説明

熱成形プラスチックタイプII

モデル真空熱成形プロセスに使用されるシート(10、20)は、アーチ形状(12)のような事前に選択される三次元形状であり得る厚みのある領域(11)を有する。厚みのある領域(11)又は三次元領域(12)はモデル(21)領域上に配置され、熱成形プロセス中にこのプラスチックシートは延伸する。これは、別の方法で生じる厚みに比べ、延伸した領域において均質な厚み、又は事前に選択された厚みを保証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明によれば、プラスチックタイプIIの熱成形シートを用いて、矯正治療用のトゥースポジショナー(tooth positioners)又はリテーナー(retainer:保定装置)を製造する。これらのシートは、スチレン−ブタジエンコポリマーから成る。シートは平らなものでなく「三次元的」なものであり、厚みがより均一であり、且つ平らなシートを用いる場合よりも歯肉縁部分が厚い装置(トゥースポジショナー)を製造する。
【0002】
[関連出願]
本願は、2005年2月16日付で提出された米国仮出願第60/653,560号の利益を主張する(GAC−1015)。
【背景技術】
【0003】
歯科用装置のためのプラスチックシートは、数十年間にわたって使用されている。プラスチックシートは、電気格子を用いて加熱され、その後、歯科用モデルとする際に、減圧によりプラスチックを正確に歯のモデルに密着させる(draw)。使用の適用は、矯正装置、矯正リテーナー、運動用マウスガード、及び軽度の不正咬合を補正するアライナーを直接的ではなく密着(indirect bonding:インダイレクトボンディング)させることである。欠点の1つは、歯の石膏モデルにわたってプラスチックが延伸するにつれて、プラスチックが薄くなることであり、そのためにプラスチックが咬合位で、又は最初に非常に強く密着させる吸引力のために、早くに壊れる。前回の歯形を採ってモデルを製造してからも歯は移動するため、この欠点は、新たなアライナーを作製するための何時間もの超過労力の原因となることがあり、医者又はラボは全体のプロセスを再度行わなければならない。また、この欠点は治療を遅らせ、患者が直ちに再通院(return)しなければ、再発を導く可能性がある。一般的に、これらのシートは、プラスチックの選択の範囲を厳しく制限する医療用プラスチックを用いて製造される。この一般的な問題は、本発明により解決される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
欠点を有する装置が長い間、医者及び患者を悩ませており、本特許は、そのほとんどを排除することを意図する。
【0005】
医療プラスチックの範囲が狭いことから、進化している主な「頑強な」プラスチックの何種類かの使用は排除される。むしろ、本発明の目的は、現在の医療用プラスチックをより許容可能なものにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、3つの解決策:
1.モデルにわたって延伸する領域が薄くなる際に厚みがより均質になるように、この領域の厚みを変えること、
2.プラスチックの厚みを均質にすると共に(but)、平らなシートよりもそれほど薄くならないように延伸される領域の一部に部分的に構築される三次元領域、すなわち3D領域を予備成形すること、
3.およそ均質に成形した後、平均的な吸引により厚みが維持されるように、両方を行うこと
を提供する。
【0007】
一般的に、真空熱成形プロセスに使用される予備成形されたプラスチックシートは、加熱時に平らになる予備成形された三次元領域を含み、予備形成された三次元領域は、モデル上の、プラスチックシートが延伸する位置に配置される。
【0008】
真空熱成形プロセスに使用されるプラスチックシートは、シートの少なくとも1つの他の領域よりも厚い、シートの少なくとも1つの領域を含み、厚い領域がモデル上で延伸するように、シートの厚い領域がモデル上に配置され、これにより、厚い領域が薄くなる際に、薄い領域に比べて厚い領域の厚みがより均質となる。
【0009】
熱成形機を用いて歯科用装置をモデル熱成形する方法は、シートの延伸が起こるモデル領域上に位置する厚みのある領域を有するプラスチックシートを準備する工程を含む。
【0010】
熱成形機を用いて歯科用装置をモデル熱成形する方法は、シートの延伸が起こるモデル領域上に位置する予備成形された三次元領域を有するプラスチックシートを準備する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
良好な成形特徴を有する利用可能な2つの主なプラスチックが存在することは専門家の間で既知である。1つは、ポリスチレンであり、優れた透明度及び剛性を有するが、これは耐磨耗性において劣っている。もう1つは、ポリ塩化ビニル(PVC)であり、かなり良好な耐磨耗性を有するが、成形後の濁りを示し、美観に欠ける。これらは、Raintree Essix(Metairie, LA.)及びGreat Lakes(Buffalo NY)から入手可能である。これらの同一の会社はまた、卓上熱成形機、例えばBioStar及びRaintree Essixを販売している。1つはデジタルソリューションによるものであり、他方はアナログソリューションによるものである。この選択は、用いられる容積に関連して為される。
【0012】
歯科専門家は、患者の不正咬合のアルギン酸塩印象を採る。その後、アルギン酸塩印象を石材又はプラスチックで充填し、歯列の陽性モデル(positive model:ポジ型モデル)を作製する。熱成形機に応じて、0.020インチ〜0.040インチの厚みのプラスチックの角型シート又は円形シートをチャンバに取り付ける。モデルを、下部が真空チャンバである土台に設置する。頂部には加熱コイルが設けられている。この機械がその理想的な温度に達したら、プラスチックが外れるまでプラスチックを加熱し、その後、外れたプラスチックをモデル上に広げる。減圧を開始し、石膏モデルに密着しているプラスチックを引き剥がすと、プラスチックは陽性モデルのネガとなる。多くの場合、冷却噴霧を用いて、型を迅速に硬化するため、プラスチックが冷却プロセス中に可塑的に変形することはない。
【0013】
問題は、プラスチックが、モデルが位置する領域にわたって厚みを2インチ程度変形させることであり、これは約7インチ×Ztインチの領域である。プラスチックは初めに一定の厚みを有してから、元の厚みの50%程度薄くなる。多くのものは、より強いPVC材料とすることによりこれを解決しようとしたが、患者によってはその美観を不快に感じており、またこれはPSの弾性を有しない。他のものは元のシートをより厚くしてみたが、このより厚いシートは、プラスチックを口内に保持させる周縁に沿って弾性特徴を維持することができない。また、この厚いシートは、下前歯のような、あまり伸縮性のない領域で厚くなりすぎて、咬合を壊し、過蓋咬合をもたらす可能性がある。
【0014】
本発明は、3つの解決策:
1.モデルにわたって延伸する領域が薄くなる際に厚みがより均質になるように、この領域の厚みを変えること、
2.プラスチックの厚みを均質にすると共に、平らなシートよりもそれほど薄くならないように延伸される領域の一部に部分的に構築される3D領域を予備成形すること、
3.およそ均質に成形した後、平均的な吸引により厚みが維持されるように、両方を行うこと
を提供する。
【0015】
耐摩耗性を改良するように厚みを変えることによって、プラスチックは、圧延される代わりに押出されるため、シートの領域付近の厚みを変えることができる。押出機は、ポリスチレンプラスチックと共に容易に作動させることができることが知られている。ポリスチレンのより高い透明度が患者から最も望まれるのと同時に、この耐摩耗性は理想的であることから、PVCは必要ない。
【0016】
次の解決策は、シート、例えば、成形時にプラスチックが50%未満で延伸されるように幅の広いアーチ形状に予備成形される約1/2インチ〜1.5インチの3D領域が押出されるように作製することによって、両方のプラスチックに対して有効に作用する。このことは、厚みを25%未満低減する改良をもたらすことが見出された。このことは、より薄いプラスチックを用いることができることを意味し、治療の終わりにあまり過蓋咬合をもたらすことがなく、また、トレイが壊れて治療中に緊急来院しなければならないことがほとんどない。
【0017】
さらに、押出及び型打ちの統合プロセスを用いて、第1の2つのプロセスを組み合わせて、3D予備成形領域でより厚みのある理想的なシートを作製することができる。このプロセスはより高価となる可能性があるが、単にリテーナーとして用いたとしても、壊れない限りその治療成果を達成することから、専門家及び患者により大きな安心感を与える。
【0018】
アーチが5.5インチ〜7インチの長さであり、厚みがせいぜい1.5cmであること、また様々な機械に対するシートサイズがかなり記録されていることは既知である。本発明は、活性化が一般的に起こるシートの所定の領域に、3Dシートを作製することを規定する。試験は、指示した厚みのモデルを準備して接触させると、スランピングすることなく、プラスチックが平らになることを示した。
【0019】
多くの医者は、失敗しそうなときは初めに数個のプラスチック器具を同時に製造する。或る意味で、有効な器具として使えるものであっても、歯は期間中動くため、この多くは無駄になってしまう。リテーナーに関して、このことは許容可能であるが、この複製を省くことにより、多くの労力及びプラスチックを節約することができる。
【0020】
Align Technologies InvisAlign等の有効な器具の製造業者は、器具がセットされる治療段階をやり遂げるのに十分な耐久性を示すアライナーに依存している。アライナーが壊れたら(It)、その後、患者は、医者に再通院しなければならず、医者は治療を進行させるための印象及びモデルを採る必要があり、中間軌道修正のために印象及びモデルは送られて、新しい完全なトレイセットを製造するために、コンピューターによって再分析される。医者は一定限度の修正に対して保証されるが、多くの時間がかかり、何回にもわたる何ヶ月もの患者の長期の治療につながる可能性がある。医者及びInvisAlignは、料金を上げることができないため、彼らにとって損失であり、また、患者は、再発及び治療時間の増加によりストレスを受ける。
【0021】
本発明は、失敗した治療の不快感を抑制し、医者及びラボに対するコストを下げ、且つ良好な治療成果を促すのに役立つ。
【0022】
本発明によれば、歯科用装置30の熱成形用のプラスチックシート10を提供する。歯科用装置30の厚みは、スランピング領域22を強化するように変更され、また患者の歯に適合するか又は嵌る、より弾性であるか又はより弾力のある領域23を有する。プラスチックシート10は、加熱及び減圧により厚みが薄くなる従来のシートとは対照的に、加熱されると、得られる型を強化する、幅の広い3Dアーチ形状12、又は任意の他の形状(不図示)によって予備成形することができる。一実施形態において、熱成形に適するポリスチレン又は他のポリマーが用いられる。本発明のシートは好ましくは、必ずほぼ透明(invisible)であるように成形後の透明度が約80%を超えるように設計され、患者の歯列の形態に成形される。このことは当然、本発明の実施に必ずしも要求されるわけではない。シート10は、型領域11のような任意の厚みのある領域又は描写されていない形状(不図示)を有していてもよい。
【0023】
別の実施形態によれば、歯科用アーチの形態で予備成形領域12を有するシート10が提供され、また、歯科用水準に基づくいくつかの異なるサイズのアーチの予備成形領域12を有するシート10がさらに提供される。シートが少なくとも約80%の透明度を提供すること、又はシートが実質的に完全に透明なプラスチックシートであることが好ましく、これらのシートは、歯科用器具を作製するための歯科用石膏又は石材モデル上での加熱前に3D形態であり、この3Dはスランピングすることなく平らになることから、成形される領域の総強度が大幅に低減することはない。
【0024】
上記のように、シート10が、初めからより薄いプラスチック型を用いることによって、治療の終わりの過蓋咬合問題を低減するように構成されるため、治療の終わりの前歯における咬合関係が約3mm未満の過蓋咬合となることが好ましい。
【0025】
本発明は、一実施形態において、プラスチックがモデル上で延伸し且つ3Dプロファイルで成形される際に、より厚くなることから、成形時に弱化する領域が、完全に平らなシートの場合の約25%未満である、モデル熱成形用のプラスチックシート10を提供する。
【0026】
したがって、本発明が、本明細書の目的を達成し、また他にも、プラスチックシート領域(are)を改良(モデル真空熱成形)することは明らかである。本発明は、本明細書中及び図面に記載及び描写されるが、添付の特許請求の範囲に該当し得る全ての変形形態を記述しているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】三次元形状11を有するプラスチック10の円形シートを示す図である。この形状11は、BioStar熱成形機又はDrufomat熱成形機等の高機能機器によって加工されるように設計されている。等しい厚み及び部分的に形成されるアーチ12を有することにより、平らなシートが経験する歪みの半分に満たない程度に改良される。
【図2】Raintree Essixマニュアルシステム熱成形機と共に用いられる正方形シート20形状デザインの適用を示す図である。また、成形された対象領域は、3Dにおいて均質な厚みを有する。
【図3】所望の温度に加熱したプラスチック10を示す図である。現在の利用可能なプラスチックと異なり、プラスチック10は、スランピングすることなく平らになり、これにより現在の利用可能なシートに伴う延伸(stretching experience)を大幅に低減し、且つその耐磨耗性(wear toughness)を高める。
【図4】真空用の対象型(mold)21の中央に置いたシート10を用いる適用を示す図である。
【図5】冷却噴霧することなく製造することにより、成形加工のコストを低減することができる、成形トレイ30を示す図である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空熱成形プロセスに使用される予備成形されたプラスチックシートであって、該プラスチックシートは、加熱時に平らになる予備成形された三次元領域を含み、該予備形成された三次元領域は、モデル上の、該プラスチックシートが延伸する位置に配置される、プラスチックシート。
【請求項2】
真空熱成形プロセスに使用されるプラスチックシートであって、該プラスチックシートは、該シートの少なくとも1つの他の領域よりも厚い、該シートの少なくとも1つの領域を含み、該厚い領域がモデル上で延伸するように、該シートの該厚い領域は該モデル上に配置され、これにより、該厚い領域が薄くなる際に、前記薄い領域に比べて該厚い領域の厚みがより均質となる、プラスチックシート。
【請求項3】
熱成形機を用いて歯科用装置をモデル熱成形する方法であって、プラスチックシートを準備する工程であって、該プラスチックシートは、該シートの延伸が起こるモデル領域上に位置する厚みのある領域を有する、準備する工程を含む、モデル熱成形する方法。
【請求項4】
熱成形機を用いて歯科用装置をモデル熱成形する方法であって、プラスチックシートを準備する工程であって、該プラスチックシートは、該シートの延伸が起こるモデル領域上に位置する予備成形された三次元領域を有する、準備する工程を含む、モデル熱成形する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−529729(P2008−529729A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556248(P2007−556248)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/005230
【国際公開番号】WO2006/088898
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(590004464)デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド (85)
【Fターム(参考)】