説明

熱可塑性ポリウレタンおよびその使用

【課題】極めて良好な機械表面抵抗を有し、同時に優れた技術加工性、特に加工温度に関して広い加工手段を有し、並びに加工中に表面障害、特に層間剥離を有さない熱可塑性ポリウレタン(TPU)を提供する。
【解決手段】有機ジイソシアネート、鎖伸張剤として低分子量ポリオール、450〜10000g/molの平均分子量Mnおよびツェレビチノフ活性水素原子平均少なくとも1.8乃至多くとも3.0を有する少なくとも1つのポリオール、二酸化ケイ素、ポリオルガノシロキサンを含む組成物でのTPUにより達成することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて高い表面耐性(ライティング、引掻および摩耗に対する耐性)および広い加工手段での極めて良好な加工性を有する熱可塑性ポリウレタン成形品ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、その良好なエラストマー特性および熱可塑的な加工性のため、非常に工業的に重要である。TPUの製造、特性および用途の概説は、例えばPlastics Handbook(G.Becker、D.Braun)、第7巻、「ポリウレタン」、ミュンヘン、ウィーン、Carl Hanser Publishing、1983年に記載されている。
【0003】
TPUは主に、直鎖状ポリオール(マクロジオール)、例えばポリエステルジオール、ポリエーテルジオールまたはポリカーボネートジオール等、有機ジイソシアネートおよび短鎖状、主に二官能性のアルコール(鎖伸張剤)から製造される。よく知られた製造方法は、ベルト法(GB−A1057018)および押出法(DE−A1964834)である。
【0004】
熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーは、段階法(プレポリマー投入法)により、または全ての成分の一段階における同時反応(ワンショット投入法)により製造し得る。
【0005】
DE−A10230020には、TPUのための引掻および摩耗に対する耐性(機械的表面耐性)を向上させるためにポリオルガノシロキサンの使用が記載されている。しかしながら、これらの添加剤を含有するTPUを加工する場合、射出成形法においては数時間後(数ショット後)に表面障害が生じ、これらの障害により望ましくない高い不良率が生じる。
【0006】
EP−A2083026には、引掻および摩耗に対する耐性(機械的表面耐性)を向上させるための低分子量ポリオルガノシロキサンおよび高分子量ポリオルガノシロキサンの特別な混合物の使用が記載されている。しかしながら、これらの添加剤混合物を含有するTPUを加工する場合、射出成形法においては低い加工温度(<180℃)で、表面障害および層間剥離が生じることがあり、このことにより望ましくない高い不良率が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許第1057018号明細書
【特許文献2】独国特許第1964834号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10230020号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2083026号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】G.Becker、D.Braun、Kunststoff Handbuch、第7巻、「Polyurethane」、ミュンヘン、ウィーン、Carl Hanser Verlag、1983年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、極めて良好な機械表面抵抗を有すると同時に、優れた技術加工性、特に加工温度に関して広い加工手段を有し、並びに加工中に表面障害、特に層間剥離を有さない熱可塑性ポリウレタン(TPU)を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、特別な組成物でのTPUにより達成することができた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
従って、本発明の要旨は、
a)1以上の有機ジイソシアネート、
b)鎖伸張剤として、ツェレビチノフ活性水素原子平均少なくとも1.8および多くとも3.0、および60〜400g/molの平均分子量Mnを有する少なくとも1つの低分子量ポリオール、および
c)450〜10000g/molの平均分子量Mnおよびツェレビチノフ活性水素原子平均少なくとも1.8乃至多くとも3.0を有する少なくとも1つのポリオール成分から、
e)必要に応じて、触媒
f)必要に応じて、添加剤および/または補助物質、
g)必要に応じて、連鎖遮断剤
の添加により得られ、成分a)中のイソシアネート基の数と成分b)、c)および必要に応じてg)中のイソシアネート反応性基の数との比が0.9:1〜1.1:1である、熱可塑性ポリウレタンであり、これは、
d)熱可塑性ポリウレタンを基準として0.4〜10重量%の、
d1)該熱可塑性ポリウレタンを基準として0.1〜4重量%の少なくとも1つの非晶質および/または結晶質二酸化ケイ素、および
一般式(RSiO)(式中、Rは、直鎖状および分枝状であり得、および1〜27個の炭素原子を有し得る有機炭化水素残基を表し、nは3〜8000の整数であり得る)で示される特別なポリオルガノシロキサン混合物
の混合物を含有し、該ポリオルガノシロキサン混合物は、
d2)前記熱可塑性ポリウレタンを基準として0〜2重量%の1以上のポリオルガノシロキサン(RSiO)(n=3〜300)、および
d3)前記熱可塑性ポリウレタンを基準として0.2〜8重量%の1以上のポリオルガノシロキサン(RSiO)(n=1000〜8000)
からなる。
【0012】
鎖伸長剤は、「鎖延長剤」とも称し得る。連鎖遮断剤は、「連鎖停止剤」とも称し得る。
【0013】
値「n」は、重合度を表し、DPとも呼ばれ、これは、重合反応における時間tでの平均ポリマー鎖における繰り返し単位の数である。その長さは、モノマー単位である。重合度は、分子量(MW)の尺度である、ホモポリマーについて、数平均重合度は、ポリマーの全MWを繰り返し単位のMWで割ったものとして算出し得る。
【0014】
有機ジイソシアネート(a)として、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族およびヘテロ環式ジイソシアネートまたはこのようなジイソシアネートの任意の混合物を用い得る(HOUBEN−WEYL、「Methods in Organic Chemistry」、E20巻、「Macromolecular Materials」、Georg Thieme Publishing、シュトゥットガルト、ニューヨーク、1987年、第1587〜1593頁またはJustus Liebig’s Chemistry Annals、562巻、第75〜136頁を参照)。
【0015】
個々の例として次のものを示すことができる:脂肪族ジイソシアネート、例えばエチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネートなど;脂環式ジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび1−メチル2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物;さらに、芳香族ジイソシアネート、例えば2,4−トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートと2,6−トルイレンジイソシアネートとの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物、ウレタン変性液状またはカルボジイミド変性液状4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたはウレタン変性液状またはカルボジイミド変性液状2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−ジフェニルエタン−(1,2)および1,5−ナフチレンジイソシアネート。好ましくは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、96重量%を越える4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量を有するジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物を用いることであり、とりわけ、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートを用いる。上記ジイソシアネートは単独でまたは混合物の形態で使用し得る。これらは、15モル%(全ジイソシアネートを基準として計算)までのポリイソシアネートと共に使用してもよいが、ポリイソシアネートは、多くとも、熱可塑的になお加工可能である生成物を製造するような量でのみ添加し得る。ポリイソシアネートの例は、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートおよびポリフェニル−ポリメチレンポリイソシアネートである。
【0016】
鎖伸張剤b)は好ましくは、ツェレビチノフ活性水素原子平均1.8〜3.0を有し、60〜400の分子量を有する。これらは、好ましくは2〜3、特に好ましくは2のヒドロキシル基を有するものと理解される。
【0017】
鎖伸張剤b)として用いる好ましいのは、例えばエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメタノールシクロヘキサンおよびネオペンチルグリコールのような2〜14個の炭素原子を有する脂肪族ジオールの群に由来する1以上の化合物である。しかしながら、テレフタル酸と2〜4個の炭素原子を有するグリコールとのジエステル、例えばテレフタル酸−ビス−エチレングリコールまたはテレフタル酸ビス−1,4−ブタンジオール、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、エトキシル化ビスフェノール、例えば1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールAも適当である。示したジオールは、異なったモル量のε−カプロラクトンで開環反応により変換して、高分子量を有する対応する鎖伸張剤を製造することもできる。エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジメタノールシクロヘキサン、1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノンまたは1,4−ジ(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールAおよびε−カプロラクトンでのその変換生成物を鎖延長剤として特に好ましく用いる。少量のトリオールを添加することもできる。
【0018】
とりわけ、ポリオール成分c)として、ツェレビチノフ活性水素原子平均少なくとも1.8〜多くとも3.0および450〜10000の数平均分子量Mnを有する化合物が好ましい。製造に応じて、ポリオールは、少量の非直鎖状化合物を含有する場合が多い。従って、「本質的に直鎖状ポリオール」と呼ばれることが多い。ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールおよびポリカーボネートジオールまたはこれらの混合物は好ましい。
【0019】
とりわけ、2〜3、好ましくは2のヒドロキシル基を有する化合物、特に450〜6000の数平均分子量Mnを有するもの、好ましくは600〜4500の数平均分子量Mnを有するもの、特に好ましくは800〜3000の数平均分子量を有するものである;ヒドロキシル基を有するポリエステル、ポリエーテルおよびポリカーボネートは特に好ましい。
【0020】
適当なポリエーテルジオールは、アルキレン残基中に2〜4個の炭素原子を有する1以上のアルキレンオキシドを、結合した2個の活性水素原子を含有するスターター分子と変換することによって調製してよい。アルキレンオキシドの例として次のものを挙げることができる:エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリンおよび1,2−ブチレンオキシドおよび2,3−ブチレンオキシド。エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドの混合物を好ましく用いる。アルキレンオキシドは、単独で、連続して交互に、または混合物として用いてよい。例えば、次のものはスターター分子として考慮される:水、アミノアルコール、例えばN−アルキルジエタノールアミンなど(例えばN−メチルジエタノールアミン)、およびジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−へキサンジオールなど。必要に応じて、スターター分子の混合物を用いることもできる。ヒドロキシル基を含有するテトラヒドロフランの重合生成物も適当なポリエーテルポリオールである。三官能性ポリエーテルを、二官能性ポリエーテルを基準として0〜30重量%の割合で用いることも可能であるが、多くとも、熱可塑的になお変形可能である生成物を製造するような量で用いることも可能である。実質的に直鎖状のポリエーテルジオールは、450〜6000の数平均分子量Mnを好ましく有する。これらは、単独で、または混合物の形態で使用してよい。
【0021】
適当なポリエステルジオールは、例えば2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸と多価アルコールから製造してよい。例えば、以下のものはジカルボン酸として考慮される:脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸など、または芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などまたはこれらの可能な環式無水物。ジカルボン酸は、単独で、または混合物の形態で、例えばコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形態で使用してよい。ジカルボン酸の代わりに、相当するジカルボン酸誘導体、例えばアルコール残基中に1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸ジエステル、無水カルボン酸またはカルボン酸塩化物などを使用することは、場合により、ポリエステルジオールの製造に有利であり得る。多価アルコールの例は、2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールまたはジプロピレングリコールである。所望の特性に応じて、多価アルコールは、単独で、または互いの混合物中に用いてよい。カルボン酸と上記のジオール、特に4〜6個の炭素原子を有するもの、例えば1,4−ブタンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールなどとのエステル、ε−カプロラクトンは適当である。ω−ヒドキシカプロン酸のようなω−ヒドロキシカルボン酸の縮合生成物、またはラクトン、例えば必要に応じて置換されたω−カプロラクトンの重合生成物も適当である。エタンジオールポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオールネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンをポリエステルジオールとして好適に用いる。ポリエステルジオールは450〜10000の数平均分子量Mnを有し、単独でまたは互いの混合物の形態で用いてよい。
【0022】
一般式SiOで示される化合物は、通常市販され、d)中において生成物d1)として用い得る。その例として、変性発熱性サリチル酸および未変性発熱性サリチル酸として示し得る。
【0023】
一般式(RSiO)(式中、Rは、直鎖状および分枝状であり得、および1〜27個の炭素原子を含有する有機炭化水素残基を表す)で示される化合物をポリオルガノシロキサンd2)およびd3)として用いる。少なくとも3および多くとも8000の繰り返し単位が存在する。ポリオルガノシロキサンd2)およびd3)を、物質としてまたは担体物質中におけるマスターバッチとして添加し得る。
【0024】
熱可塑性エラストマー、例えばポリエーテルエステル、ポリエステルエステル、熱可能性ポリウレタン(TPU)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、ポリアミド(PA)、アクリレート−スチレン−アクリレートブロックコポリマー(ASA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシメチレン(POM)またはポリ塩化ビニル(PVC)などは担体物質として考慮される。好ましいのは、熱可塑性ポリウレタンであり、とりわけ脂肪族熱可塑性ポリウレタンである。
【0025】
シリコーン成分d)は、TPU原料へ、TPUの調製中に予め添加しても、あるいは例えばコンパウンドすることによって、調製後に完成TPUへ添加してもよい。
【0026】
ツェレビチノフ活性化合物の相対量は、イソシアネート基の数とイソシアネート反応性基の数との比が0.9:1〜1.1:1になるように好ましく選択される。
【0027】
適当な触媒e)は、先行技術から既知の通常の第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノ−エトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなど、ならびに特に有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、ビスマス化合物または錫化合物、例えば錫ジアセテート、錫ジオクトエート、錫ジラウレートまたは脂肪族カルボン酸のジアルキル錫塩、例えばジブチル錫ジアセテートまたはジブチル錫ジラウレートなどである。好適な触媒は、有機金属化合物、特にチタン酸エステル、鉄化合物、錫化合物、ジルコン化合物およびビスマス化合物である。本発明によるTPU中の触媒の全量は通常、TPUの全量を基準として、好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜2重量%である。
【0028】
本発明による熱可塑性ポリウレタンは、補助物質および添加剤f)を含有してよい。典型的な補助物質および添加剤は、滑剤および離型剤、例えば脂肪酸エステル、その金属石鹸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルアミド、粘着防止剤、防炎加工剤、可塑剤(例えばM.Szycher in M. Szycher’s Handbook of Polyurethanes、1999年、CRC Press、第8−28〜8−30頁に記載されたもの。ホスフェート、カルボキシレート(例えばフタレート、アジペート、セバケートなど)、シリコーンおよびアルキルスルホン酸エステルを例として挙げることができる)、抑制剤、加水分解、熱および変色に対する安定剤、光安定剤(好ましくはUV安定剤、抗酸化剤および/またはHALS化合物。さらなる詳細は、専門文献に見出され得、例えばPlastics Additives Handbook、2001年、第5版、Carl Hanser Verlag、ミュンヘンに記載されている)、染料、顔料、無機および/または有機の充填剤、静真菌作用および静菌作用を有する物質およびこれらの混合物である。
【0029】
上記の補助物質および添加剤のさらなる詳細は、専門文献、例えばJ.H.SaundersおよびK.C.Frischのモノグラフ「High Polymers」、第XVI巻、ポリウレタン、第1部および第2部、Verlag Interscience Publishers、1962年および1964年、R.GachterおよびH.Mullerによるthe Handbook for Plastic Additives(Hanser Verlag、ミュンヘン、1990年)またはDE−A2901774に見出すことができる。
【0030】
TPUに組み込み得るさらなる添加剤は、熱可塑性プラスチック、例えばポリカーボネートおよびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー(ABS)であり、特にABSである。他のエラストマー、例えばゴム、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、および他のTPUを用いることも可能である。
【0031】
補助物質および添加剤f)は、TPU製造工程中に、および/またはTPUのさらなるコンパウンド中に添加してよい。
【0032】
いわゆる連鎖遮断剤g)としてイソシアネートに反応性である単官能性化合物は、TPUを基準として2重量%までの量で用いてよい。例えば、モノアミン、例えばブチルアミンおよびジブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、N−メチルステアリルアミン、ピロリジン、ピペリジンまたはシクロヘキシルアミンなど、モノアルコール、例えばブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、異なったアミルアルコール、シクロヘキサノールおよびエチレングリコールモノメチルエーテルなどは適当である。
【0033】
本発明によるTPUは、射出成形法、押出法および/または粉末スラッシ法に好ましく用いられる。
【0034】
本発明によるTPUは、耐熱性成形品、および極めて良好な耐機械性および耐化学性表面、特に引掻耐性を有する表皮の製造に好ましく用いられる。
【0035】
本発明のTPUは、自動車用内部装備品に好ましく用いられる。
【0036】
本発明を、以下の非制限的実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0037】
以下の略称を用いる:
〔PE 225B〕
Mn=2250g/molの分子量を有するポリエステルジオール;Bayer MaterialScience AGの生成物
〔Acclaim(登録商標) 2220N〕
Mn=2250g/molの分子量を有するポリエーテルジオール(CおよびCアルキレン単位の混合エーテル);Bayer MaterialScience AGの製品
〔HDI〕
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
〔MDI〕
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
〔HDO〕
1,6−ヘキサンジオール
〔BDO〕
1,4−ブタンジオール
〔HQEE〕
1,4−ビス−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾール
〔Cap−HDO〕
EP1854818によるε−カプロラクトンおよび1,6−ヘキサンジオールをベースとする鎖伸張剤
〔Irganox(登録商標) 1010〕
企業Ciba Specialty Chemicals GmbH製の酸化防止剤
〔Tinuvin(登録商標) 234〕
企業Ciba Specialty Chemicals GmbH製のベンゾトリアゾールに基づく光安定剤
〔EBS〕
エチレン−ビス−ステアリルアミド
〔DBTL〕
ジブチル錫ジラウレート
〔SO〕
錫ジオクトエート
〔MB40−817〕
シロキサンマスターバッチを基準として26重量%のポリオルガノシロキサン(n〜6000)、14%二酸化ケイ素および60%脂肪族TPUからなるDOW Corning製のシロキサンマスターバッチ
〔MB50−027〕
ポリオルガノシロキサン(n〜6000)および脂肪族TPUからなるDOW Corning製のシロキサンマスターバッチ
〔M350〕
n〜100−150を有するポリオルガノシロキサン;GE Silicones製のシリコーン油
【0038】
芳香族TPU(TPU−1)の製造
643gのPE225B、71gのBDO、2gのIrganox(登録商標) 1010、5gのTinuvin(登録商標) 234、2gのEBSおよび50ppmのSO(ポリオールの量に基づく)の混合物を、インペラ撹拌機を用いて1分あたり500回転(rpm)の速度で攪拌しながら160℃に加熱した。その後、273gのMDIを添加した。次いで、できるだけ最大の粘度にまで攪拌し、次いでTPUを注いだ。該物質を80℃で30分間、熱処理に付し、次いで粒状化した。該物質を実施例1〜3の基本材料として用いた。
【0039】
脂肪族TPU(TPU−2)の製造
500gのPE225B、214gのAcclaim(登録商標) 2220N、150gのCap−HDO、92gのHQEE、5gのIrganox(登録商標) 1010、5gのTinuvin(登録商標) 234および50ppmのDBTL(ポリオールの量に基づく)の混合物を、インペラ撹拌機を用いて1分あたり500回転(rpm)の速度で攪拌しながら130℃に加熱した。その後、236gのHDIを添加した。次いで、できるだけ最大の粘度に攪拌し、次いでTPUを注いだ。該物質を80℃で30分間、熱処理し、次いで粒状化した。該物質を実施例4〜10の原料物質として用いた。
【0040】
一般的な記載に従って製造したTPU顆粒にマスターバッチまたはシリコーン油(正確な処方を表1に記載する)および着色剤(TPUを基準として2重量%、Cabot社製のElftex(登録商標) 435)を添加した。該混合物を、以下のもの:
1.コンベヤーエレメントを有する冷供給領域;
2.第1混合領域を有する第1加熱領域(165℃);
3.コンベヤーエレメントおよび第2混合領域を有する第2加熱領域(175℃);
4.混合領域、コンベヤーエレメントおよび真空脱気を有する第3加熱領域(180℃);
5.デフレクションヘッド(185℃)およびノズル(180℃)
から構成されるタイプDSE 25、4Z、360Nmの押出機によって220ppmの速度で10kg/hの押出速度で押し出した;次いで、押出物造粒機を用いて顆粒に加工し、および射出成形機を用いて射出成形板に加工した。
【0041】
工業的加工性の決定
射出成形中、異なった温度(150〜210℃)での工業的加工性に注意を払った。例えば、射出成形機のホッパーにおける供給挙動を評価した。層間剥離、欠陥および/または皮膜が成形品上で目視可能であるかどうかを確認した。また、成形品上での皮膜の形成の速度、およびその厚みを評価した。皮膜の形成の評価のために以下の等級を与えた。
等級1:目視可能な皮膜は無い。
等級2:目視可能な皮膜はほとんど無く、また、厚くもならない。
等級3:目視可能な皮膜はほとんど無いが、さらなるショット後、さらに厚くなる。
等級4:多くの皮膜が素早く形成され、さらなるショットにより素早く厚くなる。
等級1は極めて良好であり、等級2は許容することができる。
【0042】
1.表面感度の決定
表面感度を決定するために2つの試験を行った:
クロックメーター試験:これらの試験を以下の条件下、粒状の表面を有する射出成形体上で行った:
摩擦圧力:10N、摩擦経路:260mm、摩擦1回あたりの時間:15秒、ストローク数:100。
【0043】
実施:研磨綿編織布を軸受け表面の真下に伸ばし、該試験を上記の条件下、実施した。表面に対する損傷を定性的に評価した。等級「不良」ははっきりと目視可能な表面の摩耗を意味する。等級「良好」は、摩耗が無いか、あるいは摩耗がほとんど目視できないことを意味する。
【0044】
引掻試験:該試験は、1回のストロークと10Nの力でエリッシェン棒を用いて粒状化表面上で実施した。表面への損傷を定性的に評価した。等級「不良」は、はっきりと目視可能な表面への損傷を意味する。等級「良好」は目視可能な表面損傷が存在しないか、あるいは表面損傷がほとんど目視できないことを意味する。
【0045】
試験結果を表に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜3において、芳香族TPU(TPU−1)を用いた。ポリオルガノシロキサンを用いない場合(実施例1)、表面耐性は悪い。高分子量ポリオルガノシロキサンを用いた場合(実施例2)、クロックメーター試験の結果は良好であり、引掻試験は合格したが、工業的加工性は最適ではなかった。実施例3におけるTPUは、表面感度に対する全ての要求を満たし、良好な工業的加工性を達成した。
【0048】
実施例4〜10においては、脂肪族TPU(TPU−2)を用いた。比較例4では、ポリオルガノシロキサンを使用せず、比較例10では、低分子量ポリオルガノシロキサンのみを使用し、実施例5では、高分子量ポリオルガノシロキサンのみを使用し、および比較例6および7では、高分子量ポリオルガノシロキサンおよび低分子量ポリオルガノシロキサンの混合物を用いた。実施例4および10におけるTPUは、引掻試験において悪い結果を示した。実施例10では、射出成形機のホッパーにおいて問題があった。実施例5および6における材料は、良好な表面耐性を有したが、工業的加工性における問題を示した。実施例5、6、7および10では、程度の差はあるが、層間剥離および表皮の形成で深刻な問題があり、欠陥のない連続加工は可能ではなかった。
【0049】
高分子量ポリオルガノシロキサン、低分子量ポリオルガノシロキサンおよび二酸化ケイ素の使用による本発明の実施例8および9におけるTPUは、表面抵抗に関する全ての要件を満たし、広い加工手段での極めて良好な機械加工性を示し、射出成形による加工の際に全ての温度および圧力設定で層間剥離問題がなかった。問題のない連続法が可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1以上の有機ジイソシアネート、
b)鎖伸張剤として、ツェレビチノフ活性水素原子平均少なくとも1.8および多くとも3.0、および60〜400g/molの平均分子量Mnを有する少なくとも1つの低分子量ポリオール、および
c)450〜10000g/molの数平均分子量Mnおよびツェレビチノフ活性水素原子平均少なくとも1.8乃至多くとも3.0を有する少なくとも1つのポリオール成分
から、
e)必要に応じて、触媒
f)必要に応じて、添加剤および/または補助物質、
g)必要に応じて、連鎖遮断剤
の添加により得られ、成分a)中のイソシアネート基の数と成分b)、c)および必要に応じてg)中のイソシアネート反応性基の数との比が0.9:1〜1.1:1であり、および
d)熱可塑性ポリウレタンを基準として0.4〜10重量%の、
d1)該熱可塑性ポリウレタンを基準として0.1〜4重量%の少なくとも1つの非晶質および/または結晶質二酸化ケイ素、および
一般式(RSiO)(式中、Rは、直鎖状および分枝状であり得、および1〜27個の炭素原子を有し得る有機炭化水素残基を表し、nは3〜8000の整数であり得る)で示される特別なポリオルガノシロキサン混合物
の混合物を含有し、該ポリオルガノシロキサン混合物は、
d2)前記熱可塑性ポリウレタンを基準として0〜2重量%の1以上のポリオルガノシロキサン(RSiO)(n=3〜300)、および
d3)前記熱可塑性ポリウレタンを基準として0.2〜8重量%の1以上のポリオルガノシロキサン(RSiO)(n=1000〜8000)
からなる、熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
成形品および表皮を製造するための、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンの使用。
【請求項3】
射出成形法、押出法および粉末スラッシ法における、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンの使用。
【請求項4】
自動車用内部装備品のための、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタンの使用。

【公開番号】特開2011−231324(P2011−231324A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−99423(P2011−99423)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】