熱式空気流量計
【課題】センサチップへの水分や油分等の液状体の付着の有無を判定できる熱式空気流量計を提供する。
【解決手段】液状体付着判定手段22aは、発熱ヒータ12の温度変化に応じてヒータ温度制御部20より出力される第1の信号と、測温抵抗体13の温度変化に応じて流量検出部21より出力される第2の信号とを比較して、センサチップに液状体が付着しているか否かを判定する。第1の信号は、発熱ヒータ12に流れる電流から得られる電圧であり、この電圧がデジタル値に変換されてデジタル演算部22に入力される。第2の信号は、ブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間の電位差であり、この電位差がデジタル値に変換されてデジタル演算部22に入力される。デジタル演算部22は、第1の信号が最大空気流量以上の電圧を示す時および第2の信号が空気流量ゼロの状態の電圧を示す時にセンサチップに液状体が付着していると判定する。
【解決手段】液状体付着判定手段22aは、発熱ヒータ12の温度変化に応じてヒータ温度制御部20より出力される第1の信号と、測温抵抗体13の温度変化に応じて流量検出部21より出力される第2の信号とを比較して、センサチップに液状体が付着しているか否かを判定する。第1の信号は、発熱ヒータ12に流れる電流から得られる電圧であり、この電圧がデジタル値に変換されてデジタル演算部22に入力される。第2の信号は、ブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間の電位差であり、この電位差がデジタル値に変換されてデジタル演算部22に入力される。デジタル演算部22は、第1の信号が最大空気流量以上の電圧を示す時および第2の信号が空気流量ゼロの状態の電圧を示す時にセンサチップに液状体が付着していると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のエンジンに供給される空気の流量を計測する熱式空気流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気やガス等の流体流量を計測する熱式流量計がある。この熱式流量計は、流量検出用のセンサ部に水滴等が付着すると、その水滴が蒸発するまでの間は出力異常となることが知られている。これに対し、水分や油分等の液状体がセンサ部に付着することによる出力異常を防止する技術が知られている(特許文献1、2参照)。
特許文献1では、主通路を流れる流体の一部を導入する副通路内に流体の流量を検出するセンサを配置し、このセンサより上流側の副通路側面に液状体を捕獲して移動させる捕獲手段を設けている。捕獲手段は、例えば、複数の溝、あるいは、複数のはり状突部であり、副通路内を通過する流体の流れ方向に対し傾斜して形成されている。この捕獲手段によって捕獲された液状体(例えば、空気に含まれる水滴)は、センサ部に付着することなく、副通路の出口より外部に排出される。
【0003】
また、特許文献2に示されるセンサ部は、基板上に電気絶縁膜を介して形成された発熱抵抗体と、この発熱抵抗体の近傍に形成される凹凸形状の上流側抵抗体および下流側抵抗体とを有し、各抵抗体の上に保護膜が形成されている。この保護膜は、汚染物質が含まれる水分や油分等の付着液体から各抵抗体(発熱抵抗体、上流側抵抗体、下流側抵抗体)を保護するために形成される。特に、上流側抵抗体および下流側抵抗体の上に形成される保護膜の表面は、付着液体に対し親液性を示す凹凸形状を有している。
これにより、汚染物質を含む付着液体は、親液性を示す凹凸形状の領域(上流側抵抗体および下流側抵抗体の上に形成される領域)に表面張力により移動される。その結果、汚染物質の塊は、付着液体の乾燥時に保護膜の凹凸形状の領域に集中するため、センサ部に付着することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3782669号公報
【特許文献2】特開2000−81347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された従来技術では、副通路内に流入した液状体をある程度は捕獲手段によって捕獲できるが、完全に捕獲することは困難である。よって、捕獲されなかった液状体がセンサ部に付着すると、液状体が蒸発するまでの間は出力異常となる。 このため、例えば、自動車のエンジンに吸入される空気流量を計測してエンジンへの噴射量を制御する燃料噴射システムに特許文献1の従来技術を採用すると、適正な空燃比を得ることが困難となり、場合によっては正常なエンジン回転を維持できなくなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2の従来技術では、発熱抵抗体上の保護膜に付着した液体が親液性を示す凹凸形状の領域に引き付けられて無くなるまでは、所定時間が必要であり、その間は、特許文献1の場合と同様に出力異常となるため、適正な空燃比を得ることが困難となり、場合によっては正常なエンジン回転を維持できなくなるという問題がある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、センサ部への水分や油分等の液状体の付着の有無を判定できる熱式空気流量計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1に係る発明)
本発明は、通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部を備え、発熱ヒータからの放熱量を基に空気通路を流れる空気流量を検出する熱式空気流量計であって、センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、互いに異なる信号系統より空気流量に関係する少なくとも二つの信号を入力し、この少なくとも二つの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
【0008】
本発明の液状体付着判定手段は、互いに異なる信号系統より空気流量に関係する少なくとも二つの信号を入力し、その少なくとも二つの信号を基にセンサ部への液状体の付着を判定するので、判定の精度が高く、高い確率でセンサ部への液状体の付着の有無を判定できる。従って、センサ部に液状体が付着していると判定された時は、熱式空気流量計から出力されるセンサ信号を範囲外として、センサ部が正常に機能していないことを外部に知らせることができる。
これにより、例えば、本発明の熱式空気流量計を自動車用エンジンの空燃比制御に使用する場合は、センサ部が正常に機能している時のセンサ信号を空燃比制御に用いることができるので、空燃比を適正に制御でき、異常なエンジン回転を防止できる。
【0009】
(請求項2に係る発明)
本発明は、通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部と、空気通路を流れる空気と発熱ヒータとの温度差が一定となる様に発熱ヒータの温度を制御するヒータ温度制御部と、発熱ヒータからの放熱量を基に空気通路を流れる空気流量を検出する流量検出部とを備える熱式空気流量計であって、センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、ヒータ温度制御部および流量検出部より空気流量に関係する信号を入力し、それぞれの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
【0010】
本発明の液状体付着判定手段は、ヒータ温度制御部および流量検出部より、それぞれ空気流量に関係する信号を入力し、その二つの信号を基にセンサ部への液状体の付着を判定するので、判定の精度が高く、高い確率でセンサ部への液状体の付着の有無を判定できる。従って、センサ部に液状体が付着していると判定された時は、熱式空気流量計から出力されるセンサ信号を範囲外として、センサ部が正常に機能していないことを外部に知らせることができる。
これにより、例えば、本発明の熱式空気流量計を自動車用エンジンの空燃比制御に使用する場合は、センサ部が正常に機能している時のセンサ信号を空燃比制御に用いることができるので、空燃比を適正に制御でき、異常なエンジン回転を防止できる。
【0011】
(請求項3に係る発明)
請求項2に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、発熱ヒータの上流側と下流側のどちらか一方、あるいは上流側と下流側の両方に配置される測温抵抗体を有し、液状体付着判定手段は、発熱ヒータの温度変化に応じてヒータ温度制御部より出力される第1の電圧と、測温抵抗体の温度変化に応じて流量検出部より出力される第2の電圧とが、共に異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
【0012】
センサ部に液状体が付着している場合は、発熱ヒータの熱が液状体に奪われるため、空気通路を流れる空気と発熱ヒータとの温度差が一定となるように発熱ヒータの温度を制御しようとすると、ヒータ温度制御部から得られる第1の電圧は、最大空気流量時の電圧以上となる。一方、流量検出部では、センサ部に液状体が付着していると流量検出ができないため、流量検出部から得られる第2の電圧は、空気流量がゼロの時の電圧となる。
よって、ヒータ温度制御部から得られる第1の電圧と、流量検出部から得られる第2の電圧とを比較することで、センサ部に液状体が付着しているか否かを判定できる。
【0013】
(請求項4に係る発明)
本発明は、通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部と、発熱ヒータの温度を制御するヒータ温度制御部とを備え、センサ部は、空気通路を流れる空気の流れ方向に対して上流側と下流側とに少なくとも1個ずつ発熱ヒータを配置し、ヒータ温度制御部は、空気の流れ方向に対して上流側に配置される発熱ヒータを上流側ヒータと呼び、空気の流れ方向に対して下流側に配置される発熱ヒータを下流側ヒータと呼ぶ時に、空気通路を流れる空気と上流側ヒータとの温度差が一定となる様に上流側ヒータの温度を制御する上流側ヒータ温度制御部と、空気通路を流れる空気と下流側ヒータとの温度差が一定となる様に下流側ヒータの温度を制御する下流側ヒータ温度制御部とで構成され、上流側ヒータからの放熱量と下流側ヒータからの放熱量との差より、空気通路を流れる空気流量を検出する熱式空気流量計であって、センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、上流側ヒータ温度制御部および下流側ヒータ温度制御部より空気流量に関係する信号を入力し、それぞれの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
【0014】
この請求項4に係る熱式空気流量計は、上流側ヒータからの放熱量と下流側ヒータからの放熱量との差より空気流量を検出することができる。
例えば、空気通路に順方向の流れが発生している場合は、上流側ヒータの上部を通過する際に加熱された空気が下流側ヒータの上部を通過するため、下流側ヒータの上部を通過する空気は、上流側ヒータの上部を通過する時点より高温となっている。従って、上流側ヒータおよび下流側ヒータをそれぞれ空気温度に対して一定の温度差に保つためには、上流側ヒータに印加される電圧の方が下流側ヒータに印加される電圧より大きくなり、且つ、空気流量が増大するに連れて、両ヒータに印加される電圧差は大きくなる。
【0015】
また、空気通路に逆方向の流れが発生している場合は、順方向の流れが発生している場合とは逆に、下流側ヒータに印加される電圧の方が上流側ヒータに印加される電圧より大きくなり、且つ、空気流量が増大するに連れて、両ヒータに印加される電圧差は大きくなる。従って、上流側ヒータからの放熱量と下流側ヒータからの放熱量との差に応じて、空気流量および空気の流れ方向を検出できる。これにより、例えば、自動車のエンジンに吸入される吸気量を計測するエアフロメータに本発明の熱式空気流量計を適用した場合に、エンジンに吸入される順方向の吸気量だけでなく、例えば、吸気脈動等によって生じる逆流時の空気流量も計測できる。
【0016】
また、本発明の液状体付着判定手段は、上流側ヒータ温度制御部と下流側ヒータ温度制御部より、それぞれ空気流量に関係する信号を入力し、その二つの信号を基にセンサ部への液状体の付着を判定するので、判定の精度が高く、高い確率でセンサ部への液状体の付着の有無を判定できる。従って、センサ部に液状体が付着していると判定された時は、熱式空気流量計から出力されるセンサ信号を範囲外として、センサ部が正常に機能していないことを外部に知らせることができる。
これにより、例えば、本発明の熱式空気流量計を自動車用エンジンの空燃比制御に使用する場合は、センサ部が正常に機能している時のセンサ信号を空燃比制御に用いることができるので、空燃比を適正に制御でき、異常なエンジン回転を防止できる。
【0017】
(請求項5に係る発明)
請求項4に記載した熱式空気流量計において、液状体付着判定手段は、上流側ヒータの温度変化に応じて上流側ヒータ温度制御部より出力される第1の電圧と、下流側ヒータの温度変化に応じて下流側ヒータ温度制御部より出力される第2の電圧とが、共に異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
センサ部に液状体が付着している場合は、発熱ヒータ(上流側ヒータおよび下流側ヒータ)の熱が液状体に奪われるため、空気通路を流れる空気と発熱ヒータとの温度差が一定となるように発熱ヒータの温度を制御しようとすると、上流側ヒータ温度制御部から得られる第1の電圧および下流側ヒータ温度制御部から得られる第2の電圧は、最大空気流量時の電圧以上となる。
よって、上流側ヒータ温度制御部から得られる第1の電圧および下流側ヒータ温度制御部から得られる第2の電圧とを比較することで、センサ部に液状体が付着しているか否かを判定できる。
【0018】
(請求項6に係る発明)
請求項3に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、メンブレン上に発熱ヒータおよび測温抵抗体が配置されていることを特徴とする。
基板の熱容量が小さいメンブレン上に発熱ヒータおよび測温抵抗体を配置することで、発熱ヒータへの供給電圧を低く設定できる。これにより、センサ部に液状体が付着した時に、十分な電圧を発熱ヒータに供給できるので、センサ部から液状体が蒸発するまでの時間を短くできる。
【0019】
(請求項7に係る発明)
請求項4または5に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、メンブレン上に上流側ヒータおよび下流側ヒータが配置されていることを特徴とする。
基板の熱容量が小さいメンブレン上に発熱ヒータ(上流側ヒータおよび下流側ヒータ)を配置することで、発熱ヒータへの供給電圧を低く設定できる。これにより、センサ部に液状体が付着した時に、十分な電圧を発熱ヒータに供給できるので、センサ部から液状体が蒸発するまでの時間を短くできる。
【0020】
(請求項8に係る発明)
請求項3または5に記載した熱式空気流量計において、第1の電圧と第2の電圧をそれぞれ量子化する量子化手段を備え、液状体付着判定手段は、回路チップ上に設けられるデジタル演算部によって構成され、このデジタル演算部により、量子化された二つの信号に基づいてセンサ部に液状体が付着しているか否かを判定することを特徴とする。
本発明では、アナログ値である第1の電圧と第2の電圧をそれぞれ量子化する、つまり、デジタル変換した後、その二つのデジタル信号をデジタル演算部で比較処理することにより、液状体がセンサ部に付着しているか否かを確実に判定できる。
【0021】
(請求項9に係る発明)
請求項8に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、センサチップと回路チップは、共通のケースに一体に収容されて、センサアセンブリとして構成されていることを特徴とする。
センサチップと回路チップを共通のケースに一体に収容することで、センサチップと回路チップとの配線接続をワイヤボンディング等によって容易にでき、且つ、一つのセンサアセンブリとして構成することにより小型化が可能となる。
【0022】
(請求項10に係る発明)
請求項1に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、空気の流れ方向に対して発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ配置される測温抵抗体を有し、上流側の測温抵抗体と下流側の測温抵抗体との温度差より空気流量を検出することを特徴とする。
この場合、発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ測温抵抗体を配置しているので、順方向の空気流量、つまり、発熱ヒータの上流側から下流側へ向かう空気の流量だけでなく、逆方向の空気流量、つまり、発熱ヒータの下流側から上流側へ逆流する空気の流量も検出できる。これにより、例えば、自動車のエンジンに吸入される吸気量を計測するエアフロメータに本発明の熱式空気流量計を適用した場合に、エンジンに吸入される順方向の吸気量だけでなく、例えば、吸気脈動等によって生じる逆流時の空気流量も計測できる。
【0023】
(請求項11に係る発明)
請求項2に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、空気の流れ方向に対して発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ配置される測温抵抗体を有し、流量検出部は、上流側の測温抵抗体と下流側の測温抵抗体との温度差より空気流量を検出することを特徴とする。
この場合、発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ測温抵抗体を配置しているので、順方向の空気流量、つまり、発熱ヒータの上流側から下流側へ向かう空気の流量だけでなく、逆方向の空気流量、つまり、発熱ヒータの下流側から上流側へ逆流する空気の流量も検出できる。これにより、例えば、自動車のエンジンに吸入される吸気量を計測するエアフロメータに本発明の熱式空気流量計を適用した場合に、エンジンに吸入される順方向の吸気量だけでなく、例えば、吸気脈動等によって生じる逆流時の空気流量も計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】熱式空気流量計の回路図である(実施例1)。
【図2】熱式空気流量計を吸気ダクトに取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】(a)流量センサの平面図、(b)同図(a)のA−A断面図である。
【図4】センサチップの平面図である(実施例1)。
【図5】センサチップの断面図である(実施例1)。
【図6】センサチップのメンブレン上に配置された発熱ヒータと測温抵抗体の平面図である(実施例1)。
【図7】(a)流量検出の原理を示す温度分布図、(b)空気の流れ方向に沿って切断したセンサチップの断面図である。
【図8】熱式空気流量計の出力特性を示すグラフである。
【図9】センサ部に液状体が付着している時と付着していない時の出力特性を示すグラフである。
【図10】熱式空気流量計の回路図である(実施例2)。
【図11】センサチップのメンブレン上に配置された発熱ヒータと測温抵抗体の平面図である(実施例2)。
【図12】熱式空気流量計の回路図である(実施例3)。
【図13】センサチップのメンブレン上に配置された発熱ヒータの平面図である(実施例3)。
【図14】上流側ヒータおよび下流側ヒータの印加電圧と空気流量との関係を表す特性図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
この実施例1では、自動車のエンジンに吸入される空気流量(吸気量と呼ぶ)を計測する熱式空気流量計1の一例を説明する。
熱式空気流量計1は、図2に示す様に、エンジンの吸気ダクト2に取り付けられるセンサハウジング3と、このセンサハウジング3に保持される流量センサ4(図3参照)とを備える。
吸気ダクト2は、吸気量を調節するスロットルバルブ(図示せず)より上流側の吸気通路であり、例えば、吸気通路の最上流に配置されるエアクリーナの出口パイプ、あるいは、この出口パイプに接続される吸気管等である。
センサハウジング3は、吸気ダクト2の壁面に空けられた取付け孔より吸気ダクト2の内部に挿入され、センサハウジング3に設けられるフランジ部3aを介して吸気ダクト2にボルト等によって着脱可能に固定される。
【0027】
センサハウジング3には、吸気ダクト2の内部を上流側(エアクリーナ側)から下流側(エンジン側)に向かって流れる空気、つまり、エンジンに吸入される空気の一部を取り込むバイパス通路が形成されている。このバイパス通路は、吸気ダクト2の上流側に向かって開口する入口5aと、吸気ダクト2の下流側に向かって開口する出口5bとの間を連通するメイン通路5と、このメイン通路5を流れる空気の一部を取り込むサブ通路6とを有する。
メイン通路5は、入口5aと出口5bとの間が略直線的に形成され、且つ、出口側の流路断面積が出口5bに向かって次第に減少するテーパ形状に形成されている。
サブ通路6は、メイン通路5の途中から分岐するサブ入口6aと、メイン通路5の出口5bの周囲に環状に開口するサブ出口6bとの間を連通して形成される。このサブ通路6は、通路途中に大きな曲がり部が設けられて、メイン通路5より通路長が長く形成されている。
【0028】
流量センサ4は、図3に示す様に、センサチップ7と回路チップ8とを有し、そのセンサチップ7と回路チップ8が共通の樹脂製ケース9に一体に収容されてセンサアセンブリとして構成されている。センサチップ7は、図4に示す様に、センサ基板10の一部に形成されたメンブレン11の表面上に発熱ヒータ12と測温抵抗体13が配置され、メンブレン11から外れた領域に吸気温検出抵抗体14が配置されている。
メンブレン11は、図5に示す様に、センサ基板10の表面にスパッタ法あるいはCVD法等により形成される絶縁膜であり、例えば、異方性エッチングにより、センサ基板10の裏面から絶縁膜との境界面までセンサ基板10の一部を除去して空洞部15を設けることにより形成される。
このセンサチップ7は、発熱ヒータ12、測温抵抗体13、および、吸気温検出抵抗体14が、サブ通路6を流れる空気に晒される様に、サブ通路6に露出した状態に配置される(図2参照)。
【0029】
発熱ヒータ12、測温抵抗体13、および、吸気温検出抵抗体14は、例えば、スパッタあるいは蒸着などの成膜技術により薄膜形成した後、エッチングにより所望の抵抗値になるようにパターニングして形成することができる。抵抗体の材料としては、例えば、信頼性の高い白金を使用することが望ましい。
また、センサチップ7には、図4に示す様に、発熱ヒータ12、測温抵抗体13、および、吸気温検出抵抗体14に接続される各配線パターン16と、これらの配線パターン16の端部に接続されるボンディングパッド17が形成され、このボンディングパッド17と回路チップ8に設けられる電極部(図示せず)とがワイヤボンディング18によって電気的に接続されている〔図3(b)参照〕。
また、センサチップ7の表面には、図5に示す様に、ボンディングパッド17の表面のみ露出した状態で、発熱ヒータ12、測温抵抗体13、吸気温検出抵抗体14、および、配線パターン16を保護する保護膜19が形成されている。なお、図5では、保護膜19が二層に形成されているが、一層だけでも良い。
【0030】
発熱ヒータ12は、後述するヒータ温度制御部20(図1参照)によって基準温度に制御される。
測温抵抗体13は、図6に示す様に、空気の流れ方向に対し、発熱ヒータ12の上流側(図示左側)に配置される2個の測温抵抗体13(第1測温抵抗体13a、第2測温抵抗体13b)と、発熱ヒータ12の下流側に配置される2個の測温抵抗体13(第1測温抵抗体13c、第2測温抵抗体13d)とで構成される。
吸気温検出抵抗体14は、図4に示す様に、メンブレン11が形成されていないセンサ基板10の厚肉部分に配置され、且つ、発熱ヒータ12の熱が温度検出に影響を及ぼさないように、発熱ヒータ12から所定距離だけ離れた位置、例えば、空気の流れ方向に対し上流側の第1測温抵抗体13aより、さらに上流に配置される。
【0031】
回路チップ8は、図1に示す様に、ヒータ温度制御部20と、発熱ヒータ12からの放熱量を基に吸気量を検出する流量検出部21と、この流量検出部21で検出される吸気量をセンサ信号に変換するデジタル演算部22とが設けられ、このデジタル演算部22は、センサチップ7に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する本発明の液状体付着判定手段22aを有している。
ヒータ温度制御部20は、図1に示す様に、下述するブリッジ回路23と、このブリッジ回路23の二つの中点端子23a、23bがそれぞれ入力端子に接続されるオペアンプ24と、このオペアンプ24の出力に基づいてオン/オフするトランジスタ25より構成される。
【0032】
ブリッジ回路23は、トランジスタ25を介して電源26に接続される給電端子23cと、アースに接続されるアース端子23dとの間に二つのブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、発熱ヒータ12と第1の抵抗体27とが直列に接続され、他方のブリッジアームには、吸気温検出抵抗体14と第2の抵抗体28とが直列に接続されている。このヒータ温度制御部20は、例えば、発熱ヒータ12の温度あるいはサブ通路6を流れる空気の温度(吸気温度と呼ぶ)が変化してブリッジ回路23のバランスが崩れると、発熱ヒータ12に流れる電流を制御して、元のバランス状態に戻すように働く。
【0033】
具体的に説明すると、例えば、発熱ヒータ12の温度が基準温度より低下すると、発熱ヒータ12の抵抗値が低下してブリッジ回路23の二つの中点端子23a、23b間に電位差が生じるため、オペアンプ24の出力によりトランジスタ25がオンする。その結果、電源26より発熱ヒータ12に電流が供給されて、発熱ヒータ12の温度が上昇する。その後、発熱ヒータ12の温度が基準温度まで上昇すると、二つの中点端子23a、23b間の電位差が無くなる、つまり、ブリッジ回路23の平衡が保たれることにより、トランジスタ25がオフして発熱ヒータ12に供給される電流が遮断される。これにより、発熱ヒータ12は、吸気温検出抵抗体14で検出される吸気温度より一定温度(例えば200℃)だけ高い基準温度に保たれる。
また、発熱ヒータ12と第1の抵抗体27との接続点である一方の中点端子23aに発生する電圧、つまり、発熱ヒータ12に流れる電流から得られる電圧は、A/D変換器29でデジタル値に変換されてデジタル演算部22に出力される。
【0034】
流量検出部21は、図1に示す様に、下述するブリッジ回路30と、このブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30bがそれぞれ入力端子に接続されるオペアンプ31とで構成される。
ブリッジ回路30は、所定の電圧が印加される給電端子30cと、アースに接続されるアース端子30dとの間に二つのブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、上流側の第1測温抵抗体13aと下流側の第1測温抵抗体13cとが直列に接続され、他方のブリッジアームには、下流側の第2測温抵抗体13dと上流側の第2測温抵抗体13bとが直列に接続されている。
ここで、発熱ヒータ12が基準温度に制御される時の空気流れと測温抵抗体13の検出温度との関係について、図7を基に説明する。
サブ通路6に空気流れが発生していない時は、図7(a)の破線グラフで示す様に、発熱ヒータ12を中心として上流側と下流側とで温度分布が対称となり、図7(b)に示す上流側の測温抵抗体13a、13bと下流側の測温抵抗体13c、13dとの間に温度差は生じない。
【0035】
これに対し、サブ通路6に順方向の空気流れが発生している場合は、上流側の測温抵抗体13a、13bの方が下流側の測温抵抗体13c、13dより空気流れによる冷却効果が大きいため、図7(a)の実線グラフで示す様に、発熱ヒータ12の下流側(図示右側)へ偏った温度分布が生じる。つまり、上流側の測温抵抗体13a、13bの方が下流側の測温抵抗体13c、13dより検出温度が低くなる。一方、サブ通路6に逆方向の空気流れが発生すると、発熱ヒータ12の上流側へ偏った温度分布が生じるため、上流側の測温抵抗体13a、13bの方が下流側の測温抵抗体13c、13dより検出温度が高くなる。
この様に、サブ通路6に空気の流れが発生すると、図8に示す様に、空気流量(吸気量)および空気の流れ方向に応じて、上流側の測温抵抗体13a、13bの検出温度と下流側測の測温抵抗体13c、13dの検出温度との間に温度差ΔTが生じるため、この温度差ΔTより吸気量および空気の流れ方向を検出できる。
【0036】
上流側の測温抵抗体13a、13bの検出温度と下流側測の測温抵抗体13c、13dの検出温度との間に温度差ΔTが生じた場合、つまり、上流側の測温抵抗体13a、13bの抵抗値と下流側の測温抵抗体13c、13dの抵抗値とがそれぞれ変化して、ブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間に電位差が生じると、その電位差がオペアンプ31により増幅された後、A/D変換器32(図1参照)でデジタル値に変換されてデジタル演算部22へ出力される。
デジタル演算部22では、例えば、温度補正に関するデータを組み込んだ補正マップを基に、A/D変換器32でデジタル変換された電圧値に対する温度特性のずれを補正し、その温度補正された電圧値を例えば周波数値に変換して、センサ信号として外部のECU(図示せず)へ出力する。なお、センサ信号は、電圧値を周波数値に変換することなく、電圧値のままECUへ出力する構成でも良い。
【0037】
次に、本発明に係る液状体付着判定手段22aについて説明する。
この液状体付着判定手段22aは、発熱ヒータ12の温度変化に応じてヒータ温度制御部20より出力される第1の信号と、測温抵抗体13の温度変化に応じて流量検出部21より出力される第2の信号とを比較して、センサチップ7に液状体が付着しているか否かを判定する。
第1の信号は、図1に示すブリッジ回路23において、発熱ヒータ12に流れる電流から得られる電圧、すなわち、一方の中点端子23aの電圧であり、この電圧がA/D変換器29でデジタル値に変換され、第1の信号としてデジタル演算部22に入力される。
第2の信号は、図1に示すブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間の電位差、つまり、一方の中点端子30aの電圧と、他方の中点端子30bの電圧との電位差であり、この電位差がA/D変換器32でデジタル値に変換され、第2の信号としてデジタル演算部22に入力される。
【0038】
ここで、センサチップ7に液状体が付着していない時、つまり、センサチップ7が正常に機能している時にヒータ温度制御部20より出力される第1の信号、および、流量検出部21より出力される第2の信号は以下の通りである。
ヒータ温度制御部20では、発熱ヒータ12を基準温度(吸気温度より一定温度だけ高い温度)に制御しているので、一方の中点端子23aには、図9の破線グラフで示す様に、空気流量がゼロの時でも、所定の電圧(図9では約2.4V)が発生し、その後、空気流量が多くなるに連れて、発生電圧が緩やかに増大する。つまり、ヒータ温度制御部20からは、空気流量に相関した第1の信号が出力される。
【0039】
一方、流量検出部21では、サブ通路6に空気の流れが発生していない時は、上記の図7を参照して説明したように、上流側の測温抵抗体13a、13bと下流側の測温抵抗体13c、13dとの間に温度差ΔTが生じないので、ブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間の電位差はゼロとなる。サブ通路6に空気の流れが発生すると、図9の実線グラフで示す様に、空気流量が多くなるに従って二つの中点端子30a、30b間の電位差が増大する。つまり、流量検出部21からは、空気流量に相関した第2の信号が出力される。
【0040】
これに対し、センサチップ7に液状体が付着していると、発熱ヒータ12の熱が液状体に奪われるため、サブ通路6を流れる空気と発熱ヒータ12との温度差が一定となるように発熱ヒータ12の温度を制御しようとすると、ヒータ温度制御部20より出力される第1の信号は、図9の矢印Aで示す様に、最大空気流量時の電圧以上となる。
一方、流量検出部21では、センサチップ7に液状体が付着していると、サブ通路6に空気の流れが発生していても、上流側と下流側の測温抵抗体13に温度差ΔTが発生しない、つまり、流量検出ができないため、流量検出部21より出力される第2の信号は、図9の矢印Bで示す様に、空気流量がゼロの時の電圧となる。
【0041】
よって、デジタル演算部22は、第1の信号と第2の信号が共に異常値を示す時、つまり、第1の信号が図9の最大空気流量以上の電圧(矢印Aの電圧)を示す時、および、第2の信号が図9の空気流量ゼロの状態の電圧(矢印Bの電圧)を示す時に、センサチップ7に液状体が付着していると判定する。
また、デジタル演算部22は、センサチップ7に液状体が付着していると判定した場合に、センサチップ7が正常に機能していないことを示す異常信号をECUへ出力する。
【0042】
(実施例1の作用および効果)
本実施例の熱式空気流量計1は、センサチップ7に液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段22aの機能をデジタル演算部22に持たせている。すなわち、デジタル演算部22は、ヒータ温度制御部20と流量検出部21より、それぞれ空気流量に相関する第1の信号と第2の信号を入力し、その二つの信号を基にセンサチップ7への液状体の付着を判定するので、判定の精度が高く、高い確率でセンサチップ7への液状体の付着の有無を判定できる。
従って、センサチップ7に液状体が付着していると判定された時は、センサチップ7が正常に機能していないことを示す異常信号をECUへ出力することにより、熱式空気流量計1の出力異常に伴う不適正な空燃比制御を回避できるので、異常なエンジン回転を防止できる。
【0043】
言い換えると、センサチップ7に液状体が付着していないと判定された時、つまり、センサチップ7が正常に機能している時に出力されるセンサ信号に基づいて空燃比制御を実行できるので、エンジン回転を正常に維持できる。
また、本実施例の熱式空気流量計1に使用されるセンサチップ7は、センサ基板10の熱容量が小さいメンブレン11上に発熱ヒータ12及び測温抵抗体13を配置しているので、発熱ヒータ12への供給電圧を低く設定できる。従って、センサチップ7に液状体が付着した時に、十分な電圧を発熱ヒータ12に供給できるので、センサチップ7から液状体が蒸発するまでの時間を短くできる。
【0044】
(実施例2)
実施例2に示す熱式空気流量計1は、ヒータ温度制御部20の構成が実施例1とは異なる。本実施例のヒータ温度制御部20は、図10に示す様に、ブリッジ回路23の一方のブリッジアームに発熱ヒータ12の温度を検出する傍熱抵抗体33と第1の抵抗体27とが直列に接続され、他方のブリッジアームに吸気温検出抵抗体14と第2の抵抗体28とが直列に接続されている。
傍熱抵抗体33は、例えば、図11に示す様に、発熱ヒータ12の温度を精度良く検出できる様に、発熱ヒータ12の周囲を囲む様に近接して配置されている。
このヒータ温度制御部20は、傍熱抵抗体33によって検出される発熱ヒータ12の温度が吸気温検出抵抗体14によって検出される吸気温度より一定温度(例えば200℃)だけ高い基準温度に保たれる様に、発熱ヒータ12の加熱電流を制御する。
【0045】
上記の構成において、液状体付着判定手段22aは、発熱ヒータ12の温度変化に応じてヒータ温度制御部20より出力される第1の信号と、測温抵抗体13の温度変化に応じて流量検出部21より出力される第2の信号とを比較して、センサチップ7に液状体が付着しているか否かを判定する。
ここで、第2の信号は、実施例1と同じく、図10に示すブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間の電位差、つまり、一方の中点端子30aの電圧と、他方の中点端子30bの電圧との電位差であり、この電位差がA/D変換器32でデジタル値に変換され、第2の信号としてデジタル演算部22に入力される。
一方、第1の信号は、図10に示すヒータ温度制御部20において、発熱ヒータ12に印加される電圧(端子34の電圧)であり、この電圧がA/D変換器29でデジタル値に変換され、第1の信号としてデジタル演算部22に入力される。
【0046】
デジタル演算部22による液状体付着の判定方法は、実施例1と同じであり、第1の信号と第2の信号が共に異常値を示す時、つまり、第1の信号が図9の最大空気流量以上の電圧(矢印Aの電圧)を示す時、および、第2の信号が図9の空気流量ゼロの状態の電圧(矢印Bの電圧)を示す時に、センサチップ7に液状体が付着していると判定する。
この実施例2の構成においても、実施例1と同じく、センサチップ7に液状体が付着していると判定された時は、センサチップ7が正常に機能していないことを示す異常信号をECUへ出力することにより、熱式空気流量計1の出力異常に伴う不適正な空燃比制御を回避でき、異常なエンジン回転を防止できる。言い換えると、センサチップ7に液状体が付着していないと判定された時、つまり、センサチップ7が正常に機能している時に出力されるセンサ信号に基づいて空燃比制御を実行できるので、エンジン回転を正常に維持できる。
【0047】
(実施例3)
実施例3に示す熱式空気流量計1は、センサチップ7に形成されるメンブレン11の表面上に少なくとも2個の発熱ヒータ12を配置した一例である。
2個の発熱ヒータ12は、図13に示す様に、サブ通路6を流れる空気の流れ方向(順方向)に対し、上流側に配置される上流側ヒータ12aと、下流側に配置される下流側ヒータ12bである。なお、図13では、上流側ヒータ12aと下流側ヒータ12bを1個ずつ配置しているが、それぞれ、2個以上配置することもできる。
上流側ヒータ12aと下流側ヒータ12bは、それぞれ、図12に示す上流側ヒータ温度制御部20Aと下流側ヒータ温度制御部20Bによって基準温度に制御される。
【0048】
上流側ヒータ温度制御部20Aは、ブリッジ回路23Aと、このブリッジ回路23Aの二つの中点端子23a1、23b1が入力端子に接続されるオペアンプ24Aと、このオペアンプ24Aの出力に基づいてオン/オフするトランジスタ25Aより構成される。
ブリッジ回路23Aは、トランジスタ25Aを介して電源26に接続される給電端子23c1と、アースに接続されるアース端子23d1との間に二つのブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、上流側ヒータ12aと第1の抵抗体27aとが直列に接続され、他方のブリッジアームには、吸気温検出抵抗体14aと第2の抵抗体28aとが直列に接続されている。
【0049】
下流側ヒータ温度制御部20Bは、ブリッジ回路23Bと、このブリッジ回路23Bの二つの中点端子23a2、23b2が入力端子に接続されるオペアンプ24Bと、このオペアンプ24Bの出力に基づいてオン/オフするトランジスタ25Bより構成される。
ブリッジ回路23Bは、トランジスタ25Bを介して電源26に接続される給電端子23c2と、アースに接続されるアース端子23d2との間に二つのブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、下流側ヒータ12bと第1の抵抗体27bとが直列に接続され、他方のブリッジアームには、吸気温検出抵抗体14bと第2の抵抗体28bとが直列に接続されている。
【0050】
上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bは、上流側ヒータ温度制御部20Aおよび下流側ヒータ温度制御部20Bにより、それぞれ、吸気温検出抵抗体14a、14bで検出される吸気温度より一定温度(例えば200℃)だけ高い基準温度に保たれる。
また、上流側ヒータ12aと第1の抵抗体27aとの接続点である一方の中点端子23a1に発生する電圧、つまり、上流側ヒータ12aに流れる電流から得られる電圧は、A/D変換器29Aでデジタル値に変換されてデジタル演算部22に出力される。
同様に、下流側ヒータ12bと第1の抵抗体27bとの接続点である一方の中点端子23a2に発生する電圧、つまり、下流側ヒータ12bに流れる電流から得られる電圧は、A/D変換器29Bでデジタル値に変換されてデジタル演算部22に出力される。
【0051】
ここで、本実施例の熱式空気流量計1による空気流量の検出方法について説明する。
サブ通路6に空気の流れが発生していない時は、上流側ヒータ12a及び下流側ヒータ12bを吸気温度に対して一定の温度差に保つために必要な電力が等しくなるため、両ブリッジ回路23A、23Bに印加される電圧も等しくなる。
サブ通路6に順方向の流れが発生している場合は、上流側ヒータ12aの上部を通過する際に加熱された空気が下流側ヒータ12bの上部を通過するため、下流側ヒータ12bの上部を通過する空気は、上流側ヒータ12aの上部を通過する時点より高温となっている。従って、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bをそれぞれ基準温度に保つためには、図14に示す様に、上流側ヒータ12aに印加される電圧の方が下流側ヒータ12bに印加される電圧より大きくなり、且つ、空気流量が増大するに連れて、両ヒータ12a、12bに印加される電圧差は大きくなる。
【0052】
また、サブ通路6に逆方向の流れが発生している場合は、下流側ヒータ12bの上部を通過する際に加熱された空気が上流側ヒータ12aの上部を通過するため、上流側ヒータ12aの上部を通過する空気は、下流側ヒータ12bの上部を通過する時点より高温となっている。よって、順方向の流れが発生している場合とは逆に、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bをそれぞれ基準温度に保つためには、下流側ヒータ12bに印加される電圧の方が上流側ヒータ12aに印加される電圧より大きくなり、且つ、空気流量が増大するに連れて、両ヒータ12a、12bに印加される電圧差は大きくなる。
上記の様に、サブ通路6に空気の流れが発生すると、ブリッジ回路23Aの一方の中点端子23a1と、ブリッジ回路23Bの一方の中点端子23a2とに異なる電圧が発生するため、両方の電圧差に応じて空気流量および空気の流れ方向を検出できる。
【0053】
続いて、デジタル演算部22による液状体付着の判定方法について説明する。
デジタル演算部22は、ブリッジ回路23Aより出力される第1の信号と、ブリッジ回路23Bより出力される第2の信号とを比較して、センサチップ7に液状体が付着しているか否かを判定する。
第1の信号は、ブリッジ回路23Aにおいて、上流側ヒータ12aに流れる電流から得られる電圧、すなわち、一方の中点端子23a1の電圧であり、この電圧がA/D変換器29Aでデジタル値に変換され、第1の信号としてデジタル演算部22に入力される。
第2の信号は、ブリッジ回路23Bにおいて、下流側ヒータ12bに流れる電流から得られる電圧、すなわち、一方の中点端子23a2の電圧であり、この電圧がA/D変換器29Bでデジタル値に変換され、第2の信号としてデジタル演算部22に入力される。
【0054】
ここで、センサチップ7に液状体が付着していない時、つまり、センサチップ7が正常に機能している時に上流側ヒータ温度制御部20Aおよび下流側ヒータ温度制御部20Bより出力される第1の信号および第2の信号は以下の通りである。
上流側ヒータ温度制御部20Aおよび下流側ヒータ温度制御部20Bでは、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bをそれぞれ基準温度に制御しているので、ブリッジ回路20Aの中点端子23a1およびブリッジ回路20Bの中点端子23a2には、それぞれ、空気流量がゼロの時でも、所定の電圧が発生し、その後、空気流量が多くなるに連れて、発生電圧が緩やかに増大する(図9参照)。つまり、上流側ヒータ温度制御部20Aおよび下流側ヒータ温度制御部20Bからは、空気流量に相関した第1の信号および第2の信号が出力される。
【0055】
これに対し、センサチップ7に液状体が付着していると、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bの熱が液状体に奪われるため、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bを基準温度に制御しようとすると、上流側ヒータ温度制御部20Aより出力される第1の信号および下流側ヒータ温度制御部20Bより出力される第2の信号は、最大空気流量時の電圧以上となる(図9参照)。
よって、デジタル演算部22は、第1の信号と第2の信号が共に異常値を示す時、つまり、第1の信号および第2の信号が、共に最大空気流量以上の電圧を示す時に、センサチップ7に液状体が付着していると判定する。
この実施例3に示す熱式空気流量計1においても、センサチップ7に液状体が付着していると判定された時は、センサチップ7が正常に機能していないことを示す異常信号をECUへ出力することにより、熱式空気流量計1の出力異常に伴う不適正な空燃比制御を回避でき、異常なエンジン回転を防止できる。
【符号の説明】
【0056】
1 熱式空気流量計
6 サブ通路(空気通路)
7 センサチップ(センサ部)
8 回路チップ
9 樹脂製ケース(共通のケース)
10 センサ基板
11 メンブレン
12 発熱ヒータ
12a 上流側ヒータ
12b 下流側ヒータ
13 測温抵抗体
20 ヒータ温度制御部
20A 上流側ヒータ温度制御部
20B 下流側ヒータ温度制御部
21 流量検出部
22 デジタル演算部
22a 液状体付着判定手段
29 A/D変換器(量子化手段)
32 A/D変換器(量子化手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のエンジンに供給される空気の流量を計測する熱式空気流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気やガス等の流体流量を計測する熱式流量計がある。この熱式流量計は、流量検出用のセンサ部に水滴等が付着すると、その水滴が蒸発するまでの間は出力異常となることが知られている。これに対し、水分や油分等の液状体がセンサ部に付着することによる出力異常を防止する技術が知られている(特許文献1、2参照)。
特許文献1では、主通路を流れる流体の一部を導入する副通路内に流体の流量を検出するセンサを配置し、このセンサより上流側の副通路側面に液状体を捕獲して移動させる捕獲手段を設けている。捕獲手段は、例えば、複数の溝、あるいは、複数のはり状突部であり、副通路内を通過する流体の流れ方向に対し傾斜して形成されている。この捕獲手段によって捕獲された液状体(例えば、空気に含まれる水滴)は、センサ部に付着することなく、副通路の出口より外部に排出される。
【0003】
また、特許文献2に示されるセンサ部は、基板上に電気絶縁膜を介して形成された発熱抵抗体と、この発熱抵抗体の近傍に形成される凹凸形状の上流側抵抗体および下流側抵抗体とを有し、各抵抗体の上に保護膜が形成されている。この保護膜は、汚染物質が含まれる水分や油分等の付着液体から各抵抗体(発熱抵抗体、上流側抵抗体、下流側抵抗体)を保護するために形成される。特に、上流側抵抗体および下流側抵抗体の上に形成される保護膜の表面は、付着液体に対し親液性を示す凹凸形状を有している。
これにより、汚染物質を含む付着液体は、親液性を示す凹凸形状の領域(上流側抵抗体および下流側抵抗体の上に形成される領域)に表面張力により移動される。その結果、汚染物質の塊は、付着液体の乾燥時に保護膜の凹凸形状の領域に集中するため、センサ部に付着することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3782669号公報
【特許文献2】特開2000−81347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された従来技術では、副通路内に流入した液状体をある程度は捕獲手段によって捕獲できるが、完全に捕獲することは困難である。よって、捕獲されなかった液状体がセンサ部に付着すると、液状体が蒸発するまでの間は出力異常となる。 このため、例えば、自動車のエンジンに吸入される空気流量を計測してエンジンへの噴射量を制御する燃料噴射システムに特許文献1の従来技術を採用すると、適正な空燃比を得ることが困難となり、場合によっては正常なエンジン回転を維持できなくなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2の従来技術では、発熱抵抗体上の保護膜に付着した液体が親液性を示す凹凸形状の領域に引き付けられて無くなるまでは、所定時間が必要であり、その間は、特許文献1の場合と同様に出力異常となるため、適正な空燃比を得ることが困難となり、場合によっては正常なエンジン回転を維持できなくなるという問題がある。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、センサ部への水分や油分等の液状体の付着の有無を判定できる熱式空気流量計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1に係る発明)
本発明は、通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部を備え、発熱ヒータからの放熱量を基に空気通路を流れる空気流量を検出する熱式空気流量計であって、センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、互いに異なる信号系統より空気流量に関係する少なくとも二つの信号を入力し、この少なくとも二つの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
【0008】
本発明の液状体付着判定手段は、互いに異なる信号系統より空気流量に関係する少なくとも二つの信号を入力し、その少なくとも二つの信号を基にセンサ部への液状体の付着を判定するので、判定の精度が高く、高い確率でセンサ部への液状体の付着の有無を判定できる。従って、センサ部に液状体が付着していると判定された時は、熱式空気流量計から出力されるセンサ信号を範囲外として、センサ部が正常に機能していないことを外部に知らせることができる。
これにより、例えば、本発明の熱式空気流量計を自動車用エンジンの空燃比制御に使用する場合は、センサ部が正常に機能している時のセンサ信号を空燃比制御に用いることができるので、空燃比を適正に制御でき、異常なエンジン回転を防止できる。
【0009】
(請求項2に係る発明)
本発明は、通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部と、空気通路を流れる空気と発熱ヒータとの温度差が一定となる様に発熱ヒータの温度を制御するヒータ温度制御部と、発熱ヒータからの放熱量を基に空気通路を流れる空気流量を検出する流量検出部とを備える熱式空気流量計であって、センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、ヒータ温度制御部および流量検出部より空気流量に関係する信号を入力し、それぞれの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
【0010】
本発明の液状体付着判定手段は、ヒータ温度制御部および流量検出部より、それぞれ空気流量に関係する信号を入力し、その二つの信号を基にセンサ部への液状体の付着を判定するので、判定の精度が高く、高い確率でセンサ部への液状体の付着の有無を判定できる。従って、センサ部に液状体が付着していると判定された時は、熱式空気流量計から出力されるセンサ信号を範囲外として、センサ部が正常に機能していないことを外部に知らせることができる。
これにより、例えば、本発明の熱式空気流量計を自動車用エンジンの空燃比制御に使用する場合は、センサ部が正常に機能している時のセンサ信号を空燃比制御に用いることができるので、空燃比を適正に制御でき、異常なエンジン回転を防止できる。
【0011】
(請求項3に係る発明)
請求項2に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、発熱ヒータの上流側と下流側のどちらか一方、あるいは上流側と下流側の両方に配置される測温抵抗体を有し、液状体付着判定手段は、発熱ヒータの温度変化に応じてヒータ温度制御部より出力される第1の電圧と、測温抵抗体の温度変化に応じて流量検出部より出力される第2の電圧とが、共に異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
【0012】
センサ部に液状体が付着している場合は、発熱ヒータの熱が液状体に奪われるため、空気通路を流れる空気と発熱ヒータとの温度差が一定となるように発熱ヒータの温度を制御しようとすると、ヒータ温度制御部から得られる第1の電圧は、最大空気流量時の電圧以上となる。一方、流量検出部では、センサ部に液状体が付着していると流量検出ができないため、流量検出部から得られる第2の電圧は、空気流量がゼロの時の電圧となる。
よって、ヒータ温度制御部から得られる第1の電圧と、流量検出部から得られる第2の電圧とを比較することで、センサ部に液状体が付着しているか否かを判定できる。
【0013】
(請求項4に係る発明)
本発明は、通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部と、発熱ヒータの温度を制御するヒータ温度制御部とを備え、センサ部は、空気通路を流れる空気の流れ方向に対して上流側と下流側とに少なくとも1個ずつ発熱ヒータを配置し、ヒータ温度制御部は、空気の流れ方向に対して上流側に配置される発熱ヒータを上流側ヒータと呼び、空気の流れ方向に対して下流側に配置される発熱ヒータを下流側ヒータと呼ぶ時に、空気通路を流れる空気と上流側ヒータとの温度差が一定となる様に上流側ヒータの温度を制御する上流側ヒータ温度制御部と、空気通路を流れる空気と下流側ヒータとの温度差が一定となる様に下流側ヒータの温度を制御する下流側ヒータ温度制御部とで構成され、上流側ヒータからの放熱量と下流側ヒータからの放熱量との差より、空気通路を流れる空気流量を検出する熱式空気流量計であって、センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、上流側ヒータ温度制御部および下流側ヒータ温度制御部より空気流量に関係する信号を入力し、それぞれの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
【0014】
この請求項4に係る熱式空気流量計は、上流側ヒータからの放熱量と下流側ヒータからの放熱量との差より空気流量を検出することができる。
例えば、空気通路に順方向の流れが発生している場合は、上流側ヒータの上部を通過する際に加熱された空気が下流側ヒータの上部を通過するため、下流側ヒータの上部を通過する空気は、上流側ヒータの上部を通過する時点より高温となっている。従って、上流側ヒータおよび下流側ヒータをそれぞれ空気温度に対して一定の温度差に保つためには、上流側ヒータに印加される電圧の方が下流側ヒータに印加される電圧より大きくなり、且つ、空気流量が増大するに連れて、両ヒータに印加される電圧差は大きくなる。
【0015】
また、空気通路に逆方向の流れが発生している場合は、順方向の流れが発生している場合とは逆に、下流側ヒータに印加される電圧の方が上流側ヒータに印加される電圧より大きくなり、且つ、空気流量が増大するに連れて、両ヒータに印加される電圧差は大きくなる。従って、上流側ヒータからの放熱量と下流側ヒータからの放熱量との差に応じて、空気流量および空気の流れ方向を検出できる。これにより、例えば、自動車のエンジンに吸入される吸気量を計測するエアフロメータに本発明の熱式空気流量計を適用した場合に、エンジンに吸入される順方向の吸気量だけでなく、例えば、吸気脈動等によって生じる逆流時の空気流量も計測できる。
【0016】
また、本発明の液状体付着判定手段は、上流側ヒータ温度制御部と下流側ヒータ温度制御部より、それぞれ空気流量に関係する信号を入力し、その二つの信号を基にセンサ部への液状体の付着を判定するので、判定の精度が高く、高い確率でセンサ部への液状体の付着の有無を判定できる。従って、センサ部に液状体が付着していると判定された時は、熱式空気流量計から出力されるセンサ信号を範囲外として、センサ部が正常に機能していないことを外部に知らせることができる。
これにより、例えば、本発明の熱式空気流量計を自動車用エンジンの空燃比制御に使用する場合は、センサ部が正常に機能している時のセンサ信号を空燃比制御に用いることができるので、空燃比を適正に制御でき、異常なエンジン回転を防止できる。
【0017】
(請求項5に係る発明)
請求項4に記載した熱式空気流量計において、液状体付着判定手段は、上流側ヒータの温度変化に応じて上流側ヒータ温度制御部より出力される第1の電圧と、下流側ヒータの温度変化に応じて下流側ヒータ温度制御部より出力される第2の電圧とが、共に異常値を示す時に、センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする。
センサ部に液状体が付着している場合は、発熱ヒータ(上流側ヒータおよび下流側ヒータ)の熱が液状体に奪われるため、空気通路を流れる空気と発熱ヒータとの温度差が一定となるように発熱ヒータの温度を制御しようとすると、上流側ヒータ温度制御部から得られる第1の電圧および下流側ヒータ温度制御部から得られる第2の電圧は、最大空気流量時の電圧以上となる。
よって、上流側ヒータ温度制御部から得られる第1の電圧および下流側ヒータ温度制御部から得られる第2の電圧とを比較することで、センサ部に液状体が付着しているか否かを判定できる。
【0018】
(請求項6に係る発明)
請求項3に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、メンブレン上に発熱ヒータおよび測温抵抗体が配置されていることを特徴とする。
基板の熱容量が小さいメンブレン上に発熱ヒータおよび測温抵抗体を配置することで、発熱ヒータへの供給電圧を低く設定できる。これにより、センサ部に液状体が付着した時に、十分な電圧を発熱ヒータに供給できるので、センサ部から液状体が蒸発するまでの時間を短くできる。
【0019】
(請求項7に係る発明)
請求項4または5に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、メンブレン上に上流側ヒータおよび下流側ヒータが配置されていることを特徴とする。
基板の熱容量が小さいメンブレン上に発熱ヒータ(上流側ヒータおよび下流側ヒータ)を配置することで、発熱ヒータへの供給電圧を低く設定できる。これにより、センサ部に液状体が付着した時に、十分な電圧を発熱ヒータに供給できるので、センサ部から液状体が蒸発するまでの時間を短くできる。
【0020】
(請求項8に係る発明)
請求項3または5に記載した熱式空気流量計において、第1の電圧と第2の電圧をそれぞれ量子化する量子化手段を備え、液状体付着判定手段は、回路チップ上に設けられるデジタル演算部によって構成され、このデジタル演算部により、量子化された二つの信号に基づいてセンサ部に液状体が付着しているか否かを判定することを特徴とする。
本発明では、アナログ値である第1の電圧と第2の電圧をそれぞれ量子化する、つまり、デジタル変換した後、その二つのデジタル信号をデジタル演算部で比較処理することにより、液状体がセンサ部に付着しているか否かを確実に判定できる。
【0021】
(請求項9に係る発明)
請求項8に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、センサチップと回路チップは、共通のケースに一体に収容されて、センサアセンブリとして構成されていることを特徴とする。
センサチップと回路チップを共通のケースに一体に収容することで、センサチップと回路チップとの配線接続をワイヤボンディング等によって容易にでき、且つ、一つのセンサアセンブリとして構成することにより小型化が可能となる。
【0022】
(請求項10に係る発明)
請求項1に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、空気の流れ方向に対して発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ配置される測温抵抗体を有し、上流側の測温抵抗体と下流側の測温抵抗体との温度差より空気流量を検出することを特徴とする。
この場合、発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ測温抵抗体を配置しているので、順方向の空気流量、つまり、発熱ヒータの上流側から下流側へ向かう空気の流量だけでなく、逆方向の空気流量、つまり、発熱ヒータの下流側から上流側へ逆流する空気の流量も検出できる。これにより、例えば、自動車のエンジンに吸入される吸気量を計測するエアフロメータに本発明の熱式空気流量計を適用した場合に、エンジンに吸入される順方向の吸気量だけでなく、例えば、吸気脈動等によって生じる逆流時の空気流量も計測できる。
【0023】
(請求項11に係る発明)
請求項2に記載した熱式空気流量計において、センサ部は、空気の流れ方向に対して発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ配置される測温抵抗体を有し、流量検出部は、上流側の測温抵抗体と下流側の測温抵抗体との温度差より空気流量を検出することを特徴とする。
この場合、発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ測温抵抗体を配置しているので、順方向の空気流量、つまり、発熱ヒータの上流側から下流側へ向かう空気の流量だけでなく、逆方向の空気流量、つまり、発熱ヒータの下流側から上流側へ逆流する空気の流量も検出できる。これにより、例えば、自動車のエンジンに吸入される吸気量を計測するエアフロメータに本発明の熱式空気流量計を適用した場合に、エンジンに吸入される順方向の吸気量だけでなく、例えば、吸気脈動等によって生じる逆流時の空気流量も計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】熱式空気流量計の回路図である(実施例1)。
【図2】熱式空気流量計を吸気ダクトに取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】(a)流量センサの平面図、(b)同図(a)のA−A断面図である。
【図4】センサチップの平面図である(実施例1)。
【図5】センサチップの断面図である(実施例1)。
【図6】センサチップのメンブレン上に配置された発熱ヒータと測温抵抗体の平面図である(実施例1)。
【図7】(a)流量検出の原理を示す温度分布図、(b)空気の流れ方向に沿って切断したセンサチップの断面図である。
【図8】熱式空気流量計の出力特性を示すグラフである。
【図9】センサ部に液状体が付着している時と付着していない時の出力特性を示すグラフである。
【図10】熱式空気流量計の回路図である(実施例2)。
【図11】センサチップのメンブレン上に配置された発熱ヒータと測温抵抗体の平面図である(実施例2)。
【図12】熱式空気流量計の回路図である(実施例3)。
【図13】センサチップのメンブレン上に配置された発熱ヒータの平面図である(実施例3)。
【図14】上流側ヒータおよび下流側ヒータの印加電圧と空気流量との関係を表す特性図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
この実施例1では、自動車のエンジンに吸入される空気流量(吸気量と呼ぶ)を計測する熱式空気流量計1の一例を説明する。
熱式空気流量計1は、図2に示す様に、エンジンの吸気ダクト2に取り付けられるセンサハウジング3と、このセンサハウジング3に保持される流量センサ4(図3参照)とを備える。
吸気ダクト2は、吸気量を調節するスロットルバルブ(図示せず)より上流側の吸気通路であり、例えば、吸気通路の最上流に配置されるエアクリーナの出口パイプ、あるいは、この出口パイプに接続される吸気管等である。
センサハウジング3は、吸気ダクト2の壁面に空けられた取付け孔より吸気ダクト2の内部に挿入され、センサハウジング3に設けられるフランジ部3aを介して吸気ダクト2にボルト等によって着脱可能に固定される。
【0027】
センサハウジング3には、吸気ダクト2の内部を上流側(エアクリーナ側)から下流側(エンジン側)に向かって流れる空気、つまり、エンジンに吸入される空気の一部を取り込むバイパス通路が形成されている。このバイパス通路は、吸気ダクト2の上流側に向かって開口する入口5aと、吸気ダクト2の下流側に向かって開口する出口5bとの間を連通するメイン通路5と、このメイン通路5を流れる空気の一部を取り込むサブ通路6とを有する。
メイン通路5は、入口5aと出口5bとの間が略直線的に形成され、且つ、出口側の流路断面積が出口5bに向かって次第に減少するテーパ形状に形成されている。
サブ通路6は、メイン通路5の途中から分岐するサブ入口6aと、メイン通路5の出口5bの周囲に環状に開口するサブ出口6bとの間を連通して形成される。このサブ通路6は、通路途中に大きな曲がり部が設けられて、メイン通路5より通路長が長く形成されている。
【0028】
流量センサ4は、図3に示す様に、センサチップ7と回路チップ8とを有し、そのセンサチップ7と回路チップ8が共通の樹脂製ケース9に一体に収容されてセンサアセンブリとして構成されている。センサチップ7は、図4に示す様に、センサ基板10の一部に形成されたメンブレン11の表面上に発熱ヒータ12と測温抵抗体13が配置され、メンブレン11から外れた領域に吸気温検出抵抗体14が配置されている。
メンブレン11は、図5に示す様に、センサ基板10の表面にスパッタ法あるいはCVD法等により形成される絶縁膜であり、例えば、異方性エッチングにより、センサ基板10の裏面から絶縁膜との境界面までセンサ基板10の一部を除去して空洞部15を設けることにより形成される。
このセンサチップ7は、発熱ヒータ12、測温抵抗体13、および、吸気温検出抵抗体14が、サブ通路6を流れる空気に晒される様に、サブ通路6に露出した状態に配置される(図2参照)。
【0029】
発熱ヒータ12、測温抵抗体13、および、吸気温検出抵抗体14は、例えば、スパッタあるいは蒸着などの成膜技術により薄膜形成した後、エッチングにより所望の抵抗値になるようにパターニングして形成することができる。抵抗体の材料としては、例えば、信頼性の高い白金を使用することが望ましい。
また、センサチップ7には、図4に示す様に、発熱ヒータ12、測温抵抗体13、および、吸気温検出抵抗体14に接続される各配線パターン16と、これらの配線パターン16の端部に接続されるボンディングパッド17が形成され、このボンディングパッド17と回路チップ8に設けられる電極部(図示せず)とがワイヤボンディング18によって電気的に接続されている〔図3(b)参照〕。
また、センサチップ7の表面には、図5に示す様に、ボンディングパッド17の表面のみ露出した状態で、発熱ヒータ12、測温抵抗体13、吸気温検出抵抗体14、および、配線パターン16を保護する保護膜19が形成されている。なお、図5では、保護膜19が二層に形成されているが、一層だけでも良い。
【0030】
発熱ヒータ12は、後述するヒータ温度制御部20(図1参照)によって基準温度に制御される。
測温抵抗体13は、図6に示す様に、空気の流れ方向に対し、発熱ヒータ12の上流側(図示左側)に配置される2個の測温抵抗体13(第1測温抵抗体13a、第2測温抵抗体13b)と、発熱ヒータ12の下流側に配置される2個の測温抵抗体13(第1測温抵抗体13c、第2測温抵抗体13d)とで構成される。
吸気温検出抵抗体14は、図4に示す様に、メンブレン11が形成されていないセンサ基板10の厚肉部分に配置され、且つ、発熱ヒータ12の熱が温度検出に影響を及ぼさないように、発熱ヒータ12から所定距離だけ離れた位置、例えば、空気の流れ方向に対し上流側の第1測温抵抗体13aより、さらに上流に配置される。
【0031】
回路チップ8は、図1に示す様に、ヒータ温度制御部20と、発熱ヒータ12からの放熱量を基に吸気量を検出する流量検出部21と、この流量検出部21で検出される吸気量をセンサ信号に変換するデジタル演算部22とが設けられ、このデジタル演算部22は、センサチップ7に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する本発明の液状体付着判定手段22aを有している。
ヒータ温度制御部20は、図1に示す様に、下述するブリッジ回路23と、このブリッジ回路23の二つの中点端子23a、23bがそれぞれ入力端子に接続されるオペアンプ24と、このオペアンプ24の出力に基づいてオン/オフするトランジスタ25より構成される。
【0032】
ブリッジ回路23は、トランジスタ25を介して電源26に接続される給電端子23cと、アースに接続されるアース端子23dとの間に二つのブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、発熱ヒータ12と第1の抵抗体27とが直列に接続され、他方のブリッジアームには、吸気温検出抵抗体14と第2の抵抗体28とが直列に接続されている。このヒータ温度制御部20は、例えば、発熱ヒータ12の温度あるいはサブ通路6を流れる空気の温度(吸気温度と呼ぶ)が変化してブリッジ回路23のバランスが崩れると、発熱ヒータ12に流れる電流を制御して、元のバランス状態に戻すように働く。
【0033】
具体的に説明すると、例えば、発熱ヒータ12の温度が基準温度より低下すると、発熱ヒータ12の抵抗値が低下してブリッジ回路23の二つの中点端子23a、23b間に電位差が生じるため、オペアンプ24の出力によりトランジスタ25がオンする。その結果、電源26より発熱ヒータ12に電流が供給されて、発熱ヒータ12の温度が上昇する。その後、発熱ヒータ12の温度が基準温度まで上昇すると、二つの中点端子23a、23b間の電位差が無くなる、つまり、ブリッジ回路23の平衡が保たれることにより、トランジスタ25がオフして発熱ヒータ12に供給される電流が遮断される。これにより、発熱ヒータ12は、吸気温検出抵抗体14で検出される吸気温度より一定温度(例えば200℃)だけ高い基準温度に保たれる。
また、発熱ヒータ12と第1の抵抗体27との接続点である一方の中点端子23aに発生する電圧、つまり、発熱ヒータ12に流れる電流から得られる電圧は、A/D変換器29でデジタル値に変換されてデジタル演算部22に出力される。
【0034】
流量検出部21は、図1に示す様に、下述するブリッジ回路30と、このブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30bがそれぞれ入力端子に接続されるオペアンプ31とで構成される。
ブリッジ回路30は、所定の電圧が印加される給電端子30cと、アースに接続されるアース端子30dとの間に二つのブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、上流側の第1測温抵抗体13aと下流側の第1測温抵抗体13cとが直列に接続され、他方のブリッジアームには、下流側の第2測温抵抗体13dと上流側の第2測温抵抗体13bとが直列に接続されている。
ここで、発熱ヒータ12が基準温度に制御される時の空気流れと測温抵抗体13の検出温度との関係について、図7を基に説明する。
サブ通路6に空気流れが発生していない時は、図7(a)の破線グラフで示す様に、発熱ヒータ12を中心として上流側と下流側とで温度分布が対称となり、図7(b)に示す上流側の測温抵抗体13a、13bと下流側の測温抵抗体13c、13dとの間に温度差は生じない。
【0035】
これに対し、サブ通路6に順方向の空気流れが発生している場合は、上流側の測温抵抗体13a、13bの方が下流側の測温抵抗体13c、13dより空気流れによる冷却効果が大きいため、図7(a)の実線グラフで示す様に、発熱ヒータ12の下流側(図示右側)へ偏った温度分布が生じる。つまり、上流側の測温抵抗体13a、13bの方が下流側の測温抵抗体13c、13dより検出温度が低くなる。一方、サブ通路6に逆方向の空気流れが発生すると、発熱ヒータ12の上流側へ偏った温度分布が生じるため、上流側の測温抵抗体13a、13bの方が下流側の測温抵抗体13c、13dより検出温度が高くなる。
この様に、サブ通路6に空気の流れが発生すると、図8に示す様に、空気流量(吸気量)および空気の流れ方向に応じて、上流側の測温抵抗体13a、13bの検出温度と下流側測の測温抵抗体13c、13dの検出温度との間に温度差ΔTが生じるため、この温度差ΔTより吸気量および空気の流れ方向を検出できる。
【0036】
上流側の測温抵抗体13a、13bの検出温度と下流側測の測温抵抗体13c、13dの検出温度との間に温度差ΔTが生じた場合、つまり、上流側の測温抵抗体13a、13bの抵抗値と下流側の測温抵抗体13c、13dの抵抗値とがそれぞれ変化して、ブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間に電位差が生じると、その電位差がオペアンプ31により増幅された後、A/D変換器32(図1参照)でデジタル値に変換されてデジタル演算部22へ出力される。
デジタル演算部22では、例えば、温度補正に関するデータを組み込んだ補正マップを基に、A/D変換器32でデジタル変換された電圧値に対する温度特性のずれを補正し、その温度補正された電圧値を例えば周波数値に変換して、センサ信号として外部のECU(図示せず)へ出力する。なお、センサ信号は、電圧値を周波数値に変換することなく、電圧値のままECUへ出力する構成でも良い。
【0037】
次に、本発明に係る液状体付着判定手段22aについて説明する。
この液状体付着判定手段22aは、発熱ヒータ12の温度変化に応じてヒータ温度制御部20より出力される第1の信号と、測温抵抗体13の温度変化に応じて流量検出部21より出力される第2の信号とを比較して、センサチップ7に液状体が付着しているか否かを判定する。
第1の信号は、図1に示すブリッジ回路23において、発熱ヒータ12に流れる電流から得られる電圧、すなわち、一方の中点端子23aの電圧であり、この電圧がA/D変換器29でデジタル値に変換され、第1の信号としてデジタル演算部22に入力される。
第2の信号は、図1に示すブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間の電位差、つまり、一方の中点端子30aの電圧と、他方の中点端子30bの電圧との電位差であり、この電位差がA/D変換器32でデジタル値に変換され、第2の信号としてデジタル演算部22に入力される。
【0038】
ここで、センサチップ7に液状体が付着していない時、つまり、センサチップ7が正常に機能している時にヒータ温度制御部20より出力される第1の信号、および、流量検出部21より出力される第2の信号は以下の通りである。
ヒータ温度制御部20では、発熱ヒータ12を基準温度(吸気温度より一定温度だけ高い温度)に制御しているので、一方の中点端子23aには、図9の破線グラフで示す様に、空気流量がゼロの時でも、所定の電圧(図9では約2.4V)が発生し、その後、空気流量が多くなるに連れて、発生電圧が緩やかに増大する。つまり、ヒータ温度制御部20からは、空気流量に相関した第1の信号が出力される。
【0039】
一方、流量検出部21では、サブ通路6に空気の流れが発生していない時は、上記の図7を参照して説明したように、上流側の測温抵抗体13a、13bと下流側の測温抵抗体13c、13dとの間に温度差ΔTが生じないので、ブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間の電位差はゼロとなる。サブ通路6に空気の流れが発生すると、図9の実線グラフで示す様に、空気流量が多くなるに従って二つの中点端子30a、30b間の電位差が増大する。つまり、流量検出部21からは、空気流量に相関した第2の信号が出力される。
【0040】
これに対し、センサチップ7に液状体が付着していると、発熱ヒータ12の熱が液状体に奪われるため、サブ通路6を流れる空気と発熱ヒータ12との温度差が一定となるように発熱ヒータ12の温度を制御しようとすると、ヒータ温度制御部20より出力される第1の信号は、図9の矢印Aで示す様に、最大空気流量時の電圧以上となる。
一方、流量検出部21では、センサチップ7に液状体が付着していると、サブ通路6に空気の流れが発生していても、上流側と下流側の測温抵抗体13に温度差ΔTが発生しない、つまり、流量検出ができないため、流量検出部21より出力される第2の信号は、図9の矢印Bで示す様に、空気流量がゼロの時の電圧となる。
【0041】
よって、デジタル演算部22は、第1の信号と第2の信号が共に異常値を示す時、つまり、第1の信号が図9の最大空気流量以上の電圧(矢印Aの電圧)を示す時、および、第2の信号が図9の空気流量ゼロの状態の電圧(矢印Bの電圧)を示す時に、センサチップ7に液状体が付着していると判定する。
また、デジタル演算部22は、センサチップ7に液状体が付着していると判定した場合に、センサチップ7が正常に機能していないことを示す異常信号をECUへ出力する。
【0042】
(実施例1の作用および効果)
本実施例の熱式空気流量計1は、センサチップ7に液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段22aの機能をデジタル演算部22に持たせている。すなわち、デジタル演算部22は、ヒータ温度制御部20と流量検出部21より、それぞれ空気流量に相関する第1の信号と第2の信号を入力し、その二つの信号を基にセンサチップ7への液状体の付着を判定するので、判定の精度が高く、高い確率でセンサチップ7への液状体の付着の有無を判定できる。
従って、センサチップ7に液状体が付着していると判定された時は、センサチップ7が正常に機能していないことを示す異常信号をECUへ出力することにより、熱式空気流量計1の出力異常に伴う不適正な空燃比制御を回避できるので、異常なエンジン回転を防止できる。
【0043】
言い換えると、センサチップ7に液状体が付着していないと判定された時、つまり、センサチップ7が正常に機能している時に出力されるセンサ信号に基づいて空燃比制御を実行できるので、エンジン回転を正常に維持できる。
また、本実施例の熱式空気流量計1に使用されるセンサチップ7は、センサ基板10の熱容量が小さいメンブレン11上に発熱ヒータ12及び測温抵抗体13を配置しているので、発熱ヒータ12への供給電圧を低く設定できる。従って、センサチップ7に液状体が付着した時に、十分な電圧を発熱ヒータ12に供給できるので、センサチップ7から液状体が蒸発するまでの時間を短くできる。
【0044】
(実施例2)
実施例2に示す熱式空気流量計1は、ヒータ温度制御部20の構成が実施例1とは異なる。本実施例のヒータ温度制御部20は、図10に示す様に、ブリッジ回路23の一方のブリッジアームに発熱ヒータ12の温度を検出する傍熱抵抗体33と第1の抵抗体27とが直列に接続され、他方のブリッジアームに吸気温検出抵抗体14と第2の抵抗体28とが直列に接続されている。
傍熱抵抗体33は、例えば、図11に示す様に、発熱ヒータ12の温度を精度良く検出できる様に、発熱ヒータ12の周囲を囲む様に近接して配置されている。
このヒータ温度制御部20は、傍熱抵抗体33によって検出される発熱ヒータ12の温度が吸気温検出抵抗体14によって検出される吸気温度より一定温度(例えば200℃)だけ高い基準温度に保たれる様に、発熱ヒータ12の加熱電流を制御する。
【0045】
上記の構成において、液状体付着判定手段22aは、発熱ヒータ12の温度変化に応じてヒータ温度制御部20より出力される第1の信号と、測温抵抗体13の温度変化に応じて流量検出部21より出力される第2の信号とを比較して、センサチップ7に液状体が付着しているか否かを判定する。
ここで、第2の信号は、実施例1と同じく、図10に示すブリッジ回路30の二つの中点端子30a、30b間の電位差、つまり、一方の中点端子30aの電圧と、他方の中点端子30bの電圧との電位差であり、この電位差がA/D変換器32でデジタル値に変換され、第2の信号としてデジタル演算部22に入力される。
一方、第1の信号は、図10に示すヒータ温度制御部20において、発熱ヒータ12に印加される電圧(端子34の電圧)であり、この電圧がA/D変換器29でデジタル値に変換され、第1の信号としてデジタル演算部22に入力される。
【0046】
デジタル演算部22による液状体付着の判定方法は、実施例1と同じであり、第1の信号と第2の信号が共に異常値を示す時、つまり、第1の信号が図9の最大空気流量以上の電圧(矢印Aの電圧)を示す時、および、第2の信号が図9の空気流量ゼロの状態の電圧(矢印Bの電圧)を示す時に、センサチップ7に液状体が付着していると判定する。
この実施例2の構成においても、実施例1と同じく、センサチップ7に液状体が付着していると判定された時は、センサチップ7が正常に機能していないことを示す異常信号をECUへ出力することにより、熱式空気流量計1の出力異常に伴う不適正な空燃比制御を回避でき、異常なエンジン回転を防止できる。言い換えると、センサチップ7に液状体が付着していないと判定された時、つまり、センサチップ7が正常に機能している時に出力されるセンサ信号に基づいて空燃比制御を実行できるので、エンジン回転を正常に維持できる。
【0047】
(実施例3)
実施例3に示す熱式空気流量計1は、センサチップ7に形成されるメンブレン11の表面上に少なくとも2個の発熱ヒータ12を配置した一例である。
2個の発熱ヒータ12は、図13に示す様に、サブ通路6を流れる空気の流れ方向(順方向)に対し、上流側に配置される上流側ヒータ12aと、下流側に配置される下流側ヒータ12bである。なお、図13では、上流側ヒータ12aと下流側ヒータ12bを1個ずつ配置しているが、それぞれ、2個以上配置することもできる。
上流側ヒータ12aと下流側ヒータ12bは、それぞれ、図12に示す上流側ヒータ温度制御部20Aと下流側ヒータ温度制御部20Bによって基準温度に制御される。
【0048】
上流側ヒータ温度制御部20Aは、ブリッジ回路23Aと、このブリッジ回路23Aの二つの中点端子23a1、23b1が入力端子に接続されるオペアンプ24Aと、このオペアンプ24Aの出力に基づいてオン/オフするトランジスタ25Aより構成される。
ブリッジ回路23Aは、トランジスタ25Aを介して電源26に接続される給電端子23c1と、アースに接続されるアース端子23d1との間に二つのブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、上流側ヒータ12aと第1の抵抗体27aとが直列に接続され、他方のブリッジアームには、吸気温検出抵抗体14aと第2の抵抗体28aとが直列に接続されている。
【0049】
下流側ヒータ温度制御部20Bは、ブリッジ回路23Bと、このブリッジ回路23Bの二つの中点端子23a2、23b2が入力端子に接続されるオペアンプ24Bと、このオペアンプ24Bの出力に基づいてオン/オフするトランジスタ25Bより構成される。
ブリッジ回路23Bは、トランジスタ25Bを介して電源26に接続される給電端子23c2と、アースに接続されるアース端子23d2との間に二つのブリッジアームを有し、一方のブリッジアームには、下流側ヒータ12bと第1の抵抗体27bとが直列に接続され、他方のブリッジアームには、吸気温検出抵抗体14bと第2の抵抗体28bとが直列に接続されている。
【0050】
上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bは、上流側ヒータ温度制御部20Aおよび下流側ヒータ温度制御部20Bにより、それぞれ、吸気温検出抵抗体14a、14bで検出される吸気温度より一定温度(例えば200℃)だけ高い基準温度に保たれる。
また、上流側ヒータ12aと第1の抵抗体27aとの接続点である一方の中点端子23a1に発生する電圧、つまり、上流側ヒータ12aに流れる電流から得られる電圧は、A/D変換器29Aでデジタル値に変換されてデジタル演算部22に出力される。
同様に、下流側ヒータ12bと第1の抵抗体27bとの接続点である一方の中点端子23a2に発生する電圧、つまり、下流側ヒータ12bに流れる電流から得られる電圧は、A/D変換器29Bでデジタル値に変換されてデジタル演算部22に出力される。
【0051】
ここで、本実施例の熱式空気流量計1による空気流量の検出方法について説明する。
サブ通路6に空気の流れが発生していない時は、上流側ヒータ12a及び下流側ヒータ12bを吸気温度に対して一定の温度差に保つために必要な電力が等しくなるため、両ブリッジ回路23A、23Bに印加される電圧も等しくなる。
サブ通路6に順方向の流れが発生している場合は、上流側ヒータ12aの上部を通過する際に加熱された空気が下流側ヒータ12bの上部を通過するため、下流側ヒータ12bの上部を通過する空気は、上流側ヒータ12aの上部を通過する時点より高温となっている。従って、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bをそれぞれ基準温度に保つためには、図14に示す様に、上流側ヒータ12aに印加される電圧の方が下流側ヒータ12bに印加される電圧より大きくなり、且つ、空気流量が増大するに連れて、両ヒータ12a、12bに印加される電圧差は大きくなる。
【0052】
また、サブ通路6に逆方向の流れが発生している場合は、下流側ヒータ12bの上部を通過する際に加熱された空気が上流側ヒータ12aの上部を通過するため、上流側ヒータ12aの上部を通過する空気は、下流側ヒータ12bの上部を通過する時点より高温となっている。よって、順方向の流れが発生している場合とは逆に、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bをそれぞれ基準温度に保つためには、下流側ヒータ12bに印加される電圧の方が上流側ヒータ12aに印加される電圧より大きくなり、且つ、空気流量が増大するに連れて、両ヒータ12a、12bに印加される電圧差は大きくなる。
上記の様に、サブ通路6に空気の流れが発生すると、ブリッジ回路23Aの一方の中点端子23a1と、ブリッジ回路23Bの一方の中点端子23a2とに異なる電圧が発生するため、両方の電圧差に応じて空気流量および空気の流れ方向を検出できる。
【0053】
続いて、デジタル演算部22による液状体付着の判定方法について説明する。
デジタル演算部22は、ブリッジ回路23Aより出力される第1の信号と、ブリッジ回路23Bより出力される第2の信号とを比較して、センサチップ7に液状体が付着しているか否かを判定する。
第1の信号は、ブリッジ回路23Aにおいて、上流側ヒータ12aに流れる電流から得られる電圧、すなわち、一方の中点端子23a1の電圧であり、この電圧がA/D変換器29Aでデジタル値に変換され、第1の信号としてデジタル演算部22に入力される。
第2の信号は、ブリッジ回路23Bにおいて、下流側ヒータ12bに流れる電流から得られる電圧、すなわち、一方の中点端子23a2の電圧であり、この電圧がA/D変換器29Bでデジタル値に変換され、第2の信号としてデジタル演算部22に入力される。
【0054】
ここで、センサチップ7に液状体が付着していない時、つまり、センサチップ7が正常に機能している時に上流側ヒータ温度制御部20Aおよび下流側ヒータ温度制御部20Bより出力される第1の信号および第2の信号は以下の通りである。
上流側ヒータ温度制御部20Aおよび下流側ヒータ温度制御部20Bでは、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bをそれぞれ基準温度に制御しているので、ブリッジ回路20Aの中点端子23a1およびブリッジ回路20Bの中点端子23a2には、それぞれ、空気流量がゼロの時でも、所定の電圧が発生し、その後、空気流量が多くなるに連れて、発生電圧が緩やかに増大する(図9参照)。つまり、上流側ヒータ温度制御部20Aおよび下流側ヒータ温度制御部20Bからは、空気流量に相関した第1の信号および第2の信号が出力される。
【0055】
これに対し、センサチップ7に液状体が付着していると、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bの熱が液状体に奪われるため、上流側ヒータ12aおよび下流側ヒータ12bを基準温度に制御しようとすると、上流側ヒータ温度制御部20Aより出力される第1の信号および下流側ヒータ温度制御部20Bより出力される第2の信号は、最大空気流量時の電圧以上となる(図9参照)。
よって、デジタル演算部22は、第1の信号と第2の信号が共に異常値を示す時、つまり、第1の信号および第2の信号が、共に最大空気流量以上の電圧を示す時に、センサチップ7に液状体が付着していると判定する。
この実施例3に示す熱式空気流量計1においても、センサチップ7に液状体が付着していると判定された時は、センサチップ7が正常に機能していないことを示す異常信号をECUへ出力することにより、熱式空気流量計1の出力異常に伴う不適正な空燃比制御を回避でき、異常なエンジン回転を防止できる。
【符号の説明】
【0056】
1 熱式空気流量計
6 サブ通路(空気通路)
7 センサチップ(センサ部)
8 回路チップ
9 樹脂製ケース(共通のケース)
10 センサ基板
11 メンブレン
12 発熱ヒータ
12a 上流側ヒータ
12b 下流側ヒータ
13 測温抵抗体
20 ヒータ温度制御部
20A 上流側ヒータ温度制御部
20B 下流側ヒータ温度制御部
21 流量検出部
22 デジタル演算部
22a 液状体付着判定手段
29 A/D変換器(量子化手段)
32 A/D変換器(量子化手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部を備え、
前記発熱ヒータからの放熱量を基に前記空気通路を流れる空気流量を検出する熱式空気流量計であって、
前記センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、互いに異なる信号系統より空気流量に関係する少なくとも二つの信号を入力し、この少なくとも二つの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項2】
通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部と、
前記空気通路を流れる空気と前記発熱ヒータとの温度差が一定となる様に前記発熱ヒータの温度を制御するヒータ温度制御部と、
前記発熱ヒータからの放熱量を基に前記空気通路を流れる空気流量を検出する流量検出部とを備える熱式空気流量計であって、
前記センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、前記ヒータ温度制御部および前記流量検出部より空気流量に関係する信号を入力し、それぞれの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項3】
請求項2に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、前記発熱ヒータの上流側と下流側のどちらか一方、あるいは上流側と下流側の両方に配置される測温抵抗体を有し、
前記液状体付着判定手段は、前記発熱ヒータの温度変化に応じて前記ヒータ温度制御部より出力される第1の電圧と、前記測温抵抗体の温度変化に応じて前記流量検出部より出力される第2の電圧とが、共に異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項4】
通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部と、
前記発熱ヒータの温度を制御するヒータ温度制御部とを備え、
前記センサ部は、前記空気通路を流れる空気の流れ方向に対して上流側と下流側とに少なくとも1個ずつ前記発熱ヒータを配置し、
前記ヒータ温度制御部は、空気の流れ方向に対して上流側に配置される前記発熱ヒータを上流側ヒータと呼び、空気の流れ方向に対して下流側に配置される前記発熱ヒータを下流側ヒータと呼ぶ時に、前記空気通路を流れる空気と前記上流側ヒータとの温度差が一定となる様に前記上流側ヒータの温度を制御する上流側ヒータ温度制御部と、前記空気通路を流れる空気と前記下流側ヒータとの温度差が一定となる様に前記下流側ヒータの温度を制御する下流側ヒータ温度制御部とで構成され、
前記上流側ヒータからの放熱量と前記下流側ヒータからの放熱量との差より、前記空気通路を流れる空気流量を検出する熱式空気流量計であって、
前記センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、前記上流側ヒータ温度制御部および前記下流側ヒータ温度制御部より空気流量に関係する信号を入力し、それぞれの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項5】
請求項4に記載した熱式空気流量計において、
前記液状体付着判定手段は、前記上流側ヒータの温度変化に応じて前記上流側ヒータ温度制御部より出力される第1の電圧と、前記下流側ヒータの温度変化に応じて前記下流側ヒータ温度制御部より出力される第2の電圧とが、共に異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項6】
請求項3に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、前記メンブレン上に前記発熱ヒータおよび前記測温抵抗体が配置されていることを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項7】
請求項4または5に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、前記メンブレン上に前記上流側ヒータおよび前記下流側ヒータが配置されていることを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項8】
請求項3または5に記載した熱式空気流量計において、
前記第1の電圧と前記第2の電圧をそれぞれ量子化する量子化手段を備え、
前記液状体付着判定手段は、回路チップ上に設けられるデジタル演算部によって構成され、このデジタル演算部により、前記量子化された二つの信号に基づいて前記センサ部に液状体が付着しているか否かを判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項9】
請求項8に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、前記センサチップと前記回路チップは、共通のケースに一体に収容されて、センサアセンブリとして構成されていることを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項10】
請求項1に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、空気の流れ方向に対して前記発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ配置される測温抵抗体を有し、
上流側の前記測温抵抗体と下流側の前記測温抵抗体との温度差より空気流量を検出することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項11】
請求項2に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、空気の流れ方向に対して前記発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ配置される測温抵抗体を有し、
前記流量検出部は、上流側の前記測温抵抗体と下流側の前記測温抵抗体との温度差より空気流量を検出することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項1】
通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部を備え、
前記発熱ヒータからの放熱量を基に前記空気通路を流れる空気流量を検出する熱式空気流量計であって、
前記センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、互いに異なる信号系統より空気流量に関係する少なくとも二つの信号を入力し、この少なくとも二つの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項2】
通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部と、
前記空気通路を流れる空気と前記発熱ヒータとの温度差が一定となる様に前記発熱ヒータの温度を制御するヒータ温度制御部と、
前記発熱ヒータからの放熱量を基に前記空気通路を流れる空気流量を検出する流量検出部とを備える熱式空気流量計であって、
前記センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、前記ヒータ温度制御部および前記流量検出部より空気流量に関係する信号を入力し、それぞれの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項3】
請求項2に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、前記発熱ヒータの上流側と下流側のどちらか一方、あるいは上流側と下流側の両方に配置される測温抵抗体を有し、
前記液状体付着判定手段は、前記発熱ヒータの温度変化に応じて前記ヒータ温度制御部より出力される第1の電圧と、前記測温抵抗体の温度変化に応じて前記流量検出部より出力される第2の電圧とが、共に異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項4】
通電により発熱する発熱ヒータを有して空気通路に配置されるセンサ部と、
前記発熱ヒータの温度を制御するヒータ温度制御部とを備え、
前記センサ部は、前記空気通路を流れる空気の流れ方向に対して上流側と下流側とに少なくとも1個ずつ前記発熱ヒータを配置し、
前記ヒータ温度制御部は、空気の流れ方向に対して上流側に配置される前記発熱ヒータを上流側ヒータと呼び、空気の流れ方向に対して下流側に配置される前記発熱ヒータを下流側ヒータと呼ぶ時に、前記空気通路を流れる空気と前記上流側ヒータとの温度差が一定となる様に前記上流側ヒータの温度を制御する上流側ヒータ温度制御部と、前記空気通路を流れる空気と前記下流側ヒータとの温度差が一定となる様に前記下流側ヒータの温度を制御する下流側ヒータ温度制御部とで構成され、
前記上流側ヒータからの放熱量と前記下流側ヒータからの放熱量との差より、前記空気通路を流れる空気流量を検出する熱式空気流量計であって、
前記センサ部に水分や油分等の液状体が付着しているか否かを判定する液状体付着判定手段を有し、この液状体付着判定手段は、前記上流側ヒータ温度制御部および前記下流側ヒータ温度制御部より空気流量に関係する信号を入力し、それぞれの信号が、共に所定の範囲から外れた異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項5】
請求項4に記載した熱式空気流量計において、
前記液状体付着判定手段は、前記上流側ヒータの温度変化に応じて前記上流側ヒータ温度制御部より出力される第1の電圧と、前記下流側ヒータの温度変化に応じて前記下流側ヒータ温度制御部より出力される第2の電圧とが、共に異常値を示す時に、前記センサ部に液状体が付着していると判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項6】
請求項3に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、前記メンブレン上に前記発熱ヒータおよび前記測温抵抗体が配置されていることを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項7】
請求項4または5に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、前記メンブレン上に前記上流側ヒータおよび前記下流側ヒータが配置されていることを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項8】
請求項3または5に記載した熱式空気流量計において、
前記第1の電圧と前記第2の電圧をそれぞれ量子化する量子化手段を備え、
前記液状体付着判定手段は、回路チップ上に設けられるデジタル演算部によって構成され、このデジタル演算部により、前記量子化された二つの信号に基づいて前記センサ部に液状体が付着しているか否かを判定することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項9】
請求項8に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、基板の一部にメンブレンが形成されたセンサチップによって構成され、前記センサチップと前記回路チップは、共通のケースに一体に収容されて、センサアセンブリとして構成されていることを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項10】
請求項1に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、空気の流れ方向に対して前記発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ配置される測温抵抗体を有し、
上流側の前記測温抵抗体と下流側の前記測温抵抗体との温度差より空気流量を検出することを特徴とする熱式空気流量計。
【請求項11】
請求項2に記載した熱式空気流量計において、
前記センサ部は、空気の流れ方向に対して前記発熱ヒータの上流側と下流側にそれぞれ配置される測温抵抗体を有し、
前記流量検出部は、上流側の前記測温抵抗体と下流側の前記測温抵抗体との温度差より空気流量を検出することを特徴とする熱式空気流量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−207925(P2012−207925A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71402(P2011−71402)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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