説明

熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

【課題】湿熱耐久試験前後におけるレターデーションRthの変動量が小さい位相差フィルムを製造する。
【解決手段】テンタ部5では、フィルム3に対し延伸処理及び緩和処理を順次行う。延伸処理では、フィルム3に幅方向への張力を付与し、フィルム3の幅を拡げる。緩和処理では、フィルム3に残留する応力を緩和する。テンタ部5を経たフィルム3は、水蒸気接触部6に送られる。水蒸気接触部6では、フィルム3に水蒸気400を接触させる水蒸気接触処理を行う。テンタ部5における各処理により、走行方向に向かって凸の第1ボーイングが生じる。水蒸気接触処理により、走行方向に向かって凹の第2ボーイングがフィルム3に生じる。第2ボーイングと相殺するような第1ボーイングがフィルム3に生じるように、テンタ部5における延伸処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルム、特に液晶表示装置等に用いられる光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルム(以下、フィルムと称する)は、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学フィルムとして多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレート、特に57.5%〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(以下、TACと称する)から形成されるTACフィルムは、その強靭性と難燃性とから写真感光材料のフィルム用の支持体として利用されている。更に、このTACフィルムは光学等方性に優れることから、市場が急激に拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フィルム,位相差フィルム,及び視野角拡大フィルムなどの光学フィルムにも用いられている。
【0003】
フィルムの主な製造方法として、溶液製膜方法や溶融製膜方法が知られている。溶液製膜方法は、ポリマーと溶剤とを含むポリマー溶液(以下、ドープと称する)を支持体上に吐出して流延膜を形成し、流延膜が自己支持性を有するものとなった後、これを支持体から剥がして湿潤フィルムとし、湿潤フィルムを乾燥しフィルムとして巻き取る方法である。溶液製膜方法は、溶解したポリマーを押出機で押し出してフィルムを製造する溶融押出方法と比べて、光学特性の等方性や膜厚の均一性に優れるとともに、含有異物の少ないフィルムを得ることができるため、フィルム、特に光学フィルムの製造方法には、溶液製膜方法が採用されている。
【0004】
この溶液製膜方法は、流延膜に自己支持性を発現させる方法により、乾燥方式と冷却ゲル化方式とに大別される。乾燥方式は、流延膜の残留溶剤量を所定の範囲になるまで、支持体上の流延膜から溶剤を蒸発させるものである。一方、冷却ゲル化方式では、支持体上の流延膜を冷却して、流延膜をなすドープをゲル化させるものである(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、フィルムの光学特性の調整方法として、フィルムを水中に浸漬する、或いはフィルムを水蒸気に曝し、含水率が所定の範囲内となったフィルムを延伸する方法等が知られている(例えば、特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−179819号公報
【特許文献2】特開2003−90915号公報
【特許文献3】特開2003−62899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、製造された液晶表示装置には所定の耐久試験が行われる。同様の耐久試験は、液晶表示装置等に用いられるフィルムに対しても行われる。ところが、このフィルムに耐久試験を行うと、フィルムの光学特性が耐久試験前後で変動してしまうことがわかった。特に、高温高湿(例えば、温度60℃以上湿度90%RH)の環境下における耐久試験(以下、湿熱耐久試験と称する)の前後において、フィルムの厚み方向のレターデーションRthの変動量が増大する結果、湿熱耐久試験後のフィルムのレターデーションRthが液晶表示装置に適した範囲から大きく外れてしまう現象が多発した。
【0008】
特許文献1には、溶液製膜方法によって得られたフィルムに加湿処理を施して、高温高湿の環境下におけるフィルムの寸法変化を抑制する方法が開示されている。これは、フィルムの含水率の増大に起因してガラス転移温度Tgが低下する現象を利用して、フィルム内の歪を除去するものである。しかしながら、このような加湿処理を行うことにより、位相差フィルムにおいて重要な光学特性である面内レターデーションReや厚み方向のレターデーションRthが変動すると考えられ、特許文献1では、加湿処理に起因するレターデーションRe、Rthの変動について言及していない。したがって、特許文献1に記載の方法は、位相差フィルムのレターデーションRe、Rthの変動を考慮したものではない。
【0009】
また、特許文献2、特許文献3に記載の方法は、λ/4近傍のレターデーションReで異なったNzファクターを得るフィルムの製造方法に関するものであり、湿熱耐久試験前後における光学特性の変動を抑えることを考慮したものではない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、湿熱耐久試験前後におけるレターデーションRthの変動量が小さい位相差フィルムを製造することのできるポリマーフィルムの性状調整装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、長手方向に走行する長尺状の熱可塑性樹脂フィルムを拡幅する第1処理と、前記第1処理が施された前記熱可塑性樹脂フィルムに水蒸気を接触させる第2処理とを有し、前記第2処理により前記熱可塑性樹脂フィルムに発生する第2ボーイングと相殺する第1ボーイングが前記熱可塑性樹脂フィルムに発生するように前記第1処理を行い、前記第1処理では、前記熱可塑性樹脂フィルムの幅方向への張力により、前記熱可塑性樹脂フィルムを拡幅する延伸処理が行われることを特徴とする。
【0012】
前記第1処理では、前記延伸処理が開始する延伸開始位置及び前記延伸処理が終了する延伸終了位置の前記走行方向における距離をLとするときに、前記延伸終了位置を通過し、及びこの延伸終了位置から前記走行方向へ0.2×Lだけ離れた位置に到達するまでの前記熱可塑性樹脂フィルムの温度が、前記延伸終了位置における前記熱可塑性樹脂フィルムの温度以下となるように、前記熱可塑性樹脂フィルムの温度を調節する温度調節処理が行われることが好ましい。また、前記第1処理では、前記延伸処理が開始する延伸開始位置及び前記延伸処理が終了する延伸終了位置の前記走行方向における距離をLとするときに、前記延伸終了位置を通過し、及びこの延伸終了位置から前記走行方向へ0.2×Lだけ離れた位置に到達するまでの前記熱可塑性樹脂フィルムの幅を一定に維持する幅一定維持処理が行われることが好ましい。
【0013】
前記第1処理では、前記延伸処理が施された前記熱可塑性樹脂フィルムについて、前記幅方向への張力が付与される状態を維持しながら、前記熱可塑性樹脂フィルムの幅を狭くする緩和処理が行われることが好ましい。
【0014】
前記熱可塑性樹脂フィルムは溶液製膜方法によりつくられたことが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂フィルムはセルロースアシレートフィルムであること、或いは、前記熱可塑性樹脂フィルムは環状ポリオレフィンフィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、長手方向に走行する長尺状の熱可塑性樹脂フィルムを拡幅する第1処理と、この第1処理が施された熱可塑性樹脂フィルムに対し、水蒸気を接触させる第2処理を行うため、湿熱耐久試験前後におけるレターデーションRthの変動が小さい光学フィルムを製造することが可能になる。
【0016】
また、この第2処理により第2ボーイングが熱可塑性樹脂フィルムに発生してしまう場合がある。ここで、ボーイングとは、第2処理前の熱可塑性樹脂フィルムにおいて幅方向に引かれた線分が、第2処理後の熱可塑性樹脂フィルムでは、熱可塑性樹脂フィルムの長手方向に対して凹状または凸状に変形する挙動を指す。そこで、本発明では、第2ボーイングと相殺する第1ボーイングが熱可塑性樹脂フィルムに発生するように第1処理を行うため、熱可塑性樹脂フィルムに与える第2ボーイングの悪影響を抑えることができる。したがって、本発明によれば、光学軸の向きが、幅方向に均一の光学フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】オフライン延伸設備を示す概略図である。
【図2】第1のテンタ部の概要を示す上面図である。
【図3】第1のテンタ部の概要を示す側面図である。
【図4】(A)は、方向Y1に伸びる線分S2が引かれた状態のTACフィルムの概要を示す説明図である。(B)は、水蒸気接触処理により、線分S2が曲線B2となるボーイングが発生したTACフィルムの概要を示す説明図である。
【図5】(A)は、方向Y1に伸びる線分S1が引かれた状態のTACフィルムの概要を示す説明図である。(B)は、テンタ部における各処理により、線分S1が曲線B1となるボーイングが発生したTACフィルムの概要を示す説明図である。
【図6】第2のテンタ部の概要を示す上面図である。
【図7】溶液製膜設備を示す概略図である。
【図8】溶融製膜設備を示す概略図である。
【図9】熱処理ゾーンの概要を示す斜視図である。
【図10】熱処理ゾーンの概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(オフライン延伸設備)
図1に示すように、オフライン延伸設備2は、後述するフィルム製造設備で製造されたTACフィルム3を延伸するものであり、供給室4と、テンタ部5と、水蒸気接触部6と、冷却室7と、巻取室8とを備える。供給室4には、巻き心に巻き取られたTACフィルム3が収納されている。供給ローラ9は、巻き心からTACフィルム3を取り出して、テンタ部5に供給する。
【0019】
(テンタ部)
図2に示すように、テンタ部5は、長尺状のTACフィルム3を長手方向(以下、方向X1と称する)に搬送しながら、幅方向(以下、方向Y1と称する)への張力を付与し、TACフィルム3の幅を、幅W0から幅W1へ拡げるものである。テンタ部5には、方向X1の上流側から順に、予熱エリア11、延伸エリア12、緩和エリア13及び冷却エリア14が設けられる。なお、緩和エリア13や冷却エリア14は省略してもよい。
【0020】
テンタ部5は、クリップ21、レール22,23、及びチェーン24、25を備えている。レール22,23はTACフィルム3の搬送路の両側に設置され、それぞれのレール22,23は所定のレール間隔で離間するように配される。このレール間隔は、予熱エリア11では一定であり、延伸エリア12では方向X1に向かうに従って次第に広くなり、緩和エリア13では方向X1に向かうに従って次第に狭くなり、冷却エリア14では一定である。方向X1におけるレール22、23の下流端近傍には原動スプロケット28が設けられ、方向X1におけるレール22、23の上流端近傍には従動スプロケット29が設けられる。
【0021】
チェーン24、25は、原動スプロケット28及び従動スプロケット29の間に掛け渡され、レール22,23に沿って移動自在に取り付けられている。クリップ21は、チェーン24、25に所定の間隔で複数取り付けられている。なお、図の煩雑化を避けるため、図2にはクリップ21の一部のみを示す。スプロケット28,29の回転により、クリップ21はレール22,23に沿って移動する。
【0022】
レール22,23の方向X1の上流端近傍には、把持開始位置Piが設けられる。また、レール22,23の方向X1の下流端近傍には、把持解除位置Poが設けられる。図示しない把持開始手段により、把持開始位置Piを通過したクリップ21は、TACフィルム3の方向Y1両端部(以下、耳部と称する)を把持する。また、図示しない把持解除手段により、把持解除位置Poを通過したクリップ21は、TACフィルム3の耳部の把持を解除する。こうして、クリップ21が、把持開始位置Pi及び把持解除位置Poを、レール22、23に沿って移動することにより、TACフィルム3は、クリップ21により耳部を把持された状態で各エリア11〜14を順次通過する。各エリア11〜14では、TACフィルム3に対し所定の処理が施される。
【0023】
図3に示すように、各エリア11〜14には、それぞれダクト31〜34がTACフィルム3の搬送路の上方に設けられている。ダクト31〜34には、TACフィルム3の搬送路と対向するようにスリット35が設けられる。スリット35は方向Y1に長く伸びるように形成される。複数のスリット35は、方向X1に所定の間隔で並ぶように配される。なお、同様の構造を有するダクトを、TACフィルム3の搬送路の下方に設けてもよいし、TACフィルム3の搬送路の上方及び下方の両方に設けてもよい。
【0024】
エア供給部38は、各ダクト31〜34にエアを供給する。各ダクト31〜34に供給されたエアは、図示しない温調機により所定範囲内の温度に調節される。各ダクト31〜34内にあるエアは、風41〜44となってスリット35から流出し、これらの風41〜44は、各エリア11〜14にあるTACフィルム3に向かって流れる。
【0025】
図1に示すように、テンタ部5と水蒸気接触部6との間には、耳切装置50が設けられる。耳切装置50は、TACフィルム3の耳部をスリット状の耳屑として切り離す。耳切装置50に接続するカットブロア51は、この耳屑を細かくカットする。図示しない風送装置は、カットされた耳屑をクラッシャ52に送り、クラッシャ52は耳屑を粉砕して、チップとする。このチップはドープ調製用に再利用されるので、この方法はコストの点において有効である。
【0026】
(水蒸気接触部)
水蒸気接触部6には、複数のローラ54が千鳥状に配される。ローラ54は、耳切装置50から送られたTACフィルム3を冷却室7へ案内する。水蒸気接触部6には、通気ダクト(図示しない)及び送風ダクト(図示しない)が設けられ、これら通気ダクト及び送風ダクトを介して、水蒸気接触部6と水蒸気供給装置55とが接続する。
【0027】
(水蒸気供給装置)
水蒸気供給装置55は、加熱部、制御部、及び送り部を有する。加熱部は、水を加熱して所定の温度の水蒸気400を得る。送り部は、所定の流量の水蒸気400を水蒸気接触部6へ供給する。制御部は、水蒸気接触部6の内部に設けられた温湿度センサ(図示しない)から、水蒸気接触部6の内部の雰囲気の温度及び湿度を読み取る。そして、制御部は、読み取った温度及び湿度に基づいて、水蒸気接触部6の内部の雰囲気の温度及び湿度が所望の範囲となるように、加熱部による加熱量や、送り部による流量を調節する。
【0028】
巻取室8には、巻き心56及びプレスローラ57を有する巻き取り機58が配される。巻き取り機58は、巻取室8に送られたTACフィルム3を、プレスローラ57で押し付けながら、巻き心56に巻き取る。
【0029】
次に、オフライン延伸設備2における本発明の作用について説明する。図1に示すように、供給ローラ9は、供給室4からTACフィルム3をテンタ部5に送る。
【0030】
図2に示すように、テンタ部5に送られたTACフィルム3は、クリップ21によって耳部を把持された状態で、各エリア11〜14を順次通過する。各エリア11〜14を走行するTACフィルム3には、所定の温度の風41〜44が吹き付けられる。
【0031】
(予熱処理)
予熱エリア11にあるTACフィルム3の温度は、風41(図3参照)との接触により、所定の範囲内(25℃〜250℃)で維持される。予熱エリア11におけるTACフィルム3の幅はW0のまま一定に保たれる。こうして、予熱エリア11では、延伸エリア12にて行われる延伸処理のための予熱処理がTACフィルム3に施される。
【0032】
(延伸処理)
延伸エリア12にあるTACフィルム3の温度は、風42(図3参照)との接触により、所定の範囲内(100℃〜250℃)で維持される。また、延伸エリア12を走行するTACフィルム3には、クリップ21の把持により、方向Y1への張力が付与される結果、TACフィルム3の幅がW0からW2へと次第に拡がる。こうして、延伸エリア12にあるTACフィルム3には、延伸処理が施される。TACフィルム3の延伸率ER(=W2/W0×100)は、103%以上300%以下であることが好ましく、105%以上200%以下であることがより好ましい。
【0033】
(緩和処理)
緩和エリア13にあるTACフィルム3の温度は、風43(図3参照)との接触により、所定の範囲内(60℃〜250℃)で維持される。また、緩和エリア13を走行するTACフィルム3には、クリップ21の把持により、方向Y1への張力が付与された状態のまま、TACフィルム3の幅がW2からW1へと次第に狭くなる。こうして、緩和エリア13にあるTACフィルム3には、延伸処理を経たTACフィルム3に残留するひずみを緩和する緩和処理が施される。
【0034】
TACフィルム3の緩和率RR{=100×(W2−W1)/W2}は、延伸処理におけるTACフィルム3の変形量のうち、弾性変形による変形量を取り除くようなものとすればよい。また、緩和率RRは、この弾性変形による変形量全体を取り除く程度の範囲内に設定することが好ましいが、この弾性変形による変形量の一部を取り除く程度の範囲内に設定してもよい。緩和率RRは、例えば、0%以上10%以下であることが好ましく、0.5%以上7%以下であることがより好ましい。
【0035】
(冷却処理)
冷却エリア14にあるTACフィルム3の温度は、風44(図3参照)との接触により、所定の範囲内(25℃〜180℃)で維持される。冷却エリア14におけるTACフィルム3の幅は、W1のままである。
【0036】
図1に戻って、テンタ部5から送られたTACフィルム3は、耳切装置50により耳部が切り離され、その後水蒸気接触部6へ送られる。
【0037】
水蒸気供給装置55は、所定の温度の水蒸気400を水蒸気接触部6へ所定の流量で供給する。これにより、水蒸気接触部6内の雰囲気の温度及び湿度は、所定の範囲内に調節される。耳切装置50から送り出されたTACフィルム3は、水蒸気接触部6内に設けられたローラ54に巻きかけられながら、冷却室7に向けて搬送される。こうして、水蒸気接触部6では、TACフィルム3が水蒸気と接触する水蒸気接触処理が行われる。
【0038】
水蒸気接触処理が施されたTACフィルム3は、冷却室7に送られる。TACフィルム3は、冷却室7で略室温まで冷却される。冷却されたTACフィルムは巻取室8に送られ、プレスローラ57によって押圧されながら、巻き心56に巻き取られる。
【0039】
本発明は、乾いたTACフィルム3に水蒸気接触処理を施す。乾いたTACフィルム3に水蒸気が接触すると、TACフィルム3は水分子を吸収し、ガラス転移温度Tgが低下するとともに、一定以上の熱エネルギーを得るため、TACフィルム3における水分子の拡散が促進される。TACフィルム3における水分子の拡散の促進により、ポリマー分子の高次構造がより安定な構造に遷移しやすくなる結果、乾いたTACフィルム3を単に加熱する処理に比べ、ポリマー分子の構造の安定化を短時間で行うことができる。
【0040】
乾いたTACフィルム3とは、十分乾燥された、すなわち溶剤がほとんど残っておらず、ポリマー分子の流動性がほとんど消失しているものを用いる状態のものを指す。具体的には、乾いたTACフィルム3の乾量基準の残留溶剤量は、5重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましく、0.3重量%以下であることが特に好ましい。ここで、乾量基準の残留溶剤量とは、湿潤フィルムやTACフィルム3に残留する溶剤量を示したものを指す。残留溶剤量は、対象となるフィルムからサンプルフィルムを採取し、採取時のサンプルフィルムの重量をx、サンプルフィルムを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で表される。
【0041】
したがって、本発明によれば、湿熱耐久試験の前後における厚み方向レターデーションRthの変動量ΔRthWETが小さいTACフィルム3を製造することができる。
【0042】
水蒸気接触処理が施されたTACフィルム3には、第2ボーイングが発生してしまう場合がある。この第2ボーイングは、延伸処理により生じた残留応力(特に、方向X1への残留応力)により、水蒸気接触処理中のTACフィルム3が変形することに起因するものと考えられている。この第2ボーイングは、図4に示すように、TACフィルム3に引かれ、向きが方向Y1の線分S2が、水蒸気接触処理によって、延伸処理時におけるTACフィルム3の走行方向、すなわち方向X1に向かって凹となる曲線B2に変形する挙動を指す。したがって、光学軸が方向Y1において略均一であるTACフィルム3に水蒸気接触処理を行う結果、TACフィルム3に第2ボーイングが発生してしまうと、水蒸気接触処理を経たTACフィルム3の光学軸の向きは、方向Y1においてばらついてしまう。この第2ボーイングは、延伸率ERが大きくなるにつれて、水蒸気接触処理におけるTACフィルム3の温度が高くなるにつれて、または、TACフィルム3に接触する水蒸気量が多くなるにつれて、顕著になる。
【0043】
本発明では、テンタ部5における各処理により、第1ボーイングをTACフィルム3に発生させる。この第1ボーイングは、図5に示すように、TACフィルム3に引かれ、方向Y1の線分S1が、テンタ部5における各処理によって、方向X1に向かって凸となる曲線B1に変形する挙動を指す。そして、テンタ部5において、第2ボーイングを相殺するような第1ボーイングがTACフィルム3に発生するように、TACフィルム3に各処理を施せば、第2ボーイングに起因する光学軸の向きのばらつきを抑えることができる。
【0044】
したがって、本発明によれば、光学軸の向きが方向Y1において略均一であるTACフィルム3を製造することができる。
【0045】
ここで、「光学軸の向きが方向Y1において略均一」とは、光学軸のずれ量が2°以下の状態を指す。「TACフィルム3の光学軸のずれ量」は、次のようにして測定することができる。まず、TACフィルム3に、方向Y1の一方の端から他方の端まで等間隔で、20個の測定点を設定する。次に、自動複屈折計(KOBRA 21DH、王子計測機器(株))を用いて、各測定点における光学軸の向きを測定する。そして、測定した光学軸の向きとX1方向とがなす角を、「測定点の光学軸のずれ量」とする。これらの「測定点の光学軸のずれ量」の絶対値のうち、大きい順で上位4点、下位4点を選び、上位4点の平均値から、下位4点の平均値を引いたものを、「TACフィルム3の光学軸のずれ量」とする。
【0046】
上記実施形態では、延伸処理におけるTACフィルム3の走行方向、及び水蒸気接触処理におけるTACフィルム3の走行方向をいずれも方向X1としたが、本発明はこれに限られず、水蒸気接触処理におけるTACフィルム3の走行方向を、延伸処理におけるTACフィルム3の走行方向と逆向きにしてもよい。また、方向X1に向かって走行する状態で延伸処理が施されたTACフィルム3を一旦巻き心に巻き取り、その後、巻き心から送り出されたTACフィルム3を方向X1と逆の方向に走行させた状態で水蒸気接触処理を行ってもよい。
【0047】
第1ボーイングは、延伸処理のみにより形成してもよいし、延伸処理及び温度調節処理により形成してもよい。
【0048】
温度調節処理では、図2に示すように、方向X1における延伸エリア12のエリア長をL1とし、延伸処理が終了する位置を位置Pmとし、位置Pmから方向X1に向かってL2だけ離れた位置をPnとし、位置PmにおけるTACフィルム3の温度をTmとし、位置Pmを通過し位置Pnに到達するまでのTACフィルム3の温度をTmnとするときに、(Tm−Tmn)の値が0℃以上となるように、風42や風43の温度を調節することが好ましい。また、(Tm−Tmn)の値は80℃以下であることが好ましい。また、L2は、L1の0.2倍であることが好ましい。
【0049】
上記実施形態では、延伸エリア12及び緩和エリア13を連続して設けたが、本発明はこれに限られず、図6に示すように、延伸エリア12よりも方向X1の下流側に、延伸後エリア71を設けてもよい。方向X1における延伸後エリア71のエリア長L2は、方向X1における延伸エリア12のエリア長L1の0.2倍であることが好ましい。延伸エリア12と延伸後エリア71とは連続して設けることが好ましい。なお、緩和エリア13及び冷却エリア14は省略してもよい。
【0050】
延伸後エリア71では、温度調節処理や幅一定維持処理が行われる。延伸処理及びこれらの処理により、テンタ部5にあるTACフィルム3において、図5に示すような第1ボーイングをより確実に発生させることができる。
【0051】
なお、延伸後エリア71にあるTACフィルム3には、温度調節処理と幅一定維持処理とのうちいずれか一方のみが施されてもよいし、温度調節処理と幅一定維持処理との両方が施されてもよい。延伸後エリア71にあるTACフィルム3に対して、温度調節処理と幅一定維持処理とを同時に行ってもよいし、順次行ってもよい。温度調節処理と幅一定維持処理とを順次行う場合には、温度調節処理と幅一定維持処理とを行う順番は、どちらが先でもよい。更に、延伸後エリア71にあるTACフィルム3には、温度調節処理とともに緩和処理が施されてもよい。
【0052】
温度調節処理では、位置PmにおけるTACフィルム3の温度をTPmとし、延伸後エリア71にあるTACフィルム3の温度をT71とするときに、(TPm−T71)の値が0℃以上となるように、延伸後エリア71にあるTACフィルム3にあたる風の温度を調節することが好ましい。また、(TPm−T71)の値は80℃以下であることが好ましい。
【0053】
(幅一定維持処理)
幅一定維持処理では、延伸後エリア71にあるTACフィルム3の幅を一定に維持する。なお、幅一定維持処理において、処理開始時におけるTACフィルム3の幅Ws及び処理完了時におけるTACフィルム3の幅Weが等しいことが好ましいが、本発明はこれに限られない。
【0054】
なお、上記実施形態では、予熱エリア11にあるTACフィルム3の幅を一定にしたが、本発明はこれに限られず、予熱エリア11にあるTACフィルム3の幅を、走行方向に向かうに従って次第に拡げてもよいし、走行方向に向かうに従って次第に狭めてもよい。
【0055】
(水蒸気接触処理)
水蒸気接触処理におけるTACフィルム3の温度Tf1の下限は、100℃以上であることが好ましく、102℃以上であることがより好ましく、104℃以上であることが特に好ましい。また、温度Tf1の上限は、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。温度Tf1が100℃未満となると、湿熱耐久試験前後における光学特性の変化量を低減するのに必要な水蒸気接触処理の時間が長くなるため好ましくない。温度Tf1が150℃を超えると、TACフィルム3のカールが顕著となるため好ましくない。したがって、水蒸気接触部6内の雰囲気の温度は、温度Tf1が上記の範囲となるように適宜調節すればよい。例えば、水蒸気接触部6内の雰囲気の温度は、70℃以上200℃以下であることが好ましく、90℃以上160℃以下であることがより好ましく、95℃以上140℃以下であることが最も好ましい。
【0056】
水蒸気接触部6内の雰囲気の湿度は、20%RH以上100%RH以下であることが好ましく、40%RH以上100%RH以下であることがより好ましく、70%RH以上100%RH以下であることが特に好ましい。水蒸気接触部6内の雰囲気の湿度が20%RH未満である場合には、ΔRthWETを抑制する効果が小さいため好ましくない。
【0057】
また、水蒸気接触処理の処理時間P1の範囲は、特に限定されないが、本発明の効果が発揮される範囲内であれば、生産効率の点から出来るだけ短いほうが好ましい。処理時間P1の上限として、例えば、60分以下であることが好ましく、10分以下であることがより好ましい。一方、処理時間P1の下限として、例えば、5秒以上であることが好ましく、10秒以上であることがより好ましく、30秒以上であることが特に好ましい。
【0058】
水蒸気400は、硬水、軟水や純水などを用いるつくることができる。加熱部等の保護の観点から軟水を用いることが好ましい。TACフィルム3への異物混入を防ぐためには、純水を用いることがより好ましい。なお、本発明に明細書における純水とは、電気抵抗率が少なくとも1MΩ以上であり、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの金属イオンの含有濃度は1ppm未満、塩素、硝酸などのアニオンは0.1ppm未満の含有濃度を指す。純水は、逆浸透膜、イオン交換樹脂、蒸留などの単体、あるいは組み合わせによって、容易に得ることができる。
【0059】
(TACフィルム)
TACフィルム3の幅は600mm以上であることが好ましく、1300mm以上2500mm以下であることがより好ましく、2500mmより大きい場合にも本発明の効果が発現する。また、TACフィルム3の厚みが20μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0060】
TACフィルム3は、溶液製膜方法や溶融製膜方法によって製造されたものを用いることが好ましく、中でも溶液製膜方法によって製造されたものを用いることがより好ましく、特に、冷却ゲル化方式により製造されたものを用いることが特に好ましい。以下、冷却ゲル化方式の概要について説明する。なお、上記実施形態と同一の部材などには同一の符号を付しその詳細の説明は省略する。
【0061】
図9に示すように、溶液製膜設備80では、冷却ゲル化方式の溶液製膜方法を行う。ポリマーと溶剤とを含む流延ドープ81の温度は、30℃以上40℃以下の範囲内でほぼ一定となるように維持されている。図示しない制御部の制御の下、流延ドラム82は軸82aを中心に回転する。この回転により、周面82bは、所定の速度(50m/分以上200m/分以下)で方向Aへ走行する。また、伝熱媒体循環装置83により、周面82bの温度は、−10℃以上10℃以下の範囲内で略一定に保持される。
【0062】
流延ダイ84は、流延ドープ81を周面82bへ吐出する。減圧チャンバ85は、吐出された流延ドープ81が形成するビードの方向A下流側を減圧する。吐出した流延ドープ81により、周面82b上には流延膜86が形成される。流延膜86は、周面82b上での冷却によりゲル化が進行する。ゲル化の結果、流延膜86には自己支持性が発現する。本明細書において、ゲル化とは、流延ドープ81に含まれる溶剤がポリマーの分子鎖の中で保持された状態で流動性を失い、結果的に流延ドープ81の流動性が失われた状態にあることを意味する。流延膜86は、自己支持性を有するものとなった後に、湿潤フィルム88として剥取ローラ89で支持されながら周面82bから剥ぎ取られる。剥ぎ取り時の流延膜86の残留溶剤量は、250重量%以上280重量%以下であることが好ましい。
【0063】
ゲル化が維持された湿潤フィルム88は、渡り部90、ピンテンタ91、及びテンタ部5へと順次送られる。渡り部90、ピンテンタ91、及びテンタ部5では、湿潤フィルム88に所定の乾燥空気をあてて、湿潤フィルム88に含まれる溶剤を蒸発させる。渡り部90におけるドローテンション(=V2/V1)は、1.00以上1.05以下とすることが好ましい。ここで、V1は、第1の搬送ローラの周速度であり、V2は、第1の搬送ローラの下流側に設けられた第2の搬送ローラの周速度である。
【0064】
また、ピンテンタ91やテンタ部5では、溶剤の蒸発を行いつつ、湿潤フィルム88を所定の方向に延伸する延伸処理を行う。ピンテンタ91に導入される湿潤フィルム88の残留溶剤量は、200重量%以上250重量%以下であることが好ましい。テンタ部5に導入される湿潤フィルム88の残留溶剤量は、30重量%以上200重量%以下であることが好ましい。
【0065】
乾燥室97では、湿潤フィルム88に所定の乾燥空気をあてて、湿潤フィルム88に含まれる溶剤を蒸発させる。乾燥室97における湿潤フィルム88の温度は140℃以上180℃以下であることが好ましい。
【0066】
乾燥室97にて十分に乾燥した湿潤フィルム88は、TACフィルム3となり、冷却室7では所定の温度になるまで冷却処理が施される。また、強制除電装置98は、TACフィルム3の帯電圧が所定の範囲(例えば、−3kV〜+3kV)となるように除電する。ナーリング付与ローラ99は、TACフィルム3の両縁にエンボス加工でナーリングを付与する。その後、TACフィルム3は、巻取室8に送られ、プレスローラ57によって押圧されながら、巻き心56に巻き取られる。
【0067】
上記実施形態では、オフライン延伸設備2(図1参照)において、溶液製膜方法によって製造されたTACフィルム3に延伸処理を施し、その後に水蒸気接触処理を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、溶液製膜設備80のテンタ部5において、延伸処理や緩和処理を行うとともに、テンタ部5及び巻取室8の間に設けられた水蒸気接触部にて水蒸気接触処理を行ってもよい。また、溶液製膜設備80のテンタ部5において、延伸処理や緩和処理を行った後、オフライン延伸設備2(図1参照)の水蒸気接触部6において水蒸気接触処理を行ってもよい。この場合には、オフライン延伸設備2のテンタ部5を省略してもよい。
【0068】
上記実施形態では、溶液製膜設備80における支持体として流延ドラム82を用いたが、本発明はこれに限られず、走行するエンドレスバンドを用いても良い。また、流延膜86に乾燥空気を接触させて、流延膜86から溶剤を蒸発させることにより、流延膜86に自己支持性を発現させてもよい。
【0069】
本発明は、ドープを流延する際に、2種類以上のドープを同時に共流延させて積層させる同時積層共流延、または、複数のドープを逐次に共流延して積層させる逐次積層共流延を行うことができる。なお、両共流延を組み合わせてもよい。同時積層共流延を行う場合には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いてもよいし、マルチポケット型の流延ダイを用いてもよい。ただし、共流延により多層からなるフィルムは、空気面側の層の厚さと支持体側の層の厚さとの少なくともいずれか一方が、フィルム全体の厚みの0.5〜30%であることが好ましい。また、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましく、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
【0070】
(熱処理)
上記実施形態の水蒸気接触処理を経たTACフィルム3に、乾燥空気をあて、TACフィルム3の温度を所定の範囲内にする熱処理を行うことが好ましい。水蒸気接触処理と熱処理とを順次連続して行うことが好ましい。この熱処理により、湿熱耐久試験の前後のみならず、乾熱耐久試験の前後における各レターデーションの変動量、方向X1、方向Y1の寸法変化量の小さいTACフィルム3を製造することができる。ここで、乾熱耐久試験とは、高温低湿度の条件(例えば、温度80℃以上湿度5%RH以下)下で行われる耐久試験を指す。
【0071】
熱処理におけるTACフィルム3のTf2の下限は、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。また、温度Tf2の上限は160℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。したがって、乾燥空気の温度は、温度Tf2と同等の範囲とすることが好ましい。温度Tf2が110℃未満となる、或いは、温度Tf2が160℃を超えると、湿熱耐久試験及び乾熱耐久試験の前後における各レターデーションの変動量、方向X1、方向Y1の寸法変化量を抑えることができないため好ましくない。また、温度Tf2は、温度Tf1よりも高いことが好ましい。
【0072】
乾燥空気の湿度は、20%RH以下であることが好ましく、10%RH以下であることがより好ましい。乾燥空気の湿度が20%RHを超える場合には、フィルムの含水率を増加させ、ロールの巻き姿など経時で変形するため好ましくない。
【0073】
また、熱処理の処理時間P2の上限として、5分以下であることが好ましく、4分以下であることがより好ましい。一方、処理時間P2の下限として、1分以上であることが好ましい。処理時間P2が5分を超える、或いは、1分未満であると、湿熱耐久試験及び乾熱耐久試験の前後における各レターデーションの変動量、方向X1、方向Y1の寸法変化量を抑えることができないため好ましくない。
【0074】
熱処理は、渡り部90(図9参照)または乾燥室97(図9参照)と同様の構成の熱処理部にて行うことができる。熱処理部を、水蒸気接触処理が行われる設備の下流側に設けることが好ましい。熱処理部は、冷却室の上流側、下流側いずれに設けてもよいが、上流側に設けることが好ましい。
【0075】
(結露防止処理)
水蒸気接触処理のTACフィルム3において結露を抑えるために、水蒸気接触処理が施される前のTACフィルム3に乾燥空気をあて、上記実施形態のTACフィルム3の温度を所定の範囲内に維持する結露防止処理を行うことが好ましい。結露防止処理と水蒸気接触処理とを順次連続して行うことが好ましい。
【0076】
結露防止処理の完了時におけるTACフィルム3のTf0の範囲は、水蒸気400の露点よりもΔT0だけ高い温度にすることが好ましい。ΔT0は5℃以上150℃以下であることが好ましく、10℃以上150℃以下であることがより好ましい。ΔT0が5℃未満となると、結露防止効果が薄れるため好ましくない。ΔT0が150℃を超えるとフィルムが軟化しやすくなるため好ましくない。より具体的には、Tf0は80℃以上160℃以下であることが好ましく、100℃以上140℃以下であることがより好ましい。
【0077】
結露防止処理は、渡り部90(図9参照)または乾燥室97(図9参照)と同様の構成の結露防止処理部にて行うことができる。結露防止処理部を、水蒸気接触処理が行われる設備の上流側に設けることが好ましい。結露防止処理部は、冷却室の上流側、下流側いずれに設けてもよいが、上流側に設けることが好ましい。
【0078】
上記実施形態では、TACフィルムを用いたが、本発明はTACフィルムに限られず、セルロースアシレートや環状ポリオレフィン等、他のポリマーからなり、溶液製膜方法によって得られるポリマーフィルムや、溶融製膜方法によって製造されたポリマーフィルムにも用いることができる。
【0079】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0080】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
【0081】
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
【0082】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶剤において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
【0083】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
【0084】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【0085】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶剤に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
【0086】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0087】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶剤組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶剤として用いることができる。
【0088】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶剤及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
【0089】
(用途)
本発明のポリマーフィルムは、偏光板保護フィルムや位相差フィルムとして有用である。このポリマーフィルムに光学的異方性層、反射防止層、防眩機能層等を付与して、高機能フィルムとしてもよい。
【0090】
位相差フィルムとして用いる場合、面内レターデーションReは30nm以上100nm以下であることが好ましく、厚み方向レターデーションRthは70nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0091】
(溶融製膜設備)
次に、溶融製膜方法によりポリマーフィルムを製造する溶融製膜設備210について説明する。溶融製膜設備210は、図10に示すように、液晶表示装置等に使用できる熱可塑性樹脂フィルムFを製造する装置である。熱可塑性樹脂フィルムFの原材料であるペレット状の熱可塑性樹脂を乾燥機212に導入して乾燥させた後、このペレットを押出機214によって押し出し、ギアポンプ216によりフィルタ218に供給する。次いで、フィルタ218により異物がろ過され、ダイ220から溶融樹脂(溶融した熱可塑性樹脂)が押し出される。溶融樹脂は、第1キャスティングロール228とタッチロール224とにより挟まれて押圧成形された後、第1キャスティングロール228にて冷却固化されて所定の表面粗さのフィルム状とされ、さらに、第2キャスティングロール226、第3キャスティングロール227によって搬送されることで未延伸フィルムFaが得られる。この未延伸フィルムFaは、この段階で巻き取られてもよいし、連続的に長スパン延伸を行う横延伸部242に供給されてもよい。また、一度巻き取られた未延伸フィルムFaを再度横延伸部242に供給しても、連続的に長スパン延伸を行う横延伸部242に供給した場合と同様の効果が得られる。
【0092】
横延伸部242では、未延伸フィルムFaが搬送方向(以下、方向X2と称する)と直交する幅方向(以下、方向Y2と称する)に延伸され、横延伸フィルムFbとされる。横延伸部242の上流側に予熱部236を設けてもよいし、横延伸部242の下流側に熱緩和部244を設けてもよい。
【0093】
横延伸の後に熱緩和処理を行なった後、熱処理ゾーン246で方向X2に横延伸フィルムFbを収縮させる。熱処理ゾーン246では、図11に示すように、横延伸フィルムFbの側端部をチャックで把持しない状態で、方向Y2への収縮が起こらずに、方向X2への収縮のみが起こるように複数のロール248a〜248dで横延伸フィルムFbを搬送する。このとき、図12に示すように、複数のロール248a〜248dは、ロールラップ長(D)とロール間長(G)の比(G/D)が0.01以上3以下となるように配置される。これにより横延伸フィルムFbと各ロール248a〜248dとの摩擦により方向Y2の収縮が抑制される。そして、横延伸フィルムFbは、上流側のロール248aによる周速度(V1)と下流側のロール448dによる周速度(V2)の比(V2/V1)が0.6以上0.999以下で搬送しながら熱処理される。つまり、横延伸フィルムFbは熱処理ゾーン246にて方向X2に収縮する。
【0094】
横延伸フィルムFbが熱処理ゾーン246にて熱処理されることで、配向角、レターデーションが調整された最終製品である熱可塑性樹脂フィルムFが製造される。このフィルムFは巻取部249によって巻き取られる。
【0095】
方向Y2への延伸の前又は後に方向X2の延伸を行ってもよい。方向X2の延伸は、方向X2に並ぶ複数のニップロール対を用いてフィルムを搬送し、上流側のニップロール対の周速度より下流側のニップロール対の周速度を速くすることで達成できる。方向X2におけるニップロール間の距離(L)と上流側のニップロール対でのフィルム幅Wの比(L/W)の大きさで延伸方式が異なり、L/Wが小さいと特開2005−330411号公報、特開2006−348114号公報記載のような方向X2の延伸方式を採用できる。この方式は、Rthが大きくなり易いが装置をコンパクトにすることができる。一方、L/Wが大きい場合は特開2005−301225号公報記載のような方向X2の延伸方式を用いることができる。この方式はRthを小さくできるが、装置が長大になり易い。
【0096】
本発明における水蒸気接触処理は、図1に示すオフライン延伸設備のみならず、図8に示される溶融製膜設備210で行うこともできる。したがって、横延伸部242及び巻取部249の間のフィルムに対し、本発明の水蒸気接触処理を行ってもよいし、巻取部249にフィルムを一旦巻き取った後、巻取部249から送り出されたフィルムに対し本発明の水蒸気接触処理を行ってもよい。
【0097】
溶融製膜方法に用いることのできるポリマーは、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状ポリオレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状ポリオレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状ポリオレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状ポリオレフィンである。
【0098】
(環状ポリオレフィン)
環状ポリオレフィンはノルボルネン系化合物から重合されるものが好ましい。この重合は開環重合、付加重合いずれの方法でも行える。付加重合としては例えば特許3517471号公報記載のものや特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、国際公開第2006/004376号パンフレットに記載のものが挙げられる。特に好ましいのは特許3517471号公報に記載のものである。
【0099】
開環重合としては国際公開第98/14499号パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報記載のものが挙げられる。なかでも好ましいのが国際公開第98/14499号パンフレット、特許3060532号公報記載のものである。
【0100】
これらの環状ポリオレフィンの中でも付加重合のものの方がより好ましい。
【0101】
(ラクトン環含有重合体)
下記(一般式1)で表されるラクトン環構造を有するものを指す。
【0102】
【化1】

【0103】
(一般式1)中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0104】
(一般式1)のラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。
【0105】
(一般式1)で表されるラクトン環構造以外に、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記(一般式2)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
【0106】
【化2】

【0107】
(一般式2)中、R4は水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R5基、又は−C−O−R6基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R5及びR6は水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。
【0108】
例えば、国際公開第2006/025445号パンフレット、特開2007−70607号公報、特開2007−63541号公報、特開2006−171464号公報、特開2005−162835号公報記載のものを用いることができる。
【実施例】
【0109】
(フィルムの製造)
実施例に用いた各ポリマーフィルム(試料No.A1〜A4、B〜D)の製造方法について説明する。
【0110】
(試料No.A1)
フィルム製造に使用したポリマー溶液(ドープ)の調製に際しての配合を下記に示す。
原料ドープの調製に用いた化合物の処方を下記に示す。
セルローストリアセテート(置換度2.86) 89.3重量%
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.1重量%
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.6重量%
の組成比からなる固形分(溶質)を
ジクロロメタン 80重量%
メタノール 13.5重量%
n−ブタノール 6.5重量%
からなる混合溶剤に適宜添加し、攪拌溶解して原料ドープを調製した。なお、原料ドープのTAC濃度は略23重量%になるように調整した。原料ドープを濾紙(東洋濾紙(株)製,#63LB)にて濾過後さらに焼結金属フィルタ(日本精線(株)製06N,公称孔径10μm)で濾過し、さらにメッシュフイルタで濾過した後にストックタンクに入れた。
【0111】
[セルローストリアセテート]
なお、ここで使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Ca含有率が57ppm、Mg含有率が41ppm、Fe含有率が0.4ppmであり、遊離酢酸38ppm、さらに硫酸イオンを13ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8重量%であり、その重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
【0112】
[マット剤液の調製]
下記の処方からマット剤液を調製した。
シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジルR972) 0.67重量%
セルローストリアセテート 2.93重量%
トリフェニルフォスフェート 0.23重量%
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.12重量%
ジクロロメタン 88.37重量%
メタノール 7.68重量%
上記処方からマット剤液を調製して、アトライターにて体積平均粒径0.7μmになるように分散を行った後、富士フイルム(株)製アストロポアフィルタにてろ過した。そして、マット剤液用タンクに入れた。
【0113】
[紫外線吸収剤溶液の調製]
下記の処方から紫外線吸収剤溶液を調製した。
2(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−tert―ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 5.83重量%
2(2´−ヒドロキシ3´,5´−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール 11.66重量%
セルローストリアセテート 1.48重量%
トリフェニルフォスフェート 0.12重量%
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.06重量%
ジクロロメタン 74.38重量%
メタノール 6.47重量%
上記処方から紫外線吸収剤溶液を調製し、富士フイルム(株)製のアストロポアフィルタにてろ過した後に紫外線吸収剤液法用タンクに入れた。
【0114】
図9に示すように、溶液製膜設備80を用いてTACフィルム3を製造した。紫外線吸収剤溶液に、マット剤液や後述するレターデーション制御剤を含む液を添加し、インラインミキサで混合攪拌して混合添加剤を得た。添加剤供給ラインは、混合添加剤を配管内に送液した。インラインミキサは原料ドープと混合添加剤とを混合攪拌して流延ドープ81を得た。流延ドラム82は、制御部の制御の下、軸82aを中心に回転し、走行方向Aにおける周面82bの速度を50m/分以上200m/分以下の範囲内でほぼ一定となるように保持した。流延ドラム82の周面82bの温度を、−10℃以上10℃以下の範囲内でほぼ一定となるように保持した。流延ダイ84は、流延ドープ81を周面82b上に流延し、周面82bに流絵膜86を形成した。冷却により、流延膜86が自己支持性を有するものとなった後、剥取ローラ89を用いて、流延ドラム82から流延膜86を湿潤フィルム88として剥ぎ取った。剥取不良を抑制するために流延ドラム82の速度に対する剥取速度(剥取ローラドロー)を、100.1%〜110%の範囲で適切に調整した。湿潤フィルム88は、渡り部90、ピンテンタ91、及び乾燥室97へ順次案内された。渡り部90、ピンテンタ91、及び乾燥室97では、湿潤フィルム88に乾燥空気をあてて、所定の乾燥処理を行った。この乾燥処理によって得られるTACフィルム3を冷却室7に送った。冷却室7では、TACフィルム3を30℃以下になるまで冷却した。その後、TACフィルム3に、除電処理、ナーリング付与処理などを行った後、巻取室8に搬送した。巻取室8では、プレスローラ37で所望のテンションを付与しつつ、TACフィルム3を巻取ローラ36に巻き取った。フィルム製造設備80により製造されたTACフィルム3は、幅が1600m〜2500mであり、膜厚が110μmであった。
【0115】
(試料No.A2〜A4)
表1に示すこと以外は試料No.A1のTACフィルムと同様にして、試料No.A2〜A4のTACフィルム3を得た。
【0116】
(試料No.B)
溶液製膜方法を用いて、特開2001−188128の実施例1に記載のフイルムNo.1(セルロースアセテートプロピオネート:厚み80μm、幅1900mm)を得た。これを試料No.Bのフィルムと称する。
【0117】
(試料No.C)
国際公開第2006/025445号パンフレット記載の実施例1に従って溶融製膜方法を行い、ラクトン環含有重合体樹脂からなるポリマーフイルム(厚み90μm、幅1500mm)を得た。これを試料No.Cのフィルムと称する。
【0118】
(試料No.D)
溶融製膜方法を行い、シクロオレフィン樹脂Aからなるポリマーフイルム(厚み90μm、幅1500mm)を得た。これを試料No.Dのフィルムと称する。
シクロオレフィン樹脂A(付加重合系):ポリプラスチックス(株)製TOPAS6013(Tg=130℃)
【0119】
試料No.Dのフィルムを製造した溶融製膜方法の詳細は次の通りである。シクロオレフィン樹脂Aを110℃の真空乾燥機で乾燥し含水率を0.1%以下とした後、1軸混練押出し機を用い260℃で溶融しギアポンプから送り出した後、濾過精度5μmのリーフディスクフィルタにて濾過し、スタティックミキサーを経由してスリット間隔0.8mm、270℃のハンガーコートダイから、(Tg−5)℃、Tg℃、(Tg−10)℃に設定した3連のキャストロール上にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側のキャストロールに面圧0.1MPaでタッチロールを接触させ、厚み100μmの未延伸フイルムを製膜した。タッチロールは特開平11−235747号公報の実施例1に記載のもの(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い、Tg−5℃に調温した(但し薄肉金属外筒厚みは2mmとした)。
【0120】
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。各水準とも、幅は1.5mで30m/分で3000m巻き取った。
【0121】
【表1】

【0122】
なお、表1に示すCAPは、セルロースアセテートプロピオネートを示し、ラクトンはラクトン環含有重合体樹脂を、シクロオレフィンはシクロオレフィン樹脂Aをそれぞれ示す。置換度Aは、アセチル基による置換度であり、置換度Bは、プロピオニル基による置換度である。表1に示す添加量は、化3に示すレターデーション制御剤の添加量である。膜厚、Re、Rth及びヘイズは、得られたポリマーフィルムの厚さ、面内レターデーション、厚み方向のレターデーション及びヘイズである。
【0123】
【化3】

【0124】
(面内レターデーションReの測定方法)
サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21DH 王子計測(株))にて589.3nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値の外挿値より次式に従い算出した。
Re=|nX−nY|×d
nXは、X方向の屈折率,nYはY方向の屈折率,dはフィルムの厚み(膜厚)を表す。
【0125】
(厚み方向レターデーションRthの測定方法)
サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21DH 王子計測(株))にて589.3nmにおける垂直方向から測定した値と、フィルム面を傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値とから下記式に従い算出した。
Rth={(nX+nY)/2−nTH}×d
nTHは厚み方向の屈折率を表す。
【0126】
(ヘイズの測定方法)
ヘイズは、各ポリマーフィルムから40mm×80mmの大きさで切り出したものをサンプルフィルムとし、このサンプルフィルムについて25℃60%RHでヘイズメータ(型式:HGM−2DP,スガ試験機)を用いてJIS K−6714に従って測定した。
【0127】
図1に示すように、上記方法で得られた各ポリマーフィルム(試料No.A1〜A4、B〜D)を、オフライン延伸設備2の供給室4に収納した。供給ローラ9は、供給室4からポリマーフィルムをテンタ部5に供給した。テンタ部5ではポリマーフィルムに延伸処理を施した。この延伸処理の延伸率ER及び延伸処理におけるポリマーフィルムの温度Tfeは、表1に示すとおりであった。
【0128】
(実験1〜実験35)
テンタ部5における延伸処理を経たTACフィルム3(試料No.A1)に、結露防止処理、水蒸気接触処理、及び熱処理を順次行った。その後、室温まで冷却しフィルムを巻き取った。結露防止処理では、TACフィルム3に乾燥空気をあてて、TACフィルム3の温度Tf0を調節した。水蒸気接触処理では、水蒸気接触部6内の雰囲気の絶対湿度VM、相対湿度Hu1が表2に示す値となるように、そして、水蒸気接触部6内の雰囲気の露点は、TACフィルム3の温度Tf0よりも10℃以上高い温度となるように調節し、TACフィルム3の温度Tf1が表2に示す値となる状態を、処理時間P1だけ維持しながら、TACフィルム3を搬送した。水蒸気接触部6内における搬送テンションFは表2に示すとおりである。熱処理では、熱処理部内の乾燥空気の相対湿度Hu2が表2に示す値になるように調節し、TACフィルム3の温度Tf2が表2に示す値となる状態を、処理時間P2だけ維持した。なお、表2に示す「−」は、該当する処理を行わなかったことを表す。
【0129】
また、表3中のTH、Re、Rth、Ha1、及びHa2は、表2に示す条件で結露防止処理、水蒸気接触処理及び熱処理を行った後であり、湿熱耐久試験及び乾熱耐久試験を行う前のTACフィルム3の膜厚、面内レターデーション、厚み方向レターデーション、ヘイズ、及び内部ヘイズである。なお、表3に示す「−」は、該当する項目の測定を行わなかったことを表す。
【0130】
内部ヘイズは、次のようにして測定した。サンプルフィルムを25℃60%RHで2時間以上調湿した後に、2枚のスライドガラス板に流動パラフィンを介して挟み込み、ヘイズメータ(HGM−2DP、スガ試験機)にて、サンプルフィルムのヘイズを測定した。また、2枚のスライドガラス板にサンプルフィルムなしで、流動パラフィンのみを挟み込んだ状態のブランクサンプルを作成し、このブランクサンプのヘイズを測定した。そして、サンプルフィルムのヘイズの測定値から、ブランクサンプのヘイズの測定値を引いたものを内部ヘイズとした。
【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
表2に示す条件で結露防止処理、水蒸気接触処理及び熱処理を行った後のTACフィルム3について次の試験を行った。
【0134】
(湿熱耐久性試験)
TACフィルム3から、方向X1の長さLX、方向Y1の長さLYのサンプルフィルムを切り出し、このサンプルフィルムについて湿熱耐久性試験を行った。湿熱耐久性試験では、サンプルフィルムを試験室内に21日間継続して配置した。試験室内部の環境条件は、温度60℃、湿度90%RHでほぼ一定に保った。湿熱耐久性試験後のサンプルフィルムについて、面内レターデーションReWET、厚み方向レターデーションRthWET、方向X1の長さLXWET、及び方向Y1の長さLYWETを測定した。
【0135】
(乾熱耐久性試験)
TACフィルム3から、方向X1の長さLX、方向Y1の長さLYのサンプルフィルムを切り出し、このサンプルフィルムについて乾熱耐久性試験を行った。乾熱耐久性試験では、サンプルフィルムを試験室内に21日間継続して配置した。試験室内部の環境条件は、温度80℃、湿度5%RHでほぼ一定に保った。乾熱耐久性試験後のサンプルフィルムについて、面内レターデーションReDRY、厚み方向レターデーションRthDRY、方向X1の長さLXDRY、及び方向Y1の長さLYDRYを測定した。
【0136】
ΔXWET、ΔYWET、ΔReWET、及びΔRthWETは、湿熱耐久試験前後におけるサンプルフィルムにおける、方向X1の長さの変動量{(LXWET−LX)/LX}、方向Y1の長さの変動量{(LYWET−LY)/LY}、面内レターデーションの変動量(ReWET−Re)、及び厚み方向レターデーションの変動量(RthWET−Rth)を示す。また、ΔXDRY、ΔYDRY、ΔReDRY、及びΔRthDRYは、乾熱耐久試験前後におけるサンプルフィルムにおける、方向X1の長さの変動量{(LXDRY−LX)/LX}、方向Y1の長さの変動量{(LYDRY−LY)/LY}、面内レターデーションの変動量(ReDRY−Re)、及び厚み方向レターデーションの変動量(RthDRY−Rth)を示す。
【0137】
湿熱耐久試験の開始から1日経過、5日経過、10日経過、そして21日経過におけるΔReWET及びΔRthWETを測定した。表4中の@1d、@5d、@10d、@21dは、それぞれ、1日経過、5日経過、10日経過、そして21日経過におけるΔReWET及びΔRthWETの測定値を示す。同様に、乾熱耐久試験の開始から1日経過、5日経過、10日経過、そして21日経過におけるΔReDRY及びΔRthDRYを測定した。表5中の@1d、@5d、@10d、@21dは、それぞれ、1日経過、5日経過、10日経過そして21日経過におけるΔReDRY及びΔRthDRYの測定値を示す。なお、表4、5に示す「−」は、該当する項目の測定を行わなかったことを表す。
【0138】
【表4】

【0139】
【表5】

【0140】
(格子状ムラ評価)
実験31〜35により得られたTACフィルムの表面を目視観察し、格子状のムラの有無について調べた。実験31〜34については、TACフィルムの表面に格子状のムラを確認することができなかったが、実験35については、TACフィルムの表面に格子状のムラを確認することができた。
【0141】
表1に記載の試料No.A2〜A4、B〜Dのフィルムについても、実験1〜実験35と同様にして各処理を行ったところ、実験1〜実験35と同様の傾向の結果を得ることができた。
【0142】
ポリマーフィルムに水蒸気接触処理を行うことにより、湿熱耐久性試験前後におけるレターデーションの変動を抑えることが出来ることがわかった。また、ポリマーフィルムに水蒸気接触処理を行った後、熱処理を行うことにより、各耐久性試験前後におけるレターデーションの変動及び寸法の変動を抑えることが出来ることがわかった。更に、水蒸気接触処理の前に結露防止処理を行うことにより、ポリマーフィルムにおいて、水蒸気接触処理における結露を防止することができることがわかった。
【0143】
(実験51〜62)
表1に記載の試料No.A1のTACフィルム3を用いて、実験51〜62を行った。ただし、実験51〜62に用いたTACフィルム3の膜厚は、80μmであり、幅は1600mmであった。
【0144】
(実験51)
図1に示すオフライン延伸設備2を用いて、TACフィルム3に各処理を施した。TACフィルム3を、図6に示すテンタ部5に導入した。予熱エリア11では、TACフィルム3の温度Tjを165℃に調節した。延伸エリア12では、TACフィルム3の温度Tkを170℃に調節した。延伸エリア12では、延伸率ERが140%の延伸処理をTACフィルム3に施した。
【0145】
延伸エリア12の延伸終了位置、すなわち位置Pmから方向X1へ0.1×L1だけ離れた位置を位置Pn1とし、位置Pmから方向X1へ0.2×L1だけ離れた位置を位置Pn2とし、位置Pmから方向X1へ0.3×L1だけ離れた位置を位置Pn3とした。位置Pn1におけるTACフィルム3の温度Tn1を150℃に調節し、位置Pn2におけるTACフィルム3の温度Tn2を150℃に、そして、位置Pn3におけるTACフィルム3の温度Tn3を150℃に調節した。
【0146】
また、位置Pmから位置Pn1までのTACフィルム3の緩和率RRmn1、位置Pmから位置Pn2までのTACフィルム3の緩和率RRmn2、及び位置Pmから位置Pn3までのTACフィルム3の緩和率RRmn3をいずれも0%とした。
【0147】
ここで、緩和率RRmnxは、位置PmにおけるTACフィルム3の幅をWmとし、位置PnxにおけるTACフィルム3の幅をWnxとするときに、{100×(Wm−Wnx)/Wm}で表される。なお、xは、1〜3のいずれかの整数であり、PnxはPn1〜Pn3のいずれかを表し、RRmnx及びWnxは、位置PnxにおけるTACフィルム3の緩和率及び幅をそれぞれ表す。
【0148】
テンタ部5から送り出されたTACフィルム3を水蒸気接触部6に導入して、水蒸気接触処理を行った。水蒸気接触処理の条件は、実験17と同一とした。水蒸気接触処理の前、及び水蒸気接触処理の後のTACフィルム3について、「光学軸の向き」を測定し、測定した「光学軸の向き」から「TACフィルム3の光学軸のずれ量」を求めた。更に、水蒸気接触処理の後のTACフィルム3について、ΔXWET、ΔYWET、ΔReWET、ΔRthWET、ΔXDRY、ΔYDRY、ΔReDRY、及びΔRthDRYを求めた。
【0149】
(実験52〜62)
温度Tn1〜Tn3、及び緩和率RRmn1〜RRmn3を表6に示すこと以外は、実験51と同様にした。ただし、実験52、54、56及び58では、図6に示すテンタ部5に代えて、図2に示すテンタ部5を用いた。
【0150】
実験51〜62における各温度Tj、Tk、及びTn1〜Tn3、延伸率ER、緩和率RRmn1〜RRmn3、並びに、水蒸気接触処理前後における「光学軸の向きのばらつきプロファイル」及び「光学軸のずれ量」を表6に記載した。また、TACフィルム3に発生したボーイングが図4に示すタイプである場合には、「光学軸の向きのばらつきプロファイル」に「凹」と示し、また、TACフィルム3に発生したボーイングが図5に示すタイプである場合には、「光学軸の向きのばらつきプロファイル」に「凸」と示した。
【0151】
なお、水蒸気接触処理の後のTACフィルム3における、ΔXWET、ΔYWET、ΔReWET、ΔRthWET、ΔXDRY、ΔYDRY、ΔReDRY、及びΔRthDRYは、実験17のものと同様の傾向を示していた。
【0152】
表1に記載の試料No.A2〜A4、B〜Dのフィルムについても、実験51〜実験62と同様にして各処理を行ったところ、実験51〜実験62と同様の傾向の結果を得ることができた。
【0153】
【表6】

【0154】
実験51〜62から、本発明により、光学軸のずれ量が方向Y1において略均一のTACフィルムを製造することができることがわかった。
【符号の説明】
【0155】
2 オフライン延伸装置
3 TACフィルム
5 テンタ部
6 水蒸気接触部
12 延伸エリア
13 緩和エリア
41〜44 風
71 延伸後エリア
400 水蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に走行する長尺状の熱可塑性樹脂フィルムを拡幅する第1処理と、
前記第1処理が施された前記熱可塑性樹脂フィルムに水蒸気を接触させる第2処理とを有し、
前記第2処理により前記熱可塑性樹脂フィルムに発生する第2ボーイングと相殺する第1ボーイングが前記熱可塑性樹脂フィルムに発生するように前記第1処理を行い、
前記第1処理では、前記熱可塑性樹脂フィルムの幅方向への張力により、前記熱可塑性樹脂フィルムを拡幅する延伸処理が行われることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1処理では、前記延伸処理が開始する延伸開始位置及び前記延伸処理が終了する延伸終了位置の前記走行方向における距離をLとするときに、前記延伸終了位置を通過し、及びこの延伸終了位置から前記走行方向へ0.2×Lだけ離れた位置に到達するまでの前記熱可塑性樹脂フィルムの温度が、前記延伸終了位置における前記熱可塑性樹脂フィルムの温度以下となるように、前記熱可塑性樹脂フィルムの温度を調節する温度調節処理が行われることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1処理では、前記延伸処理が開始する延伸開始位置及び前記延伸処理が終了する延伸終了位置の前記走行方向における距離をLとするときに、前記延伸終了位置を通過し、及びこの延伸終了位置から前記走行方向へ0.2×Lだけ離れた位置に到達するまでの前記熱可塑性樹脂フィルムの幅を一定に維持する幅一定維持処理が行われることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第1処理では、前記延伸処理が施された前記熱可塑性樹脂フィルムについて、前記幅方向への張力が付与される状態を維持しながら、前記熱可塑性樹脂フィルムの幅を狭くする緩和処理が行われることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂フィルムは溶液製膜方法によりつくられたことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂フィルムはセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂フィルムは環状ポリオレフィンフィルムであることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−188648(P2010−188648A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36305(P2009−36305)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】