説明

熱接着マークの剥離方法および剥離シート

【課題】普段着、ユニフォーム、水着などの被服に熱接着されたマークを効率良く、かつ効果的に剥離する方法を提供すること、並びにその剥離方法に使用する剥離液や剥離シートを提供することを目的とする。
【解決手段】合成樹脂製マークが接着剤によって熱接着された被服から、マークを剥離する方法であって、マーク表面に対して融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・sの物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂の剥離シートで被覆し、100〜130℃の温度、300〜500g/cmの圧力で加圧して前記熱可塑性ポリウレタン樹脂とマーク表面とを圧着させ、前記被服をマークが接着されていない側から、120〜185℃の温度で加熱して接着剤を溶融し、前記剥離シートを引き離すことにより、該シートに圧着されたマークを被服から剥離することを特徴とする熱接着マークの剥離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tシャツ、ユニフォーム、スポーツウエア等に貼着されたマークを剥離する方法およびその際に用いられる剥離シートに関し、特にマーク最表面がポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンなどの合成樹脂層で形成され、直接もしくは熱接着層を介して衣服に施されたマークを効率よく剥離する方法およびそれに使用する剥離シートに係わる。
【背景技術】
【0002】
Tシャツ、ユニフォーム等をはじめとする衣類や、ハンドバック、ポーチ等の袋物類には、ファッションとして或いは一つの集団としてのまとまりを主張するためとして、文字、図形、記号等が施されたマークが使用されている。これらのマークの接着方法は、主として二通りがある。すなわち、フエルトやメルトン生地を手又はミシンなどで縫い合わせる方法と、ホットメルト層を有するニット、クロス、ナイロンなどの生地を所望の形状に加工し、該ホットメルト層を衣類に接するように配置して、加熱、加圧することにより接着させる方法である。
【0003】
加熱、加圧することにより接着する方法は、作業性、経済性、ファッション性に優れているという特徴を有する。例えば、表面層が着色熱可塑性樹脂層であり、裏面層がホットメルト接着層であって、その間にポリアクリルニトリルフィルム層が設けられているもの(特許文献1)がある、このマークは主に昇華性染料の色移行を防止することができるというものである。また、熱可塑性のホットメルト合成樹脂フィルムにより熱圧着するタイプのマーク用生地を提供するもの(特許文献2)がある。この方法はマーク地と熱圧着層との間に介在層を存在させて三層構造とし、シャツ、ユニフォームの色彩がマークから透視されることを防止してマーク本来の風合い、持ち味を発揮するマークとすることができるものである。
【0004】
このようなマークは、これまで一度被服に接着した後は剥がれないことが前提であった。被服を着用中は当然であるが、洗濯時やアイロンをかける際に、マークが剥がれてしまっては、マークを接着した意味がないためである。従って、被服とマークとの間の接着力は基本的に強力になるように工夫がされており、ホットメルト接着層を利用した方法では、被服を構成する繊維の間に接着時に溶融した樹脂が流れ込み、これが冷却によって硬化して、いわゆる投錨効果(アンカー効果、ファスナー効果ともいう)により被服から剥がれることがなく、相当期間の間被服の一部として機能することとなる。
【0005】
ところが、これらのマークであっても、一旦接着した後で当該マークを剥離したいという必要性に迫られる場面がある。例えば、ユニフォームはそのままでマークの模様を換えたいとか、マークはそのままでもマークの接着位置を変えたいとか、元々はマークを接着する予定であったが何らかの理由でマークが不要になったり、そもそもマークを誤って接着してしまったりする場合などである。こうした要望に応えるように、マークを剥がし取りシートによって剥がす方法(特許文献3)が提案されている。この方法は、マークの剥がし取りシートとして、適宜材質から成るシート上に、前記マークの合成樹脂層と親和性を有し、且つ前記合成樹脂層より融点温度の高い熱可塑性合成樹脂層を、熱可塑性のホットメルト合成樹脂層を介して一体に形成して成るシートを使用することを特徴とするものである。
【0006】
前記方法は、剥がしとる対象が特定されている。詳しくは、「スポーツシャツに装着して成る熱可塑性の着色合成樹脂による伸縮性を有し、且つ柔軟性を有する合成樹脂から成るマーク地と、剥離剤によっては成分変化を起こさない介在層である熱可塑性合成樹脂層と、前記マーク地及び介在層より融点温度の低い接着剤層である熱可塑性ホットメルト合成樹脂層とを順次積層して形成されたマーク」をスポーツシャツからマークの剥がし取りシートによって剥がす方法である。従って、特定対象のマーク以外に対しては前記方法が適用できるか否かは不明である点、実際の操作は文献中に記載されているように、ある種の溶液をスポーツシャツの生地の裏面に滲み込ませる必要がある(段落0008参照)が、いかなる溶液であるのかが明示されていないために、この文献を見た当業者であっても実施することは困難と思われるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−348787号公報
【特許文献2】特開2001−324928号公報
【特許文献3】特許3846787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術を背景とする課題を解決するため検討した結果なされたものであり、その目的とするところは、普段着、ユニフォーム、水着などの被服に熱接着されたマークを効率良く、かつ効果的に剥離する方法を提供すること、並びにその剥離方法に使用する剥離液や剥離シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱接着された合成樹脂製マークの剥離方法は、マーク表面に対して融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・sの物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂の剥離シートで被覆し、100〜130℃の温度、300〜500g/cmの圧力で加圧して前記熱可塑性ポリウレタン樹脂とマーク表面とを圧着させ、前記被服をマークが接着されていない側から、120〜185℃の温度で加熱して接着剤を溶融し、前記剥離シートを引き離すことにより、該シートに圧着されたマークを被服から剥離することを特徴とする。マークの構造に特定されることなく、現在一般に流通している合成樹脂製マークに広く適用することができる方法である。
【0010】
前記加温して接着剤を溶融する際には、被服側から加温するだけでなく、マークが最初に剥離し始める部位を特に110〜120℃の温度で、かつ剥離シートの上から加温することが好ましい。これにより、マークを剥離する際に剥離シートを引っ張る力が弱くても、容易にマークを剥離できるので、作業者の負担を軽減することができる。
【0011】
前記剥離シートは、全体が前記物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂で構成されていても良いが、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が目開き0.1mm〜0.5mmのメッシュの範囲の繊維シートを貫通して形成されたシートであることがより好ましい。ポリウレタン樹脂単体よりも繊維シートによって剥離シート全体の強度を向上させ取扱が容易になるからである。さらに、前記剥離シートは、マークとの圧着面が鏡面仕上げされていることが好ましい。
【0012】
この剥離シートは、目開き0.1mm〜0.5mmのメッシュの範囲の繊維シートに、前記の物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂を貫通させて形成したものであるが、貫通条件としては、温度150〜180℃、圧力400〜600g/cmで加熱・加圧して繊維シートに浸透させることが望ましい。この条件により前記ポリウレタン樹脂に流動性を与え、繊維シートに対してほぼ均一に浸透して繊維シートが熱可塑性樹脂の海に浸かっている状態の剥離シートが得られるのである。
【0013】
そして、剥離シートとして前記ポリウレタン樹脂を貫通させた剥離シートと目的のマークとの間に、マークを剥離しようとする際に最初に剥離し始める部位に相当する位置に対して、更に前記物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂製の剥離シートを介在させることが好ましい。一度繊維シートを貫通させた熱可塑性ポリウレタン樹脂をマークと圧着させるよりも、熱可塑性ポリウレタン樹脂単体をマークと圧着させる方が、両者の接着強度を向上させることができるからである。
【0014】
また、前記の場合において繊維シートを貫通して形成された剥離シートと、前記物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂製の剥離シートとの間に、耐熱ウレタン樹脂層を介在させることが好ましい。熱可塑性ポリウレタン樹脂が耐熱ウレタンによってブロックされる結果、マークに対する接着力が強化されるからである。
【0015】
剥離シートを引き離す際に、または引き離した後に、残留する前記接着剤を沸点100℃以上の親水性有機溶媒を含む剥離液を塗布して、これを溶解または膨潤させて除去することが好ましい。剥離シートだけでマーク及び被服との接着剤を完全に除去することができない場合に有効である。
【0016】
この剥離液はより具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸2−エトキシエチルから選択される1種以上を30〜100v/v%の範囲で含有する剥離液であって、前記剥離方法の途中でこれを剥離シートがマークと圧着されていない側から塗布してから、剥離シートと共にマークを被服から引き離しても良い。合成樹脂製マークは熱接着に際し、接着剤が溶融して被服の繊維間に流れ込むことにより投錨効果を発現する。従って、剥離シートとマーク表面を圧着してマークを除去したとしても、接着剤の一部は依然として被服に残留する可能性があり、これを除去するためである。
【0017】
なお、マークを単純に剥離する方法としては、前記剥離液をマーク裏面側から塗布して2〜10分程度、好ましくは3〜5分程度放置し、接着剤が柔軟になった頃合いを測って手指、ピンセットなどによってマークを引きはがすようにしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、接着剤を溶融させて被服に接着された合成樹脂製のマークを剥離するに際し、マーク表面との親和性の高い特定の物性を有する熱可塑性ポリウレタンを剥離シートに採用しているので、マークと好適に圧着させることができ、剥離操作時の作用力を効果的にマーク部分に対して集中することができる。また、マークと圧着された剥離シートの作用だけでは除去しきれずに残留することがある一部の接着剤については、マークの投錨効果を減弱化できる剥離液を併用することにより、従来困難であった各種の熱接着されたマークも容易に剥離することができるのである。
【0019】
さらに、剥離液と剥離シートの使用にあたっては、被服に対してマークを接着する際に使用される加圧・加熱プレス機をそのまま使用すればよく、他に特別な設備を必要としないので、零細事業者であっても導入が容易である。加えて、剥離液と剥離シートをセットとして備えることにより何時でも剥離方法を実施することができ、それぞれを適宜補充することによって、マークの接着と剥離を同一の場所で同時並行的に行うことが可能となった。これにより経済的効果、生産性に優れた方法を提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施例1の概略を説明する図である。
【図2】図2は、本発明の実施例2の概略を説明する図である。
【図3】図3は、本発明の繊維補強剥離シートの概略図である。
【符号の説明】
【0021】
1 被服
2 マーク
5 剥離シート
8 プレス機
12 剥離液
20 繊維シート
22 マークとの圧着面
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の剥離方法および剥離シートについて詳述する。本発明の剥離方法は、合成樹脂製マークが熱接着された被服から、何らかの理由によってマークを剥がす必要が生じた場合に好適に使用されるものである。
【0023】
現在一般的なマークは、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン等の合成樹脂が表面層を形成している。これらの表面層には種々の色彩が施されていたり、文字、記号が記されており、マーク部分の形状以外に描画された内容が、使用者の個性を表現している。さらに、マーク表面は平滑で光沢を有するものや、凹凸を施して光の乱反射を意図するものもある。
【0024】
このようなマークは、種々の方法によって被服等に接着されているが、生産性、経済性、操作性、簡便性などの観点から所謂ホットメルト接着剤を用いるものが多い。ホットメルト接着剤はマークを被服に押しつけて加熱することにより接着剤が溶融して被服の繊維間に侵入し、投錨効果によってマークをしっかりと固定する。
【0025】
これらのマークを被服から剥離する方法としては、マークを固定している接着剤を溶剤で溶かすか膨潤させてピンセット等の道具でマークを直接剥ぎ取ることも可能ではある。しかし、マークがバラバラに分断されるおそれがあり、そのような場合には作業効率が極めて悪くなる。従って、本発明ではまずマークを被覆するように剥離シートを圧着させ、マーク全体に剥離力を作用できるように準備することが望ましい。このとき、マークと剥離シートとの親和性が低いと、剥離の際にマークが被服に残存してマークを剥ぎ取ることができないので、本発明では前記したマーク表面層に親和性を有し、以下の物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂をマーク剥離用シートとして採用している。
【0026】
本発明に使用する熱可塑性ポリウレタンは、融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・sの物性を有し、マーク表面がポリウレタンの場合は無論のこと、ポリエステルやナイロンなどの場合であっても良好な親和性を有する。前記融点とは、微量融点測定器で測定し、自重で変形する温度をいう。従来のマーク用生地に用いられている一般的なポリウレタン接着剤の融点は、90〜110℃である。本発明のポリウレタン樹脂は従来汎用されている接着剤よりも高い融点を示すところに特徴がある。これまで、マーク用接着剤はマークを圧着するための装置の仕様に合わせるように設計されており、短時間で接着することが生産性の面で好ましいために、通常の接着剤の融点は低いものが選ばれていた。
【0027】
マークを剥離しようとすれば、この接着剤を再度溶融させた状態で引き離すことが効率的であり、その為にはマーク表面に圧着させる剥離シートとしての熱可塑性ポリウレタン樹脂の融点は接着剤よりも高温であることが望ましい。接着剤よりも低温の融点では、マークと被服との間の接着剤が溶融する時点で、剥離シートが既に溶融してしまうこととなり、マークを引き剥がす際に剥離シートの方がマークと離れてしまうからである。また、この剥離シートの融点が高すぎても問題がある。マークと剥離シートのポリウレタン樹脂とが圧着し難くなるからである。従って、本発明では熱可塑性ポリウレタン樹脂の融点は前記に示す125〜165℃が好適なのである。
【0028】
また溶融粘度も一つのポイントである。これが高いとマーク表面との圧着の際に熱可塑性ポリウレタン樹脂が被服に対しても接着するおそれがある。逆に低すぎるとマーク表面との圧着強度が低下して剥離の際にマークを捉えることが困難になるからである。従って、本発明の剥離シート用熱可塑性ポリウレタン樹脂は150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・sの物性を有することが好ましいのである。なお、剥離シートの厚みは30〜100μmが好ましい。前記厚みよりも薄いとマーク剥離時にシートが破れたり、マークの接着力が弱くなるおそれがあり、前記厚みよりも厚ければシートの操作性が悪くなったり、剥離シートが被服と接着して却って剥離し難くなるおそれがあるからである。
【0029】
本発明では、前記各物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂の剥離シートでマーク表面を被覆し、100〜130℃の温度、300〜500g/cmの圧力で加圧して前記熱可塑性ポリウレタン樹脂とマーク表面とを圧着させる。ポリウレタン樹脂がこの程度の温度では殆ど溶融することなく形状を保持しているので、マーク表面とは両者を構成する各材料の親和性によって圧着されている。ミクロ的には各材料の分子間引力による結合であり、例えて言えば平滑面を有する板ガラス間の接着力のようなものである。勿論、単にそれだけでなく剥離シートのポリウレタン樹脂と、マーク表面層を構成する合成樹脂とが融合した状態も寄与する場合もあり、本発明での「圧着」とは剥離シートとマーク表面とが分離することなく結合している状態をいう。本発明で使用する前記ポリウレタン樹脂は溶融温度が125〜165℃のため、圧着時の温度だけではそれ程溶融しないが、圧力が加わることでマーク表面との強固な結合を形成するのである。なお、圧着時の温度を前記温度より高温にすると通常使用されている接着剤が溶融して被服に対してさらに浸透してしまい、前記温度未満では、前記ポリウレタン樹脂がマーク表面と結合する程度までに柔軟にならないおそれがあるため、それぞれ好ましくないのである。
【0030】
次ぎに、被服をマークが接着されていない側から、120〜185℃の温度で加熱して接着剤を溶融し、前記剥離シートを引き離すことによりマークを被服から剥離することができる。被服を加熱することで接着剤の投錨効果を解消する程度まで柔軟にするのでマークが剥離でき、当該温度でも本発明に使用する熱可塑性ポリウレタン樹脂はほとんど溶融しないためマークを捉えて放すことがないからである。なお、この加熱については必ずしもマーク裏面全体を加熱する必要はなく、剥離開始部位周辺を集中的にアイロンなどで加熱しても良い。
【0031】
剥離シートでマーク表面を被覆する際は、剥離シートがマーク表面全体を覆いそれ以上の範囲の大きさであることが好ましい。剥離が始まる部分となるマークの一部と圧着するだけでも、マーク全体を剥がすことができる場合もあるが、マーク全体が剥離シートに圧着されていればより確実に剥離できるからである。また、マークの形状に一致させた剥離シートにすると、後に引き剥がす際の掴み代がなく、剥離操作が困難になるため、マークより大きな面積を有する剥離シートを使用することが望ましいのである。
【0032】
ところで、本発明で使用する熱可塑性ポリウレタン樹脂は、長鎖ジオールとジイソシアネートの重縮合により得られるが、ソフトセグメントである長鎖ジオールのタイプにより、ポリエーテル系とポリエステル系に分けられる。本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、「ポリエステルポリオール」と「ジイソシアネート化合物」を反応させてられるポリエステル系ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0033】
「ポリエステルポリオール」は、ジカルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの、芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、ドデカンジオン酸、セパシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられ、これらを一種もしくは二種以上を組み合わせて使用しても良い。本発明ではアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸が好適である。
【0034】
前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールなどが挙げられ、これらを一種もしくは二種以上を組み合わせて使用しても良い。本発明では、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、分子量200〜2000のポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコールなどが好ましい。
【0035】
一方、前記「ジイソシアネート化合物」としては、脂肪族、脂環式および芳香族のジイソシアネートが使用される。具体的にはヘキサメチレン−1,6,ジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン−1,5,ジイソシアネート、2−エチルブチレン−1,4,ジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネートあるいは少なくともこれら2種類以上の混合物、イソホロン−ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサン−ジイソシアネート、1−メチル−2,4−および−2,6−シクロヘキサン−ジイソシアネートのような脂環式ジイソシアネート、2,4−トルイレン−ジイソシアネート、2,4−および2,6−トルイレン−ジイソシアネートの混合物、1,5−ナフチレン−ジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネートである。これらのうちでもヘキサメチレン−1,6,ジイソシアネート、イソホロン−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネートが好ましく、ことに4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネートが好ましい。
【0036】
前記ジイソシアネート化合物には、例えばジイソシアネート全量に対して3モル%、好ましくは1モル%以下の濃度範囲で多官能性ポリイソシアネートを添加してもよい。但し、この量については熱可塑性のポリウレタンが得られるように調整されなければならない。多官能性ポリイソシアネートを多用すると熱硬化性になり、剥離シートとしての機能を果たしがたくなるからである。このような多官能性ポリイソシアネートを添加する場合には、活性水素原子を有する単官能性化合物を同時に使用して、ポリウレタンの化学的架橋を抑制することもできる。前記多官能性ポリイソシアネートの例としては、ポリフェニル−ポリメチレン−ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
分子量の制御のためにも用いられる前記活性水素原子を有する単官能性化合物としては、ブチルアミン、ジブチルアミン、ステアリルアミン、ピロリドンのようなモノアミン、ブタノール、オクタノール、シクロヘキサノールのようなモノアルコールが適当である。
【0038】
前記のジカルボン酸と多価アルコールとから「ポリエステルポリオール」を調製し、該ポリエステルポリオールと前記「ジイソシアネート」とを反応させて、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂が合成されるのである。この樹脂を、マークを剥離するためのシートとして使用する。
【0039】
このシートは前記物性の熱可塑性ポリウレタン樹脂のみから成っていてもよく、またシートの補強を目的として目の粗い繊維シート20、具体的には目開きが0.1mm〜0.5mmのメッシュの繊維シートに樹脂5を貫通させて形成したシート(以下、繊維補強剥離シート25という)を用いることも可能である。目開きとは繊維一本一本の間の間隔を指し、具体的には図3の21に示す。図3(a)には繊維シートを正面から見た概略図、図3(b)には前記ポリウレタン樹脂5を貫通させた繊維補強剥離シートを一点鎖線(AA’)でカットした断面の概略図を示している。本発明に使用する樹脂は溶融粘度が高いので、目が粗い繊維でないと該樹脂を貫通させることが容易ではないため、前記メッシュの範囲のものが好ましい。なお、図3(b)に示すように、前記ポリウレタン樹脂5全体が各繊維23の網目を貫通してシートの表裏にこの樹脂層が一面に形成されていることまで、要求するものではない。繊維シートは熱可塑性ポリウレタン樹脂5の補強材として用いるものであり、マークとの圧着面22が前記ポリウレタン樹脂層であれば良いのである。従ってマークとの圧着面を繊維補強剥離シートの表面と定義すれば、繊維補強剥離シートの裏面24には少なくとも一部に表面と連結する前記ポリウレタン樹脂が存在し、所謂投錨効果によって前記ポリウレタン樹脂が繊維シートに固定されていれば良い。
【0040】
熱可塑性ポリウレタン樹脂を繊維シートに貫通させる方法としては、前記樹脂及びシートを挟んで、温度150〜180℃で加熱し樹脂を溶融させて、圧力400〜600g/cmで10〜40秒間加圧して繊維シート内に浸透させる。このときの温度、圧力の諸条件はマーク表面に対する圧着条件よりも高温かつ高圧である。繊維補強剥離シートは、繊維シート単独で厚みが100〜250μm、熱可塑性ポリウレタン樹脂シート単独で厚みが30〜100μmであり、繊維補強剥離シートにした場合でも厚みは110〜350μmである。
【0041】
このようにして形成された剥離シート(または繊維補強剥離シート)は、マークとの圧着表面が鏡面仕上げされた前記ポリウレタン樹脂層(図3(b)の22に相当)が形成されていることが好ましい。鏡面仕上げによって剥離シートの表面とマークの表面との圧着力が強固になるからである。この理由としては、前記した平滑面を有するガラス板同士の結合力が非常に強力であることと同様の現象と考えている。また、剥離シートまたは繊維補強剥離シートは全体が透明または半透明であることが好ましい。被服のマークを覆う際に位置関係が目視で確認できるからである。
【0042】
前記繊維補強剥離シートを使用する場合には、マーク表面との間に更に前記物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂製の剥離シートを介在させることが好ましい。繊維シートにより補強する際に、熱可塑性ポリウレタン樹脂を一旦溶融させることによって、樹脂の弾力性など何らかの物性に多少の影響があり、マークとの結合力が減少するおそれがあるからである。一般に、熱可塑性プラスチックのペレットは加熱溶融により成形されるが、ランナーと呼ばれる余剰部分がどうしても発生する。このランナー部分は、再度未使用のペレットと所定の割合で混合して再利用される。これは一旦、熱溶融したプラスチックの物性と、未使用のプラスチックの物性とが全く同一ではないことによるが、同じことが本発明の剥離シートでも言えるのである。すなわち、繊維補強剥離シートにした熱可塑性ポリウレタン樹脂は、未使用の熱可塑性ポリウレタン樹脂の剥離シートと比較して、マーク表面との結合力が多少劣ることがあり、それを補償するために、剥離操作において最も負荷のかかるマーク剥離開始部位だけでも、未使用の剥離シートを適用することが好ましいからである。
【0043】
従って、マーク表面全体に剥離シートを介在させる必要はなく、介在させる部位としては、マークを剥離する際にマークが被服から剥がれる最初の部位を標的とすることが好ましい。これにより剥離シートの使用を節約することができるとともに、剥離に必要なマークとの結合力も補償することができる。ここで使用する介在用の剥離シートは、前記物性の熱可塑性ポリウレタン樹脂製のシートであり、その厚みは50〜100μmで繊維補強剥離シートを用いて強度面に問題がないために、相当程度薄くすることが可能である。
【0044】
本発明では更なる改良として、前記繊維補強剥離シートと介在用の剥離シートとの間に耐熱ウレタン樹脂層を挟んでも良い。耐熱ウレタン樹脂層によって介在用の剥離シートがマーク表面との結合力を強化することができるからである。繊維補強剥離シートと介在用の剥離シートとは基本的に材質が同一の熱可塑性ポリウレタンであるので非常に強固に接着する反面、マーク表面は異質の材料から構成されていることが多いので介在用剥離シートとの接着力は前記に比較すれば劣ることになる。そこで、耐熱ウレタン樹脂層を挟むことによって、介在用剥離シートがマーク表面とより強固に結合させることができるのである。この耐熱ウレタン樹脂層の厚みとしては、20〜150μmが適当である。介在用剥離シートをマーク表面に向けて接着しやすくするためなので、特に厚くする必要はないからである。
【0045】
また前記耐熱ウレタン樹脂層としては、例えば、溶融温度が160〜180℃、硬化温度230〜240℃、デュロ硬度60A〜80Aの熱硬化性(硬化型)を有する耐熱ウレタン系樹脂が好ましい。より具体的には、(日本ポリウレタン工業社製)商品名:ニッポラン(登録商標)5033、5111、5115、5120、5138、5193、5196、5199、5230、5238、5980に、ジイソシアネートを10:1〜4の範囲内から選択される割合で含有したものを挙げることができる。なお、前記ジイソシアネートとしては、例えば、(日本ポリウレタン工業社製)商品名:コロネート(登録商標)HX、XL、HXLV、HK、Lが挙げられる。商品名:コロネート(登録商標)HXが混合しやすい点で好ましい。
【0046】
このように剥離シート(または繊維補強剥離シート)だけを用いた場合について説明してきたが、中には前記シートのみを使用しても完全にはマークを除去できない場合もある。例えば、マークの色彩を形成する層は取れるが被服の繊維と絡まった接着剤が残留してしまうような場合である。このような時には後述する剥離液を使用すると良い。この場合の剥離方法として、具体的には二通りの方法が考えられる。一つは、剥離シート(または繊維補強剥離シート)とマーク表面を圧着した後、被服の裏面から剥離液を塗布し、前記シートを引き離して、マークを剥離する方法である(謂わば、剥離シートと剥離液の「同時的使用」である)。もう一つは、マーク表面を前記剥離シート(または繊維補強剥離シート)で被覆し、120〜185℃の温度で加熱して前記シートの熱可塑性ポリウレタン樹脂とマーク表面とを圧着させ、前記シートを引き離すことにより、まずマークの色彩を形成する層を剥離する。続いて、残留する接着剤に剥離液を塗布してこれを取り除くという方法である(謂わば、剥離シートと剥離液の「連続的使用」である)。同時的使用のメリットは、操作時間を短縮できることである。一方、連続的使用のメリットは、染料などを含むマークの色彩を形成する層を予め前記シートによって選択的に剥離しておくことにより、剥離液を塗布した場合に発生する可能性のある影響(例えば、色の滲みや、マーク色彩層の溶解など)を抑えたり、剥離液の使用料そのものを削減することができるという点が挙げられる。前記いずれの方法を選択するかは、剥離対象となるマークの物性・形状・接着状況などを勘案して、決定すれば良い。
【0047】
本発明で使用する剥離液は、沸点100℃以上の親水性有機溶媒を含む溶液である。この剥離液を被服に残留する接着剤周辺に直接塗布して、接着剤を溶解または膨潤させ、布切れなどにより軽くたたきながら除去する。従来からある剥離液は有機ハロゲン系が主体で、沸点が非常に低いために、使用過程で直ぐに揮発して、作業中に何度も追加塗布が必要であった。本発明者らは、沸点が高い有機溶媒でも充分に接着剤を溶解または膨潤させることができるということを発見した。しかも親水性であるために、被服から接着剤を除去する過程で、水を含ませたタオルなどで軽くたたいてドライヤーで乾燥すれば剥離液を除去することができ、作業者の手指などに剥離液が付着しても簡単にふき取ることができるのである。
【0048】
前記剥離液としては、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃、親水性)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃、親水性)、酢酸2−エトキシエチル(沸点156.3℃、親水性)から選択される1種以上を30〜100v/v%の範囲で含有する。これらの親水性有機溶媒は、現在マークに使用されている殆どのホットメルト接着剤を溶解もしくは膨潤させることができる。従って、剥離シートを使用してもなお被服に強固に残留している接着剤も、効果的に除去することができるのである。これらの有機溶媒は、従来のハロゲン系有機溶媒に比較して安全性が極めて高いので、皮膚に剥離液が付着しても手荒れ・肌荒れなどを誘発するおそれが殆どない。さらにこの剥離液には、有機溶媒全体に対して、メントール、ゲラニオール、チモール、シトラール、リナロール、カンファー、リモネンなどから選択される1種以上の化合物を0.1〜8.0w/v%の範囲で含有させることができる。これらの化合物は、剥離液の匂いを和らげ、清涼感を付与して作業者にとって扱い易くすることができる。
【0049】
従来の同種の剥離液は、メタノール(沸点64℃、親水性)と、トリクロロエチレン(沸点87℃、非親水性)またはトルエン(沸点111℃、非親水性)との混合液か、ジクロロメタン(沸点40℃、非親水性)を主成分とするものであり、マークを(着色層と接着剤層などを)一体として剥離するために使用されている。ところが着色層と接着剤層は異種の樹脂が用いられていることが有り、接着層を溶解または膨潤させようとすると着色層が溶解して却って被服に着色成分が浸透してしまうような事態を起こりうるのでこれを回避するために、接着剤層の溶解・膨潤の程度がそれ程強力でない液を使用していたと思われる。しかも、これらの化合物は沸点が低いので、マークに塗布しても直ぐに揮発してしまい、より大量の剥離液を使用しなければならない傾向があったのである。
【0050】
本発明の、親水性有機溶媒は沸点が高いことから、前記剥離液を剥離シート(または繊維補強剥離シート)と組み合わせて同時に使用することもできる。すなわち、マーク表面を剥離シートで被覆して、樹脂とマークを圧着させた直後は、マーク周辺を含み被服はかなり高温となっている。従来の有機ハロゲン系の剥離液では沸点が低いのでそこに液を塗布しても揮発するだけであった。本発明では、高温の被服であってもマークが接着されていない側から前記の剥離液を塗布して、その後剥離シートを引き離すことができる。こうすることによって被服に侵入している接着剤が柔軟になるので、接着剤とともに容易にマークを除去することができるようになるのである。
【0051】
前記シートと液の併用によってマークを除去できることは、すなわち剥離液を単独で使用してもマークを除去することが可能であることを示唆している。本発明の剥離シート(または繊維強化剥離シート)はマークをシートで捉えて被服から引き離す力をマークに直接作用させることが目的である。従って、マークを指またはピンセットで摘んで引っ張ることで剥離シートを使用した場合と同様のことが行えるのである。このような剥離液の単独使用は、マークがある程度の大きさ、摘みやすい形状、硬さなどを備えている場合に特に適用しやすい。マークが薄い場合や柔軟である場合には指などで摘んでも、被服とを区別して捉えることが困難であり、作業効率の観点からはシートを利用するほうが格段に優れているからである。
【0052】
以下本発明をより具体的に明らかにするために、本発明に係る幾つかの実施例を示す。
【実施例1】
【0053】
本発明による方法のうち、剥離シートの単独使用についての実施例を説明する。
図1(a)には、被服1(Tシャツ)にマーク2(ABC)が熱接着(接着剤の融点105℃、150℃における溶融粘度3000〜4000Pa・s)されている状態が示されている。このマークを剥離するために本発明の方法を適用した。まず融点が約135℃前後で、150℃における溶融粘度が約9000Pa・s程度の物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂の剥離シート5でマーク全体を覆い、プレス機8に挟み、温度150℃、圧力300g/cmで加熱・加圧した(図1(b))。プレス機の名称や機能については本発明と直接関係がないためここでは省略する。前記操作によって剥離シートは図1(c)に示すようにマーク表面に圧着された。その後、被服を裏返してマークが接着されていない側から、温度140℃で加熱して接着剤を溶融し、剥離シートの端10を持って引き離した(図1(d)、(e))。その結果、この操作によってマーク2をきれいに剥離することができた。
【実施例2】
【0054】
本発明の方法として、剥離シート5と剥離液12を併用した例を説明する。
図2(a)〜(c)は実施例1と同様である。図2(d)には、N,N−ジメチルホルムアミドを70v/v%、ジメチルスルホキシドを30v/v%含む剥離液12をマークの裏面から塗布した状態が示されている。そして、被服を固定し剥離シートの端10を持って引き離した(図2(e)、(f))。その結果、この操作によってマークをきれいに剥離することができた。
【実施例3】
【0055】
本発明の方法のうち、剥離液を単独使用した例を説明する。
使用した剥離液には、N,N−ジメチルホルムアミドを70v/v%、ジメチルスルホキシドを30v/v%の有機溶媒全体に対して、l−メントールを5w/v%の割合で含んでいる。マークが熱接着された被服の裏面より剥離液を塗布して約4分程度静置した。ピンセットで丁寧にマークを摘みながら引き離すと、マーク部分がきれいに剥離することができた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の剥離方法によれば、合成樹脂製マークが熱接着された被服から、何らかの理由によってマークを剥がす必要が生じた場合に好適に利用される。本発明は、剥離シートおよび剥離液の少なくともどちらか一方を使用して、普段着、ユニフォーム、水着などの被服に熱接着されたマークを効率良く剥離する方法であり、従来の剥離作業に要する時間、費用を削減することができる。
【0057】
また、剥離シートおよび剥離液はそれぞれ個別に提供することで、作業者の希望に応じた剥離方法を採用すれば良く、多くの業者において広く活用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製マークが接着剤によって熱接着された被服から、マークを剥離する方法であって、
マーク表面に対して融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・sの物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂の剥離シートで被覆し、
100〜130℃の温度、300〜500g/cmの圧力で加圧して前記熱可塑性ポリウレタン樹脂とマーク表面とを圧着させ、
前記被服をマークが接着されていない側から、120〜185℃の温度で加熱して接着剤を溶融し、
前記剥離シートを引き離すことにより、該シートに圧着されたマークを被服から剥離することを特徴とする熱接着マークの剥離方法。
【請求項2】
前記剥離シートは、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が目開き0.1mm〜0.5mmのメッシュの繊維シートを貫通して形成されたシートであることを特徴とする請求項1記載の剥離方法。
【請求項3】
前記繊維シートを貫通して形成された剥離シートとマークとの間に、
少なくともマークの剥離開始部分を被覆するように、更に前記物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂製の剥離シートを介在させることを特徴とする請求項2に記載の剥離方法。
【請求項4】
前記繊維シートを貫通して形成された剥離シートと、前記物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂製の剥離シートとの間に、耐熱ウレタン樹脂層を介在させることを特徴とする請求項3に記載の剥離方法。
【請求項5】
マークと圧着する剥離シートの圧着面が、鏡面仕上げされていることを特徴とする請求項2または4のいずれかに記載の剥離方法。
【請求項6】
剥離シートを引き離した後、残留する前記接着剤を、沸点100℃以上の親水性有機溶媒を含む剥離液を塗布して、溶解または膨潤させ、除去することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱接着マークの剥離方法。
【請求項7】
合成樹脂製マークが接着剤によって熱接着された被服から、マークを剥離する方法であって、
マーク表面に対して融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・sの物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂の剥離シートで被覆し、
100〜130℃の温度、300〜500g/cmの圧力で加圧して前記熱可塑性ポリウレタン樹脂とマーク表面とを圧着させ、
前記被服をマークが接着されていない側から、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸2−エトキシエチルから選択される1種以上を30〜100v/v%の範囲で含有する剥離液を塗布し、
前記剥離シートを引き離すことにより、該シートに圧着されたマークを被服から剥離することを特徴とする熱接着マークの剥離方法。
【請求項8】
合成樹脂製マークが接着剤によって熱接着された被服から、マークを剥離する方法であって、
マーク表面に対して融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・sの物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂の剥離シートで被覆し、
120〜185℃の温度で加熱して前記熱可塑性ポリウレタン樹脂とマーク表面とを圧着させ、
前記剥離シートを引き離すことにより、マークの色彩を形成する層を剥離した後、
N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸2−エトキシエチルから選択される1種以上を30〜100v/v%の範囲で含有する剥離液を前記被服に残留するマークの接着剤に塗布して、除去する
ことを特徴とする熱接着マークの剥離方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の剥離方法に使用する剥離シートであって、
目開き0.1mm〜0.5mmのメッシュの繊維シートに、融点が125〜165℃、150℃における溶融粘度が8000〜15000Pa・sの物性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂を、温度150〜180℃、圧力400〜600g/cmで加熱・加圧して浸透させ、マークとの圧着表面に鏡面仕上げされた前記ポリウレタン樹脂層が形成されていることを特徴とする剥離シート。
【請求項10】
合成樹脂製マークが接着剤によって熱接着された被服から、マークを剥離する方法であって、
マークが接着されていない側から、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸2−エトキシエチルから選択される1種以上を30〜100v/v%の範囲で含有する剥離液を塗布して、2〜10分置いた後、
マーク部位を引き離すことにより、被服からマークを剥離することを特徴とする熱接着マークの剥離方法。
【請求項11】
請求項10に記載の剥離方法に使用する剥離液であって、
N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸2−エトキシエチルから選択される1種以上を30〜100v/v%の範囲で含有する熱接着マークの剥離液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−231222(P2011−231222A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102932(P2010−102932)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(500412644)有限会社サンショウ (12)
【Fターム(参考)】