説明

熱可塑性エラストマー組成物

【課題】 高温領域における圧縮永久歪み、耐熱性に優れ、硬度調節が容易であり、押出成形性、射出成形性等の成形性に優れ、オレフィン系樹脂成分を多くしていった場合においても圧縮永久歪みの低下を抑え、組成物の混練を行う際にも混練時の架橋速度が速く製造性に優れ、かつ低分子量物のブリードが無く、樹脂の性能劣化が少ない熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】 (a)気相法で合成されたムーニー粘度ML1+4(125℃)が70以上のエチレン系共重合体ゴム100重量部、(b)結晶性オレフィン系樹脂20〜250重量部、(c)フェノール樹脂系架橋剤2〜40重量部、(e)非芳香族系ゴム用軟化剤10〜200重量部、及び(f)例えばSEEPS5〜100重量部を含有する熱可塑性エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関し、特に、高温領域における圧縮永久歪み、耐熱性に優れ、硬度調節が容易であり、押出成形性、射出成形性等の成形性に優れ、さらに混練時の架橋速度が速く製造性に優れ、かつ熱履歴が少ないために低分子量物のブリードが無く、樹脂の性能劣化が少ないうえ、上記性能のバランスに優れる熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴム弾性を有する軟質材料であって、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性及びリサイクルが可能な熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電部品、電線被覆材、医療用部品、履物、雑貨等の分野で多用されている。
【0003】
熱可塑性エラストマーの中でも、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)などのポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性を有し、かつ、これらより得られる熱可塑性エラストマー組成物は加工性に優れており、加硫ゴムの代替品として広く使用されている。
【0004】
また、これらのエラストマー中のスチレンと共役ジエンのブロック共重合体の分子内二重結合を水素添加したエラストマー組成物は、耐熱老化性(熱安定性)および耐候性を向上させたエラストマーとして、さらに広く多用されている。
しかしながら、これらの水素添加ブロック共重合体を用いた熱可塑性エラストマー組成物は、未だゴム的特性、例えば、耐油性、加熱加圧変形率(圧縮永久歪み)や高温時のゴム弾性に問題があり、この点を改良するものとして、上記ブロック共重合体の水素添加誘導体を含む組成物を架橋させて得られる架橋体が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
しかしながら、上記公報に開示されている水添ブロック共重合体の架橋組成物は、高温時、特に100℃以上における圧縮永久歪みが未だに不十分であり、機械強度が低下し易いという問題があり、従来加硫ゴム用途で要求されている性能レベルに到達していないのが現状である。また押出成形では高温時の溶融張力が低いために形状保持性が悪化し、射出成形では成形サイクル(成形時間)が長くなるなど、成形加工面の問題点も多い。
【0005】
また、オレフィン樹脂及びオレフィン共重合体ゴムを動的架橋して得られる熱可塑性エラストマー組成物も多数知られている。これらの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン共重合体樹脂とハロゲン化ブチルゴム等のゴム類を動的架橋したエラストマー組成物(例えば、特許文献6参照。)、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレンコポリマー樹脂の存在下に動的加硫されたEPDMゴムを含有するエラストマー組成物(例えば、特許文献7参照。)、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−ブテン共重合体の存在下に動的加硫されたハロゲン化ブチルゴム等を含有するエラストマー組成物(例えば、特許文献8参照。)、EPDM等のα−モノオレフィン共重合体ゴムと結晶性ポリプロピレン等の混合物を加硫処理して得られる熱可塑性エラストマーと低密度のエチレン−α−オレフィン共重合体を含有する組成物(例えば、特許文献9参照。)、加硫処理したEPDMと結晶性エチレン系ポリマーをブレンドした後、さらにフリーラジカル架橋処理した成形物品(例えば、特許文献10参照。)、EPDMと結晶性ポリプロピレンと混合物を加硫処理して得られる熱可塑性エラストマーと高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含有する組成物(例えば、特許文献11参照。)、ターポリマーゴム等の架橋性ゴム、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、高流動性の線状ポリオレフィン加工添加剤の混合物を架橋処理したエラストマー(例えば、特許文献12参照。)が開示されているが、この組成物も高温の圧縮永久歪みが悪く、実用上満足できるものではなかった。
また、引っ張り時の靭性を改善するため、ゴム、熱可塑性ランダムエチレンコポリマーに対して半結晶性ポリプロピレンを必須成分とした熱可塑性加硫ゴム組成物が開示されているが、半結晶性ポリプロピレンを多量に含んでいるため柔軟性と耐ブリード性、高温の圧縮永久歪みのバランスが悪いという問題が生じていた(特許文献13参照。)。さらに、気相法で製造された粒状EPDMとスルフェンアミド等の加硫促進剤との組成物(例えば、特許文献14参照。)、メタロセン触媒で得られるEPDMとメタロセン触媒で得られるポリプロピレンからなる少なくとも部分的に架橋された熱可塑性エラストマー(例えば、特許文献15参照。)、高MFRのポリプロピレン、EPDM等のエラストマー、エチレン・プロピレンコポリマー相溶化剤からなる熱可塑性エラストマー組成物(例えば、特許文献16参照。)が開示されている。
【0006】
上記先行技術で使用されてきた従来の溶液法により合成されたエチレン系共重合体ゴムは、ムーニー粘度の上限はML1+4(125℃)において80が限界であった。そのため、充分な圧縮永久歪みが得られず、さらにオレフィン系樹脂成分を多くしていった場合に圧縮永久歪みの低下が著しかった。また、組成物の混練を行う際、充分な架橋構造が発現するまでの時間が非常に長く、生産性に劣り、なおかつ、組成物への熱履歴が多いことから、低分子量物のブリードアウト、樹脂の熱劣化による屈曲疲労、折り曲げ白化、耐熱性等の物性の低下が問題となっていた。
また、上記従来技術においては架橋促進剤の添加量は、架橋剤100重量部に対し50〜200重量部であり非常に多い添加量が開示されており、その際の短期および長期の高温における圧縮永久歪みは従来加硫ゴム用途で要求されている性能レベルに到達していないのが現状であった。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−6236号公報
【特許文献2】特開昭63−57662号公報
【特許文献3】特公平3−49927号公報
【特許文献4】特公平3−11291号公報
【特許文献5】特公平6−13628号公報
【特許文献6】特開昭61−26641号公報
【特許文献7】特開平2−113046号公報
【特許文献8】特開平3−17143号公報
【特許文献9】特開平3−234744号公報
【特許文献10】特開平1−132643号公報
【特許文献11】特開平2−255733号公報
【特許文献12】特開2002−220493号公報
【特許文献13】特表2001−524563号公報
【特許文献14】特開平9−176395号公報
【特許文献15】特表2001−524139号公報
【特許文献16】特表2002−501555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、エチレン系共重合体ゴムとオレフィン系樹脂を主成分とする熱可塑性エラストマー組成物において、高温領域における圧縮永久歪み、耐熱性に優れ、硬度調節が容易であり、押出成形性、射出成形性等の成形性に優れ、オレフィン系樹脂成分を多くしていった場合においても圧縮永久歪みの低下を抑え、組成物の混練を行う際にも混練時の架橋速度が速く製造性に優れ、かつ低分子量物のブリードが無く、樹脂の性能劣化が少ない熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、エチレン系共重合体ゴムのムーニー粘度がML1+4(125℃)において70以上のエチレン系共重合体ゴムを用い、オレフィン系樹脂と溶融混練し、特定量の架橋剤と非常に少量の架橋促進剤を使用することにより、充分な圧縮永久歪みが得られ、さらにオレフィン系樹脂成分を多くしていった場合にも圧縮永久歪みの低下を抑え、組成物の混練を行う際、充分な架橋構造が発現するまでの時間が非常に短く、生産性に優れ、なおかつ、組成物への熱履歴を少なくすることができるため、低分子量物のブリードアウト、樹脂の熱劣化による屈曲疲労、折り曲げ白化等の物性の低下を改善することが可能である熱可塑性エラストマーが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(a)ムーニー粘度ML1+4(125℃)が70以上のエチレン系共重合体ゴム100重量部、
(b)結晶性オレフィン系樹脂20〜250重量部、
(c)架橋剤2〜40重量部、及び
(d)架橋促進剤0.01〜0.5重量部
を含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、(c)架橋剤がフェノール樹脂、臭化フェノール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つの架橋剤であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、(c)架橋剤がアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、(d)架橋促進剤が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び二塩化スズからなる群から選ばれる少なくとも一つの架橋促進剤であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、(d)架橋促進剤が、酸化亜鉛であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、(a)が気相法で重合されたエチレン系共重合体ゴムであることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、(a)がシングルサイト触媒を用いて重合されたエチレン系共重合体ゴムであることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0017】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、カーボンブラックを(a)100重量部に対して15〜50重量部含有する、ことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、(a)がグラニュル状であるエチレン系共重合体ゴムであることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、さらに、(e)非芳香族系ゴム用軟化剤を、成分(a)100重量部に対して、10〜200重量部含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0020】
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、さらに、成分(a)100重量部に対して、(f)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添共役ジエン化合物重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体5〜100重量部含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【0021】
また、本発明の第12の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明において、さらに、(g)有機過酸化物を、成分(a)100重量部に対して、0.01〜1重量部含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、高ムーニー粘度のエチレン共重合体ゴムを用い、促進剤等を従来の使用量より少ない量で、優れた歪み回復力、短期および長期の高温領域における圧縮永久歪みを良好に得ることができ、相容性が良く、耐熱性に優れ、押出及び射出成形性等の性能バランスに優れる熱可塑性エラストマー組成物であるので、自動車部品を中心としたブレーキ部品、油圧又は空気圧作動式装置の部品、弾性ポリマー系部品等の材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の構成成分、熱可塑性エラストマー組成物の製造、熱可塑性エラストマー組成物の用途について詳細に説明する。
【0024】
1.熱可塑性エラストマー組成物の構成成分
(a)ムーニー粘度ML1+4(125℃)が70以上のエチレン系共重合体ゴム
本発明の熱可塑性エラストマー組成物で用いる(a)エチレン系共重合体ゴムは、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等のα−オレフィンが共重合してなるエラストマーあるいはこれらと非共役ジエンとが共重合してなるエチレン系共重合体ゴムが挙げられる。
【0025】
上記非共役ジエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−ノルボルネン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン等を挙げることができる。
【0026】
成分(a)のエチレン系共重合体ゴムの具体例としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン−1−ブテン共重合体ゴム、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体ゴム等が挙げられる。これらの中では、フェノール樹脂架橋剤の架橋性の点からエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。
【0027】
また、本発明で用いる成分(a)のエチレン含有量の範囲は、40〜80重量%が好ましく、より好ましくは50〜75重量%である。特に60〜75重量%の範囲では、製造性と高温での圧縮永久歪み、引張強度のバランスがよく非常に好ましい。
さらに、非共役ジエン含有量は、0.5〜8重量%が好ましく、より好ましくは4〜8重量%である。
【0028】
また、本発明で用いる成分(a)のムーニー粘度ML1+4(125℃)は、70以上であり、好ましくは80〜250、さらに好ましくは90〜150である。成分(a)のムーニー粘度ML1+4(125℃)が70未満であると熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪みが悪化する。また、250を超えると成形性が悪化する。
【0029】
本発明で用いる成分(a)の重量平均分子量は150,000〜450,000であり、好ましくは200,000〜420,000、さらに好ましくは270,000〜400,000である。上限を超えると成形性が悪化し、下限を下回ると圧縮永久歪みが低下する。
【0030】
上記ムーニー粘度ML1+4(125℃)が70以上のEPDMは、主としてメタロセン系触媒を使用した気相流動化法により製造されるものを挙げることができ、例えば、特開2000−336111号公報、特表2002−517361号公報等に記載の方法で製造されるものが好ましく用いることができる。
【0031】
上記ムーニー粘度ML1+4(125℃)が70以上のEPDMは、気相重合法で重合されたものが好ましく、シングルサイト触媒で重合されたものが好ましく、カーボンブラックを(a)100重量部に対して、15〜50重量部含むものがより好ましい。さらに好ましくはグラニュル状であることが好ましい。
シングルサイト触媒で重合されたものは、分子量分布、粘度、非共役ジエン含有量のコントロール性に優れ、ロット間のブレが少ない等の利点があり、グラニュル状であるとベール状に比べ混練時の取り扱いや分散性に優れる。また、気相重合法で重合することにより従来の溶液法では得ることができなかったML1+4(125℃)が70以上のもの、特に80以上のものが得られる。
【0032】
例えば、エチレン−プロピレン又はエチレン−プロピレン−ジエンゴムを単一部位触媒系及び不活性粒状物質の存在下に気相で製造するにあたり、重合を開始する前に該不活性粒状物質を式:AlR3(ここで、各Rは独立して1〜14個の炭素原子を有するアルキル基である)を有するトリアルキルアルミニウム化合物により予備処理することを含む、エチレン−プロピレン又はエチレン−プロピレン−ジエンゴムの気相製造方法による方法が好ましく用いられる。
【0033】
すなわち、エチレン−プロピレン−ジエンを構成する単量体を重合させる前にカーボンブラックをトリアルキルアルミニウム(例えば、トリイソブチルアルミニウム)と接触させ、エチレン−プロピレン又はエチレン−プロピレン−ジエンゴムを単一部位触媒及び不活性粒状物質の存在下に気相で製造するにあたり、重合を開始する前に該不活性粒状物質を式:AlR3(ここで、各Rは独立して1〜14個の炭素原子を有するアルキル基である)を有するトリアルキルアルミニウム化合物により予備処理することを含む、エチレン−プロピレン又はエチレン−プロピレン−ジエンゴムの気相製造方法である。
【0034】
ここで、予備処理及び(又は)不動態化不動態化とは、不活性粒状物質(例えば、カーボンブラック)がトリイソブチルアルミニウム(TIBA)のようなトリアルキルアルミニウムと、このトリアルキルアルミニウムが不活性粒状物質と普通に会合した表面の活性基又は官能基と反応しないか又はこれを"不動態化"させるように、接触されることを意味する。表面活性基は、不活性粒状物質の製造方法から生じる汚染物である。これらの表面官能基は、例えば、−OH、−COOH、−SH、−CO、−C(O)H、−C(O)R、−OR、−COOR、−COOC及びそれらの混合物を包含できる。
【0035】
不活性粒状物質の不動態化は、少なくとも三つの方法により達成することができる。一つの方法は、希釈剤を使用するスラリー中で、例えば、5〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、例えばヘキサンを使用することによってスラリー中で不活性粒状物質をトリアルキルアルミニウム化合物で予備処理することである。また、希釈剤は、6〜20個の炭素原子を有する芳香族炭酸水素であってもよい。もちろん、所望ならば、これら2種の希釈剤の混合物も使用することができる。これに続いて、乾燥不活性粒状物質を得るために周囲温度で又は室温での排気又は希釈剤のパージが実施される。乾燥された不動態化又は予備処理された不活性粒状物質は次いで重合方法に導入される。好ましくは、それは供給管路より流動床反応器に連続的に導入される同時に、一つ以上の供給管路より触媒及び助触媒も別々に又は一緒に導入される。
【0036】
希釈剤中のトリアルキルアルミニウム化合物対不活性粒状物質の比は、不活性粒状物質1g当たり0.001ミリモルのトリアルキルアルミニウム化合から不活性粒状物質1g当たり100ミリモルのトリアルキルアルミニウム化合物まで、好ましくは不活性粒状物質1g当たり0.01ミリモルのトリアルキルアルミニウム化合から不活性粒状物質1g当たり10ミリモルのトリアルキルアルミニウム化合物まで、最も好ましくは不活性粒状物質1g当たり約0.03ミリモルのトリアルキルアルミニウム化合から不活性粒状物質1g当たり0.60ミリモルのトリアルキルアルミニウム化合物までの範囲にある。
【0037】
不活性粒状物質を不動態化させるための第二の手順は、未処理の乾燥不活性粒状物質を反応器に導入し、そこでこれをトリアルキルアルミニウムスラリーと接触させ、次いで希釈剤(例えば、ヘキサン)を除去することである。次いで、触媒系と単量体が当業者に知られた任意の態様で反応器に導入され又は供給されて重合を開始させる。
【0038】
不活性粒状物質を不動態化させるための第三の手順は、まず三つの別々の供給管路を反応器に、未処理の不活性粒状物質(例えば、カーボンブラック(CB)の供給管路、不動態化様反応剤又はトリアルキルアルミニウム(例えば、TIBA)の供給管路及び助触媒/触媒の供給管路が共存するように、接続させることを含む。これに続いて、触媒/助触媒、未処理の不活性粒状物質及びTIBAを反応器に、単量体の一つ以上と共に同時に且つ連続的に供給して、又は続いて単量体の一つ以上を添加して重合を開始させる。
【0039】
ここで、また、単一部位触媒は、メタロセン、即ち、1個以上のπ−結合した部分(即ち、シクロアルカジエニル基)を元素の周期律表の第IIIB〜VIII族又はランタニド系列からの金属原子と会合させた有機金属配位錯体であってよい。架橋した及び架橋してないモノ−、ジ−及びトリ−シクロアルカジエニル/金属化合物が最も普通のメタロセン触媒であり、一般に次式:
(L)y1z(L')MX(x-y-1) (I)
(ここで、Mは周期律表の第IIIB〜VIII族からの金属又は希土類金属であり、L及びL'は同一でも異なっていてもよく、Mに配位したπ−結合した配位子、好ましくは、シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニル基のようなシクロアルカジエニル基(1〜20個の炭素原子を含有する1個以上のヒドロカルビル基により置換されていてよい)であり、R1はLとL'を架橋する置換又は非置換C1〜C4アルキレン基、ジアルキル又はジアリールゲルマニウム又はシリコン基及びアルキル又はアリールホスフィン又はアミン基よりなる群から選択され、各Xは独立して水素、1〜20個の炭素原子を有するアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール又はアリールアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルボオキシ基であり、yは0、1又は2であり、xはMの原子価状態に依存して1、2、3又は4であり、zは0又は1であり、yが0であるときは0であり、x−y≧1である)を有するものである。
【0040】
式(I)により表されるメタロセンの例示的な例は、
・ジアルキルメタロセン類、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジネオペンチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジネオペンチル、ビス(シクロペンタジエニル)チタンジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジベンジル、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジメチル、
・モノアルキルメタロセン類、例えば、塩化ビス(シクロペンタジエニル)チタンメチル、塩化ビス(シクロペンタジエニル)チタンエチル、塩化ビス(シクロペンタジエニル)チタンフェニル、塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメチル、塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエチル、塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムフェニル、臭化ビス(シクロペンタジエニル)チタンメチル、・トリアルキルメタロセン類、例えば、シクロペンタジエニルチタントリメチル、シクロペンタジエニルジルコニウムトリフェニル、シクロペンタジエニルジルコニウムトリネオペンチル、シクロペンタジエニルジルコニウムトリメチル、シクロペンタジエニルハフニウムトリフェニル、シクロペンタジエニルハフニウムトリネオペンチル、シクロペンタジエニルハフニウムトリメチル、・モノシクロペンタジエニルチタノセン類、例えば、三塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルチタン、三塩化ペンタエチルシクロペンタジエニルチタン、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタンジフェニル、
・式:ビス(シクロペンタジエニル)チタン=CH2で表されるカルベン及びこの物質の誘導体、・置換されたビス(シクロペンタジエニル)チタン(IV)化合物類、例えば、ビス(インデニル)チタンジフェニル又はジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタンジフェニル又はジハライド、
・ジアルキル−、トリアルキル−、テトラアルキル−及びペンタアルキル−シクロペンタジエニルチタン化合物類、例えば、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)チタンジフェニル又はジクロリド、ビス(1,2−ジエチルシクロペンタジエニル)チタンジフェニル又はジクロリド、・シリコン、ホスフィン、アミン又は炭素で架橋されたシクロペンタジエン錯体類、例えば、ジメチルシリルジシクロペンタジエニルチタンジフェニル又はジクロリド、メチルホスフィンジシクロペンタジエニルチタンジフェニル又はジクロリド、メチレンジシクロペンタジエニルチタンジフェニル又はジクロリド、及びその他のジハロゲン化物錯体など、
・並びに次の化合物類、例えば、二塩化イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム、二塩化イソプロピル(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウム、二塩化ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム、二塩化ジイソプロピルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム、二塩化ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム、二塩化ジt−ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム、二塩化シクロへキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム、二塩化ジイソプロピルメチレン(2,5−ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム、二塩化イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウム、二塩化ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウム、二塩化ジイソプロピルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウム、二塩化ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウム、二塩化ジt−ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウム、二塩化シクロヘキリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウム、二塩化ジイソプロピルメチレン(2,5−ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウム、二塩化イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタン、二塩化ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタン、二塩化ジイソプロピルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタン、二塩化ジイソブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタン、二塩化ジt−ブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタン、二塩化シクロへキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタン、二塩化ジイソプロピルメチレン(2,5−ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタン、ラセミ−二塩化エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウム(IV)、ラセミ−二塩化エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウム(IV)、ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(1−インデニル)ジルコニウム(IV)、ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウム(IV)、ラセミ−二塩化1,1,2,2−テトラメチルシラニレンビス(1−インデニル)ジルコニウム(IV)、ラセミ−二塩化1,1,2,2−テトラメチルシラニレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウム(IV)、二塩化エチリデン(1−インデニルテトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)、ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(2−メチル−4−t−ブチル−1−シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)、ラセミ−二塩化エチレンビス(1−インデニル)ハフニウム(IV)、ラセミ−二塩化エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ハフニウム(IV)、ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(1−インデニル)ハフニウム(IV)、ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ハフニウム(IV)、ラセミ−二塩化1,1,2,2−テトラメチルシラニレンビス(1−インデニル)ハフニウム(IV)、ラセミ−二塩化1,1,2,2−テトラメチルシラニレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ハフニウム(IV)、二塩化エチリデン(1−インデニル−2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)ハフニウム(IV)、ラセミ−二塩化エチレンビス(1−インデニル)チタン(IV)、ラセミ−二塩化エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)チタン(IV)、ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(1−インデニル)チタン(IV)、ラセミ−二塩化ジメチルシリルビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)チタン(IV)、ラセミ−二塩化1,1,2,2−テトラメチルシラニレンビス(1−インデニル)チタン(IV)、ラセミ−二塩化1,1,2,2−テトラメチルシラニレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)チタン(IV)、二塩化エチリデン(1−インデニル−2,3,4,5−テトラメチル−1−シクロペンタジエニル)チタン(IV)であるが、これらに限定されない。
【0041】
重合で使用するため単一部位触媒の別のタイプは、遷移金属と、置換又は非置換π−結合配位子と1個以上のヘテロアリル部分との錯体、例えば米国特許第5,527,752号に記載のようなものである。好ましくは、このような錯体は、次式:
【0042】
【化1】

(ここで、Mは遷移金属、好ましくはZr又はHfであり、LはMに配位結合した置換又は非置換のπ−結合配位子、好ましくはシクロアルカジエニル配位子であり、各Qは独立して−O−、−NR−、−CR2−及び−S−よりなる群から選択され、好ましくは酸素であり、YはCか又はSのいずれか、好ましくは炭素であり、Zは−OR、−NR2、−CR3、−SR、−SiR3、−PR2、−H及び置換又は非置換アリール基よりなる群から選択され、ただし、Qが−NR−であるときは、Zは−OR、−NR2、−SR、−SiR3、−PR2及び−Hよりなる群から選択されるものとし、好ましくはZは−OR、−CR3及び−NR2よりなる群から選択され、nは1又は2であり、Aはnが2であるときは1価の陰イオン基であり、又はAはnが1であるときは2価の陰イオン基であり、好ましくはAはカルバメート、カルボキシレート又はQ、Y及びZの組み合わせにより描かれるその他のヘテロアリル部分であり、各Rは独立して炭素、珪素、窒素、酸素及び(又は)燐を含有する基であり、ここで1個以上のR基はL置換基に結合していてよく、好ましくは、Rは1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基、最も好ましくはアルキル、シクロアルキル又はアリール基であり、1個以上がL置換基に結合していてよい)
又は次式:
【0043】
【化2】

(ここで、Mは遷移金属、好ましくはZr又はHfであり、LはMに配位結合した置換又は非置換のπ−結合配位子、好ましくはシクロアルカジエニル配位子であり、各Qは独立して−O−、−NR−、−CR2−及び−S−よりなる群から選択され、好ましくは酸素であり、YはCか又はSのいずれか、好ましくは炭素であり、Zは−OR、−NR2、−CR3、−SR、−SiR3、−PR2、−H及び置換又は非置換アリール基よりなる群から選択され、ただし、Qが−NR−であるときは、Zは−OR、−NR2、−SR、−SiR3、−PR2、−H及び置換又は非置換アリール基よりなる群から選択されるものとし、好ましくはZは−OR、−CR3及び−NR2よりなる群から選択され、nは1又は2であり、Aはnが2であるときは1価の陰イオン基であり、又はAはnが1であるときは2価の陰イオン基であり、好ましくはAはカルバメート、カルボキシレート又はQ、Y及びZの組み合わせにより描かれるその他のヘテロアリル部分であり、各Rは独立して炭素、珪素、窒素、酸素及び(又は)燐を含有する基であり、ここで、1個以上のR基はL置換基に結合していてよく、好ましくは、Rは1〜20個の炭素原子を含有する炭化水素基、最も好ましくはアルキル、シクロアルキル又はアリール基であり、1個以上がL置換基に結合していてよく、Tは、1〜10個の炭素原子を含有するアルキレン及びアリーレン基(炭素又はヘテロ原子により置換されていてよい)、ゲルマニウム、シリコーン及びアルキルホスフィンよりなる群から選択される架橋基であり、mは2〜7、好ましくは2〜6、最も好ましくは2又は3である)
の一つを有する。
【0044】
式(II)及び(III)において、Q、Y及びZにより形成される支持置換基は、その高い分極性のために電子効果を発揮する単一電荷の多座配位子であり、シクロペンタジエニル基に類似する。最も好ましい具体例では、次式の二置換カルバメート:
【0045】
【化3】

及び次式のカルボキシレート:
【0046】
【化4】

が使用される。
【0047】
式(II)及び(III)に従う錯体の例には、インデニルジルコニウムトリス(ジエチルカルバメート)、インデニルジルコニウムトリス(トリメチルアセテート)、インデニルジルコニウムトリス(p−トルエート)、インデニルジルコニウムトリス(ベンゾエート)、(1−メチルインデニル)ジルコニウムトリス(トリメチルアセテート)、(2−メチルインデニル)ジルコニウムトリス(ジエチルカルバメート)、(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリス(トリメチルアセテート)、シクロペンタジエニルジルコニウムトリス(トリメチルアセテート)、テトラヒドロインデニルジルコニウムトリス(トリメチルアセテート)及び(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリス(ベンゾエート)がある。好ましい例は、インデニルジルコニウムトリス(ジエチルカルバメート)、インデニルジルコニウムトリス(トリメチルアセテート)及び(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリス(トリメチルアセテート)である。
【0048】
さらに、使用できる別のタイプの単一部位触媒は、次式
【0049】
【化5】

(ここで、Mは周期律表の第IIIB〜VIII族の金属であり、CpはMにη5モードで結合したシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニル基であり、Z'は、硼素又は周期律表の第IVB族の元素及び随意の硫黄又は酸素を含む部分であり、該部分は20個までの非水素原子を有し、随意にCpとZ'は一緒になって縮合環系を形成してよく、X'は30個までの非水素原子を有する陰イオン性の配位子基又は中性のルイス塩基配位子基であり、aはMの原子価に応じて0、1、2、3又は4であり、Y'はZ'及びMに結合した陰イオン性の又は非陰イオン性の配位子基であり、20個までの非水素原子を有する窒素、燐、酸素又は硫黄であり、随意にY'及びZ'は一緒になって縮合環系を形成してよい)
の拘束された配置の触媒である。拘束された配置の触媒は、当業者に周知であり、例えば、米国特許第5,026,798号及び同5,055,438号並びに公開されたヨーロッパ特許出願0416815A2に開示されている。
【0050】
式(IV)における置換基Z'、Cp、Y'、X'及びMを例示すれば、次の通りであるが、これらに限定されない。
【0051】
【表1】

【0052】
また、単一部位触媒は、PCT出願No.WO96/23010に記載のように、別の種類の単一部位触媒先駆物質であるジ(イミン)金属錯体によっても有効である。このようなジ(イミン)金属錯体は、遷移金属と次式:
【0053】
【化6】

(ここで、該遷移金属はTi、Zr、Sc、V、Cr、希土類金属、Fe、Co、Ni及びPdよりなる群から選択され、R2及びR5はそれぞれ独立してヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、ただしイミノ窒素原子に結合した炭素原子はそれに結合した少なくとも2個の炭素原子を有するものとし、R3及びR4はそれぞれ独立して水素、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、或いはR3とR4は一緒になって炭素環式環を形成するようにヒドロカルビレン又は置換ヒドロカルビレンであり、R44はヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、R28は水素、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、或いはR44とR28は一緒になって環を形成し、R45はヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、R29は水素、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、或いはR45とR29は一緒になって環を形成し、各R30は独立して水素、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、或いはR30の2個が一緒になって環を形成し、各R31は独立して水素、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、R46及びR47はそれぞれ独立してヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、ただしイミノ窒素原子に結合した炭素原子はそれに結合した少なくとも2個の炭素原子を有するものとし、R48及びR49はそれぞれ独立して水素、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、R20及びR23は独立してヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、R21及びR22は独立して水素、ヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルであり、nは2又は3であり、ただし、該遷移金属は、重合されるオレフィン単量体により置き換えられ又はこれに付加しうる配位子をそれに結合させており、遷移金属がPdであるときは、該二座配位子は(V)、(VII)又は(VIII)であるものとする)
よりなる群から選択される二座配位子との錯体である。
【0054】
最も好ましい触媒としては、シリルアミド触媒(C5Me4)Me2Si(N−t−Bu)TiCl2、二塩化ジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル−(9−フルオレニル)ジルコニウム[C54C(C652(C138)ZrCl2]、エチレン架橋二塩化ビスフルオレニルジルコニウムが含まれる。上で列挙した先駆物質と共に使用される助触媒は、アルミノキサン、例えばメチルアルミノキサン(MAO)又は変性メチルアルミノキサン(MMAO)である。
【0055】
重合は、既知の装置及び反応条件を使用する既知の気相法でエチレン−プロピレン及びエチレン−プロピレン−ジエンゴムを製造するのに使用することができる。しかし、好ましい重合方法は、流動床を使用する気相法である。本発明を使用できる気相法は、いわゆる"慣用の"気相法及び"凝縮モード"法及び最近の"液状モード"法が含まれる。慣用の流動法は、例えば、米国特許第3,922,322号、同4,035,560号、同4,994,534号及び同5,317,036号に開示されている。凝縮モード重合は、誘発凝縮モード法も含めて、例えば、米国特許第4,543,399号、同4,558,790号、同4,994,534号、同5,317,036号、同5,352,749号及び同5,462,999号に教示されている。液状モード又は液状単量体気相重合は、例えば、米国特許第4,453,471号、米国特許出願第510,375号、WO96/04322号(PCT/US95/09826)及びWO96/04323号(PCT/US95/09827)に記載されている。エチレン−プロピレン共重合体(例えば、EPM)及びエチレン−プロピレン−ジエン三元重合体(例えば、EPDM)の重合のためには、不活性粒状物質、いわゆる流動化助剤が使用される。1種以上のジエンが使用されるならば、液状モード法を使用することが好ましい。
【0056】
ここで、不活性粒状物質は、例えば、米国特許第4,994,534号に記載されており、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク及びこれらの混合物を包含する。EP0727,447号に開示されているもののような活性化カーボンブラックも使用することができる。また、WO98/34960号に開示されているもののような変性カーボンブラックも所望ならば使用することができる。これらのうちでは、カーボンブラック、シリカ及びそれらの混合物が好ましい。カーボンブラックが最も好ましい。使用されるカーボンブラック物質は、約10〜100nmの一次粒度、約0.1〜約10μの凝結体(一次構造)平均寸法、約30〜1,500m2/gの比表面積を有し、随意であるが約80〜350cc/100gのフタル酸ジブチル(DBP)吸収量を示す。使用できるシリカ物質は、約5〜約50nmの一次粒度、約0.1〜約10μの凝結体平均寸法、約2〜約120nmの凝集体平均寸法、約50〜500m2/gの比表面積及び約100〜400cc/100gのDBP吸収量を有する非晶質である。使用できるクレーは、約0.01〜約10μの平均粒度、3〜30m2/gの比表面積及び約20〜100g/100gの吸収量を有する。
【0057】
これらの不活性粒状物質は、流動化助剤(FA)として使用するときは、製造される重合体の重量を基にして、約0.3〜約80重量%、好ましくは約2〜50重量%の間の量で使用される。EPR(例えば、EPDM及びEPM)のような粘着性重合体の場合には、これらの樹脂粒子は、流動床重合法により粘着性重合体の軟化点で又はそれ以上で製造される。
【0058】
重合は、単一の反応器又は多数の反応器で実施することができるが、典型的には直列の2基以上の反応器も使用することができる。好ましくは、単一の反応器が使用される。反応器の必須の部分は、容器、床、ガス分配板、入口及び出口用配管、少なくとも1基の圧縮機、少なくとも1基の循環ガス冷却機及び生成物排出系である。容器内には床の上に速度減少帯域があり、床内に反応帯域がある。一般に、上記の重合モードの全ては、製造される重合体と同一か又は異なった重合体の"種床"を含有する気相流動床において実施される。好ましくは、床は、反応器で製造しようとするものと同じ顆粒状樹脂から作られる。
【0059】
床は、重合させる単量体、初期供給物、補給用供給物、循環(再循環)ガス、不活性キャリアーガス(例えば、窒素、アルゴン又は不活性炭化水素、例えばエタン、プロパン、イソペンタン)及び所望ならば変性剤(例えば、水素)からなる流動化用ガスを使用して流動化される。従って、重合過程の間では、床は、生成した重合体粒子、成長しつつある重合体粒子、触媒粒子及び随意の流動助剤(流動化助剤)がこれらの粒子を分離させ且つ流体として作用させるのに十分な流量又は速度で導入される重合用及び変性用ガス成分によって流動化されてなるものからなる。
【0060】
一般に、気相反応器における重合条件は、温度が大気以下から大気以上までの範囲にあり得るが、典型的には約0〜120℃、好ましくは約40〜100℃、最も好ましくは約40〜80℃の範囲にあり得るようなものである。分圧は、使用する特定の単量体及び重合温度に依存して変動し、それは約1〜300psi(6.89〜2,006キロパスカル)、好ましくは1〜100psi(6.89〜689キロパスカル)の間であることができる。
【0061】
ここで、さらに、EPRの製造に使用されるジエンは、共役又は非共役ジエン、例えば、約4〜約20個、好ましくは約4から12個の炭素原子を有する線状、分岐状又は環状の炭化水素ジエンを包含することができる。好ましいジエンには、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン(MOD)、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、エチリデンノルボルネン(ENB)などが含まれる。最も好ましいのは、5−エチリデン−2−ノルボルネン及びMODである。
【0062】
また、本発明で用いる成分(a)のDSCにおける結晶部分の融点は、50℃以下であり、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。
ここで、DSCによる融点は、示差走査熱量計(DSC)によって得られるピークトップ融点であり、具体的には、DSCを用い、サンプル量10mgを採り、190℃で5分間保持した後、−10℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、−10℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で200℃まで測定して求める値である。
【0063】
(b)結晶性オレフィン系樹脂
本発明の熱可塑性エラストマー組成物における結晶性オレフィン系樹脂(b)は、熱可塑性エラストマー組成物の硬度調節、成形性、耐熱性向上、高温での圧縮永久歪みを向上させると同時に製造性の向上、低温で溶融するため成形性向上の目的で用いられる。
本発明で用いられる成分(b)は、結晶性のオレフィン系樹脂で、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1等のオレフィンの単独重合体、またはこれらのオレフィンを主体とする共重合体が挙げられる。
これらの中では、エチレンもしくはプロピレンの単独重合体、またはエチレンもしくはプロピレンを主体とする結晶性の共重合体が挙げられ、具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体等の結晶性エチレン系重合体、プロピレンホモ重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の結晶性プロピレン系共重合体が挙げられる。ここで、エチレンもしくはプロピレンの共重合体に用いるα−オレフィンとしては、炭素数2〜10のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクテン−1等が挙げられる。
エチレンもしくはプロピレンを主体とする結晶性の共重合体としては、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ヘキセン−1共重合体、エチレン・オクテン−1共重合体等の結晶性エチレン系重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1三元共重合体等の結晶性プロピレン系重合体が挙げられる。
【0064】
これらの中では、耐油性を要求される場合は、特に成分(b−1)結晶性プロピレン系樹脂が好ましい。(b−1)結晶性プロピレン系樹脂の融点は、130℃以上が好ましく、より好ましくは140℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上である。
ここで、DSCによる融点は、示差走査熱量計(DSC)によって得られるピークトップ融点であり、具体的には、DSCを用い、サンプル量10mgを採り、190℃で5分間保持した後、−10℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、−10℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で200℃まで測定して求める値である。
成分(b−1)結晶性プロピレン系樹脂は、熱可塑性エラストマー組成物の硬度調節、成形性、耐熱性向上の目的で用いられる。
【0065】
また、熱可塑性エラストマー組成物の相容性が良く混練時間を短くしたい場合や短期(48時間未満)の圧縮永久歪みを要求する場合には、特に成分(b−2)シングルサイト触媒で合成されたエチレン系樹脂が好ましい。
【0066】
成分(b−2)シングルサイト触媒で合成されたエチレン系樹脂は、上記目的の他、得られる熱可塑性エラストマー組成物の高温での圧縮永久歪みを向上させると同時に製造性の向上、低温で溶融するため成形性に寄与する成分である。また、熱可塑性エラストマー組成物の低温での混練を可能とし、そのうえ成分(a)との相容性が極めて良いため得られる組成物からなる成形体の折り曲げ白化性や耐屈曲疲労性を良好にすることができる。
【0067】
シングルサイト触媒にて重合されたエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(エチレンと少量の好ましくは1〜10モル%のブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などのα−オレフィンとのコポリマー)などのポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマーが挙げられるが、特に好ましいのはエチレン・オクテン−1共重合体、エチレン・ヘキセン−1共重合体である。
【0068】
成分(b−2)の密度は、0.85〜0.91g/cm3が好ましく、より好ましくは0.89〜0.910g/cm3である。上限を超えると圧縮永久歪みの低下、柔軟性低下、相容性低下の問題を生じ、下限未満の場合は引張強度、耐熱性が低下し好ましくない。また、成分(b−2)の融点は、60〜110℃が好ましく、さらに好ましくは60〜100℃である。
ここで、DSCによる融点は、示差走査熱量計(DSC)によって得られるピークトップ融点であり、具体的には、DSCを用い、サンプル量10mgを採り、190℃で5分間保持した後、−10℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、−10℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で200℃まで測定して求める値である。
【0069】
また、密度が下限値未満のポリエチレンは、共重合のコントロールが難しく、具体的には低分子量領域のコモノマーの含有量が高分子量領域より多くなることによる低分子量物のブリードアウト、またその他に機械強度への悪影響等があるため好ましくない。
【0070】
なお、マルチサイト触媒で合成されたエチレン系樹脂は、成分(a)との相容性が悪いことから得られる組成物からなる成形品の折り曲げ白化性、耐屈曲疲労性、耐オイルブリード性に劣るものとなり好ましくない。
【0071】
さらに、成分(b−2)のMFRは、10dg/分以上が好ましく、20dg/分を超えると成形加工性がさらに良好となり好ましい。下限未満では製造性の低下・成形加工性の低下の問題があり好ましくない。上限は90dg/分未満が好ましく、さらに好ましくは70dg/分未満が好ましい。上限を超えると圧縮永久歪みの低下の問題があり好ましくない。
ここで、MFRは、JIS K 7210(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0072】
本発明で用いる(b−2)成分のシングルサイト触媒による重合は、例えば、特開昭61−296008号公報に記載された方法に従い、支持体及び周期律表の4b族、5b族並びに6b族の金属の少なくとも1つを含むメタロセンとアルモキサンとの反応生成物で構成され、当該反応生成物が支持体の存在のもとで形成されることを特徴とする重合体触媒によって重合された重合体が挙げられる。また、特開平3−163008号公報に記載された、元素の周期律表の3族(スカンジウム以外)、4〜10族又はランタナイド系列の金属、及び拘束誘起部分で置換された脱局在化π結合部分を含む金属配位錯体であって、該錯体が該金属原子のまわりに拘束幾何形状を持っていて該局在化置換π結合部分の中心と少なくとも1つの残存置換分の中心との間の金属角度が該拘束誘起置換分が水素によって置換されていることのみ異なる比較錯体中のこのような角度により小さく、そして更に1つ以上の脱局在化置換π結合部分を含むそのような錯体について錯体のそれぞれに金属原子ごとにその1つのみが環状の脱局在化置換π結合部分であることを特徴とする金属配位錯体より重合された重合体が挙げられる。
【0073】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物における結晶性オレフィン系樹脂(b)の融点は、50℃以上であり、好ましくは60℃以上である。特に耐油性を要求される場合には、130℃以上が好ましく、より好ましくは140℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上である。
ここで、DSCによる融点は、示差走査熱量計(DSC)によって得られるピークトップ融点であり、具体的には、DSCを用い、サンプル量10mgを採り、190℃で5分間保持した後、−10℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、−10℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で200℃まで測定して求める値である。
【0074】
成分(b)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、10〜250重量部であり、好ましくは30〜150重量部である。成分(b)の配合量が前記上限値を超えると圧縮永久歪みが低下し、下限を下回ると成形性、耐屈曲疲労性が低下する。
【0075】
特に成分(b−2)シングルサイト触媒で合成されたエチレン系樹脂を使用する場合には、上記範囲の中でも成分(a)100重量部に対して、10〜80重量部がより好ましく、よりさらに好ましくは20〜60重量部である。
【0076】
(c)架橋剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物で用いる架橋剤(c)は、エチレン系共重合体ゴム(a)を架橋できる架橋剤であれば、有機過酸化物、硫黄系であってもよいが、その中でもフェノール樹脂系架橋剤が好ましい。
【0077】
好ましいフェノール樹脂架橋剤は、レゾール樹脂と呼ばれ、アルキル置換フェノール又は非置換フェノールの、アルカリ媒体中のアルデヒドでの縮合、好ましくはホルムアルデヒドでの縮合、又は二官能性フェノールジアルコール類の縮合により製造される。アルキル置換されたフェノールのアルキル置換体は典型的に1乃至約10の炭素原子を有する。p−位において1乃至約10の炭素原子を有するアルキル基で置換されたジメチロールフェノール類又はフェノール樹脂が好ましい。それらのフェノール系架橋剤は、典型的には、熱架橋性樹脂であり、フェノール樹脂架橋剤またはフェノール樹脂と呼ばれる。熱可塑性加硫ゴムのフェノール樹脂による架橋の具体的な例としては、米国特許第4,311,628号、米国特許第2,972,600号及び米国特許第3,287,440号に記載され、これらの技術も本発明で用いることができる。
【0078】
好ましいフェノール樹脂架橋剤の例は、下記一般式、
【0079】
【化7】

(式中、Qは、−CH2−及び−CH2−O−CH2−から成る群から選ばれる二価基であり、mは0又は1乃至20の正の整数であり、R'は有機基である)により定義される。
好ましくは、Qは、二価基−CH2−O−CH2−であり、mは0又は1乃至10の正の整数であり、R'は20未満の炭素原子を有する有機基である。なおより好ましくは、mは0又は1乃至5の正の整数であり、R'は4乃至12の炭素原子を有する有機基である。
【0080】
上記フェノール樹脂の中では、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂、臭素化アルキルフェノール樹脂等が好ましく、環境面から臭素化していないものが望ましいが、末端の水酸基を臭素化したものであっても良く、特に、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0081】
上記フェノール系架橋剤の製品例としては、タッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250−I(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250−III(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、PR−4507(群栄化学工業社製)、Vulkaresat510E(Hoechst社製)、Vulkaresat532E(Hoechst社製)、Vulkaresen E(Hoechst社製)、Vulkaresen 105E(Hoechst社製)、Vulkaresen 130E(Hoechst社製)、Vulkaresol 315E(Hoechst社製)、Amberol ST 137X(Rohm&Haas社製)、スミライトレジンPR−22193(住友デュレズ社製)、Symphorm−C−100(Anchor Chem.社製)、Symphorm−C−1001(Anchor Chem.社製)、タマノル531(荒川化学社製)、Schenectady SP1059(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1045(SchenectadyChem.社製)、CRR−0803(U.C.C社製)、Schenectady SP1055(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1056(Schenectady Chem.社製)、CRM−0803(昭和ユニオン合成社製)、Vulkadur A(Bayer社製)が挙げられ、その中でもタッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂)を好ましく使用できる。
【0082】
上記珪素含有架橋剤としては、一般的に、少なくとも1つのSiH基を有する水素化珪素化合物が含まれる。それらの化合物は、ヒドロシリル化触媒の存在下で不飽和ポリマーの炭素炭素二重結合と反応する。本発明を実施するのに有用な水素化珪素化合物には、メチル水素ポリシロキサン類(methylhydrogen polysiloxanes)、メチル水素ジメチル−シロキサンコポリマー類(methylhydrogen dimethyl−siloxane copolymers)、アルキルメチルポリシロキサン類(alkyl methyl polysiloxanes)、ビス(ジメチルシリル)アルカン類、ビス(ジメチルシリル)ベンゼン及びそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0083】
好ましい水素化珪素化合物は、下記式、
【0084】
【化8】

(式中、各Rは、1乃至20の炭素原子を有するアルキル、4乃至12の炭素原子を有するシクロアルキル及びアリールから独立して選ばれ、mは1乃至約50の値を有する整数であり、nは1乃至約50の値を有する整数であり、pは、0乃至約6の値を有する整数である)
により定義され得る。
【0085】
成分(c)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、2〜40重量部であり、好ましくは5〜20重量部である。成分(c)の配合量が前記上限値を超えると、熱可塑性エラストマー組成物の流動性が著しく減少し、製造・成形が困難となる。また、圧縮永久歪み、耐屈曲疲労性も悪化する。一方、前記下限値未満では、熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪み、耐屈曲疲労性が悪化する。
【0086】
(d)架橋促進剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物で用いる架橋促進剤(d)は、成分(c)の架橋剤の機能をより効果的に向上させるために用いる。成分(c)として、フェノール樹脂架橋剤を用いる場合は、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二塩化スズ等が挙げられる。なお、酸化亜鉛を架橋触媒として用いる際には、分散剤として、ステアリン酸金属塩等を併用することができる。上記促進剤の中でも酸化亜鉛が特に好ましい。
【0087】
成分(d)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.05〜0.2重量部である。成分(d)の配合量が前記上限値を超えると架橋が均一に起こらなくなり、また、得られる熱可塑性エラストマー組成物の流動性が低下し製造・成形が困難となり、折り曲げ白化性、耐屈曲疲労性、耐オイルブリード性が悪化し、同時に圧縮永久歪みが悪化する。一方、前記下限値未満では架橋効率が低下し、得られる熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪みが悪化する。
【0088】
本発明の中では、成分(c)として非ハロゲン系硬化剤と成分(d)として酸化亜鉛との組み合わせが好ましく、その中でも非ハロゲン系フェノール硬化剤と酸化亜鉛との組み合わせが特に好ましい。その場合ハロゲン供与体が無くとも、成分(c)と成分(d)の添加量を上記の範囲とすることにより良好な高温領域における圧縮永久歪みを発現することができる。
【0089】
また、(c)架橋剤と(d)架橋促進剤との比率は、(d)/(c)=0.03/100〜50/100が好ましく、より好ましくは0.2/100〜6/100であり、さらに好ましくは0.5/100〜3/100である。
【0090】
本発明の中でも、非ハロゲン系架橋剤と酸化亜鉛との組み合わせが好ましく、その中でも非ハロゲン系フェノール架橋剤と酸化亜鉛との組み合わせが特に好ましい。その場合はハロゲン供与体が無くとも、成分(d)に対する成分(c)の添加量を上記の比率で用いることにより良好な高温領域における圧縮永久歪みを発現することができる。
【0091】
(e)非芳香族系ゴム用軟化剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、非芳香族系ゴム用軟化剤(e)を含有させることができる。成分(e)は、熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性付与、成形加工性改良の目的で用いられる。
【0092】
非芳香族系ゴム用軟化剤としては、例えば、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられ、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、ヘプタコンタン等のn−パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン(分岐状飽和炭化水素)及び、これらの飽和炭化水素の誘導体等を挙げることができる。これらのパラフィンは、混合物で用いられ、室温で液状であるものが好ましい。
【0093】
室温で液状である非芳香族系ゴム用軟化剤の市販品としては、日本油脂株式会社製のNAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油)、出光興産株式会社製のPW−90(n−パラフィン系プロセスオイル)、出光石油化学株式会社製のIP−ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8wt%以上のイソパラフィン)、三光化学工業株式会社製のネオチオゾール(n−パラフィン系プロセスオイル)等が挙げられる。
【0094】
また、非芳香族系ゴム用軟化剤には、少量の不飽和炭化水素及びこれらの誘導体が共存していても良い。不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のエチレン系炭化水素、アセチレン、メチルアセチレン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシン等のアセチレン系炭化水素を挙げることができる。
【0095】
成分(e)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、10〜200重量部が好ましく、より好ましくは30〜140重量部である。成分(e)の配合量が前記上限値を超えると得られる組成物からなる成形体表面にブリードが生じやすくなる。
【0096】
(f)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添共役ジエン化合物重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添共役ジエン化合物重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体(f)を含有させることができる。成分(f)としては、(f−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、(f−2)水添芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、(f−3)水添共役ジエン化合物重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体が挙げられ、(e)非芳香族系ゴム用軟化剤を保持し、柔軟性を調整するために用いられる。
【0097】
(f−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体は、(f−1−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体、(f−1−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体が挙げられる。
【0098】
(f−1−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、なかでもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、なかでもブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せが好ましい。
【0099】
(f−1−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体は、芳香族ビニル化合物を3〜60重量%、好ましくは5〜50重量%含む。
【0100】
(f−1−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の数平均分子量は、好ましくは150,000〜500,000、より好ましくは、170,000〜400,000、更に好ましくは200,000〜350,000の範囲であり、分子量分布は10以下である。
【0101】
上記(f−1−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の具体例としては、スチレンとブタジエンとの共重合体(SBR)等が挙げられる。
【0102】
(f−1−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の場合は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体である。例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体を挙げることができる。
【0103】
上記(f−1−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を5〜60重量%、好ましくは20〜50重量%含む。
【0104】
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、好ましくは、芳香族ビニル化合物のみからなるか、または芳香族ビニル化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。
【0105】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、好ましくは、共役ジエン化合物のみからなるか、または、共役ジエン化合物50重量%以上、好ましくは、70重量%以上と芳香族ビニル化合物との共重合体ブロックである。
【0106】
(f−1−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000〜1,500,000、より好ましくは、10,000〜550,000、更に好ましくは100,000〜400,000の範囲であり、分子量分布は10以下である。ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
【0107】
また、これらの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、分子鎖中の共役ジエン化合物又は芳香族ビニル化合物由来の単位の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状又はこれらの任意の組合せでなっていてもよい。芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックA又は共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBがそれぞれ2個以上ある場合には、各重合体ブロックはそれぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
【0108】
(f−1−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、なかでもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、なかでもブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せが好ましい。
【0109】
上記(f−1−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)等が挙げられる。
【0110】
これらの(f−1−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒又はチーグラー型触媒を用い、不活性媒体中でブロック重合させて得ることができる。
【0111】
(f−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の水添物は、(f−2−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水添物、(f−2−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水添物が挙げられる。
【0112】
(f−2−1)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物としては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物50重量%以下とのランダム構造を主体とする共重合体であって、芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。
また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれる。
【0113】
また、引張特性、耐加熱変形性の観点から、成分(f−2−1)のメルトマスフローレート(ASTM D 1238準拠、230℃、荷重21.18Nで測定)は、12g/10分以下のものが好ましく、6g/10分以下のものが更に好ましい。
さらに、成分(f−2−1)芳香族ビニル化合物含有量は、柔軟な樹脂組成物を得るという目的から25重量%以下の少ないものが好ましい。20重量%以下ならより好ましい。また同じ目的から共役ジエン化合物の炭素−炭素二重結合を水素添加により飽和させることも重要である。
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のランダム構造において、該芳香族ビニル化合物は、ランダムに結合しておりまた、該共役ジエン化合物に基づく脂肪族二重結合の少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
具体的な成分(f−2−1)として、例えば、ダイナロン1320P(ジェイエスアール社)等が挙げられる。
【0114】
(f−2−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水添物としては、芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体または共役ジエンブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いることのできる芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体成分は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも1個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られる重合体である。例えば、A−B、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加して得られるものである。
【0115】
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、芳香族ビニル化合物のみからなる重合体か、芳香族ビニル化合物と50重量%未満の共役ジエン化合物との共重合体であってもよい。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、共役ジエン化合物のみからなる重合体か、共役ジエン化合物と50重量%未満の芳香族ビニル化合物の共重合体であってもよい。
【0116】
(f−2−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水添物を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、なかでもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、なかでもブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せが好ましい。
【0117】
芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック重合体成分は、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、その水素添加率は任意であるが、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。また、そのミクロ構造は、任意であり、例えば、ブロックBがブタジエン単独で構成される場合、ポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構造が好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。また、1,2−結合を選択的に水素添加した物であっても良い。ブロックBがイソプレンとブタジエンの混合物から構成される場合、1,2−ミクロ構造が好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満、より更に好ましくは15%未満である。
【0118】
ブロックBがイソプレン単独で構成される場合、ポリイソプレンブロックにおいてはイソプレンの好ましくは70〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつイソプレンに由来する脂肪族二重結合の好ましくは少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。
【0119】
用途により(f−2−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水添物を使用する場合には、好ましくは上記水添物を用途に合わせて適宜使用することが出来る。
【0120】
また、重合体ブロックAは、成分全体の5〜70重量%の割合で存在するのが好ましい。さらに、成分全体の重量平均分子量は、150,000〜500,000が好ましく、さらに好ましくは200,000〜400,000である。重量平均分子量が200,000を下回ると、オイルブリードを生じる。
【0121】
(f−2−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水添物成分の具体例としては、スチレン−エチレン・ブテン共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(部分水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、SBBS)等を挙げることができる。
この中でも、本発明の特徴である柔軟性付与効果に優れ、オイルブリードが極めて少ない点で、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)が最も好ましい。
【0122】
これらの芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られるブロック共重合体の製造方法としては、数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒又はチーグラー型触媒を用い、不活性媒体中でブロック重合させて得ることができる。こうしたブロック共重合体の水素添加処理は、公知の方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に行うことができる。
【0123】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いることのできる共役ジエンブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、ブタジエンのブロック共重合体を水素添加して得られる結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン−ブテンブロックを有するブロック共重合体(CEBC)等が挙げられる。本発明においては、共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、共役ジエンブロック共重合体の水素添加物の重量平均分子量は、500,000以下であり、好ましくは200,000〜450,000である。重量平均分子量が500,000を超えると、押出・射出成形性が悪化し、重量平均分子量が200,000を下回ると、オイルブリードを生じ、圧縮永久歪みが悪化する。
【0124】
成分(f)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、5〜100重量部であり、好ましくは5〜60重量部である。成分(f)の量が5重量部未満であるとオイルブリードが生ずる。また、100重量部を超えると、圧縮永久歪みが低下する。
【0125】
上記(f)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添共役ジエン化合物重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体の中でも、本願の特徴である柔軟性付与効果に優れ、オイルブリードが極めて少ない点で、(f−2−2)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水添物が好ましく、中でもスチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)がさらに好ましく、その中でも分子量の点でセプトン4077が最も好ましい。
【0126】
(g)有機過酸化物
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、必要に応じて、有機過酸化物(g)を含有させることができる。成分(g)は、熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪みをさらに向上させる目的で用いられる。
【0127】
成分(g)としては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、m−メチルベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、琥珀酸パーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル及びベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。
【0128】
これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(1分半減期温度147℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン(1分半減期温度179℃)および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3(1分半減期温度194℃)等が好ましい。本発明の組成物の場合は、1分半減期温度が165℃以下の低温分解型の有機過酸化物を使用しても良い。
【0129】
成分(g)の配合量は、配合する場合は、成分(a)100重量部に対して、0.01〜1重量部であり、好ましくは0.05〜0.5重量部である。配合量が1重量部を超えると有機過酸化物による分解反応が優先され、圧縮永久歪みが低下する。
【0130】
(h)その他の成分
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、ステアリン酸、シリコーンオイル等の離型剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤(アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウォラストナイト、クレー)、発泡剤(有機系、無機系)、難燃剤(水和金属化合物、赤燐、ポリりん酸アンモニウム、アンチモン、シリコーン)などを配合することができる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−p−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうちフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
【0131】
2.熱可塑性エラストマー組成物の製造
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(a)〜(d)、又は必要に応じて、その他の成分を加えて、各成分を同時にあるいは任意の順に加えて混合することにより製造することができる。
【0132】
溶融混練の方法は、特に制限はなく、通常公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等を使用し得る。例えば、適度なL/Dの二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いることにより、上記操作を連続して行うこともできる。ここで、溶融混練の温度は、好ましくは160〜200℃であり、架橋を十分に進行させるためには混練時間を3〜30分とることが好ましい。さらに好ましくは5〜20分である。
【0133】
3.用途
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、高温領域における圧縮永久歪みに優れ、押出成形性、射出成形性に優れるので、ブロー成形法、押出成形法、射出成形法、熱成形法、弾性溶接(elasto−welding)法、圧縮成形法等により成形される次のような用途に用いることができる。
【0134】
具体的な用途としては、例えば、自動車部品として、ライティングガスケット、3Dエクスチェンジブロークリーンエアダクト、フーロシールヒンジカバー、ベリーパン(ロボテックエクストゥルージョンガスケット)、カップホルダー、サイドブレーキグリップ、シフトノブカバー、シート調整ツマミ、IPスキン、フラッパードアシール、ワイヤーハーネスグロメット、ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションカバーブーツ(ストラットカバーブーツ)、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、ルーフガイド 、トランクリッドシール、モールデッドクォーターウィンドガスケット、コーナーモールディング、グラスエンキャプシュレーション(ロボテックエクストゥルージョン)、フードシール、グラスエンキャプシュレーション(射出成形)、グラスランチャンネル、セカンダリーシール 等が挙げられる。また、工業部品としては、高層ビルのカーテンウォールガスケット、窓枠シール、金属類/補強繊維類への接着、パーキングデッキシール、エキスパンションジョイント、地震対策用エキスパンションジョイント、住宅窓ドアシール(例えば共押出等)、住宅ドアシール、手すり表皮、歩行用マット(シート)、足ゴム、洗濯機排水ホース(PPとの二色成形等)、洗濯機フタのシール、エアコンモーターマウント、排水管シール(PPとの二色成形等)、ライザーチューブ、(PVC等)パイプ継手パッキン、キャスターホイール、プリンタロール、ダクトホース、ワイヤー&ケーブル、注射器シュリンジガスケット等が挙げられる。さらに、日用品・部品として、スピーカーサラウンド、ヘアブラシグリップ、かみそりグリップ、化粧品グリップ・フット、歯ブラシグリップ、日用品ブラシグリップ、ほうきの毛先、台所用品グリップ、計量スプーングリップ、枝切りバサミグリップ、ガラス耐熱容器フタ、園芸用品グリップ、ハサミグリップ、ステイプラーグリップ、コンピュータマウス、ゴルフバッグ部品、壁塗りコテグリップ、チェーンソーグリップ、スクリュードライバーグリップ、ハンマーグリップ、電気ドリルグリップ、研磨機グリップ、目覚まし時計等に好ましく使用できる。
【0135】
さらに詳しい具体的な用途としては、例えば、ウェザーシールのような乗り物部品、カップ、カップリングディスク及びダイヤフラムカップのようなブレーキ部品、恒速度継手及びラック伝達継手のようなブーツ、チューブ、シーリングガスケット、油圧又は空気圧作動式装置の部品、Oリング、ピストン、弁、弁座、バルブガイド及び他の弾性ポリマー系部品、又は金属/プラスチック組み合わせ物質のような他の物質と組み合わされた弾性ポリマー、Vベルト、布表面仕上げVを有する切頭されたリブを有する(with truncated ribscontaining fabric faced V's)歯付きベルト、研削短繊維強化V又は短繊維フロック加工されたVを有する成形ゴムを含む伝動ベルト等が挙げられる。
【実施例】
【0136】
以下実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた評価方法及び原料は以下の通りである。
【0137】
1.評価方法
(1)比重:JIS K 7112に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを用いて測定を行った。
(2)硬度:JIS K 7215に準拠し、試験片は6.3mm厚プレスシートを用い、デュロメータ硬さ・タイプA(ショアA)にて測定した。
(3)引張強さ、100%モジュラス、伸び:JIS K 6301に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、3号ダンベル型に打抜いて使用した。引張速度は500mm/分とした。
(4)圧縮永久歪み:JIS K 6262に準拠し、試験片は6.3mm厚さプレスシートを使用した。25%変形の条件にて、120℃×22時間で歪み解放後1時間後に測定した。
(5)混練時間:圧縮永久歪みが(4)で測定した値を安定して示すまでに必要な混練時間を測定した。混練は3L加圧ニーダーにて行った。混練時間5分ごとにサンプルを採取し圧縮永久歪みを測定し、値が安定する最短の混練時間を評価した。
(6)製造性:容量3Lの加圧ニーダー型ミキサーにて製造し(設定温度は180℃で10〜30分混練)、次の基準で評価した。
○:熱可塑性の混練物が排出された。
×:排出されたものは熱可塑性ではない。
(7)押出成形性:40mm押出機で17mm径の丸棒を、130〜140℃で押出成形し、ドローダウン性、表面外観や形状を観察し、次の基準で評価した。
○:良い
△:表面外観や形状は良好だが僅かにドローダウンがある
×:悪い
(8)射出成形性:120t射出成形機で130mm×130mm×2mmのシートを130〜150℃で射出成形し、その外観を目視により観察し、フローマーク、ヒケ発生の有無を次の基準で評価した。
○:良い
△:ヒケも外観は良好だが僅かにフローマークがある
×:悪い
(9)折り曲げ白化性:2mm厚プレスシートを180度折り曲げクリップで固定し、1時間放置し、クリップをはずした際の状態を次の基準で評価した。
○:折り目に割れ、白化、しわがない
×:折り目に割れ、白化、しわがある
(10)耐屈曲疲労性:JIS K 6260に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを、幅25mm、長さ150mmに打抜いて使用した。往復運動におけるつかみ具間の最大距離は75mmで、最少距離は18mmとした。この往復運動を毎分300回の速さで1,000,000回行った後、試験片をはずした際の状態を目視で確認し、次の基準で評価した。
○:亀裂なし
×:亀裂あり
(11)耐オイルブリード性:180℃、予熱2分/加圧2分、圧力50kg/cm2の熱プレスで得られた130×160×2mm厚のシートをクラフト紙に挟んで、直径70mm円盤状の500gの重りをのせ、室温(23℃)で168時間放置後のクラフト紙の状態を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:クラフト紙にオイルブリードの痕跡が認められない
△:クラフト紙にかすかにオイルブリードの痕跡が認められる
×:クラフト紙にオイルブリードの痕跡が認められる
(12)耐油性(体積膨潤率(%)):JIS K 6258に準拠し、試験片は2mm厚プレスシートを使用し、120℃×24時間、IRM#902浸漬後の膨潤率を測定した。
【0138】
2.使用原料
(a−1)エチレン系共重合体(EPDM−1):Nordel MG 47085(デュポンダウエラストマー社製)、密度:0.86g/cm3、ムーニー粘度ML1+4(125℃):85(ASTM D−1646)、重量平均分子量:280,000、エチレン:70%、ENB:4.5%、Carbon black:30phr、合成法:気相法、重合触媒:シングサイト触媒
(a−2)エチレン系共重合体(EPDM−2):Nordel IP 4760P(デュポンダウエラストマー社製)、密度:0.88g/cm3、ムーニー粘度ML1+4(125℃):60(ASTM D−1646)、重量平均分子量:170,000、エチレン:67%、ENB:4.9%、合成法:溶液法、重合触媒:シングサイト触媒
(b−1)結晶性ポリプロピレン(PP):Novatec BC08AHA(日本ポリケム(株)製)、密度:0.902g/cm3、硬さ:94(ShoreA)、MFR(230℃、21.18N荷重):80dg/分、重量平均分子量:100,000
(b−2)シングルサイト触媒で合成されたエチレン系樹脂(s−PE):Engage EG8402(Dupont Dow Elastomers社製)比重:0.902、硬さ:94(ShoreA)、ムーニー粘度ML1+4(121℃):5以下、重量平均分子量:100,000、融点98℃、エチレン−オクテン共重合体
(c)フェノール樹脂:Tackirol 201(田岡化学(株)製)
(d)酸化亜鉛(ZnO):亜鉛華2種(堺化学(株)製)
(e)非芳香族系ゴム用軟化剤(Oil):パラフィンオイル、PW−380(出光興産(株)製) 平均分子量746
(f)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水添物(SEEPS):セプトン4077(クラレ株式会社製)、スチレン含有量30重量%、数平均分子量260,000、重量平均分子量320,000、分子量分布1.23、水素添加率90%以上
(g)有機過酸化物:パーヘキサ25B(2,5−ジメチル2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン;日本油脂株式会社製)
【0139】
実施例1〜6、比較例1〜8
表2に示す成分比で各成分を、容量3Lの加圧ニーダータイプのミキサーに投入して、混練温度180℃、混練時間10〜30分で溶融混練をして、ペレット化した。次に、得られたペレットを射出成形、及びプレス成形して試験片を作成し、夫々の試験に供した。評価結果を表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
表2より明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は良好な特性を有していた(実施例1〜6)。
一方、比較例1及び2は、成分(b)の配合量を本発明の範囲外にしたものである。成分(b)が少ないと、製造性、成形性、耐屈曲疲労性、耐油性が低下する。成分(b)が多いと、圧縮永久歪みが低下する。
比較例3及び4は、成分(c)の配合量を本発明の範囲外にしたものである。成分(c)が少ないと、圧縮永久歪み、耐屈曲疲労性が低下する。成分(c)が多いと、製造性、成形性が低下し、圧縮永久歪み、耐屈曲疲労性も低下する。
比較例5及び6は、成分(d)の配合量を本発明の範囲外にしたものである。成分(d)が少ないと、圧縮永久歪みが低下する。成分(d)が多いと、製造性、成形性、折り曲げ白化性、耐屈曲疲労性、耐オイルブリード性、圧縮永久歪みが低下する。
比較例7は、成分(a)として、ムーニー粘度が低すぎるEPDMを用いたものである。ムーニー粘度が低いと、圧縮永久歪みが低下し、架橋時間も長くなる。
比較例8は、本発明の架橋剤、架橋促進剤を用いないで有機過酸化物を用いた組成物である。圧縮永久歪に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)気相法で合成されたムーニー粘度ML1+4(125℃)が70以上のエチレン系共重合体ゴム100重量部、
(b)結晶性オレフィン系樹脂20〜250重量部
(c)フェノール樹脂系架橋剤2〜40重量部、
(e)非芳香族系ゴム用軟化剤10〜200重量部、及び
(f)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、水添共役ジエン化合物重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つの重合体5〜100重量部
を含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
(f)がスチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
(f)の重量平均分子量が200,000〜400,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
(c)フェノール樹脂系架橋剤がアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
カーボンブラックを(a)100重量部に対して15〜50重量部含有する、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
(a)がグラニュル状であるエチレン系共重合体ゴムであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2009−13428(P2009−13428A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271505(P2008−271505)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【分割の表示】特願2003−198645(P2003−198645)の分割
【原出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】