説明

熱可塑性樹脂ペレットの製造方法

【課題】 ペレット化後に乾燥工程を短縮もしくは省略することが可能な、熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【解決手段】 溶融押出機を用いて熱可塑性樹脂を溶融押出し、これを冷却媒体として、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンの少なくとも1つを含み、下記特性(a)〜(d)で示す特性を有する常温で液体である媒体を接触させ、切断機で切断してペレットを製造する方法。
(a)沸点が100℃未満
(b)25℃における蒸気圧が5〜30KPa
(c)25℃における密度が1050kg/m以上
(d)25℃における表面張力が20mN/m以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット化後に乾燥工程を短縮もしくは省略することが可能な、熱可塑性樹脂ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂ペレットの製造方法はコールドカット法とホットカット法に大別され、更に、前者にはシートカット方式とストランドカット方式とがあり、後者には空中ホットカット方式と水中ホットカット方式(アンダーウォーターカッティング方式)とがある。また、成形ダイの下部に滑り台状の冷却媒体槽を配置し、冷却媒体槽の内側に散液ノズルを配置し、冷却媒体槽の下方の位置に、引取ロール、支持ロール、回転刃、固定刃から成るカッターを配置し、冷却媒体槽の下方の位置で回収された冷却媒体を徐熱して散液ノズルを通して循環する構造を備えた設備を使用する方法もある(この方法はセミアンダーウォーターカッティング方式と呼ばれることもある)。
【0003】
冷却媒体としては、安全性、コスト等の観点から、通常、水が用いられている(例えば特許文献1,2)。しかし、冷却媒体が水の場合は、水が付着したり、吸水したりした状態のペレットを用いて熱成形すると、シルバーストリークや望まざる発泡といった成形不良が生じる。よってカット後、水分を除去するための乾燥工程が不可欠である。しかし必要以上に乾燥することは、ペレットの変色、省エネルギーの観点などから好ましいものではなく、乾燥条件は外気の温度湿度などに応じて細かく変更しているのが現状である。
【0004】
一方、吸湿性のある熱可塑性樹脂や吸湿性のある成分を含んだ熱可塑性樹脂及び微多孔性のペレット等では通常の樹脂ペレット製造設備では乾燥が十分にできず、熱成形を行う際に事前に乾燥を行う場合もある。
かかる乾燥工程を短縮又は省略できれば、樹脂加工産業に大きな貢献をもたらすことができる。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、乾燥工程を短縮もしくは省略することのできる熱可塑性樹脂ペレットの製造方法を提供することにある。上記のような種々不具合を解消すれば、ペレットの乾燥工程を短縮もしくは省略を実施することが可能となり、産業の発展に寄与できると考えられる。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の液体を冷媒に用いることで、熱可塑性樹脂の冷却効果が高く、かつその後の乾燥工程が短縮、省略することが可能であることを見出し、発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、溶融押出機を用いて熱可塑性樹脂を溶融押出し、これを冷却媒体に接触させて冷却しながら又は冷却した後、切断機で切断してペレットを製造する方法であって、冷却媒体は、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンの少なくとも1つを含み、下記特性(a)〜(d)を持つ常温で液体であることを特徴とする熱可塑性樹脂ペレットもしくはシートの製造方法、にある。
(a)沸点が100℃未満
(b)25℃における蒸気圧が5〜30KPa
(c)25℃における密度が1050kg/m以上
(d)25℃における表面張力が20mN/m以下
【0007】
本発明の第2の特徴は、冷却媒体に接触させて冷却することが、熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドを冷却媒体中に直接投入して冷却することを特徴とする前記の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法、にある。
本発明の第3の特徴は、冷却媒体に接触させて冷却することが、熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドに冷却媒体を塗布または噴霧して冷却することを特徴とする前記の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法、にある。
【0008】
本発明の第4の特徴は、冷却媒体に接触させて冷却することが、熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドを切断機で切断前に、切断時に、又は切断前後に行われることを特徴とする前記のペレットの製造方法、にある。
本発明の第5の特徴は、冷却媒体の温度が、5〜60℃であることを特徴とする前記の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法、にある。

【発明の効果】
【0009】
前記(a)〜(b)の特性を有する特定の液体を冷媒に用いることで、熱可塑性樹脂表面との親和性が高いので容易に熱交換をする為に冷却効果が短時間で達成できるので、冷却効率が非常に高く、しかも一定の冷却後に短時間で容易に熱可塑性樹脂の表面から離反するので、ペレットのような成形用樹脂への悪い影響がない。したがって、冷水のような慣用の冷却媒体を使用する場合に比較して、その後の乾燥工程が短縮又は省略することが可能であり、冷媒の影響も少ないので成形用樹脂の品質を高めることは勿論のこと、省力化および省エネにおいても有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられる冷却媒体は、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンの少なくとも1つを含み、下記特性(a)〜(d)を持つ常温(25℃)で液体である。
(a)沸点が100℃未満
(b)25℃における蒸気圧が5〜30KPa
(c)25℃における密度が1050kg/m以上
(d)25℃における表面張力が20mN/m以下
【0011】
本発明において用いることのできるパーフルオロカーボンの具体例としては、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカンなどを挙げることができる。具体的な商品としてはフロリナート(住友スリーエム)、フルーテック(ローヌプラン)、ガルデン(アウジモント)、アルフード(旭硝子)などがあげられる。上記パーフルオロカーボンは単独又は2種類以上混合してもよい。
【0012】
本発明において用いることのできるハイドロフルオロカーボン(HFC)は、炭化水素化合物の水素の一部がフッ素原子となった化合物であり、直鎖状、分岐状、環状か否かは問わず、化合物分子中にフッ素原子が少なくとも1個以上存在するものである。炭素数の範囲は好ましくは3〜12、より好ましくは4〜10である。
【0013】
ハイドロフルオロカーボンの具体例としては、HFC−43−10mee、1,1,1,3,3ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、オクタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−トリフルオロメチル−ペンタン、2,3−ジハイドロデカフロロペンタンなどを挙げることができる。具体的商品としては、日本ゼオン社製「ゼオローラ」、バートレル(三井・デュポンフロロケミカル)、ソルカン365mfc(ソルベイ)などがあげられる。上記ハイドロフルオロカーボンは単独又は2種類以上混合してもよい。
【0014】
本発明において用いられるハイドロフルオロエーテル(HFE)は、特に限定されないが、好ましくは式、R−O−R(式中、R はC〜C12の炭化水素アルキル基またはハイドロフルオロカーボン、RはC〜C12の好ましくはC〜C12のパーフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンである)を有するものである。
ハイドロフルオロエーテルの具体例としては、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2,−トリフルオロエチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、HFE−347pc−f(CFCHOCFCHF)、HFC−52−13p(CFCFCFCFCFCHF)、HFC−569sf(CFCFCFCFCHCH)などを挙げることができる。具体的商品としては住友スリーエム社製商品名「ノベック」、旭硝子社製商品名「アサヒクリン」、アサヒクリンAE−3000(旭硝子)、アサヒクリンAC−2000(旭硝子)、アサヒクリンAC−4000(旭硝子)、ノベックHFE−7100(住友スリーエム)、ノベックHFE−7200(住友スリーエム)などがあげられる。上記ハイドロフルオロエーテルは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。

【0015】
本発明において用いられるパーフルオロケトンの具体例としては、ペンタフルオロエチルヘプタフルオロプロピルケトンなどを挙げることができる。
冷却媒体としては、熱可塑性樹脂のシート若しくはストランドのようなペレット加工用熱可塑性樹脂またはペレットの表面温度が、例えば、140〜280℃の場合に、その加工用熱可塑性樹脂の表面に接触する冷媒が、加工用熱可塑性樹脂又はペレットの表面に満遍なく均一に適用でき、しかも該表面と親和的に接触できることが好ましい。そして、加工用熱可塑性樹脂又はペレットを冷却するための熱交換をしてから表面から適度に瞬時に離反するものであることが好ましい。もし、均一な冷却ができないと、加工用熱可塑性樹脂またはペレットに品質不良が発生する原因にもなりかねない。本発明者らは、加工用樹脂又はペレットの温度を熱変形しない程度の温度に、瞬時に下げて、その後速やかに離反するといった好ましい性質を有する冷却用媒体が備えなければならない特性を詳細に吟味した結果、通常に使用される冷却水とは異なる、上記の(a)〜(d)の観点で示される特性を備えていることが要求されるということを知見したものである。
【0016】
本発明で用いられる冷却媒体は、沸点が100℃未満であり、好ましくは90℃未満、より好ましくは80℃未満である。沸点が100℃以上では、揮発しにくいために冷却媒体がストランドもしくはシートに残りやすいためである。沸点はJIS−K2254によって求められる値をいう。
【0017】
この冷却媒体の沸点は、30℃、40℃と比較的低い値になれば、容易に揮発する為に、冷却媒体の回収システムを考慮して冷却設備を付帯しなければならなく、揮発媒体の取り扱いが冷却システムの能率的な運営に支障なるばかりでなく、冷却媒体のロスも多くなり、さらに、冷却媒体の回収システムの構築に対する負担も多い。さらに、過度の冷却媒体の揮発の蔓延は、工場、作業環境の汚染にもなり、健康上の配慮に対する対策にも留意する必要がる。以上のことから冷却媒体の沸点は45℃以上、好ましく55℃以上が望ましい。
【0018】
本発明で用いられる冷却媒体は、25℃における蒸気圧が5〜30KPaであり、好ましくは5〜29KPa、より好ましくは6〜28KPaである。蒸気圧が5KPa未満では冷却媒体の揮発速度が遅すぎるためにストランドもしくはシートに冷却媒体が残ってしまう。蒸気圧が28KPaを越えると、揮発速度が速すぎるために充分な冷却効果が得られない。蒸気圧はJIS−K2258によって求められる値をいう。
【0019】
このために、冷却用媒体は、25℃における蒸気圧が5〜30KPaであり、この蒸気圧が34KPa、38KPa、43KPaと大きい値になれば、冷却媒体を高い温度のシート若しくはストランドのようなペレットの加工用熱可塑性樹脂またはペレットの表面に接触すれば、瞬時に揮発して飛散するような突沸のような現象も有り得ることも予測され、取り扱い難いばかりでなく、加工用熱可塑性樹脂またはペレットの表面の冷却が万便に、均一に、適正に達成できないばかりでなく、もし、この冷却用媒体を回収するシステムを敷設する場合に、揮発性の高い媒体は回収、それの再利用および取り扱いが不便である。一方、蒸気圧が3KPa、1KPa、と蒸気圧が比較的低い冷却用媒体になれば、揮発しにくいとか、揮発速度が遅すぎる為に、加工用熱可塑性樹脂又はペレットの表面に冷却用媒体が残ったり、加工用熱可塑性樹脂又はペレットの下側にしずくとして残り、これが不均一な冷却の原因になるばかりでなく、ペレットの品質に悪く影響することも有り得るし、冷却用媒体の除去にも時間や、労力を要することになる。
【0020】
本発明で用いられる冷却媒体は、25℃における密度が1050kg/m以上であり、好ましくは1300kg/m以上、より好ましくは1400kg/m以上である。密度が1050kg/m以上であると冷却媒体はストランドもしくはシートから素早く落ちて行く。密度はJIS−K2249によって求められる値をいう。
【0021】
本発明の冷却用媒体は、シート若しくはストランドのようなペレット用の加工用熱可塑性樹脂またはペレットの冷却を達成する為には、25℃における密度が1050kg/m以上である必要がある。密度が1000kg/m、960kg/mと低くなれば、塗布の為の取り扱いが難しくなる。例えば、切断直後の成形用熱可塑性樹脂の表面温度を下げた冷却用媒体は、加工用熱可塑性樹脂表面から揮発により除かれるもの、或いは、吹き付け量の若干多い冷却用媒体は、自重により自由に滴下して成形用熱可塑性樹脂から除かれるので、ある程度の重量が要求される。また、冷却用媒体を、ドライアイス、冷凍設備により、温度を常温より下げて使用する場合にも、比熱の関係で、密度がある場合に冷却の達成に若干有利であることが予測され、さらに、自然環境の保全、加工作業現場の環境を考えると、冷却用媒体を回収すること、それが再利用することが推奨される。この場合も、若干の密度があれば、選別、回収、および取り扱いが容易になる。
【0022】
本発明で用いられる冷却媒体は、25℃における表面張力が20mN/m以下であり、好ましくは18mN/m以下、より好ましくは16mN/m以下である。表面張力が20mN/mを越えると、冷却媒体の液滴のペレットもしくはシートへの接触面積が少ないために冷却効果が劣る。表面張力はJIS−K2241によって求められる値をいう。
【0023】
本発明で用いられる冷却用媒体は、25℃における表面張力が20mN/m以下である必要がある。押出成形後のシート若しくはストランドのような加工用熱可塑性樹脂またはペレットの表面温度は、80〜350℃と非常に高い温度であって、しかも加工用熱可塑性樹脂の表面は疎水性の樹脂である場合が多い。冷却用媒体は、このような加工用熱可塑性樹脂の表面と瞬時に所定の時間に、所定量を接触させて、加工用熱可塑性樹脂またはペレットの表面を冷却する為の熱交換をさせることによる、加工用熱可塑性樹脂の温度を所定の冷却温度にするには、加工用熱可塑性樹脂と媒体の接触状態が微妙に影響することになる。この表面張力が22mN/m、28mN/m、と大きくなれば、例えば媒体が丸くなったり、反発して、表面と媒体の接触において接触面が広くならない傾向を示すことが予測され、熱交換の接触が十分にできなくなるおそれがある。
従来型の冷却用媒体として表面張力が約72mN/m程度の冷却水による加工用熱可塑性樹脂又はペレットを冷却した場合の手法に比較して、本発明において冷媒の特性を仔細に吟味することによりペレット製造に最も適正な特性を知見したものである。
【0024】
本発明に係る熱可塑性樹脂ペレットの製造方法に使用される熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、任意の熱可塑性樹脂を使用することができる。しかしながら、溶融粘度が低い熱可塑性樹脂では、ストランドが蛇行したり、ストランドがとぐろを巻いた状態に押し出されたりする場合があるので、溶融樹脂の押し出し温度における粘度数は、好ましくは100ml/g以上、より好ましくは200ml/g以上である。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルの他、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリレート・スチレン・アクリロニトリル共重合体、ポリメチレンメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。熱可塑性樹脂は、一成分でも二以上の複数成分のブレンドであってもよい。
【0026】
熱可塑性樹脂には、充填材、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、滑剤、離型剤、相溶化剤、分散剤、結晶核剤、可塑剤、中和剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐候安定剤、流動性改質剤、発泡剤、抗菌剤、架橋剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、制振剤、防臭剤、摺動性改質剤、導電性付与剤、帯電防止剤等の任意の添加剤を配合することができる。
【0027】
溶融押出機は、単軸押出機、二軸押出機、ギヤポンプ及びこれらを組み合わせたものを使用することができる。溶融押出機にはベント孔が設けられていてもよい。
溶融押出の際の樹脂温度は、樹脂の種類により異なるが、一般的には、80〜350℃の範囲であり、用いる熱可塑性樹脂の融点又は軟化点より20〜80℃高い温度とすることが好ましい。
溶融押出機内で溶融された溶融樹脂は、溶融押出機先端に設けられたダイプレートから押し出される。樹脂ペレットの切断方法は特に限定されるものではなくコールドカット法、ホットカット法等が挙げられる。
【0028】
コールドカット法としては、溶融樹脂をシート状若しくはストランド状に押出し、冷却媒体を張った冷却バスにかかるシート若しくはストランドを浸漬して冷却して、切断機で切断する方法、溶融樹脂をシート状若しくはストランド状にコンベアーベルト上に押出し、かかるシート若しくはストランドに冷却媒体を吹きつけて冷却して、切断機で切断する方法等がある。切断前にシート又はストランド表面に付着した冷却媒体を除去するために冷風又は温風をブローしてもよい。
ホットカット法としては、空中ホットカット法、いわゆる水中ホットカット法等が挙げられる。空中ホットカット法では裁断された溶融状態のペレットが冷却媒体によって冷却されることになる。水中ホットカット法では水に代えて本発明の冷却媒体が用いられる。
【0029】
本発明の冷却法の実施態様を詳細に説明すれば、熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドのような加工用熱可塑性樹脂をペレットに切断する前の工程で、好ましくは0〜80℃、より好ましくは5〜60℃の冷却媒体の入った冷却槽中に直接投入して冷却媒体に約1〜20秒程度接触させる手法により冷却したものを切断機でペレットに切断をする方法である。この方法は、冷却媒体が、切断や、切断後のペレットに影響することが少ない最も典型的な冷却方法である。この冷却槽には、温度調整装置や、冷却媒体のろ過精製のような装置が付帯することも可能である。押し出し速度は、好ましくは5〜200m/min、より好ましくは7.5〜100m/minという程度で、慣用の押出機を使用することができる。ストランドの押し出し数は、通常直径1〜20mm、好ましくは1.5〜5mm程度で、1〜60本程度押し出しをして、1〜20mm、好ましくは2〜5mm程度の間隔でカットして、慣用のペレタイザーによりペレットに加工することが標準的に採用される。シートの押し出しは厚さ0.5〜20mm、好ましくは1〜10mm、幅30〜5000mm、好ましくは100〜2000mmで押し出しをし、幅方向に0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmにスリットし、その後長さ1〜20mm、好ましくは2〜5mm程度の間隔でカットして、ペレットにすることができる。
【0030】
別の態様は、熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドをペレットに切断する前の工程でシート若しくはストランドに冷却媒体中を塗布または噴霧して冷却することである。この塗布または噴霧には、スプレー装置、噴霧装置が必要である。通常は、一段冷却、又は予備冷却、本冷却というような多段で順次冷却することも可能である。
これらの冷媒冷却の塗布または噴霧は、シート若しくはストランドを垂直方向に押し出したものに、垂直方向から冷媒を吹き付ける方法や、横方向に押し出されたものに、任意の角度で冷媒を吹き付ける方法が推奨される。熱可塑性樹脂の押し出し温度140〜280℃、ストランドの押し出し速度、7.5〜100m/minに対して、冷却媒体温度5〜80℃、好ましくは5〜60℃のものを、塗布または噴霧量(リットル;L)が60〜240L/min吹き付けるという仕様の範囲で設計すれば所望の冷却が達成できる。
この切断前の冷媒による冷却は、押し出されたシートまたはストランドが絡まりや蛇行がなくなり、整然とペレタイザーに供給され、寸法、形状の安定なペレットが成形できる。
このような特に塗布または噴霧の場合には、シート又はストランドをカバー、覆い、パイプ、ブースのような中を通すと言うような、いわゆるクローズドシステムを採用することが推奨される。
冷却媒体の塗布または噴霧量は、ペレット成形品の単位重量(kg)当たりに換算すれば、冷却媒体の温度、ストランドの温度などに影響されるが、冷却媒体の温度を30℃程度にした場合の例で、塗布または噴霧量に使用する冷却媒体の使用量(L)は、約0.0001〜5L/kg程度あれば適正な冷却が可能である。
【0031】
この冷却媒体に接触させて冷却する別の実施態様は、熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドを切断機で切断する時に冷媒により冷却することも可能である。同様の、この冷却媒体に接触させて冷却する別の実施態様は、必要により熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドを切断機で切断する前から、切断後のペレットに至る工程で冷却をすることも可能である。このような切断前後に至る継続的な冷却方法は、安定な切断ができるばかりでなく、ペレットに含まれる粉塵、粉末、異物のようなものがもし含まれていれば除去されることも有り得る。
【0032】
このような冷却媒体により冷却されて加工されるペレットは、特に射出成形などにおいて、外観の良い優れた品質の良い成形品を製作するにおいて、有利である。
【実施例】
【0033】
本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
1.使用原材料
(1)熱可塑性樹脂
樹脂(A)・日本ポリプロ(株)製、BC03B(MFR:30g/10分)

(2)冷媒
NOVEC7200・・住友スリーエム(株)より電子部品洗浄剤として市販されているハイドロフルオロエーテル(沸点76℃、蒸気圧16kPa、密度1430kg/m、表面張力13.6mN/m)
NOVEC7600・・住友スリーエム(株)より電子部品洗浄剤として市販されているハイドロフルオロエーテル(沸点131℃、蒸気圧1kPa、密度1540kg/m、表面張力17.7mN/m)
水・・工業用水(沸点100℃、蒸気圧3kPa、密度1000kg/m、表面張力72mN/m)
【0035】
2.評価
(1)造粒
押出機:テクノベル社製KZW−15−45MG2軸押出機 スクリュ:口径15mm L/D=45 押出機設定温度:(ホッパ下から)40,80,160,200,200,200(ダイ℃) スクリュ回転数:400rpm 吐出量:スクリュフィーダーにて約3.5kg/hrに調整 ダイ:口径2.5mm ストランドダイ 穴数2個
冷却槽:600×150×120mm(横×縦×深さ)
【0036】
(2)成形
以下の条件で射出成形を行い、得られた成形品の観察を行った。
成形機:東芝170トン成形機(IF170)
成形サイクル:40秒
成形温度:200℃ 金型温度:30℃
射出時間:15秒(一次:5秒 二次:10秒)
冷却時間:10秒
金型形状:平板(厚さ2mm・幅・120mm・長さ120mm)
【0037】
(3)判定:以下の基準で判断した。
1)成形品表面
○:表面にシルバー無し
×:表面にシルバー有り
【0038】
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(樹脂(A)日本ポリプロ製ノバテックBC03B)100重量部と酸化防止剤0.05重量部とカーボンブラックマスターバッチ2重量部とからなる樹脂組成物をミキサーでドライブレンドした後、二軸押出機で溶融混練した後、得られたストランド群を冷却媒体として常温のハイドロフルオロエーテル(スリーエム製ノベック7200)を張った冷却槽に滞留時間約3秒間浸漬した。ストランド群をバスから引き上げ、エアー吹き付け装置及び水滴吸引装置にて、ストランド群に付着した冷却媒体を除去した後に、ストランドカッターでペレット状に切断した。得られたペレットは乾燥することなく成形に供せられた。得られたペレットを用いて、平板を射出成形した。平板にはシルバーは認められなかった。
【0039】
(比較例1)
冷却媒体として水を用いたこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。平板にはシルバーが認められた。
【0040】
(比較例2)
冷却媒体としてノベック7600を用いたこと以外は、実施例1と同様に評価を行った。平板にはシルバーが認められた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開2008−68517
【特許文献2】特開2001−96530

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融押出機を用いて熱可塑性樹脂を溶融押出し、これを冷却媒体に接触させて冷却しながら又は冷却した後、切断機で切断してペレットを製造する方法であって、冷却媒体は、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、およびパーフルオロケトンの少なくとも1つを含み、下記特性(a)〜(d)を持つ常温で液体であることを特徴とする熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
(a)沸点が100℃未満
(b)25℃における蒸気圧が5〜30KPa
(c)25℃における密度が1050kg/m以上
(d)25℃における表面張力が20mN/m以下
【請求項2】
冷却媒体に接触させて冷却することが、熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドを冷却媒体中に直接投入して冷却することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
冷却媒体に接触させて冷却することが、熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドに冷却媒体を塗布または噴霧して冷却することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
冷却媒体に接触させて冷却することが、熱可塑性樹脂の溶融押出しされたシート若しくはストランドを切断機で切断する切断前に、切断時に、又は切断前後に行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のペレットの製造方法。
【請求項5】
冷却媒体の温度が、5〜60℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。


【公開番号】特開2011−206908(P2011−206908A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62222(P2010−62222)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】