説明

熱可塑性エラストマー組成物およびその製造方法

【課題】乾燥による流動性低下が抑制された熱可塑性エラストマー組成物を提供すること。
【解決手段】下記成分(A)〜(E)を含む組成物を、動的熱処理することにより得られる熱可塑性エラストマー組成物(成分(A)〜(C)の含有量は成分(A)〜(C)の合計量100重量部を基準とし、成分(D)〜(E)の含有量は成分(A)〜(C)の合計量100重量部を基準とする)。
成分(A):100℃でのムーニー粘度(ML1+4100℃)が120〜350であるエチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム 10〜60重量部
成分(B):プロピレンに基づく単量体単位の含量が51〜100重量%であるポリプロピレン系樹脂 5〜50重量部
成分(C):鉱物油 0〜70重量部
成分(D):アルキルフェノール樹脂 0.5〜5重量部
成分(E):エチレンに基づく単量体単位の含量が51〜95重量%であり、密度が0.85〜0.91g/cmであるエチレン−α−オレフィン共重合体 1〜20重量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系樹脂とゴムとを動的熱処理することで得られる熱可塑性エラストマー組成物の製造において、架橋剤としてアルキルフェノール樹脂を、架橋促進剤として塩化スズを併用することが知られている(特許文献1)。かかる熱可塑性エラストマーは、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有し、工程合理化やリサイクル性などの観点から注目され、自動車部品、家電部品、医療用機器部品、電線、などの分野で広範囲に使用されている。該組成物は吸湿性を有しており、加工前に乾燥して用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−63851公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加工前に組成物を乾燥すると、乾燥工程前後で当該熱可塑性エラストマー組成物の流動性が低下する問題があった。本発明が解決しようとする課題は、乾燥による流動性低下が抑制された熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記成分(A)〜(E)を含む組成物を、動的熱処理することにより得られる熱可塑性エラストマー組成物(成分(A)〜(C)の含有量は成分(A)〜(C)の合計量100重量部を基準とし、成分(D)〜(E)の含有量は成分(A)〜(C)の合計量100重量部を基準とする)にかかるものである。
成分(A):100℃でのムーニー粘度(ML1+4100℃)が120〜350であるエチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム 10〜60重量部
成分(B):プロピレンに基づく単量体単位の含量が51〜100重量%であるポリプロピレン系樹脂 5〜50重量部
成分(C):鉱物油 0〜70重量部
成分(D):アルキルフェノール樹脂 0.5〜5重量部
成分(E):エチレンに基づく単量体単位の含量が51〜95重量%であり、密度が0.85〜0.91g/cmであるエチレン−α−オレフィン共重合体 1〜20重量部
【発明の効果】
【0006】
本発明により、乾燥工程に伴う流動性の低下が抑制された熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。成分(A)〜(D)を混合し、動的熱処理を施した後に、成分(E)を添加し溶融混練することにより、乾燥による流動性低下がさらに抑制されたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1〜実施例4と比較例1の流動安定性試験の結果を示す。
【図2】実施例5と実施例6、比較例1の流動安定性試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いられる成分(A)エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムは、エチレンに基づく単量体単位(エチレン単位)とプロピレンに基づく単量体単位(プロピレン単位)、非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)とを有し、JIS K-6253のA硬度が85以下の共重合体である。
エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムの非共役ジエン単位としてはジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ジシクロオクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンのような炭素原子数5〜15の非共役ジエンを例示することができ、これらは1種でもよく、2種以上であってもよい。入手容易性の観点から、好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
【0009】
エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムのエチレンに基づく単量体単位の含有量は、通常30〜85重量%であり、好ましくは40〜80重量%であり、プロピレンに基づく単量体単位の含有量は、通常5〜70重量%であり、好ましくは10〜55重量%であり、非共役ジエンに基づく単量体単位の含有量は、通常0〜30重量%であり、好ましくは0〜20重量%である(これら単位の合計を100重量%とする)。
【0010】
エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムとして、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン共重合体ゴム、およびエチレン−プロピレン−5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体ゴムを例示することができる。これらは1種で用いられてもよく、2種以上組み合わせ用いられてもよい。中でも、エチレンに基づく単量体単位の含有量が40〜80重量%であり、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が15〜60重量%であり、5−エチリデン−2−ノルボルネンに基づく単量体単位の含有量が0〜20重量%であるエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴムが好ましい。
【0011】
エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4100℃)は、成形体の機械的強度を高める観点から、120以上であり、好ましくは170以上、より好ましくは200以上である。また、成形体の外観を高める観点から、350以下であり、好ましくは300以下である。なお、該ムーニー粘度(ML1+4100℃)は、JIS K6300に従って測定される。また、鉱物油が予め配合された油展エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムのエチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムの粘度(ML)は下記式で算出した。

ML:エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムのムーニー粘度
ML:油展エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムのムーニー粘度
ΔPHR:エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム100重量部当たりの油展量
【0012】
エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムの135℃テトラリン中で測定した極限粘度は、成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは0.5Dl/g以上であり、より好ましくは1Dl/g以上である。また、成形体の外観を高める観点から、好ましくは8Dl/g以下であり、より好ましくは6Dl/g以下である。
【0013】
エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムは公知の方法で製造することができる。
【0014】
本発明に用いられる成分(B)ポリプロピレン系樹脂は公知の重合体であり、公知の重合方法によって重合される。本発明に用いられるプロピレン系樹脂は、プロピレンに基づく単量体単位(プロピレン単位)を51〜100重量%、好ましくは80〜100重量%含有する重合体である。ただし、重合体を100重量%とする。ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン)からなるコモノマー群から選ばれる少なくとも1種のコモノマーとプロピレンとの共重合体をあげることができる。該共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体であってもよい。該共重合体として、より具体的には、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体を例示することができる。ポリプロピレン系樹脂として好ましくは、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体である。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂の立体構造として、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造、およびこれら両構造が混合した構造を例示することができる。好ましくは、主たる構造がアイソタクチック構造であることが好ましい。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂は、重合触媒としてチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等を用いた公知の重合方法で製造することができる。該重合方法としては、溶液重合法、バルク重合法、スラリー重合法、気相重合法などをあげることができ、これらは2種以上組み合せてもよい。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(JIS K7210に従って、21.18Nの荷重下、温度230℃で測定される。)は、好ましくは0.1〜300g/10分であり、より好ましくは0.5〜200g/10分である。
【0018】
本発明に用いられる成分(C)鉱物油としては、アロマ系鉱物油、ナフテン系鉱物油、パラフィン系鉱物油を例示することができ、好ましくは、パラフィン系鉱物油である。また、平均分子量が300〜1500で流動点が0℃以下のものが好ましい。
【0019】
鉱物油の配合においては、成分(A)エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムに鉱物油が予め配合された油展エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムを用いてもよい。成分(A)エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムに鉱物油を配合する方法として、(1)ロールやバンバリーミキサーのような混練装置を用い、両者を機械的に混練する方法、(2)成分(A)エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムの溶液に鉱物油を添加し、その後、スチームストリッピングのような方法によって脱溶媒する方法を例示することができる。
【0020】
本発明に用いられる成分(D)アルキルフェノール樹脂としては、ゴム用架橋剤として一般的に使用されている下式で表される化合物を例示することができる(米国特許3287440号公報および同3709840号公報参照):

【0021】
式中、nは0〜10の整数であり;XおよびYはそれぞれ独立に水酸基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子であり;複数あるRはそれぞれ独立に炭素原子数1〜15の飽和炭化水素基である。該化合物は、置換フェノールとアルデヒドとをアルカリ触媒で縮重合させることによって製造することができる。
上記のアルキルフェノール樹脂として、アルキルフェノ−ルホルムアルデヒドや、臭素化アルキルフェノ−ルホルムアルデヒドを例示することができる。これらの中でも、得られる熱可塑性エラストマー組成物の着色性の観点から、メチロール基を備えたアルキルフェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂は、金属酸化物およびステアリン酸のような分散剤と組合せて用いることが好ましい。
【0022】
本発明に用いられる成分(E)エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3〜10のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、JIS K−6253のA硬度が95以下の共重合体である。炭素原子数3〜10のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンを例示することができ、好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−オクテンであり、より好ましくは、1−オクテンである。
【0023】
エチレン−α−オレフィン共重合体のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、通常51〜95重量%であり、好ましくは55〜90重量%であり、炭素原子数3〜10のα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、通常5〜49重量%であり、好ましくは10〜45重量%である(これら単位の合計を100重量%とする)。
【0024】
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、成形体の機械的強度を保持する観点から、0.85〜0.91g/cmであり、好ましくは0.87〜0.91g/cmである。
上記範囲よりも密度が高いと、得られた組成物の柔軟性が失われる。逆に、上記範囲よりも密度が低いと、組成物の引張強度が低下し、また、粘着性が大きくなるため好ましくない。
【0025】
各成分の含有量は、次のとおりである。成分(A)の含有量は10〜60重量部であり、好ましくは15〜55重量部である。成分(B)の含有量は5〜50重量部であり、好ましくは10〜45重量部である。成分(C)の含有量は0〜70重量部であり、好ましくは5〜65重量部である。但し、成分(A)〜(C)の含有量は、成分(A)〜(C)の合計量100重量部を基準とする。
成分(A)が過少であると、得られた組成物が弾性を示さなくなり、一方成分(A)が過多であると流動性が低下し、押出し成形体及び射出成形等の外観不良となる。成分(B)が過少であると流動性が低下し、押出し成形体の外観不良となる。一方成分(B)が過多であると得られた組成物の硬度が高くなり、柔軟性が失われる。また、成分(C)が過少であると、流動性が低下し、押出し成形体の外観不良となる。一方成分(C)が過多であると、オイルブリードにより押出し成形体及び射出成形等の外観不良となる。
【0026】
成分(A)、(B)及び(C)の合計量100重量部に対する成分(D)の含有量は0.5〜5重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。同様に、成分(E)の含有量は1〜20重量部であり、好ましくは2〜10重量部、より好ましくは2〜6重量部である。また、(A)に対する(E)の添加量(E/A)の値は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.25以下である。
なお、油展ゴムを用いた場合の(A)の量は、伸展油を含まない量を基準とする。また、各成分の量は、二種以上のものを併用した場合、合計量を基準とする。
【0027】
本発明において、架橋促進剤として、塩化第一スズおよび塩化第二鉄のようなハロゲン化物金属塩、ならびに、塩素化ポリプロピレン、臭化ブチルゴムおよびクロロプレンゴムのような有機ハロゲン化物を使用することが出来、中でも塩化第一スズが好ましい。
【0028】
本発明において、その効果を損なわない範囲で、各種目的に応じ他の成分を使用することが出来る。この様な成分としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物、充填材、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、粘着付与剤、着色剤、中和剤、滑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、抗菌剤、殺菌剤、カーボンブラック、タルク、クレー、シリカ等の無機フィラー類、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0029】
本発明の製造方法について説明する。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)〜(C)を含む組成物を、成分(D)〜(E)の存在下で動的熱処理することで得ることができる。
【0030】
本発明における「動的熱処理」とは、成分(A)エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴムと成分(B)ポリオレフィン系樹脂と成分(C)鉱物油と成分(D)アルキルフェノール樹脂と成分(E)エチレン−α−オレフィン共重合体と必要に応じて配合される他の成分とを含む組成物を剪断力下に溶融混練する処理を意味する。
【0031】
動的熱処理装置としては開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、ニーダー、押出機、二軸押出機等公知のものを使用することができる。または二種以上の複数の装置を組み合わせることも可能であるが、特に生産性の点で二軸押出機が好適に使用される。動的熱処理の条件(温度、時間)は、通常は150〜300℃、好ましくは170〜280℃で、時間は0.1〜30分、好ましくは0.2〜20分である。
【0032】
本発明において、成分(A)〜(E)を動的熱処理装置に加えた後、150〜300℃、好ましくは170〜280℃の温度範囲で0.1〜30分間、好ましくは0.2〜20分間動的熱処理を行う方法が挙げられる。本発明により得られる熱可塑性エラストマー組成物の乾燥工程に伴う流動性の低下を抑制する観点から、好ましくは、成分(A)〜(D)を動的熱処理装置に加え、150〜300℃、好ましくは170〜280℃の温度範囲で0.1〜30分間、好ましくは0.2〜20分間予備混練を行った後、成分(E)を添加し0.1〜30分間、好ましくは0.2〜20分間動的熱処理を行う方法が挙げられる。
【0033】
本発明により得られる熱可塑性エラストマー組成物は一般に使用される成型法、例えば、射出成型法、押出成型法、中空成型法、圧縮成型法等により成形される。用途としては自動車部品(ウェザーストリップ、天井材、内装シート、バンパーモール、サイドモール、エアスポイラー、エアダクトホース、カップホルダー、サイドブレーキグリップ、シフトノブカバー、シート調整ツマミ、フラッパードアシール、ワイヤーハーネスグロメット、ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションカバーブーツ、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、ルーフガイド、トランクリッドシール、モールデッドクォーターウィンドガスケット、コーナーモールディング、グラスエンキャプシュレーション、フードシール、グラスランチャンネル、セカンダリーシール、各種パッキン類など)、土木・建材部品(止水材、目地材、建築用窓枠など)、スポーツ用品(ゴルフクラブ、テニスラケットのグリップ類など)、工業用部品(ホースチューブ、ガスケット等)、家電部品(ホース、パッキン類など)、医療用機器部品、電線、雑貨などの広汎な分野での資材として使用される。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
以下の実施例で使用した原材料および評価方法は次の通りである。
[使用した原材料]
成分(A):エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム100重量部当り鉱物油100重量部を添加し、その後スチームストリッピングで脱溶媒した油展EPDM(住友化学(株)製エスプレン670F)
ゴム部の粘度(ML1+4100℃)=288
エチレン含量量=66重量%、ヨウ素価=11.5
成分(B):プロピレン単独重合体(住友化学(株)製ノーブレンD101)
MFR=0.5g/10min
成分(C):鉱物油PW90(出光興産(株)製)
成分(D):フェノール樹脂架橋剤:メチロール型アルキルフェノール樹脂
タッキロール201(田岡化学工業(株)製)
成分(E):エチレン‐オクテン共重合体−1(Dow Chemical Company(株)製ENGAGE 8480)
オクテン含量=18重量%、密度=0.902g/cm
エチレン‐オクテン共重合体−2(Dow Chemical Company(株)製ENGAGE 8200)
オクテン含量=35重量%、密度=0.870g/cm
エチレン‐ブテン共重合体(プライムポリマー(株)製タフマー A6050)
ブテン含量=29重量%、密度=0.866g/cm
エチレン‐プロピレン共重合体(住友化学(株)製エスプレンV0115)
プロピレン含量=28重量%、密度=0.870g/cm
その他成分:塩化第一スズ・二水和物 (日本化学産業(株))、水酸化カルシウム:カルテックLT(鈴木工業(株)製)、酸化亜鉛:2種酸化亜鉛 (正同化学(株)製)
【0036】
[流動安定性評価]
本発明で得られた熱可塑性エラストマー組成物を110℃で2時間、6時間、24時間乾燥した後、メルトフローレート(MFR)を測定し、2時間乾燥後のMFR値を基準として、乾燥後のMFRの保持率(r)を流動安定性の評価指標とした。MFRの測定はJIS K7210に準拠し、230℃、10kgにて実施した。

MFR1:6時間、24時間乾燥後のMFR値
MFR0:2時間乾燥後のMFR値(基準)
【0037】
[物性評価方法]
本発明で得られた熱可塑性エラストマー組成物を200℃で圧縮成型することにより厚み2mmの試験片を作成し、以下の方法で物性測定を行った。
・ 硬度:JIS K6253に準拠(Shore−A瞬間値)して行った。
・ 圧縮永久歪み:JIS K6262に準拠(70℃、22時間、25%圧縮)して行った。
・ 引張物性:JIS K6251に従い、熱可塑性エラストマー組成物の平板をJIS3号ダンベルで打ち抜いた試験片を用い、引張速度200mm/分の条件で引張試験を実施し、100%伸張応力、引張破断応力および引張破断伸びを求めた。
【0038】
実施例1〜4
以下に実施例を明示するが、各原材料の添加量は、成分(A)〜(C)の合計重量100重量部を基準とする。
表1に示す配合割合の原材料(A)〜(D)、ならびに塩化第一スズ・二水和物、水酸化カルシウムおよび酸化亜鉛を、日本製鋼所製二軸押出機(TEX44)を用いて、回転数400rpm、混練温度200℃の条件で動的熱処理を行って得られた熱可塑性エラストマー組成物と、表1に示す配合割合の原材料(E)を東洋精機製ラボプラストミル(65C−150−R100)に加え、回転数60rpm、混練温度200℃の条件で10分間動的熱処理を行った後、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物に対し上記流動安定性試験を実施した。結果を表1、図1に示す。
【0039】
比較例1
表1に示す配合割合の原材料(A)〜(D)、ならびに塩化第一スズ・二水和物、水酸化カルシウムおよび酸化亜鉛を、上記二軸押出機を用いて、回転数400rpm、混練温度200℃の条件で動的熱処理を行った後、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物に対し上記流動安定性試験を実施した。結果を表1、図1に示す。得られた熱可塑性エラストマー組成物を200℃で圧縮成型することにより、厚み2mmの試験片を作成し、上記の物性測定を行った。結果を表2に示す。
【0040】
実施例5
表2に示す配合割合の原材料(A)〜(E)、ならびに塩化第一スズ・二水和物、水酸化カルシウムおよび酸化亜鉛を、上記二軸押出機を用いて、回転数400rpm、混練温度200℃の条件で動的熱処理を行った後、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物に対し上記流動安定性試験、および物性評価を実施した。結果を表2、図2に示す。
【0041】
実施例6
表2に示す配合割合の原材料(A)〜(D)、ならびに塩化第一スズ・二水和物、水酸化カルシウムおよび酸化亜鉛を、上記二軸押出機を用いて、回転数400rpm、混練温度200℃の条件で動的熱処理を行った後に、原材料(E)を添加して溶融混練をすることにより、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物に対し上記流動安定性試験、および物性評価を実施した。結果を表2、図2に示す。
【0042】
【表1】

*鉱物油45重量部のうち31重量部は油展ゴム由来のものである。
【0043】
【表2】

*鉱物油45重量部のうち31重量部は油展ゴム由来のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(E)を含む組成物を、動的熱処理することにより得られる熱可塑性エラストマー組成物(成分(A)〜(C)の含有量は成分(A)〜(C)の合計量100重量部を基準とし、成分(D)〜(E)の含有量は成分(A)〜(C)の合計量100重量部を基準とする)。
成分(A):100℃でのムーニー粘度(ML1+4100℃)が120〜350であるエチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム 10〜60重量部
成分(B):プロピレンに基づく単量体単位の含量が51〜100重量%であるポリプロピレン系樹脂 5〜50重量部
成分(C):鉱物油 0〜70重量部
成分(D):アルキルフェノール樹脂 0.5〜5重量部
成分(E):エチレンに基づく単量体単位の含量が51〜95重量%であり、密度が0.85〜0.91g/cmであるエチレン−α−オレフィン共重合体 1〜20重量部
【請求項2】
成分(E)がエチレン−オクテン共重合体である請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
成分(A)〜(E)を含む組成物を二軸押出機で動的熱処理することを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項4】
成分(A)〜(D)を含む組成物を動的熱処理した後に、成分(E)を添加し動的熱処理することを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−219119(P2012−219119A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83348(P2011−83348)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】