説明

熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置

【課題】伝熱性能を高めるとともに、扁平熱交チューブの出入口ヘッダ部の連通穴周りを液状ガスケットで確実にシールすることができる熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数枚の扁平熱交チューブ17が入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の連通穴24,25周りをシールする液状ガスケット26を介して積層され、その扁平チューブ部20間にPTCヒータが組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブ17およびPTCヒータが熱交押え部材により密着されている熱媒体加熱装置にあって、扁平熱交チューブ17の入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の連通穴24,25周りに、互いに嵌合されるバーリング29,30および31,32が設けられ、該バーリングにより液状ガスケット26が熱媒体の流れに対して直接晒されず、かつ空気と接触される液状ガスケット溜りが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTCヒータを用いて熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等に適用される車両用空調装置にあって、暖房用の熱源となる被加熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置の1つに、正特性サーミスタ素子(Positive Temperature Coefficient;以下、PTC素子という。)を発熱要素とするPTCヒータを用いたものが知られている。PTCヒータは、正特性のサーミスタ特性を有しており、温度の上昇と共に抵抗値が上昇し、これによって消費電流が制御されるとともに温度上昇が緩やかになり、その後、消費電流および発熱部の温度が飽和領域に達して安定するものであり、自己温度制御特性を備えている。
【0003】
かかる熱媒体加熱装置において、特許文献1には、熱媒体の出入口を備えたハウジング内を隔壁により多数の加熱室と熱媒体循環室とに区画し、加熱室側に隔壁と接するように挿入設置されたPTC加熱素子により、循環室内を流れる熱媒体を加熱するように構成した熱媒体加熱装置が示されている。また、特許文献2には、PTC素子を挟んで両面に電極板、絶縁層および伝熱層等を設けて平板状のPTCヒータを構成し、その両面に熱媒体の出入口を備えた互いに連通されている一対の熱媒体流通ボックスを積層し、更にその外面に基板収容ボックス等を配設した積層構造の熱媒体加熱装置が示されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、積層タイプの熱交換器において、チューブシートの両端ヘッダ部の連通穴周りにバーリングを形成し、それを互いに嵌合することによって、積層時の位置合わせを容易化するとともに、接合時の位置ずれによる接合不良の発生を防止するようにした技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−7106号公報
【特許文献2】特開2008−56044号公報
【特許文献3】特開2005−30701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示されたものでは、隔壁により形成された加熱室にPTC加熱素子を挿入設置した構成とされているため、伝熱面となる隔壁間にPTC加熱素子を密着させて挿入設置することは容易ではなく、隔壁とPTC加熱素子との間の接触熱抵抗が大きくなってしまい、伝熱効率が低下し易い等の課題があった。
【0007】
また、特許文献2に示されたものは、PTCヒータの両面に放熱フィンを有する一対の熱媒体流通ボックスを積層するとともに、その外面側に制御基板を収容する基板収容ボックスおよび蓋体を設けることにより熱媒体流路を密閉し、それらをボルトで締結した積層構造としていることから、PTCヒータと熱媒体流通ボックスとの間の接触熱抵抗を低減することができる。しかし、熱媒体流通ボックスや基板収容ボックス、蓋体等を耐熱性や伝熱性等の面から、アルミダイカスト製品等とする必要があり、小型軽量化には限界があるとともに、高価になる等の課題があった。
【0008】
一方、積層型の熱交換器において、出入口ヘッダ部の連通穴周りのシールは、ロウ付けあるいはOリングでのシールが一般的であり、このため、連通穴周りにバーリングが設けられている場合でも、問題なくロウ付けあるいはOリングを介装してシールすることができる。しかし、シール材として液状ガスケットを用いた場合、バーリングの構成によっては、空気中の水分と接触して硬化する液状ガスケットがうまく硬化されなかったり、あるいは熱媒体の流れにより液状ガスケットが剥がされたりしてシール性の低下が懸念される等の課題があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数枚の扁平熱交チューブとPTCヒータとを積層構造として伝熱性能を高め、小型軽量化、低コスト化を図るとともに、扁平熱交チューブの出入口ヘッダ部の連通穴周りを液状ガスケットにより確実にシールすることができる熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の熱媒体加熱装置およびそれを備えた車両用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる熱媒体加熱装置は、熱媒体が流通される扁平チューブ部の両端に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が設けられている複数枚の扁平熱交チューブと、互いに積層される前記各扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に塗布され、該入口ヘッダ部および出口ヘッダ部に設けられている連通穴周りをシールする液状ガスケットと、前記各扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、互いに積層された前記各扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、前記各扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部間および前記出口ヘッダ部間の前記連通穴周りに、互いに嵌合されるバーリングが設けられ、該バーリングによって前記液状ガスケットが熱媒体の流れに対して直接晒されず、かつ空気と接触される前記液状ガスケット溜りが形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、複数枚の扁平熱交チューブが入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の連通穴周りをシールする液状ガスケットを介して積層され、その扁平チューブ部間にPTCヒータが組み込まれた状態で、各扁平熱交チューブおよびPTCヒータが熱交押え部材により押圧されて密着されている熱媒体加熱装置にあって、扁平熱交チューブの入口ヘッダ部間および出口ヘッダ部間の連通穴周りに、互いに嵌合されるバーリングが設けられ、該バーリングによって液状ガスケットが熱媒体の流れに対して直接晒されず、かつ空気と接触される液状ガスケット溜りが形成されているため、扁平熱交チューブの入口ヘッダ部および出口ヘッダ部に塗布された液状ガスケットを、積層された複数枚の扁平熱交チューブを熱交押え部材により押圧して密着させる際、連通穴周りにバーリングにより形成されている液状ガスケット溜りにはみ出させ、空気中の水分と接触させて速やかに硬化させることができる。また、この液状ガスケット溜りで硬化された液状ガスケットは、熱媒体の流れに直接晒されることがなく、熱媒体の流れによって剥がされる虞がない。従って、液状ガスケットによる連通穴周りのシール性を確実に確保し、連通穴周りからの熱媒体の漏えいを防止することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータとを確実に密着させて両者間の接触熱抵抗を低減し、伝熱効率を向上して熱媒体加熱装置の加熱性能をアップすることができる。また、複数枚の扁平熱交チューブ同士は、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の連通穴周りに設けられたバーリングを介して互いに嵌合されているため、熱膨張差により生じるせん断力で液状ガスケットがせん断破壊するのを防止することができると同時に、扁平熱交チューブの積層時の位置決めにも利用できることから、位置ずれによる接合不良等をも防止することができる。更に、扁平熱交チューブを用いることにより、ダイカスト製の大型部品である熱媒体流通ボックス等が不要となるため、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記液状ガスケット溜りは、互いに嵌合される前記バーリング間に形成され、該バーリングは、内周側のバーリングの外周に嵌合される外周側のバーリングに、前記内周側バーリングの外周に接する小径部分と、該内周側バーリングの外周径よりも大径の非接触部分とが周方向に交互に形成された構成とされていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、液状ガスケット溜りが、互いに嵌合されるバーリング間に形成され、該バーリングが、内周側のバーリングの外周に嵌合される外周側バーリングに、内周側バーリングの外周に接する小径部分と、該内周側バーリングの外周径よりも大径の非接触部分とが周方向に交互に形成された構成とされているため、内周側のバーリングと外周側のバーリングとの間に形成された液状ガスケット溜りにはみ出した液状ガスケットは、外周側のバーリングが内周側のバーリングに対して非接触部分とされた部位を介して空気と接触され、速やかに硬化される。また、この液状ガスケット溜りは、内周側バーリングの外周面側に形成されるため、液状ガスケットが内周側バーリングの内周を流れる熱媒体に対して直接晒されることがなく、熱媒体の流れによって剥がされる虞もない。従って、液状ガスケットによる連通穴周りのシール性を確保し、連通穴周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することができる。
【0014】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、前記内周側のバーリングは、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に直角に設けられているのに対して、前記外周側のバーリングは、前記内周側バーリングの前記直角コーナ部との間に前記液状ガスケット溜りが形成されるように斜めに設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、内周側のバーリングが、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部に直角に設けられているのに対して、外周側のバーリングが、内周側バーリングの直角コーナ部との間に液状ガスケット溜りが形成されるように斜めに設けられているため、外周側のバーリングを斜めに加工することにより、内周側バーリングの直角コーナ部との間に所要の液状ガスケット溜り、すなわち液状ガスケットが熱媒体の流れに晒されず、かつ空気と接触される液状ガスケット溜りを簡易に形成することができる。従って、液状ガスケット溜りにはみ出した液状ガスケットを確実に硬化させることができるとともに、熱媒体の流れに直接晒されないようにすることができ、液状ガスケットによる連通穴周りのシール性を確保し、液状ガスケットが熱媒体の流れで剥がされることによる連通穴周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することができる。
【0016】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、互いに嵌合される前記バーリングは、内周側のバーリング高さに対して外周側のバーリング高さが低くされ、その段部により前記内周側バーリングの外周面側に前記液状ガスケット溜りが形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、互いに嵌合されるバーリングが、内周側のバーリング高さに対して外周側のバーリング高さが低くされ、その段部により内周側バーリングの外周面側に液状ガスケット溜りが形成されているため、外周側のバーリング高さを内周側のバーリング高さよりも低くし、その段部により内周側バーリングの外周面側に、該内周側バーリングの内周を流れる熱媒体に対して直接晒されることがなく、かつ空気と接触される液状ガスケット溜りを形成することができる。従って、液状ガスケット溜りにはみ出した液状ガスケットを確実に硬化させることができるとともに、熱媒体の流れに直接晒されないようにすることができ、液状ガスケットによる連通穴周りのシール性を確保し、液状ガスケットが熱媒体の流れで剥がされることによる連通穴周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することができる。
【0018】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上記の熱媒体加熱装置において、互いに嵌合される前記バーリングのうち、外周側のバーリングの先端に外側にカールされたカーリング部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、互いに嵌合される前記バーリングのうち、外周側のバーリングの先端に外側にカールされたカーリング部が形成されているため、先端が外側にカールされた外周側バーリングのカーリング部と内周側バーリングの外周面側との間に、内周側バーリングの内周を流れる熱媒体に対して直接晒されることがなく、かつ空気と接触される液状ガスケット溜りを形成することができる。従って、液状ガスケット溜りにはみ出した液状ガスケットを確実に硬化させることができるとともに、熱媒体の流れに直接晒されないようにすることができ、液状ガスケットによる連通穴周りのシール性を確保し、液状ガスケットが熱媒体の流れで剥がされることによる連通穴周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することができる。
【0020】
さらに、本発明の熱媒体加熱装置は、上述のいずれかの熱媒体加熱装置において、前記入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の前記連通穴周りに設けられている前記バーリングは、各々熱媒体の流れ方向に沿うように互いに逆向きに設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の連通穴周りに設けられているバーリングが、各々熱媒体の流れ方向に沿うように互いに逆向きに設けられているため、入口ヘッダ部側と出口ヘッダ部側において熱媒体の流れ方向が逆になったとしても、熱媒体の流れに対するヘッダ部のバーリングの配置関係を熱媒体の流れ方向に沿う関係に保つことができる。従って、熱媒体の流れに対する圧損を小さくすることができるとともに、いずれのヘッダ部側においても液状ガスケットを熱媒体の流れに直接晒されないようにすることができ、液状ガスケットが熱媒体の流れで剥がされることによる連通穴周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することができる。また、2枚の成形プレートを接合して構成される扁平熱交チューブを、1つの型で成形した1種のプレートを引っ繰り返して用いることにより構成することができるため、更に低コスト化することができる。
【0022】
さらに、本発明にかかる車両用空調装置は、空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、前記熱媒体加熱装置が、上述のいずれかの熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、空気流路中に配設されている放熱器に対して、上述のいずれかの熱媒体加熱装置により加熱された熱媒体が循環可能に構成されているため、放熱器に対する熱媒体循環回路での熱媒体の漏えいを防止できるとともに、熱媒体加熱装置での熱媒体の加熱性能を向上することができる。従って、車両用空調装置の信頼性の向上および空調性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の熱媒体加熱装置によると、扁平熱交チューブの入口ヘッダ部および出口ヘッダ部に塗布された液状ガスケットを、積層された複数枚の扁平熱交チューブを熱交押え部材により押圧して密着させる際、連通穴周りにバーリングにより形成されている液状ガスケット溜りにはみ出させ、空気中の水分と接触させて速やかに硬化させることができる。また、この液状ガスケット溜りで硬化された液状ガスケットは、熱媒体の流れに直接晒されることがなく、熱媒体の流れにより剥がされる虞がないため、液状ガスケットによる連通穴周りのシール性を確実に確保し、連通穴周りからの熱媒体の漏えいを防止することができるとともに、扁平熱交チューブとPTCヒータとを確実に密着させて両者間の接触熱抵抗を低減し、伝熱効率を向上して熱媒体加熱装置の加熱性能をアップすることができる。また、複数枚の扁平熱交チューブ同士は、入口ヘッダ部および出口ヘッダの連通穴周りに設けられたバーリングを介して互いに嵌合されているため、熱膨張差により生じるせん断力で液状ガスケットがせん断破壊するのを防止することができると同時に、扁平熱交チューブの積層時の位置決めにも利用できることから、位置ずれによる接合不良等をも防止することができる。更に、扁平熱交チューブを用いることにより、ダイカスト製の大型部品である熱媒体流通ボックス等が不要となるため、熱媒体加熱装置の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0025】
また、本発明の車両用空調装置によると、放熱器に対する熱媒体循環回路での熱媒体の漏えいを防止できるとともに、熱媒体加熱装置での熱媒体の加熱性能を向上することができるため、車両用空調装置の信頼性の向上および空調性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す熱媒体加熱装置の組み立て手順を説明するための分解斜視図である。
【図3】図1に示す熱媒体加熱装置の平面図(A)とその側面図(B)である。
【図4】図2に示す熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの平面図である。
【図5】図4のA−A断面相当図である。
【図6】図4のB−B断面相当図である。
【図7】図5のC−C断面相当図である。
【図8】図7のD−D断面相当図である。
【図9】図7のE−E断面相当図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの出入口ヘッダ部の縦断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る熱媒体加熱装置に適用する扁平熱交チューブの出入口ヘッダ部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図9を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る熱媒体加熱装置を備えた車両用空調装置の概略構成図が示されている。車両用空調装置1は、外気または車室内空気を取り込んで温調した後、それを車室内へと導くための空気流路2を形成するケーシング3を備えている。
【0028】
ケーシング3の内部には、空気流路2の上流側から下流側にかけて順次、外気または車室内空気を吸い込んで昇圧し、それを下流側へと圧送するブロア4と、該ブロア4により圧送される空気を冷却する冷却器5と、冷却器5を通過して冷却された空気を加熱する放熱器6と、放熱器6を通過する空気量と放熱器6をバイパスする空気量との流量割合を調整し、その下流側でエアミックスさせることによって、温調風の温度を調節するエアミックスダンパ7と、が設置されている。
【0029】
ケーシング3の下流側は、図示しない吹き出しモード切替えダンパおよびダクトを介して温調された空気を車室内に吹き出す複数の吹き出し口に接続されている。
冷却器5は、図示省略された圧縮機、凝縮器、膨張弁等と共に冷媒回路を構成し、膨張弁で断熱膨張された冷媒を蒸発させることによって、そこを通過する空気を冷却するものである。放熱器6は、タンク8、ポンプ9および熱媒体加熱装置10とともに熱媒体循環回路10Aを構成し、熱媒体加熱装置10により高温に加熱された熱媒体(例えば、不凍液等)がポンプ9を介して循環されることにより、そこを通過する空気を加温するものである。
【0030】
図2には、図1に示された熱媒体加熱装置10を組み立てる手順を説明するための分解斜視図が示され、図3には、その熱媒体加熱装置10の平面図(A)とその側面図(B)が示されている。熱媒体加熱装置10は、図2に示されるように、制御基板13と、電極板14(図3(B)参照)と、IGBT等からなる複数個の半導体スイッチング素子12(図3(B)参照)と、熱交押え部材(押圧部材)16と、複数枚(例えば、3枚)の扁平熱交チューブ17と、複数組のPTC素子(Positive Temperature Coefficient)18a(図3(B)参照)と、これら制御基板13、電極板14、半導体スイッチング素子12、積層された扁平熱交チューブ17、および熱交押え部材16等を収容するケーシング11と、を備えている。なお、電極板14、PTC素子18aおよび後述の絶縁体(図示せず)等により、複数組のPTCヒータ18が構成されている。
【0031】
ケーシング11は、上半部と下半部とに2分割された構成となっており、上半部に位置するアッパケース11a(図3(B)参照)と、下半部に位置するロアケース11bとを備えている。また、アッパケース11aおよびロアケース11bの内部には、ロアケース11bの上方からロアケース11bの開口部11cにアッパケース11aを載置することによって、上記の制御基板13、半導体スイッチング素子12、電極板14、熱交押え部材16、積層された複数枚の扁平熱交チューブ17、および複数組のPTCヒータ18等を収容する空間が形成されるようになっている。
【0032】
ロアケース11bの下面には、積層された3枚の扁平熱交チューブ17に導入される熱媒体の導くための熱媒体入口路(熱媒体導出入路)11dおよび扁平熱交チューブ17内を流通した熱媒体を導出するための熱媒体出口路(熱媒体導出入路)11eが一体的に形成されている。ロアケース11bは、その内部空間に収容される扁平熱交チューブ17を形成しているアルミ合金材と線膨張が近い樹脂材料(例えば、PBT)により成形されている。なお、アッパケース11aも、ロアケース11bと同様の樹脂材料により成形されることが望ましい。このように、ケーシング11を樹脂材料で構成することにより、軽量化を図ることができる。
【0033】
また、ロアケース11bの下面には、電源ハーネス27およびLVハーネス28の先端部を貫通するための電源ハーネス用孔11fおよびLVハーネス用孔11g(図3(A)参照)が開口されている。電源ハーネス27は、制御基板13および半導体スイッチング素子12を介してPTCヒータ18に電力を供給するものであり、先端部が2又状に分岐され、制御基板13に設けられている2つの電源ハーネス用端子台13cに電極ハーネス接続用ネジ13bによってネジ止め可能とされている。また、LVハーネス28は、制御基板13に制御用の信号を送信するものであり、その先端部は、制御基板13にコネクタ接続可能とされている。
【0034】
半導体スイッチング素子12および制御基板13は、上位制御装置(ECU)からの指令に基づいて複数組のPTCヒータ18に対する通電制御を行う制御系を構成するものであり、IGBT等の複数個の半導体スイッチング素子12を介して複数組のPTCヒータ18に対する通電状態が切替えできるように構成されている。そして、この複数組のPTCヒータ18をその両面側から挟み込むように複数枚の扁平熱交チューブ17が積層されている。
【0035】
各扁平熱交チューブ17は、アルミ合金製の2枚の成形プレートを接合して構成されるものであり、図4ないし図9に示されるように、扁平チューブ部20と、その両端に形成されている熱媒体を供給する入口ヘッダ部22および熱媒体が導出される出口ヘッダ部23とを備えている。この扁平熱交チューブ17は、図5に示されるように、例えば3枚の扁平熱交チューブ17が互いに平行になるように積層されている。3枚の扁平熱交チューブ17は、下段、中段および上段の扁平熱交チューブ17c、17b、17aの順に積層される。
【0036】
扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20の内部には、図6に示されるように、コルゲート状のインナーフィン21が形成されている。これにより、各扁平熱交チューブ17a、17b、17c内には、その軸方向に連通している複数の熱媒体流通路が形成されることとなる。また、各扁平熱交チューブ17a、17b、17c内にインナーフィン21が形成されることにより、剛性が増大される。このため、後述する基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16により3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cが、ロアケース11bの内底面の方向に押圧された場合でも、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cが変形され難くなっている。
【0037】
各扁平熱交チューブ17a、17b、17cは、平面視した場合、軸方向(図4において左右方向)に長い扁平状を呈している。この扁平熱交チューブ17a、17b、17cは、扁平方向、すなわち、軸方向と直交する厚さ方向(図4において上下方向)に幅広となっている。また、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cの軸方向の両端部、すなわち、扁平チューブ部20の両端部には、入口ヘッダ部22と出口ヘッダ部23とが設けられており、該入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の中心部には、それぞれ連通孔24,25が設けられている。
【0038】
下段、中段および上段の3枚の扁平熱交チューブ17c、17b、17aは、積層される際に入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23に塗布されたシール用の液状ガスケット(シール材)26により、連通孔24,25周りが密封状態にシールされるようになっている。そして、この3枚の扁平熱交チューブ17c、17b、17aの扁平チューブ部20間に、PTCヒータ18が、その両面側に設けられている電極板14が両側から挟み込まれた状態で互いに平行に積層されるようになっている。
【0039】
さらに、扁平熱交チューブ17a、17b、17cの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の連通孔24,25周りには、積層時に互いに嵌合されるバーリング29,30および31,32が形成されている。該バーリング29,30および31,32は、図5および図7ないし図9に示されるように、入口ヘッダ部22側においては、積層時、下段側に位置される扁平熱交チューブ17に設けられるバーリングが内周側のバーリング29とされ、直角に上向きに立設されており、下段側に位置される扁平熱交チューブ17に設けられるバーリングが外周側のバーリング30とされ、内周側バーリング29の外周に嵌合されるように構成されている。
【0040】
また、出口ヘッダ部23側においては、入口ヘッダ部22側とは逆に、積層時、上段側に位置される扁平熱交チューブ17に設けられるバーリングが内周側のバーリング31とされ、直角に下向きに立設されており、下段側に位置される扁平熱交チューブ17に設けられるバーリングが外周側のバーリング32とされ、内周側バーリング31の外周に嵌合されるように構成されている。これは、入口ヘッダ部22では、熱媒体が下方から上方側へと流れ、出口ヘッダ部23では、逆に熱媒体が上方から下方側へと流れるようになっており、この熱媒体の流れ方向にバーリング29ないし32を沿わせるためである。
【0041】
バーリング29,30および31,32は、内周側のバーリング29,31と、外周側のバーリング30,32との間に、液状ガスケット溜り33が形成されるように嵌合されている。つまり、内周側バーリング29,31と、外周側バーリング30,32とを嵌合したとき、内周側バーリング29,31の外周面側の直角コーナ部と、外周側バーリング30,32とによって微小空間が形成され、この微小空間が液状ガスケット溜り33されるようになっている。
【0042】
上記の液状ガスケット溜り33を形成するため、直角に立設されている内周側バーリング29,31に対して、外周側バーリング30,32は、図8および図9に示されるように、斜めに起こされている。さらに、外周側バーリング30,32は、図7ないし図9に示されるように、内周側バーリング29,31の外周面に接する小径部分30a,32aと、内周側バーリング29,31の外周径よりも大径とされた非接触部分30b,32bとが周方向に交互に4箇所ずつ等間隔に形成された構成とされている。これにより、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23に塗布され、液状ガスケット溜り33にはみ出した液状ガスケット26は、内周側バーリング29,31と外周側バーリング30,32の非接触部分30b,32bとの隙間を介して空気と接触され、硬化されるとともに、内周側バーリング29,31の内周側を流れる熱媒体に直接晒されないようになっている。
【0043】
3枚の扁平熱交チューブ17c、17b、17aは、この順に積層され、後述する基板サブアッセンブリ15を介してロアケース11bの内底面の方向に押圧されることによって、液状ガスケット(シール材)26を介して中段扁平熱交チューブ17bの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の下面と、その下方に位置している下段扁平熱交チューブ17cの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の上面との間、および中段扁平熱交チューブ17bの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の上面と、その上方に位置している上段扁平熱交チューブ17aの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の下面との間がそれぞれ密着されるようになっている。
【0044】
また、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cを、上記のように積層することによって、上段の扁平熱交チューブ17a、中段の扁平熱交チューブ17bおよび下段の扁平熱交チューブ17の各連通孔24,25が互いに嵌合されるバーリング29,30および31,32を介して連通され、入口ヘッダ部22同士および出口ヘッダ部23同士が互いに連通されるとともに、各連通孔24,25の周囲が液状ガスケット(シール材)26によって密封状態にシールされるようになっている。
【0045】
これによって、熱媒体入口路11dから導かれた熱媒体は、各入口ヘッダ部22から各扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20内へと導かれる。この熱媒体は、扁平チューブ部20内を流通する過程において、PTCヒータ18により加熱されて昇温され、各出口ヘッダ部23に流出し、熱媒体出口路11eを経て熱媒体加熱装置10の外部へと導出されるようになっている。該熱媒体加熱装置10から導出された熱媒体は、熱媒体循環回路10A(図1参照)を介して放熱器6に供給されることになる。
【0046】
また、電極板14は、図3(B)に示されるように、PTC素子18aに電力を供給するものであり、平面視において、矩形状を呈するアルミ合金製の板材とされている。電極板14は、PTC素子18aを挟んでその両面に、PTC素子18aの上面に接するように一枚、PTC素子18aの下面に接するように一枚それぞれ積層されている。これら2枚の電極板14によって、PTC素子18aの上面と、PTC素子18aの下面とが挟み込まれるようになっている。
【0047】
さらに、PTC素子18aの上面側に位置する電極板14は、その上面が扁平熱交チューブ17の下面に接するように配置され、PTC素子18aの下面側に位置する電極板14は、その下面が扁平熱交チューブ17の上面に接するように配置されている。本実施形態の場合には、電極板14は、下段の扁平熱交チューブ17cと中段の扁平熱交チューブ17bとの間、中段の扁平熱交チューブ17bと上段の扁平熱交チューブ17aとの間に各々2枚、合計4枚が配置されている。
【0048】
4枚の各電極板14は、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cと略同形とされている。各電極板14は、その長辺側に1つの端子14aが設けられている。電極板14に設けられている端子14aは、各電極板14を積層させた場合に重なることなく、電極板14の長辺に沿って位置している。すなわち、各電極板14に設けられている端子14aは、その長辺に沿って少しずつ位置がずらされて設けられ、各電極板14が積層された場合に直列に配列されるように設けられている。各端子14aは、上方に突出するように設けられ、制御基板13に設けられている端子台13aに端子接続用ネジ14bを介して接続されるようになっている。
【0049】
基板サブアッセンブリ15は、制御基板13と熱交押え部材16とを平行に配設し、熱交押え部材16の上面に設置されているIGBT等の複数個の半導体スイッチング素子12を間に挟み込んでいるものである。制御基板13と熱交押え部材16は、例えば4本の基板サブアッセンブリ接続用ネジ15aで固定されており、これによって、基板サブアッセンブリ15は、一体化されている。
【0050】
基板サブアッセンブリ15を構成している制御基板13には、各電極板14に直列に配列されている4つの端子14aに対応して、その一辺の下面に直列に4つの端子台13aが配列されている。また、4つの端子台13aと両端側に直列に並ぶように、電源ハーネス27の2分岐されている先端部と接続される2つの電源ハーネス用端子台13cが設けられている。これらの端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、制御基板13の下面から下方に突出するように設けられている。また、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、積層されている扁平熱交チューブ17a、17b、17cの長辺に沿って直列になるように設けられている。
【0051】
さらに、制御基板13に設けられている各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cは、ロアケース11bの開口部11cよりも少し上方に位置されるように設けられている。このため、各端子台13aおよび電源ハーネス用端子台13cに接続される電極板14の端子14aや電源ハーネス27の先端部が固定しやすくなっている。
【0052】
図3(B)に示すように、IGBT等からなる半導体スイッチング12は、略長方形状に樹脂成形されたトランジスタである。この半導体スイッチング12は、作動することによって熱を生じる発熱素子であり、熱交押え部材16の上面であって、上段の扁平熱交チューブ17aの入口ヘッダ部22近傍に接続用ネジ12aを介してねじ止めされ、熱交押え部材16をヒートシンクとして冷却されるようになっている。
【0053】
基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、平面視した際に扁平状のアルミ合金製板材とされている。この熱交押え部材16は、制御基板13よりも軸方向(図3(A)の左右方向)に大きくされたものであり、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cを覆うことができる大きさとされている。制御基板13よりも軸方向に大きくなっている熱交押え部材16には、該熱交押え部材16をロアケース11bに固定する基板サブアッセンブリ固定用ネジ15b(図3(A)参照)が貫通可能な孔(図示せず)が4箇所に設けられている。
【0054】
基板サブアッセンブリ15は、積層された上段の扁平熱交チューブ17aの上方に載置されている。すなわち、基板サブアッセンブリ15は、熱交押え部材16の下面が上段の扁平熱交チューブ17aの上面に接するようにして配置されている。この基板サブアッセンブリ15は、熱交押え部材16を4本の基板サブアッセンブリ固定用ネジ15bを介してロアケース11bにネジ止めすることにより、熱交押え部材16の下面とロアケース11bの内底面との間で積層された3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cおよびその間に挟まれている2枚のPTCヒータ18を挟み込んでいる。
【0055】
このように、基板サブアッセンブリ15をロアケース11bにネジ止め固定することにより、ロアケース11bの内底面方向に積層された3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cおよびその間に挟まれている2枚のPTCヒータ18が押圧付勢されるようになっている。また、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、アルミ合金製板材であるため、扁平熱交チューブ17a、17b、17c内を流れる熱媒体の冷熱を介して、熱交押え部材16上に設置されているIGBT等の半導体スイッチング素子12を冷却するヒートシンクとして用いられるようになっている。
【0056】
次に、図2および図3を用いて本実施形態に係る熱媒体加熱装置10の組み立て手順について説明する。
まず、ロアケース11bの内底面に略平行になるように、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23にスペーサ部材29が設けられている下段の扁平熱交チューブ17cをロアケース11bの内部空間に設置する。この扁平熱交チューブ17cの扁平チューブ部20上にPTCヒータ18の両面を絶縁シート(図示せず)によって挟み、下段扁平熱交チューブ17cの上方から積層する。
【0057】
さらに、下段扁平熱交チューブ17cの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の上面に液状ガスケット(シール材)26を塗布し、その上に上方から中段扁平熱交チューブ17bをバーリング29,30および31,32を互いに嵌合させて積層する。この中段扁平熱交チューブ17bの扁平チューブ部20上に、上記と同様にしてPTCヒータ18の両面を絶縁シートによって挟み、中段扁平熱交チューブ17bの上方から積層する。次いで、中段扁平熱交チューブ17bの入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の上面に液状ガスケット26を塗布して、該中段扁平熱交チューブ17bの上方から上段扁平熱交チューブ17aをバーリング29,30および31,32を互いに嵌合させて積層する。
【0058】
こうして積層された上段扁平熱交チューブ17aの上方から基板サブアッセンブリ15を熱交押え部材16が下方となるように積層した後、上段扁平熱交チューブ17a上に積層されている基板サブアッセンブリ15の熱交押え部材16を、基板サブアッセンブリ固定用ネジ15bによってロアケース11bに締め付け固定する。これによって、各扁平熱交チューブ17a、17b、17cの入口ヘッダ部22間および出口ヘッダ部23間がロアケース11bの内底面方向に押圧されて密着され、各々の入口ヘッダ部22間および出口ヘッダ部23間の連通孔24,25周りが液状ガスケット26により密封状態にシールされることとなる。
【0059】
入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23に塗布されていた液状ガスケット26は、3枚の扁平熱交チューブ17a、17b、17cが押圧されて密着されることにより、その一部が液状ガスケット溜り33にはみ出し、そこに溜まって内周側バーリング29,31と外周側バーリング30,32の非接触部分30b,32bとの隙間を介して空気と接触され、空気中の水分と反応して硬化される。この液状ガスケット26は、液状ガスケット溜り33が内周側バーリング29,31の外周面側に設けられているため、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23内において、内周側バーリング29,31の内周側を流れる熱媒体の流れに直接晒されることはなく、熱媒体の流れによって剥がされる虞がない。
【0060】
また、各々の入口ヘッダ部22間および出口ヘッダ部23間が密着されるため、下段扁平熱交チューブ17cと中段扁平熱交チューブ17bとの間、および中段扁平熱交チューブ17bと上段扁平熱交チューブ17aとの間に挟まれているPTCヒータ18および電極板14も、それぞれ扁平熱交チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20の外表面と密着され、その間の接触熱抵抗が低減されることとなる。
【0061】
つぎに、基板サブアッセンブリ15を構成する制御基板13に設けられている各端子台13aと、各電極板14の端子14aとを端子接続用ネジ14bによって本止めするとともに、電源ハーネス用孔11fに電源ハーネス27を挿入してその先端部と、制御基板13に設けられている各電源ハーネス用端子台13cとを電源ハーネス接続用ネジ13bによってねじ止めする。更に、LVハーネス28の先端部をロアケース11bの側壁に開口されているLVハーネス用孔11gからロアケース11b内に挿入し、制御基板13に対してコネクタ接続する。その後、電源ハーネス27をロアケース11bの外底面から電源ハーネス固定用ネジ27aにより固定し、LVハーネス用孔11gにLVハーネス28を固定する。
【0062】
次いで、ロアケース11bの開口部11cに液状ガスケット(入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の上面に塗布したものと同じ液状ガスケットでよい)を塗布する。このロアケース11bの開口部11c上に、上方からアッパケース11aを載置し、アッパケース11aに設けられているクリップ部(図示せず)をロアケース11bに設けられている爪部(図示せず)に引っ掛け、アッパケース11aとロアケース11bとを締結することによって、熱媒体加熱装置10の組み立てを完了(終了)する。
【0063】
なお、本実施形態で用いられている液状ガスケット(シール材)26とは、耐熱性に優れており、高温に晒される扁平熱交チューブ17の入口ヘッダ部22間および出口ヘッダ部23間等のシールに適した、空気中の水分と接することにより硬化する硬化性の液状のシール材(例えば、株式会社スリーボンド製のシリコーンを主成分として製品番号1207dのシリコーン系液状ガスケット)である。
【0064】
以上述べたように、本実施形態に係る熱媒体加熱装置10および車両用空調装置1によれば、以下の効果を奏する。
PTCヒータ18を挟んで少なくともその両面に順次積層されている複数枚(3枚)の扁平熱交チューブ17を互いに平行に積層し、その上段扁平熱交チューブ17aの上面に制御基板13と熱交押え部材(押圧部材)16とを組み合わせた基板サブアッセンブリ15を設け、これをロアケース11bに締め付け固定するようにしている。
【0065】
これにより、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16によって入口ヘッダ部22間および出口ヘッダ部23間に設けられている液状ガスケット(シール材)26を密着させることができ、このため、積層させた扁平熱交チューブ17間の密着性が高められ、複数枚の扁平熱交チューブ17間に積層されているPTCヒータ18と扁平熱交チューブ17との間の接触熱抵抗を低減して、PTCヒータ18から扁平熱交チューブ17への伝熱効率を向上し、熱媒体加熱装置10の加熱性能をアップすることができる。
【0066】
また、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の連通穴24,25周りは、液状ガスケット26によりシールされているが、この連通穴24,25の周りには、互いに嵌合されるバーリング29,30および31,32が設けられ、該バーリング29,30および31,32によって液状ガスケット26が熱媒体の流れに対して直接晒されず、かつ空気と接触される液状ガスケット溜り33が形成されているため、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23に塗布された液状ガスケット26を、各扁平熱交チューブ17を熱交押え部材16により押圧して密着させる際、連通穴24,25周りにバーリング29,30および31,32によって形成されている液状ガスケット溜り33にはみ出させ、空気中の水分と接触させて速やかに硬化させることができる。また、この液状ガスケット溜り33で硬化された液状ガスケット26は、熱媒体の流れに直接晒されることがなく、熱媒体の流れによって剥がされる虞もない。
【0067】
これによって、液状ガスケット26による連通穴24,25周りのシール性を確保し、連通穴24,25周りからの熱媒体の漏えいを防止することができる。また、複数枚の扁平熱交チューブ17は、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ23の連通穴24,25周りに設けられているバーリング29,30および31,32を介して互いに嵌合されているため、熱膨張差により生じるせん断力で液状ガスケット26がせん断破壊するのを防止することができると同時に、扁平熱交チューブ17の積層時の位置決めにも利用できることから、位置ずれによる接合不良等をも防止することができる。さらに、扁平熱交チューブ17を用いることによって、ダイカスト製の大型部品である熱媒体流通ボックス等が不要となるため、熱媒体加熱装置10の小型軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0068】
さらに、液状ガスケット溜り33は、互いに嵌合されるバーリング29,30および31,32間に形成され、該バーリング29,30および31,32が、内周側のバーリング29,31の外周に嵌合される外周側のバーリング30,32に、内周側バーリング29,31の外周に接する小径部分30a,32aと、該内周側バーリング29,31の外周径よりも大径の非接触部分30b,32bと、が周方向に交互に形成された構成とされている。
【0069】
このため、内周側のバーリング29,31と外周側のバーリング30,32との間に形成された液状ガスケット溜り33にはみ出した液状ガスケット26は、外周側バーリング30,32が内周側のバーリング29,31に対して非接触部分30b,32bとされた部位の隙間を介して空気と接触され、速やかに硬化される。また、この液状ガスケット溜り33は、内周側バーリング29,31の外周面側に形成されているため、液状ガスケット26が内周側バーリング29,31の内周を流れる熱媒体に対して直接晒されることがなく、熱媒体の流れによって剥がされる虞もない。従って、液状ガスケット26による連通穴24,25周りのシール性を確保し、連通穴24,25周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することができる。
【0070】
また、内周側バーリング29,31は、入口ヘッダ部22および入口ヘッダ部23に直角に設けられ、これに対し、外周側バーリング30,32は、内周側バーリング29,31の直角コーナ部との間に液状ガスケット溜り33が形成されるように斜めに設けられているため、外周側バーリング30,32を斜めに加工することにより、内周側バーリング29,31の直角コーナ部との間に所要の液状ガスケット溜り33、すなわち液状ガスケット26が熱媒体の流れに晒されず、かつ空気と接触される液状ガスケット溜り33を形成することができる。従って、液状ガスケット溜り33にはみ出した液状ガスケット26を確実に硬化させることができるとともに、熱媒体の流れに直接晒されないようにすることができ、液状ガスケット26による連通穴24,25周りのシール性を確保し、液状ガスケット26が熱媒体の流れで剥がされることによる連通穴24,25周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することができる。
【0071】
また、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の連通穴24,25周りに設けられているバーリング29,30および31,32は、各々熱媒体の流れ方向に沿うように互いに逆向きに設けられている。このため、入口ヘッダ部22側と出口ヘッダ部23側において熱媒体の流れ方向が逆になったとしても、熱媒体の流れに対するヘッダ部22,23のバーリング29,30および31,32の配置関係を熱媒体の流れ方向に沿う関係に保つことができる。
【0072】
その結果、バーリング29,30および31,32による熱媒体の流れに対する圧損を小さくすることができるとともに、いずれのヘッダ部22,23側においても液状ガスケット26を熱媒体の流れに直接晒されないようにすることができ、液状ガスケット26が熱媒体の流れで剥がされることによる連通穴24,25周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することができる。また、2枚の成形プレートを接合して構成される扁平熱交チューブ17を、1つの型で成形した1種のプレートを引っ繰り返して用いることにより構成することができるため、更に低コスト化することができる。
【0073】
入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の連通穴24,25周りを密封するシール材が、液状ガスケット26とされているため、扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18を順次積層して組み立てる際に、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の連通穴24,25周りに液状ガスケット26を塗布し、それを熱交押え部材16により扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18を押圧して互いに密着させると同時に、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の全面に密接させることができる。従って、液状ガスケット26を用いて、熱媒体加熱装置10を容易に組み立てることができるとともに、液状ガスケット26によるシール性を確実に確保することができる。
【0074】
また、複数枚積層された扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18を、ケーシング11の内面に対して熱交押え部材15を介して締め付け固定することにより、互いに密着させて固定するようにしているため、各扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18をケーシング11に組み付ける過程で互いに密着させ、液状ガスケット26によるシール性を確保することができるとともに、扁平熱交チューブ17とPTCヒータ18間の接触熱抵抗を低減し、伝熱効率を向上することができ、従って、熱媒体加熱装置10の生産性を向上することができる。
【0075】
アルミ合金製の熱交押え部材16と制御基板13との間に、発熱素子であるIGBT等の半導体スイッチング12を設けることとした。このため、熱交押え部材16および制御基板13によって、積層された扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18を押圧するとともに、熱交押え部材16をヒートシンクとして半導体スイッチング12を扁平熱交チューブ17からの冷熱によって冷却することができる。従って、半導体スイッチング12の冷却性能を確保し、熱媒体加熱装置10をより高性能化することができる。また、積層された扁平熱交チューブ17の押圧と半導体スイッチング12の冷却とを熱交押え部材16によって兼用化しているため、熱媒体加熱装置10を構成する部品点数を減らすことができ、従って、熱媒体加熱装置10全体を小型化することができる。
【0076】
熱媒体の導入を行う熱媒体入口路(熱媒体導出入路)11dと熱媒体の導出を行う熱媒体出口路(熱媒体導出入路)11eとをロアケース11bに一体的に形成した構成としている。このため、熱媒体を熱媒体加熱装置10に供給する際に、積層された扁平熱交チューブ17にかかる応力を分散することができ、従って、扁平熱交チューブ17に係る荷重を低減することができる。
【0077】
制御基板13および半導体スイッチング12等からなるPTCヒータ18に対する通電を制御する制御系を、基板サブアッセンブリ15として一体化し、これをケーシング11内に内蔵したことにより、各電極板14との電気的な接続においては、基板サブアッセンブリ15を構成している制御基板13に設けられている各端子台13aと、各電極板14に設けられている端子14aとを端子接続用ネジ14bで固定するのみでよく、電気的に接続するための配線(ハーネス)を不要とすることができる。このため、配線経路が複雑化することがなく、組み付け性を容易化することができるとともに、部品数を削減することができ、制御系の配線経路を簡素化して、扁平熱交チューブ17、PTCヒータ18およびその制御系を、ケーシング11内に一体に内蔵した高性能でコンパクトな熱媒体加熱装置10を得ることができる。
【0078】
また、制御基板13に接続されるIGBT等の半導体スイッチング(発熱素子)12を扁平熱交チューブ17の入口ヘッダ部22側に近い位置に配設した構成としている。このため、PTCヒータ18により加熱される前の比較的温度の低い熱媒体によって、半導体スイッチング12を冷却することができ、半導体スイッチング12の冷却性能を一段と高めることができる。
【0079】
さらに、上記の如く、伝熱効率が向上されるとともに、熱媒体の漏えい等がなく、軽量でコンパクト化された高性能の熱媒体加熱装置10を組み込み、放熱器6に循環される熱媒体を加熱することができるため、車両用空調装置1の信頼性および空調性能の向上を図ることができるとともに、設置スペースを低減し、車両に対する搭載性を向上することができる。
【0080】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図10を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、連通穴24,25周りに設けられるバーリングの構成が異なっている。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、図10に示されるように、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の連通穴24,25周りに設けられるバーリング39,40および41,42において、外周側バーリング40,42の高さが、内周側バーリング39,41の高さよりも低くされ、その間に形成される段部により内周側バーリング39,41の外周面側に液状ガスケット溜り43が形成された構成とされている。
【0081】
上記のように、外周側バーリング40,42の高さを内周側バーリング39,41の高さよりも低くすることにより、その間に形成される段部にて内周側バーリング39,41の外周面側に、内周側バーリング39,41の内周を流れる熱媒体に対して直接晒されることがなく、かつ空気と接触される液状ガスケット溜り43を形成することができる。このため、液状ガスケット溜り43にはみ出した液状ガスケット26を空気と接触させて確実に硬化させることができるとともに、熱媒体の流れに直接晒されないようにすることができ、液状ガスケット26による連通穴24,25周りのシール性を確保し、液状ガスケット26が熱媒体の流れで剥がされることによる連通穴24,25周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することが可能となる。
【0082】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図11を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1および第2実施形態に対して、連通穴24,25周りに設けられるバーリングの構成が異なっている。その他の点については、第1および第2実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態においては、図11に示されるように、入口ヘッダ部22および出口ヘッダ部23の連通穴24,25周りに設けられるバーリング49,50および51,52において、外周側バーリング50,52の先端に外側にカールされたカーリング部50a,52aが形成され、該カーリング部50a,52aと内周側バーリング49,51の外周面側との間に液状ガスケット溜り53が形成された構成とされている。
【0083】
このように、外周側バーリング50,52の先端に外側にカールされたカーリング部50a,52aを形成することにより、このカーリング部50a,52aと内周側バーリング49,51の外周面側との間に、内周側バーリング49,51の内周を流れる熱媒体に対して直接晒されることがなく、かつ空気と接触される液状ガスケット溜り53を形成することができる。従って、液状ガスケット溜り53にはみ出した液状ガスケット26を確実に硬化させることができるとともに、熱媒体の流れに直接晒されないようにすることができ、液状ガスケット26による連通穴24,25周りのシール性を確保し、液状ガスケット26が熱媒体の流れで剥がされることによる連通穴24,25周りからの熱媒体の漏えいを確実に防止することが可能となる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記した実施形態では、扁平熱交チューブ17を3層に積層し、各々の間にPTCヒータ18を組み込んだ構成としているが、これに限らず、扁平熱交チューブ17およびPTCヒータ18の積層枚数を増減してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0085】
1 車両用空調装置
6 放熱器
10 熱媒体加熱装置
10A 熱媒体循環回路
16 熱交押え部材
17,17a,17b,17c 扁平熱交チューブ
18 PTCヒータ
20 扁平チューブ部
22 入口ヘッダ部
23 出口ヘッダ部
24,25 連通穴
26 液状ガスケット
29,31 バーリング(内周側バーリング)
30,32 バーリング(外周側バーリング)
30a,32a 小径部分
30b,32b 非接触部分
33 液状ガスケット溜り
39,41 バーリング(内周側バーリング)
40,42 バーリング(外周側バーリング)
43 液状ガスケット溜り
49,51 バーリング(内周側バーリング)
50,52 バーリング(外周側バーリング)
50a,52a カーリング部
53 液状ガスケット溜り


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が流通される扁平チューブ部の両端に入口ヘッダ部および出口ヘッダ部が設けられている複数枚の扁平熱交チューブと、
互いに積層される前記各扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に塗布され、該入口ヘッダ部および出口ヘッダ部に設けられている連通穴周りをシールする液状ガスケットと、
前記各扁平熱交チューブの前記扁平チューブ部間に組み込まれるPTCヒータと、
互いに積層された前記各扁平熱交チューブおよび前記PTCヒータを押圧して密着させる熱交押え部材と、を備え、
前記各扁平熱交チューブの前記入口ヘッダ部間および前記出口ヘッダ部間の前記連通穴周りに、互いに嵌合されるバーリングが設けられ、該バーリングによって前記液状ガスケットが熱媒体の流れに対して直接晒されず、かつ空気と接触される前記液状ガスケット溜りが形成されていることを特徴とする熱媒体加熱装置。
【請求項2】
前記液状ガスケット溜りは、互いに嵌合される前記バーリング間に形成され、該バーリングは、内周側のバーリングの外周に嵌合される外周側のバーリングに、前記内周側バーリングの外周に接する小径部分と、該内周側バーリングの外周径よりも大径の非接触部分とが周方向に交互に形成された構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項3】
前記内周側のバーリングは、前記入口ヘッダ部および前記出口ヘッダ部に直角に設けられているのに対して、前記外周側のバーリングは、前記内周側バーリングの前記直角コーナ部との間に前記液状ガスケット溜りが形成されるように斜めに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項4】
互いに嵌合される前記バーリングは、内周側のバーリング高さに対して外周側のバーリング高さが低くされ、その段部により前記内周側バーリングの外周面側に前記液状ガスケット溜りが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項5】
互いに嵌合される前記バーリングのうち、外周側のバーリングの先端に外側にカールされたカーリング部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱媒体加熱装置。
【請求項6】
前記入口ヘッダ部および出口ヘッダ部の前記連通穴周りに設けられている前記バーリングは、各々熱媒体の流れ方向に沿うように互いに逆向きに設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の熱媒体加熱装置。
【請求項7】
空気流路中に配設されている放熱器に対して、熱媒体加熱装置で加熱された熱媒体が循環可能に構成されている車両用空調装置において、
前記熱媒体加熱装置が、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の熱媒体加熱装置とされていることを特徴とする車両用空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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