説明

熱可塑性エラストマー組成物

【課題】 耐傷付き性、耐油性、押出成形性、射出成形性、成形品表面光沢に優れる自動車の内外装部材、建築用部材、家電用部材用熱可塑性エラストマー組成物の提供。
【解決手段】 (a)(a−1)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体20〜80重量%と、(a−2)オレフィン系共重合体ゴム80〜20重量%とからなるエラストマー100重量部、(b)ポリプロピレン樹脂10〜150重量部、(c)有機過酸化物0.01〜0.8重量部、(e)トリエチレングリコールジメタクリレートおよび/またはテトラエチレングリコールジメタクリレート1〜30重量部を含有する組成物を溶融混練して得られる熱可塑性エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関し、特に、耐傷付き性、耐油性、押出成形性、射出成形性、成形品表面光沢に優れる熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴム弾性を有する軟質材料であって、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性及びリサイクルが可能な熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)やポリスチレン系熱可塑性エラストマーの熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電部品、医療用部品、電線被覆、履物、雑貨等の分野で多用されている。
【0003】
熱可塑性エラストマーの中でも光沢や耐傷付き性を要求される材料には、TPOが多用されているが、TPOは低分子量ゴムを用いると高光沢になるが、耐傷付き性が劣るため、意匠性が必要な表皮材として用いる場合は、高分子量ゴムを用いて低光沢にせざるを得ないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み、耐傷付き性、耐油性、押出成形性、射出成形性、成形品表面光沢に優れる自動車の内外装部材、建築用部材、家電用部材用熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、スチレン系エラストマーに特定量の水添スチレンブロック共重合体又はオレフィン系ゴムを配合した組成物にポリプロピレンを配合し、架橋処理することにより、耐傷付き性、耐油性、押出成形性、射出成形性、成形品表面光沢に優れる熱可塑性エラストマーが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
請求項1に記載の発明は、
(a)(a−1)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体20〜80重量%と、(a−2)オレフィン系共重合体ゴム80〜20重量%とからなるエラストマー100重量部、
(b)ポリプロピレン樹脂10〜150重量部、
(c)有機過酸化物0.01〜0.8重量部、および
(e)エステル系架橋助剤として、トリエチレングリコールジメタクリレートおよびテトラエチレングリコールジメタクリレートからなる群から選択された少なくとも1種1〜30重量部
を含有する組成物を溶融混練して得られる熱可塑性エラストマー組成物である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、(a−2)オレフィン系共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))が7〜75である請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、(d)水素添加して得られる水添ブロック共重合体1〜50重量部を更に含む請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、(f)ゴム用軟化剤1〜30重量部を更に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、(g)シリコーンオイル0.1〜12重量部を更に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、(h)無機充填剤1〜85重量部を更に含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形加工してなる自動車内外装部材、建築用部材又は家電用部材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、耐傷付き性、耐油性、押出成形性、射出成形性、成形品表面光沢に優れるため、自動車の内外装部材、建築用部材、家電用部材の、特に意匠性が必要な表皮材として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を構成する成分、製造方法、用途について以下に詳細に説明する。
【0015】
1.熱可塑性エラストマー組成物の構成成分
(1)エラストマー成分(a)
本発明で用いるエラストマー成分(a)は、次の(a−1)と、(a−2)とを含有する組成物である。
【0016】
(a−1)ブロック共重合体
ブロック共重合体成分(a−1)は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体である。例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を挙げることができる。
【0017】
上記ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を5〜60重量%、好ましくは、20〜50重量%含む。
【0018】
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、好ましくは、芳香族ビニル化合物のみから成る"重合体ブロック"か、または芳香族ビニル化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上と1種以上の他のモノマー、例えば、共役ジエン化合物等との共重合体ブロックである。
【0019】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、好ましくは、共役ジエン化合物のみから成る"重合体ブロック"か、または共役ジエン化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上と1種以上の他のモノマー、例えば、芳香族ビニル化合物等との共重合体ブロックである。
【0020】
ブロック共重合体の溶液粘度(5%トルエン溶液、77°F、ASTM D−2196)の範囲は、5〜500cps、好ましくは20〜300cpsである。
【0021】
また、これらの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、分子鎖中の共役ジエン化合物又は芳香族ビニル化合物由来の単位の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状又はこれらの任意の組合せでなっていてもよい。芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA又は共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBがそれぞれ2個以上ある場合には、各重合体ブロックはそれぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
【0022】
ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、なかでもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、なかでもブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せが好ましい。
【0023】
上記ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SIBS)等が挙げられる。
【0024】
これらのブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒又はチーグラー型触媒を用い、不活性媒体中でブロック重合させて得ることができる。
【0025】
成分(a−1)の配合量は、成分(a)全体を100重量%としたとき、20〜80重量%、好ましくは25〜40重量%である。配合量が20重量%未満では、架橋を十分達成できず、得られるエラストマーの耐油性、耐傷付き性が悪化する。一方、80重量%を超えると成形性が悪くなる。
【0026】
(a−2)オレフィン系共重合体ゴムオレフィン系共重合体ゴム
成分(a−2)は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等のα−オレフィンが共重合してなるエラストマーあるいはこれらと非共役ジエンとが共重合してなるオレフィン系共重合体ゴムが挙げられる。
【0027】
非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等を挙げることができる。
【0028】
このようなオレフィン系共重合体ゴムとしては、具体的には、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン−1−ブテン共重合体ゴム、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いるオレフィン系共重合体ゴムは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が7〜75であるのが好ましく、より好ましくは10〜60である。特に、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が10〜25の場合、射出成形品の表面光沢を70以下に、押出成形品の表面光沢を20以下に制御できる。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が25〜40の場合、射出成形品の表面光沢を35以下に、押出成形品の表面光沢10以下に制御できる。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が40〜60の場合、射出成形品の表面光沢を10以下に、押出成形品の表面光沢を2以下に制御できる。ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が7未満では、耐油性、耐摩耗性が悪化し、75を超えると成形性が悪化する。(a−2)は(a−1)との併用かつ有機過酸化物の添加により、製品表面光沢と耐傷付き性、耐油性のバランスを向上させることができる。
【0030】
(a−2)の配合量は、(a)全体を100重量%として、(a−2)が80〜20重量%であり、好ましくは75〜60重量%である。配合量が80重量%を超えると、架橋を十分達成できず、得られるエラストマーの耐油性、耐傷付き性が悪化する。一方、20重量%未満では、成形性が悪くなる。なお、(a−2)は、単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。
【0031】
(2)ポリプロピレン樹脂成分(b)
本発明で用いるポリプロピレン樹脂成分(b)は、パーオキサイド分解型のポリプロピレン系樹脂である。成分(b)は、得られるエラストマー組成物のゴム分散を良好にし、かつ成形品の外観を良好にすると共に、硬度及び収縮率の調整に効果を有するものである。(b)成分は、パーオキシドの存在下に加熱処理することによって熱分解して分子量を減じ、溶融時の流動性が増大するプロピレン系の重合体又は共重合体であり、例えば、アイソタクチックポリプロピレンやプロピレンと他のα−オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどとの共重合体を挙げることができる。
【0032】
上記プロピレン系共重合体のホモ重合部分のDSC測定による融点は、好ましくは、Tmが150〜170℃、△Hmが25〜90mJ/mgの範囲のものである。結晶化度はDSC測定のTm、△Hmから推定することができる。Tm、△Hmが上記の範囲外では、得られるエラストマー組成物の耐油性や100℃以上におけるゴム弾性が改良されない。
【0033】
また、成分(b)のメルトフローレート(MFR、ASTM D−1238、L条件、230℃)は、好ましくは0.1〜200g/10分、更に好ましくは0.5〜100g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では、得られるエラストマー組成物の成形性が悪化し、200g/10分を超えると、得られるエラストマー組成物の機械的強度が低下する。
【0034】
成分(b)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、10〜150重量部が好ましく、より好ましくは20〜40重量部である。10重量部未満では耐油性、耐傷付き性、成形性が悪化し、150重量部を超えると、得られたエラストマー組成物の耐傷付き性、成形性が悪化し、剥離や変形及びフローマークが成形品に生じ易くなる。
【0035】
(3)有機過酸化物成分(c)
本発明で用いる有機過酸化物成分(c)は、ラジカルを発生せしめ、そのラジカルを連鎖的に反応させて、成分(a)を架橋せしめる働きをする。また、同時に成分(b)を分解して溶融混練時の組成物の流動性をコントロールしてゴム成分の分散を良好にせしめる。成分(c)としては、例えば、ジクミルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3、3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド等を挙げることができる。これらのうちで、臭気性、着色性、スコーチ安全性の観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が特に好ましい。
【0036】
成分(c)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、0.01〜0.8重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部である。配合量が0.01重量部未満では、架橋を十分達成できず、得られるエラストマーの耐油性、耐傷付き性が低い。一方、0.8重量部を超えると、成形性が悪くなる。
【0037】
(4)水添ブロック共重合体成分(d)
本発明のエラストマー組成物においては、必要に応じて、水添ブロック共重合体成分(d)を添加することができる。成分(d)は、後述のゴム用軟化剤成分(f)を添加する場合に用いると、より光沢、耐傷つき性の向上に効果を発揮する。成分(d)は、(a−1)の水素添加物であり、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体の水素添加物である。
【0038】
成分(a−1)の水素添加物における共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、そのミクロ構造は、任意であり、例えば、ブロックBがブタジエン単独で構成される場合、ポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構造が好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。その水添率は、任意であるが好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。また、1,2−結合を選択的に水素添加したものであっても良い。ブロックBがイソプレンとブタジエンの混合物で構成される場合、1,2−ミクロ構造が好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満、より更に好ましくは15%未満である。ブロックBがイソプレン単独で構成される場合。ポリイソプレンブロックにおいてはイソプレンの好ましくは70〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつイソプレンに由来する脂肪族二重結合の好ましくは少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
【0039】
水添ブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000〜1,500,000、より好ましくは、10,000〜550,000、更に好ましくは90,000〜400,000の範囲であり、分子量分布は10以下である。ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
【0040】
用途により、水素添加したブロック共重合体を使用する場合には、好ましくは上記水添物を用途に合わせて適宜使用することができる。
【0041】
成分(d)の水添ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(部分水素添加スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、SBBS)等を挙げることができる。
【0042】
成分(d)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは5〜30重量部である。配合量が1重量部未満では、添加効果が認められず。一方、50重量部を超えると、製品表面光沢が低下し、成形性が悪化する。
【0043】
(5)エステル系架橋助剤成分(e)
本発明のエラストマー組成物においては、必要に応じて、エステル系架橋助剤成分(e)を用いることができる。成分(e)は、本発明のエラストマー組成物の(c)有機過酸化物による架橋処理に際して配合することができ、これにより均一、かつ、効率的な架橋反応を行うことができる。また、多量に配合することにより、成形品表面の平滑性を向上させることができる。
【0044】
成分(e)の具体例としては、例えば、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールの繰り返し数が9〜14のポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート又はビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを挙げることができる。これらの架橋助剤のうち、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートが特に好ましい。
【0045】
成分(e)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、1〜30重量部が好ましく、より好ましくは5〜20重量部である。1重量部以下では添加効果がなく、30重量部を超えると、自己重合により異物発生が顕著になり、成形品外観が悪化する。
【0046】
(6)ゴム用軟化剤成分(f)
本発明のエラストマー組成物においては、必要に応じて、ゴム用軟化剤成分(f)を配合することができる。本発明で用いることのできるゴム用軟化剤成分(f)としては、非芳香族系ゴム用軟化剤、芳香族系ゴム用軟化剤やエステル系可塑剤を挙げることができる。
【0047】
非芳香族系ゴム用軟化剤としては、非芳香族系の鉱物油または液状もしくは低分子量の合成軟化剤を挙げることができる。ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものはパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
【0048】
鉱物油系ゴム用軟化剤は、区分でパラフィン系およびナフテン系のものである。芳香族系の軟化剤は、その使用により成分(a)が可溶となり、架橋反応を阻害し、得られる組成物の物性の向上が図れないので好ましくない。非芳香族系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系のものが好ましく、更にパラフィン系の中でも芳香族環成分の少ないものが特に適している。
【0049】
これらの非芳香族系ゴム用軟化剤の性状は、37.8℃における動的粘度が20〜50,000cSt、好ましくは20〜1,000cSt、100℃における動的粘度が5〜1500cSt、好ましくは5〜100cSt、流動点が−10〜−25℃、引火点(COC)が170〜350℃を示すのが好ましい。さらに、重量平均分子量が100〜2,000のものが好ましい。
【0050】
エステル系可塑剤としては、リン酸エステル、フタル酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、二価アルコールエステル、オキシ酸エステル、アクリル系高分子などの環状、非環状の可塑剤が挙げられる。
【0051】
環状可塑剤としては、例えば、無水フタル酸エステルおよびトリメリット酸エステル、さらにはN−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、ジベンジルセバケート、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジ−t−オクチルフェニルエーテル、ジプロパンジオールジベンゾエート、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、イソプロピリデンジフェノキシプロパノール、アルキル化ナフタレン、ポリエチレングリコールジベンゾエート、o,p−トルエンスルホンアミド、トリメチルペンタンジオールジベンゾエートおよびトリメチルペンタンジオール・モノイソブチレート・モノベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、無水フタル酸エステル及びトリメリット酸エステルが好ましい。
【0052】
無水フタル酸エステルの代表的な例としては、例えば、ブチルオクチルフタレート、ブチル・2−エチルヘキシルフタレート、ブチル・n−オクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジ−トリデシルフタレート、n−ヘキシル・n−デシルフタレート、n−オクチル・n−デシルフタレート、アルキル・ベンジルフタレート、ビス(4−メチル−1,2−ペンチル)フタレート、ブチル・ベンジルフタレート、ブチル・シクロヘキシルフタレート、ジ(2−ブトキシエチル)フタレート、シクロヘキシル・イソデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジエチルイソフタレート、ジ−n−ヘプチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ(2−メトキシエチル)フタレート、ジメチルイソフタレート、ジノニルフタレート、ジオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)イソフタレート、混合ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレート、2−(エチルヘキシル)イソブチルフタレート、ブチル・フタリルブチルグリコレート、エチル(およびメチル)フタリルエチルグリコレート、ポリプロピレングリコール・ビス(アミル)フタレート、ヘキシル・イソデシルフタレート、イソデシル・トリデシルフタレート、イソオクチル・イソデシルフタレート等が挙げられる。
【0053】
トリメリット酸エステルの代表的な例としては、例えば、トリイソオクチルトリメリテート、トリ−n−オクチル・n−デシルトリメリテート、トリオクチルトリメリテート、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート(TOTM)、トリ−n−ヘキシル・n−デシルトリメリテート、トリ−n−ヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートおよびトリイソノニルトリメリテート等が挙げられる。
【0054】
また、非環状可塑剤としては、リン酸エステル、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、ミリスチン酸エステル、リシノレイン酸エステル、アセチルリシノレイン酸エステル、セバシン酸エステル、ステアリン酸エステル、エポキシ化エステル、さらには、1,4−ブタンジオール・ジカプリレート、ブトキシエチルペラルゴネート・ジ[(ブトキシエトキシ)エトキシ]メタン、ジブチルタータレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ジイソオクチルジグリコレート、イソデシルノナノエート、テトラエチレングリコール・ジ(2−エチル−ブチレート)、トリエチレングリコール・ジ(2−エチル−ヘキサノエート)、トリエチレングリコールジペラルゴネート及び分岐脂肪族二価アルコールのエステル化合物である2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)、アクリル系高分子等が挙げられる。
【0055】
リン酸エステルの代表的な例としては、例えば、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、メチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリ(2−ブトキシエチル)ホスフェート、トリ(2−クロロエチル)ホスフェート、トリ(2−クロロプロピル)ホスフェートおよびトリオクチルホスフェートが挙げられる。
【0056】
アジピン酸エステルの代表的な例としては、例えば、ジ[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジペート、ジオクチルアジペート(ジイソオクチルアジペートを含む)、n−ヘキシル・n−デシルアジペート、n−オクチル・n−デシルアジペートおよびジ−n−ヘプチルアジペートが挙げられる。
【0057】
セバシン酸エステルの代表的な例としては、例えば、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブトキシエチルセバケート、ジイソオクチルセバケートおよびジイソプロピルセバケートが挙げられる。
【0058】
アゼライン酸エステルの代表的な例としては、例えば、ジ(2−エチルヘキシル)アゼラエート、ジシクロヘキシルアゼラエート、ジイソブチルアゼラエートおよびジイソオクチルアゼラエートが挙げられる。
【0059】
アクリル系高分子可塑剤としては、(i)ラジカル重合性単量体と(ii)改質用化合物との混合物を、重合開始剤の存在下または非存在下に、反応させて得られる反応生成物からなる重合体が挙げられる。この重合体は、(ii)改質用化合物の重合体への結合様式がエステル結合である重合体が好ましく、(i)ラジカル重合性単量体として(メタ)アクリル酸を用い、かつ(ii)改質用化合物として脂肪族または脂環式アルコールを用いる重合体であってもよい。
【0060】
アクリル系高分子可塑剤において、ラジカル重合性単量体(i)としては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノ及びジアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン等のアルケン;ブタジエン、イソプレン等のジエン;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライドおよびアリルアルコール等が挙げられる。
【0061】
また、改質用化合物(ii)としては、シクロヘキシルアルコール等のシクロアルカノール;イソプロピルアルコール等のアルカノール;フルオロアルキルアルコール等のハロゲン基含有アルコール;エチレングリコール、ブタンジオール等のアルキレンジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール等のシクロアルキレンジオール;末端に水酸基を有するポリエーテル、ポリエステル等のポリマー等の水酸基含有改質剤、シクロヘキシルカルボン酸、シクロヘキシルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、フルオロアルキルジカルボン酸、無水マレイン酸およびフマル酸等のカルボキシル基含有化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、メチルプロピレングリコールアセテート、カルビトールアセテートおよびエチルカルビトールアセテート等のエステル基含有改質剤、シクロヘキセン、シクロペンテンおよびイソブテン等のアルケンが挙げられる。
【0062】
上記(i)と(ii)の組み合わせにおけるアクリル系重合体の例としては、(i)の(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸またはマレイン酸のモノアルキルエステル等と、(ii)の水酸基を有する化合物を用い、エステル化反応により、重合体に改質用化合物が導入された重合体が得られる。また、(i)のメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート等のエステル基含有単量体と(ii)の水酸基を有する化合物を用いれば、エステル交換反応をさせることにより、機能性重合体が得られる。さらに、(i)の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの水酸基含有単量体と(ii)のカルボキシル基またはエステル基含有化合物との反応によるエステル結合の形成により、機能性基を導入された重合体が得られる。さらにまた、(i)の(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有単量体と(ii)のアルケンを用いることによりカルボキシル基がエチレン性不飽和結合に付加反応してエステル結合が形成され、改質用化合物が導入した重合体が得られる。
【0063】
アクリル系高分子可塑剤においては、上記(i)としては、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、メソオキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートが好ましく、中でもエチルアクリレートが主成分であることが最適である。
【0064】
また、該アクリル系高分子可塑剤の重量平均分子量(Mw)は、500〜10,000が好ましく、より好ましくは1,000〜6,000、さらに好ましくは1,000〜3,000であり、粘度は、100〜9,000mPa・sが好ましく、より好ましくは1,000〜6,000mPa・s、さらに好ましくは3,000〜5,000mPa・sであり、Acetone−Water Toleranceから求めたSP値は、10.5〜16.5が好ましく、より好ましくは13〜16、さらに好ましくは14〜16である。
【0065】
これらゴム用軟化剤成分の中では、芳香族系ゴム用軟化剤は、成分(c)を使用するときのみブリードが抑えられ使用可能であり、エステル系可塑剤としては、DINA、TOTMが特に好ましい。
【0066】
成分(f)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部である。配合量が1重量部未満では、成形性が悪化する。一方、30重量部を超えると、成形品表面にブリードが顕著になる。
【0067】
(7)シリコーンオイル成分(g)
本発明のエラストマー組成物においては、必要に応じて、シリコーンオイル成分(g)を配合することができる。成分(g)は、本発明のエラストマー組成物を用いた成形品の表面粘着性を改善する効果を発揮する。成分(g)としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、あるいは他の有機基を含む変性シリコーンオイル等を挙げることができる。また、シリコーンオイルの粘度は、25℃において、20〜5,000cStが適切である。更に好ましくは100〜2,000cStであり、より更に好ましくは100〜1,000cStである。
【0068】
成分(g)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、0.1〜12重量部が好ましく、より好ましくは2〜6重量部である。12重量部を超えて配合しても、特に更なる改善は少なく、ブリードアウトが顕著になる。
【0069】
(8)無機充填剤成分(h)
本発明のエラストマー組成物においては、必要に応じて、無機充填剤成分(h)を配合することができる。成分(h)は、エラストマー組成物から得られる成形品の圧縮永久歪みなど一部の物性を改良する効果のほかに、増量による経済上の利点を有する。成分(h)としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪藻土、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、マイカ、クレー、酸化チタン、カーボンブラック、ガラス繊維、中空ガラスバルーン、炭素繊維、チタン酸カルシウム繊維、天然けい酸、合成けい酸(ホワイトカーボン)等が挙げられる。これらのうち、炭酸カルシウム、タルクが特に好ましい。
【0070】
成分(h)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、1〜85重量部が好ましく、より好ましくは5〜35重量部である。85重量部を超えると、得られるエラストマー組成物の光沢、耐傷付き性の低下が著しくなる。
【0071】
(9)その他の成分
なお、本発明のエラストマー組成物は、上記の成分の他に、さらに必要に応じて、各種のブロッキング防止剤、シール性改良剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、着色剤等を含有することも可能である。ここで、酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−p−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうちフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、上記の成分(a)〜(g)の合計100重量部に対して、0〜3.0重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0072】
2.熱可塑性エラストマー組成物の製造
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(a)〜(c)、又は必要に応じて成分(d)〜(h)等を加えて、各成分を同時にあるいは任意の順に加えて溶融混練することにより製造することができる。
【0073】
溶融混練の方法は、特に制限はなく、通常公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等を使用し得る。例えば、適度なL/Dの二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いることにより、上記操作を連続して行うこともできる。ここで、溶融混練の温度は、好ましくは160〜220℃である。
【0074】
3.熱可塑性エラストマー組成物の用途
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、耐傷付き性、耐油性、押出成形性、射出成形性、成形品表面光沢に優れるため、ドアトリム、クォータトリム、ラゲッジサイドトリム、アームレスト、バックドア、インパネ、インパネセーフティパッド、オーバーヘッドコンソール、シートバック、パッケージトレイ、パーセルシェルフ、ダンパー、トランクボックスリッド、ピラー、グリルガーニッシュ、エンジンアンダーカバー、ルーフボックス等の自動車の内外装部品材、冷蔵庫ドアパッキン、パンツプレス、エアコンパネル等の家電用部品材、輸液用ゴム栓、混注可能管等の医療用部品材、建築用部材、電線被覆材、履物、雑貨等に用いることができ、特に意匠性が必要な表皮材として用いることができる。
【実施例】
【0075】
本発明を以下の実施例、比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、本発明で用いた物性の測定法及び試料を以下に示す。
【0076】
1.物性測定方法
(1)硬度:JIS K 6253に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを用いた。
【0077】
(2)引張強さ:JIS K 6251に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。(室温及び100℃で測定した。)
【0078】
(3)100%伸び応力:JIS K 6251に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0079】
(4)破断伸び:JIS K 6251に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
【0080】
(7)体積変化率:JIS K 6258に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。IRM#902号油を使用し、120℃×72時間の重量変化を測定した。
【0081】
(5)テーバー摩耗試験:JIS K 6264に準拠し、試験片として2mm厚プレスシートを用い、摩耗輪CS−10、荷重1000g、1000回転後の摩耗量(mg)を測定した。
【0082】
(8)押出成形性:50mm×1mmのシートを押出成形し、ドローダウン性、表面外観や形状を観察し、次の基準で評価した。
○:良い×:悪い
【0083】
(9)射出成形性:130mm×130mm×2mmのシートを射出成形し、その外観を目視により観察し、フローマーク、ヒケ発生の有無を次の基準で評価した。
○:良い×:悪い
【0084】
(10)耐ブリード性:折り曲げてクリップで固定した押出シートを室温と110℃の雰囲気で168時間放置し、低分子量物のブリード及びブルーミングの有無を目視により観察し、次の基準で評価した。
○:良い×:悪い
【0085】
(11)光沢:50mm×1mmの押出成形シートの表面光沢をハンディ光沢計グロスチェッカーIG−330((株)堀場製作所)を用いて入射角60度、黒色ガラスを光沢標準板として測定した。
【0086】
2.実施例及び比較例において用いた試料
(1)SBSブロック共重合体成分(a−1):VECTOR2518(商標;DEXCO POLYMERS社製)、溶液粘度75cps(5%トルエン溶液、77°F、ASTM D−2196)、スチレン含有量30重量%
(2)オレフィン共重合体ゴム成分(a−2):(i)エチレン−プロピレン共重合体(EPR);エスプレンV0115(住友化学工業株式会社製)、MFR:4.5g/10min、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=12、プロピレン含有量:22%、(ii)エチレン−ブテン共重合体(EBR);エスプレンN0416(住友化学工業株式会社製)、MFR:7g/10min、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=10、ブテン含有量:22%
(3)ポリプロピレン樹脂成分(b):PP−BC8(商標;日本ポリケム株式会社製)、結晶化度:Tm166℃、△Hm82mJ/mg、MFR1.8g/10分
(4)有機過酸化物成分(c):パーヘキサ25B(商標;日本油脂株式会社製)
(5)水添ブロック共重合体成分(d): セプトン4077(商標;クラレ株式会社製)、スチレン含有量;30重量%、数平均分子量;60,000、重量平均分子量;320,000、分子量分布;1.23、水素添加率;90%以上
(6)エステル系架橋助剤成分(e):NKエステル3G(商標;新中村化学株式会社製)
(7)ゴム用軟化剤成分(f):ダイアナプロセスオイル PW−90(商標;出光興産株式会社製)、40℃における動的粘度;95.54cSt、100℃における動的粘度;11.25cSt、流動点;−15℃、引火点(COC);270℃
(8)シリコーンオイル成分(g):SH200(東レダウコーニングシリコーン製)、粘度;1000cSt
(9)炭酸カルシウム成分(h):NS400(商標;三共精粉株式会社製)
(10)ヒンダードフェノール/フォスファイト/ラクトン系複合酸化防止剤成分(i):HP2215(商標;チバスペシャリティケミカルズ社製)
(11)成分(j):EPDM(EP57P)、ムーニー粘度ML1+4(100℃)=88(JSR製)
【0087】
実施例1〜3、比較例1〜7
表1及び表2に示す量の各成分を用い、L/Dが47の二軸押出機に投入して、混練温度180℃、スクリュー回転数350rpmで溶融混練をして、ペレット化した。次に、得られたペレットを射出成形して試験片を作成し、夫々の試験に供した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
表1及び表2より明らかなように、実施例1〜3は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物である。任意成分である成分(d)〜(i)の有無にかかわらず、いずれの熱可塑性エラストマー組成物も良好な性状を示した。
【0091】
また、実施例1において、成分(d)の一部又は全部をタフテックP JT−90C(旭化成社製 スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体;SBBS、スチレン含有量30重量%、重量平均分子量(Mw):110,000、数平均分子量(Mn):99,000、分子量分布:1.11、ブタジエンブロックの水素添加率:75.1%、(1,2−ブタジエンの水素添加率92.7%、1,4−ブタジエンの水素添加率61.0%))に置換しても同様に良好な結果が得られた。なお、上記水素添加率は後述する1H−NMR測定により測定した。
【0092】
共役ジエンブロック部分の水素添加率測定方法は、試料をNMRサンプル管(5mmφ)に採取し、重水素化クロロホルムを添加後、充分に溶解し、核磁気共鳴装置(NMR)日本電子製GSX−400型を用い常温、400MHz、3029回の積算にて1H−NMR測定を行った。
【0093】
一方、比較例1及び2は(a−1)を範囲外にしたものである、(a−1)が少ないと耐油性と耐摩耗性が悪化し、(a−1)が多いと機械特性と成形性が悪化する。比較例3及び4は(b)を範囲外にしたものである、(b)が少ないと成形性、耐油性と耐摩耗性が悪化し、(b)が多いと柔軟性が低下し押出成形性が悪化する。比較例5及び6は(c)を範囲外にしたものである、(c)が少ないと耐油性と耐摩耗性が悪化し、(c)が多いと成形性が悪化する。比較例7は(a−2)のムーニー粘度を範囲外にしたものである、高分子量では光沢が発現しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a−1)芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体20〜80重量%と、(a−2)オレフィン系共重合体ゴム80〜20重量%とからなるエラストマー100重量部、
(b)ポリプロピレン樹脂10〜150重量部、
(c)有機過酸化物0.01〜0.8重量部、および
(e)エステル系架橋助剤として、トリエチレングリコールジメタクリレートおよびテトラエチレングリコールジメタクリレートからなる群から選択された少なくとも1種1〜30重量部
を含有する組成物を溶融混練して得られる熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
(a−2)オレフィン系共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))が7〜75である請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
(d)水素添加して得られる水添ブロック共重合体1〜50重量部を更に含む請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
(f)ゴム用軟化剤1〜30重量部を更に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
(g)シリコーンオイル0.1〜12重量部を更に含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
(h)無機充填剤1〜85重量部を更に含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形加工してなる自動車内外装部材、建築用部材又は家電用部材。

【公開番号】特開2007−262425(P2007−262425A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183856(P2007−183856)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【分割の表示】特願2002−241402(P2002−241402)の分割
【原出願日】平成14年8月22日(2002.8.22)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】