説明

熱媒循環式暖房装置

【課題】 外部への放熱のし易さの程度の違いに拘らず、暖房対象空間を適切に暖房し得る熱媒循環式暖房装置を提供する。
【解決手段】 暖房端末1に加熱した熱媒を熱媒循環路2を通して供給し且つ暖房端末1に供給する供給熱量を調節自在な熱源手段Gと、暖房対象空間Rの実暖房負荷が大きくなるほど単位時間当たりの供給熱量が多くなるように目標制御条件を求めて、その求めた目標制御条件にて熱源手段Gの作動を制御する供給熱量調節制御を実行する制御手段3とが設けられ、暖房対象空間Rにおける外部への放熱のし易さの程度を示す放熱指標を入力する指標入力手段4が設けられ、制御手段3は、供給熱量調節制御において、指標入力手段4にて入力される放熱指標に基づいて、その放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、実暖房負荷が同じであるときの単位時間当たりの供給熱量が多くなるように目標制御条件を求めるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房対象空間に対して放熱作用する暖房端末と、
その暖房端末に加熱した熱媒を熱媒循環路を通して供給し且つ前記暖房端末に供給する供給熱量を調節自在な熱源手段と、
前記暖房対象空間の実暖房負荷に応じて、その実暖房負荷が大きくなるほど単位時間当たりの前記供給熱量が多くなるように目標制御条件を求めて、その求めた目標制御条件にて前記熱源手段の作動を制御する供給熱量調節制御を実行する制御手段とが設けられた熱媒循環式暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる熱媒循環式暖房装置は、熱源手段により、加熱した熱媒を熱媒循環路を通して暖房端末に循環供給して、その暖房端末にて暖房対象空間に対して放熱作用させることにより、暖房対象空間を暖房するものであり、制御手段により、暖房対象空間の実暖房負荷に応じて、その実暖房負荷が大きくなるほど単位時間当たりの供給熱量が多くなるように目標制御条件を求めて、その求めた目標制御条件にて熱源手段の作動を制御する供給熱量調節制御を実行することにより、暖房対象空間内の温度が暖房目標温度になるように暖房対象空間を暖房する構成となっている。
【0003】
このような熱媒循環式暖房装置において、従来は、制御手段を、暖房対象空間の実暖房負荷が同一であれば目標制御条件を一義的に求めるように構成していた。
つまり、暖房端末が設けられる暖房対象空間が異なっても、暖房対象空間の実暖房負荷が同一であれば、目標制御条件が同一に求められる構成となっていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−121078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、暖房対象空間が異なると、暖房対象空間における外部への放熱のし易さの程度(以下、放熱程度と記載する場合がある)が異なる場合がある。
例えば、次世代省エネルギー基準に適合する住宅は、新省エネルギー基準に適合する住宅に比べて、放熱程度が小さい。
【0006】
そして、互いに放熱程度が異なる暖房対象空間では、実暖房負荷が互いに同一であって、単位時間当たりの供給熱量が同じ状態で暖房端末に熱媒が供給されても、放熱程度の違いにより、暖房の効き具合が異なるものである。
つまり、放熱程度が小さい暖房対象空間では、それよりも放熱程度が大きい暖房対象空間に比べて放熱量が少ないので、暖房の効き具合が良い。
【0007】
しかしながら、従来では、暖房対象空間の実暖房負荷が同一であれば目標制御条件を一義的に求める構成であるので、以下に説明するように、暖房対象空間の放熱程度に応じた適切な目標制御条件を求めることができず、延いては、暖房対象空間を適切に暖房することができないという問題があった。
即ち、放熱程度が異なっても、実暖房負荷が同一であれば、目標制御条件が同一に求められて、その同一の目標制御条件にて熱源手段の作動が制御される。
そして、例えば、放熱程度が基準の暖房対象空間を適切に暖房することが可能なように、目標制御条件を実暖房負荷に応じて求めるように構成した場合は、基準の放熱程度の暖房対象空間では、適切に暖房されたとしても、その基準の放熱程度の暖房対象空間よりも放熱程度が大きい暖房対象空間では、暖房の効き具合が弱過ぎて暖房対象空間内の温度が暖房目標温度を低温側に逸脱する虞があり、又、前記基準の放熱程度の暖房対象空間よりも放熱程度が小さい暖房対象空間では、暖房の効き具合が強過ぎて暖房対象空間内の温度が暖房目標温度を高温側に逸脱する虞があり、いずれも適切に暖房することができないのである。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部への放熱のし易さの程度の違いに拘らず、暖房対象空間を適切に暖房し得る熱媒循環式暖房装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱媒循環式暖房装置は、暖房対象空間に対して放熱作用する暖房端末と、
その暖房端末に加熱した熱媒を熱媒循環路を通して供給し且つ前記暖房端末に供給する供給熱量を調節自在な熱源手段と、
前記暖房対象空間の実暖房負荷に応じて、その実暖房負荷が大きくなるほど単位時間当たりの前記供給熱量が多くなるように目標制御条件を求めて、その求めた目標制御条件にて前記熱源手段の作動を制御する供給熱量調節制御を実行する制御手段とが設けられたものであって、
第1特徴構成は、前記暖房対象空間における外部への放熱のし易さの程度を示す放熱指標を入力する指標入力手段が設けられ、
前記制御手段は、前記供給熱量調節制御において、前記指標入力手段にて入力される放熱指標に基づいて、その放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、前記実暖房負荷が同じであるときの前記単位時間当たりの供給熱量が多くなるように前記目標制御条件を求めるように構成されている点を特徴とする。
【0010】
即ち、入力手段により、暖房対象空間の放熱程度を示す放熱指標が入力され、制御手段により、指標入力手段にて入力される放熱指標に基づいて、その放熱指標にて示される放熱程度が大きいほど、実暖房負荷が同じであるときの単位時間当たりの供給熱量が多くなるように目標制御条件が求められるので、暖房対象空間の放熱程度に応じた適切な目標制御条件が求められるようにすることが可能となる。
【0011】
つまり、目標制御条件が、暖房対象空間の実暖房負荷に応じ且つ暖房対象空間の放熱程度に応じた状態で求められる。
そして、暖房対象空間の実暖房負荷及び放熱程度に応じた目標制御条件にて熱源手段の作動が制御されるので、暖房対象空間の放熱程度が大きくても、暖房の効き具合が弱過ぎて暖房対象空間内の温度が暖房目標温度を低温側に逸脱するのを抑制することが可能となり、又、暖房対象空間の放熱程度が小さくても、暖房の効き具合が強すぎて暖房対象空間内の温度が暖房目標温度を高温側に逸脱するのを抑制することが可能となり、暖房対象空間の放熱程度の違いに拘らず暖房対象空間が適切に暖房される。
従って、外部への放熱のし易さの程度の違いに拘らず、暖房対象空間を適切に暖房し得る熱媒循環式暖房装置を提供することができるようになった。
【0012】
第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記指標入力手段が、前記放熱指標Iを次の指標導出式
I={(熱媒往き温度−熱媒戻り温度)×熱媒流量×補正係数}/{暖房対象空間の広さを示す広さ情報×(暖房対象空間内の温度−外気温度)}
により求める指標導出手段を備えて構成されている点を特徴とする。
【0013】
即ち、指標導出手段により、放熱指標Iが上記の指標導出式にて求められ、そのように指標導出手段にて求められた放熱指標Iが指標入力手段により入力される。
【0014】
つまり、熱媒循環路を通して暖房端末に供給される熱媒の温度、即ち熱媒往き温度から、熱媒循環路を通して暖房端末から戻る熱媒の温度、即ち熱媒戻り温度を減じた熱媒温度差に、熱媒循環路を通して暖房端末に供給される熱媒流量と補正係数とを乗ずることにより求められる熱量は、熱源手段にて暖房対象空間に供給された熱量(以下、実供給熱量と記載する場合がある)を示すものである。そして、その実供給熱量を、熱源手段にて熱媒を熱媒循環路を通して暖房端末に循環供給して暖房対象空間を暖房する状態で、暖房対象空間内の温度変化が小さくなって暖房対象空間内の温度が安定した状態において求めると、実供給熱量を暖房対象空間の放熱のし易さの程度を示すものとして求めることが可能となる。
【0015】
そして、その実供給熱量を、暖房対象空間内の温度から外気温度を減じた温度差(以下、空間内外温度差と記載する場合がある)及び暖房対象空間の広さを示す広さ情報にて除した値を、放熱指標として求めることにより、その放熱指標を空間内外温度差及び暖房対象空間の広さを示す情報にて正規化された実供給熱量として求めることになり、放熱指標を、暖房対象空間の広さの違い及び空間内外温度差の違いに拘らず、熱媒循環式暖房装置が設置された暖房対象空間の放熱程度に応じたものとして適切に求めることができる。
【0016】
従って、暖房対象空間の広さの違い及び空間内外温度差の違いに拘らず、暖房対象空間の放熱程度に応じたものとして適切に求められた放熱指標に基づいて、目標制御条件が求められて、そのように求められた目標制御条件にて熱源手段の作動が制御されるので、外部への放熱のし易さの程度の違いに拘らず、暖房対象空間をより一層適切に暖房することができるようになった。
【0017】
第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、
前記熱媒往き温度を検出する熱媒往き温度検出手段と、
前記熱媒戻り温度を検出する熱媒戻り温度検出手段と、
前記熱媒流量を検出する熱媒流量検出手段と、
前記暖房対象空間内の温度を検出する空間内温度検出手段と、
前記外気温度を検出する外気温度検出手段と、
前記広さ情報を入力する人為操作式の広さ情報入力手段とが設けられ、
前記指標導出手段は、前記熱媒往き温度検出手段、前記熱媒戻り温度検出手段、前記熱媒流量検出手段、前記空間内温度検出手段及び前記外気温度検出手段夫々の検出情報、並びに、前記広さ情報入力手段の入力情報に基づいて、前記指標導出式により前記放熱指標を求めるように構成されている点を特徴とする。
【0018】
即ち、熱媒往き温度検出手段により前記熱媒往き温度が検出され、熱媒戻り温度検出手段により前記熱媒戻り温度が検出され、 熱媒流量検出手段により前記熱媒流量が検出され、空間内温度検出手段により前記暖房対象空間内の温度が検出され、外気温度検出手段により前記外気温度が検出され、人為操作式の広さ情報入力手段により前記広さ情報が人為的に入力される。
そして、指標導出手段により、前記熱媒往き温度検出手段、前記熱媒戻り温度検出手段、前記熱媒流量検出手段、前記空間内温度検出手段及び前記外気温度検出手段夫々の検出情報、並びに、前記広さ情報入力手段の入力情報に基づいて、前記指標導出式により前記放熱指標が求められる。
従って、単に広さ情報を入力するだけの簡単な操作にて、放熱指標を暖房対象空間の広さの違い及び空間内外温度差の違いに拘らず適切に求めることができるようになった。
【0019】
第4特徴構成は、上記第2又は第3特徴構成に加えて、
前記補正係数を変更設定する係数設定手段が設けられている点を特徴とする。
【0020】
即ち、係数設定手段により、前記指標導出式における補正係数が変更設定される。
【0021】
つまり、前記指標導出式にて求められる放熱指標は、熱媒循環路の長さ等、暖房対象空間そのものの放熱程度以外の放熱要因(以下、外部的放熱要因と記載する場合がある)により変動する場合がある。例えば、熱媒温度差に熱媒流量を乗じて求められる熱量は、外部的放熱要因により変動するので、指標導出式にて求められる放熱指標も外部的放熱要因により変動することになる。
そこで、補正係数として、指標導出式にて求められる放熱指標における外部的放熱要因による変動を補正するものとして設定して、その補正係数を係数設定手段により変更設定することができるようにすることにより、補正係数を、外部的放熱要因が放熱指標の導出に影響を与える影響度合いに応じたものとして設定することが可能となるので、放熱指標を外部的放熱要因の影響度合いの違いに拘らず適正に求めることが可能となる。
【0022】
従って、外部的放熱要因の影響度合いの違いに拘らず適切に求められた放熱指標に基づいて、目標制御条件が求められて、そのように求められた目標制御条件にて熱源手段の作動が制御されるので、暖房対象空間そのものの放熱のし易さ以外の外部的放熱要因に拘らず、暖房対象空間を適切に暖房することができるようになった。
【0023】
第5特徴構成は、上記第1〜第4特徴構成のいずれかに加えて、
前記暖房端末が、前記熱媒循環路に接続される熱媒流通管が配設されて、前記暖房対象空間の床に敷設される床暖房パネルにて構成され、
前記熱源手段に、前記熱媒循環路を開閉して前記暖房端末への熱媒の供給を断続する開閉手段が備えられ、
前記制御手段は、前記供給熱量調節制御として、
前記暖房対象空間内の温度と暖房目標温度との温度差を前記実暖房負荷として求め、且つ、求めた温度差に応じて、前記開閉手段を開状態に維持する開時間と前記開閉手段を閉状態に維持する閉時間との設定周期における目標開閉比率を前記目標制御条件として求めて、前記設定周期における開閉比率が前記目標開閉比率になるように前記開閉手段の開閉作動を制御することを周期的に繰り返す制御を実行するように構成され、且つ、
前記放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、前記温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率を求めるように構成されている点を特徴とする。
【0024】
即ち、熱源手段により、熱媒が熱媒循環路を通して床暖房パネルに循環供給されて、その床暖房パネルが暖房対象空間に対して放熱作用することにより、暖房対象空間が暖房される。
そして、制御手段により、前記供給熱量調節制御として、暖房目標温度から暖房対象空間内の温度を減じた温度差(以下、目標対実温度差と記載する場合がある)を前記実暖房負荷として求め、且つ、求めた目標対実温度差に応じて、開閉手段を開状態に維持する開時間と開閉手段を閉状態に維持する閉時間との設定周期における目標開閉比率を前記目標制御条件として求めて、前記設定周期における開閉比率が前記目標開閉比率になるように開閉手段の開閉作動を制御することを周期的に繰り返す制御が実行され、且つ、前記放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、前記目標対実温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率を求められる。
【0025】
つまり、目標制御条件として、前記設定周期における目標開閉比率が、目標対実温度差が大きくなるほど開時間の割合が大きくなって単位時間当たりの供給熱量が多くなるように、且つ、放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、前記目標対実温度差が同じであるときの目標開閉比率における開時間の割合が大きくなって単位時間当たりの供給熱量が多くなるように求められるので、目標制御条件が、暖房対象空間の実暖房負荷に応じ且つ暖房対象空間の放熱程度に応じた状態で求められる。
そして、暖房対象空間の実暖房負荷及び放熱程度に応じた目標制御条件にて熱源手段の作動が制御されるので、暖房対象空間の放熱程度が大きくても、暖房の効き具合が弱過ぎて暖房対象空間内の温度が暖房目標温度を低温側に逸脱するのを抑制することが可能となり、又、暖房対象空間の放熱程度が小さくても、暖房の効き具合が強すぎて暖房対象空間内の温度が暖房目標温度を高温側に逸脱するのを抑制することが可能となり、暖房対象空間の放熱程度の違いに拘らず暖房対象空間が適切に暖房される。
従って、外部への放熱のし易さの程度の違いに拘らず、暖房対象空間を適切に暖房し得る床暖房タイプの熱媒循環式暖房装置を提供することができるようになった。
【0026】
第6特徴構成は、上記第5特徴構成に加えて、
外気温度を検出する外気温度検出手段が設けられ、
前記制御手段は、前記供給熱量調節制御において、前記外気温度検出手段にて検出される外気温度に基づいて、その検出外気温度が低いほど、前記目標対実温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率を求めるように構成されている点を特徴とする。
【0027】
即ち、制御手段により、前記供給熱量調節制御において、前記外気温度検出手段にて検出される外気温度に基づいて、その検出外気温度が低いほど、前記目標対実温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率が求められる。
【0028】
つまり、床暖房パネルに供給される熱量が同じであっても、外気温度が低いほど、暖房対象空間から外部へ放熱し易くなって、暖房が効き難くなる。
そこで、外気温度検出手段による検出外気温度が低いほど、前記目標対実温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなって単位時間当たりの供給熱量が多くなるように、目標開閉比率を目標制御条件として求めるようにすることにより、目標制御条件を外気温度に応じた状態で求めることが可能となる。
そして、外気温度に応じた目標制御条件にて熱源手段の作動が制御されるので、外気温度が低くても、暖房の効き具合が弱過ぎて暖房対象空間内の温度が暖房目標温度を低温側に逸脱するのを抑制することが可能となり、又、外気温度が高くても、暖房の効き具合が強すぎて暖房対象空間内の温度が暖房目標温度を高温側に逸脱するのを抑制することが可能となる。
従って、外気温度の変動に拘らず、暖房対象空間を適切に暖房することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明の第1実施形態を説明する。
図1に示すように、熱媒循環式暖房装置は、居間、和室等の暖房対象空間としての暖房対象室Rに対して放熱作用する暖房端末としての床暖房パネル1、その床暖房パネル1に加熱した熱媒を熱媒循環路2を通して供給し且つ床暖房パネル1に供給する供給熱量を調節自在な熱源手段としての熱源機G、熱媒循環式暖房装置の運転を制御する制御手段としての制御部3、及び、その制御部3と通信自在なリモコンC等を備えて構成してある。
そして、前記制御部3を、暖房対象室Rの実暖房負荷に応じて、その実暖房負荷が大きくなるほど単位時間当たりの前記供給熱量が多くなるように目標制御条件を求めて、その求めた目標制御条件にて前記熱源機Gの作動を制御する供給熱量調節制御を実行するように構成してある。
【0030】
本発明では、暖房対象室Rにおける外部への放熱のし易さの程度を示す放熱指標を入力する指標入力手段としての指標入力部4を設け、前記制御部3を、前記供給熱量調節制御において、指標入力部4にて入力される放熱指標に基づいて、その放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、前記実暖房負荷が同じであるときの前記単位時間当たりの供給熱量が多くなるように前記目標制御条件を求めるように構成してある。
【0031】
以下、熱媒循環式暖房装置の各部について、説明を加える。
前記熱源機Gは、床暖房パネル1に供給する熱媒の熱媒供給温度を切換自在に構成し、熱媒循環路2の往き側流路2aおよび戻り側流路2bの夫々に接続された熱源機内流路6の途中に、熱源機内流路6における熱媒を貯留するシスターン7、床暖房パネル1に熱媒を循環供給させるための循環ポンプ8、及び、熱交換器10等を設け、更に、その熱交換器10を加熱するバーナ9、そのバーナ9に燃焼用空気を供給するファン11、及び、熱媒循環路2を開閉して床暖房パネル1への熱媒の供給を断続する開閉手段としての熱動弁5等を備えて構成してある。
【0032】
そして、バーナ9に燃料ガスを供給する燃料供給路12には、燃料ガスの供給を断続する燃料ガス開閉弁13、燃料ガス供給量を調整する燃料ガス調整弁14を設け、バーナ9に点火するイグナイタ15及びバーナ9の着火を確認するフレームロッド16等も設けてある。
【0033】
前記熱源機内流路6おける熱交換器10よりも熱媒通流方向の下流側には、前記床暖房パネル1に供給される熱媒の温度、即ち熱媒往き温度を検出する熱媒往き温度検出手段としての往きサーミスタ17、及び、床暖房パネル1に供給される熱媒流量を検出する熱媒流量検出手段としての熱媒流量センサ18を設け、熱源機内流路6におけるシスターン7よりも熱媒通流方向の上流側には、前記床暖房パネル1から戻される熱媒の温度、即ち熱媒戻り温度を検出する熱媒戻り温度検出手段としての戻りサーミスタ19を設けてある。
前記熱動弁5は、熱媒循環路2の往き側流路2aに設け、熱源機Gの運転中においてこの熱動弁5を開閉することにより、床暖房パネル1への熱媒の供給を断続するように構成してある。
【0034】
前記往きサーミスタ17、前記熱媒流量センサ18及び前記戻りサーミスタ19夫々の検出情報が前記制御部3に入力されるように構成してある。
【0035】
前記床暖房パネル1は、図2にも示すように、パネル形成体1a内に熱媒流通管1bを埋入状態に配設して構成し、その床暖房パネル1を暖房対象室Rの床Rfに敷設し、熱媒流通管1bの両端夫々に、熱媒循環路2の往き側流路2a、戻り側流路2b夫々を接続して、前記熱源機Gにより、加熱した熱媒を熱媒循環路2を通して床暖房パネル1に循環供給するように構成してある。
【0036】
床暖房パネル1の表面には、フローリング等の床仕上げ材20を敷設する。
その床仕上げ材20には、厚さが標準厚(例えば、12mm)の標準型と、厚さが標準厚よりも薄い薄厚(例えば3mm)の薄型のものとがあり、それら標準型の床仕上げ材20と薄型の床仕上げ材20のいずれかを選択的に敷設することが可能なようになっている。
【0037】
前記リモコンCは、前記床暖房パネル1が敷設された暖房対象室R内に設置し、そのリモコンCには、暖房対象室R内の温度(以下、単に室内温度と記載する場合がある)を検出する空間内温度検出手段としての室温センサ21を設けてある。
更に、リモコンCには、熱源機Gの運転開始及び運転停止を指令する運転スイッチ22、及び、暖房目標温度を設定する温度設定部23等を設けてある。
前記制御部3とリモコンCとは、室温センサ21の検出情報、運転スイッチ22の指令情報及び温度設定部23の設定情報夫々を通信自在なように構成してある。ちなみに、暖房目標温度は、例えば、16°C〜28°Cの間で2°C刻みに7段階に設定可能に構成してある。
【0038】
前記熱源機Gの内部には、熱源機Gの内部の雰囲気温度を外気温度として検出する外気温度検出手段としての外気温センサ24を設けてある。
更に、熱源機Gの内部には、前記放熱指標を求める放熱指標導出モードの実行を指令する人為操作式の指標導出モード指令部25、暖房対象室Rの広さを示す広さ情報を入力する人為操作式の広さ情報入力手段としての広さ情報入力部26、床仕上げ材20の厚さを示す床仕上げ材厚さ情報を入力する人為操作式の仕上げ材厚さ情報入力部27、及び、前記熱媒循環路2の長さを示す循環路長さ情報を入力する人為操作式の循環路長さ情報入力部28等を設けてある。そして、外気温センサ24の検出情報、指標導出モード指令部25の指令情報、並びに、広さ情報入力部26、仕上げ材厚さ情報入力部27及び循環路長さ情報入力部28夫々の入力情報が前記制御部3に入力されるように構成してある。
【0039】
前記広さ情報入力部26は、前記広さ情報として、暖房対象室Rの面積を入力するように構成してある。
前記仕上げ材厚さ情報入力部27は、前記床仕上げ材厚さ情報として、前記床仕上げ材22が標準厚か薄厚かを択一的に入力するように構成してある。
前記循環路長さ情報入力部28は、前記循環路長さ情報として、前記熱媒循環路2の往き側流路2aの長さと戻り側流路2bの長さを合わせた循環路長が標準範囲である標準循環路長か、その標準循環路長よりも長い長循環路長か、その標準循環路長よりも短い短循環路長かを択一的に入力するように構成してある。
【0040】
前記指標入力部4は、前記往きサーミスタ17、前記戻りサーミスタ19、前記熱媒流量センサ18、前記室温センサ21及び前記外気温センサ24夫々の検出情報、並びに、前記広さ情報入力部26及び前記循環路長さ情報入力部28夫々の入力情報に基づいて、放熱指標Iを次の指標導出式(1)にて求める指標導出手段としての指標導出部29を備えて構成してある。
【0041】
この実施形態では、指標導出部29を、前記制御部3を用いて構成することにより、前記指標入力部4を前記制御部3を用いて構成してある。そして、制御部3を、指標入力部4を構成する指標導出部29にて求めた放熱指標に基づいて、前述のように目標制御条件を求めるように構成してある。
【0042】
I={(Tf−Tb)×Q×K1×K2}/{S×(Ti−To)}……………(1)
【0043】
但し、
I:放熱指標(W/m2・°C)
Tf:前記往きサーミスタ17にて検出された熱媒往き温度(°C)
Tb:前記戻りサーミスタ19にて検出された熱媒戻り温度(°C)
Q:前記熱媒流量センサ18にて検出された熱媒流量(リットル/h)
K1:cal(カロリー)をW(ワット)に換算するための換算用補正係数であり、0.86に設定する。
K2:上記の指標導出式(1)により放熱指標Iを求めるに当たって、熱媒循環路2の長さの違いによる変動を補正するための循環路長用補正係数であって、前記循環路長さ情報入力部28にて入力される循環路長さ情報に基づいて、変更設定するように構成してある。
例えば、前記循環路長さ情報入力部28にて標準循環路長が入力されたときは0.80に、長循環路長が入力されたときは0.75に、短循環路長が入力されたときは0.85に夫々設定されるように構成する。
S:前記広さ情報入力部26にて入力された暖房対象室Rの面積(m2
Ti:前記室温センサ21にて検出された室内温度(°C)
To:前記外気温センサ24にて検出された外気温度(°C)
【0044】
前記循環路長用補正係数について説明を加える。
前記熱媒循環路2の長さが長くなるほど、熱媒循環路2からの放熱量が多くなるため、上記の指標導出式(1)において、(Tf−Tb)×Qにて求められる熱量が多くなって、暖房対象室Rの見掛け上の放熱量が多くなる。
そこで、前記循環路長用補正係数を、前記循環路長さ情報入力部28にて入力される前記循環路長さ情報に基づいて、熱媒循環路2の長さが長くなるほど小さくなるように変更設定するようにして、指標導出式(1)により放熱指標を求めるに当たって、熱媒循環路2の長さの違いに起因する変動を抑制するように構成してある。
つまり、前記循環路長さ情報入力部28を、前記循環路長用補正係数を変更設定する係数設定手段として機能させるように構成してある。
【0045】
上記の指標導出式(1)により求められる放熱指標の数値が大きいほど、放熱のし易さの程度が大きくなる。
そして、その指標導出式(1)により求められる放熱指標は、住宅の省エネルギー基準における熱損失係数(Q値)に相当するものであり、その熱損失係数は、IV地域を対象に
すると、例えば、「新省エネルギー基準」では3.95W/m2・°Cに定められ、「次世代省エネルギー基準」では2.7W/m2・°Cに定められている。
【0046】
次に、前記制御部3の制御動作について、説明する。
前記制御部3は、リモコンCの運転スイッチ22から熱源機Gの運転開始が指令されると、熱源機Gの運転を開始させ、運転スイッチ22から熱源機Gの運転停止が指令されると、熱源機Gの運転を停止させるように構成されている。
【0047】
前記熱源機Gの運転開始および運転停止における制御部3の制御動作について説明を加えると、制御部3は、運転スイッチ22から暖房運転の開始を指令する制御情報を受信すると、ファン11を作動させて、燃料ガス開閉弁13および燃料ガス調整弁14を開弁させてバーナ9の燃焼を開始するとともに、床暖房パネル1に供給される熱媒流量が設定流量になるように循環ポンプ8を作動させて、熱源機Gの運転を開始する。又、制御部3は、運転スイッチ22から暖房運転の停止を指令する制御情報を受信すると、燃料ガス開閉弁13および燃料ガス調整弁14を閉弁させてバーナ9の燃焼を停止したのち、ファン11の作動を停止させるとともに、循環ポンプ8の作動を停止させて、熱源機Gの運転を停止する。
【0048】
そして、制御部3を、床暖房パネル1に対して熱媒を供給する暖房運転を開始したときに、暖房運転を開始してから急速昇温用の設定時間が経過するまでの間、定常運転用の温度よりも高い急速昇温用の温度の熱媒を循環供給させる急速昇温制御を行うホットダッシュ運転を実行し、そのホットダッシュ運転を終了した後の定常運転において、前記供給量調節制御を実行するように構成してある。
【0049】
そして、制御部3を、前記供給量調節制御として、室内温度と暖房目標温度との温度差(即ち、目標対実温度差であり、暖房目標温度から室内温度を減じて求められる)を前記実暖房負荷として求め、且つ、求めた目標対実温度差に応じて、熱動弁5を開状態に維持する開時間と熱動弁5を閉状態に維持する閉時間との設定周期における目標開閉比率を前記目標制御条件として求めて、前記設定周期における開閉比率が前記目標開閉比率になるように前記熱動弁5の開閉作動を制御することを周期的に繰り返す制御を実行するように構成し、且つ、前記指標導出部29にて求めた放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、前記目標対実温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率を求めるように構成してある。
【0050】
又、前記制御部3は、前記指標導出モード指令部25より前記放熱指標導出モードの実行が指令されると、熱源機Gの運転を開始させて放熱指標導出モードを実行し、前記指標導出モード指令部25より放熱指標導出モードの停止が指令されると、熱源機Gの運転を停止させて放熱指標導出モードを終了するように構成してある。
そして、前記制御部3は、放熱指標導出モードでは、予め記憶している基準テーブルに含まれる急速昇温用の設定時間にて前記ホットダッシュ運転を実行し、そのホットダッシュ運転が終了すると、前記基準テーブルに含まれる目標対実温度差と開閉比率との関係に基づいて前記定常運転を実行し、その定常運転の実行中において、前記室温センサ21の検出情報に基づいて求めた暖房対象室R内の温度の設定時間内での変動幅が暖房安定判別用の設定変動幅以下になると、前記指標導出部29に上述のように放熱指標を求めさせるように構成してある。
【0051】
尚、前記設定時間幅及び前記設定変動幅は、熱源機Gにて熱媒を熱媒循環路2を通して床暖房パネル1に循環供給して暖房対象室Rを暖房する状態で暖房対象室R内の温度が安定する安定暖房状態を判別可能なように設定するものであり、例えば、前記設定時間幅を10分に、前記設定変動幅を1°Cにそれぞれ設定する。
【0052】
更に、前記制御部3を、前記放熱指標導出モードにて求めた放熱指標及び前記仕上げ材厚さ情報入力部27にて入力された床仕上げ材厚さ情報に基づいて、急速昇温用の設定時間及び目標対実温度差と開閉比率との関係を含む運転用テーブルを求める運転用テーブル導出制御を実行するように構成してある。
そして、前記制御部3を、前記運転用テーブル導出制御が実行された後は、その運転用テーブル導出制御にて求めた運転用テーブルに含まれる急速昇温用の設定時間にて前記ホットダッシュ運転を実行し、並びに、その運転用テーブルに含まれる目標対実温度差と開閉比率との関係に基づいて前記定常運転を実行するように構成してある。
【0053】
尚、熱媒循環式暖房装置を設置したとき、あるいは、熱媒循環式暖房装置を設置したときが暖房期ではない場合は暖房期になったときに、前記指標導出モード指令部25による指令により、設置時の放熱指標導出モードを実行することになる。
又、設置時の放熱指標導出モードを実行した後においても、前記指標導出モード指令部25による指令により放熱指標導出モードを実行して、放熱指標を更新すると共に、運転用テーブルを更新しても良い。
【0054】
以下、前記運転用テーブル導出制御、前記ホットダッシュ運転及び前記定常運転の夫々について、更に説明を加える。
先ず、前記運転用テーブル導出制御について説明を加える。
図3に示すように、前記基準テーブルでは、目標対実温度差ΔTの範囲を10段階のステップに設定して、目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係として、目標対実温度差ΔTが大きくなるほど開時間の割合が大きくなる状態で、各目標対実温度差ΔTの範囲毎に熱動弁5の開時間と閉時間との開閉比率を設定し、並びに、急速昇温用の設定時間を設定してある。
【0055】
そして、制御部3は、放熱指標が2.7よりも大きく、4.5よりも小さく、且つ、床仕上げ材厚さ情報が標準厚のときは、前記基準テーブルをそのまま運転用テーブルとして採用する。
【0056】
又、制御部3は、放熱指標が2.7以下で、且つ、床仕上げ材厚さ情報が標準厚のときは、図4に示すように、前記基準テーブルにおける目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を、目標対実温度差ΔTに対して開閉比率を2ステップだけ上に(目標対実温度差ΔTが大きくなる側)にずらすことにより、目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を設定し、並びに、急速昇温用の設定時間を基準テーブルにおける急速昇温用の設定時間よりも短く設定して、運転用テーブルを求める。
【0057】
又、制御部3は、放熱指標が2.7以下で、且つ、床仕上げ材厚さ情報が薄厚のときは、図5に示すように、前記基準テーブルにおける目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を、目標対実温度差ΔTに対して開閉比率を4ステップだけ上にずらすことにより、目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を設定し、並びに、急速昇温用の設定時間を0に設定して、運転用テーブルを求める。
【0058】
又、制御部3は、放熱指標が4.5以上で、且つ、床仕上げ材厚さ情報が標準厚のときは、図6に示すように、前記基準テーブルにおける目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を、目標対実温度差ΔTに対して開閉比率を2ステップだけ下に(目標対実温度差ΔTが小さくなる側)にずらすことにより、目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を設定し、並びに、急速昇温用の設定時間を基準テーブルにおける急速昇温用の設定時間よりも長く設定して、運転用テーブルを求める。
【0059】
又、制御部3は、放熱指標が4.5以上で、且つ、床仕上げ材厚さ情報が薄厚のときは、図7に示すように、前記基準テーブルにおける目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を、目標対実温度差ΔTに対して開閉比率を1ステップだけ下にずらすことにより、目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を設定し、並びに、急速昇温用の設定時間を基準テーブルにおける急速昇温用の設定時間よりも長く、且つ、放熱指標が4.5以上で且つ床仕上げ材厚さ情報が標準厚のときの急速昇温用の設定時間よりも短く設定して、運転用テーブルを求める。
【0060】
前記ホットダッシュ運転における制御部3の制御動作について説明を加える。
前記制御部3は、戻りサーミスタ19および往きサーミスタ17の検出情報に基づいて、往きサーミスタ17の検出温度(熱媒の温度)が急速昇温用の温度(72℃)になるように、燃料ガス調整弁14の開度およびファン11の回転速度を調整するとともに、前記運転用テーブルにて設定されている急速昇温用の設定時間が経過する間、熱動弁5を開状態に維持するように構成してある。尚、急速昇温用の温度は、定常運転用の温度よりも高い温度であればよく、72℃に限定されるものではない。
【0061】
前記定常運転における制御部3の制御動作について説明を加える。
制御部3は、戻りサーミスタ19および往きサーミスタ17の検出情報に基づいて、循環供給される熱媒の温度が定常運転用の設定温度(60℃)になるように、燃料ガス調整弁14の開度およびファン11の回転速度を調整し、並びに、前記温度設定部23にて設定された暖房目標温度から前記室温センサ17にて検出される室内温度を減じることにより目標対実温度差を求めると共に、求めた目標対実温度差に応じた目標開閉比率を運転用テーブルから求めて、前記設定周期における開閉比率が前記求めた目標開閉比率になるように前記熱動弁5の開閉作動を制御することを周期的に繰り返すことにより、供給量調節制御を実行する。
【0062】
前記供給量調節制御について説明を加えると、制御部3は、設定周期を20分として、その設定周期が経過するごとに、次の設定周期において開時間が何分で閉時間が何分であるかの目標開閉比率を求めて、次の設定周期における開閉比率が求めた目標開閉比率になるように、熱動弁5の開閉作動を周期的に繰り返し行うようにしている。例えば、求めた目標開閉比率が、開時間が14分で閉時間が6分であると、まず、熱動弁5を開状態に14分間維持したのち、熱動弁5を閉状態に6分間維持する。
【0063】
つまり、制御部3を、上述のように、前記放熱指標導出モードにて求めた放熱指標及び前記仕上げ材厚さ情報入力部27にて入力された床仕上げ材厚さ情報に基づいて運転用テーブルを求めて、その求めた運転用テーブル、及び、前記室温センサ17にて検出される室内温度と前記温度設定部23にて設定された暖房目標温度とから求めた目標対実温度差に基づいて、前記供給量調節制御を実行するように構成することにより、制御部3を、上述のように、前記供給量調節制御として、目標対実温度差に応じて目標開閉比率を求めて、前記設定周期における開閉比率が前記目標開閉比率になるように前記熱動弁5の開閉作動を制御することを周期的に繰り返す制御を実行するように構成し、且つ、前記指標導出部29にて求めた放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、前記目標対実温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率を求めるように構成してある。
【0064】
又、床仕上げ材22の厚さを示す床仕上げ材厚さ情報を入力する前記仕上げ材厚さ情報入力部27を設けて、制御部3を、前記供給量調節制御として、前記仕上げ材厚さ情報入力部27にて入力される床仕上げ材厚さ情報にて示される床仕上げ材20の厚さが厚いほど、前記目標対実温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率を求めるように、即ち、実暖房負荷が同じであるときの前記単位時間当たりの供給熱量が多くなるように前記目標制御条件を求めるように構成してある。
【0065】
つまり、床仕上げ材20の厚さが厚くなるほど、暖房対象室Rの床裏から放熱される熱量が多くなるので、床仕上げ材20の厚さが厚くなるほど、実暖房負荷が同じであるときの前記単位時間当たりの供給熱量が多くなるように前記目標制御条件を求めるように構成して、目標制御条件を床仕上げ材20の厚さに応じた状態で求めるようにすることにより、床仕上げ材20の厚さの違いに拘らず、暖房対象室Rを適切に暖房することができるようにしてある。
【0066】
〔第2実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明の第2実施形態を説明する。
この第2実施形態では、前記供給量調節制御が主として上記の第1実施形態と異なる以外は、第1実施形態と同様に構成してある。
即ち、前記制御部3を、前記供給量調節制御において、上記の第1実施形態の構成に加えて、更に、前記外気温センサ24にて検出される外気温度に基づいて、その検出外気温度が低いほど、前記目標対実温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率を求めるように構成してある。
【0067】
又、この第2実施形態では、上記の第1実施形態の運転用テーブル導出制御における、前記仕上げ材厚さ情報入力部27にて入力された床仕上げ材厚さ情報に基づいて前記運転用テーブルを求める構成を省略してある。
従って、第2実施形態における熱媒循環式暖房装置の全体構成は、図1にて示す第1実施形態における全体構成において前記仕上げ材厚さ情報入力部27を省略したものとなる。
【0068】
前記制御部3の制御動作について説明を加える。
前記制御部3は、上記の第1実施形態と同様に、前記指標導出モード指令部25より前記放熱指標導出モードの実行が指令されると、熱源機Gの運転を開始させて放熱指標導出モードを実行し、前記指標導出モード指令部25より放熱指標導出モードの停止が指令されると、熱源機Gの運転を停止させて放熱指標導出モードを終了するように構成してある。
そして、前記制御部3は、放熱指標導出モードでは、予め記憶している基準テーブルに含まれる急速昇温用の設定時間にて前記ホットダッシュ運転を実行し、そのホットダッシュ運転が終了すると、前記基準テーブルに含まれる目標対実温度差と開閉比率との関係に基づいて前記定常運転を実行し、その定常運転の実行中において、前記室温センサ21の検出情報に基づいて求めた暖房対象室R内の温度の設定時間内での変動幅が暖房安定判別用の設定変動幅以下になると、前記指標導出部29に上述のように放熱指標を求めさせるように構成してある。
【0069】
更に、前記制御部3を、前記放熱指標導出モードにて求めた放熱指標に基づいて、急速昇温用の設定時間及び目標対実温度差と開閉比率との関係を含む運転用テーブルを求める運転用テーブル導出制御を実行するように構成してある。
そして、前記制御部3を、前記運転用テーブル導出制御が実行された後は、その運転用テーブル導出制御にて求めた運転用テーブルに含まれる急速昇温用の設定時間にて前記ホットダッシュ運転を実行し、並びに、その運転用テーブルに含まれる目標対実温度差と開閉比率との関係に基づいて前記定常運転を実行するように構成してある。
【0070】
前記運転用テーブル導出制御における前記制御部3の制御動作について、説明を加える。
図8の(イ)に示すように、前記基準テーブルは、上記の第1実施形態と同様に設定してある。
【0071】
そして、制御部3は、外気温度が10°C未満のときを基準外気温度状態として、その基準外気温度状態の運転用テーブルを、前記放熱指標導出モードにて求めた放熱指標に基づいて求めると共に、その求めた基準外気温度状態の運転用テーブルに基づいて、外気温度が10°C以上15°C未満のとき、及び、外気温度が15°C以上のときの夫々の運転用テーブルを求めるように構成してある。
【0072】
つまり、図8の(イ)に示すように、放熱指標が2.7よりも大きく、4.5よりも小さいときは、前記基準テーブルをそのまま基準外気温度状態の運転用テーブルとして採用する。
【0073】
又、図9の(イ)に示すように、放熱指標が2.7以下のときは、前記基準テーブルにおける目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を、目標対実温度差ΔTに対して開閉比率を2ステップだけ上に(目標対実温度差ΔTが大きくなる側)にずらすことにより、目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を設定し、並びに、急速昇温用の設定時間を基準テーブルにおける急速昇温用の設定時間よりも短く設定して、基準外気温度状態の運転用テーブルを求める。
【0074】
又、図10の(イ)に示すように、放熱指標が4.5以上のときは、前記基準テーブルにおける目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を、目標対実温度差ΔTに対して開閉比率を2ステップだけ下に(目標対実温度差ΔTが小さくなる側)にずらすことにより、目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を設定し、並びに、急速昇温用の設定時間を基準テーブルにおける急速昇温用の設定時間よりも長く設定して、基準外気温度状態の運転用テーブルを求める。
【0075】
更に、図8ないし図10の各図の(ロ)に示すように、上述のように求めた基準外気温度状態の運転用テーブルにおける目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を、目標対実温度差ΔTに対して開閉比率を2ステップだけ上にずらすことにより、目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を設定し、並びに、急速昇温用の設定時間を基準外気温度状態の運転用テーブルにおける急速昇温用の設定時間よりも短く設定して、外気温度が10°C以上15°C未満のときの運転用テーブルを求める。
【0076】
又、図8ないし図10の各図の(ハ)に示すように、上述のように求めた基準外気温度状態の運転用テーブルにおける目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を、目標対実温度差ΔTに対して開閉比率を4ステップだけ上にずらすことにより、目標対実温度差ΔTと開閉比率との関係を設定し、並びに、急速昇温用の設定時間を外気温度が10°C以上15°C未満のときの運転用テーブルにおける急速昇温用の設定時間よりも更に短く設定して、外気温度が15°C以上のときの運転用テーブルを求める。
【0077】
前記ホットダッシュ運転における制御部3の制御動作について説明を加える。
前記制御部3は、戻りサーミスタ19および往きサーミスタ17の検出情報に基づいて、往きサーミスタ17の検出温度(熱媒の温度)が急速昇温用の温度(72℃)になるように、燃料ガス調整弁14の開度およびファン11の回転速度を調整するとともに、前記外気温センサ24にて検出される外気温度に対応する運転用テーブルにて設定されている急速昇温用の設定時間が経過する間、熱動弁5を開状態に維持する。
【0078】
前記定常運転における制御部3の制御動作について説明を加える。
制御部3は、戻りサーミスタ19および往きサーミスタ17の検出情報に基づいて、循環供給される熱媒の温度が定常運転用の設定温度(60℃)になるように、燃料ガス調整弁14の開度およびファン11の回転速度を調整し、並びに、前記温度設定部23にて設定された暖房目標温度から前記室温センサ17にて検出される室内温度を減じることにより目標対実温度差を求めると共に、求めた目標対実温度差に応じた目標開閉比率を、前記外気温センサ24にて検出される外気温度に対応する運転用テーブルから求めて、前記設定周期における開閉比率が前記求めた目標開閉比率になるように前記熱動弁5の開閉作動を制御することを周期的に繰り返すことにより、供給量調節制御を実行する。
【0079】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ) 暖房対象空間に対して放熱作用する暖房端末の具体構成としては、上記の各実施形態において例示した床暖房パネル1に限定されるものではなく、図11に示す如き浴室暖房乾燥ユニットU等、種々のものを適用することが可能である。
図11に基づいて、浴室暖房乾燥ユニットUについて説明を加える。
この浴室暖房乾燥ユニットUは、暖房対象空間としての浴室Rの天井に設けるものであり、前記熱源機Gから加熱した熱媒が熱媒循環路2を通して供給される熱交換器31、浴室R内の空気を前記熱交換器31及びルーバ32を通過させる状態で循環させる循環ファン33、前記熱交換器31を通過した空気の一部を屋外に排出する排気ファン34等を備えて構成してある。
そして、浴室Rを暖房する暖房運転においては、熱源機Gを運転して加熱した熱媒を熱交換器31に循環供給する状態で、循環ファン33を作動させ、浴室R内の被乾燥物を乾燥させる乾燥運転においては、熱源機Gを運転して加熱した熱媒を熱交換器31に循環供給する状態で、循環ファン33及び排気ファン34を作動させるように構成してある。
【0080】
(ロ) 暖房対象空間の実暖房負荷に応じて、その実暖房負荷が大きくなるほど暖房端末に供給する単位時間当たりの供給熱量が多くなるように、暖房端末への供給熱量を調節するための構成としては、上記の各実施形態において例示した如き構成、即ち、熱動弁5の開時間と閉時間との設定周期における開閉比率を調節する構成に限定されるものではない。
例えば、暖房端末へ供給する熱媒の温度を設定温度に維持する状態で、実暖房負荷が大きくなるほど暖房端末へ供給する熱媒の流量を多くすることにより、単位時間当たりの供給熱量を多くする構成、あるいは、暖房端末へ供給する熱媒の流量を設定流量に維持する状態で、実暖房負荷が大きくなるほど暖房端末へ供給する熱媒の温度を高くすることにより、単位時間当たりの供給熱量を多くする構成を採用することができる。
【0081】
(ハ) 上記の指標導出式(1)により放熱指標Iを求めるに当たって、外部的放熱要因による変動を補正するための補正係数としては、上記の各実施形態において例示した如き循環路長用補正係数に限定されるものではない。
例えば、床仕上げ材20の厚さの違いによる変動を補正するための床仕上げ材厚さ用補正係数を適用することが可能である。又、この床仕上げ材厚さ用補正係数と前記循環路長用補正係数との両方を適用しても良い。
ちなみに、前記床仕上げ材厚さ用補正係数は、床仕上げ材20の厚さが厚くなるほど小さくなるように設定することになる。
【0082】
(ニ) 前記係数設定手段を、補正係数を直接入力するように構成しても良い。
【0083】
(ホ) 上記の実施形態においては、前記指標入力部4を、上記の指標導出式(1)に基づいて放熱指標Iを自動的に求める指標導出部29を備えて、放熱指標を自動的に入力するように構成する場合について例示したが、このような指標導出部29を省略して、前記指標入力部4を人為操作にて入力するように構成しても良い。
この場合、熱源機Gを実際に運転させて、暖房対象室R内の温度が安定する安定暖房状態において、熱媒往き温度、熱媒戻り温度、熱媒流量、室内温度及び外気温度を計測して、それら計測情報に基づいて、上記の指標導出式(1)により放熱指標を求めても良い。
あるいは、熱媒循環式暖房装置を設置する住居の断熱構造に基づく熱損失係数(Q値)を放熱指標として設定するようにしても良い。例えば、新省エネルギー基準にて建築された住居については、放熱指標を3.95に設定し、次世代省エネルギー基準にて建築された住居については、放熱指標を2.7に設定することになる。
【0084】
(ヘ) 熱源手段Gにおける熱媒を加熱するための熱源としては、上記の各実施形態において例示したバーナ9に限定されるものではなく、例えば、電気ヒータ等、種々のものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】熱媒循環式暖房装置の全体構成を示す図
【図2】床暖房パネルの縦断面図
【図3】運転用テーブルを示す図
【図4】運転用テーブルを示す図
【図5】運転用テーブルを示す図
【図6】運転用テーブルを示す図
【図7】運転用テーブルを示す図
【図8】運転用テーブルを示す図
【図9】運転用テーブルを示す図
【図10】運転用テーブルを示す図
【図11】暖房端末の別実施形態を示す縦断面図
【符号の説明】
【0086】
1 暖房端末、床暖房パネル
1b 熱媒流通管
2 熱媒循環路
3 制御手段
4 指標入力手段
5 開閉手段
17 熱媒往き温度検出手段
18 熱媒流量検出手段
19 熱媒戻り温度検出手段
21 空間内温度検出手段
24 外気温度検出手段
26 広さ情報入力手段
28 係数設定手段
29 指標導出手段
G 熱源手段
R 暖房対象空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房対象空間に対して放熱作用する暖房端末と、
その暖房端末に加熱した熱媒を熱媒循環路を通して供給し且つ前記暖房端末に供給する供給熱量を調節自在な熱源手段と、
前記暖房対象空間の実暖房負荷に応じて、その実暖房負荷が大きくなるほど単位時間当たりの前記供給熱量が多くなるように目標制御条件を求めて、その求めた目標制御条件にて前記熱源手段の作動を制御する供給熱量調節制御を実行する制御手段とが設けられた熱媒循環式暖房装置であって、
前記暖房対象空間における外部への放熱のし易さの程度を示す放熱指標を入力する指標入力手段が設けられ、
前記制御手段は、前記供給熱量調節制御において、前記指標入力手段にて入力される放熱指標に基づいて、その放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、前記実暖房負荷が同じであるときの前記単位時間当たりの供給熱量が多くなるように前記目標制御条件を求めるように構成されている熱媒循環式暖房装置。
【請求項2】
前記指標入力手段が、前記放熱指標Iを次の指標導出式
I={(熱媒往き温度−熱媒戻り温度)×熱媒流量×補正係数}/{暖房対象空間の広さを示す広さ情報×(暖房対象空間内の温度−外気温度)}
により求める指標導出手段を備えて構成されている請求項1記載の熱媒循環式暖房装置。
【請求項3】
前記熱媒往き温度を検出する熱媒往き温度検出手段と、
前記熱媒戻り温度を検出する熱媒戻り温度検出手段と、
前記熱媒流量を検出する熱媒流量検出手段と、
前記暖房対象空間内の温度を検出する空間内温度検出手段と、
前記外気温度を検出する外気温度検出手段と、
前記広さ情報を入力する人為操作式の広さ情報入力手段とが設けられ、
前記指標導出手段は、前記熱媒往き温度検出手段、前記熱媒戻り温度検出手段、前記熱媒流量検出手段、前記空間内温度検出手段及び前記外気温度検出手段夫々の検出情報、並びに、前記広さ情報入力手段の入力情報に基づいて、前記指標導出式により前記放熱指標を求めるように構成されている請求項2記載の熱媒循環式暖房装置。
【請求項4】
前記補正係数を変更設定する係数設定手段が設けられている請求項2又は3記載の熱媒循環式暖房装置。
【請求項5】
前記暖房端末が、前記熱媒循環路に接続される熱媒流通管が配設されて、前記暖房対象空間の床に敷設される床暖房パネルにて構成され、
前記熱源手段に、前記熱媒循環路を開閉して前記暖房端末への熱媒の供給を断続する開閉手段が備えられ、
前記制御手段は、前記供給熱量調節制御として、
前記暖房対象空間内の温度と暖房目標温度との温度差を前記実暖房負荷として求め、且つ、求めた温度差に応じて、前記開閉手段を開状態に維持する開時間と前記開閉手段を閉状態に維持する閉時間との設定周期における目標開閉比率を前記目標制御条件として求めて、前記設定周期における開閉比率が前記目標開閉比率になるように前記開閉手段の開閉作動を制御することを周期的に繰り返す制御を実行するように構成され、且つ、
前記放熱指標にて示される放熱のし易さの程度が大きいほど、前記温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率を求めるように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱媒循環式暖房装置。
【請求項6】
外気温度を検出する外気温度検出手段が設けられ、
前記制御手段は、前記供給熱量調節制御において、前記外気温度検出手段にて検出される外気温度に基づいて、その検出外気温度が低いほど、前記温度差が同じであるときの前記目標開閉比率における前記開時間の割合が大きくなるように前記目標開閉比率を求めるように構成されている請求項5記載の熱媒循環式暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−329529(P2006−329529A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153907(P2005−153907)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】