説明

熱可塑性合成繊維の製造方法

【課題】
単繊維繊度の小さい糸条やフィラメント数の多い糸条を製造する場合にも、糸切れ等の工程不調発生を大幅に軽減することができ、また、均斉度の優れた糸条を製造することが可能な熱可塑性合成繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】
紡糸口金に環状に配置された紡糸孔から吐出した複数本の繊維に対して冷却風を供給して該繊維を冷却、固化する熱可塑性合成繊維の製造方法において、紡糸口金下方にスチームを環状に配置された紡糸孔よりも外周側から吹き出すとともに、該スチームの供給量の20〜90%を繊維走行方向に関して吹き出し位置よりも下流側でかつ前記複数本の繊維の外周側から吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸口金の口金汚れを抑制する熱可塑性合成繊維の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、均斉度の優れた単繊維繊度1.5dtex以下の極細マルチフィラメント(以後極細糸という)を得るにあたっても、糸切れ等の工程不調を大幅に軽減することが可能な熱可塑性合成繊維の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に熱可塑性合成樹脂を溶融紡糸する際には、紡糸した糸条から揮発性の低分子物が発生し、これが雰囲気中の酸素と反応し、口金面に汚れとなって付着する。このようにして口金面が汚れると、口金の吐出孔周辺の汚れによって糸条の曲がりを発生させ、品質特にウースター斑を悪化させる他、甚だしいときは糸切れを生じさせる。そのため口金面汚れ減少は操業性向上における重要課題である。
【0003】
溶融紡糸における口金面汚れを減少させる方法は数多く提案されており、口金面を水蒸気等の不活性気体で遮蔽する方法は代表的なものの一つである。たとえば特許文献1に口金面に水蒸気を供給する装置が開示されている。しかし、この文献に記載の装置では口金面付近に揮発性低分子物を含んだスチームが実質的に滞留することになる。この低分子物を含んだスチームの滞留時間はスチームの供給量によって決定されてしまうが、滞留時間が長いとスチーム内に微量存在している酸素と揮発性低分子物が反応し、口金汚れを発生させる。一方、口金面汚れを軽減するためにスチーム供給量を増加させスチームの滞留時間を短くすると、口金面へのスチーム流れにより、スチーム供給箇所近傍での気流が乱れより、吐出された糸条に揺れが生じ、均斉度が悪くなるという問題がある。とくにフィラメント数の多い糸条を製造する際は糸条とともに析出する揮発性低分子物の量が増加するため、あるいは単繊維繊度が小さい糸条を製造する際は糸条の冷却固化が早くなるため、口金面下部の雰囲気の制御も厳密に行わなければならず、特許文献1記載の方法では不十分である。
【0004】
また、特許文献2には、紡糸口金から吐出した繊維に対して、該繊維の内側から冷却風を供給して該繊維を冷却するとともに、吐出された冷却風を糸条の外周で吸引する方法が開示されている。しかし、この文献に記載の方法では、冷却をより均一に行うために冷却風を吸引するだけであるので、口金下面で揮発性低分子物を吸引することは出来ない。
【0005】
さらに、特許文献3,4には、いずれも口金面下部に不活性ガスを供給するとともに口金面下部外周部より不活性ガスを吸引する方法が記載されている。
【0006】
しかし、特許文献3,4に記載の方法はいずれも低重合体を含んだ不活性ガスを吸引する事のみに重点が置かれており、単繊維を冷却するための冷却風、固化した単繊維によって発生させられる随伴気流、系外からの外気の流入については全く考慮されておらず、とくに単繊維繊度の細い糸条を製造する場合においては不十分である。また、特許文献3記載の方法では不活性ガスを口金パック内に通すためパック内のポリマー温度が低下し、糸切れ、品質ばらつきを発生させる。さらに、不活性ガス導入用フレキシブルパイプを設置するための取り付け板、又はフレキシブルパイプ自身がパック下部にあるため、低重合体吸引口を口金孔から離れた位置に設置しなければならず、不活性ガス流が吸引口迄届きにくく、低重合体を吸引する効果が非常に小さくなってしまうのみならず、低重合体吸引口では口金パック下の外気を吸い込んでしまい、口金下面で糸条が揺れ、糸条の均斉度が悪化し易い。また、特許文献4記載の方法では、不活性ガス吸引の下流側に糸条を冷却する紡糸筒を設ける旨の記載もあるが、不活性ガスの吹き出し管が一方向から口金下面中央部にまで伸びているため、口金パック下の不活性ガス流れが均等になりにくく、その結果、糸条の均斉度が悪化し易い。また、当該紡糸筒は、スチーム吸引装置にディスタンスリングを介して取り付けられるため、単繊維繊度の小さい糸条を製造する際に、冷却風を当てて冷却を開始する位置を口金面の近傍にすることができず、均斉度の優れた極細糸を得ることが難しい。そして、糸条の内側から冷却風を供給する紡糸筒を組み合わせることもできるが、その場合には、不活性ガス吹き出し管が口金下面に設置してあるため、該紡糸筒をさらに下方に設置させなければならず、単繊維繊度の小さい糸条を製造する際に、冷却風を当てて冷却を開始する位置を口金面の近傍にできないため、均斉度の優れた極細糸を得ることが難しい。
【特許文献1】特開昭50−64512号公報
【特許文献2】特開2006−104600号公報
【特許文献3】特開昭52−8115号公報
【特許文献4】特開昭52−34017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、単繊維繊度の小さい糸条やフィラメント数の多い糸条を製造する場合にも糸切れ等の工程不調発生を大幅に軽減することができ、また、均斉度の優れた糸条を製造することが可能な熱可塑性合成繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するための本発明は、次の(1)〜(4)のいずれかの構成を特徴とするものである。
(1)紡糸口金に環状に配置された紡糸孔から吐出した複数本の繊維に対して冷却風を供給して該繊維を冷却、固化する熱可塑性合成繊維の製造方法であって、紡糸口金下方にスチームを環状に配置された紡糸孔よりも外周側から吹き出すとともに、該スチーム供給量の20〜90%の気体を、繊維走行方向に関して前記スチーム吹き出し位置よりも下流側でかつ紡糸口金面から50mm以内の位置で、前記複数本の繊維の外周側から吸引することを特徴とする熱可塑性合成繊維の製造方法。
(2)繊維走行方向に関して紡糸口金面から50mm以内の位置で前記冷却風を供給する、前記(1)記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
(3)前記複数本の繊維の単繊維繊度が0.1〜1.5dtexである、前記(1)または(2)記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
(4)100〜400個の紡糸孔が環状に配置された紡糸口金を用いる、前記(1)〜(3)いずれかに記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性合成繊維の製造方法によれば、フィラメント数の多いマルチフィラメントあるいは単繊維繊度の小さいマルチフィラメントを、均斉度よくかつ操業性も良好に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかる熱可塑性合成繊維の製造方法の一実施形態を、以下に図面を参照しながら説明する。図1は、本発明で用い得る装置の一例を示す概略縦断面の模式図、図2は図1に示す装置を冷却筒5の下面から見た概略図である。この装置は、パックハウジング1に固定された紡糸口金2と、その紡糸口金2の下方で、かつ、紡糸口金2に環状に穿設された複数個の紡糸孔3から吐出される複数本の繊維4の内側に位置するように設置された冷却筒5と、環状に穿設された複数個の紡糸孔3より下部で、かつ紡糸される複数本の繊維の外周側に設置されたスチーム吹き出し部8と、スチーム吹き出し部にスチームを供給するスチーム供給部7と、さらにスチーム吹き出し部8の下部全周にわたって配置されるスチーム吸引部9と、紡糸孔3より吐出される複数本の繊維の外周を取り囲むように配置された外筒6と、それら冷却筒5および外筒6よりも下流側に配置された給油ガイド10と、固化した糸条の巻取手段(図示しない)などで構成されている。
【0011】
このような装置において、溶融された熱可塑性樹脂が環状に配置された紡糸孔3から吐出される。紡糸孔3から吐出された複数本の繊維4は、紡糸口金2の直下では未固化の樹脂であり、さらにスチーム吹き出し部8からのスチームで満たされた空間を通過した後、冷却筒5と外筒6との間で冷却、固化された後、給油され、以後必要に応じて延伸され、巻き取られる。
【0012】
ここで、冷却筒5は図3の概略縦断面図に示すように中空構造になっており、たとえば冷却風吹出部11となる筒体を上部蓋12とベース13で挟み込んで固定して構成される。冷却風吹出部11となる筒体は、たとえば厚み方向に多数の毛細管状の孔(送風孔)を有する多孔質の部材から構成され、冷却筒内部に送られた冷却風が冷却風吹出部から糸条方向へ整流されつつ吹き出され、樹脂を冷却する。多孔質部材としては、適度な剛性を有していればよく、紙、木、金属および合成樹脂等を用いることができる。例えば、セルロースリボンを螺旋状に巻いてフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸、加熱硬化することで、リボン層全体にわたり40μm程度の大きさの孔を形成したものなどである。
【0013】
冷却筒5の冷却風吹出部11は、樹脂を確実に冷却、固化するために、繊維走行方向に150mm以上にわたって設けられていることが好ましい。一方、この距離は長すぎても紡糸作業に支障が出易いため、300mm以下であることが好ましい。
【0014】
また、紡糸口金孔より吐出された糸条は冷却筒5より吹き出される冷却風で積極的に冷却することで、円周方向に均一な冷却が行われ、均斉度の優れた糸条となる。しかし冷却筒の冷却風吹出部と口金面の距離が大きく離れていると、特に単繊維繊度の小さいマルチフィラメントは冷却風が冷却し始める位置より上流で固化してしまい、この結果、冷却固化した糸条自身が発生させる随伴気流により、口金下雰囲気においてスチーム流れが変動したり、冷却筒から吹き出された冷却風や外筒内壁面を伝って流入してくる外気が流入する現象が発生し、糸条の均斉度を悪化させるため、口金面から冷却風吹出部上端までの距離L1を50mm以内とすることが好ましく、さらには15mm以内とすることが好ましい
一方、外筒6は、糸条の冷却を安定化するために、紡糸口金2の下方で、かつ走行する複数本の繊維4の外周側に、冷却筒5と同程度の長さで設置されることが好ましい。
【0015】
この外筒は次のように作用する。すなわち、紡糸口金孔より吐出された未固化の樹脂は冷却筒より吹き出される冷却風により冷却固化されつつ、引き取り速度まで加速されるため、冷却筒の中間部付近から下方へ繊維走行方向に沿って随伴気流が発生する。このため、外筒を設置していない場合、この随伴気流の発生によって口金下面〜冷却筒上部付近の空気が下方へ流れていくことにより、該領域は負圧傾向となる。その結果、図4に示すように、該空間に紡糸機まわりの外気が吸い込まれ冷却斑を発生し易くなる。しかし、図5に示すように、外筒6を設置する場合、該領域が小さくなることおよび外筒により口金下面〜冷却筒上部付近と外部が遮断されるため該空間に外気が流入しにくくなり、安定した冷却ができる。
【0016】
そして、図6に示すように、外筒の内径が大きすぎると外筒内壁に沿って外筒下部より口金下面〜冷却筒上部付近に外気が流入しやすくなり、一方、外筒の内径が小さすぎると糸切れ時や紡糸準備時に複数本の繊維が融着し、作業が困難になるため、より安定した冷却を行い、かつ、作業を簡単にするために、外筒の内径と繊維トの位置とが以下の関係式を満たすようにすることがより好ましい。
1.20d<D<1.45d
ただし、dは環状に設置された紡糸孔を結んでできる近似円の最大直径であり、同心円上に複数の環状に配置された紡糸孔がある場合は円の直径が最も大きい径である。Dは外筒の内径である。
【0017】
続いて、スチーム吹き出し部8は、紡糸口金直下の空間をスチームで満たすために、口金下方で、環状に配置された紡糸孔よりも外周側から吐出孔に向かってスチームを吹き出すように設置されている。口金面直下の空間がスチームで満たされることによって口金面付近の揮発性低分子物が汚れとして口金面に付着することを防止できる。
【0018】
また、本発明においては、吐出孔に向かって吹き出され揮発性低分子物を含んだスチームを、繊維走行方向に関してスチーム吹き出し位置よりも下流側で、かつ、環状に配置された紡糸孔から吐出される複数本の繊維よりも外周側から吸引する。そのためスチーム吸引部9は、スチーム吹き出し部の下部に配置される。
【0019】
このとき口金面からスチーム吸引部までの距離が離れていると、冷却筒から吹き出された冷却風や外筒内壁面を伝って流入してくる外気を主に吸引してしまい、揮発性低分子物を含んだスチームが口金面付近で実質的に滞留し、十分な効果が得られない。そのため、口金面からスチーム吸引部下端迄の距離L2を50mm以内にし、すなわち紡糸口金面から50mm以内の位置で吸引を行い、揮発性低分子物を含んだスチームを主に吸引する必要がある。
【0020】
しかしながら、吸引量がスチーム供給量に比べて多くなりすぎると口金下面の雰囲気が負圧になり、冷却筒から吹き出された冷却風や外筒内壁面を伝って流入してくる外気が口金面下面付近に流入するため、スチーム流れが変動してしまい糸条の均斉度が悪化する。したがって、供給されたスチームの一部は吸引されずに単繊維によって発生させられる随伴気流とともに外筒の下部より系外に吐き出されるような雰囲気流れとする必要がある。そのため、吸引量は、スチーム吹き出し量に対して90%以下とすることが必要である。一方、吸引量がスチーム供給量に比べて少なすぎると、吸引しているにもかかわらず実質的にスチームが滞留したような状態に陥り、スチーム内に微量存在している酸素と揮発性低分子物が反応し、口金汚れを発生させる。そのため、吸引量は、スチーム吹き出し量に対して20%以上とすることが必要である。
【0021】
なお、スチーム吹き出し部8は、繊維走行方向に関して冷却筒5よりも上流側に配置される必要があるが、吸引部9は、口金面との距離が上記範囲内であれば、繊維走行方向に関して冷却筒5よりも上方でも下方でも同じ位置にあってもよい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の物性値、指標は以下に述べる方法で測定した。
【0023】
(1)スチーム吹き出し量、吸引量および吹き出し量に対する吸引量の割合
スチーム吹き出し量Q1および吸引量Q2はKANOMAX社製アネモマスターを吹き出し部および吸引部に設置して測定した吹き出し風速v1あるいは吸引風速v2と吹き出し部の断面積s1あるいは吸引部の断面積s2から下記式により算出した。
【0024】
スチーム吹き出し量Q1(l/min)=v1(m/min)×0.01×s1(cm
スチーム吸引量Q2(l/min)=v2(m/min)×0.01×s2(cm
吹き出し量に対する吸引量の割合r1(%)=Q2/Q1×100
(2)マルチフィラメントのウースター斑
ウースター斑は、ZELLWEGER USTER社のUSTER TESTER UT−4を使用して糸速50m/分、Z撚り、撚り数8000rpmで3分間、1/2inertで測定した。
【0025】
(3)口金面汚れ
口金面汚れの度合いは、3日間の連続巻き取りを実施した後の口金面での糸条の曲がりを目視で確認し、曲がっている単繊維がなければ◎、曲がっている単繊維が1本でかつ曲がり角度が10度以下であれば○、曲がっている単繊維が2本以上でかつそのうち多くとも1本しか曲がり角度が10度超でない場合、あるいは曲がっている単繊維が1本だがその曲がり角度が10度超の場合を△と、10度より曲がりがきつい単繊維が2本以上の場合×と判定した。
【0026】
<実施例1>
図1に示す装置を用いてナイロン66ポリマーを、孔径0.15mm、98H×2群の口金を用いて290℃で溶融紡糸し、口金面より800mm下方で繊維を集束させ、紡糸油剤を付与し、56dtex、98フィラメントの糸条を巻取速度4600m/minで巻き取った。このとき、冷却筒へ、温度18℃、湿度70%RHの冷却風を、冷却筒内と大気圧との差圧が200Paとなるように加圧して送風し、冷却筒から吹き出される冷却風により繊維を冷却、固化した。また、得られたマルチフィラメントの長手方向の繊度均一性を表すウースター斑を測定した。
【0027】
なお、冷却筒5の冷却風吹出部11を構成する筒体としては、厚さ4.6mm、最外周に設置された紡糸孔から吐出された繊維との距離(糸条〜冷却筒距離)が9.0mmとなるような直径で、かつ、繊維走行方向150mmにわたって濾過精度40μmの孔を有するフェノール樹脂含浸セルロースリボンを螺旋状に巻き付け筒状に成形した富士フィルター製フジボンを用いた。また、上記筒体の、冷却風流れ方向における上流側端部には、図3に示すような直径2.0mmの孔を穿設した開口率40%のパンチングプレートを配置した。
【0028】
さらに、外筒6としては、内径118mm、長さ100mmの外筒を用いた。
【0029】
そして、口金面と冷却風吹出部上端との距離L1を15mmとし、スチーム吹き出し部を中心が口金下面15mmの位置でかつ最外周の口金孔から水平方向に4.5mm外周側なるように設置し、305 ℃のスチームを20l/minで吹き出し、口金面と吸引部下端との距離L2を12mmとして16l/minで吸引しながら糸条を巻き取った。
【0030】
その結果、口金面汚れおよび得られた糸条のウースター斑ともに良好な結果となった。なお、結果を表1に示す。
【0031】
<実施例2>
吸引量を4l/minで吸引したこと以外は実施例1と同様の方法で糸条を巻き取った。
【0032】
その結果、口金面汚れおよび得られた糸条のウースター斑ともに良好な結果となった。なお、結果を表1に示す。
【0033】
<実施例3>
吸引量を18l/minで吸引したこと以外は実施例1と同様の方法で糸条を巻き取った。
【0034】
その結果、口金面汚れおよび得られた糸条のウースター斑ともに良好な結果となった。なお、結果を表1に示す。
【0035】
<実施例4>
口金面と吸引部下端との距離L2を50mmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で糸条を巻き取った。
【0036】
その結果、口金面汚れおよび得られた糸条のウースター斑ともに良好な結果となった。なお、結果を表1に示す。
【0037】
<実施例5>
口金面と冷却風吹出部の距離L1を50mmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で糸条を巻き取った。
【0038】
その結果、口金面汚れおよび得られた糸条のウースター斑ともに良好な結果となった。なお、結果を表1に示す。
【0039】
<実施例6>
口金面と冷却風吹出部の距離L1を55mmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で糸条を巻き取った。
【0040】
その結果、口金面汚れおよび得られた糸条のウースター斑ともに良好な結果となった。なお、結果を表1に示す。
【0041】
<比較例1>
吸引量を19l/minで吸引したこと以外は実施例1と同様の方法で糸条を巻き取った。
【0042】
その結果、吸引量が多いため口金面汚れは良好であるが、糸揺れに起因するウースター斑の悪化が見られた。なお、結果を表1に示す。
【0043】
<比較例2>
吸引量を2l/minとしたこと以外は実施例1と同様の方法で糸条を巻き取った。
【0044】
ウースター斑は良好であったが、口金近傍のガスの吸引力が落ちるため、揮発性低分子物が滞留しやすく口金面汚れが悪化する結果となった。なお、結果を表1に示す。
【0045】
<比較例3>
口金面と吸引部下端との距離L2を55mmとしたこと以外は実施例1と同様の方法で糸条を巻き取った。
【0046】
ウースター斑は良好であったが、冷却筒から吹き出された冷却風などの吸引量が増えてしまい、口金近傍のガスの吸引力が落ちるため、揮発性低分子物が滞留しやすく口金面汚れが悪化する結果となった。なお、結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明で用い得る装置の一実施形態を示す概略縦断面の模式図である。
【図2】図1に示す装置を冷却筒5の下面から見た概略図である。
【図3】図1における冷却筒5の概略縦断面図である。
【図4】一般的な合成繊維製造装置に外筒を設けず冷却筒だけを設けた場合の気流を示す模式図である。
【図5】一般的な合成繊維製造装置に冷却筒および外筒を設けた場合の気流を示す模式図である。
【図6】一般的な合成繊維製造装置に冷却筒および内径の大きすぎる外筒を設けた場合の気流を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 パックハウジング
2 紡糸口金
3 紡糸孔
4 繊維
5 冷却筒
6 外筒
7 スチーム供給部
8 スチーム吹き出し部
9 吸引部
10 給油ガイド
11 冷却風吹き出し部
12 上部蓋
13 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸口金に環状に配置された紡糸孔から吐出した複数本の繊維に対して冷却風を供給して該繊維を冷却、固化する熱可塑性合成繊維の製造方法であって、紡糸口金下方にスチームを環状に配置された紡糸孔よりも外周側から吹き出すとともに、該スチーム供給量の20〜90%の気体を、繊維走行方向に関して前記スチーム吹き出し位置よりも下流側でかつ紡糸口金面から50mm以内の位置で、前記複数本の繊維の外周側から吸引することを特徴とする熱可塑性合成繊維の製造方法。
【請求項2】
繊維走行方向に関して紡糸口金面から50mm以内の位置で前記冷却風を供給する、請求項1記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
【請求項3】
前記複数本の繊維の単繊維繊度が0.1〜1.5dtexである、請求項1または2記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。
【請求項4】
100〜400個の紡糸孔が環状に配置された紡糸口金を用いる、請求項1〜3いずれかに記載の熱可塑性合成繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−111211(P2008−111211A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295394(P2006−295394)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】