説明

熱機関

流体入口及び流体出口を有する少なくとも1つの液封式回転ケーシング圧縮機(LRRCC)と、LRRCCの出口と流体連通する燃焼室と、流体入口及び流体出口を有し流体入口が燃焼室と連通する少なくとも1つの膨張機とを備える熱機関。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は熱機関に関し、より詳細には液封式回転ケーシング圧縮機(LRRCC)熱機関に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
熱機関は通常、ピストン駆動装置及びクランクシャフトを使用して直線運動を回転運動に変換する。航空機産業に普及しているガスタービンを自動車用小型エンジンに変換する試みが多数なされてきた。これらの試みでは、小型タービンは60,000rpm程度で回転するため、高額な変速機又は発電機が必要となり、このことは軸の稼動効率を下げる。
【0003】
液封式機械は、単純で信頼性が高く低騒音の圧縮機及び真空ポンプであり、ピストン及びクランクシャフトを用いずに軸の動作を径方向圧縮に変換する。液封式圧縮機における軸の動作の種々の成分の分析によれば、約50%近くが液封式−ケーシングの境界で消散することが示されている。LRRCCを用いると、境界摩擦は、摩擦軸受に置き換えられ、摩擦軸受は液封式の消散の10%未満である。これにより、LRRCCは圧縮機及び膨張機における競争相手となる。
【0004】
効率の高いLRRCC圧縮機/タービンは、欧州特許第0,804,687号から既知である。この引用により、この文献の教示内容を本明細書に組み込む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、LRRCC圧縮機/膨張機に基づく非常に効率の高い熱機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、流体入口及び流体出口を有する少なくとも1つの液封式回転ケーシング圧縮機(LRRCC)と、LRRCCの出口と流体連通する燃焼室と、流体入口及び流体出口を有し流体入口が燃焼室と連通する少なくとも1つの膨張機とを備えた熱機関が提供される。
【0007】
次に、本発明をより完全に理解できるように、以下の例示的な図を参照しながらいくつかの特定の好適な実施例とともに本発明を説明する。
【0008】
ここで、図を詳細に具体的に参照するが、これらの詳細は、例示として、本発明の好適な実施例の例示的な説明のためのみに示されているにすぎないこと、また、最も有用であると思われるために提示されており、本発明の原理及び概念的態様の説明を容易に理解されるためのものであることを強調しておく。この点に関して、本発明を、本発明の根本的な理解に必要である以上には本発明の構造的細部を詳細に示すことはせず、図面とともに説明を読めば、本発明のいくつかの形態がどのように実際に具現され得るかは当業者には明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[好適な実施例の詳細な説明]
図1には、LRRCC4及び膨張機6(例えばタービン)を備えた本発明による熱機関2が示されている。LRRCC4及び膨張機6は、この実施例に図示されるように同じ軸8に、又は別の軸に機械的に取り付けられる。膨張機6が様々な異なる速度で回転する場合には、変速機10(例えば、機械式変速機(ギア)又は電動変速機)が軸8に結合される。熱力学的に、LRRCC4からの出力12が導管14を介して熱交換器16を通って燃焼室20の入力18に至り、それにより、例えば液体又はガス燃料による燃焼が生じる。燃焼室20からの出力22は膨張機6の入力24に至る。膨張機6からの出力26は導管28を介して熱交換器16を通って大気に至る。また、LRRCC4を冷却するさらなる熱交換器30と、導管34を介して燃焼室20へ供給する燃料槽32とが設けられる。
【0010】
欧州特許第0,804,687号が教示するように、圧縮機4及び/又は膨張機6はロータコアとジャケットとを有し、当該ロータコアに取り付けられた上記ジャケットの偏心率はe≦(1−c)/3(式中、cは、コアの半径Cとジャケットの半径Rとの比、すなわちc=C/Rである)によって得られる。
【0011】
熱機関の操作は次ぎの通りである。流体をLRRCC4に導入し(矢印Aを参照)、その内部で圧縮し、燃焼室20に通し、そこで加熱し、膨張機6に通す。膨張機の出力26から排出された被加熱残留流体を任意選択的に熱交換器16に通し、LRRCC4の出力流体を加熱するのに有効に用いてから、LRRCC4の出力流体を燃焼室20に流入させてさらに加熱する。図2に見られるように、従来のガスタービンによって達成される有効仕事が領域Wで示され、本発明による熱機関を用いることによって達成される有効仕事はW+Wである。
【0012】
図3を参照すると、多段熱機関2の実際の構成を概略的に示す断面が描かれている。第1の段LRRCC4と、第1の段LRRCC4に接続されている第2の段LRRCC4’と、第1の段LRRCC4を冷却する熱交換器30とが示されている。第2の段LRRCC4’からの出力は熱交換器16の第1の部分16’と流体連通し、熱交換器16の出力は膨張機6に至る。LRRCC4の構成と同様に、第1の膨張機の後に第2の膨張機(不図示)を設けてもよい。熱交換機16の第2の部分16’’が膨張機6の出力に接続されている。燃焼室20は概略的に示されている。また、軸受36であって、これを中心として圧縮機4、4’、膨張機6、及び他の関連部材(熱交換器等)が回転するそれ自体既知の軸受36と、圧縮機4、4’及び膨張機6のケーシングを回転させるギア38、40とが示されている。ギア38、40は熱機関2の上側では分離しているように示されており、当然のことながら、下側では圧縮機及び膨張機の偏心により係合している。
【0013】
本発明は上記に例示した実施例の詳細に限定されず、また、本発明の精神又は本質的属性から逸脱しない限り他の特定の形態に具現されてもよいことは、当業者には明らかであろう。ゆえに、本発明の実施例は、全ての点において例示的として見なされるべきであり、限定的と見なされるべきではなく、本発明の範囲は上記の説明によるのではなく添付の特許請求の範囲によって示されるため、特許請求の範囲の均等物の意味及びその均等物の範囲に入る変更はすべて、本明細書に含まれると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による熱機関の概略図である。
【図2】通常設計及び本発明によるLRRCC熱機関の熱力学的グラフである。
【図3】図1の熱機関の好適な実施例の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口及び流体出口を有する少なくとも1つの液封式回転ケーシング圧縮機(LRRCC)と、
前記LRRCCの該出口と流体連通する燃焼室と、
流体入口及び流体出口を有し前記流体入口が前記燃焼室と連通した少なくとも1つの膨張機とを備えた熱機関。
【請求項2】
前記膨張機はタービンである請求項1に記載の熱機関。
【請求項3】
前記膨張機は液封式タービンである請求項1に記載の熱機関。
【請求項4】
前記タービンは液封式回転式ケーシングタービンである請求項3に記載の熱機関。
【請求項5】
流体を前記燃焼室中へ推進させる前に加熱するために該流体を該燃焼室へ向ける前記LRRCCの前記出口と、前記膨張機から排出された該流体の残留熱を受け取るために該膨張機の出口との間に熱力学的に位置する熱交換器をさらに備えた請求項1に記載の熱機関。
【請求項6】
前記LRRCCの少なくとも1つ又は前記膨張機は等温である請求項1に記載の熱機関。
【請求項7】
前記LRRCCを冷却する熱交換器をさらに備えた請求項1に記載の熱機関。
【請求項8】
前記熱交換器は回転式熱交換器である請求項6に記載の熱機関。
【請求項9】
少なくとも1つの液体/ガス及び/又は少なくとも1つの液体/空気回転式熱交換器をさらに備えた請求項1に記載の熱機関。
【請求項10】
前記LRRCC及び前記膨張機はそれぞれ、ロータコアとジャケットとを有し、該ロータコアに取り付けられたジャケットの偏心は以下の式:
e≦(1−c)/3
(式中、cは前記コアの半径Cとジャケットの半径Rとの比、すなわちc=C/Rである)によって得られる請求項1に記載の熱機関。
【請求項11】
前記圧縮機に動作可能に結合されて多段LRRCC熱機関を形成する少なくとも1つのさらなるLRRCCを備えた請求項1に記載の熱機関。
【請求項12】
前記LRRCC及び前記膨張機は、機械式変速機又は電動変速機に結合される1つ又は複数の軸に取り付けられている請求項10に記載の熱機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−508463(P2008−508463A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523238(P2007−523238)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000807
【国際公開番号】WO2006/011150
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(500199262)アガム エナージィ システムズ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】