説明

熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及びその使用

【課題】常温で低弾性、低応力であり、ガラス転移点が90℃を越え、かつ高温度に於ける弾性率の保持率が高い、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及びエポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】フルオレン骨格を構成成分として8モル%以上含有し、なおかつオルガノシロキサンを構成成分として式化1で表される分子量が10,000から200,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及びそれから製膜される耐熱性絶縁フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気用積層板、磁気テープバインダー、絶縁ワニス、自己融着エナメル電線ワニス等の電気・電子分野及び接着剤やフィルム等として用いられる耐熱性、耐水性に優れ、低弾性、低応力である熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及びそれから成形された絶縁性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂はフェノキシ樹脂として知られており、可撓性、耐衝撃性、密着性、機械的性質等が優れることから、電子分野では、磁気テープバインダーやモーター等の電気機械の絶縁ワニスや接着フィルム等の広範囲の用途で使用されてきた。しかしながら、従来の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、耐熱性に劣り、さらに高温・高湿といった環境下においては急激に物性の低下、例えば密着性が低下するという欠点があった。
【0003】
さらに、特開平11-269264号公報に記載されているようフルオレン骨格を導入する手法により、耐熱性は改良されたがそれに伴い、樹脂粘度の増大などの悪影響が懸念される。
また、特開平10-182941号公報などではポリシロキサンを混合する手法により半田耐熱性を付与している。しかし熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の場合、ポリシロキサンを混合する場合、フィルム強度の低下などの悪影響が懸念される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂とほぼ同等の粘度を有し、さらに耐熱性に優れる熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂及び該樹脂から成形される絶縁性フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂中にフルオレン骨格とオルガノシロキサン骨格を導入することにより、耐熱性に優れ、粘度の増大が見られない熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を得るものである。
【0006】
すなわち、本発明は、 構成成分として、下記式(I)
【化1】

【0007】
{式中、
Xは、下記式(II)、(III )及び(IV):
【0008】
【化2】

【0009】
〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Yは−SO2−、−CH2−、−C(CH3)2−、−CHCH3−、−S−又は−O−であり、そしてmは0または1の値である〕、
【0010】
【化3】

〔式中、R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である〕、
【0011】
【化4】

【0012】
〔式中、R3はフェニル基又はメチル基であり、iは1以上の値であり、R4は炭素数1〜5のアルキル基であり、そしてjは0または1の値である〕
のいずれかであり、そしてXが式(III )である割合が全Xの8モル%以上であり、且つ式(IV)である割合が0.1モル%以上であり;
Zは水素原子であるかまたは下記式(V):
【0013】
【化5】

【0014】
により表される基であり;そして
nは10以上の値である}
により表される、フルオレン骨格とオルガノシロキサンを必須成分とする、分子量が10,000から200,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を提供する。
【0015】
本発明はまた、上記の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を含んでなる樹脂組成物を提供する。この組成物は、好ましくは、エポキシ樹脂、硬化剤及び添加剤の少なくとも1種を更に含んで成る。
上記の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂または樹脂組成物は、例えば、電気用積層板、磁気テープバインダー、絶縁ワニス、自己融着エナメル電線ワニスなどにおいて、又は接着剤として用いられる。
【0016】
本発明はまた、前記の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂または樹脂組成物をフィルム状に成形した絶縁フィルムに関する。
本発明はまた、上記の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂または樹脂組成物を銅箔に塗布してなることを特徴とするプリント配線板用接着剤付き銅箔に関する。
本発明は更に、上記の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂または樹脂組成物、上記の絶縁フィルム、あるいは上記のプリント配線板用接着剤付き銅箔のいずれかから得られる電気積層板に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂に於いて、分子量が10,000未満では、熱可塑性が失われて、自己造膜性を示さなくなる。また分子量が200,000を超えると、溶剤で溶解しても、一般に工業的に利用されている溶媒濃度である70重量%から40重量%の濃度では、溶液粘度が高過ぎ、成膜使用可能な溶液粘度にするために溶剤を多量に加えなければならず、不経済であり、環境に対してもVOC(揮発性有機化合物)を可能なかぎり低減する方向にある現状では好ましいとはいい難い。こうしたことから、分子量は11,000〜100,000が好ましく、より好ましくは12,000〜65,000である。
【0018】
本発明の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂には、難燃性の付与のためにハロゲンを導入しても良い。ハロゲンにより難燃性を付与する場合、ハロゲン含有量が5重量%未満では十分な難燃性を付与できない。5重量%以上ではどの濃度でも難燃性が付与可能となるが、40重量%以上の濃度にしても難燃性の更なる向上は認められないことから、ハロゲン含有量を5重量%から40重量%の範囲に制御するのが実用的である。本発明に於いて、ハロゲン元素の種類はいずれのものでもよいが、商業生産の観点から市販されている、臭素化合物、塩素化合物、フッ素化合物を利用するのがよい。
【0019】
熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂の製造には、二価フェノール類とエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンの直接反応による方法、二価フェノール類のジグリシジルエーテルと二価フェノール類の付加重合反応による方法が知られているが、本発明に用いられる熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂はいずれの製法により得られるものであっても良い。
【0020】
二価フェノール類とエピハロヒドリンの直接反応の場合は、二価フェノール類として、式(VI):
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)
で表される、例えば、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び/または式(VII ):
【0023】
【化7】

【0024】
〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Yは−SO2−、−CH2−、−C(CH3)2−、−CHCH3−、−S−又は−O−であり、そしてmは0または1の値である〕
で表される、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、臭素化ビスフェノールA等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。これらの二価フェノール類は、単独で使用しても良いし、また2種類以上を併用しても良い。この際、式(VI)で表されるフルオレン骨格含有二価フェノール類は、使用する全二価フェノールの8モル%以上含まれていることが必要である。8モル%未満では耐熱性の付与に関与するフルオレン骨格導入の効果が十分でなく、耐熱性のあるフィルムが得られないことがある。シロキサン骨格の導入には式(VIII):
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、R3はフェニル基又はメチル基であり、そしてiは1以上の値である)
で示されるシロキサンを二価フェノール類の代わりに0.1モル%以上置き換えることで導入できる。
【0027】
二価フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015モル、好ましくは0.99〜1.012モル、より好ましくは0.995〜1.01モルとをアルカリ金属水酸化物の存在下、非反応性溶媒中で反応させ、エピハロヒドリンが消費され、分子量が10,000以上になるように縮合反応させることにより熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を得ることができる。
【0028】
非反応性溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではなく、これらの溶剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、反応温度は40℃〜200℃が好ましく、特に好ましくは60℃〜170℃である。反応圧力は通常、常圧である。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱により使用溶剤の蒸発・凝縮・還流法または/及び間接冷却により行われる。
【0029】
二価フェノール類のジグリシジルエーテルと二価フェノール類の付加重合反応による製法の場合、式(IX):
【0030】
【化9】

【0031】
〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Yは−SO2−、−CH2−、−C(CH3)2−、−CHCH3−、−S−又は−O−であり、そしてmは0または1の値である〕
で表される二価フェノール類のジグリシジルエーテル及び/または式(X):
【0032】
【化10】

【0033】
(式中、R3はフェニル基又はメチル基であり、そしてiは1以上の値である)
で表される二価フェノール類のジグリシジルエーテルをアミン系、イミダゾール系、トリフェニルフォスフォニウム、フォスフォニウム塩系等公知の触媒存在下に、非反応性溶媒中で、式(VI)で表されるフルオレン骨格含有二価フェノール類及び/または式(VII )で表される二価フェノール類と、0.9:1〜1.1:1、好ましくは0.95:1〜1.05:1、最も好ましくは0.98:1〜1.02:1のフェノール性ヒドロキシル:エポキシ比を与える量で反応させることにより製造される。
【0034】
この際、式(VI)で表されるフルオレン骨格含有二価フェノール類及び/または(X)で表されるフルオレン骨格含有二価エポキシ樹脂の合計モル%は、使用する二価フェノール類及び二価フェノール類のジグリシジルエーテルの全モル中に8モル%以上含有されていることが必要である。8モル%未満ではフルオレン骨格導入の効果発現が十分でなく、耐熱性硬化膜が得られないことがある。シロキサン骨格の導入には式(XI):
【0035】
【化11】

【0036】
(式中、R3はフェニル基又はメチル基であり、iは1以上の値であり、R4は炭素数1〜5のアルキル基であり、そしてjは0または1の値である)
で示されるオルガノシロキサン骨格含有エポキシ樹脂を二価フェノール類のジグリシジルエーテルの代わりに0.1モル%以上置き換えることで導入できるが、特にこれに限定されるわけではない。
【0037】
非反応性溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではなく、これらの溶剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、反応温度は40℃〜200℃が好ましく、特に好ましくは60℃〜180℃である。反応圧力は通常、常圧であり、反応熱の除去が必要な場合は、使用する溶剤の蒸発・還流法または/及び間接冷却で行われる。
【0038】
本発明においては低弾性、低応力を達成するためには、式(VIII)及び/または式(XI)で示されるようなシリコーンが使われる。ただし、これに限定されるわけではなく、シロキサン構造を持つものであり、エポキシ基あるいはフェノール基と反応する末端基で有り、主鎖、側鎖に関わらず導入することが出来れば効果を発揮する事が出来る。
【0039】
この様にして合成された熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は耐熱性、可撓性のある物質であり、単独で用いることもできるが、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂等を含有せしめることができる。また、耐熱性、難燃性の付与、低線膨張率化等のために、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、水酸化アルミニウム、アルミナ、マイカ等を、また、接着力改善の為にエポキシシランカップリング剤や、ゴム成分等を物性を落とさない程度に加えても良い。
【実施例】
【0040】
以下、合成例、実施例及び比較例に基づき本発明を具体的に説明するが本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。以下の合成例、実施例及び比較例に於いて、「部」は「重量部」を示す。さらに本発明では以下の試験方法を使用した。
【0041】
(1)分子量
装置 :HLC−8120(東ソー社製)
カラム:SuperHZ2000×1本+SuperHZ3000×1本+SuperHZ4000×1本(東ソー社製)
温度 :40℃
溶離液/流量:THF 0.35ml/min
検出器:RI
較正法:標準ポリスチレンによる換算
(2)エポキシ当量:JIS K-7236で測定し、樹脂固形分としての値に換算した。
(3)ガラス転移温度 :SII社製 EXTER DSC6200を使用して、20℃から10℃/分の昇温速度により測定した。
(4)弾性率:SII社製 DMS120を使用し、20℃から2℃/分の昇温。周波数は10Hzにより測定を行った。
(5)接着力:JIS K6854-3に準拠し、島津製作所製 オートグラフAGS-Hにより5 mm/secにより測定を行った。
【0042】
合成例1.
オルガノシロキサンを構成成分として含有するエポキシ樹脂、具体的にはBY16-855D(東レ・ダウコーニング・シリコーン製、エポキシ当量184g/eq)を23.6部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、具体的にはYD-8125(東都化成製、エポキシ当量171g/eq)を198.8部、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(新日鐵化学製、水酸基当量175g/eq、以後BPFLと略す)を107.6部、ビスフェノールA(新日鐵化学製、水酸基当量114g/eq)を70.0部、シクロヘキサノンを171.4部、触媒としてn−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(北興化学製、以後TPP-BBと略す)0.18部を、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、反応温度を150℃〜170℃に保ち10時間撹拌した後、シクロヘキサノン68.6部、メチルエチルケトン360部を加えて、エポキシ当量6,500g/eq、NV.40.0%、分子量35,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルエチルケトン混合ワニスを990部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスIとした。合成樹脂ワニスIを離型フィルム(PET)へ溶剤乾燥後の樹脂厚みが60μmになるようにローラーコーターにて塗布し、130℃〜150℃、30分〜60分間溶剤乾燥を行って絶縁フィルムを得た。
【0043】
合成例2.
オルガノシロキサンを構成成分として含有するエポキシ樹脂、具体的にはBY16-855D(前述)を206.7部、BPFL(前述)を193.3部、シクロヘキサノンを171.4部、触媒として2エチル4メチルイミダゾール(四国化成製、以後2E4MZと略す)0.16部を、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、反応温度を150℃〜170℃に保ち10時間撹拌した後、シクロヘキサノン68.6部、メチルエチルケトン360部を加えて、エポキシ当量19,500g/eq、固形分濃度40.0%(以後NV.と略す)、分子量45,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルエチルケトン混合ワニスを991部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスIIとした。合成例1と同様の操作で合成樹脂ワニスIIの絶縁フィルムを得た。
【0044】
合成例3.
オルガノシロキサンを構成成分として含有するエポキシ樹脂、具体的にはBY16-855D(前述)を40.0部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、具体的にはYD-128(東都化成製、エポキシ当量187g/eq)を163.0部、9,9'−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガス化学製、水酸基当量189g/eq)を197.0部、シクロヘキサノンを171.4部、触媒として2E4MZ(前述)0.16部を、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、反応温度を150℃〜170℃に保ち10時間撹拌した後、シクロヘキサノン68.6部、メチルエチルケトン360部を加えて、エポキシ当量8,100g/eq、NV.40.0%、分子量40,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルエチルケトン混合ワニスを992部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスIII とした。合成例1と同様の操作で合成樹脂ワニスIII の絶縁フィルムを得た。
【0045】
合成例4.
オルガノシロキサンを構成成分として含有するエポキシ樹脂、具体的にはBY16-855D(前述)を106.3部、ビフェノール型エポキシ樹脂、具体的にはYDC-1500(東都化成製、エポキシ当量193g/eq)を111.5部、BPFL(前述)を182.2部、シクロヘキサノンを171.4部、触媒としてトリフェニルフォスフィン(北興化学製、以後、TPPと略す)0.18部を、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、反応温度を150℃〜170℃に保ち10時間撹拌した後、シクロヘキサノン68.6部、メチルエチルケトン360部を加えて、エポキシ当量3,500g/eq、NV.40.0%、分子量12,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルエチルケトン混合ワニスを992部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスIVとした。合成例1と同様の操作で合成樹脂ワニスIVの絶縁フィルムを得た。
【0046】
合成例5.
オルガノシロキサンを構成成分として含有するエポキシ樹脂、具体的にはKF-105(信越シリコーン製、エポキシ当量490g/eq)を0.7部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、具体的にはYD-128(前述)を202.1部、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、具体的にはESF-300(新日鐵化学製、エポキシ当量256g/eq)を53.1部、ビスフェノールA(前述)を144.1部、シクロヘキサノンを171.4部、触媒としてTPP(前述)0.18部を、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、反応温度を150℃〜170℃に保ち10時間撹拌した後、シクロヘキサノン68.6部、メチルエチルケトン360部を加えて、エポキシ当量13,000g/eq、NV.40.0%、分子量40,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルエチルケトン混合ワニスを990部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスVとした。合成例1と同様の操作で合成樹脂ワニスVの絶縁フィルムを得た。
【0047】
合成例6.
ビスフェノールA型熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、具体的にはYP-50SC(東都化成製、エポキシ当量18,000、分子量45,000)を400部、シクロヘキサノンを240部、メチルエチルケトン360部を、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、反応温度を40℃〜60℃に保ち3時間撹拌し、完全に溶解させて、シクロヘキサノン・メチルエチルケトン混合ワニスとした。この樹脂を合成樹脂ワニスVIとした。合成例1と同様の操作で合成樹脂ワニスVIの絶縁フィルムを得た。
【0048】
合成例7.
ビフェノール型エポキシ樹脂、具体的にはYDC-1500(前述)を318.3部、BPFL(前述)を281.7部、シクロヘキサノンを171.4部、触媒として2E4MZ(前述)0.16部を、撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、反応温度を150℃〜170℃に保ち10時間撹拌した後、シクロヘキサノン68.6部、メチルエチルケトン360部を加えて、エポキシ当量12,500g/eq、NV.40.0%、分子量42,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のシクロヘキサノン・メチルエチルケトン混合ワニスを990部得た。この樹脂を合成樹脂ワニスVII とした。合成例1と同様の操作で合成樹脂ワニスVII の絶縁フィルムを得た。
【0049】
実施例1.
合成例1で得られた合成樹脂ワニスI250.0部とエポキシ樹脂としてYD-128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た。この組成物ワニスを離型フィルム(PET)へ溶剤乾燥後の樹脂厚みが60μmになるようにローラーコーターにて塗布し、130℃〜150℃、60分間溶剤乾燥及び硬化を行った後、離型フィルムから樹脂フィルムを剥がし、さらに樹脂フィルムを180℃、60分間後硬化させて、硬化フィルムを得た。それとは別に、表面をサンドブラストにより粗化させた厚さ0.3mm圧鋼板の処理面に溶剤乾燥後の樹脂厚みが50μmになるようにローラーコーターにて組成物ワニスを塗布し、130℃〜150℃、5分〜15分間溶剤乾燥を行って接着剤付き鋼板を得た。この樹脂付き鋼板2枚を常温で2kg/cm2で接着剤同士を圧着させ、徐々に昇温し、150℃に到達後1時間硬化させて、試験片を得た。
【0050】
実施例2.
合成例2で得られた合成樹脂ワニスII 250.0部とエポキシ樹脂としてYD-128(前述)25.0部、硬化剤としてジシアンジアミド(日本カーバイト製、以後DICYと略す)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム及び試験片を得た。
【0051】
実施例3.
合成例3で得られた合成樹脂ワニスIII 250.0部とエポキシ樹脂としてYD-128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム及び試験片を得た。
【0052】
実施例4.
合成例4で得られた合成樹脂ワニスIV 250.0部とエポキシ樹脂としてYD-128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム及び試験片を得た。
【0053】
実施例5.
合成例5で得られた合成樹脂ワニスV 250.0部とエポキシ樹脂としてYD-128(前 述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム及び試験片を得た。
【0054】
比較例1.
合成例6で得られた合成樹脂ワニスVI 250.0部とエポキシ樹脂としてYD-128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム及び試験片を得た。
【0055】
比較例2.
合成例7で得られた合成樹脂ワニスVII 250.0部とエポキシ樹脂としてYD-128(前述)25.0部、硬化剤としてDICY(前述)1.4部、硬化促進剤として2E4MZ(前述)0.15部、溶剤としてメチルセロソルブ、ジメチルホルムアミドをそれぞれ20.0部加え均一に攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物ワニスを得た以外は実施例1と全く同様に硬化フィルム及び試験片を得た。
【0056】
分子量は、合成例1〜7で得られた合成ワニスを、ガラス転移温度、及び、弾性率は、合成例1〜7で得られた絶縁フィルム、及び、実施例1〜7で得られた硬化フィルムを、接着力は、実施例1〜7で得られた試験片をそれぞれ使用して測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
発明の効果
本発明による熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を用いると、弾性率が小さく、密着性の優れた、かつガラス転移点が90℃を越えるフィルムが得られる。これは、通常の使用範囲において必要十分な耐熱性を有し、比較的高温環境においても物性が実質上低下しない絶縁フィルムが製造可能なことに相当するものであり、その技術上の意味に大きなものがある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、合成例1で得られた熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のGPCチャートである。
【図2】図2は、合成例1で得られた熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂のIRスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分として、下記式(I)
【化1】

{式中、
Xは、下記式(II)、(III )及び(IV):
【化2】

〔式中、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Yは−SO2−、−CH2−、−C(CH3)2−、−CHCH3−、−S−又は−O−であり、そしてmは0または1の値である〕、
【化3】

〔式中、R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である〕、
【化4】

〔式中、R3はフェニル基又はメチル基であり、iは1以上の値であり、R4は炭素数1〜5のアルキル基であり、そしてjは0または1の値である〕
のいずれかであり、そしてXが式(III )である割合が全Xの8モル%以上であり、且つ式(IV)である割合が0.1モル%以上であり;
Zは水素原子であるかまたは下記式(V):
【化5】

により表される基であり;そして
nは10以上の値である}
により表される、フルオレン骨格とオルガノシロキサンを必須成分とする、分子量が10,000から200,000の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂を含んでなる樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂、硬化剤及び添加剤を更に含んで成る、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
電気用積層板、磁気テープバインダー、絶縁ワニス、自己融着エナメル電線ワニス又は接着剤において用いられる、請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂または、請求項2もしくは3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂または、請求項2もしくは3に記載の樹脂組成物をフィルム状に成形した絶縁フィルム。
【請求項6】
請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂または、請求項2もしくは3に記載の樹脂組成物を銅箔に塗布してなることを特徴とするプリント配線板用接着剤付き銅箔。
【請求項7】
請求項1に記載の熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、請求項2もしくは3に記載の樹脂組成物、請求項5に記載の絶縁フィルム、または請求項6に記載のプリント配線板用接着剤付き銅箔のいずれかから得られる電気積層板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−119579(P2007−119579A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312888(P2005−312888)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000221557)東都化成株式会社 (53)
【Fターム(参考)】