説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】 生分解性樹脂を含む樹脂組成物の耐衝撃強度、耐熱性、加工性のバランス改良および該成型物のウエルド外観改良。
【解決手段】 生分解性樹脂(A)1〜89重量%、ゴム強化スチレン系樹脂(B)98〜10重量%および塊状重合法、懸濁重合法または溶液重合法により製造されたエポキシ基含有スチレン系重合体0.5〜40重量%、必要に応じて(D)(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(C)0.5〜40重量%からなる熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物に関するものである。詳しくは、耐衝撃強度と耐熱性のバランスに優れ、組成物成分の分散性の向上により該成型物のウエルド等の外観を改良した熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球的規模での環境問題として、石油化学製品の使用増加による石油資源の将来性が危ぶまれている。例えば、ポリ乳酸樹脂は植物であるとうもろこしや芋類を原料として得られる乳酸からなる樹脂であり、生分解性を有する一方で上記石油を原料としない環境対応型の樹脂として知られる。しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、その生分解性から、特に高湿度環境下において長期使用に耐え得る耐久性が懸念され、またノッチ付き衝撃強度および、耐熱性に劣るといった欠点がある。
一方、ABS樹脂は、優れた物性バランスおよび成形加工性を有しており、広範な分野に利用されている。
このため、例えば特開2000−327847号公報(特許文献1)には、脂肪族ポリエステル構造を持つ重合体とABS樹脂を含むポリオレフィンを配合して、自然環境の中で崩壊する高分子の改良技術が提案されている。しかしながら、これら組成物は、成形品の成形及び使用において樹脂の崩壊や劣化が危惧されるほか、耐衝撃性等の物性バランス面で必ずしも満足できる材料とは言い難い。
また、特開2004−269720号公報(特許文献2)、特開2005−171204号公報(特許文献3)には、ポリ乳酸とメタアクリル酸エステル系重合体からなる樹脂組成物が提案されているが、耐衝撃性が不十分であり、また十分な耐熱性を得るためには、メタクリル酸エステル系重合体が過剰に必要となり、結果として物性バランスが低下するという問題が発生する。
さらに特開2007−211206(特許文献4)では、ポリ乳酸とABS樹脂の相溶化剤として、ポリメタクリル酸メチルを使用することが提案されているが、ポリ乳酸とABS樹脂の分散性が充分でなく、成型物の外観において充分な結果が得られていない。
また、特開2007−291171(特許文献5)では、ポリ乳酸とABS樹脂の組成物に耐加水分解剤として、ポリ乳酸の末端基と反応する官能基を有する重合体を用いることが提案されているが、成型物の外観改良において十分とはいえない。
【特許文献1】特開2000−327847号公報
【特許文献2】特開2004−269720号公報
【特許文献3】特開2005−171204号公報
【特許文献4】特開2007−211206号公報
【特許文献5】特開2007−291171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、生分解性樹脂とゴム強化スチレン系樹脂とからなる組成物における上記の品質上の問題点の改良について鋭意検討した結果、生分解性樹脂とゴム強化スチレン系樹脂とからなる組成物に特定のエポキシ基含有スチレン系重合体を配合してなる組成物が、また必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を併用してなる組成物が、耐衝撃強度、耐熱性、加工性のバランスに優れ、生分解性樹脂とゴム強化スチレン系樹脂の分散性を改良し、該成型物において外観が良好な樹脂組成物であることを見い出し、本発明に到達したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、生分解性樹脂(A)1〜89重量%、ゴム強化スチレン系樹脂(B)98〜10重量%および塊状重合法、懸濁重合法または溶液重合法により製造されたエポキシ基含有スチレン系重合体(C)0.5〜40重量%、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(C)0.5〜40重量%からなる熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明における生分解性樹脂を含む樹脂組成物は、耐衝撃強度、耐熱性、加工性のバランスに優れ、生分解性樹脂とゴム強化スチレン系樹脂の分散性を改良し、優れた外観の成型物を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物につき詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する生分解性樹脂(A)としては、ポリエステル系の樹脂であり、乳酸ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリエチレンサクシネート、およびポリブチレンサクシネート・カーボネート等のポリアルキレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、乳酸ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンサクシネート・テレフタレート、ポリエチレンサクシネートが好ましい。市販されているこれら生分解性樹脂としては、例えば三井化学(株)製 商品名:レイシア、ユニチカ(株)製 商品名:テラマック、昭和高分子(株)製 商品名:ビオノーレ、BASF社製 商品名:エコフレックス、デュポン社製 商品名バイオマックス、(株)日本触媒製 商品名:ルナーレ、三菱瓦斯化学(株)製 商品名:ユーペック等が挙げられる。
【0007】
また、本発明に用いるゴム強化スチレン系樹脂(B)とは、ゴム状重合体の存在下にスチレン系単量体またはスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体および必要に応じて他の共重合可能な単量体の1種または2種以上とを共重合してなる樹脂である。
ゴム強化スチレン系樹脂(B)を構成することのできるゴム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエンースチレン共重合体、イソプレン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリクロロプレンなどのジエン系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1−非共役ジエン共重合体、またポリブチルアクリレートなどのアクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム、さらにはこれらの2種以上のゴムからなる複合ゴム等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。これらのうち、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0008】
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
スチレン系単量体と共に用いることのできるシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、またスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体と共に用いることのできる他の共重合可能な単量体としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等の不飽和酸系単量体、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体などが挙げられ、それらはそれぞれ一種又は二種以上用いることができる。
【0009】
ゴム強化スチレン系樹脂(B)を構成するゴム状重合体と単量体合計(スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体および他の共重合可能な単量体)との組成比率には制限はないが、組成物の加工性、物性のバランス面、特に耐衝撃性の面より、ゴム状重合体5〜70重量%、単量体合計95〜30重量%であることが好ましい。
また、ゴム強化スチレン系樹脂(B)の重合方法についても特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することができるが、これらのうち、乳化重合法では、重合後の洗浄工程を強化することが好ましく、さらに懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することが好ましい。
【0010】
本発明において用いられるエポキシ基含有スチレン系重合体(C)とは、主に2種類のタイプが挙げられ、1種は、エポキシ基含有ビニル系単量体と、スチレン系単量体またはスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体および必要に応じて他の共重合可能な単量体の1種または2種以上とを共重合してなる樹脂(c−1)である。
スチレン系単量体、スチレン系単量体と共に用いることのできるシアン化ビニル系単量体、およびスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体と共に用いることのできる他の共重合可能な単量体としては、上述のゴム強化スチレン系樹脂(B)で記載のものが挙げられる。またエポキシ基含有ビニル系単量体としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが挙げられる。
また別の種類としては、エポキシ基含有非スチレン系樹脂の主鎖にスチレン系単量体またはスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体および必要に応じて他の共重合可能な単量体の1種または2種以上とをグラフト共重合してなる樹脂(c−2)である。
エポキシ基含有非スチレン系樹脂とは、主に、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、オレフィン系樹脂、脂肪酸ビニルエステル系樹脂、またはそれぞれの共重合体の置換基としてエポキシ基を有する重合体であり、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
グラフト共重合させるスチレン系単量体またはスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体および必要に応じて他の共重合可能な単量体としては、上述のゴム強化スチレン系樹脂(B)で記載のものが挙げられる。
エポキシ基含有スチレン系重合体(C)を構成するエポキシ基含有ビニル系単量体成分とその他の単量体合計(スチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体および他の共重合可能な単量体)との組成比率には制限はないが、物性のバランス面、ゴム強化スチレン系樹脂(B)との親和性から、エポキシ基含有ビニル系単量体成分が1〜20重量%であることが好ましい。
また、エポキシ基含有スチレン系重合体(C)の重合方法については、懸濁重合、塊状重合、溶液重合またはこれらの組み合わせにより製造することが必要である。乳化重合法で得られた重合体では、耐衝撃性、成形物の外観、耐加水分解性が低下するため好ましくない。
【0011】
さらに本発明において必要に応じて用いられるアクリル酸エステル(共)重合体(D)とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体を(共)重合してなる(共)重合体である。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、生分解性樹脂(A)1〜89.5重量%、ゴム強化スチレン系樹脂(B)98.5〜10重量%および塊状重合法、懸濁重合法または溶液重合法により製造されたエポキシ基含有スチレン系重合体(C)0.5〜40重量%、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(D)0.5〜40重量%からなるものであり、この範囲外では樹脂組成物における耐衝撃強度、耐熱性、加工性のバランスが低下するため好ましくない。好ましくは生分解性樹脂(A)1〜69重量%、ゴム強化スチレン系樹脂(B)95〜30重量%エポキシ基含有スチレン系重合体(C)3〜30重量%、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(C)1〜35重量%である。
【0013】
さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と耐熱性のバランスを変更するために、ゴム強化スチレン系樹脂(B)中のゴム重合体の含有濃度の調整を目的とし、スチレン系単量体またはスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体および必要に応じて他の共重合可能な単量体の1種または2種以上とを共重合してなるスチレン系共重合体樹脂(E)を配合することができる。
スチレン系単量体またはスチレン系単量体とシアン化ビニル系単量体および必要に応じて他の共重合可能な単量体としては、上記ゴム強化スチレン系樹脂(B)の構成成分として挙げたものが挙げられ、ゴム強化スチレン系樹脂(B)の構成成分として同様組成でも別の組成でも可能である。さらに耐熱性付与のために、スチレン系単量体としては、α−メチルスチレンが好ましく、またN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系単量体を用いることが好ましい。
またさらに本発明においては、上述の可塑性樹脂組成物100重量部に対し、カルボジイミド基を含有する重合体(F)0.01〜10重量部を配合することが、本発明の目的とする耐衝撃性と耐熱性および高温高湿度環境下での耐久性の面より好ましい。
カルボジイミド基を有する重合体としては、下記多価イソシアナート化合物の1種または二種以上用いた(共)重合体であるポリカルボジミドが挙げられる。多価イソシアナート化合物としては、脂肪族ジイソシアナート、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートおよびこれらのジイソシアネートの変性物が挙げられる。このような多価イソシアネートの具体例としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ピリジンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
また、本発明における熱可塑性樹脂組成物には、上記各成分の他に、その物性を損なわない限りにおいて、その目的に応じて樹脂の混合時、成形時等に安定剤、顔料、染料、補強剤(タルク、マイカ、クレー、ガラス繊維等)、着色剤(カーボンブラック、酸化チタン等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、無機および有機系抗菌剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0015】
本発明における熱可塑性樹脂組成物の混合方法としては、バンバリーミキサー、押出機等公知の混練機を用いる方法が挙げられる。又混合順序にも何ら制限はなく、三成分の一括混練はもちろんのこと、予め任意の二成分を混合した後に残る一成分を混合することも可能である。
【0016】
[実施例]
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0017】
生分解性樹脂(A)
A−1:ポリ乳酸(三井化学(株)社製 LACEA H−400)
【0018】
ゴム強化スチレン系樹脂(B)
ゴム強化スチレン系樹脂:B−1〜B−4を、それぞれ以下の方法により製造した。
B−1:容積が15リットルのプラグフロー塔型反応槽(「新ポリマー製造プロセス」(工業調査会、佐伯康治/尾見信三著)185頁、図7.5(b)記載の三井東圧タイプと同種の反応槽で10段に仕切られたC1/C0=0.955を示すもの。)に10リットルの完全混合槽2基を直列に接続した連続的重合装置を用いて熱可塑性樹脂を製造した。プラグフロー塔型反応槽が粒子形成工程を、第2反応器である1基目の完全混合槽が粒子径調整工程を、第3反応器が後重合工程を構成する。
プラグフロー塔型反応槽にスチレン62.2重量部、アクリロニトリル10.3重量部、エチルベンゼン17.5重量部、日本ゼオン社製Nipol NS310Sを10.0重量部、t−ドデシルメルカプタン0.20重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.055重量部からなる原料を調整し、プラグフロー塔型反応槽に供給した以外は、上記製法と同様におこない、ゴム強化スチレン系樹脂B−1を得た。
【0019】
B−2:上記製法において、スチレン84.3重量部、エチルベンゼン10.5重量部、旭化成社製ジエン55AEを5.2重量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3、3、5−トリメチルシクロヘキサン0.04重量部からなる原料を調整し、プラグフロー塔型反応槽に供給した以外は、上記製法と同様におこない、ゴム強化スチレン系樹脂B−2を得た。
【0020】
B−3:窒素置換した反応器にポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径0.25μ、ゲル含有量90%)50部(固形分)、水150部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.1部、硫酸第2鉄0.001部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部を入れ、60℃に加熱後、アクリロニトリル12.5部、スチレン37.5部およびキュメンハイドロパーオキサイド0.3部からなる混合物を3時間に亘り連続的に添加し、更に60℃で2時間重合した。その後、該ラテックス100重量部(固形分)に対し塩析剤として硫酸マグネシウム3.0重量部を使用して塩析した後、ゴム強化スチレン系樹脂粒子の1.5倍体積の水を加えて攪拌してから脱水して洗浄した後、乾燥し、ゴム強化スチレン系樹脂B−3を得た。
B−4:B−3において、凝固及び洗浄工程を以下のように変更した以外は、B−3と同様にしてゴム強化スチレン系樹脂B−4を得た。すなわち、凝固剤として硫酸1.0重量部を使用して凝固させ、さらにゴム強化スチレン系樹脂粒子の2.5倍体積の水を加えて攪拌してから脱水する洗浄操作を3回繰り返した。
【0021】
エポキシ基含有スチレン系重合体(C)
C−1:スチレン70部、アクリロニトリル25部およびメタアクリル酸グリシジル3部を公知の塊状重合法により重合し、エポキシ基含有スチレン・アクリロニトリル共重合体(C−1)を得た。
C−2:スチレン100部およびメタアクリル酸グリシジル3部を公知の塊状重合法により重合し、エポキシ基含有スチレン共重合体(C−2)を得た。
C−3:懸濁重合法により製造したスチレン・アクリロニトリル・メタクリル酸グリシジル(日油(株)マープルーフ G−1005SA)
C−4:溶液重合法により製造したスチレン・アクリロニトリルグラフト共重合エチレン・メタクリル酸グリシジル(日油(株)製モディパー A−4400)
C−5:スチレン70部、アクリロニトリル25部およびメタアクリル酸グリシジル5部を公知の乳化重合法により重合した。その後、得られた重合体ラテックスを塩析、脱水、乾燥処理し、エポキシ基含有スチレン・アクリロニトリル共重合体(C−5)を得た。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(D)
D−1:ポリメタクリル酸メチル(住友化学(株)製 スミペックスMG−SS)
【0023】
スチレン系共重合体樹脂(E)
E−1:スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体(電気化学(株)製 デンカIP MS−NC)
E−2:スチレン75重量部およびアクリロニトリル25重量部を公知の塊状重合法により共重合を行い共重合体D−2を製造した。
カルボジイミド含有樹脂(F)
F−1:ポリカルボジイミド(日清紡績(株)製カルボジライト LA−1)
【0024】
〔実施例1〜9、比較例1〜5〕
上記、生分解性樹脂(A−1)、ゴム強化スチレン系樹脂(B−1〜4)、エポキシ基含有スチレン系重合体(C−1〜5)、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(D−1)、スチレン系共重合体樹脂(E−1〜2)、およびポリカルボジイミド(F−1)を表1に示す配合割合で混合し、30mmニ軸押出機を用いて220℃で溶融混合し、ペレット化した後、射出成形機にて各種試験片を作成し、物性を評価した結果を表1に示す。なお、それぞれの評価方法を以下に示す。
【0025】
○加工性:ISO 1133に基づきメルトインデックス(220℃、10Kg)を測定した。単位:g/10分。
○耐衝撃性
ISO 179に準拠し、ノッチ付きのシャルピー衝撃値を測定した。
○耐熱性
ISO 75に準拠し、荷重0.45MPaの荷重たわみ温度を測定した。
○耐久性:65℃、95%RHにて湿熱テストを実施し、耐衝撃性の保持率が90%以下になる時間を耐久性能とした。
○ウエルド外観:
2点ゲートの90mm×150mm×3mm(厚)の射出成型品中央部を、目視にてウェルドが確認できないものを○、確認できるものを×とした。
【0026】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明は、生分解性樹脂とゴム強化スチレン系樹脂からなる組成物に、塊状重合法、懸濁重合法または溶液重合法により製造されたエポキシ基含有スチレン系重合体、必要に応じて(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を配合することにより、耐衝撃性と耐熱性のバランスに優れ、および外観においても優れた組成物が得られ、家電分野、建材分野、サニタリー分野等に広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂(A)1〜89.5重量%、ゴム強化スチレン系樹脂(B)98.5〜10重量%および塊状重合法、懸濁重合法または溶液重合法により製造されたエポキシ基含有スチレン系重合体(C)0.5〜40重量%からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
生分解性樹脂(A)1〜89重量%、ゴム強化スチレン系樹脂(B)98〜10重量%、塊状重合法、懸濁重合法または溶液重合法により製造されたエポキシ基含有スチレン系重合体(C)0.5〜40重量%および(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(D)0.5〜40重量%からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム強化スチレン系樹脂(B)が、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、または重合後の洗浄工程を強化した乳化重合法により製造した樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
生分解性樹脂(A)がポリエステル系の生分解性樹脂である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
生分解性樹脂(A)がポリ乳酸である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−197079(P2009−197079A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38388(P2008−38388)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】