説明

熱可塑性重合体ゴム組成物

【課題】卓越した触感と耐磨耗性を有する熱可塑性重合体ゴム組成物の提供。
【解決手段】オレフィン系架橋型熱可塑性エラストマー(A)、芳香族ビニル系ランダム共重合体(B)、及び芳香族ビニル系ブロック共重合体(C)からなる熱可塑性重合体ゴム組成物であって、上記(A)はエチレン・αオレフィン共重合体(A−1)と非架橋性熱可塑性重合体(A−2)とからなる架橋された熱可塑性エラストマーであり、上記(B)はオレフィン性二重結合の水素添加率が50%以上である、共役ジエン系単量体単位10〜49重量%と芳香族ビニル単量体単位51〜90重量%からなるランダム結合を主体とする水素添加共重合体ゴムであり、上記(C)はオレフィン性二重結合の水素添加率が50%以上である、共役ジエン系単量体単位51〜90重量%と芳香族ビニル単量体単位10〜49重量%からなるブロック結合を主体とする水素添加共重合体ゴムであることを特徴とする熱可塑性重合体ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性重合体ゴム組成物に関するものである。更に詳しくは、卓越した触感と耐磨耗性を有する熱可塑性重合体ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性オレフィン系エラストマー等のゴム状重合体とポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性エラストマー組成物は、既に公知の技術であり、自動車部品等の用途に広く使用されている。
このような熱可塑性エラストマー組成物として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)により製造されたオレフィン系エラストマー(下記特許文献1、2を参照。)を用いる動的架橋技術が知られているが、硬度が高いために触感が充分でなく、必ずしも市場では満足されていない。
一方、ゴム特性を改良するための従来技術として、重合型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを用いたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いたフィルム等の成形体(特許文献3〜5を参照。)が知られている。
上記組成物は耐磨耗性に劣り、産業界では実用的使用に耐える熱可塑性ゴム重合体組成物が求められている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−120127号公報
【特許文献2】特開平9−137001号公報
【特許文献3】特開2004−2825号公報
【特許文献4】特開2003−313330号公報
【特許文献5】特開2003−257893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち触感と耐磨耗性に優れた熱可塑性重合体ゴム組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、触感と耐磨耗性に優れた熱可塑性重合体ゴム組成物を鋭意検討した結果、特定のポリマーの組み合わせにより、驚くべきことに触感と耐磨耗性が飛躍的に向上せしめることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、
1.オレフィン系架橋型熱可塑性エラストマー(A)、芳香族ビニル系ランダム共重合体(B)、及び芳香族ビニル系ブロック共重合体(C)からなる熱可塑性重合体ゴム組成物であって、上記(A)はエチレン・αオレフィン共重合体(A−1)と非架橋性熱可塑性重合体(A−2)とからなる架橋された熱可塑性エラストマーであり、上記(B)はオレフィン性二重結合の水素添加率が50%以上である、共役ジエン系単量体単位10〜49重量%と芳香族ビニル単量体単位51〜90重量%からなるランダム結合を主体とする水素添加共重合体ゴムであり、上記(C)はオレフィン性二重結合の水素添加率が50%以上である、共役ジエン系単量体単位51〜90重量%と芳香族ビニル単量体単位10〜49重量%からなるブロック結合を主体とする水素添加共重合体ゴムであることを特徴とする熱可塑性重合体ゴム組成物、
2.更にポリフェニレンエーテル(D)及び/または軟化剤(E)を含有した前記1.に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物、
3.上記(A−1)がメタロセン触媒を用いて製造されているエチレンと炭素数3〜2
0のα−オレフィンを含有するエチレン・α−オレフィン共重合体である前記1.又は2.に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物、
4.上記(A−2)がプロピレン系樹脂である前記1.〜3.のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物、
5.上記(C)が数平均分子量10万〜100万であり、かつパラフィン系軟化剤を含有している前記1.〜4.のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物、
6.上記(A)が架橋剤(F)により架橋してなる前記1.〜5.のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物、

に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱可塑性重合体ゴム組成物は、触感と耐磨耗性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明に関して具体的に説明する。
本発明の組成物は、オレフィン系架橋型熱可塑性エラストマー(A)(以下、単に(A)、又は(A)成分ということがある。)、芳香族ビニル系ランダム共重合体(B)(以下、単に(B)、又は(B)成分ということがある。)、及び芳香族ビニル系ブロック共重合体(C)(以下、単に(C)、又は(C)成分ということがある。)からなる熱可塑性重合体ゴム組成物からなる。
ここで、(A)が、熱可塑性を維持しつつ、架橋することが重要である。上記成分が架橋することにより、高せん断下においても安定したモルフォロジーを維持するために触感(柔軟性)を保持しつつ、耐磨耗性に優れる。
そして、(A)に対して、芳香族ビニル系共重合体を添加する場合には、ランダム型(B)とブロック型(C)を併用することが必須である。(B)が存在することにより、耐磨耗性が向上するが、その際に(C)が存在すると(B)の分散性が一層向上しさらに高度な触感(柔軟性)と耐磨耗性が発現することを見出し、本発明を完成した。
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
【0008】
(A)成分
本発明において、(A)はエチレン・αオレフィン共重合体(A−1)と非架橋性熱可塑性重合体(A−2)とからなる架橋された熱可塑性エラストマーである。
本発明における(A−1)はエチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体が更に好ましい。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。中でもヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1が好ましく、特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。
【0009】
また、(A−1)は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が挙げられる。とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
また(A−1)は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが好ましい。
そして、(A)の100℃で測定したムーニー粘度(ML)(ISO 289−1985(E)準拠)は、20〜150が好ましく、更に好ましくは50〜120である。
【0010】
本発明における(A−1)は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。
一般にはメタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
本発明において用いられる(A−1)は、α−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率は組成物の硬度、引張強度等の観点から60重量%以下が好ましく、一方、柔軟性、機械的強度の観点から1重量%以上が好ましい。
【0011】
上記(A−1)の密度は、0.8〜0.9g/cmの範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、柔軟性に優れ、ゴム特性の優れた本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
本発明にて用いられる(A−1)は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフ
ィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体としては、米国特許明細書第5278272号明細書等に記載されている。
また、(A−1)は、室温以上に熱天秤(DSC)の融点ピークを有することが望ましい。融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
【0012】
また、本発明にて用いられる(A−1)のメルトインデックスは、0.01〜100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは0.2〜10g/10分である。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の架橋性の観点から(A−1)のメルトインデックスは、100g/10分以下が好ましく、また、流動性、加工性の観点から0.01g/10分以上が好ましい。
本発明において、(A−1)中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合が30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下、極めて好ましくは10%以下である。上記割合が30%以下の場合には架橋性が著しく高まり、機械的強度、外観、感触、耐磨耗性及び耐油性が向上する。
【0013】
本発明において、(A−1)中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合を制御する方法として、分子量が15万以下の部分が30%以下になるように全体の分子量を高める方法、または分子量15万以下の部分を抽出等の操作で除去する方法、あるいは重合触媒等により選択的に分子量15万以下が生成しない重合方法等が挙げられる。
本発明において(A−1)のキシレン不溶分から得られた架橋度が10%以上であることが好ましく、更に好ましくは30%以上、最も好ましくは70%以上である。上記範囲内にある場合は、優れたゴム特性が発現する。
【0014】
本発明における(A)成分の前記(A−2)は非架橋性熱可塑性重合体であり、ゴム状重合体であっても良いし、樹脂系重合体であっても良い。
上記(A−2)は非架橋性であるが、熱可塑性であれば微架橋性の熱可塑性重合体をも排除しない。たとえば、含酸素、含窒素、含硫黄官能基から選ばれる一種以上の官能基を含有する熱可塑性重合体、オレフィン系樹脂、芳香族ビニル系樹脂から選ばれる一種以上の非架橋性熱可塑性重合体である。
【0015】
上記(A−2)の中でも好ましいオレフィン系樹脂として、例えばエチレン系またはプロピレン系樹脂等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合樹脂が挙げられ、特にプロピレン系樹脂が更に好ましい。
本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む。)等が挙げられる。
【0016】
(A−2)の中のオレフィン系樹脂の一つのプロピレンを主体としたα−オレフィンとのランダム共重合樹脂は、高圧法、スラリー法、気相法、塊状法、溶液法等で製造することができ、重合触媒としてZiegler−Natta触媒、シングルサイト、メタロセン触媒が好ましい。特に狭い組成分布、分子量分布が要求される場合には、メタロセン触媒を用いたランダム共重合法が好ましい。
また、本発明の(A−2)として好適に用いられるオレフィン系樹脂のメルトインデックスは、0.1
〜100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられる。熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、機械的強度の観点から100g/10分以下であることが好ましく、また、流動性、成形加工性の観点から0.1g/10分以上が好ましい。
【0017】
本発明の(A−2)として好ましい芳香族ビニル系樹脂として、耐衝撃性ポリスチレン等のゴム変性系樹脂及び/またはポリスチレン等のゴム非変性系樹脂が挙げられる。
このようなゴム変性系樹脂は、ビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体及び必要に応じ、これと共重合可能なビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、または乳化重合することにより得られ、耐衝撃性ポリスチレン等が代表例である。
【0018】
ここで、前記ゴム状重合体は、ガラス転移温度(Tg)が−30℃以下である場合は、耐衝撃性が向上するために好ましい。
このようなゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0019】
本発明における(A−1)と(A−2)からなる組成物(A)100重量部中の各成分は、(A−1)が1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは20〜70重量%であり、(A−2)が1〜99重量%が好ましく、更に好ましくは90〜20重量%、最も好ましくは80〜30重量%である。上記範囲内では、触感と耐磨耗性のバランスが向上する。
本発明において、(A−1)と(A−2)からなる該(A)組成物は、別個の(A−1)と(A−2)を押出機で溶融混合したものであっても良いし,また(A−1)と(A−2)を重合時に製造した重合型熱可塑性樹脂組成物であっても良い。このような重合型組成物の代表例としての重合型オレフィン系組成物は、オレフィン系ゴムの分散相とオレフィン系樹脂の連続相からなる重合法によって製造された熱可塑性エラストマーである。通常は多段重合法により製造される。
【0020】
本発明において、多段重合法とは、重合が1回で終了するのではなく、2段階以上の多段重合を行うことにより、複数の種類のポリマーを連続して製造することができる重合法を意味し、機械的な手法を用いて異種類のポリマーからなる混合樹脂を得るところの通常のポリマーブレンド法とは異なる手法である。
多段重合法によって得られる重合型オレフィン系組成物は、反応器中で(1)ハードセグメントと、(2)ソフトセグメントとが二段階以上で多段重合されてなる共重合体である。(1)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロックや、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばプロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。また(2)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロックおよびエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばエチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。
【0021】
そして、(A)は必要に応じて(A−1)以外の架橋性熱可塑性ゴム状重合体を含有することができる。例えば、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(スチレンーイソプレン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム等の架橋性熱可塑性ゴム状重合体を挙げることができる。特にポリ(スチレンーブタジエン)、ポリ(スチレンーイソプレン)ゴムが好ましく、立体規則性についてはブロックでもランダムでもよい。必要に応じて後述の(B)を含有することができる。
【0022】
(B)成分
本発明において、芳香族ビニル系ランダム共重合体(B)は、オレフィン性二重結合の水素添加率が50%以上である、共役ジエン系単量体10〜49重量%、好ましくは20〜40重量%と、芳香族ビニル単量体51〜90重量%、好ましくは60〜80重量%からなるランダム結合を主体とする水素添加共重合体ゴムであり、必要に応じて、例えば、オレフィン系、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、不飽和ニトリル系、塩化ビニル系単量体等の共役ジエンと共重合可能な単量体を共重合することができる。
【0023】
上記共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができ、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
【0024】
また前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。上記芳香族単量体は一種または二種以上併用することができる。芳香族ビニル単量体含有量は、51〜90重量%であり、好ましくは51〜80重量%、更に好ましくは51〜70重量%である。
【0025】
(B)成分において、水素添加前の共役ジエン単量体部分のビニル結合は、分子内に均一に存在していても、分子鎖に沿って増減あるいは減少してもよいし、またはビニル結合含有量の異なった、複数個のブロックを含んでいてもよい。そして、芳香族ビニル単量体または前記共役ジエン単量体と共重合可能な単量体を含む場合は、上記共役ジエン単量体部分の中でランダムに結合することが好ましいが、ブロック状の芳香族ビニル単量体またはその他の単量体を含んでもよい。ブロック状の芳香族ビニル重合体の含有率は、全芳香族ビニル単量体中の50重量%以下が好ましく、更に好ましくは30重量%以下である。
【0026】
上記(B)中の全オレフィン性二重結合は、50%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、そして主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下であることが好ましい。このようなゴムの具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴムを部分的または完全に水素添加したゴム状重合体を挙げることができ、特に水素添加ブタジエン系または水素添加イソプレン系ゴムが好ましい。
【0027】
このような(B)は、上述のゴムを公知の水素添加方法で部分水素添加することにより得られる。例えば、F.L.Ramp,etal,J.Amer.Chem.Soc.,83,4672(1961)記載のトリイソブチルボラン触媒を用いて水素添加する方法、Hung Yu Chen,J.Polym.Sci.Polym.Letter Ed.,15,271(1977)記載のトルエンスルフォニルヒドラジドを用いて水素添加する方法、あるいは特公昭42−8704号公報に記載の有機コバルトー有機アルミニュウム系触媒あるいは有機ニッケルー有機アルミニュウム系触媒を用いて水素添加する方法等を挙げることができる。ここで、特に好ましい水素添加の方法は、低温、低圧の温和な条件下で水素添加が可能な触媒を用いる特開昭59−133203号、特開昭60−220147号公報あるいは不活性有機溶媒中にて、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物と、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子またはセシウム原子を有する炭化水素化合物とからなる触媒の存在下に水素と接触させる特開昭62−207303号公報に示される方法である。
また、(B)の25℃における5重量%スチレン溶液粘度(5%SV)は、20〜300センチポイズ(cps)の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は25〜150cpsである。
【0028】
(C)成分
本発明において、芳香族ビニル系ブロック共重合体(C)は、オレフィン性二重結合の水素添加率が50%以上である、共役ジエン系単量体51〜90重量%、好ましくは60〜80重量%と、芳香族ビニル単量体10〜49重量%、好ましくは20〜40重量%からなるブロック結合を主体とする水素添加共重合体ゴムであり、具体的には水素添加スチレンブタジエンブロック共重合体等である。
このようなブロック共重合体は、芳香族ビニル単位と共役ジエン単位からなるブロック共重合体、または上記共役ジエン単位部分が部分的に水素添加または、必要に応じて、不飽和カルボン酸またはその無水物あるいはエポキシ変性されたブロック共重合体である。
【0029】
上記ブロック共重合体中の芳香族ビニル単位は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは5〜50重量%、最も好ましくは10〜40重量%である。
また上記ブロック構造は、芳香族ビニル単位からなる重合体ブロックをSで表示し、共役ジエン及び/またはその部分的に水素添加された単位からなる重合体ブロックをBで表示する場合、SB、S(BS)n、(但し、nは1〜3の整数)、S(BSB)n、(但し、nは1〜2の整数)のリニア−ブロック共重合体や、(SB)nX(但し、nは3〜6の整数。Xは四塩化ケイ素、四塩化スズ、ポリエポキシ化合物等のカップリング剤残基。)で示され、B部分を結合中心とする星状(スタ−)ブロック共重合体であることが好ましい。なかでもSBの2型、SBSの3型、SBSBの4型のリニア−ブロック共重合体が好ましい。
【0030】
本発明における(C)の数平均分子量は10万〜100万であることが好ましく、より好ましくは10万〜50万、もっとも好ましくは10万〜30万であり、上記範囲内では
耐磨耗性が向上する。また後述の軟化剤、特にパラフィン系軟化剤を含有していることが好ましい。
本発明において、(A)、(B)及び(C)からなる組成物100重量部に対して、(A)は、1〜98重量部が好ましく、更に好ましくは10〜80重量部であり、(B)は、1〜98重量部が好ましく、更に好ましくは10〜80重量部であり、(C)は、1〜98重量部が好ましく、更に好ましくは10〜80重量部である。
【0031】
(D)成分
本発明において、必要に応じてポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)を添加することができる。たとえばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が好ましく、中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。またPPEの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号明細書記載の方法による第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3,3061075号明細書、米国特許第3,257,357号明細書、米国特許3,257,358号明細書、及び特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報に記載された方法で容易に製造できる。本発明にて用いる上記PPEの還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.20〜0.70dl/gの範囲にあることが好ましく、0.30〜0.60dl/gの範囲にあることがより好ましい。
【0032】
(E)成分
本発明において、必要に応じて軟化剤(E)を含有することができる。
上記軟化剤は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。とりわけ、パラフィン系炭化水素主体またはゴムとの相容性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱・光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量については、ASTM D2140−97規定の炭素数比率で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。
これらの軟化剤は、(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは10〜150重量部用いる。上記範囲内では射出成形性、柔軟性と耐ブリード性のバランスが優れる。
【0033】
(F)成分
本発明における(A)は、(F)架橋剤で架橋されることが好ましい。
(F)架橋剤は、(F−1)架橋開始剤を必須成分とし、必要に応じて(F−2)多官能単量体、(F−3)単官能単量体を含有する。上記(F)架橋剤は、(A−1)100重量部に対し0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜3重量部の量で用いられる。上記範囲内では架橋のレベルが高まり、組成物の耐熱性とゴム特性のバランスが向上する。
【0034】
ここで、(F−1)架橋開始剤は、有機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤等が挙げられ、その具体的な例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイ
ド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類;ならびに、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
【0035】
これらの化合物の中では、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
上記(F−1)は、(F)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
【0036】
本発明において、(F)架橋剤に必要に応じて含まれる(F−2)多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基が好ましく、とりわけビニル基が好ましい。官能基の数は2以上であるが、(F−3)との組み合わせで特に3個以上の官能基を有する場合には有効である。具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシム、P,P’−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好ましく用いられる。特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの多官能単量体は複数のものを併用して用いてもよい。
上記(F−2)は、(F)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
【0037】
本発明において用いられる前記(F−3)は、架橋反応速度を制御するために加えるビニル系単量体であり、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体等のエステル系単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸単量体等の不飽和カルボン酸無水物、N−置換マレイミド単量体等を挙げることができる。
上記(F−3)は、(F)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%が好ましい。
【0038】
本発明において、最も好ましい(F)架橋剤の組み合わせについては、架橋開始剤として、日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名パーヘキサ25B)または日本油脂社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシンー3と、多官能単量体として、日本化成(株)製、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)との組み合わせが、機械的強度、後述の軟化剤が存在するときの軟化剤の保持性が優れている。
【0039】
(G)成分
本発明において、必要に応じて250℃で溶融しない粉末状化合物、ポリオルガノシロキサン、樹脂系ワックス、結晶核剤から選ばれる剤(G)を含有することができる。
本発明において、必要に応じて添加可能な(G)250℃で溶融しない粉末状化合物は、有機系、無機系を問わない。具体例として、有機系として、脂肪酸の金属塩等の有機酸金属塩等を挙げることができる。 また上記無機系の具体例として、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、ケイ酸アルミニウム、シリカ(酸化ケイ素)、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化バリウム、二酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の単体または、それらの複合体(合金)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、ゼオライト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズの水和物等の無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、クレー、マイカ、タルク等を挙げることができ、中でも板状フィラーが好ましく、タルク、マイカ、カオリンが特に好ましい。
上記粉末状化合物の量は、(A)、(B)及び(C)との合計100重量部に対して、0.1〜200重量部が好ましく、更に好ましくは1〜150重量部、最も好ましくは5〜100重量部、極めて好ましくは5〜50重量部である。
【0040】
本発明において、必要に応じて添加可能な(G)ポリオルガノシロキサンは、耐磨耗性を改良するための成分であり、JIS−K2410規定の25℃における動粘度が5000センチストークス(5×10−3m2/sec)以上であることが好ましい。
上記ポリオルガノシロキサンは、粘調な水飴状からガム状の様態であり、アルキル、ビニル及び/またはアリール基置換シロキサン単位を含むポリマーであれば特に制約されない。その中でもポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
本発明に用いられるポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は、5000CS(5×10−3m2/sec)以上であり、更に好ましくは、1万CS(1×10−2m2/sec)以上1000万(10m2/sec)未満、最も好ましくは5万CS(0.05m2/sec)以上200万(2m2/sec)未満である。
本発明において、ポリオルガノシロキサンの添加量は、(A)、(B)及び(C)との合計100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。
【0041】
上記有機系結晶核剤の具体例として、リン酸2、2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール等を挙げることができる。 また上記無機フィラーの具体例として、前記250℃で溶融しない無機化合物が挙げられるが、中でも板状フ
ィラーが好ましく、タルク、マイカ、カオリンが特に好ましい。
上記結晶核の量は、(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して、0.01〜200重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜150重量部、最も好ましくは0.1〜100重量部、極めて好ましくは0.1〜50重量部である。
また、本発明において、その特徴を損ねない程度にその他の無機フィラー、可塑剤、有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤を含有することが可能である。
【0042】
本発明の組成物の製造には、通常の樹脂組成物、エラストマー組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機等の一般的な方法を採用することが可能である。とりわけ(A)の製造においては、効率的に動的架橋を達成するためには2軸押出機が好ましく用いられる。2軸押出機は、(A−1)と(A−2)とを均一かつ微細に分散させ、さらに他の成分を添加させて、架橋反応を生じせしめ、本発明の組成物を連続的に製造するのに、より適している。
本発明の熱可塑性重合体ゴム組成物は、(A),(B),(C)を同一押出機でまず前段で(A)を製造後、(B)及び/または(C)を添加してもよいし、複数の押出機を用いて各成分を製造し溶融混合してもよい。
【0043】
本発明の中でも重要成分の一つである(A)の製造法については、たとえば次のような加工工程を経由して製造することができる。すなわち、(A−1)と(A−2))とをよく混合し、押出機のホッパーに投入する。この際(A−1)と(A−2)を押し出し機に同時に添加し、溶融混練することが好ましい。(F)を、(A−1)と(A−2)とともに当初から添加してもよいし、押出機の途中から添加してもよい。また(E)を押出機の途中から添加してもよいし、当初と途中とに分けて添加してもよい。(A−1)と(A−2)の一部を押出機の途中から添加してもよい。押出機内で加熱溶融し混練される際に、前記(A−1)と(F)とが架橋反応し、さらに(E)軟化剤を添加して溶融混練することにより架橋反応と混練分散とを充分させたのち押出機から取り出すことにより、(A)の組成物のペレットを得ることができる。
【0044】
また特に好ましい溶融押出法としては、原料添加部を基点としてダイ方向に長さLを有し、かつL/Dが5から100(但しDはバレル直径)である二軸押出機を用いる場合である。二軸押出機は、その先端部からの距離を異にするメインフィ−ド部とサイドフィ−ド部の複数箇所の供給用部を有し、複数の上記供給用部の間及び上記先端部と上記先端部から近い距離の供給用部との間にニ−ディング部分を有し、上記ニ−ディング部分の長さが、それぞれ3D〜10Dであることが好ましい。
【0045】
また本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、二軸同方向回転押出機でも、二軸異方向回転押出機でもよい。また、スクリュ−の噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いずれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。
本発明の組成物の最も好ましい製造法は、(A−1)と(A−2)とを溶融混合後、(F)添加により架橋し、次いで(B)と(C)を添加した後に(E)を添加する方法である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた
試験法は以下の通りである。
1.数平均分子量
公知のGPC装置を用いて測定する。
1)装置 ウオーターズ製 150C GPC
2)カラム SHODEX AT−807S 1本
東ソー TSK−GEL GMH−H6 2本の計3本
3)溶媒 1,2,4−トリクロロベンゼン
4)測定温度 140℃
5)標準物質 ポリスチレン
【0047】
2.耐摩耗性
成形品を圧縮成形して凹凸最大長が1mmのシボシートを作製し、シートの上にフェルト布を下面に貼り付けた5cm×5cm×2mmのステンレス板を置き、以下の評価条件で行なう。
装置:学振型摩耗試験機
温度条件 :23℃雰囲気下
ストローク:120mm
周波数 :1往復/2秒
荷重 :1.5kg
摩擦物 :綿布100% かなきん3号(JIS L 0803準拠)
三つ折りにして装着
接触面積 :1平方cm
評価は、成形品表面皮シボが消滅するまでの摩擦往復回数(シボ消失回数)
または、以下の基準(目視判定)で表面状態を観察する。
◎ 極めて良好
○ 良好
△ 良好であるが、やや傷が見える
× 全体的に傷が目立つ
【0048】
3.触感
上記シートを指で押さえた時のクッション感(柔軟性)、肌触り(耐べたつき感)を触感の指標とし、以下の基準で評価を行なう。
◎ 極めて良好
○ 良好
△ 良好であるが、少し硬い。少しべたつき感がある。
× 硬く、クッション感はない。べたつき感がある
【0049】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いる。
(イ)エチレン・αオレフィン共重合体(A−1)
1)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−1)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPE−1と称する)
2)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−2)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。(TPE−2と称する)
3)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−3)通常のチーグラー触媒を用いた方法により製造する。共重合体のエチレン/プロピレン
/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は105である。(TPE−3と称する)
【0050】
(ロ)非架橋性熱可塑性重合体(A−2)
1)ポリプロピレン(PP)
アイソタクチックホモポリプロピレン(PPと称する) MFR:0.5g/10分(230℃、2.16kg荷重)
(ハ)芳香族ビニル系ランダム共重合体(B)
WO01/48079号公報等に記載の公知の方法に基づき、スチレン・ブタジエンランダム共重合体を水素添加することにより製造する。前駆体の共重合体のスチレン/ブタジエンの組成比は、70/30(重量比)であり、数平均分子量は10万である。(H−SBRと称する)
【0051】
(ニ)芳香族ビニル系ブロック共重合体(C)
WO01/48079号公報等に記載の公知の方法に基づき、スチレン・ブタジエンブロック共重合体を水素添加することにより製造する。
1)前駆体の共重合体のスチレン/ブタジエンの組成比は、30/70(重量比)であり、数平均分子量は8万である。(SEBS−1と称する)
2)前駆体の共重合体のスチレン/ブタジエンの組成比は、30/70(重量比)であり、数平均分子量は10万である。(SEBS−2と称する)
3)前駆体の共重合体のスチレン/ブタジエンの組成比は、30/70(重量比)であり、数平均分子量は10万であり、後述のMOを30%含有している。(SEBS−3と称する)
(ホ)ポリフェニレンエーテル系樹脂(D)
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(PPEと称する)還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.50dl/g
【0052】
(ヘ)軟化剤(E)
市販のパラフィンオイル(JIS K2283に準拠の40℃の動粘度:90cSt)(MOと称する)
(ト)架橋剤(F)
1)架橋開始剤(F−1)
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(POXと称する)
2)多官能単量体(F−2)
トリアリルイソシアヌレート(TAICと称する)
【0053】
[実施例1〜7および比較例1〜5]
2軸押出機を用いて、表1に記載の組成物を溶融押出する際に、前段で熱可塑性架橋ゴム組成物を溶融混練した後に、(B)―(E)成分をサイドフィーダーで添加することにより最終組成物を製造する。
このようにして得られた組成物をTダイ押出機を用いて、2mm厚のシート成形品を作製し、各種評価を行なう。その結果を表1に示した。
表1によると、(A)(B)(C)が同時に存在するときのみ、触感、耐磨耗性が向上するが、(C)として数平均分子量が10万以上であり、かつ軟化剤を含有している場合には上記特性のバランスがより向上し、さらにその上(D)が添加されると一層の上記特性の向上が認められることが分かる。そして、(A)中の(A−1)がメタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・αオレフィン共重合体である場合には上記特性が著しく向上することが分かる。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の組成物は、自動車用部品、自動車用内装材、エアバッグカバー等の自動車材料、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能である。成形材料としては発泡成形材料、カレンダー成形材料、パウダースラッシュ成形材料、複層成形材料、インサート成形材料、共押出成形材料、射出成形材料、ブロー成形材料、押出シート成形材料、異型押出成形材料、繊維補強成形材料に有用である。具体的には、壁紙、封止材料、エッジ材料、防水シート、管状材料、電線被覆材料、滑り止め材料、緩衝材料、水泳用品、床被覆材料であり、産業界に果たす役割は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系架橋型熱可塑性エラストマー(A)、芳香族ビニル系ランダム共重合体(B)、及び芳香族ビニル系ブロック共重合体(C)からなる熱可塑性重合体ゴム組成物であって、上記(A)はエチレン・αオレフィン共重合体(A−1)と非架橋性熱可塑性重合体(A−2)とからなる架橋された熱可塑性エラストマーであり、上記(B)はオレフィン性二重結合の水素添加率が50%以上である、共役ジエン系単量体単位10〜49重量%と芳香族ビニル単量体単位51〜90重量%からなるランダム結合を主体とする水素添加共重合体ゴムであり、上記(C)はオレフィン性二重結合の水素添加率が50%以上である、共役ジエン系単量体単位51〜90重量%と芳香族ビニル単量体単位10〜49重量%からなるブロック結合を主体とする水素添加共重合体ゴムであることを特徴とする熱可塑性重合体ゴム組成物。
【請求項2】
更にポリフェニレンエーテル(D)及び/または軟化剤(E)を含有した請求項1に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物。
【請求項3】
上記(A−1)がメタロセン触媒を用いて製造されているエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有するエチレン・α−オレフィン共重合体である請求項1又は2に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物。
【請求項4】
上記(A−2)がプロピレン系樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物。
【請求項5】
上記(C)が数平均分子量10万〜100万であり、かつパラフィン系軟化剤を含有している請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物。
【請求項6】
上記(A)が架橋剤(F)により架橋してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性重合体ゴム組成物。

【公開番号】特開2008−231277(P2008−231277A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74052(P2007−74052)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】