説明

熱可塑性デンプンを含む組成物

【解決手段】 本発明は、0.905g/cm未満の密度を有する超低密度ポリエチレンと、エチレン−アクリル酸共重合体と、熱可塑性デンプン及び/又はその構成成分を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、熱可塑性デンプン(TPS)を含む組成物に関する。特に、本発明は、TPSとポリオレフィンを含む組成物、その製造方法、及びそれから形成される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能性及び環境に対する高まり続ける重要視にともない、再生可能な生物学的に誘導された成分に由来する又は斯かる成分を含む高分子材料の開発に向けた研究が対応して増加している。
【0003】
斯かる高分子材料の開発における今までの多くの研究は、デンプンなどの自然に存在する生体高分子の利用に焦点が置かれていた。デンプンは、再生資源(すなわち、植物生産物)に由来するものであり、容易に入手することができ、比較的安価であるという点で魅力がある。しかしながら、天然型のデンプンの機械的性質は、石油系の(すなわち、「合成の」)高分子の機械的性質と比較して非常に劣っている。
【0004】
デンプンの機械的性質は、TPSを生成するよう、デンプンを多価アルコールなどの可塑剤と溶融混合することによって改善することができる。しかしながら、TPSの改善された機械的性質は、石油系高分子の機械的性質と比較して、なお相対的に劣ったままである。
したがって、デンプン又はTPSは、それ自体では、石油系高分子の実用的な代替とは考えられない。
【0005】
デンプン及び石油系高分子の利点を引き出そうとする試みにおいて、かなりの金額又は研究が、これら二つの高分子材料のブレンドの開発に向けられてきた。しかしながら、比較的親水性のデンプンと、典型的な疎水性の石油系高分子とを混合して良好な機械的性質を有するブレンドを製造することは、実際には困難であることが証明されている。特に、デンプン又はTPSと石油系高分子との溶融加工は、一般に、多相不連続モルホロジーを有する高分子ブレンドの形成に帰着する。斯かるモルホロジーは、典型的に不安定で高い界面張力を示し、そのたぐいは、生じる高分子ブレンドの少なくとも機械的性質に、しばしば悪影響がある。
【0006】
それでも、デンプン又はTPSと石油系高分子との有用なブレンドが、開発されている。例えば、ポリエステル/TPSブレンドが良好な機械的性質を示すことが明らかにされており、それらのブレンドは、十分に生分解性であるように配合することができる。しかしながら、ポリエステル基材の加水分解感受性のため、それらの用途は限られることがある。例えば、斯かるブレンドは、一般に、融解再利用(melt-recycling)には適していない。
【0007】
ポリオレフィン/TPSブレンド(例えば、ポリエチレン/TPSブレンド)も、開発されている。ポリオレフィン基材の加水分解非感受性のため、斯かるブレンドは、少なくとも、それらのポリエステル/TPS相当物よりも、再生利用に適していると期待されている。しかしながら、ポリオレフィンの高い疎水性とTPSの親水性との間の固有の不適合性が、有用な性質を有するブレンドを得るのに問題であることが証明されている。
【0008】
米国特許第6,605,657号は、第一の押出ユニットで比較的水分のないTPSが調製され、次いで溶融体として、第二の押出ユニットで調製されたポリオレフィン溶融体と混合される。得られるブレンドは、良好な機械的性質を示すと言われている。しかしながら、少なくとも、このブレンドが形成される方法は、欠点が無くはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
TPS及び石油系高分子の両方を含む高分子ブレンドが開発されているが、斯かるブレンド及び/又は斯かるブレンドが製造される方法に伴う一以上の不都合又は欠点に対処又は斯かる不都合又は欠点を改善する機会、あるいは、少なくとも、有用な代替の高分子ブレンド及び/又はその製造方法を提供する機会は、まだある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、0.905g/cm未満の密度を有する超低密度ポリエチレンと、エチレン−アクリル酸共重合体と、熱可塑性デンプン及び/又はその構成成分を含む組成物を提供するものである。
本発明による組成物は、ブレンドとして重合体成分間の優れた適合性を示し、優れた性質を示すポリマー製品を提供するのに用いることができることが現在分かっている。
【0011】
一般に、本発明による組成物は、約5〜25重量%の超低密度ポリエチレン(VLDPE)と、約5〜25重量%のエチレン−アクリル酸共重合体(EAA)と、約50〜80重量%の熱可塑性デンプン(TPS)及び/又はその構成成分とを含んでいる。
【0012】
実施の一形態では、本組成物は、さらに、0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体を含んでいる。その場合、0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体は、通例、約5〜20重量%の範囲の量で存在する。
【0013】
0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体とは別に、又は、0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体に加えて、本発明による組成物は、さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含んでいてもよい。その場合、EVAは、通例、約1〜10重量%の範囲の量で存在する。
【0014】
本発明による組成物は、溶融加工前(すなわち、成分の物理的ブレンド)及び溶融加工後(すなわち、成分の全体均質ブレンド(integral intimate blend))の形態の組成物の両方を包含することを意図するものである。こう述べたらならば、溶融加工前の形態の本発明による組成物は、一般に、次いで溶融加工して溶融加工製品にするという唯一つの目的で製造されることが認められよう。
【0015】
TPSそれ自体が溶融加工前の組成物に存在していてもよく、TPSは組成物の溶融加工の間に、その構成成分から現場で調製することもでき好都合である。したがって、本発明による溶融加工前の組成物は、VLDPE、EAA、TPS及び/又はTPSの構成成分、すなわちデンプン及び一以上の可塑剤を含むことができる。溶融加工されると、組成物中のデンプン及び一以上の可塑剤は、TPSに変換され、得られる溶融加工された組成物は、VLDPE、EAA及びTPSを含むことになる。言い換えれば、本発明による溶融加工後の組成物では、溶融加工前の組成物におけるTPSの全ての構成成分が、溶融加工の間にほぼTPSに変換されるのが意図である。
【0016】
本発明は、0.905g/cm未満の密度を有する超低密度ポリエチレンと、エチレン−アクリル酸共重合体と、熱可塑性デンプン及び/又はその構成成分を含む組成物を溶融加工することを含むポリオレフィンと熱可塑性デンプンのブレンドの製造方法も提供するものである。
【0017】
本発明の方法にしたがって溶融加工する組成物は、さらに、0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体を含んでいてもよい。0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体に加えて、又は0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体とは別に、本発明の方法にしたがって溶融加工する組成物は、EVAを含んでいてもよい。
【0018】
本発明の実施の一形態では、ポリオレフィンとTPSのブレンドが、(1)本発明にしたがって製造されたポリオレフィンとTPSのブレンドと、(2)0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体とを一緒に溶融加工することによって製造される。
【発明の効果】
【0019】
本発明による溶融加工された重合体組成物は、水分に対する低い感受性、印刷しやすい表面、デンプンの高い含有率などの望ましい特性、%伸び(% elongation)などの優れた機械的性質を示すことが分かっており、容易に溶融再利用することができる。さらに、斯かる性質は、比較的高いTPS含有率があって達成することができ、この比較的高いTPS含有率がまた、組成物中の石油系重合体の量を最小限にしている。
【0020】
理論によって限定されるのを望むことなしに、本発明による組成物から形成された製品の優れた性質は、少なくとも部分的に、非常に適合化された形態のTPS及びポリエチレン成分をもたらす本組成物の能力に由来すると思われる。本発明の幾つかの実施の形態では、組成物のTPS及びポリエチレン成分が、安定した共連続位相モルホロジーを形成していると思われる。
本発明のさらに別の面を、以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において使用しているように、TPS及びポリエチレン位相領域(phase domains)の文脈(context)における「共連続位相モルホロジー」の表現は、一方の位相領域を通る連続パスを、何れの位相領域境界とも交差することなしに全ての位相領域境界へと引くことができる位相状態を意味することを意図するものである。共連続位相モルホロジーが「安定している」ことは、それぞれの位相領域が、溶融加工の間又は後、融合を阻むことを意味する。
【0022】
本発明による組成物は、0.905g/cm未満の密度を有する超低密度ポリエチレン(VLDPE)を含んでいる。通例、VLDPEは、約0.85g/cm〜0.905g/cm、例えば約0.88g/cm〜0.905g/cmの範囲の密度を有している。VLDPEは、本技術分野において、超低密度ポリエチレン(ULDPE:ultra low density polyethylene)としても知られており、通例、エチレンと一以上の1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンなどのα−オレフィンとの共重合体である。
【0023】
VLDPEは、通例、190℃/2.16kgで約0.5g/10分〜約10g/10分のメルトインデックスを有している。
【0024】
本発明にしたがって使用することのできる好適なVLDPEには、約0.904g/cmの密度及び190℃/2.16kgで約4g/10分のメルトインデックスを有するエチレン/オクテン共重合体、約0.884g/cmの密度及び190℃/2.16kgで約0.7g/10分のメルトインデックスを有するエチレン/ブテン共重合体、及び約0.8985の密度及び190℃/2.16kgで約5g/10分のメルトインデックスを有するエチレン/ブテン共重合体があるが、これらには限定されない。
【0025】
ポリエチレン重合体の密度又はメルトインデックスに関する参照事項は、それぞれ、ASTM D792及びASTM D1238にしたがって測定された密度又はメルトインデックスを意味することを意図するものである。
【0026】
本発明による組成物は、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)も含んでいる。当業者は、EAAがエチレンとアクリル酸との共重合体であることがお分かりであろう。一般に、斯かる共重合体のアクリル酸含有量は、約5〜20%、例えば8〜15%の範囲である。また、EAAは、190℃/2.16kgで約10g/10分〜約20g/10分の範囲のメルトインデックスを有しているのが一般的である。
本発明にしたがって用いるのに適した等級のVLDPE及びEAAは、商業的に入手可能である。
【0027】
本発明による組成物は、さらにTPS及び/又はその構成成分を含んでいる。当業者は、TPSが一以上の可塑剤を含む変性型(destructured form)のデンプンであることがお分かりであろう。したがって、本明細書において用いられているように、TPSの文脈(context)において「その構成成分」の表現は、TPSを調製するのに用いる個々の材料を意味することを意図するものである。
【0028】
デンプンは、主に、植物の種子、果実、塊茎、根及び茎の髄に存在し、1−4の炭素位置におけるグルコシド結合によって結合した反復グルコース基からなる自然に得られる高分子である。デンプンは、二種類のα−D−グルコース重合体、すなわち、約1x10の分子量を有するほぼ線状の重合体であるアミロースと、約1x10の非常に大きな分子量を有する高度に分岐した重合体であるアミロペクチンからなる。各々の反復グルコース単位は、三つの遊離ヒドロキシル基を有しているのが典型的であり、それにより、重合体に親水性及び反応性官能基を与えている。ほとんどのデンプンは、20〜30%のアミロースと70〜80%のアミロペクチンを含んでいる。しかしながら、デンプンの起源により、アミロース対アミロペクチンの比率は、大きく変わることがある。例えば、あるトウモロコシの雑種は、100%アミロペクチンのデンプン(もちトウモロコシデンプン:waxy corn starch)、又は50〜95%の範囲の革新的により高いアミロース含有量をもたらす。デンプンは、通常、約15重量%の含水量を有している。しかしながら、デンプンは、乾燥させてその水分を1%未満まで低下させることができる。
【0029】
デンプンは、約15〜45%の範囲の結晶化度を有する小さな粒体(granule)として存在するのが典型的である。粒体の大きさは、デンプンの起源により異なる。例えば、トウモロコシデンプンは、約5ミクロン〜約40ミクロンの範囲の粒径を有するのが典型的であるのに対し、ジャガイモデンプンは、約50ミクロン〜約100ミクロンの範囲の粒径を有するのが典型的である。
【0030】
デンプンのこの「天然」型は、化学的に改質することもできる。化学的に改質されたデンプンには、酸化デンプン、エーテル化(etherificated)デンプン、エステル化デンプン、架橋デンプン又は斯かる化学改質型の組み合わせ(例えば、エーテル化及びエステル化デンプン)があるが、これらには限定されない。化学的に改質されたデンプンは、デンプンのヒドロキシル基を一以上の試薬と反応させることによって製造されるのが一般的である。反応度は、しばしば置換度(DS)と称するが、対応する天然デンプンと比較して、改質されたデンプンの生理化学的性質を著しく変えることができる。天然デンプンの置換度(DS)を0と表すと、完全に置換された改質デンプンの3までの範囲をとることができる。置換基の種類及び置換度により、化学的に改質されたデンプンは、天然デンプンに対して、かなり異なる親水的/疎水的性質をしめすことがある。
【0031】
天然デンプン及び化学的に改質されたデンプンは、どちらも、乏しい熱可塑性を示すのが一般的である。斯かる性質を改善するため、本技術分野で周知の手段により、デンプンを熱可塑性デンプン(TPS)に変換することができる。例えば、天然又は化学的に改質されたデンプンを、一以上の可塑剤と溶融加工することができる。TPSの製造においては、可塑剤として多価アルコールが一般に使用される。
【0032】
したがって、本明細書におけるTPSの重量%に関する参照数字は、TPSのデンプン及び可塑剤構成成分の両方の総体質量(collective mass)を含むことを意図するものである。
TPSが由来しうるデンプンには、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、大豆デンプン、タピオカデンプン、ハイアミロース(hi-amylose)デンプン又はそれらの組み合わせがあるが、これらには限定されない。
【0033】
デンプンを化学的に改質する場合には、デンプンをエーテル化又はエステル化するのが一般的である。好適なエーテル化デンプンには、エチル基及び/又はプロピル基で置換されたデンプンがあるが、これらには限定されない。好適なエステル化デンプンには、アクチル基、プロパノイル基及び/又はブタノイル基で置換されたデンプンがあるが、これらには限定されない。
【0034】
本発明の一実施の形態では、TPSを製造するのに用いるデンプンは、トウモロコシデンプン又は0.1より大きい置換度(DS)を有するコーンスターチアセテートである。
【0035】
TPSは、一以上の多価アルコール可塑剤も含んでいるのが一般的である。好適な多価アルコールには、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジグリコール、プロピレンジグリコール、エチレントリグリコール、プロピレントリグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,3,5−ヘキサントリオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、並びにそれらのアセテート、エトキシレート及びプロポキシレート誘導体があるが、これらには限定されない。
一実施の形態では、TPSは、グリセロール及び/又はソルビトール可塑剤を含んでいる。
【0036】
TPSの可塑剤含有量は、デンプン及び可塑剤成分の合わせた質量に対して、約5重量%〜約50重量%の範囲であるのが一般的であり、例えば、約10重量%〜約40重量%、又は約10重量%〜約30重量%である。
【0037】
本発明による組成物は、溶融加工前の組成物(例えば、VLDPE、EAA並びにTPS及び/又はその構成成分の物理的ブレンド)又は溶融加工後の組成物(例えば、VLDPE、EAA及びTPSの全体均質ブレンド)の形態で提供することができる。
【0038】
本発明による組成物が、溶融加工前の形態で提供される場合には、組成物は究極的に溶融加工され、個々の成分の溶融加工されたブレンドを形成するように製造されるのが一般的であることが認められよう。その場合には、一部又は全てのTPSを、TPSを製造するのに用いる構成成分(すなわち、デンプン及び一以上の可塑剤)に取り替えることができ、好都合である。特に、VLDPE、EAA及びTPSを含む溶融加工された組成物を製造するため、VLDPE及びEAAの存在下にデンプン及び一以上の可塑剤を溶融加工することができることが分かっている。
【0039】
本発明による組成物は、一般的に、約5重量%〜約25重量%の範囲の量、例えば約15重量%のVLDPE、約5重量%〜約25重量%の範囲の量、例えば約15重量%のEAA、並びに約50重量%〜約80重量%の範囲の量、例えば約70重量%のTPS及び/又はその構成成分を含んでいる。
【0040】
本発明による組成物が、TPSの構成成分を含んでいる場合には、これらの成分の合計質量は、TPS自体の質量と同等であると考えることができ、したがって、本明細書において概説するTPSと同じ重量%の範囲が、これらの集合成分にあてはまる。TPSの各成分に関する相対的重量%の範囲も、本明細書において概説されている。
【0041】
本発明による組成物は、0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体を含んでいてもよい。例えば、この組成物は、一般に0.910〜0.940g/cmの範囲にある密度を有するものとして特徴付けられている低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでいてもよい。好適な等級のLDPEには、190℃/2.16kgで約0.2g/10分〜約7g/10分のメルトインデックスを有するLDPEがあるが、これらには限定されない。
【0042】
LDPEに加え、又はLDPEとは別に、組成物は、一般に0.915g/cm〜0.925g/cmの範囲の密度を有するものとして特徴付けられる線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、一般に0.926g/cm〜0.940g/cmの範囲の密度を有するものとして特徴付けられる中密度ポリエチレン(MDPE)、及び/又は一般に0.941g/cmよりも大きい又は0.941g/cmと等しい密度を有するものとして特徴付けられる高密度ポリエチレン(HDPE)を含んでいてもよい。
【0043】
本発明にしたがって用いるのに適した等級のLDPE、LLDPE、MDPE及びHDPEは、商業的に入手することができる。
【0044】
0.905g/cmより大きな密度を有する一以上のポリエチレン重合体は、組成物に含まれる場合には、約5重量%〜約20重量%の範囲の量で組成物中に存在するのが一般的である。
【0045】
例えば、本発明による組成物は、約10重量%の量のVLDPE、約10重量%の量のEAA、約65重量%の量のTPS及び/又はその構成成分、並びに約15重量%の量のLDPEを含んでいてもよい。
【0046】
0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体に加え、又は0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体とは別に、本発明による組成物は、約1重量%〜約10重量%の範囲の量のEVAを含んでいてもよい。
【0047】
例えば、本組成物は、約10重量%の量のVLDPE、約10重量%の量のEAA、約65重量%の量のTPS及び/又はその構成成分、約10重量%の量のLDPE、並びに約5重量%の量のEVAを含んでいてもよい。
【0048】
本発明による組成物は、一以上の添加剤も含んでいてもよい。
斯かる添加剤には、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー(例えば、モンモリロナイト)、及び二酸化チタン);顔料;帯電防止剤;並びに加工助剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、酸化ポリエチレン、オレアミド、ステアラミド、及びエルカアミド)がある。
一般に、添加剤は、約0.5重量%〜約2重量%の範囲の量で使用される。
溶融加工されたブレンドの形態で提供される本発明による組成物は、本発明の方法によって製造することができる。
【0049】
したがって、本発明の方法によれば、ポリオレフィンとTPSとのブレンドが、VLDPE、EAA、並びにTPS及び/又はその構成成分を含む組成物を溶融加工することによって製造される。
【0050】
溶融加工は、本技術分野で周知の技術と装置を用いて行うことができる。一般に、溶融加工は、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、他の多軸スクリュー押出機又はファレル連続ミキサーなどの連続押出装置を用いて行われる。組成物の成分間の均質混合(intimate blending)を促進するため、溶融加工は、適当な温度で十分な時間行われる。溶融加工は、通例、適当な温度範囲内で行われ、この範囲は、加工される重合体の性質によって異なることが、当業者はお分かりであろう。一般に、本発明による組成物は、約150℃〜約210℃の範囲の温度で溶融加工される。
【0051】
先に示したように、溶融加工する組成物が、TPSの構成成分を含んでいる場合には、本発明による方法が、これらの成分を溶融加工の間にTPSに都合よく変換する。
【0052】
本発明の方法にしたがって溶融加工する組成物は、はじめに、高速ミキサー内で物理的に混合することができる。例えば、本方法は、はじめに高速ミキサー内で以下の添加順序で混合することを含んでいてもよい:デンプン、EAA、VLDPE並びにグリセロール及び/又はソルビトールなどの一以上の多価アルコール。0.905g/cmよりも大きな密度を有する一以上のポリエチレン重合体が、組成物に用いられる場合には、それらは、VLDPEのすぐ後に添加することができる。EVAが組成物に用いられる場合には、EVAは、全てのポリエチレン重合体が添加されたすぐ後に添加することができる。一以上の添加剤が組成物に用いられる場合には、それらは、一以上の可塑剤の直前に添加することができる。
【0053】
本発明による組成物が0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体を含む場合には、このポリエチレン成分は、本発明の方法にしたがって溶融加工される組成物の一部を形成してもよく、或いは、ポリエチレン成分の一部又は全部を、第二の溶融加工段階の一部として導入してもよい。例えば、本発明の方法にしたがって製造されたポリオレフィンとTPSとのブレンドは、次いで、さらにポリエチレン重合体をブレンドに配合するため、0.905g/cmよりも大きい密度を有するポリエチレン重合体と混ぜ合わせ、混合物を溶融加工してもよい。
【0054】
したがって、本発明の一実施の形態では、本方法は、0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体と共に、そのようにして形成されたポリオレフィンとTPSとのブレンドを溶融加工することをさらに含んでいる。その場合には、約40重量%〜約60重量%のそのようにして形成されたポリオレフィンとTPSとのブレンドを、約60重量%〜約40重量%の0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体とともに溶融加工するのが一般的である。
【0055】
本発明によるポリオレフィンとTPSとのブレンドは、従来のポリオレフィン/TPSブレンドと比較して、多くの有益な特性を示すことが分かっている。例えば、本発明によるブレンドは、高いTPS配合量(例えば、約40〜50重量%)でさえ、優れた%伸(% elongation)を示す。したがって、本組成物から形成されたフィルムなどの製品は、向上した破壊抵抗及び引裂抵抗を示すことができる。また、本ブレンドは、低下した水分に対する感受性を示し、コロナ処理などの表面改質技術を受けることなしに印刷に特に適した表面を発現することができる。特に、このブレンドは、表面処理を受けることなしに、(例えば、約42〜55ダインと同等の表面極性を有する)濡らすことのできる表面を実現することができる。したがって、この組成物から形成されたフィルムは、はじめに表面処理を受ける必要なしに印刷することができる。さらに、本発明によるブレンドは、溶融再利用にとても適している。
【0056】
本発明によるポリオレフィンとTPSとのブレンドは、フィルム及び成形物の製造にとても適している。斯かる製品は、梱包などの多くの用途に容易に用いることができる。
【0057】
理論によって限定されるのを望むことなしに、本発明によるブレンドによりもたらされる改善された特性は、ブレンドのTPSとポリエチレンの位相領域が、非常に適合化されていることに少なくとも部分的に起因していると思われる。特に、TPSとポリエチレンの位相領域には、共連続モルホロジーを与えることができると思われる。ポリエチレンとTPSの位相領域間の高い適合度は、EAA及びTPS組み合わせたVLDPEのユニークなブレンドに由来すると思われる。
本発明の実施の形態を、以下の非限定の実施例を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0058】
実施例1
下記の表1(組成物A)に掲げた成分が、はじめに、高速ミキサー内で、以下の添加順序で混合された:デンプン、EAA、VLDPE、LDPE、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、グリセロール、及びソルビトール。得られた物理的なブレンドは、次いで、140/170/175/175/165/155℃の溶融プロファイル、80%未満のトルク、320〜350rpmのスクリュー速度、−0.05バールの減圧及び200kg/時間の押出量を有するベント式二軸スクリュー押出機で溶融加工され、ブレンドAを得た。次いで、50重量%のブレンドAと50重量%のLLDPEとの組成物から、フィルムがブロー成形された。得られたフィルムは、15ミクロンのゲージ、万能引張試験機を用いて試験をしたときに、14MPaの破断点引張強さ、及び200%より大きな伸びを有していた。
【0059】
【表1】

【0060】
実施例2
下記の表2(組成物B)に掲げた成分が、はじめに、高速ミキサー内で、以下の添加順序で混合された:デンプン、LDPE、VLDPE、EAA、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、グリセロール、及びソルビトール。得られた物理的なブレンドは、次いで、140/170/175/175/165/155℃の溶融プロファイル、80%未満のトルク、320〜350rpmのスクリュー速度、−0.05バールの減圧及び200kg/時間の押出量を有するベント式二軸スクリュー押出機で溶融加工され、ブレンドBを得た。次いで、ブレンドBを用いて、フィルムがブロー成形された。得られたフィルムは、万能引張試験機を用いて試験をしたときに、10MPaよりも大きな破断点引張強さ、及び250%より大きな伸びを有していた。このフィルムは、優れた粘着防止及び帯電防止特性を示した。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例3
下記の表3(組成物C)に掲げた成分が、はじめに、高速ミキサー内で、以下の添加順序で混合された:デンプン、EAA、VLDPE、EVA、LDPE、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、グリセロール、及びソルビトール。得られた物理的なブレンドは、次いで、140/165/170/170/170/155℃の溶融プロファイル、80%未満のトルク、320〜350rpmのスクリュー速度、−0.05バールの減圧及び200kg/時間の押出量を有するベント式二軸スクリュー押出機で溶融加工され、ブレンドCを得た。ブレンドCは、ブレンドCと従来の発泡剤マスターバッチとを溶融加工することによって、発泡体に成形された。得られた発泡体は、柔らかな発泡体梱包材料として適しており、優れた柔らかさ及び柔らかな感触(soft touch)特性を有している。
【0063】
【表3】

【0064】
実施例4
ブレンドBが、20重量%のLDPE(メルトインデックス:0.3g/10分、及び密度:0.922g/cm3)とともに溶融加工され、厚さ0.380mmのシートに成形された。得られたシートは、突起のあるシート(cuspated sheet)に熱成形された。
【0065】
実施例5
ブレンドBが、50ミクロンのフィルムにブロー成形され、次いで、6kgの積載運搬能力を有する買い物袋に改造された。これらの袋は、HDPE製の袋に匹敵する引裂、引張及び伸長特性を有することが分かった。このフィルムは、コロナ前処理なしに従来の方法を用いて、容易に印刷することができる。
【0066】
実施例6
ブレンドBが、10重量%のHDPEとともに溶融加工され、買い物袋の用途に用いるのに適したフィルムにブロー成形された。得られたフィルムは、ブレンドBだけから製造した比較フィルムよりも100%堅い(stiff)ことが分かった。
本明細書及び後続の請求の範囲を通じ、文脈が他の意味を要求している場合を除き、「含む(comprise:三人称単数以外の現在形)」の語、並びに「含む(comprises:三人称単数現在形)」及び「含む(comprising:現在分詞)」等の変化形は、述べた整数又は工程或いは一群の整数又は工程を含むが、如何なる他の整数又は工程或いは一群の整数又は工程をも排除しないことを意味することが理解されよう。
【0067】
本明細書における全ての先行する公表文献(又はそれに由来する情報)或いは全ての公知事項への言及は、先行公表文献(又はそれに由来する情報)或いは公知事項が、本明細書が関連する試みの分野における周知の一般知識の一部を形成することの認知又は承認又は何らかの形の示唆ではなく、そのようなものとして受け止められるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.905g/cm未満の密度を有する超低密度ポリエチレンと、エチレン−アクリル酸共重合体と、熱可塑性デンプン及び/又はその構成成分を含む組成物。
【請求項2】
超低密度ポリエチレンが、約0.85g/cm〜0.905g/cmの範囲の密度を有している請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
超低密度ポリエチレンと、エチレン−アクリル酸共重合体と、熱可塑性デンプン及び/又はその構成成分の物理的ブレンドの形態の請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
超低密度ポリエチレンと、エチレン−アクリル酸共重合体と、熱可塑性デンプン及び/又はその構成成分の溶融加工されたブレンドの形態の請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
超低密度ポリエチレンが、約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在し、エチレン−アクリル酸共重合体が、約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在し、熱可塑性デンプン及び/又はその構成成分が、約50重量%〜約80重量%の範囲の量で存在する請求項1〜4の何れか一つに記載の組成物。
【請求項6】
さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体を、約1重量%〜約10重量%の範囲の量で含む請求項1〜5の何れか一つに記載の組成物。
【請求項7】
さらに、0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体を含む請求項1〜6の何れか一つに記載の組成物。
【請求項8】
0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンから選択される請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体が、約5重量%〜約20重量%の範囲の量で存在する請求項7又は8記載の組成物。
【請求項10】
さらに、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、酸化ポリエチレン、オレアミド、ステアラミド及びエルカアミドから選択された一以上の添加剤を含む請求項1〜9の何れか一つに記載の組成物。
【請求項11】
0.905g/cm未満の密度を有する超低密度ポリエチレンと、エチレン−アクリル酸共重合体と、熱可塑性デンプン及び/又はその構成成分を含む組成物を溶融加工することを含むポリオレフィンと熱可塑性デンプンのブレンドの製造方法。
【請求項12】
超低密度ポリエチレンが、約0.85g/cm〜0.905g/cmの範囲の密度を有している請求項11に記載の方法。
【請求項13】
超低密度ポリエチレンが、約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在し、エチレン−アクリル酸共重合体が、約5重量%〜約25重量%の範囲の量で存在し、熱可塑性デンプン及び/又はその構成成分が、約50重量%〜約80重量%の範囲の量で存在する請求項11又は12に方法。
【請求項14】
溶融加工する組成物が、さらに、エチレン−酢酸ビニル共重合体を、約1重量%〜約10重量%の範囲の量で含む請求項11〜13の何れか一つに記載の方法。
【請求項15】
溶融加工する組成物が、さらに、0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体を含む請求項11〜14の何れか一つに記載の方法。
【請求項16】
0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンから選択される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体が、約5重量%〜約20重量%の範囲の量で用いられる請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか一つに記載の方法であって、そのようにして形成されたポリオレフィンと熱可塑性デンプンのブレンドが、0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体とともに溶融加工される方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、そのようにして形成されたポリオレフィンと熱可塑性デンプンのブレンドとともに溶融加工される0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体が、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンから選択される方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の方法であって、そのようにして形成されたポリオレフィンと熱可塑性デンプンのブレンド及び0.905g/cmよりも大きい密度を有する一以上のポリエチレン重合体が、それぞれ、約40重量%〜約60重量%の範囲の量及び約40重量%〜約60重量%の範囲の量で一緒に溶融加工される方法。
【請求項21】
請求項1〜10の何れか一つに記載の組成物を含む又は前記組成物から製造される物品。
【請求項22】
押出製品又は成形品の形態の請求項21に記載の物品。
【請求項23】
フィルムの形態の請求項22に記載の物品。
【請求項24】
請求項11〜20の何れか一つの方法により製造された物品。

【公表番号】特表2011−529506(P2011−529506A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520280(P2011−520280)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000979
【国際公開番号】WO2010/012041
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511026108)トリスタノ ピーティワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】