説明

熱成形装置及び熱成形方法

【課題】熱板60でシートS1を加熱して型40により成形する際にシートS1の成形の精度を維持しながら成形のサイクルタイムを短縮させたり熱板60の温度を下げたりすることを可能にさせることを課題とする。
【解決手段】所定の成形位置L1を通る所定の搬送方向D1へ成形可能なシートS1を搬送する処理を行い、前記成形位置L1にあるシートS1の一面側に配置される熱板60と、前記成形位置L1にあるシートS1の他面側に配置されて前記熱板60に対向する型40とを用い、前記シートS1が前記成形位置L1まで搬送されたときに前記熱板60で前記シートS1を加熱して前記型40により成形する処理を行い、前記成形位置L1まで搬送されるシートS1の前記他面側を輻射加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板でシートを加熱して型により成形する熱成形装置及び熱成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱成形装置は、搬送方向に連続した熱可塑性のシートを互いに近接及び離反可能な熱板と成形型との間へ間欠的に搬送し、熱板でシートを接触加熱して軟化させた後、成形型の成形面に吸着させて成形している。ここで、シートは水平方向へ搬送され、成形位置にあるシートの下側に熱板が配置され、成形位置にあるシートの上側に成形型が配置されている。
【0003】
また、特開2002−103438号公報には、プレヒータロールと、上面に鏡面板を有する加熱テーブルと、樹脂シート搬送ガイドロールと、成形型とを備え、搬送方向に連続した樹脂シートを熱成形する熱成形装置が記載されている。ここで、プレヒータロールは、樹脂シートの下面に接触して樹脂シートを予備加熱する。加熱テーブルは、待機位置と成形位置との間を相互に移動し、待機位置から成形位置に移動する際に樹脂シートを鏡面板上に載置しつつ成形位置に搬送する。樹脂シート搬送ガイドロールは、待機位置で加熱テーブルの鏡面板上に樹脂シートを所定の押圧にて押し当て、加熱テーブルの成形位置への移動に合わせて回転動作し樹脂シートを鏡面板上に密着させるように載置させる。成形型は、成形位置にあるときの加熱テーブルの上方に配置されている。同熱成形装置は、樹脂シートを間欠的に搬送し、加熱テーブルの鏡面板上に載置されて成形位置に搬送された樹脂シートを成形型により熱成形する。
【0004】
以上説明したように、樹脂シートを接触加熱するプレヒータロールは、加熱テーブルと同じく樹脂シートの下側に配置されている。
【特許文献1】特開2002−103438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鏡面板を用いていない従来の熱成形装置は、シートが熱板に接してから熱成形可能な設定温度に到達するまでに時間がかかる。ここで、設定温度に到達する時間を短くするために熱板の温度を高くすると、透明のシートを熱成形したときに熱板表面の微細な凹凸が転写されてしまい、成形品の透明性が低下してしまう。
特開2002−103438号公報記載の熱成形装置は、プレヒータロールやガイドロールで樹脂シートを蛇行させて間欠的に搬送するため、これらのロールにより樹脂シートに力が加わり、成形の精度を維持するための調整が容易ではない。また、同熱成形装置は、樹脂シートが加熱テーブルに載置されてから同樹脂シートの上面が設定温度に到達するまでに時間がかかる。さらに、成形型が交換により大きくなったり小さくなったりしても、プレヒータロールにより接触加熱される樹脂シートの面積が変わらないため、間欠的に搬送される樹脂シートの予備加熱の温度にむらが生じ、樹脂シートの成形の精度を維持するための調整が容易ではない。
【0006】
本発明は、熱板でシートを加熱して型により成形する際にシートの成形の精度を維持しながら成形のサイクルタイムを短縮させたり熱板の温度を下げたりすることを可能にさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の熱成形装置は、所定の成形位置を通る所定の搬送方向へ成形可能なシートを搬送するシート搬送機構と、前記成形位置にあるシートの一面側に配置される熱板と、前記成形位置にあるシートの他面側に配置されて前記熱板に対向する型とを有し、前記シートが前記成形位置まで搬送されたときに前記熱板で前記シートを加熱して前記型により成形する成形機構と、前記成形位置まで搬送されるシートの前記他面側を輻射加熱する輻射加熱機構とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の熱成形方法は、所定の成形位置を通る所定の搬送方向へ成形可能なシートを搬送する処理を行うシート搬送工程と、前記成形位置にあるシートの一面側に配置される熱板と、前記成形位置にあるシートの他面側に配置されて前記熱板に対向する型とを用い、前記シートが前記成形位置まで搬送されたときに前記熱板で前記シートを加熱して前記型により成形する処理を行う成形工程と、前記成形位置まで搬送されるシートの前記他面側を輻射加熱する輻射加熱工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
すなわち、成形位置まで搬送されるシートの両面のうち熱板が配置された上記一面側とは反対の上記他面側が輻射加熱される。
熱板が配置された一面側のシートを予備加熱しても、シートの他面側まで熱が伝導するのに時間がかかってしまう。本発明ではシートの他面側が輻射加熱されるので、熱板の温度を変えない場合、シートが成形位置まで搬送されてからシートの他面側が設定温度に到達する時間が短くなる。また、シートの他面側が設定温度に到達する時間を短縮する必要が無い場合、熱板の温度を低くすることができる。これにより、透明のシートを成形するときに熱板表面の微細な凹凸の転写を抑止することができ、成形品の透明性を向上させることができる。
さらに、ロールでシートを蛇行させて搬送する必要が無いので、容易にシートの成形の精度を維持することができる。
【0010】
なお、請求項2〜請求項8に係る熱成形装置を熱成形方法に対応させることも可能である。
【0011】
本発明を適用可能なシートは、成形可能なシートであればよく、例えば、樹脂シート、可塑性シート、等を用いることができる。
上記所定の搬送方向は、水平方向であるとシートを安定して搬送することができるので好適であるが、水平方向からずれた方向でも、鉛直方向でもよい。
上記熱板は、上記シートの一面に接触して配置されてもよいし、接触せず該シートの一面に対向して配置されてもよい。上記型は、上記シートの他面に接触して配置されてもよいし、接触せず該シートの他面に対向して配置されてもよい。
上記熱板と上記型とを近接及び離間させる際には、片方のみ移動させても、両方を移動させてもよい。また、熱板と型との近接及び離間の際、シートを移動させなくても、シートを移動させてもよい。
上記成形には、差圧成形のような熱成形等を用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、熱板でシートを加熱して型により成形する熱成形装置において、シートの成形の精度を維持しながら成形のサイクルタイムを短縮させたり熱板の温度を下げたりすることが可能になる。
請求項2に係る発明では、輻射加熱するシートの範囲を容易に変更することができるので、型のサイズに応じて予備加熱する範囲を調整することができ、容易に成形の精度を向上させることができる。
請求項3に係る発明では、輻射加熱するシートの範囲をさらに容易に変更することができるとともに、冷却された遮蔽板によりシートが確実に輻射加熱範囲のみ輻射加熱されるので成形の精度をさらに向上させることができる。
【0013】
請求項4に係る発明では、輻射加熱されるシートの温度を調整することができるので、成形の精度をさらに向上させることができる。
請求項5に係る発明では、連続したシートを輻射加熱位置へ配置するのが容易になる。
請求項6に係る発明では、輻射加熱されたシートの垂れ下がりを防止することができるので、成形の精度をさらに向上させることができる。
【0014】
請求項7に係る発明では、シート搬送機構を構成するクランプ機構の加熱を抑止することができる。
請求項8に係る発明では、熱板でシートを加熱して型により成形する熱成形装置において、シートの成形のサイクルタイムを短縮させたり熱板の温度を下げたりすることが可能になり、成形の精度を向上させることが可能になる。
請求項9に係る発明では、熱板でシートを加熱して型により成形する熱成形方法において、シートの成形の精度を維持しながら成形のサイクルタイムを短縮させたり熱板の温度を下げたりすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)熱成形装置の説明:
図1は本発明の一実施形態に係る熱成形装置1の外観図、図2は熱成形装置の正面図、図3は成形用の型40が所定の離間位置L13にあるときの熱成形装置の右側面図、図4は型40が所定の近接位置L14にあるときの熱成形装置の右側面図、図5は型の下から型等を示す底面図、図6は型を組み立てる様子を示す分解斜視図、図7は熱板60を支持する構造とエア結線を示す斜視図、図8は図7のA1の位置を断面視した垂直断面図、図9は輻射加熱機構100の外観を示す斜視図、図10と図11は輻射加熱機構100を図9のA2方向から見て示す左側面図、図12は輻射加熱機構100の正面図、図13は輻射加熱機構100のヒータ110の高さが変わる様子を示す正面図、図14は遮蔽板162がヒータ110の輻射範囲の一部を遮蔽する様子を示す底面図、図15はヒータ110の底面図、図16はガイド部材120に載置されたシートS1の輻射範囲及び遮蔽範囲を上から見て示す平面図、図17はクランプ搬送機構14の右側面図、図18はコンピュータシステム95の回路構成の概略を示すブロック図、図19はヒータ制御回路110aが行うフィードバック制御処理を示すフローチャート、図20は熱成形装置1の動作を示すタイミングチャート、である。
なお、図2では、左から右へ向かう方向が所定の搬送方向D1であり、左側がシートS1の上流側、右側がシートS1の下流側である。図16では、ヒータ110からシートS1への輻射の範囲R1,R2及び型40で成形される範囲R4,R5をハッチングで示している。
【0016】
本熱成形装置1は、シート搬送機構10、成形機構20、輻射加熱機構100、を備える。シート搬送機構10は、所定の成形位置L1を通る所定の搬送方向D1へ成形可能なシートS1を搬送する。成形機構20は、成形位置L1にあるシートS1の下側(一面側)に配置される熱板60と、成形位置L1にあるシートS1の上側(他面側)に配置されて熱板60に対向する型40とを有し、シートS1が成形位置L1まで搬送されたときに熱板60でシートS1を加熱して型40により成形する。輻射加熱機構100は、成形位置L1まで搬送されるシートS1の上側(前記他面側)を輻射加熱する。
すなわち、成形位置L1まで搬送されるシートS1の両面S1a,S1bのうち熱板60が配置された側の下面S1bとは反対側の上面S1aが輻射加熱される。これにより、シートS1の成形の精度を維持しながら成形のサイクルタイムを短縮させたり熱板60の温度を下げたりすることが可能になる。
【0017】
成形可能なシートS1は、熱可塑性樹脂シートのような樹脂シート、熱可塑性を示す樹脂以外の熱可塑性シート、等を用いることができる。前記樹脂シートは、熱可塑性樹脂等の樹脂を含むシートであればよく、樹脂のみからなるシートでも、樹脂に充てん材等の添加剤が添加された材質からなるシートでもよく、単層シートでも、異なる材質をラミネートした積層シートでもよい。シートS1の素材には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、等を利用可能である。また、シートS1は、シート状ないしフィルム状になっていればよく、ロール状に巻かれていても、所定の長さにカットされていてもよい。シートの厚みは、1〜2mm程度、0.25〜1mm程度、等、様々な厚みとすることが可能であり、0.25mm程度以下のフィルムでもよい。当該程度の厚みの熱可塑性シートを用いると、差圧成形を良好に行うことができる。
【0018】
シートS1の成形は、熱成形により行われる。該熱成形は、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、といった差圧成形が好適である。
シートの搬送方向D1は、水平方向としてシートが安定して搬送されるようにしているが、水平方向から上方向や下方向へずれた方向でも、鉛直上方向でも、鉛直下方向でもよい。
【0019】
シート搬送機構10は、以下の各部12,14,95等からなる。なお、コンピュータシステム95は、シート搬送機構の一部であるとともに、成形機構や輻射加熱機構の一部でもある。
シート供給機構12は、ロール状に巻かれたシートS1を連続した状態で搬送方向D1へ送り出し可能とされている。クランプ搬送機構14は、コンピュータシステム95の制御に従って、連続したシートS1を搬送する際、成形位置L1から搬送方向D1へ搬送された成形後のシートS2における幅方向D2の縁部S2cをクランプ(把持)して搬送方向D1へ移動させることにより、成形位置L1まで搬送されるシートS1を搬送方向D1へ間欠的に搬送する。そのため、図17に示すように、クランプ搬送機構14は、シートの両側縁部S2c,S2cをクランプするクランプ機構14aを備える。該クランプ機構14aは、下側クランプ部14a1と上側クランプ部14a2とを有し、シートの縁部S2cをクランプするときには両クランプ部14a1,14a2を近接させ、シート縁部S2cのクランプを解除するときには両クランプ部14a1,14a2を離反させる。そして、クランプ搬送機構14は、成形のタイミングに合わせてシートの両側縁部S2c,S2cをクランプ機構14aでクランプして間欠的に連続シートS1を引っ張って搬送方向D1へ搬送する。シート供給機構12は、引っ張られるシートS1を搬送方向D1へ円滑に送り出す。
【0020】
なお、本装置1に、成形後のシートS2を所定の長さでカット(切断)して取り出す成形品取出機構を設けてもよい。該成形品取出機構は、例えば、成形後のシートS2を所定の長さでカットする切断機構、カットされたシートを昇降テーブル上に載置して積み重ねる成形品積載機構、積み重ねられた成形品スタックを取出台上に取り出す取出機構、を備える機構としてもよい。
【0021】
成形機構20は、以下の各部21,25,40,45,50,60,65,70,75,80,95等からなる。
差圧供給機構25は、通気経路25a、負圧(真空)供給源や圧空供給源や電磁弁(バルブ)等からなる負圧圧空供給機構25b、負圧や圧空の供給と供給停止とを切り替えるための電磁弁(バルブ)26、を備える。上テーブル(型用テーブル)45は、例えば金属製とされ、熱板60に対向する下面45aで型40を保持する。本実施形態の型40は、図6に示すように、複数の交換用雌型41と、型ベース部材42とを有し、成形位置L1にあるシートS1の上側となる型側成形位置L2に配置されて熱板60に対向する成形面41aが形成されている。各雌型41は、例えば金属製とされ、それぞれ熱板60に対向する成形面41aが形成されて、該成形面に通気孔41bが形成されている。型ベース部材42は、例えば、金属製の略板状に形成され、熱板に対向する下面42aで複数の雌型41を着脱可能に保持する型保持部位42eが形成されている。該型保持部位には、雌型の通気孔41bの位置に合わせて通気孔42bが多数形成されている。
【0022】
床に接触した金属製基台21には、搬送されるシートS1と接触しない位置に複数の円柱状支柱55a〜dが上方に向かって立設されている。図5に示すように、上テーブル45には、支柱55a〜dを上下方向へ貫通させる貫通穴46a〜dが形成されている。複数の支柱55は、熱板60を位置決めしながら固定部材51を下から支持し、上テーブル45の近接及び離間の往復動をガイドする。型用テーブル駆動機構50は、上テーブル45の上部45bに取り付けられ、型40を保持した上テーブル45を成形位置L1で熱板60に対して近接及び離間させる。
型用テーブル駆動機構50は、固定部材51と上テーブル45とを近接及び離間させるリンク機構52を備えている。固定部材51は、例えば金属製のH字形に形成され、該H字形の4箇所の端部で支柱55a〜dの先端部に固定される。各支柱55a〜dの先端部にはねじ55eが形成され、ナット56により固定部材51が各支柱55a〜dの先端部に固定される。リンク機構52は、リンク部材52a、ボールねじ機構52b、電動モータ52c、を備え、固定部材51の前記H字形の中央部と上テーブル45との間に設けられて固定部材51と上テーブル45とを近接及び離間させる。
【0023】
図7と図8に示すように、台座65の下面65bから下方に向けて間座70が立設されて固定され、下テーブル75の表面75aに間座70が載置されて固定され、台座の表面65aに熱板60が載置されて固定されている。熱板60は、型40に対向する表面60aが成形位置L1のシートの下面S1bに接触するように配置され、成形位置L1に搬入されたシートS1を加熱して軟化させる。従って、熱板の表面の温度は、加熱によりシートS1が軟化する温度とすればよい。熱板60は、例えば金属製の矩形板形状に形成され、上面60aに通気孔61を有し、成形位置L1にあるシートS1の下側となる熱板側成形位置L3に配置される。熱板の各通気孔61は、差圧供給機構25から負圧を作用させられたり(空気を吸引されたり)、負圧の供給(減圧)から解放されたり、圧空を供給されたり、圧空の供給を解除されたりする。台座65は、例えば金属製の矩形板形状に形成される。台座の表面65aには、通気用の溝66が複数形成されている。溝66は、通気孔61に繋がり、台座の裏面65bへ貫通した通気用の貫通穴67に繋がっている。
【0024】
間座70は、樹脂、金属、等、様々な材質とすることができる。間座70は、表面70a側で台座の貫通穴67に繋がり裏面70b側へ貫通した貫通穴71が形成されている。下テーブル75には、支柱55a〜dを上下方向へ貫通させる貫通穴が形成され、間座の貫通穴71に繋がり内部を貫通して通気経路80に接続されたテーブル内部通気経路77が形成されている。下テーブルには通気経路80に接続するためのエア流通口75cが設けられており、テーブル内部通気経路77は、下テーブルの表面75aから搬送方向の縁部のエア流通口75cへ貫通している。第二のヒータ(加熱機構)79に通電すると該ヒータから熱が発生し、台座65が加熱される結果、熱板60が加熱される。また、台座65には熱板60の温度を検出する温度センサも設けられており、図示しない加熱温度フィードバック制御機構により熱板60を設定温度となるように加熱する。熱板の加熱温度は、シートの材質や厚み等に応じて設定され、例えばシートが軟化する温度以上溶融する温度以下とすることができる。
【0025】
通気経路80は、ウレタンチューブ等の樹脂チューブ、樹脂ホース、樹脂管、金属管、等、継手や電磁弁に接続可能な耐圧チューブ等の耐圧管、及び、耐圧管に取り付けられる継手との組み合わせ、等で構成することができる。通気経路80は、電磁弁26とテーブル内部通気経路77に繋げられ、間座の貫通穴71、台座の内部通気経路67、台座の溝66を介して、熱板の通気孔61に接続されている。通気経路80の途中には、電磁弁(バルブ)85が設けられている。
【0026】
本実施形態の成形機構20は、コンピュータシステム95の制御に従って、シート搬送機構10によりシートS1が搬送されるときには熱板60と型40とを離間させ、シートS1が成形位置L1まで搬送されたときに通気孔61に負圧を作用させ熱板60と型40とを近接させてシートS1を接触加熱しながら成形面41aの形状に合わせて成形する。
【0027】
輻射加熱機構100は、以下の各部101,110,120,130,140,150,160,95等からなる。
ヒータ110は、成形位置L1まで搬送されるシートS1の上側(他面側)に配置され、該シートS1の上側を輻射加熱する。図10や図12等に示すように、ガイド部材120の載置面122a上の輻射加熱位置L21を輻射加熱する位置に複数のヒータ110が設けられ、これらのヒータ110がヒータ取付部材111の内側に取り付けられている。このヒータ取付部材111は、下部に開口を有し、ヒータ高さ調整機構140を介してヒータ駆動機構130の可動部材131に取り付けられている。ヒータ110は、ヒータ取付部材111の下部の開口のうち遮蔽板162で遮蔽されていない部分から下方に向けてシートの上面S1aを輻射加熱する。また、図9〜12等に示すように、ヒータ取付部材111の上部の四隅には、上方に向かってヒータ高さ調整機構のボルト141がそれぞれ立設されている。
ヒータ110の放熱量は、輻射加熱位置L21にあるシートS1が軟化する手前まで該シートS1を輻射加熱する放熱量であればよく、シートS1がほぼ線膨張しない放熱量であればよい。従って、熱板60により加熱されたときのシートS1の温度よりも低い温度となるようにヒータ110の放熱量を設定すればよい。
【0028】
上記ヒータ110として図15に示す高速応答ヒータユニットを用いると、ヒータの発熱に偏りが少なくて温度制御が高精度になるので、好ましい。同図のヒータ110は、概略八角形の角盆状のユニット板112、このユニット板上に設けられた張架支持部材114、この張架支持部材で張架支持される板状ヒータ素材115とを備えている。ユニット板112上には、断熱性及び絶縁性を有する反射板113が載置されている。本ヒータ110を縦横に並べると、切り欠いた角部同士が集まって四角形の隙間が生じる。そこで、この隙間からシートの表面温度を計測することにより、シートの表面温度を制御することができる。
板状ヒータ素材115は、直線状のリボン状部分116と180°折り返された折り返し部117とが交互に連続している。折り返し部117には、板状ヒータ素材115よりも低抵抗の導電部材118が取り付けられている。これにより、リボン状部分116間を流れる電流が折り返し部117よりも導電部材118の方に多く流れ、折り返し部117での不均衡な発熱が抑えられる。
【0029】
ガイド部材120は、成形位置L1まで搬送されるシートS1を載置する。図10等に示すように、基台101には上方に向かってガイド支持部材126が複数立設され、これらのガイド支持部材126の上端部にガイド部材120が固定されている。ガイド部材120は、例えば、ステンレス等の金属板の折り曲げ加工により形成され、略水平に配置される基部122と該基部における幅方向D2の両側縁部から上方に延出した一対の側部124,124とを有する形状とされる。基部122の上面は、ヒータ110に対向し、シートS1を載置する載置面122aとされている。側部124,124は、基部122上を移動するシートS1を幅方向D2外側へ脱落させないように搬送方向D1へ案内する機能を有する。従って、ガイド部材120は、載置面122aで搬送方向D1へ案内するようにシートS1を載置する。
以上より、輻射加熱されたシートS1の垂れ下がりをガイド部材120により防止することができるので、シートの成形の精度が向上する。
【0030】
ヒータ駆動機構130は、図10と図11に示すように、連続したシートS1をヒータ110で輻射加熱する輻射加熱位置L21へ配置可能とする所定の離反位置L23と、輻射加熱位置L21にある連続したシートS1を輻射加熱する近接位置L22と、の間でヒータ110を近接及び離反させる。ここで、近接位置L22はガイド部材120に対向する位置であり、離反位置L23は連続シートS1をガイド部材120に載置可能とする位置である。ヒータ駆動機構130は、ヒータ高さ調整機構140及びヒータ取付部材111を介してヒータ110を取り付けるための可動部材131、搬送方向D1とは垂直な面内で可動部材131を回転動作可能に支持する可動部材支持部材132、前記面内の所定の回転範囲内で可動部材131を往復両方向に回転駆動するシリンダ(可動部材駆動機構)133、前記面内でシリンダ133の下端部を回転動作可能に支持するシリンダ支持部材134、図18に示すように制御盤97に設けられたスイッチ139、を備えている。
【0031】
可動部材支持部材132は、基台101から上方に向かって立設され、第一の軸部材131aを中心として可動部材131を回転動作可能に連結している。可動部材131は、軸部材131aよりもガイド部材120側にヒータ110を配置させ、シリンダ133側の端部が第二の軸部材131bを中心としてピストン133aの先端部に対して回転動作可能に連結されている。可動部材131の水平延出部131c,131cは、ヒータ取付部材111の上部の四隅から突出したボルト141をそれぞれ貫通させる貫通穴が形成され、それぞれナット142,143で挟まれることによりヒータ高さ調整機構140を介してヒータ取付部材111を吊り下げるように支持する。
シリンダ支持部材134は、基台101から上方に向かって立設され、第三の軸部材133bを中心としてシリンダ133の下端部を回転動作可能に連結している。シリンダ133は、進退動作可能なピストン133aを有し、ピストン133aを進出させると軸部材131aを中心として可動部材131を図11の右回りに回転させてヒータ110を所定の近接位置L22まで近接させ、ピストン133aを退避させると軸部材131aを中心として可動部材131を図10の左回りに回転させてヒータ110を所定の離反位置L23まで離反させる。シリンダ133は、油圧シリンダが好適であるものの、エアシリンダ等でもよい。また、シリンダ以外の駆動機構により可動部材131を回転駆動してもよい。
【0032】
本実施形態のヒータ駆動機構130は、制御盤のスイッチ139からヒータ110を近接させる指示の入力を受け付けるとヒータ110を近接位置L22まで近接させ、スイッチ139からヒータ110を離反させる指示の入力を受け付けるとヒータ110を離反位置L23まで離反させる。
ヒータ110が近接位置L22にあると、連続したシートS1を輻射加熱位置L21へ配置する作業が容易ではない。本熱成形装置1は、連続シートS1をヒータ110で輻射加熱する位置L21へ配置可能とする離反位置L23までヒータ110を退避させることができるので、連続シートS1を輻射加熱位置L21へ配置するのが容易になる。
【0033】
ヒータ高さ調整機構(ヒータ距離調整機構)140は、成形位置L1まで搬送されるシートS1からヒータ110までの高さ(距離)dを調整する。図13の上段はヒータを高さd1まで上げた状態を示し、同図の下段はヒータを高さd2(0<d2<d1)まで下げた状態を示している。
ヒータ高さ調整機構140は、ヒータ取付部材111の上部における四隅の上側にそれぞれ設けられ、それぞれ、ボルト141とナット142,143を有している。図13の上段に示すようにナット142,143の位置をボルト141の下側にするとヒータ110及び輻射範囲変更機構160が可動部材131に向かって引き上げられ、同図の下段に示すようにナット142,143の位置をボルト141の上側にするとヒータ110及び輻射範囲変更機構160がガイド部材120に載置されたシートS1に向かって下ろされる。
以上により、輻射加熱されるシートS1の温度を調整することができるので、成形の精度が向上する。
【0034】
放射温度計150は、図14に示すように放射温度の計測面を下方へ向け、ガイド部材120に載置されたシートS1の上側の表面温度を測定する。同図では、四つのヒータ110で囲まれた部分でヒータ取付部材111に放射温度計150が取り付けられていることが示されている。このように放射温度計を配置すれば、ヒータ取付部材111の外側に放射温度計を配置する場合と比べて計測温度の測定精度が向上する。本実施形態の輻射加熱制御手段は、放射温度計150とコンピュータシステム95とで構成され、放射温度計150で測定された表面温度に基づいてガイド部材120に載置されたシートS1の上側の表面温度を設定温度に近づけるフィードバック制御をヒータ110に対して行う。
【0035】
輻射範囲変更機構160は、ヒータ110からの輻射を遮蔽する範囲を変更可能である。本実施形態の輻射範囲変更機構160は、遮蔽板162、遮蔽板位置変更機構164、冷却機構166、を備える。
遮蔽板162は、図12〜図14に示すように、成形位置L1まで搬送されるシートS1とヒータ110との間で搬送方向D1におけるヒータ110からシートS1への輻射の範囲を変更するように搬送方向D1と並行して往復移動可能とされている。なお、図12は、遮蔽板162が最も上流側に存在するときの輻射加熱機構100を示し、遮蔽板162が最も下流側となるときの位置を二点鎖線で示している。図13は、遮蔽板162が移動範囲の略中間に存在するときの輻射加熱機構100を示し、遮蔽板162の移動範囲を二点鎖線で示している。遮蔽板162は、ヒータ取付部材111の下部開口の一部を覆うようにヒータ取付部材111に対して往復移動可能に取り付けられ、ガイド部材120に載置されたシートS1の上、かつ、ヒータ110の下に配置される。遮蔽板162は、例えば、ステンレス等の金属板で形成され、内部に冷却水等の冷却液を通すための冷却通路167が形成される。
【0036】
遮蔽板位置変更機構164は、遮蔽板162を搬送方向D1と並行して往復移動させる。図9〜図14に示すように、遮蔽板位置変更機構164は、長手方向を搬送方向D1に向けてヒータ取付部材111の正面側に配置された棒状のねじ部材164a、長手方向を搬送方向D1に向けてヒータ取付部材111の背面側に配置された棒状部材164b、ヒータ取付部材111の正面側に取り付けられねじ部材164aを貫通させてねじ部材164aの両端部を回転動作可能に保持するねじ部材保持部材164c、ヒータ取付部材111の背面側に取り付けられ棒状部材164bを貫通させて棒状部材164bの両端部を回転動作可能に保持する棒状部材保持部材164d、遮蔽板162の正面側縁部の上部に取り付けられねじ部材164aと螺合した螺合部材164e、遮蔽板162の背面側縁部の上部に取り付けられ棒状部材164bを貫通させた被貫通部材164f、ねじ部材164aの上流側端部に取り付けられたハンドル164g、を備える。
【0037】
ハンドル164gを所定の回転方向(例えば右回り)に回転操作すると、ねじ部材164aがねじ部材保持部材164cに保持されながら長手方向を回転軸として回転し、該ねじ部材164aと螺合した螺合部材164eが下流側へ移動する。このとき、被貫通部材164fが棒状部材164bに沿って下流側へ移動し、遮蔽板162が下流側へスライドする。遮蔽板162は、下流側の螺合部材164eが下流側のねじ部材保持部材164cに突き当たるまで下流側へ移動可能である。一方、ハンドル164gを逆の回転方向(例えば左回り)に回転操作すると、ねじ部材164aがねじ部材保持部材164cに保持されながら長手方向を回転軸として逆方向に回転し、該ねじ部材164aと螺合した螺合部材164eが上流側へ移動する。このとき、被貫通部材164fが棒状部材164bに沿って上流側へ移動し、遮蔽板162が上流側へスライドする。遮蔽板162は、上流側の螺合部材164eが上流側のねじ部材保持部材164cに突き当たるまで上流側へ移動可能である。
【0038】
図14の上段に示すように、遮蔽板162の位置が最も上流側である場合、ガイド部材120に載置されたシートS1の上から見上げたときにヒータ110の見える面積が最も大きくなる。この場合、図16の上段に示すように、ヒータ110からシートS1への輻射の範囲R1は、最も広い。一方、図14の下段に示すように、遮蔽板162の位置が最も下流側である場合、ガイド部材120に載置されたシートS1の上から見上げたときにヒータ110の見える面積が最も小さくなる。この場合、図16に下段に示すように、ヒータ110からシートS1への輻射の範囲R2は最も狭く、輻射範囲R1の一部が遮蔽範囲R3となっている。従って、図16の上段に示すように型40で成形される範囲R4が広いときには輻射範囲R1を広くすることができ、同図の下段に示すように型40で成形される範囲R5が狭いときには輻射範囲R2を狭くすることができる。シートS1が間欠的に搬送されるので、型40の大きさに応じて輻射範囲を変えることにより、シートの成形の精度を向上させることができる。
本実施形態の遮蔽板162は、シートの搬送方向D1におけるヒータ110からシートS1への輻射の範囲を変更し、シートの幅方向D2におけるヒータ110からシートS1への輻射の範囲を変更しない。これは、型40の搬送方向D1の長さが型の種類により変わることが多い一方、シートの幅方向D2ではシートの温度差が生じない方が成形の精度が高くなるためである。また、本遮蔽板162は、ヒータ110の上流側の輻射を遮蔽し、ヒータ110の下流側の輻射を遮蔽しない。これは、ヒータ110の輻射範囲と成形位置L1との間をなるべく狭くした方がシートのスクラップが少なくなり、成形品の歩留まりが向上するためである。
【0039】
冷却機構166は、遮蔽板162を冷却する。図10と図12に示すように、本実施形態の冷却機構166は、冷却通路167、冷却水等の冷却液(冷却媒体)を冷却通路167に送る送液ポンプ168、を備える。遮蔽板162はヒータ110からの輻射を遮るため輻射熱を生ずるが、冷却された冷却液が該輻射熱を吸収して遮蔽板162の温度上昇を抑止する。遮蔽板の温度が上昇すると該遮蔽板がシートを輻射加熱して成形の精度を低下させてしまうことが想定されるが、冷却された遮蔽板によりシートが確実に輻射加熱範囲のみ輻射加熱されるので、シートの成形の精度が向上する。
なお、冷却媒体は、液体と気体とで状態変化する物質でもよい。冷却機構は、遮蔽板を冷却媒体で冷却する以外にも、熱電対等で遮蔽板を冷却してもよい。
【0040】
上述した熱成形装置1全体を制御するコンピュータシステム95は、図18に示すように、パーソナルコンピュータ等で構成されるコンピュータ96と、シーケンサ回路等で構成される制御盤97と、を備える。制御盤97は、ガイド部材120に対してヒータ110を近接させる指示の入力や離反させる指示の入力を受け付けるためのスイッチ139、ヒータ駆動機構130に接続されたヒータ駆動機構制御回路130a、シート搬送機構10に接続されたシート搬送機構制御回路10a、成形機構20に接続された成形機構制御回路20a、接続した放射温度計150の計測温度を読み込む放射温度読込回路150a、接続したヒータ110の放熱量を制御するヒータ制御回路110a、等の回路を備えている。
コンピュータ96の内部では、バス96zに、CPU96a、半導体メモリ96b,c、I/O回路(入出力回路)96d、タイマ回路96k、等が接続されるとともに、ハードディスクドライブを介してハードディスク(磁気記録媒体)96eが接続され、I/F(インターフェイス)を介して出力デバイス96f,96g,96jや入力デバイス96h,96iが接続されている。CPU96aは、ROM96bやハードディスク96eに記録された制御プログラムに基づいてメモリ96c,eをワークエリアとして利用しながら各部を制御する。
【0041】
I/O回路96dには、制御盤97のスイッチ139や放射温度読込回路150aや各種制御回路130a,10a,20a,110a等が接続されている。I/O回路と制御盤との接続は、USBやRS−232C等のシリアルインターフェイスによる接続、パラレルインターフェイスによる接続、無線による接続、等が考えられる。ヒータ110を近接させる指示の入力はスイッチ139を「近接」に切り替えることにより行うことができ、ヒータ110を離反させる指示の入力はスイッチ139を「離反」に切り替えることにより行うことができる。ヒータ駆動機構制御回路130aは、コンピュータ96の指示に従ってシーケンサによりヒータ駆動機構130の動作を制御する。具体的には、同回路130aは、スイッチ139が「近接」に切り替えられるとヒータ110を近接位置L22まで近接させ、スイッチ139が「離反」に切り替えられるとヒータ110を離反位置L23まで離反させる。シート搬送機構制御回路10aは、コンピュータ96の指示に従ってシーケンサによりシート搬送機構10の動作を制御する。成形機構制御回路20aは、コンピュータ96の指示に従ってシーケンサにより成形機構20の動作を制御する。放射温度読込回路150aは、放射温度計150で測定された表面温度を該放射温度計から読み込む。ヒータ制御回路110aは、放射温度読込回路150aで読み込まれた表面温度に基づいてガイド部材120に載置されたシートS1の上側の表面温度を設定温度に近づけるフィードバック制御をヒータ110に対して行う。
【0042】
(2)熱成形装置の動作:
ヒータ制御回路110aは、通電される等して図19に示す処理を開始すると、放射温度読込回路150aで読み込まれたシート上側の表面温度が設定温度よりも大きいか否かを判断し(ステップS10)、大きいと判断するとヒータ110自体の温度を所定温度下げる等してヒータ110の放熱量を所定量減らす制御をヒータ110に対して行う(ステップS12)。また、ヒータ制御回路110aは、読み込まれたシート上側の表面温度が設定温度よりも小さいか否かを判断し(ステップS14)、小さいと判断するとヒータ110自体の温度を所定温度上げる等してヒータ110の放熱量を所定量増やす制御をヒータ110に対して行う(ステップS16)。ヒータ制御回路110aは、ステップS10〜S16の処理を繰り返すことにより、輻射加熱位置L21にあるシートの上面S1aの表面温度をフィードバック制御する。
【0043】
シート搬送機構10と成形機構20とは、図20に示すタイミングチャートに従った動作をする。図に示すように、初期状態では、クランプ搬送機構のクランプ機構14aのシートクランプをオフにして成形後のシートS2のクランプを解除させた状態にし、クランプ搬送機構14を上流側の所定のクランプ位置L11にさせ、型40を所定の離間位置L13にさせ、成形用バルブ26を閉じて差圧供給機構25から通気孔61への負圧(真空圧)又は圧空の供給を解除している状態にしている。この状態で、まず、クランプ機構14aのシートクランプをオンにしてシートS2の両側縁部をクランプ搬送機構14にクランプさせる(タイミングt1)。次に、クランプ搬送機構14をクランプ位置L11から下流側の所定の解放位置L12まで移動させる(タイミングt2〜t3)。すると、成形後のシートS2が所定量搬送方向D1へ搬送され、成形前のシートS1も成形後のシートS2に引っ張られて所定量搬送方向D1へ搬送されて、輻射加熱機構100で輻射加熱されたシートS1が成形位置L1に搬入され、輻射加熱前のシートS1が輻射加熱位置L21に搬入される。さらに、クランプ機構14aのシートクランプをオフにしてシートS2のクランプを解除させた状態にする(タイミングt4)。なお、タイミングt2に戻るまでに、所定のタイミングでクランプ搬送機構14を解放位置L12から上流側のクランプ位置L11まで移動させるようにしている。
【0044】
その後、成形用バルブ26を開いて差圧供給機構25から通気孔61へ負圧を作用させ、成形位置L1のシートS1を熱板の表面60aに密接させる(タイミングt5)。すると、成形位置のシートS1は、熱板60で加熱され、軟化する。次に、図4に示すように、型用テーブル駆動機構50で上テーブル45を下降させ、型40を所定の第二の近接位置L14にさせて、熱板60と型40とを近接させる(タイミングt6〜t7)。そして、成形用バルブ26を開いたまま差圧供給機構25から通気孔61へ圧空を供給して、型の通気孔41bからエアを排出させながら加熱軟化状態のシートS1を型の成形面41aに密接させる(タイミングt8)。ここで、雌型41の温度は熱板60よりも低いため、成形面41aに密接したシートが冷却され、固化する。これにより、シートが圧空成形され、カット前の成形品が形成される。
なお、型の通気孔41bに負圧(真空圧)を作用させる(空気を吸引する)減圧機構を該通気孔41bに接続し、タイミングt8〜t9で通気孔41bに負圧を作用させてもよい。すると、シートに対して真空圧空成形を行うことができる。このとき、差圧供給機構25から通気孔61へ圧空を供給しないと、シートに対して真空成形を行うことができる。
【0045】
タイミングt9で成形用バルブ26を閉じて差圧供給機構25から通気孔61への圧空の供給を解除すると、型用テーブル駆動機構50で上テーブル45を上昇させ、型40を所定の離間位置L13にさせて、熱板60と型40とを離間させる(タイミングt10〜t11)。
以上で1サイクルが終了し、以下、タイミングt1〜t11を繰り返すことにより、シートから熱板を用いた差圧成形を連続して行うことができる。
【0046】
以上の構成により、図1に示すように、ロール状のシートS1は、順次必要量がシート供給機構12から巻き出され、シート搬送機構10により搬送方向D1へ間欠的に搬送され、輻射加熱機構100で輻射加熱され、成形機構20で成形される。成形後のシートS2は、例えば図示しない成形品取出機構へ送られ、所定の長さでカットされて、必要に応じて順次下がっていく昇降テーブル上で積み重ねられ、成形品あるいは成形品スタックが取出機構により取出台上へ送り出される。
以上説明したようにして、本熱成形装置1は、所定の成形位置L1を通る所定の搬送方向D1へシートS1を搬送する処理を行い、熱板60と型40とを用いてシートS1が成形位置L1まで搬送されたときに熱板60でシートS1を加熱して型40により成形する処理を行い、成形位置L1まで搬送されるシートS1の上面側を輻射加熱する。
【0047】
(3)熱成形装置の作用及び効果:
シート搬送機構10で輻射加熱位置L21へ搬送されてガイド部材120に載置されたシートS1は、上面S1aがヒータ110により輻射加熱される。その後、シートS1は、シート搬送機構10で成形位置L1へ搬送されて熱板60に載置され、今度は下面S1bが熱板60により接触加熱される。
【0048】
熱板でシートを加熱して型により成形する熱成形装置に輻射加熱機構が無いと、シートが熱板に接してから設定温度に到達するまでに時間がかかる。この設定温度は、シートが加熱により軟化して熱成形可能となる温度である。ここで、設定温度に到達する時間を短くするために熱板の温度を高くすると、熱板に接触したシートの下面が軟化しすぎてしまい、熱板表面の微細な凹凸が転写されてしまう。シートがポリスチレンを二軸延伸したOPSシート等のように透明なシートであると、転写された微細な凹凸により、透明であるべき成形品が濁ったように見えてしまう。
また、成形位置に搬入されるシートの下面をプレヒータロールで接触加熱すると、シートを蛇行させて間欠的に搬送することになるため、プレヒータロールによりシートに力が加わり、成形の精度を維持するための調整が容易ではない。さらに、熱板が配置された下面側のシートを接触加熱しても、シートの上面側まで熱が伝導するのに時間がかかってしまう。加えて、型が交換により大きくなったり小さくなったりしても、プレヒータロールにより接触加熱されるシートの面積が変わらないため、間欠的に搬送されるシートの予備加熱の温度にむらが生じ、シートの成形の精度を維持するための調整が容易ではない。
【0049】
本実施形態の熱成形装置1は、輻射加熱機構100を設けたことにより、プレヒータロールでシートS1を蛇行させて搬送する必要が無い。従って、容易にシートS1の成形の精度を維持することができる。また、本熱成形装置1は、シートS1の上面側が輻射加熱されるので、熱板60の温度を変えない場合、シートS1が熱板60に接触してからシート上面S1aが設定温度に到達する時間が短くなる。特に、成形品を連続して生産するとき、僅かな時間短縮でも単位時間当たりの成形品の生産量を増やすことができるので、時間短縮の効果が大きい。一方、シート上面S1aが設定温度に到達する時間を短縮する必要が無い場合、熱板60の温度を低くすることができる。これにより、透明のシートを成形するときに熱板60表面の微細な凹凸の転写を抑止することができ、成形品の透明性を向上させることができる。
【0050】
さらに、図16で示したように、型40で成形される範囲R4,R5に合わせて遮蔽板162を移動させるだけで容易に輻射範囲R1,R2を変えることができるので、型のサイズに応じて予備加熱する範囲を調整することができる。成形位置L1のシートS1が成形されるときにシートS1は移動を停止していることになるが、次に型40で成形される範囲に輻射範囲を合わせると、シートの成形の精度が向上する。従って、遮蔽板162を搬送方向D1と並行して移動させることにより、シートの成形の精度を容易に向上させることができる。また、遮蔽板162が冷却されているので、該遮蔽板によりシートを確実に輻射加熱範囲のみ輻射加熱することができ、シートの成形の精度をさらに向上させることができる。
加えて、シート搬送機構10が成形位置L1から搬送方向D1へ搬送された成形後のシートS2における幅方向の縁部S2cをクランプして搬送方向D1へ移動させることにより輻射加熱位置L21のシートS1を搬送方向D1へ搬送するので、シート搬送機構を構成するクランプ機構14aの加熱を抑止することができる。
【0051】
(3)変形例:
上記熱板は、シートに接触せず該シートの一面に対面配置されてもよい。なお、シートを加熱する際には、輻射加熱や、接触加熱と輻射加熱の併用によりシートを加熱してもよい。上記型は、前記シートの他面に接触して配置されてもよい。
上記熱板と上記型とを近接及び離間させる際には、熱板のみ移動させてもよいし、熱板と型の両方を移動させてもよいし、同時にシートを移動させてもよい。
型用テーブルを熱板に対して近接及び離間させる機構は、上記リンク機構以外にも、各種クランク機構、エアシリンダや油圧シリンダのようなシリンダを用いた機構、等でもよい。
上記シートは、極薄の樹脂フィルム、極薄の可塑性フィルム、厚みのある樹脂素材、厚みのある可塑性素材、等でもよい。
【0052】
上記型は、雌型41と型ベース部材42とから構成する以外にも、型用テーブルに直接取り付けられる型のみで構成されてもよい。上記熱板は、台座65及び間座70を介して熱板用テーブルに取り付けられる以外にも、熱板用テーブルに直接取り付けられてもよい。熱板に形成される通気孔は、表面から縁部へ貫通した通気孔、等でもよい。
【0053】
なお、熱成形装置の基本部分であるシート搬送機構10、成形機構20、輻射加熱機構100のみでも、シートの成形の精度を維持しながら成形のサイクルタイムを短縮させたり熱板の温度を下げたりすることが可能になる効果が得られる。むろん、輻射加熱機構100にヒータ駆動機構やヒータ高さ調整機構や放射温度計等が無くても、成形位置まで搬送されるシートの上記他面側が輻射加熱されれば、同様の効果が得られる。
また、本発明は、上述した実施例や変形例に限られず、上述した実施例及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施例及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】熱成形装置の外観を例示する斜視図。
【図2】熱成形装置の一例を正面から見て示す正面図。
【図3】型が所定の離間位置にあるときの熱成形装置を例示する右側面図。
【図4】型が所定の近接位置にあるときの熱成形装置を例示する右側面図。
【図5】図2に示す成形機構の型等の底面を型の下から見て示す底面図。
【図6】図2に示す成形機構の型を組み立てる様子を底面側から見て示す分解斜視図。
【図7】熱板を支持する構造とエア結線を模式的に例示する斜視図。
【図8】図7のA1の位置を断面視して示す垂直断面図。
【図9】輻射加熱機構の外観を例示する斜視図。
【図10】ヒータが所定の近接位置にあるときの輻射加熱機構を例示する左側面図。
【図11】ヒータが所定の離反位置にあるときの輻射加熱機構を例示する左側面図。
【図12】図2に示す輻射加熱機構を正面から見て示す正面図。
【図13】図2に示す輻射加熱機構のヒータの高さが変わる様子を示す正面図。
【図14】遮蔽板の下から図2に示す輻射加熱機構の要部を示す底面図。
【図15】ヒータの一例を示す底面図。
【図16】ガイド部材に載置されたシートの輻射範囲及び遮蔽範囲を例示する平面図。
【図17】クランプ搬送機構を例示する右側面図。
【図18】コンピュータシステムの回路構成の概略を例示するブロック図。
【図19】ヒータ制御回路が行うフィードバック制御処理を例示するフローチャート。
【図20】熱成形装置の動作を例示するタイミングチャート。
【符号の説明】
【0055】
1…熱成形装置、
10…シート搬送機構、14…クランプ搬送機構、14a…クランプ機構、
20…成形機構、25…差圧供給機構、
40…型、41…交換用雌型、41a…成形面、41b,42b…通気孔、
45…上テーブル、50…型用テーブル駆動機構、
60…加熱板(熱板)、60a…型に対向する表面、61…通気孔、
75…下テーブル、79…第二のヒータ、80…通気経路、85…電磁弁(バルブ)、
95…コンピュータシステム(シート搬送機構の一部、成形機構の一部、輻射加熱機構の一部)、
96…コンピュータ、97…制御盤、
100…輻射加熱機構、
110…ヒータ、111…ヒータ取付部材、
120…ガイド部材、122…基部、122a…載置面、124…側部、
130…ヒータ駆動機構、139…スイッチ、
140…ヒータ高さ調整機構(ヒータ距離調整機構)、
141…ボルト、142,143…ナット、
150…放射温度計(輻射加熱制御手段の一部)、
160…輻射範囲変更機構、162…遮蔽板、164…遮蔽板位置変更機構、
166…冷却機構、167…冷却通路、168…送液ポンプ、
D1…搬送方向、D2…幅方向、
L1…成形位置、L2…型側成形位置、L3…熱板側成形位置、
L11…クランプ位置、L12…解放位置、
L13…離間位置、L14…第二の近接位置、
L21…輻射加熱位置、L22…近接位置、L23…離反位置、
R1,R2…輻射範囲、R3…遮蔽範囲、R4,R5…成形範囲、
S1…シート、S1a…上面(他面)、S1b…下面(一面)、
S2…成形後のシート、S2c…幅方向の縁部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の成形位置を通る所定の搬送方向へ成形可能なシートを搬送するシート搬送機構と、
前記成形位置にあるシートの一面側に配置される熱板と、前記成形位置にあるシートの他面側に配置されて前記熱板に対向する型とを有し、前記シートが前記成形位置まで搬送されたときに前記熱板で前記シートを加熱して前記型により成形する成形機構と、
前記成形位置まで搬送されるシートの前記他面側を輻射加熱する輻射加熱機構とを備えることを特徴とする熱成形装置。
【請求項2】
前記輻射加熱機構は、前記成形位置まで搬送されるシートの前記他面側に配置されたヒータと、該ヒータからの輻射を遮蔽する範囲を変更可能な輻射範囲変更機構とを有することを特徴とする請求項1に記載の熱成形装置。
【請求項3】
前記輻射範囲変更機構は、前記成形位置まで搬送されるシートと前記ヒータとの間で前記搬送方向における前記ヒータから前記シートへの輻射の範囲を変更するように前記搬送方向と並行して往復移動可能な遮蔽板と、該遮蔽板を冷却する冷却機構とを有することを特徴とする請求項2に記載の熱成形装置。
【請求項4】
前記輻射加熱機構は、前記成形位置まで搬送されるシートから前記ヒータまでの距離を調整するヒータ距離調整機構を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の熱成形装置。
【請求項5】
前記シートが前記搬送方向に連続したシートであり、
前記輻射加熱機構は、連続した前記シートを前記ヒータで輻射加熱する輻射加熱位置へ配置可能とする離反位置と、前記輻射加熱位置にある連続した前記シートを輻射加熱する近接位置と、の間で前記ヒータを近接及び離反させるヒータ駆動機構を有することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の熱成形装置。
【請求項6】
前記成形位置にあるシートの前記一面側が下側とされ、前記成形位置にあるシートの前記他面側が上側とされ、
前記輻射加熱機構は、前記成形位置まで搬送されるシートを載置するガイド部材を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の熱成形装置。
【請求項7】
前記シートが前記搬送方向に連続したシートであり、
前記シート搬送機構は、前記成形位置から前記搬送方向へ搬送された成形後の前記シートにおける幅方向の縁部をクランプして前記搬送方向へ移動させることにより、前記成形位置まで搬送されるシートを前記搬送方向へ搬送することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の熱成形装置。
【請求項8】
所定の成形位置を通る所定の搬送方向に連続した成形可能なシートを搬送する際、前記成形位置から前記搬送方向へ搬送された成形後の前記シートにおける幅方向の縁部をクランプして前記搬送方向へ移動させることにより、前記成形位置まで搬送されるシートを前記搬送方向へ間欠的に搬送するシート搬送機構と、
上面に通気孔を有し前記成形位置にあるシートの下側に配置される熱板と、前記成形位置にあるシートの上側に配置されて前記熱板に対向する成形面が形成された型とを有し、前記シート搬送機構により前記シートが搬送されるときには前記熱板と前記型とを離間させ、前記シートが前記成形位置まで搬送されたときに前記通気孔に負圧を作用させ前記熱板と前記型とを近接させて前記シートを接触加熱しながら前記成形面の形状に合わせて成形する成形機構と、
前記成形位置まで搬送されるシートの上側に配置され該シートの上側を輻射加熱するヒータと、
該ヒータに対向する載置面で前記搬送方向へ案内するように前記シートを載置するガイド部材と、
該ガイド部材に対向する近接位置と、連続した前記シートを前記ガイド部材に載置可能とする離反位置と、の間で前記ヒータを近接及び離反させることが可能であり、前記ヒータを近接させる指示の入力を受け付けると該ヒータを前記近接位置まで近接させ、前記ヒータを離反させる指示の入力を受け付けると該ヒータを離反させるヒータ駆動機構と、
前記近接位置にある前記ヒータまでの前記ガイド部材から高さを調整するヒータ高さ調整機構と、
前記ガイド部材に載置されたシートの上側の表面温度を測定する放射温度計を有し、該放射温度計で測定された表面温度に基づいて前記ガイド部材に載置されたシートの上側の表面温度を設定温度に近づけるフィードバック制御を前記ヒータに対して行う輻射加熱制御手段と、
前記ガイド部材に載置されたシートと前記ヒータとの間で前記搬送方向における前記ヒータから前記シートへの輻射の範囲を変更するように前記搬送方向と並行して往復移動可能な遮蔽板と、
該遮蔽板を冷却媒体で冷却する冷却機構とを備えることを特徴とする熱成形装置。
【請求項9】
所定の成形位置を通る所定の搬送方向へ成形可能なシートを搬送する処理を行うシート搬送工程と、
前記成形位置にあるシートの一面側に配置される熱板と、前記成形位置にあるシートの他面側に配置されて前記熱板に対向する型とを用い、前記シートが前記成形位置まで搬送されたときに前記熱板で前記シートを加熱して前記型により成形する処理を行う成形工程と、
前記成形位置まで搬送されるシートの前記他面側を輻射加熱する輻射加熱工程とを備えることを特徴とする熱成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−23205(P2009−23205A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188336(P2007−188336)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(304050369)株式会社浅野研究所 (44)
【Fターム(参考)】