説明

熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルム

【課題】特に化粧品や芳香剤容器等の複雑な形状をした容器の外周に装着して収縮させるのに好適な熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムであって、かつ、溶断シール性に優れたを有する熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムを提供すること。
【解決手段】主たる繰り返し単位が一般式 −O−CHR−CO−(Rは水素または、炭素数1〜3のアルキル基)であり、脂肪族ポリエステルを主成分としたフィルムであって、溶断シール強度を特定範囲とすることによって、目的が達成できることを見出し、これに基づき本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムに関し、特に化粧品や芳香剤容器等の複雑な形状をした容器の外周に装着して収縮させる際、シワ、収縮斑、歪み等の発生が極めて少なく、さらに溶断シール性に優れた熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱収縮性フィルムはポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル等からなるフィルムが主として用いられている。これらのフィルムは、使用後回収され、焼却廃棄されるか或いは土中に埋められるかのいずれかの手段により処理されている。しかし、その回収には多大の労力を要する故に、現実には回収しきれずに放置され環境公害等の様々な問題を引き起こしていることは周知の通りである。また、焼却する場合、火力が強すぎて炉の損傷が激しいうえに大量の燃料を必要とするためにコスト高となる。中でも、ポリ塩化ビニルは、近年、廃棄時に焼却する際の塩素系ガス発生が問題となり、又ポリスチレンについては印刷が困難である等の問題があり、最近は熱収縮性ポリエステル系フィルムの利用が注目を集めている。一方、土中に埋められる場合は、廃棄物が生分解性を有しておらず、土中に半永久的に残存してしまうという問題点があった。このような状況から、良好な生分解性を有する各種フィルムを求める動きが高まっている。
【0003】
そこで、近年、環境保護の観点から、生分解性プラスチックに関する研究、開発が活発に行われている。生分解性プラスチックは、土中や水中で加水分解や生分解により除々に崩壊・分解が進行し、最終的には微生物の作用により無害な分解物になる。生分解性プラスチックとしては、ポリ乳酸系樹脂、脂肪族ポリエステル、セルロースエステル化合物、デンプン変性体、及び、これらのブレンド体等があり、これらは既に実用化され始めている。
【0004】
特にポリ乳酸系樹脂は、出発原料が植物に由来するため石化資源の枯渇から脱却できる理由から、大きな注目を集めている。(例えば、特許文献1等参照)。ポリ乳酸フィルムは土壌中において自然に加水分解されたのち微生物によって無害な分解物となることを利用して、従来より種々開発されてきた。
【特許文献1】特開平5−287056号公報
【0005】
具体的には例えば、ポリ乳酸フィルムは、医薬用の成型品として(例えば特許文献2、特許文献3等参照)、また、医薬用途以外の使い捨て用途の生分解性汎用材料の基本原料として応用が種々検討されている。
【特許文献2】特公昭41−2734号公報
【特許文献3】特公昭63−68155号公報
【0006】
その中でも、ポリ乳酸2軸延伸フィルムは透明性、生分解性、汎用フィルムと同等の優れた機械的性質を有することから、一般包装材をはじめ幅広い用途に応用が期待されている(例えば、特許文献4等参照)。
【特許文献4】特開2000−103879号公報
【0007】
また、前述のようにポリ塩化ビニル、ポリスチレンの種々の問題から最近は熱収縮性ポリエステル系フィルムの利用が注目を集めている。一方向のみに収縮を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムは、特に化粧品や芳香剤容器等の複雑な形状をした容器の外周に装着して収縮させた場合、シワ、収縮斑が発生し易く、これらを満足する熱収縮性ポリエステル系フィルムが開示されている(例えば、特許文献5等参照)。
【特許文献5】特開平11−277625号公報
【0008】
このような分野において使用されるフィルムの材料には、2次加工工程や実用面から、柔軟性、溶断シール強度、耐熱性といった特性が要求される。しかしながら、ポリ乳酸フィルムは、硬すぎたり、溶断シール強度が低すぎるといった問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記問題点を解決するものであり、その目的とするところは、熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムに関し、特に化粧品や芳香剤容器等の複雑な形状をした容器の外周に装着して収縮させる際、シワ、収縮斑、歪み等の発生が極めて少なく、さらに溶断シール性に優れた熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記従来技術の問題点を解消すべく鋭意研究した結果、主たる繰り返し単位が一般式 −O−CHR−CO−(Rは水素または、炭素数1〜3のアルキル基)であり、脂肪族ポリエステルを主成分としたフィルムであって、溶断シール強度を特定範囲とすることによって、目的が達成できることを見出し、これに基づき本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、主たる繰り返し単位が一般式 −O−CHR−CO−(Rは水素または、炭素数1〜3のアルキル基)であり、脂肪族ポリエステルを主成分からなるフィルムであって、溶断シール強度が10N/15mm以上であり、かつ温湯収縮率が主収縮方向において処理温度95℃・処理時間10秒で30%以上であり、主収縮方向と直交する方向において10%以上であることを特徴とする熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムに係るものである。
【0012】
この場合において、1,3−ジオキソランで溶剤接着可能なことが好適である。
【0013】
さらにまた、この場合において、前記の溶剤接着強度が4N/15mm以上であることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムは、特に化粧品や芳香剤容器等の複雑な形状をした容器の外周に装着して収縮させる際、シワ、収縮斑、歪み等の発生が極めて少なく、さらに実用的な溶断シール強度を有する。よって、本発明のフィルムは化粧品、芳香剤容器等の複雑な形状をした容器を始めとする各種被覆ラベル等に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の用いられる脂肪族ポリエステルとは、主たる繰り返し単位が一般式−O−CHR−CO−(Rは水素または、炭素数1〜3のアルキル基)であるポリエステルをいう。
【0016】
ここで、脂肪族ポリエステルの繰り返し単位は、すべて上記一般式で表されることが好ましいが、必要に応じて、脂肪族ポリエステルとしての性能を損なわない範囲で、上記一般式で表される繰り返し単位以外の単位を含んでも良い。具体的には、例えば、分子中の繰り返し単位のうちの70モル%以上が上記一般式で表される繰り返し単位であることが好ましく、より好ましくは、80モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0017】
ただし、脂肪族ポリエステル中には、通常、芳香族成分は含まれない。必要に応じて、脂肪族ポリエステルとしての性能を損なわない範囲で、芳香族成分を採用しても良いが、その場合、芳香族構造を含む繰り返し単位の比率は、分子中の繰り返し単位のうち10モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以下であり、さらに好ましくは3モル%以下である。
【0018】
脂肪族ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(2−オキシ酪酸)等が挙げられるが、これらに限定されない。この中でも、ポリ乳酸が性能及び価格の点で最も好ましい。また、脂肪族ポリエステルは単独重合体であってもよく、上記一般式から選択される複数種の繰り返し成分が共重合された共重合体であってもよい。さらに脂肪族ポリエステルは、単一のポリマーであってもよく、または複数種の脂肪族ポリエステルの混合物であってもよい。
【0019】
脂肪族ポリエステルの構成炭素原子中に不斉炭素が存在する場合、L−体、DL−体、D−体といった光学異性体が存在し得るが、それらのいずれも採用でき、また、それらの異性体の混合物も採用できる。
【0020】
さらに、脂肪族ポリエステルには、発明の効果を阻害しない範囲で、他の高分子材料が混合されても構わない。他の高分子材料が混合される場合、好ましくは、脂肪族ポリエステルは、脂肪族ポリエステルと他の高分子材料との総重量のうちの70重量%以上であり、より好ましくは、90重量%であり、さらに好ましくは、95重量%以上である。
【0021】
本発明で使用する脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、好ましくは、5000〜50万である。より好ましくは、1万〜50万である。さらに好ましくは4万〜30万であり、特に好ましくは5万〜30万である。重量平均分子量が小さすぎる場合には、得られるフィルムの物性が低下し易く、且つ、生分解速度が速すぎるので傾向があるので好ましくない。また、フィルム製造時の製膜機からの押し出し性、2軸延伸機での延伸性を十分確保するためには重量平均分子量は1万以上であることが好ましい。一方、重量平均分子量が高すぎる場合には、脂肪族ポリエステルの溶融押し出しが困難になると言う問題が生じ易い。
【0022】
上記脂肪族ポリエステルには、公知の添加剤を必要に応じて含有させることができる。特に本発明の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムは、ポリ乳酸系樹脂95〜80重量%と、可塑剤5〜20重量%とを合計で100重量%となるように配合することが好ましい。可塑剤の量が5重量%より少ない場合には、ポリ乳酸樹脂の軟質化が進まずにフィルム伸びが得られない。一方、20重量%より多い場合には、フィルム成形する際の溶融押し出し時に粘度が下がり過ぎたり、耐熱性が得られないと言う問題が生じ、また、溶断シール強度を低下させる。
【0023】
可塑剤としては、相溶性や生分解性の観点から、グルセリンアルキレート、ジグリセリンテトラアルキレート、エチレングリコールアルキレート、脂肪酸モノ(ジ又はトリ)カルボン酸アルキルエステル、芳香族ジカルボン酸アルキルエステル、天然油脂及びそれらの誘導体の中から少なくとも1種類を選択して混合することが好ましい。特に不均化ロジンエステル(例えば、荒川化学工業株式会社製 商品名:ラクトサイザーGP−2001)やジグリセリンテトラアセテート(例えば、理研ビタミン株式会社製 商品名:リケマールPL−710)が相溶性等の特性から特に好ましい。
【0024】
しかしながら、上記のように好ましい可塑剤であっても、フィルム成形後の表面及び裏面からブリードアウトしてべとつきが発生する場合がある。特にフィルムの柔軟性を向上させようと可塑剤を多く含有させると、ガラス転移温度が室温以下になり、フィルム表面がべとつき粘着する。これを回避するために、本発明の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムは、中間層(B層)と表裏面層(A層)を有する2種3層構成であることが望ましい。この場合、中間層には比較的多い量の可塑剤を配合した層とし、表裏面層は可塑剤が配合されていないか、あるいは低い量の可塑剤を配合した層とする。具体的に表裏面層は、ポリ乳酸樹脂90〜100重量%と可塑剤0〜10重量%とを合計で100重量%となるように配合することが好ましい。可塑剤の量が10重量%より多い場合には、表裏面にブリードアウトして、べとつき粘着するため好ましくない。
【0025】
A層とB層の厚み比率はA/B/A=25/50/25から10/80/10が好ましい。B層の厚み比率を50%未満では、ポリ乳酸樹脂の軟質化が進まずにフィルム伸びが得られなく好ましくない。また、B層の厚み比率が80%を超えると溶断シール強度の低下を起こすので好ましくない。
【0026】
本発明において、フィルムのハンドリング性つまり巻き取り性を改善するためには、脂肪族ポリエステルに対し不活性な粒子である、無機粒子、有機塩粒子または耐熱性高分子粒子を脂肪族ポリエステル中に含有させ、フィルム表裏面に適切な表面凸凹を付与することが好ましい。特に良好な巻き取り性を維持しながら、透明性に優れたフィルムを得るためには、脂肪族ポリエステルと屈折率の近い粒子であるシリカを用いることが好ましく、なかでも1次粒子が凝集してできた凝集体のシリカ粒子が特に好ましい。
【0027】
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウム、または、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、もしくはマグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。耐熱性高分子の例としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸などのビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、架橋ポリスチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル樹脂などの架橋高分子粒子、およびシリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の耐熱性有機粒子が挙げられる。
また、フィルムの透明性と巻き取り性を両立させるには、2種以上の滑剤粒子を併用することも好ましい。
【0028】
上記滑材粒子の脂肪族ポリエステルへの添加方法は、特に限定されず、公知の任意の方法が可能である。具体的に、例えば、脂肪族ポリエステルとしてポリ乳酸を使用する場合であれば、ラクチドを重合させる前に溶融したラクチドに滑剤粒子を分散させる方法、及びラクチドの重合反応中に滑剤を分散させる方法などがある。
【0029】
また、本発明フィルムは、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の添加剤を含有するものであっても良い。
【0030】
本発明のフィルムは、溶断シール強度が10N/15mm巾以上であることが好ましく、より好ましくは12N/15mm巾以上である。溶断シール強度が10N/15mm巾未満の場合、シール加工を施した後に収縮包装させる際にシール部が破け易いばかりでなく、シール加工時にヒゲ状物の発生や溶断刃へのフィルム付着等が起こり易く、著しく商品価値の低い熱収縮性ポリエステル系フィルムになる。前記溶断シール強度は前述の原料処方とフィルム積層構成により達成できる。
【0031】
本発明のフィルムの主収縮方向に温湯95℃、処理時間10秒の収縮率が30〜70%であり、好ましくは35〜70%、より好ましくは40〜65%である。収縮率が35%未満では容器に密着せず、収縮不足が発生する。一方、70%を越えると収縮率が大きいために、収縮トンネル通過中に飛び上がりや図柄の歪みが発生する場合があるので、いずれも好ましくない。ここで、主収縮方向とは、収縮率の大きい方向を意味する。
【0032】
また、主収縮方向に直角方向の収縮率が10%以上であり、好ましくは12%以上である。収縮率が10%未満では収縮時に生じたラベルの横シワが消えにくくなる傾向にあり、一方50%を超えるとラベルの縦収縮が大きくなり、図柄の歪みが大きくなるばかりか、使用するフィルム量が多くなり経済的に問題が生ずるので、いずれも好ましくない。主収縮方向に直角方向の収縮率は、15〜40%がより好ましい。
【0033】
本発明のフィルムは、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、フェノール等のフェノール類、テトラヒドロフラン等のフラン類、1,3−ジオキソラン等のオキソラン類等の有機溶剤による溶剤接着性を有することが好ましい。特に、安全性の面からすれば、1,3−ジオキソランによる溶剤接着性を有することがより好ましい。溶剤接着強度は、4N/15mm巾以上であることが好ましい。4N/15mm巾未満では、ラベルを容器に収縮させる際に接合部が剥がれ、好ましくない。
【0034】
以下、本発明のフィルムの製造方法を具体的に説明する。
【0035】
滑剤として無機粒子等を必要に応じて適量含有する脂肪族ポリエステルおよび可塑剤をあらかじめ含有する脂肪族ポリエステルを通常のホッパードライヤー、パドルドライヤー、真空乾燥機等を用いて乾燥した後、150〜200℃の温度で押出しを行う。押出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の方法を使用しても構わない。
【0036】
押出し後、急冷して未延伸フィルムを得るが、Tダイ法の場合、急冷時にいわゆる静電印加密着法を用いることにより、厚み斑の少ないフィルムが得られ好ましい。
得られた未延伸フィルムを、最終的に得られるフィルムが本発明の構成要件を満たすように、1軸延伸または2軸延伸する。
【0037】
延伸方法としては、ロール縦1軸のみに延伸したり、テンターで横1軸にのみ延伸する方法の外、公知の2軸延伸に際し縦または横のいずれか一方向に強く延伸し、他方を極力小さく延伸することも可能であり、必要に応じて再延伸を施してもよい
【0038】
本発明のフィルムは、縦方向(主収縮方向と直交する方向)と横方向(主収縮方向)の2方向に延伸し、必要に応じて主収縮方向と直交する方向に延伸し、次いで熱処理を行う。
【0039】
熱処理は通常、緊張固定下、実施されるが、同時に20%以下の弛緩または幅出しを行うことも可能である。熱処理方法としては加熱ロールに接触させる方法やテンター内でクリップに把持して行う方法等の既存の方法を行うことも可能である。
【0040】
前記延伸工程中、延伸前または延伸後にフィルムの片面または両面にコロナ処理を施し、フィルムの印刷層および/または接着剤層に対する接着剤層等に対する接着性を向上させることも可能である。
【0041】
また、上記延伸工程中、延伸前または延伸後にフィルムの片面または両面に塗布を施し、フィルムの接着性、離型性、帯電防止性、易滑性、遮光性等を向上させることも可能である。
【0042】
本発明の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムの厚みは特に限定するものではないが、ラベル用熱収縮性フィルムとして好ましくは5〜200μm、さらに好ましくは10〜60μmの範囲である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例にならって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定法は以下の通りである。
【0044】
(1)曇度(ヘイズ)
日本電飾工業(株)製NDH−2000Tを用い、JIS K 7136に準じ測定した。
【0045】
(2)溶断シール強度
共栄印刷機械材料社製の自動製袋機械(型式:RP500)を用い、刃角70度の溶断刃を240℃に加熱し製袋速度100袋/分で製袋した。該製袋品の溶断シール部を巾15mmで切り出し、東洋精機社製のテンシロン(型式:UTL−4L)を用いてチャック間を50mm、引張速度200mm/min.測定した剥離強度(n=10)の平均値を溶断シール強度とした。
【0046】
(3)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、95±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬処理して熱収縮させた後、直ちに25±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、その後フィルムの縦及び横方向の寸法を測定し、下式に従い熱収縮率を求めた。該収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。

熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)
【0047】
(4)収縮仕上がり性
協和電機社製のユニバーサルシュリンカー(型式:K2000)を用い、市販のラミネートチューブ(資生堂社製リバイタルリンス)に装着し、通過時間15秒、1、2ゾーン温度160、180℃で仕上り性をテストした(測定数=10)。
評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。

シワ、飛び上がり、収縮不足の何れも発生なし : ○
シワ、飛び上がり、または収縮不足が発生 : ×
【0048】
(5)溶剤接着性
1、3−ジオキソランを用いてフィルムをチューブ状に接合加工し、該チューブ状体を加工時の流れ方向と直交方向に15mm幅に切断してサンプルを取り、東洋精機社製のテンシロン(型式:UTL−4L)を用いてチャック間を20mmで引っ張り剥離し、剥離抵抗力を測定した。測定値が4N以上であれば、「○」とした。
【0049】
実施例、比較例に用いたポリエステルは以下の通りである。
マスターバッチA:スリップ剤添加 三井化学株式会社製 「LX070」
マスターバッチB:アンチブロッキング剤添加 三井化学株式会社製 「LX071」
マスターバッチC:レイシア H−440 80重量%とラクトサイザーGP−2001を20重量%を配合した可塑剤練り込み原料 荒川化学工業株式会社製「MB−440R−20」
マスターバッチD:レイシア H−440 80重量%とリケマールPL−710 20重量%を配合した可塑剤練り込み原料 理研ビタミン株式会社製 「リケマスター XPR−042−1」
マスターバッチE:レイシア H−440 80重量%と帯電防止剤(非イオン系及びアニオン系界面活性剤) 20重量%を配合した練り込み原料
理研ビタミン株式会社製 「リケマスター GSR−350」
ポリ乳酸A:三井化学株式会社製 「レイシア H−280」
ポリ乳酸B:三井化学株式会社製 「レイシア H−440」
【0050】
(実施例1)
表1に示すように、A層の原料として、マスターバッチDを50重量%、マスターバッチEを10重量%、ポリ乳酸Aを20重量%、ポリ乳酸Bを20重量%混合したポリエステル組成物を、B層の原料として、マスターバッチAを10重量%、マスターバッチBを3重量%、ポリ乳酸Aを43重量%、ポリ乳酸Bを44重量%をそれぞれ別々の押出機に投入、混合、溶融したものをフィードブロックで接合し、200℃でTダイから延伸後のA/B/Aの厚み比率が2.5μm/20μm/2.5μmとなるように積層しながら溶融押し出し、チルロールで急冷して未延伸フィルムを得た。
該未延伸フィルムを、ロール式縦延伸機(ロール温度50℃)で1.2倍に縦延伸した後、テンターでフィルム温度55℃で横方向に4.0倍延伸し、フィルム温度83℃で熱処理をし、厚み25μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0051】
(実施例2〜3及び比較例1〜2)
表1に示すように、マスターバッチ、ポリ乳酸配合割合、製膜条件を変えたこと以外は、実施例1と同様にして厚み25μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを得た。
【0052】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られたフィルムの評価結果を表2に合わせて示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られたフィルムの評価結果を表2に合わせて示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2から明らかなように、実施例1〜3で得られた熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムは、いずれも複雑な形状の容器を被覆するのに好適な熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムであって、かつ、溶断シール性に優れるものであった。
【0057】
本発明の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムは、高品質で実用性が高く、特に紙代替の包装収縮ラベル用として好適である。
【0058】
一方、比較例1で得られた熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムは、溶断シール強度を有するものの複雑な形状の容器を被覆する際の収縮仕上り性が劣っており、比較例2で得られた熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムは、溶断シール強度が劣っていた。このように比較例の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムは、品質が劣り、実用性の低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、複雑な形状をした容器の外周に装着して収縮させる際、シワ、収縮斑、歪み等の発生が極めて少なく、さらに溶断シール性に優れた熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムが得られる。従って、オーバーラップ用、特に商品価値の高い被覆用の熱収縮性ポリエステル系フィルムとして極めて有用である。収縮包装等の用途に好適に用いられることができ、工業上非常に有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる繰り返し単位が一般式 −O−CHR−CO−(Rは水素または、炭素数1〜3のアルキル基)であり、脂肪族ポリエステルを主成分としたフィルムであって、溶断シール強度が10N/15mm巾以上であることを特徴とする熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
請求項1の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムであって、温湯収縮率が主収縮方向において処理温度95℃・処理時間10秒で30〜70%であり、主収縮方向と直交する方向において10%以上であることを特徴とする熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムであって、グルセリンアルキレート、ジグリセリンテトラアルキレート、エチレングリコールアルキレート、脂肪酸モノ(ジ又はトリ)カルボン酸アルキルエステル、芳香族ジカルボン酸アルキルエステル、天然油脂及びそれらの誘導体の中から選択される可塑剤成分を少なくとも1種類以上含有することを特徴とする熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムであって、中間層と表裏面層を有する3層以上の積層構成であり、少なくとも該中間層に可塑剤成分を含有することを特徴とする熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルムであって、1,3−ジオキソランで溶剤接着可能なことを特徴とする熱収縮性脂肪族ポリエステル系フィルム。

【公開番号】特開2006−182929(P2006−182929A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378729(P2004−378729)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】