説明

熱可塑性樹脂組成物及び成形体

【課題】 長残光性と紫外線や可視光線の励起による青色〜青緑色〜緑色発光特性に優れ、加工時の熱安定性や成形品の色相に優れ、機械的強度、耐熱性、及び耐湿熱性に優れた成形体を製造するのに有用な熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂(A成分)100質量部に対し、母体が酸化物組成で、下記式(1)で表されるEu、Ln賦活珪酸塩蛍光体を0.1〜50質量部、及びこの蛍光体に対し0.5〜13質量%の下記式(2)で表される有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物を含有する熱可塑性樹脂組成物。
m(Sr1-a1aO)・n(Mg1-b2O)・2(Si1-cGec2):EuLn・・(1)
(式中、M1はCa又はBa、M2はBe、Zn又はCd、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、B、Al、Ga、In、Tl、Sb、Bi、As、P、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Cr又はMnから選択された1種以上の元素を表す。a、b、c、m及びnは下記の数を表す。)
0≦a≦0.8
0≦b≦0.2
0≦c≦0.2
1.5≦m≦3.5
0.5≦n≦1.5
(R1O)pSiR24-p ・・・(2)
(式中、R1、R2は共に有機基を表し、pは1〜4の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形体に関する。さらに詳しくは、成形加工時の熱安定性や成形品の色相・蛍光発光時の色相に優れた熱可塑性樹脂組成物、及び該樹脂組成物からなる電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、交通標識、サインボード、スクリーン等の成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、無機ガラスに比較して軽量で、着色性や成形体の形状の自由度が高く、生産性にも優れているという特徴を有するので、幅広い用途がある。中でも、ポリカーボネート樹脂は、熱可塑性樹脂の前記諸特徴に加え、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、透明性にも優れているので、種々の分野で使用されている。ポリカーボネート樹脂は、この特徴を生かし、さらに視認性を向上させることにより、電飾看板、照明ディスプレイ、交通標識、サインボード、スクリーンなどとしても好適に使用されている。
【0003】
従来から、熱可塑性樹脂の視認性を向上させる方法として、蛍光体(発光顔料)を混合することが知られている。然しながら蛍光体は一般に硬度が高く、合成樹脂と蛍光体の混合の際には混合機の表面を摩耗させ、さらに、押出機で溶融混練する際にはバレルやスクリュー表面を摩耗させる。そしてこの摩耗により発生した金属片が樹脂に混入するため、樹脂組成物が褐色ないし黒色にくすむことが多く、商品価値を著しく低下させるという問題があった。この問題を解決する方法として、特許文献1には、優れた長残光性を有し、かつ樹脂と混練して得られる樹脂組成物に黒ずみを生じさせない蓄光性蛍光体として、アルカリ土類アルミン酸塩を母体結晶とし、希土類元素を賦活剤とする特定粒子径の蓄光性蛍光体が提案されている。また、特許文献2には、加工時の熱安定性や色相に優れ、発光性能を効果的に発揮する樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂と特定粒子径のアルミン酸塩系蛍光体からなる樹脂組成物が提案されている。しかし、いずれの樹脂組成物も、黒ずみ(色相)の改良効果は未だ十分とはいえない。さらに、特許文献3には、メルトフロー安定性を示し、押出機での配合時に灰色化(黒ずみ)をあまり生じない樹脂組成物として、熱可塑性樹脂と、式M−Al(式中、Mはカルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される1種以上の金属元素であり、Alはアルミン酸基である)で表されるアルミン酸塩マトリックスを有する蛍光体をシリコーンオイルでコーティングしたものからなる熱可塑性樹脂組成物が提案されている。しかし、長時間残光性と青色〜青緑色〜緑色までの蛍光特性に優れた樹脂組成物は未だ提案されていない。特許文献4には長時間残光性と青色〜青緑色〜緑色までの蛍光特性に優れた蛍光体として、母体が酸化物組成で下記式(1)で表される珪酸塩蓄光性蛍光体が提案されている。
m(Sr1-a1O)・n(Mg1-b2O)・2(SiGe1-c2):EuLn・(1)
(式中、M1はCa及びBaから選択された1種以上の元素、M2はBe、Zn及びCdから選択された1種以上の元素、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、B、Al、Ga、In、Tl、Sb、Bi、As、P、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Cr及びMnから選択された1種以上の元素を示す。a,b,c,m,及びnは下記の数をしめす。
0≦a≦0.8
0≦b≦0.2
0≦c≦0.2
1.5≦m≦2.5
0.5≦n≦1.5
また、特許文献5には、上記の組成において、2.5≦m≦3.5の蛍光体も上記の蛍光体とほぼ同様の特性を有することが記載されている。然しながら、これらの蛍光体は、本発明者らの検討によると、熱可塑性樹脂、特に蛍光体を含む樹脂組成物に常用されているポリカーボネート樹脂と混合して、加熱溶融すると、ポリカーボネート樹脂を著しく劣化させる。また得られる樹脂組成物の色相も満足すべきものではない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−209753号公報
【特許文献2】特開2005−82647号公報
【特許文献3】特表2005−528510号公報
【特許文献4】特開平9−194833号公報
【特許文献5】特開平9−241631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、蛍光体を含有していて紫外線や可視光線の励起により長残光性と青色〜青緑色〜緑色の発光特性に優れ、加工時の熱安定性や成形品の色相に優れ、機械的強度、耐熱性、及び耐湿熱性に優れた成形体を製造するのに有用な熱可塑性樹脂組成物を提供すること、ならびに該樹脂組成物からなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の珪酸塩蛍光体に代表される酸化物組成を有する蛍光体を、熱可塑性樹脂と混合して加熱溶融する際の樹脂の劣化を防止する方法について検討した結果、熱可塑性樹脂にこの珪酸塩蛍光体、並びに有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物を配合してなる樹脂組成物は、加熱溶融しても樹脂が劣化せず、かつ色相も満足すべきものであることを見出した。
本発明はこの知見に基づき完成されたもので、その要旨は熱可塑性樹脂(A成分)100質量部に対し、母体が酸化物組成で下記式(1)で表されるEu、Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分)を0.1〜50質量部及びB成分に対し0.5〜13質量%の下記式(2)で表される有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物(C成分)を含有してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に存する。
m(Sr1-a1O)・n(Mg1-b2O)・2(Si1-cGec2):Eu、Ln・・(1)
(式中、M1はCa及びBaから選択された1種以上の元素、M2はBe、Zn及びCdから選択された1種以上の元素、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、B、Al、Ga、In、Tl、Sb、Si、As、P、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Cr及びMnから選択された1種以上の元素を表す。a、b、c、m及びnは下記の数を表す。)
0≦a≦0.8
0≦b≦0.2
0≦c≦0.2
1.5≦m≦3.5
0.5≦n≦1.5
(R1O)pSiR24-p ・・・(2)
(式中、R1及びR2は共に有機基を表し、pは1〜4の整数を表す。)
また、本発明の他の要旨は、上記の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に存する。本発明の更に他の要旨は、B成分の表面にC成分を付着させたものとA成分とを溶融混練する上記の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加工時の熱安定性や成形品の色相に優れ、長残光性と青色〜青緑色〜緑色の発光特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。該樹脂組成物からなる成形体は、色相及び発光特性に優れると共に、機械的強度、耐熱性、耐湿熱性(湿熱による色相の変化が少ない)に優れているので、電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、照明器具カバー、交通標識、サインボード、スクリーン、反射板やメーター部品等の自動車部品、OA機器部品などとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
熱可塑性樹脂(A成分):
本発明で用いる熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂等のスチレン系樹脂;PMMA樹脂等のメタクリル系樹脂;ポリオキシメチレン(ポリアセタール)樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD等のポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂、又は2種類以上のこれらの熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイを挙げることができる。中でも、耐衝撃性等の機械的強度、耐熱性、寸法安定性等に優れたポリカーボネート樹脂、及びポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂からなるポリマーアロイが好ましい。ポリマーアロイの中では、機械的強度、寸法安定性及び成形性に優れたポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂のアロイ並びに機械的強度、耐薬品性及び成形性に優れたポリカーボネート樹脂とポリエステル系樹脂のアロイが特に好ましい。
【0009】
本発明で(A成分)として、好ましく用いられるポリカーボネート樹脂としては特に制限されず、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートのいずれも用いることができる。中でも芳香族ポリカーボネート特に芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体がより好ましい。
【0010】
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、ジヒドロキシ化合物の一部として、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、又はシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーもしくはオリゴマー等を併用すると、難燃性の高いポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0011】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A成分)の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用したポリカーボネート樹脂が挙げられる。本発明では、A成分として、2種以上のポリカーボネート樹脂を併用してもよい。
【0012】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A成分)の分子量は、通常は溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、14,000〜30,000である。好ましくは分子量が15,000〜28,000のものを用いる。粘度平均分子量がこの範囲であると、一般に成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形品を与える樹脂組成物が得られる。ポリカーボネート樹脂の最も好ましい分子量範囲は16.000〜26,000である。
【0013】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネートに、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂を使用するのも好ましい。
【0014】
さらに、本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A成分)は、バージン原料としてのポリカーボネート樹脂のみならず、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂、であってもよい。このようなポリカーボネート樹脂としては、光学ディスクなどの光記録媒体、導光板、自動車窓ガラスや自動車ヘッドランプレンズ、風防などの車両透明部材、水ボトルなどの容器、メガネレンズ、防音壁やガラス窓、波板などの建築部材などから再生したものが挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂から成形品を製造する際の不合格品、スプルー、ランナーなどから再生したポリカーボネート樹脂も使用可能である。
【0015】
珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分):
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた残光特性と青色〜青緑色〜緑色までの発光特性を有し、化学的に安定で耐候性に優れた蓄光性蛍光体(B成分)を含有する。本発明で用いる珪酸蓄光性蛍光体(B成分)は、Eu、Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体であって、母体が酸化物組成で下記式(1)で表されるものである。この蛍光体の製法や発光特性等は前記の特許文献4及び5に詳細に記載されている。
m(Sr1-a1O)・n(Mg21-bO)・2(Si1-cGec2):Eu、Ln・・(1)
(式中、M1はCa及びBaから選択された1種以上の元素、M2はBe、Zn及びCdから選択された1種以上の元素、賦活剤LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、B、Al、Ga、In、Tl、Sb、Bi、As、P、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Cr及びMnから選択された1種以上の元素を表し、a、b、c、m及びnは下記の範囲にある。)
0≦a≦0.8
0≦b≦0.2
0≦c≦0.2
1.5≦m≦3.5
0.5≦n≦1.5
上記式(1)で表される珪酸塩蓄光性蛍光体のなかでも、LnがDy、Nd、Tm、Sn、In及びBiから選択された1種以上の元素である蛍光体が好ましい。珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分)としては、化成オプトニクス(株)より「P170蛍光体」の製品名で販売されている蛍光体を使用できる。
【0016】
本発明で用いる珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分)の粒径は、ISO13320のレーザー法で測定したメジアン粒径(D50値と表示することもある)が70μm未満であるのが好ましい。粒径が70μmを越えると、成形体の引張り破断伸び、衝撃強度、外観等が低下する。粒径が50μm未満、特に35μm未満のものを用いるのが好ましい。粒径の下限は限定的ではないが10μm程度である。蛍光体は一般に粒径が小さ過ぎると発光特性が低下する傾向がある。
【0017】
有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物(C成分):
本発明で用いる有機シラン化合物は下記式(2)で表される。
(R1O)pSiR24-p ・・・(2)
(式中、R1及びR2はいずれも有機基を表し、pは1〜4の整数を表す。)
1及びR2で表される有機基としては、脂肪族、芳香族及び脂環式の各種の炭化水素基が挙げられる。これらの炭化水素基はエチレン性不飽和結合を有していてもよく、また内部にエーテル結合やエステル結合などを含有していてもよく、更にはエポキシ基、アミノ基などの反応性の官能基を有していてもよい。
【0018】
好ましくはR1は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、R2は炭素数6〜12の芳香族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数2〜16のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基、又は炭素数3〜15のエポキシ基を有する炭化水素基である。
【0019】
炭素数6〜12の芳香族若しくは脂環式炭化水素基としては、フェニル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、デシル基などが挙げられ、炭素数2〜16のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基更にはメタクリロキシプロピル基、アクリロシキプロピル基などの内部にエステル結合を有するものが挙げられ、炭素数3〜15のエポキシ基を有する有機基としては、3,4−エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシプロピル基などが挙げられる。
【0020】
本発明で用いる有機シラン化合物(C成分)の具体例としては、トリメチルシラン、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。C成分としては、R1及びR2をそれぞれ1個以上有するものを用いるのが好ましい。また二種以上の有機シラン化合物を混合して用いることもできる。有機シラン化合物として特に好ましいのはR1が炭素数1〜4、R2が炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基であるものである。
【0021】
本発明に用いるシリコーン化合物(C成分)としては、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類、及びオルガノポリシロキサン類のいずれであってもよい。また、その分子量についても特に制限されず、オリゴマー及びポリマーのいずれの群に属するものであってもよい。より具体的には、特公昭63−26140号公報に記載されている式(イ)〜式(ハ)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン類、及び特公昭63−31513号公報に記載されている式で表される炭化水素オキシシロキサン類などが好ましい。C成分として用いるシリコーン化合物は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン類から選択されるのが好ましい。例えば、下記式(3)を繰り返し単位とするポリシロキサン、ならびに式(4)又は(5)で表される化合物を用いるのが好ましい。
式(3)
(R)(H)SiO
上記(3)式中、Rは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、a及びbの合計は2である。
【0022】
式(4)
【0023】
【化1】

【0024】
上記式(4)中、A及びBは各々以下の群から選ばれる基であり、nは1〜500の整数である。
【0025】
【化2】

【0026】
式(5)
【0027】
【化3】

【0028】
上記式(5)中、A及びBは前記式(4)中におけるそれぞれと同義であり、mは1〜50の整数である。
【0029】
シリコーン化合物としては市販品のシリコーンオイル、例えば、SH1107(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製品)を用いることができる。
なお、本発明では、C成分として、2種以上のシリコーン化合物を併用してもよい。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A成分)100質量部に対し、珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分)を0.1〜50質量部及びB成分の0.5〜13質量%に相当する有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物(C成分)を混合してなる樹脂組成物である。B成分の含有量が0.1質量部未満では、発光が弱くなり、50質量部を越えると熱可塑性樹脂組成物の機械的強度や熱安定性が低下する。B成分の好ましい含有量は0.5〜20質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、C成分の含有量がB成分の含有量の0.5質量%未満であると、熱可塑性樹脂組成物の熱安定性が低下し、さらに、機械的強度、色相、耐熱性及び耐湿熱性も低下する。逆にC成分の含有量が13質量%を越えると溶融混練時にガスが発生し、モールドデポジットの原因となりやすい。C成分の好ましい含有量は、B成分の1〜10質量%である。なお、一般に有機シラン化合物よりもシリコーン化合物の方が少量で効果を発現するので、C成分としてシリコーン化合物を用いる場合には、B成分に対し1〜6質量%が好ましい。C成分はB成分の表面の活性点を被覆して樹脂が活性点と接触して劣化するのを防止する作用を奏するものと思われる。
【0031】
他の添加剤:
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、難燃剤、滴下防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤及び着色剤などが挙げられる。
【0032】
難燃剤:
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、難燃性を付与するために難燃剤を添加するのが好ましい。難燃剤としては、組成物の難燃性を向上させるものであれば特に限定されないが、リン酸エステル化合物及び有機スルホン酸金属塩が好適である。リン酸エステル化合物としては、例えば、下記式(6)で表される化合物が好ましい。
【0033】
【化4】

【0034】
式(6)中、R1、R2、R3及びR4は互いに独立して、置換されていてもよいアリール基を示し、Xは置換基を有していても良い2価の芳香族基を示す。nは0〜5の数を示す。
上記式(6)においてR1〜R4で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。またXで示される2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基や、ビスフェノールから誘導される基等が挙げられる。これらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。nが0の場合はリン酸エステルであり、nが0より大きい場合は縮合リン酸エステル(混合物を含む)である。
【0035】
具体的には、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮合体などを例示できる。かかる成分として好適に用いることができる市販品としては、例えば、大八化学工業(株)より、「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、旭電化工業(株)より「FP500」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))といった商品名で販売されているものが挙げられる。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における難燃剤用のリン酸エステル化合物の含有量は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し1〜50重量部であるのが好ましく、3〜40重量部であるのがより好ましく、5〜30重量部であるのがさらに好ましい。難燃剤用リン酸エステル化合物の含有量が前記範囲であると、難燃性があり、且つ耐熱性も良好な樹脂組成物となるので好ましい。
難燃剤用の有機スルホン酸金属塩としては、好ましくは脂肪族スルホン酸金属塩及び芳香族スルホン酸金属塩等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。有機スルホン酸金属塩は、2種以上の塩を混合して使用することもできる。
【0037】
脂肪族スルホン酸塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。フルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウムなどが挙げられる。
【0038】
また、芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4′−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4′−ジブロモフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4′−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
【0039】
これらの有機スルホン酸金属塩の含有量は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、0.01〜5重量部であるのが好ましく、0.02〜3重量部であるのがより好ましく、0.03〜2重量部であるのがさらに好ましい。難燃剤用有機スルホン酸金属塩の含有量が前記範囲であると、難燃性があり、且つ熱安定性が良好な樹脂組成物となるので好ましい。
【0040】
滴下防止剤:
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、燃焼時の滴下防止を目的として、滴下防止剤を添加してもよい。滴下防止剤の好ましい例として、フッ素樹脂が挙げられる。より具体的には、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体等のフルオロエチレン構造を含む重合体及び共重合体である。中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。その平均分子量は、500,000以上であるのが好ましく、500,000〜10,000,000であるのがより好ましい。
【0041】
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTN規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、テフロン(登録商標)6−J(三井・デュポンフロロケミカル(株)製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業(株)製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製)等が挙げられる。また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス(株)製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
【0042】
滴下防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、0.05〜2重量部であるのが好ましく、0.1〜1重量部であるのがより好ましい。滴下防止剤の含有量が前記範囲であると、成形品の外観を損なうことなく、滴下防止性が良好となるので好ましい。
【0043】
熱安定剤
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、熱安定性を向上させるために熱安定剤を添加するのが好ましい。好ましい熱安定剤としては、亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系熱安定剤が好ましい。亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
【0044】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニルホスフォナイト等が挙げられる。
【0045】
上記のリン系熱安定剤の中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、中でもビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。なお、熱安定剤は、単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、通常0.005〜0.2重量部程度であるのが好ましく、0.01〜0.1重量部であるのがより好ましい。熱安定剤の含有量が前記範囲であると、加水分解等を発生させることなく、熱安定性を改善できるので好ましい。
【0047】
酸化防止剤:
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤を添加するのが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、より具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、及び3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,6]ウンデカン等が挙げられる。中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。これらの酸化防止剤は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0048】
酸化防止剤の含有量は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、200〜5000ppm程度であるのが好ましい。前記範囲であると、本発明の効果を阻害せずに、酸化防止性を改善できるので好ましい。
【0049】
紫外線吸収剤
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。本発明の樹脂組成物から成る成形品は、太陽光や蛍光灯のような光線下に長期間曝されると、紫外線によって黄色味を帯びる傾向があるが、紫外線吸収剤を添加することで、成形品が黄色味を帯びるのを、防止又は遅延させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
【0050】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0051】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルメチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラブチル)フェノール]等が挙げられる。
【0052】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤の具体例としては、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリ−ブチルフェニル−3,5−ジターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。ヒンダードアミン系紫外線吸収剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
【0053】
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対して、0.01〜2重量部であるのが好ましく、0.05〜1.5重量部であるのがより好ましく、0.1〜1重量部であるのがさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲であると、調色性及び珪酸塩蓄光性蛍光体の励起光吸収による発光輝度の低下が生じず、且つ成形品表面にブリードアウト等を発生させずに、耐候性を改善できるので好ましい。
【0054】
離型剤:
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、離型剤を含有するのが好ましい。好ましい離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、及び数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる化合物である。中でも、脂肪族カルボン酸、及び脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる化合物が好ましく用いられる。
【0055】
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0056】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。離型剤は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0057】
離型剤の含有量は、熱可塑性樹脂(A成分)100重量部に対し、0.01〜1重量部であるのが好ましい。離型剤の含有量が前記範囲であると、耐加水分解性の低下がなく、離型効果が得られるので好ましい。
【0058】
着色剤:
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、より視認性を高めるために着色剤を添加することが好ましい。使用可能な着色剤としては、無機顔料、有機顔料、有機染料等が挙げられる。無機顔料としては、例えばカーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料、群青等の珪酸塩系顔料、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料、黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料、紺青等のフェロシアン系顔料等が挙げられる。有機顔料及び有機染料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料、ニッケルアゾイエロー等のアゾ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料、アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等が挙げられる。
【0059】
着色剤の含有量の好ましい範囲は、3重量部以下であるのが好ましく、1重量部以下であるのが好ましく、0.3重量部以下であるのがさらに好ましい。該着色剤は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、上記成分のほかに、無機フィラー、有機又は無機の微粒子状光拡散剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などを配合できる。これらは、一種類でも二種類以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来から知られている方法で混合し、溶融混練することにより製造できる。具体的な混合方法としては、熱可塑性樹脂(A成分)、珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分)、有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物(C成分)、及び必要に応じて配合される添加成分を所定量秤量し、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用いて混合する方法があげられる。中でも、B成分とC成分を予め混合してB成分の表面にC成分を含有させた後、A成分及び必要に応じて配合される添加成分を混合する方法が、B成分の表面活性を効果的に抑制し、熱可塑性樹脂組成物中で不必要な副反応を生じさせないという観点から、より好ましい混合方法である。特に好ましいのは有機シラン化合物を溶媒に溶解した溶液とB成分とを混合し、次いで溶媒を蒸発させてB成分の表面にC成分を被覆したものと、A成分及び必要に応じて配合される添加成分を混合する方法である。上記方法で各成分を予め混合した後、溶融混練する方法としてはバンバリーミキサー、ロール、プラペンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどを使用する方法が挙げられる。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種製品(成形品)の製造(成形)用樹脂材料として使用される。成形方法は、熱可塑性樹脂材料から成形品を成形する従来から知られている方法が、制限なく適用できる。具体的には、一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシストなどの中空成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、インモールドコーティング(IMC)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などが挙げられる。
【0063】
本発明では、有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物(C成分)が、珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分)の存在によって促進される熱可塑性樹脂の加工時の熱分解を抑制し、機械的強度及び耐熱性を改善するとともに、加熱による色相の変化を軽減している。熱可塑性樹脂の熱分解の程度は、流動性の変化、すなわち、メルトインデックス(MI)やQ値の変化によって知ることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物のQ値は、B成分及びC成分を含有しない標準樹脂組成物(A成分及びその他の添加剤の種類及び配合割合は同一)のQ値(Q0)に対して、Q0+100%以内であるのが好ましく、Q0+70%以内であるのがより好ましく、ほぼ等しいのがさらに好ましい。
なお、Q値は、高化式フローテスター(島津製作所製)を使用して、温度280℃、荷重160kgf/cm2の条件下で、乾燥したペレット状の樹脂組成物について、単位時間あたりの流出量として測定される値とする。この際使用するオリフィスは、直径1mm×長さ10mmとする。
【実施例】
【0064】
以下に本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、配合量は質量部を意味する。また、実施例及び比較例において使用した樹脂組成物の構成成分は、次のとおりである。
(A−1)
芳香族ポリカーボネート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品「商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000F」、粘度平均分子量 22,000
(A−2)
ABS樹脂:アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、日本エイアンドエル(株)製品「商品名:サンタック(登録商標)AT−08」、ブタジエン含有量17質量%、AN比=25質量%
(A−3)
ポリブチレンテレフタレート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品「商品名:ノバデュラン(登録商標)5008」、極限粘度 0.85dl/g
(B−1)
珪酸塩蓄光性蛍光体1:青色発光蓄光顔料、化成オプトニクス(株)製「商品名:P170蛍光体」平均粒径31μm
(B−2)
珪酸塩蓄光性蛍光体2:乳酸「和光純薬工業(株)製、試薬」0.3質量%を、イオン交換水20gに溶解した水溶液に、下記の有機シラン化合物2(C−2)を6g添加・撹拌して水分散液を得た。次に、1Lのビーカーに、上記珪酸塩蓄光性蛍光体1(B−1)100gを仕込み、マグネットスターラーで撹拌しながら、シラン化合物2の水分散液を添加した。次いで、100℃のホットプレート上で撹拌・混合を続け、水溶液を蒸発させることにより、シラン化合物2で表面処理された、珪酸塩蓄光性蛍光体(B−2)成分を得た。
(C−1)
シラン化合物1:メチルトリメトキシシラン、純正化学(株)製、試薬
(C−2)
シラン化合物2:デシルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製「商品名:KBM3103」
(C−3)
シリコーンオイル:メチル水素シロキサン、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製「商品名:SH1107」
(D)
熱安定剤:クレジルジフェニルホスフェート、大八化学工業(株)製、「商品名:CDP」
(E)
離型剤:ペンタエリスリトールテトラステアレート、日本油脂(株)製、「商品名:ユニスターH476」
(F)
アルミン酸塩蓄光性蛍光体:緑色発光蓄光顔料、根本特殊化学(株)製、「商品名:ルミノーバG−300M」 平均粒径29μm
【0065】
[実施例1〜5及び比較例1〜4]
熱可塑性樹脂及び各種添加剤を、表−1に示す割合で、タンプラーで20分間混合した。混合に当たってはB成分とC成分を予め混合、その後A成分その他と混合する方法を用いた。得られた組成物をスクリュー径40mmのベント付き単軸押出機(いすず化工機社製「SV−40」)により、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数70rpmで混練し、ストランドとして押出した。押出されたストランドを切断してペレットを作製した。
得られたペレットを120℃、5時間乾燥後、射出成形機(名機製作所製「M150AII-SJ」)にて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、各種ASTM試験片及び3mm厚の平板を作製した。これを試験片として用い下記の評価を行った。
【0066】
[参考例]
芳香族ポリカーボネート樹脂に珪酸塩蓄光性蛍光体を添加しなかった他は、実施例及び比較例と同様な方法により各種ASTM試験片及び3mm厚の平板を作製し、後述の流動性(Q値)、耐衝撃製、耐熱老化試験、耐湿熱試験の指標として用いた。参考例に対するQ値の上昇は、ポリカーボネート樹脂の分子量低下を意味する。
評価結果を表−1に示す。
【0067】
評価方法:
(1)流動性(Q値)(単位:×10-2cc/s):
高化式フローテスター(島津製作所製)を使用して、温度280℃、荷重160kgf/cm2の条件下で、乾燥したペレット状の樹脂組成物について、単位時間あたりの流出量Q値を測定した。ただし、実施例2と比較例3については温度240℃で測定した。この際使用したオリフィスは、直径1mm×長さ10mmのものである。
(2)耐衝撃性(アイゾット衝撃強度)(単位:J/m):
ASTM D256に準拠して、厚さ3.2mmのノッチ付き試験片について、23℃の温度でアイゾット衝撃強度(単位:J/m)を測定した。数値が大きいほど、耐衝撃性が優れていることを意味する。
(3)全光線透過率:
JIS K−7105に準じ、3mm厚の平板を試験片とし、日本電色工業(株)製、NDH−2000型ヘイズメーターで測定した。
(4)L値、YI値:
JIS K−7105に準じ、3mm厚の平板を試験片とし、日本電色工業(株)製のSE2000型分光式色彩計で、反射法により測定した。
(5)耐熱老化試験:
試験片を130℃の空気雰囲気中で500時間保存し、この保存前後のYI値の変化をΔYIとして算出し、耐熱性の指標とした。ただし、実施例2と比較例3については100℃で保存した。
(6)耐湿熱性試験:
プレッシャークッカー試験機((株)平山製作所製、HASTEST,MODEL PC−SIII)にて、試験片を120℃、圧力1kg/cm2、湿度100%の水蒸気雰囲気中で100時間処理し、試験片の変形の有無を観察して耐加水分解性の指標とした。これらの試験結果を表1に示す。
【0068】
表−1に示す結果から、実施例1、4及び5は、参考例と同等のQ値を示し、分子量低下によるQ値の上昇がないが、有機シラン化合物を含有しない比較例1では、分子量低下によって、Q値が上昇している。
その結果、実施例1及び4は、比較例1と比較して、耐衝撃性、色相、耐熱老化特性及び耐湿熱特性のいずれも優れている。
【0069】
また、アルミン酸塩蓄光性蛍光体を含有する比較例2は、珪酸塩蓄光性蛍光体を含有する実施例1、4及び5と比較して、Q値が大きく、かつ耐衝撃性、色相、耐熱老化性のいずれも劣っている。特許文献1〜3で熱可塑性樹脂組成物に含有させているアルミン酸塩蛍光体に比較して、本発明で用いる珪酸塩蛍光体が物性の優れた熱可塑性樹脂組成物を与えることは、驚くべきことである。
【0070】
更に、実施例2は比較例3と比較してQ値が小さく、かつ耐衝撃性、色相、耐熱老化特性のいずれも優れており、実施例3も、比較例4と比較してQ値が小さく、かつ耐衝撃性、色相、耐熱老化特性及び耐湿熱特性のいずれも優れていることから、有機シラン化合物又はシリコーン化合物(C成分)を含有させることにより、熱可塑性樹脂組成物の特性が向上することが明らかである。
【0071】
本発明によれば、電飾看板、液晶バックライト、照明ディスプレイ、交通標識、サインボード、及びスクリーンなどの成形体の製造に利用可能な熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A成分)100質量部に対し、母体が酸化物組成で下記式(1)で表されるEu、Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分)を0.1〜50質量部、及び下記式(2)で表される有機シラン化合物及び/又はシリコーン化合物をB成分に対し0.5〜13質量%含有してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
m(Sr1-a1O)・n(Mg1-b2O)・2(Si1-cGec2):Eu,Ln・・(1)
(式中、M1はCa及びBaから選択された1種以上の元素、M2はBe、Zn及びCdから選択された1種以上の元素、LnはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、B、Al、Ga、In、Tl、Sb、Bi、As、P、Sn、Pb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Cr及びMnから選択された1種以上の元素を表す。a、b、c、m及びnは下記の数を表す。)
0≦a≦0.8
0≦b≦0.2
0≦c≦0.2
1.5≦m≦3.5
0.5≦n≦1.5
(R1O)pSiR24-p ・・・(2)
(式中、R1及びR2は有機基を表し、pは1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
A成分がポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイであることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
B成分の賦活剤であるLnが、Dy、Nd、Tm、Sn、In及びBiから選択された1種以上の元素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
C成分の有機シラン化合物が下記式(3)で表されるものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(R1O)pSiR24-p ・・・(3)
(式中、R1は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R2は炭素数6〜12の芳香族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数2〜16のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基、又は炭素数3〜15のエポキシ基を有する炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表す。)
【請求項5】
ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイである熱可塑性樹脂(A成分)100質量部に対し、母体が酸化物組成で下記式(4)で表されるEu、Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分)を0.5〜20質量部及び下記式(5)で表される有機シラン化合物をB成分に対し1〜10質量%含有してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
m(Sr1-a1O)・n(Mg1-b2O)・2(Si1-cGec2):Eu,Ln・・(4)
(式中、M1はCa及びBaから選択された1種以上の元素、M2はBe、Zn及びCdから選択された1種以上の元素、LnはDy、Nd、Tm、Sn、In及びBiから選択された1種以上の元素を表し、a、b、c、m及びnは下記の数を表す。)
0≦a≦0.8
0≦b≦0.2
0≦c≦0.2
1.5≦m≦3.5
0.5≦n≦1.5
(R1O)pSiR24-p ・・・(5)
(式中、R1は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を表し、R2は炭素数6〜12の芳香族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数2〜16のエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基又は炭素数3〜15のエポキシ基を有する炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表す。)
【請求項6】
ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイである熱可塑性樹脂(A成分)100質量部に対し、母体が酸化物組成で下記式(6)で表されるEu、Ln賦活珪酸塩蓄光性蛍光体(B成分)を0.5〜20質量部及びシリコーン化合物をB成分に対して1〜6質量%含有してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
m(Sr1-a1O)・n(Mg1-b2O)・2(Si1-cGec2):Eu、Ln・・(6)
(式中、M1はCa及びBaから選択された1種以上の元素、M2はBe、Zn及びCdから選択された1種以上の元素、LnはDy、Nd、Tm、Sn、In及びBiから選択された1種以上の元素を表し、a、b、c、m及びnは下記の数を表す。)
0≦a≦0.8
0≦b≦0.2
0≦c≦0.2
1.5≦m≦3.5
0.5≦n≦1.5
【請求項7】
B成分の表面にC成分を付着させたものとA成分とを溶融混練してなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を溶融成形してなる成形体。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、B成分の表面にC成分を付着させたものとA成分とを溶融混練することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、C成分を溶媒に溶解してなる溶液とB成分とを混合し、得られた混合物から溶媒を留去することにより、B成分の表面にC成分を付着させたものとA成分とを溶融混練することを特徴とする方法。

【公開番号】特開2009−215415(P2009−215415A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59943(P2008−59943)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】