説明

熱可塑性樹脂原料を複数のフィーダを用いて二軸押出機に供給する方法

【課題】 熱可塑性樹脂の重合パウダと低嵩密度の再生品および添加材をロストインウエイト式フィーダを用いて二軸押出機に供給する際、各フィーダへの原料の投入を重ねて行なわないよう、あるいは接近して行なわないように、投入時期を意図的に時間差を付けて供給する方法を提供すること。
【解決手段】 重合パウダ、低嵩密度再生品、および添加材等を樹脂原料とし、これら樹脂原料を複数のロスインウエイト式のフィーダにより二軸押出機に供給するに際し、
前記フィーダの一つが、自己への樹脂原料の投入にあたり、他のフィーダへの樹脂原料の投入タイミングに重畳・接近しないよう判断し、他のフィーダへの原料樹脂の投入タイミングと重畳・接近したときは、所定の時間待って、自己への原料樹脂の投入を開始する方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂の重合パウダと低嵩密度(0.25g/cc以下)の再生品および添加材をロスインウエイト式のフィーダを用いて二軸押出機に供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からシートやフィルム等(以下シート等という。)の成形時に生ずるこれらシート等の幅方向の両端部(耳部)を原料とする低嵩密度再生品や粉砕品等(以下フラフ等という。)を10%程度混入した原料を用いてシート等の成形をすることが行なわれており、その成形のためのスクリュや押出機あるいはその押出方法が周知である。例えば前述の重合パウダと低嵩密度の再生品を原料とする従来の熱可塑性樹脂シート成形方法について図3により説明すると、同方向回転の二軸スクリュ1を有する二軸押出機2の材料供給口3に重合パウダと低嵩密度再生品、添加材等の材料樹脂をロスインウエイト式フィーダ4、5および6により直接供給し、加熱・溶融し、ベント部7により揮発分等を抜いた後、混練・混合し、二軸押出機2より押出し、次いでギャポンプ8により昇圧し、定量吐出した後、ダイ9より製品(シート)10として押出す方法が行われている。また前述の材料樹脂の重合パウダに換えて熱可塑性樹脂ペレットとフラフ等を加えた材料樹脂により同方向回転の二軸スクリュ押出機によりシート等の成形が行なわれている。
【特許文献1】特開平9‐117954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら前述のロスインウエイト式フィーダは、同フィーダの排出する排出基準重量Wrとすると、 Wr=Fr×tr (ただし、Fr:流量設定値、tr:起動から経過時間)となり、押出機へ実際に供給した樹脂原料の重量WDとすると可能な限り Wr=WD となるように自動制御してフィーダ回転数を定量制御するものであるが、フィーダへの原料投入時にフィーダは、一定供給運転状態を維持しているのでフィードバックが掛からなくなり押出機への樹脂原料供給精度が低下する。
また前述のように複数個のフィーダを用いる場合、原料のフィーダへの投入が複数箇所で重なるとフィーダから押出機への樹脂原料供給精度が相乗効果で悪くなり、押出機の運転状態が不安定になり、成形するシート等の厚み精度が悪くなりこれを克服するという課題があった。 本願の発明者等は、前述の従来方法における原料のフィーダへの投入が複数箇所で重なった場合、シート等の厚み精度が悪くなり、これを克服するという課題について種々検討した結果、各フィーダへの原料の投入を重ねてあるいは接近して行なわないよう、投入時期を意図的に時間差を付け、原料を投入した一つのフィーダが安定してから他のフィーダの原料投入をすれば良い。そのためには各フィーダへの投入信号に時間差を付けて出力すれば良いという結論に達し、本発明と生ずるに到った。
本発明の目的は、熱可塑性樹脂の重合パウダと低嵩密度の再生品および添加材をロスインウエイト式フィーダを用いて二軸押出機に供給する際、各フィーダへの原料の投入を重ねて行なわないよう、あるいは接近して行なわないように投入時期を意図的に時間差を付けて、投入時間を待って供給する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述の課題を解決するため、本願発明は、重合パウダ、低嵩密度再生品、および添加材等を樹脂原料とし、これら樹脂原料を複数のロスインウエイト式のフィーダにより二軸押出機に供給するに際し、フィーダの一つが、自己への樹脂原料の投入にあたり、他のフィーダへの樹脂原料の投入タイミングに重畳・接近しないよう判断し、他のフィーダへの原料樹脂の投入タイミングと重畳・接近したときは、所定の時間待って、自己への原料樹脂の投入を開始する、ことを特徴とする熱可塑性樹脂原料を複数のフィーダを用いて二軸押出機に供給する方法とした。
【0005】
また、この発明の方法において、前記投入タイミングの重畳・接近の判断には、他のフイーダへの樹脂原料投入開始の信号、または樹脂原料の存在を検知する信号を用いて判断し、樹脂原料の投入に際し所定のタイミングをずらした、ことを特徴とする熱可塑性樹脂原料を複数のフィーダを用いて二軸押出機に供給する方法とすると好適である。
【0006】
更にまた、本願の別の発明では、重合パウダ、低嵩密度再生品、および添加材等を樹脂原料とし、これら樹脂原料をロスインウエイト式のフィーダにより二軸押出機に供給するに際し、前記二軸押出機内に樹脂原料の留まる原料平均滞留時間をTとし、前記フィーダへの樹脂原料を投入するタイミングの待ち時間をtとしたとき、前記待ち時間tについて、t>0.3Tとし、前記フィーダの一つが自己へ供給される原料樹脂を投入するにあたり、他のフィーダへの樹脂原料投入開始を判断し、他のフィーダへの樹脂原料の投入が開始されていないときは、自己への樹脂原料の投入を開始し、他のフィーダへの樹脂原料の投入を開始しているときは、前記待ち時間tの時間自己へ供給される樹脂原料の投入を待ち、
前記待ち時間t経過後、再び前記一つのフィーダおよび前記他のフィーダを除く残りのフイーダへの樹脂原料の投入開始を判断し、自己への供給される樹脂原料の投入が前記残りのフィーダへの樹脂原料の投入に重畳・接近しないよう、以下同様に別のフィーダーへの樹脂原料の投入開始についての有無を判断する、ことを特徴とする熱可塑性樹脂原料を複数のフィーダを用いて二軸押出機に供給する方法とした。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば各フィーダへ投入それる原料が複数箇所で重なることがなく、原料を投入したフィーダが安定してから他のフィーダの原料投入が行なわれるようになり、押出機以降のライン圧力の変動幅が小さくなり成形するシート等の厚み精度が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図1により説明する。二軸押出機20は、ロスインウエイト式フィーダ21、22および23により、それぞれ重合パウダと低嵩密度の再生品および添加材を専用に重量Qfa、QfbおよびQfcを正確に測りながら二軸押出機20の樹脂供給口24に投入するようにしてある。また、二軸押出機20を構成する加熱バレル内には主モータ25により回転自在に駆動される二軸スクリュ26が設けてある。
【0009】
従って、二軸押出機20に導入された熱可塑性樹脂原料27は、二軸押出機20の加熱バレルに設けた加熱装置と二軸スクリュ26の回転によるせん断熱とにより溶解され、混練され二軸押出機20の先端側(図中右方向)へ移送され、ベント部28で真空ポンプ29により溶融樹脂内のポリマ等の余分な揮発分を抜いた後、先端から押出されてギャポンプ30に送り込まれ、昇圧、定量吐出した後、スクリーン31を経てTダイ32へ送込まれ、シートやフイルム等の製品33となる。
【0010】
ロスインウエイト式フィーダ21、22および23は、それぞれ予め定められたホッパ内の樹脂原料貯蓄量の下限値になると、図示してない供給系の制御装置からそれぞれのフィーダへの信号が発信され、ロスインウエイト式フィーダ21、22および23に作用して、予め定められた重量Qfa、QfbおよびQfcを各フィーダ21、22および23に投入するようにしてある。このとき樹脂原料の投入信号は、それぞれのロスインウエイト式フィーダ21、22および23に互に重ならないように、あるいは接近しないように、発信される。この投入信号の発信の制御は、ある一つのフイーダへ樹脂原料が投入されると、予め定めた時間に他のフィーダへの樹脂原料投入信号の要求があっても、投入信号を発しないように、判断の条件を用いて行なわれる。この判断の条件は、簡単には、投入開始からの所定の時間に他のフィーダの信号が発せられないかを調べればよい。あるいは、樹脂原料の投入開始を感知するセンサ信号を検知する条件としても良い。 さらに、既にあるフィーダへの樹脂原料の投入されていたときは、同じのあるいは、接近した投入とならないように、投入のタイミングをずらし、所定の値に設定された待ち時間を使用する。このようにして、投入タイミングをずらすよう、待つことがされる。
さらに、この信号の待ち時間tは、この実施例の構成の機械においては、二軸押出機内に樹脂原料の留まる原料平均滞留時間をTとすると、t>0.3Tが好適であることが発明者の実験により確認されている。
【実施例】
【0011】
次に本発明の樹脂原料供給方法を用いた二軸押出機と従来方法によるテスト結果を下記に示す。
樹脂原料;PP重合パウダ、複合した添加剤(安定剤、中和剤、帯防等)、フラフ(0.22g/cc)
スクリュ回転数NS;280min−1
平均滞留時間T;30sec
各フィーダの樹脂原料投入の待ち時間t;15(0.5T)
で二軸押出機のヘッド部における溶融された樹脂の圧力の変動幅を測定した結果、図2に示すようなグラフが得られた。
従来方法においてはA、B、Cに見られるような不安定部があるのに比べ、本発明方法を摘要したときは、溶融された樹脂の圧力安定している様子が明らかであり、したがって本発明方法と従来方法の間には相異があり、本願発明の効果がることが判明した。
【0012】
この発明の原料供給方法を用いることにより、従来方法と比較し圧力の変動幅の少ない、従って厚み精度を高めた良品質な熱可塑性樹脂原料のシート等の成形が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明による熱可塑性樹脂原料のシート等の成形方法が適用される概要を示す説明面図である。
【図2】この発明による原料供給方法と従来方法によるヘッド部における圧力の変動幅テスト結果を示すグラフである。
【図3】従来の熱可塑性樹脂原料のシート等の成形方法を示す概要説明面図である。
【符号の説明】
【0014】
20 二軸押出機
21、22、23 ロスインウエイト式フィーダ
24 樹脂供給口
25 主モータ
26 二軸スクリュ
27 熱可塑性樹脂原料
28 ベント部
29 真空ポン
30 ギャポンプ
31 スクリーン
32 Tダイ
33 製品(シート等)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合パウダ、低嵩密度再生品、および添加材等を樹脂原料とし、これら樹脂原料を複数のロスインウエイト式のフィーダにより二軸押出機に供給するに際し、前記フィーダの一つが、自己への樹脂原料の投入にあたり、他のフィーダへの樹脂原料の投入タイミングに重畳・接近しないよう判断し、
他のフィーダへの原料樹脂の投入タイミングと重畳・接近したときは、所定の時間待って、自己への原料樹脂の投入を開始する、
ことを特徴とする熱可塑性樹脂原料を複数のフィーダを用いて二軸押出機に供給する方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記投入タイミングの重畳・接近の判断には、他のフイーダへの樹脂原料投入開始の信号、または樹脂原料の存在を検知する信号を用いて判断し、樹脂原料の投入に際し所定のタイミングをずらした、
ことを特徴とする熱可塑性樹脂原料を複数のフィーダを用いて二軸押出機に供給する方法。
【請求項3】
重合パウダ、低嵩密度再生品、および添加材等を樹脂原料とし、これら樹脂原料をロスインウエイト式のフィーダにより二軸押出機に供給するに際し、前記二軸押出機内に樹脂原料の留まる原料平均滞留時間をTとし、前記フィーダへの樹脂原料を投入するタイミングの待ち時間をtとしたとき、
前記待ち時間tについて、t>0.3Tとし、
前記フィーダの一つが自己へ供給される原料樹脂を投入するにあたり、他のフィーダへの樹脂原料投入開始を判断し、
他のフィーダへの樹脂原料の投入が開始されていないときは、自己への樹脂原料の投入を開始し、
他のフィーダへの樹脂原料の投入を開始しているときは、前記待ち時間tの時間自己へ供給される樹脂原料の投入を待ち、
前記待ち時間t経過後、再び前記一つのフィーダおよび前記他のフィーダを除く残りのフイーダへの樹脂原料の投入開始を判断し、
自己への供給される樹脂原料の投入が前記残りのフィーダへの樹脂原料の投入に重畳・接近しないよう、以下同様に別のフィーダーへの樹脂原料の投入開始についての有無を判断する、
ことを特徴とする熱可塑性樹脂原料を複数のフィーダを用いて二軸押出機に供給する方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−272555(P2006−272555A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90315(P2005−90315)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構からの補助金を受けた委託事業「製造工程省略による省エネ型プラスチック製品製造技術開発の開発事業」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】