説明

熱活性化装置およびプリンタ

【課題】一方の面に感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートを、感熱性粘着剤層の傷や剥離を抑えつつ円滑に搬送する。
【解決手段】熱活性化装置1が、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化用サーマルヘッド2と、それと対向する熱活性化用プラテンローラ3と、ガイド部材4と、感熱性粘着シート10を搬送する挿入ローラ5,6を有している。ガイド部材4はフッ素系樹脂からなるコーティング層4bを有し、熱活性化される前の感熱性粘着剤層がコーティング層4b上を摺動するようにして、感熱性粘着シート10を熱活性化用サーマルヘッド2および熱活性化用プラテンローラ3に向けて案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常時には非粘着性を示し、加熱されて熱活性化されると粘着性を発現する感熱性粘着剤層がシート状基材の片面に形成された感熱性粘着シートの熱活性化装置と、この熱活性化装置を備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、加熱されることによって粘着性を発現する感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートが実用化されている。このような感熱性粘着シートは、加熱前のシートは粘着性を持たないため取り扱いが容易であることや、剥離紙を必要としないため産業廃棄物が生じないことなどの利点を有している。このような感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層の粘着力を発現させるために、一般にサーマルプリンタの記録ヘッドとして用いられているサーマルヘッドを利用して加熱する場合がある。また、感熱性粘着シートの、感熱性粘着剤層の反対側の面に感熱性の記録可能層が設けられている場合には、同様なサーマルヘッドで記録と熱活性化を行えるという利点がある。
【0003】
このような感熱性粘着シートの記録可能層に所望の文字や数字や画像等を記録し、所定の長さに切断した上で、感熱性粘着剤層に粘着性を発現させて、例えば商品に貼り付けられて価格や商品名等を表示する粘着ラベルを製造するプリンタが開発されている(特許文献2〜4参照)。このプリンタは、記録可能層に所望の文字や数字や記号や画像を記録するための記録装置と、感熱性粘着剤層を熱活性化させて粘着性を発現させるための熱活性化装置とを含み、さらに、感熱性粘着シートを搬送する搬送機構や、感熱性粘着シートを所望の長さに切断してラベル状にするカッター機構を備えている。記録装置と熱活性化装置には、実質的に同じ構成のサーマルヘッドが備えられており、それぞれに対向して感熱性粘着シートを支持し搬送するプラテンローラが配置されている。
【特許文献1】特開平11−79152号公報
【特許文献2】特開2003−316265号公報
【特許文献3】特許第3329246号公報
【特許文献4】特開2004−10710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のプリンタには、感熱性粘着シートを搬送する搬送機構が設けられている。通常、上流側に設けられている記録装置にて記録が行われた後に、記録内容および記録状態を使用者が確認し易いように、記録面を上に向けた状態、すなわち感熱性粘着剤層が下方に向いた状態で感熱性粘着シートが搬送される。したがって、搬送機構の一部をなすガイド部材の上を感熱性粘着剤層が通過する。熱活性化用のサーマルヘッドの上流側では感熱性粘着剤層は粘着性を持たないため、ガイド部材に付着することはない。それでも、感熱性粘着剤層は摩擦抵抗が大きいため、搬送用のローラが空回りすることなく正しいピッチで搬送するには、大きな搬送力が必要になる。特に、加熱される前の軟らかい感熱性粘着剤層にガイド部材のエッジが食い込んで、大きな摺動負荷となり、感熱性粘着シートの搬送が困難になるおそれがある。
【0005】
また、加熱される前の感熱性粘着剤層は比較的脆いため、ガイド部材に接触して傷ついたり剥がれ落ちたりすることがある。特に、前記したように感熱性粘着剤層にガイド部材のエッジが食い込むと、感熱性粘着剤層が剥げ落ち易く、その結果、熱活性化装置において所望の粘着力および所望の粘着領域を得ることが困難になる。
【0006】
そこで本発明の目的は、一方の面に感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートを円滑に搬送するとともに、感熱性粘着剤層の傷や剥離を抑えることができる熱活性化装置と、それを含むプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱活性化装置は、シート状基材の一方の面に感熱性粘着剤層が形成されている感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化用サーマルヘッドと、熱活性化用サーマルヘッドと対向して配置され、熱活性化用サーマルヘッドとの間を感熱性粘着シートを通過させる熱活性化用プラテンと、少なくとも一部がフッ素系樹脂からなり、フッ素系樹脂からなる部分が感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層に当接して感熱性粘着シートを案内するガイド部材とを有する。この構成によると、感熱性粘着シートを、摺動性の良好なフッ素系樹脂上を円滑に進行させることができる。
【0008】
特に、ガイド部材の、感熱性粘着剤層に当接する部分が、エッジが存在しない形状に形成されていると、比較的軟らかい感熱性粘着剤層にエッジが食い込んで摺動負荷が大きくなったり感熱性粘着剤層が剥げたり損傷したりすることが防げる。
【0009】
ガイド部材は、表面の少なくとも一部にフッ素系樹脂がコーティングまたは塗布されたものであってもよく、または、表面の少なくとも一部にフッ素系樹脂からなるシートが貼り付けられたものであってもよい。あるいは、ガイド部材はフッ素系樹脂により成形されたものであってもよい。
【0010】
ガイド部材が、感熱性粘着シートの搬送方向に関して熱活性化用サーマルヘッドよりも上流側に配置されている場合に、前記した構成は特に効果的である。
【0011】
本発明のプリンタは、前記したいずれかの構成の熱活性化装置と、シート状基材の他方の面に形成されている記録可能層を加熱して記録する記録用サーマルヘッドと、記録用サーマルヘッドと対向して配置され、記録用サーマルヘッドとの間を感熱性粘着シートを通過させる記録用プラテンとを含む記録装置とを有する。記録装置は、感熱性粘着シートの搬送方向に関して熱活性化装置よりも上流側に配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、感熱性粘着シートを円滑に進行させることができる。さらに、ガイド部材の、感熱性粘着剤層に当接する部分を、エッジが存在しない形状に形成した場合には、摺動負荷が大きくなったり感熱性粘着剤層が剥げたり損傷したりすることが防げる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の熱活性化装置1を示す概略断面図である。本実施形態の熱活性化装置1は、幅方向に列をなすように配置された複数の発熱素子(図示せず)を有する熱活性化用サーマルヘッド2と、熱活性化用サーマルヘッド2に圧接する熱活性化用プラテンローラ3と、感熱性粘着シート10を案内するガイド部材4と、感熱性粘着シート10を間に挟んで熱活性化装置1の内部に搬入する1対の挿入ローラ(搬送ローラ)5,6を有している。
【0015】
熱活性化用サーマルヘッド2は、セラミック基板上に形成された複数の発熱抵抗体の表面に結晶化ガラスの保護膜が設けられている構成など、公知のサーマルプリンタの記録ヘッドと同様の構成である。この構成は、多数の小型の発熱素子(発熱抵抗体)を用いて加熱する構成であるため、単一の(またはごく少数の)大型の発熱素子を用いて加熱する構成に比べて、温度分布を広い範囲にわたって均一にし易いという利点がある。熱活性化用サーマルヘッド2は、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層10a(図3参照)に接するように位置し、この熱活性化用サーマルヘッド2には熱活性化用プラテンローラ3が圧接している。そして、感熱性粘着シート10を熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ3の間に導くためのガイド部材4と1対の挿入ローラ5,6が、熱活性化用サーマルヘッド2および熱活性化用プラテンローラ3の上流側に配置されている。
【0016】
本実施形態のガイド部材4は、図2に示すように、合成樹脂成形品4aとその表面のコーティング層4bからなり、コーティング層4bは、合成樹脂成形品4aの表面にフッ素系樹脂コーティング材がコーティングされたものである。このガイド部材4は、感熱性粘着シート10に接する可能性のある上面が、エッジ、すなわち角部や稜線部が存在しない形状、例えば、端部が丸みづけられた楕円状の断面形状を有する形態に形成されている。しかも、このガイド部材4は、前記したようにフッ素系樹脂コーティング材からなる滑らかなコーティング層4bを有している。
【0017】
本実施形態で用いられる感熱性粘着シート10は、例えば、図3に示すように、シート状基材10bの表面側に断熱層10cおよび感熱発色層(記録可能層)10dが形成され、裏面側に感熱性粘着剤層10aが形成された構成である。なお、感熱性粘着剤層10aは、熱可塑性樹脂や固体可塑性樹脂等を主成分とする感熱性粘着剤が塗布され乾燥されて固化されたものである。ただし、感熱性粘着シート10は、この構成に限定されるものではなく、感熱性粘着剤層10aを有していれば様々な変更が可能である。例えば、断熱層10cを有しない構成や、図示しないが、記録可能層10dの表面に保護層または有色記録層(予め記録されている層)が設けられている構成や、サーマルコート層が設けられている構成の感熱性粘着シート10も使用可能である。
【0018】
前記した構成の本実施形態の熱活性化装置によると、感熱性粘着シート10が1対の挿入ローラ5,6に駆動され、ガイド部材4に案内されて、熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ3の間に挿入される。そして、感熱性粘着シート10は、熱活性化用プラテンローラ3によって熱活性化用サーマルヘッド2に押し付けられつつ、熱活性化用サーマルヘッド2が作動して発熱することによって、それに接する感熱性粘着剤層10aが加熱されて熱活性化する。それと同時に熱活性化用プラテンローラ3が回転して感熱性粘着シート10が搬送されて、感熱性粘着剤層10aの全面が熱活性化用サーマルヘッド2に当接しながら通過することによって、感熱性粘着シート10の片面の感熱性粘着剤層10aに全面的に粘着性が発現する。
【0019】
このように感熱性粘着シート10が走行する際に、感熱性粘着剤層10aがガイド部材4の上面に接触しながら摺動しても、フッ素系樹脂コーティング材からなるコーティング層4bの表面が滑らかであるため、感熱性粘着シート10はあまり大きな抵抗を受けることなく円滑に移動できる。しかも、ガイド部材4のコーティング層4bの、感熱性粘着シート10と接触する可能性のある面にはエッジが存在しないため、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層10aが引っかかって欠けたり剥がれたりして損傷することがない。
【0020】
図1に2点鎖線にて概略的に示すように、矩形のガイド部材を設けた場合には、そのエッジEが感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層10aに引っかかって損傷させる可能性がある。しかし、それと同じ位置に本実施形態のガイド部材4を配置しても、エッジが存在しないため、感熱性粘着剤層10aを損傷させることはない。また、図1に示す構成では、感熱性粘着シート10の、挿入ローラ5,6によって保持される部分と、熱活性化用サーマルヘッド2および熱活性化用プラテンローラ3によって保持される部分との間が、下方に位置するガイド部材4に押し付けられるような配置になっている。このような構成において、本発明のガイド部材4による感熱性粘着剤層10aの損傷防止の効果は非常に高い。
【0021】
本発明の熱活性化装置は、図1に示した配置構成に限られず、例えば、図4に示すように、挿入ローラ5,6の上流側にもガイド部材4が配置されている構成にすることもできる。この構成では、感熱性粘着シート10は、熱活性化用サーマルヘッド2および熱活性化用プラテンローラ3の近傍に到達するまで、ほぼ水平に移動するため、ガイド部材4は、上下両面がほぼ水平である、断面形状が長円状である形態に形成されている。このガイド部材4も、前記したのと同様な効果を奏する。
【0022】
次に、以上説明した本発明の熱活性化装置1を組み込んだプリンタについて、図5を参照して説明する。
【0023】
図5に示す感熱性粘着シート用プリンタの基本構成について簡単に説明すると、ロール状に巻回された感熱性粘着シート10を保持するロール収納機構13と、感熱性粘着シート10の記録可能層10d(図3参照)に記録する記録装置14と、感熱性粘着シート10を所定の長さに切断するカッター機構15と、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層10a(図3参照)を熱活性化させる、前記した図4に示す構成の熱活性化装置1が設けられている。
【0024】
ロール収納機構13は、感熱性粘着シート10のロール体を回転自在に保持するものである。
【0025】
記録装置14は、ドット記録が可能なように幅方向(図5に垂直な方向)に並べて配設された、比較的小さな抵抗体からなる複数の発熱素子を有する記録用サーマルヘッド17と、記録用サーマルヘッド17に圧接される記録用プラテンローラ18から構成されている。記録用サーマルヘッド17は、ロール収納機構13から送られる感熱性粘着シート10の記録可能層10dに接するように位置し、この記録用サーマルヘッド17に記録用プラテンローラ18が圧接している。記録用サーマルヘッド17は、前記した熱活性化装置1の熱活性化用サーマルヘッド2と同様の構成のもの、すなわち、セラミック基板上に形成された複数の発熱抵抗体の表面に結晶化ガラスの保護膜が設けられている構成など、公知のサーマルプリンタの記録ヘッドと同様の構成である。このように、記録用サーマルヘッド17と熱活性化用サーマルヘッド2を同じ構成のものにすることにより、部品を共通化してコストの低減を図ることができる。
【0026】
カッター機構15は、記録装置14によって記録が行われた感熱性粘着シート10を所定の長さで切断してラベル状にするためのものであり、電動モータ等の駆動源(図示せず)によって作動される可動刃15bと、それに対向する固定刃15a等から構成されている。さらに、このカッター機構15には、1対の刃15a,15bに加えて、感熱性粘着シート10をカッター機構15から排出する1対の送出ローラ7,8が設けられている。感熱性粘着シート10は、この送出ローラ7,8の間に挟まれて、後段の熱活性化装置1に送られる。なお、このような送出ローラ7,8を設けずに、記録装置14の記録用プラテンローラ18による搬送力を利用して、感熱性粘着シート10がカッター機構15から熱活性化装置1へ送られるように構成してもよい。
【0027】
このカッター機構15の下流側に熱活性化装置1が設けられている。熱活性化装置1は、前記した通り、熱活性化用サーマルヘッド2と、熱活性化用プラテンローラ3と、ガイド部材4と、挿入ローラ5,6を有し、さらに、熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ3の間を通過した感熱性粘着シート10を、プリンタ外部へ排出するための排出ローラ19および排出ガイド20が設けられている。
【0028】
カッター機構15の送出ローラ7,8と熱活性化装置1の挿入ローラ5,6の回転を調整することによって、それらの間で感熱性粘着シート10を弛ませることができる構成が設けられている。この点について説明すると、刃15a,15bによって感熱性粘着シート10を切断する際に、切断される部分が停止していないと切断動作が行えない(移動中の感熱性粘着シート10を刃15a,15bによって円滑に切断することは不可能である)。一方、感熱性粘着シート10全体の搬送を停止してしまうと、熱活性化装置1において熱活性化させられた感熱性粘着剤層10aが停止したまま熱活性化用サーマルヘッド2に貼り付いて移動不能になってしまう。従って、感熱性粘着シート10が熱活性化用サーマルヘッド2に対向する位置に存在する時には、感熱性粘着剤層10aが熱活性化用サーマルヘッド2に貼り付いてしまわない程度の速度で感熱性粘着シート10を移動させ続けなければならず、一方、熱活性化用サーマルヘッド2のうちの切断すべき部分が刃15a,15bに対向する位置に到達したら、その部分を一時停止して切断を行わなければならない。
【0029】
そこで、熱活性化に先立って、感熱性粘着シート10の先端が熱活性化用サーマルヘッド2まで到達していない時点で、挿入ローラ5,6の回転を送出ローラ7,8の回転に比べて遅くすることによって、両者の間で感熱性粘着シート10を弛ませる。こうすることによって、その後に、刃15a,15bに対向する位置では感熱性粘着シート10を部分的に一時停止させつつ、熱活性化装置1内では停止することなく搬送し続けることを可能にしている。具体的には、予め、送出ローラ7,8と挿入ローラ5,6の回転速度差を設けて弛み部を形成した後に、挿入ローラ5,6を通常の回転速度で回転させて、挿入ローラ5,6の下流側にある熱活性化装置1によって熱活性化処理を行う。この途中で、感熱性粘着シート10の切断すべき位置が刃15a,15bに対向する位置に到達したら、送出ローラ7,8を一時停止させて刃15a,15bによって円滑に切断を行う。このとき、送出ローラ7,8は停止しているが、感熱性粘着シート10のうち挿入ローラ5,6の下流側にある部分は、弛みの分だけ移動し続けることができる。こうすることによって、感熱性粘着シート10が熱活性化用サーマルヘッド2に貼り付いて移動不能になることを防ぎつつ、感熱性粘着シート10の所定の部分をカッター機構15によって円滑に切断することができる。弛みの大きさは、弛みが完全に解消する前に、切断が完了して送出ローラ7,8の回転を再開させて挿入ローラ5,6と同時に回転させることができる程度に設定される。ガイド部材4は、弛み方向を規制するとともに、弛み部分から挿入ローラ5,6の方へ感熱性粘着シート10を円滑に進行させるように働く。
【0030】
なお、前記した説明では、予め、送出ローラ7,8と挿入ローラ5,6の回転速度差を設けて弛み部を形成しているが、感熱性粘着シート10の先端が熱活性化用サーマルヘッド2まで到達していない時点で挿入ローラ5,6を一旦停止して弛み部を形成することもできる。いずれの場合にも、予め弛み部を形成しておくことによって、感熱性粘着シート10の切断すべき位置が刃15a,15bに対向する位置に到達した時点で、即座に送出ローラ7,8を停止して刃15a,15bによる切断を行うことができる。この切断のタイミングは、熱活性化動作等とは無関係に全く自由に設定できる。
【0031】
また、このプリンタには、記録装置14の入口や熱活性化装置1の熱活性化用サーマルヘッド2の手前で感熱性粘着シート10の有無を検出する光センサ等の検出器S1,S2が設けられている。さらに、このプリンタは、図示しないが、検出器S1,S2と信号の送受信が可能で、搬送機構を構成する各ローラ3,5,6,7,8,18,19と可動刃15bと記録用サーマルヘッド17と熱活性化用サーマルヘッド2等を駆動し、それらの動作を制御する制御装置を有している。
【0032】
このような構成のプリンタを用いて、感熱性粘着シート10からなる所望の粘着ラベルを製造する方法について説明する。
【0033】
まず、ロール収納機構13から引き出した感熱性粘着シート10を、記録装置14の記録用サーマルヘッド17と記録用プラテンローラ18の間に挿入する。制御装置から記録用サーマルヘッド17に記録信号が供給されて、記録用サーマルヘッド17の複数の発熱素子が適宜のタイミングで選択的に駆動されて発熱して、感熱性粘着シート10の記録可能層10dに記録を行う。この記録用サーマルヘッド17の駆動と同期して記録用プラテンローラ18が駆動されて回転し、感熱性粘着シート10を、記録用サーマルヘッド17の発熱素子が並んでいる方向に交差する方向、例えば発熱素子の列に対して垂直な方向に搬送する。具体的には、記録用サーマルヘッド17による1ライン分の記録と、記録用プラテンローラ18による感熱性粘着シート10の所定量(1ライン分)の搬送とが交互に繰り返されることにより、感熱性粘着シート10に所望の文字、数字、記号、画像等の記録が行われる。
【0034】
このようにして記録された感熱性粘着シート10は、カッター機構15の可動刃15bと固定刃15aの間を通過して、送出ローラ7,8に至る。そして、前記したように、感熱性粘着シート10の先端が熱活性化用サーマルヘッド2まで到達していない時点で、熱活性化装置1の挿入ローラ5,6を一時停止し、または送出ローラ7,8に比べて低速にして、感熱性粘着シート10を必要量だけ弛ませる。
【0035】
次に、挿入ローラ5,6を回転させて、前記のようにして必要な記録が施された感熱性粘着シート10を熱活性化装置1に送る。そして、熱活性化装置1において、熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ3の間に感熱性粘着シート10を挟んだ状態で、制御装置が熱活性化用サーマルヘッド2を駆動して、それに接する感熱性粘着剤層10aを加熱して熱活性化させる。同時に、熱活性化用プラテンローラ3を回転させて感熱性粘着シート10を送り、感熱性粘着剤層10aの全面を熱活性化用サーマルヘッド2に当接させながらそれを通過させる。
【0036】
このように感熱性粘着シート10の搬送と熱活性化を行っている最中に、感熱性粘着シート10の切断すべき位置が刃15a,15bに対向する位置に到達したら、即座に送出ローラ7,8を停止して刃15a,15bによる切断を行う。この時、挿入ローラ5,6は回転し続け、感熱性粘着シート10の、送出ローラ7,8の下流側の部分は、弛み部を徐々に解消させながら、停止することなく移動し続ける。
【0037】
このようにして、片面に所望の記録が施され反対面に粘着性が発現し、所定の長さに切断された、感熱性粘着シート10からなる粘着ラベルが完成する。そして、排出ローラ19を回転させて、ラベル状の感熱性粘着シート10を排出ガイド20によって案内しつつプリンタの外部へ排出する。
【0038】
このプリンタにおいては、記録装置14によって記録を行った後に、記録内容および記録状態を使用者が確認し易いように、記録部分、すなわち記録可能層10dを上方に向けて感熱性粘着シート10を搬送するのが好ましい。そのために、感熱性粘着剤層10aがガイド部材4上を摺動するが、ガイド部材4は、フッ素系樹脂コーティング材からなるコーティング層4bを有しているため、摩擦抵抗が小さく、円滑に摺動することができる。特に、ガイド部材4のコーティング層4bの、感熱性粘着剤層10aと接触する部分にはエッジが存在しないため、エッジが感熱性粘着剤層10aに食い込んで摺動負荷が大きくなることはない。また、コーティング層4bの、感熱性粘着剤層10aと接触する部分にエッジが存在しないことによって、感熱性粘着剤層10aがエッジに引っかかって欠けたり剥がれたりして損傷することがない。
【0039】
以上説明したように、ガイド部材4のフッ素系樹脂コーティング材からなるコーティング層4bによって、感熱性粘着シート10を正しいピッチで円滑に搬送することができる。さらに、感熱性粘着剤層10aが傷ついたり剥がれたりして所望の粘着部分を形成できなくなることが防げる。
【0040】
本発明では、前記したように、ガイド部材4にフッ素系樹脂コーティング材からなるコーティング層4bが形成されている。これに対し、コーティング材の一例として用いられることがあるシリコン系樹脂からなるコーティング層について検討する。シリコン系樹脂からなるコーティング層は、粘着力の高い物質に対する非接着性を有している。従って、例えば熱活性化後の感熱性粘着剤層10aに貼り付くことが防止できるため、熱活性化用サーマルヘッド2の下流側に位置する部材にシリコン系樹脂からなるコーティング層を形成することは効果的であると考えられる。しかしながら、本発明で問題にしているのは、熱活性化用サーマルヘッド2の上流側における感熱性粘着シート10の搬送性、すなわち、熱活性化前の感熱性粘着剤層10aの摩擦抵抗である。熱活性化前の感熱性粘着剤層10aは粘着力が発現していないため、当然のことながら、シリコン系樹脂からなるコーティング層による貼り付き防止効果は殆ど無意味である。むしろ、シリコン系樹脂からなるコーティング層が、熱活性化前の感熱性粘着剤層10aに対する摩擦抵抗を増大させて、熱活性化用サーマルヘッド2の上流側における感熱性粘着シート10の円滑な搬送を阻害する危険性すらある。これに対して、前記した実施形態では、フッ素系樹脂コーティング材からなるコーティング層4bがガイド部材4に設けられている。このフッ素系樹脂コーティング材からなるコーティング層4bは、熱活性化前の感熱性粘着剤層10aに対する摩擦抵抗を小さくし、熱活性化用サーマルヘッド2の上流側における感熱性粘着シート10の円滑な搬送を達成する上で非常に効果的である。このように本発明では、熱活性化用サーマルヘッド2の上流側に配置するのに最適なガイド部材4を提供するものである。そして、図1,4に示す位置に限られず、熱活性化用サーマルヘッド2の上流側であって、搬送される感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層10a側に当たる様々な位置に配置されている複数のガイド部材4を、全て前記したのと同様な本発明の構成とすることが好ましい。すなわち、図1に示すように、挿入ローラ5,6と、熱活性化用サーマルヘッド2および熱活性化用プラテンローラ3との間のガイド部材4はもちろん、記録装置14やカッター機構15の内部に配置されているガイド部材も本発明の構成とすることが好ましい。
【0041】
なお、以上説明した実施形態では、フッ素系樹脂コーティング材からなるコーティング層4bを有するガイド部材4を設けたが、合成樹脂成形品4aの表面にフッ素系樹脂からなる塗料を塗布した構成(図示せず)や、フッ素系樹脂からなるシートが貼り付けられた構成(図示せず)であってもよい。また、図6に示すように、合成樹脂成形品自体をフッ素系樹脂により形成し、コーティング層を持たない構成のガイド部材9によっても、前記したのと同様の効果が得られる。
【0042】
本発明のガイド部材4は、前記した形状に限定されるわけではない。例えば、図7(a)に示すような、断面形状が円形である円柱状の複数のガイド部材4や、図7(b)に示すような前後の端部が下向きに曲げられた形状のガイド部材4など、感熱性粘着剤層10aに接触する可能性のある部分にエッジが存在しない形状の様々なガイド部材4が好適に使用できる。なお、詳述しないが、これらのガイド部材4も、少なくとも感熱性粘着剤層10aに接触する表面がフッ素系樹脂で構成されている。また、本発明は、熱活性化装置1のガイド部材以外の構成について限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態の熱活性化装置を示す全体構成図である。
【図2】図1に示す熱活性化装置のガイド部材を示す拡大断面図である。
【図3】本発明において用いられる感熱性粘着シートの一例を示す拡大断面図である。
【図4】熱活性化装置の他の例を示す全体構成図である。
【図5】図4に示す熱活性化装置を含むプリンタを示す全体構成図である。
【図6】ガイド部材の他の例を示す拡大断面図である。
【図7】ガイド部材の他の例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 熱活性化装置
2 熱活性化用サーマルヘッド
3 熱活性化用プラテンローラ
4 ガイド部材
4a 合成樹脂成形品
4b コーティング層
5,6 挿入ローラ
7,8 送出ローラ
9 ガイド部材
10 感熱性粘着シート
10a 感熱性粘着剤層
10b シート状基材
10c 断熱層
10d 記録可能層
13 ロール収納機構
14 記録装置
15 カッター機構
15a 固定刃
15b 可動刃
17 記録用サーマルヘッド
18 記録用プラテンローラ
19 排出ローラ
20 排出ガイド
S1,S2 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の一方の面に感熱性粘着剤層が形成されている感熱性粘着シートの前記感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化用サーマルヘッドと、
前記熱活性化用サーマルヘッドと対向して配置され、前記熱活性化用サーマルヘッドとの間を前記感熱性粘着シートを通過させる熱活性化用プラテンと、
少なくとも一部がフッ素系樹脂からなり、該フッ素系樹脂からなる部分が前記感熱性粘着シートの前記感熱性粘着剤層に当接して該感熱性粘着シートを案内するガイド部材と
を有する熱活性化装置。
【請求項2】
前記ガイド部材の、前記感熱性粘着剤層に当接する部分は、エッジが存在しない形状に形成されている、請求項1に記載の熱活性化装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、表面の少なくとも一部に前記フッ素系樹脂がコーティングまたは塗布されたものである、請求項1または2に記載の熱活性化装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、表面の少なくとも一部に前記フッ素系樹脂からなるシートが貼り付けられたものである、請求項1または2に記載の熱活性化装置。
【請求項5】
前記ガイド部材は前記フッ素系樹脂により成形されたものである、請求項1または2に記載の熱活性化装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、前記感熱性粘着シートの搬送方向に関して前記熱活性化用サーマルヘッドよりも上流側に配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱活性化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱活性化装置と、
シート状基材の他方の面に形成されている記録可能層を加熱して記録する記録用サーマルヘッドと、前記記録用サーマルヘッドと対向して配置され、前記記録用サーマルヘッドとの間を前記感熱性粘着シートを通過させる記録用プラテンとを含む記録装置と
を有するプリンタ。
【請求項8】
前記記録装置は、前記感熱性粘着シートの搬送方向に関して前記熱活性化装置よりも上流側に配置されている、請求項7に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−69977(P2007−69977A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262301(P2005−262301)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】