延伸比と付加的な0.1〜5%とを含む延伸比で機械的方向に延伸する段階を更に含むことを特徴とする、請求項22〜24のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項26】
予熱は80〜100℃で実施され、熱処理は室温〜95℃の範囲内の温度で実施されることを特徴とする、請求項23または24に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−503339(P2011−503339A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534885(P2010−534885)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006809
【国際公開番号】WO2009/066928
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(507190961)コーロン インダストリーズ,インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】