説明

熱活性化装置およびプリンタ

【課題】感熱性粘着シートを、感熱性粘着剤層に非活性部分が存在する場合にも熱活性化用サーマルヘッドに対向する位置で停滞させずに円滑に搬送する。
【解決手段】熱活性化装置1が、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化用サーマルヘッド2と、それと対向する熱活性化用プラテンローラ3を有している。熱活性化用プラテンローラ3は、ゴム硬度が30〜50度のフロロシリコンゴムからなり、十点平均粗さRzが10〜15μmである。そして、熱活性化サーマルヘッド2がばね4によって付勢されることにより、相対的に、熱活性化用プラテンローラ3は5〜10gf/mm2の圧力で熱活性化用サーマルヘッド2に当接している。感熱性粘着シート10は、この熱活性化用プラテンローラ3と熱活性化用サーマルヘッド2の間を搬送されつつ加熱されて感熱性粘着剤層が熱活性化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常時には非粘着性を示し、加熱されて熱活性化されると粘着性を発現する感熱性粘着剤層がシート状基材の片面に形成された感熱性粘着シートの熱活性化装置と、この熱活性化装置を備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、加熱されることによって粘着性を発現する感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートが実用化されている。このような感熱性粘着シートは、加熱前のシートは粘着性を持たないため取り扱いが容易であることや、剥離紙を必要としないため産業廃棄物が生じないことなどの利点を有している。このような感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層の粘着力を発現させるために、一般にサーマルプリンタの記録ヘッドとして用いられているサーマルヘッドを利用して加熱する場合がある。また、感熱性粘着シートの、感熱性粘着剤層の反対側の面に感熱性の記録可能層が設けられている場合には、同様なサーマルヘッドで記録と熱活性化を行えるという利点がある。
【0003】
なお、通常のサーマルプリンタにおいてサーマルヘッドと対向して設けられているプラテンローラは、永久ひずみの小さいジメチルシリコンゴムからなる。ジメチルシリコンゴムはゴム硬度が30〜60度程度であり、記録時に記録媒体の下敷きとしてそれを支持するためには、ある程度ゴムが潰れることが好ましく、そのために、20gf/mm2以上の比較的大きい圧力でサーマルヘッドに対して当接させられる。さらに、ゴム硬度が高ければ高いほど、ゴムの潰れ量を確保するために、プラテンローラをサーマルヘッドに当接させる圧力が大きく設定される。このような従来のサーマルプリンタと同様なサーマルヘッドおよびプラテンローラの構成が、そのまま熱活性化装置に流用されることが多い。
【0004】
感熱性粘着シートの記録可能層に所望の文字や数字や画像等を記録し、所定の長さに切断した上で、感熱性粘着剤層に粘着性を発現させて、例えば商品に貼り付けられて価格や商品名等を表示する粘着ラベルを製造するプリンタが開発されている(特許文献2〜4参照)。このようなプリンタは、記録可能層に所望の文字や数字や記号や画像を記録するための記録装置と、感熱性粘着剤層を熱活性化させて粘着性を発現させるための熱活性化装置とを含み、さらに、感熱性粘着シートを搬送する搬送機構や、感熱性粘着シートを所望の長さに切断してラベル状にするカッター機構を備えている。記録装置と熱活性化装置には、実質的に同じ構成のサーマルヘッドが備えられており、それぞれに対向して感熱性粘着シートを支持し搬送するプラテンローラが配置されている。
【特許文献1】特開平11−79152号公報
【特許文献2】特開2003−316265号公報
【特許文献3】特許第3329246号公報
【特許文献4】特開2004−10710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した熱活性化装置においては、感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層をサーマルヘッドによって加熱することにより粘着性を発現させるのと同時に、この感熱性粘着シートをプラテンローラの回転によって搬送する必要がある。しかし、感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層に、加熱されない部分が存在する場合に、非加熱部分の摩擦抵抗が大きく、搬送不良が生じることがある。すなわち、感熱性粘着剤層の加熱部分(活性化した部分)は加熱直後には流動性を有しているので、サーマルヘッドの表面上で滑りを生じて円滑に移動できるが、非加熱部分(非活性部分)は滑りが悪く、サーマルヘッドの表面と擦れて搬送不良を生じる。例えば、感熱性粘着シートの長手方向(搬送方向)に沿って活性化した部分と非活性部分が並んで位置している場合には、活性化した部分に比べて非活性部分の速度が遅くなって停滞するため斜行(スキュー)を生じ易く、また、感熱性粘着シートの幅方向(搬送方向に交差する方向)に沿って活性化した部分と非活性部分が並んで位置している場合には、非活性部分がサーマルヘッドに当接する時に、その部分だけ速度が遅くなって停滞するためジャミングを生じ易い。特に、この傾向は、高温かつ高湿の環境下では、固まっている感熱性粘着剤が溶け出すために顕著になる。
【0006】
このように感熱性粘着剤層の非活性部分の滑りが悪く、プラテンローラが空回りして感熱性粘着シートが停滞することは、要するに、非活性部分とサーマルヘッドの間の摩擦抵抗が、感熱性粘着層と反対側の面(記録可能層)とプラテンローラの間の摩擦抵抗よりも大きいことに起因する。
【0007】
特に、前記した従来のサーマルプリンタの構成は、感熱性粘着剤層を持たないシートを搬送することを前提としたものであり、これをそのまま熱活性化装置に流用した場合に、前記した感熱性粘着シートの搬送不良の問題が生じ易い。すなわち、プラテンローラをサーマルプリンタに対して当接させる圧力の大きさにかかわらず、ほぼ全範囲にわたって、感熱性粘着剤層の非活性部分とサーマルヘッドの間に働く摩擦力が、記録可能層とジメチルシリコンゴム(プラテンローラ)の間の摩擦力よりも大きいため、プラテンローラの回転によって、感熱性粘着剤層の非活性部分をサーマルヘッドの表面上で停滞させずに円滑に搬送することが非常に困難である。
【0008】
そこで本発明の目的は、一方の面に感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートを、感熱性粘着剤層中に非活性部分が存在していても、サーマルヘッドの表面上で停滞することなく円滑に搬送することができる熱活性化装置と、それを含むプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱活性化装置は、シート状基材の一方の面に感熱性粘着剤層が形成されている感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化用サーマルヘッドと、熱活性化用サーマルヘッドと対向して配置され、熱活性化用サーマルヘッドに対して、一般的なサーマルプリンタ(記録装置)において記録用プラテンローラが記録用サーマルヘッドに当接する圧力と比較して小さい5〜10gf/mm2の圧力で当接し、かつ熱活性化用サーマルヘッドとの間を感熱性粘着シートを通過させて搬送する、フロロシリコンゴムを主成分とする熱活性化用プラテンローラとを有することを特徴とする。
【0010】
この構成によると、感熱性粘着シートの感熱性粘着剤層(特に非活性部分)が熱活性化用サーマルヘッドの表面上で停滞することが防げ、感熱性粘着シートを円滑に搬送することができる。特に、感熱性粘着剤が溶け出す高温かつ高湿の環境下でも、感熱性粘着シートを詰まることなく搬送できる。また、感熱性粘着剤層の熱活性化状態にあまり左右されずに円滑に感熱性粘着シートを搬送できるため、部分的に粘着性を発現させるような場合でも、斜行(スキュー)を生じるおそれが小さい。
【0011】
さらに、熱活性化用プラテンローラは、十点平均粗さRzが10〜15μmの表面粗さを有することが好ましい。その場合、熱活性化用サーマルヘッドと熱活性化用プラテンローラの間に感熱性粘着シートが存在しないときに、両者が貼り付いてしまうことが防げる。
【0012】
また、熱活性化用プラテンローラは30〜50度のゴム硬度を有することが好ましい。その場合、熱活性化用プラテンローラが適切なゴム潰れ量を持つ適切な下敷きとして機能して、良好な熱活性化を行える。
【0013】
本発明のプリンタは、前記したいずれかの構成の熱活性化装置と、シート状基材の他方の面に形成されている記録可能層を加熱して記録する記録用サーマルヘッドと記録用サーマルヘッドと対向して配置され記録用サーマルヘッドとの間を感熱性粘着シートを通過させる記録用プラテンローラとを含む記録装置と、を有することを特徴とする。
【0014】
このプリンタによると、記録装置の記録用サーマルヘッドおよび記録用プラテンローラによって、感熱性粘着シートの記録可能層への良好な記録と良好な搬送が実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、熱活性化用プラテンローラの材質と熱活性化用サーマルヘッドに対する当接圧力が適切に設定されているため、熱活性化装置において、感熱性粘着シートが熱活性化用サーマルヘッドの表面上で停滞せず、円滑に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の熱活性化装置1の要部を示す概略正面図である。本実施形態の熱活性化装置1は、幅方向に列をなすように配置された複数の発熱素子(図示せず)を有する熱活性化用サーマルヘッド2と、熱活性化用サーマルヘッド2に圧接する熱活性化用プラテンローラ3と、ばね4を有している。熱活性化用サーマルヘッド2は、支持部材5の軸5aを中心として回転可能に支持されており、ばね4によって熱活性化用プラテンローラ3に向けて付勢されている。それによって、熱活性化用プラテンローラ3は、相対的に、5〜10gf/mm2の圧力で熱活性化用サーマルヘッド2に当接している。
【0018】
熱活性化用サーマルヘッド2は、セラミック基板上に形成された複数の発熱抵抗体の表面に結晶化ガラスの保護膜が設けられている構成など、公知のサーマルプリンタの記録ヘッドと同様の構成である。この構成は、多数の小型の発熱素子(発熱抵抗体)を用いて加熱する構成であるため、単一の(またはごく少数の)大型の発熱素子を用いて加熱する構成に比べて、温度分布を広い範囲にわたって均一にし易いという利点がある。熱活性化用サーマルヘッド2は、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層10a(図2参照)に接するように位置している。
【0019】
熱活性化用プラテンローラ3は、前記した通り、熱活性化用サーマルヘッド2に対して5〜10gf/mm2の圧力で圧接している。この熱活性化用プラテンローラ3は、ゴム硬度が30〜50度のフロロシリコンゴムから構成されており、十点平均粗さRzが10〜15μmの表面粗さを有している。
【0020】
本実施形態で用いられる感熱性粘着シート10は、例えば、図2に示すように、シート状基材10bの表面側に断熱層10cおよび感熱発色層(記録可能層)10dが形成され、裏面側に感熱性粘着剤層10aが形成された構成である。なお、感熱性粘着剤層10aは、熱可塑性樹脂や固体可塑性樹脂等を主成分とする感熱性粘着剤が塗布され乾燥されて固化されたものである。ただし、感熱性粘着シート10は、この構成に限定されるものではなく、感熱性粘着剤層10aを有していれば様々な変更が可能である。例えば、断熱層10cを有しない構成や、図示しないが、記録可能層10dの表面に保護層または有色記録層(予め記録されている層)が設けられている構成や、サーマルコート層が設けられている構成の感熱性粘着シート10も使用可能である。
【0021】
前記した構成の本実施形態の熱活性化装置1によると、感熱性粘着シート10が熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ3の間に挿入され、熱活性化用プラテンローラ3によって熱活性化用サーマルヘッド2に押し付けられつつ、熱活性化用サーマルヘッド2が作動して発熱することによって、それに接する感熱性粘着剤層10aが加熱されて熱活性化する。それと同時に熱活性化用プラテンローラ3が回転して感熱性粘着シート10が搬送されて、感熱性粘着剤層10aが熱活性化用サーマルヘッド2に当接しながら通過することによって、感熱性粘着シート10の片面の感熱性粘着剤層10aに、全長にわたって粘着性を発現させることができる。
【0022】
このように感熱性粘着シート10を、感熱性粘着剤層10aに粘着性を発現させながら搬送する際に、感熱性粘着剤層10a中に非加熱部分、すなわち非活性部分が存在していても、本実施形態では、感熱性粘着剤層10aの非活性部分が熱活性化用サーマルヘッド2の表面上で速度が遅くなって停滞することなく、感熱性粘着シート10を円滑に搬送できる。この点について以下に説明する。本実施形態の熱活性化用プラテンローラ3は、ジメチルシリコンゴムよりも摩擦係数が大きくフッ素ゴムよりも粘着性が小さいフロロシリコンゴムからなる。そして、前記したようにばね4によって熱活性化用サーマルヘッド2が熱活性化用プラテンローラ3に向けて付勢され、相対的に、熱活性化用プラテンローラ3は5〜10gf/mm2の圧力で熱活性化用サーマルヘッド2に当接している。
【0023】
これによって、感熱性粘着剤層10aの非活性部分と熱活性化用サーマルヘッド2の間の摩擦力FAよりも、記録可能層10dと熱活性化用プラテンローラ3の間の摩擦力FBの方が大きくなる。その具体的な例を、図3のグラフに示している。このグラフは、横軸が荷重W(2つの部材が互いに当接する圧力)、縦軸が2つの部材の間の摩擦力Fを表している。一般に、剛体同士(例えばサーマルヘッドとシート材)の間の摩擦力はF=kW(kは摩擦係数)で表され、ゴムと剛体(例えばゴム製のプラテンローラとシート材)の間の摩擦力はF=kW2/3で表される。なお、荷重Wに関しては、本実施形態の場合、薄い感熱性粘着シート10が圧力の大きさを変動させることはないので、プラテンローラがサーマルヘッドに当接する圧力と等しいと考えて構わない。
【0024】
図3に示す例の場合、熱活性化用プラテンローラ3が熱活性化用サーマルヘッド2に当接する圧力Wが、およそ10gf/mm2を境にして、それ以下の場合には、感熱性粘着剤層10aの非活性部分と熱活性化用サーマルヘッド2の間の摩擦力FA(線Aにて図示)よりも、フロロシリコンゴムからなる熱活性化用プラテンローラ3と記録可能層10dの間の摩擦力FB(線Bにて図示)の方が大きくなる。一方、圧力が10gf/mm2よりも大きい場合には、感熱性粘着剤層10aの非活性部分と熱活性化用サーマルヘッド2の間の摩擦力FA(線A)よりも、記録可能層10dと熱活性化用プラテンローラ3の間の摩擦力FB(線B)の方が小さくなる。本実施形態によると、フロロシリコンゴムからなる熱活性化用プラテンローラ3を10gf/mm2以下の圧力で熱活性化用サーマルヘッド2に当接させる構成であるため、感熱性粘着シート10が熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ3の間に挿入されて搬送される際には、感熱性粘着剤層10aの非活性部分と熱活性化用サーマルヘッド2との摩擦力FAが比較的大きいにもかかわらず、それよりも強い力FBで、感熱性粘着シート10は熱活性化用プラテンローラ3によって移動させられる。従って、搬送不良が生じることはなく、感熱性粘着シート10は熱活性化用プラテンローラ3に伴って円滑に移動する。なお、図3のグラフは一例であり、圧力以外の様々な条件(後述するプラテンローラの表面粗さやゴム硬度など)に応じて変化することが考えられるため、その都度の条件に応じて、摩擦力の大小の境界点が10gf/mm2から変動することもあると考えられる。
【0025】
図3のグラフには、対比のために、サーマルプリンタにおける一般的なプラテンローラの材質であるジメチルシリコンゴムと記録可能層との間の摩擦力(線Dにて図示)についても示している。このグラフを参照すると、従来のサーマルプリンタのようにジメチルシリコンゴムからなるプラテンローラを用いる場合、ほとんどの荷重Wの範囲において感熱性粘着剤層と熱活性化用サーマルヘッドの間の摩擦力(線A)の方が、ジメチルシリコンゴムからなる熱活性化用プラテンローラと記録可能層の間の摩擦力(線D)よりも大きい。熱活性化用プラテンローラが熱活性化用サーマルヘッドに当接する圧力がごく小さいときには、感熱性粘着剤層と熱活性化用サーマルヘッドの間の摩擦力(線A)の方が、ジメチルシリコンゴムからなる熱活性化用プラテンローラと記録可能層の間の摩擦力(線D)よりも小さい領域もある。しかし、この圧力が5gf/mm2よりも小さいと、プラテンローラが、感熱性粘着剤層の熱活性化時の下敷きとして十分に機能せず、良好な熱活性化が行えないので現実的でない。従って、熱活性化用プラテンローラが回転しても空回りし、感熱性粘着剤層の非活性部分は熱活性化用サーマルヘッドの表面上で停滞して搬送不良を引き起こす。これに対して、本実施形態では、前記した通り、フロロシリコンゴムからなる熱活性化用プラテンローラ3を用い、それが熱活性化用サーマルヘッド2に当接する圧力を5〜10gf/mm2に設定することにより、ジメチルシリコンゴムからなる熱活性化用プラテンローラを用いる場合に生じるこのような搬送不良の問題を解決している。
【0026】
本実施形態の熱活性化用プラテンローラ3は、十点平均粗さRzが10〜15μmの表面粗さを有している。この表面粗さの範囲は、摩擦係数の大きなフロロシリコンゴムからなる熱活性化用プラテンローラ3において、感熱性粘着シート10が間に介在しないときに熱活性化用サーマルヘッド2に貼り付いてしまうのを防ぐことができ、かつ、感熱性粘着シート10を、熱活性化用サーマルヘッド2上を円滑に搬送可能であるとともに、熱活性化用プラテンローラ3から容易に剥がれてその下流側へ円滑に搬送できる程度にべたつきを抑えることができる条件を実験的に求めた結果である。
【0027】
また、本実施形態の熱活性化用プラテンローラ3は30〜50度のゴム硬度を有している。これは、フロロシリコンゴムの中ではゴム硬度が比較的小さく、それによって、熱活性化用プラテンローラ3が熱活性化用サーマルヘッド2に当接する圧力が5〜10gf/mm2の時に、熱活性化時の下敷きとして、適切なゴム潰れ量を確保し、十分なニップ幅を実現して活性かすれを回避するために機能して、良好な熱活性化を可能にする。
【0028】
次に、以上説明した本発明の熱活性化装置1を組み込んだプリンタについて、図4を参照して説明する。
【0029】
図4に示す感熱性粘着シート用プリンタの基本構成について簡単に説明すると、ロール状に巻回された感熱性粘着シート10を保持するロール収納機構13と、感熱性粘着シート10の記録可能層10d(図2参照)に記録する記録装置14と、感熱性粘着シート10を所定の長さに切断するカッター機構15と、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層10a(図2参照)を熱活性化させる、前記した図1に示す構成の熱活性化装置1(図1と図4では図示されている向きが異なっている)が設けられている。
【0030】
ロール収納機構13は、感熱性粘着シート10のロール体を回転自在に保持するものである。
【0031】
記録装置14は、ドット記録が可能なように幅方向(図4に垂直な方向)に並べて配設された、比較的小さな抵抗体からなる複数の発熱素子を有する記録用サーマルヘッド17と、記録用サーマルヘッド17に圧接される記録用プラテンローラ18から構成されている。記録用サーマルヘッド17は、ロール収納機構13から送られる感熱性粘着シート10の記録可能層10dに接するように位置し、支持部材11の軸11aを中心として回転可能に支持されており、ばね12によって記録用プラテンローラ18に向けて付勢されている。それによって、記録用プラテンローラ18は記録用サーマルヘッド17に当接している。記録用サーマルヘッド17は、前記した熱活性化装置1の熱活性化用サーマルヘッド2と同様の構成のもの、すなわち、セラミック基板上に形成された複数の発熱抵抗体の表面に結晶化ガラスの保護膜が設けられている構成など、公知のサーマルプリンタの記録ヘッドと同様の構成である。このように、記録用サーマルヘッド17と熱活性化用サーマルヘッド2を同じ構成のものにすることにより、部品を共通化してコストの低減を図ることができる。
【0032】
本実施形態の記録用プラテンローラ18は、ゴム硬度が30〜40度程度のジメチルシリコンゴムから構成されており、記録用サーマルヘッド17に対して20gf/mm2以上の圧力で圧接している。まだ非活性である感熱性粘着剤層10dは、記録用サーマルヘッド17には当接せず、記録用プラテンローラ18に当接してその回転に合わせて一緒に移動するため、この構成によって、一般的なサーマルプリンタと同様に良好な記録および感熱性粘着シート10の搬送が行える。
【0033】
カッター機構15は、記録装置14によって記録が行われた感熱性粘着シート10を所定の長さで切断してラベル状にするためのものであり、電動モータ等の駆動源(図示せず)によって作動される可動刃15bと、それに対向する固定刃15a等から構成されている。さらに、このカッター機構15には、1対の刃15a,15bに加えて、感熱性粘着シート10をカッター機構15から排出する1対の送出ローラ7,8が設けられている。感熱性粘着シート10は、この送出ローラ7,8の間に挟まれて、後段の熱活性化装置1に送られる。なお、このような送出ローラ7,8を設けずに、記録装置14の記録用プラテンローラ18による搬送力を利用して、感熱性粘着シート10がカッター機構15から熱活性化装置1へ送られるように構成してもよい。
【0034】
このカッター機構15の下流側に熱活性化装置1が設けられている。熱活性化装置1は、熱活性化用サーマルヘッド2と、熱活性化用プラテンローラ3と、支持部材5と、ばね4と、ガイド部材9と、挿入ローラ6a,6bを有し、さらに、熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ3の間を通過した感熱性粘着シート10を、プリンタ外部へ排出するための排出ローラ19および排出ガイド20が設けられている。
【0035】
カッター機構15の送出ローラ7,8と熱活性化装置1の挿入ローラ6a,6bの回転を調整することによって、それらの間で感熱性粘着シート10を弛ませることができる構成が設けられている。この点について説明すると、刃15a,15bによって感熱性粘着シート10を切断する際に、切断される部分が停止していないと切断動作が行えない(移動中の感熱性粘着シート10を刃15a,15bによって円滑に切断することは不可能である)。一方、感熱性粘着シート10全体の搬送を停止してしまうと、熱活性化装置1において熱活性化させられた感熱性粘着剤層10aが停止したまま熱活性化用サーマルヘッド2に貼り付いて移動不能になってしまう。従って、感熱性粘着シート10が熱活性化用サーマルヘッド2に対向する位置に存在する時には、感熱性粘着剤層10aが熱活性化用サーマルヘッド2に貼り付いてしまわない程度の速度で感熱性粘着シート10を移動させ続けなければならず、一方、熱活性化用サーマルヘッド2のうちの切断すべき部分が刃15a,15bに対向する位置に到達したら、その部分を一時停止して切断を行わなければならない。
【0036】
そこで、熱活性化に先立って、感熱性粘着シート10の先端が熱活性化用サーマルヘッド2まで到達していない時点で、挿入ローラ6a,6bの回転を送出ローラ7,8の回転に比べて遅くすることによって、両者の間で感熱性粘着シート10を弛ませる。こうすることによって、その後に、刃15a,15bに対向する位置では感熱性粘着シート10を部分的に一時停止させつつ、熱活性化装置1内では停止することなく搬送し続けることを可能にしている。具体的には、予め、送出ローラ7,8と挿入ローラ6a,6bの回転速度差を設けて弛み部を形成した後に、挿入ローラ6a,6bを通常の回転速度で回転させて、挿入ローラ6a,6bの下流側にある熱活性化装置1によって熱活性化処理を行う。この途中で、感熱性粘着シート10の切断すべき位置が刃15a,15bに対向する位置に到達したら、送出ローラ7,8を一時停止させて刃15a,15bによって円滑に切断を行う。このとき、送出ローラ7,8は停止しているが、感熱性粘着シート10のうち挿入ローラ6a,6bの下流側にある部分は、弛みの分だけ移動し続けることができる。こうすることによって、感熱性粘着シート10が熱活性化用サーマルヘッド2に貼り付いて移動不能になることを防ぎつつ、感熱性粘着シート10の所定の部分をカッター機構15によって円滑に切断することができる。弛みの大きさは、弛みが完全に解消する前に、切断が完了して送出ローラ7,8の回転を再開させて挿入ローラ6a,6bと同時に回転させることができる程度に設定される。ガイド部材9は、弛み方向を規制するとともに、弛み部分から挿入ローラ6a,6bの方へ感熱性粘着シート10を円滑に進行させるように働く。
【0037】
なお、前記した説明では、予め、送出ローラ7,8と挿入ローラ6a,6bの回転速度差を設けて弛み部を形成しているが、感熱性粘着シート10の先端が熱活性化用サーマルヘッド2まで到達していない時点で挿入ローラ6a,6bを一旦停止して弛み部を形成することもできる。いずれの場合にも、予め弛み部を形成しておくことによって、感熱性粘着シート10の切断すべき位置が刃15a,15bに対向する位置に到達した時点で、即座に送出ローラ7,8を停止して刃15a,15bによる切断を行うことができる。この切断のタイミングは、熱活性化動作等とは無関係に全く自由に設定できる。
【0038】
また、このプリンタには、記録装置14の入口や熱活性化装置1の熱活性化用サーマルヘッド2の手前で感熱性粘着シート10の有無を検出する光センサ等の検出器S1,S2が設けられている。さらに、このプリンタは、図示しないが、検出器S1,S2と信号の送受信が可能で、搬送機構を構成する各ローラ3,6a,6b,7,8,18,19と可動刃15bと記録用サーマルヘッド17と熱活性化用サーマルヘッド2等を駆動し、それらの動作を制御する制御装置を有している。
【0039】
このような構成のプリンタを用いて、感熱性粘着シート10からなる所望の粘着ラベルを製造する方法について説明する。
【0040】
まず、ロール収納機構13から引き出した感熱性粘着シート10を、記録装置14の記録用サーマルヘッド17と記録用プラテンローラ18の間に挿入する。制御装置から記録用サーマルヘッド17に記録信号が供給されて、記録用サーマルヘッド17の複数の発熱素子が適宜のタイミングで選択的に駆動されて発熱して、感熱性粘着シート10の記録可能層10dに記録を行う。この記録用サーマルヘッド17の駆動と同期して記録用プラテンローラ18が駆動されて回転し、感熱性粘着シート10を、記録用サーマルヘッド17の発熱素子が並んでいる方向に交差する方向、例えば発熱素子の列に対して垂直な方向に搬送する。具体的には、記録用サーマルヘッド17による1ライン分の記録と、記録用プラテンローラ18による感熱性粘着シート10の所定量(1ライン分)の搬送とが交互に繰り返されることにより、感熱性粘着シート10に所望の文字、数字、記号、画像等の記録が行われる。
【0041】
このようにして記録された感熱性粘着シート10は、カッター機構15の可動刃15bと固定刃15aの間を通過して、送出ローラ7,8に至る。そして、前記したように、感熱性粘着シート10の先端が熱活性化用サーマルヘッド2まで到達していない時点で、熱活性化装置1の挿入ローラ6a,6bを一時停止し、または送出ローラ7,8に比べて低速にして、感熱性粘着シート10を必要量だけ弛ませる。
【0042】
次に、挿入ローラ6a,6bを回転させて、前記のようにして必要な記録が施された感熱性粘着シート10を熱活性化装置1に送る。そして、熱活性化装置1において、熱活性化用サーマルヘッド2と熱活性化用プラテンローラ3の間に感熱性粘着シート10を挟んだ状態で、制御装置が熱活性化用サーマルヘッド2を駆動して、それに接する感熱性粘着剤層10aを加熱して熱活性化させる。同時に、熱活性化用プラテンローラ3を回転させてラベル状の感熱性粘着シート10を送り、感熱性粘着剤層10aの全面を熱活性化用サーマルヘッド2に当接させながらそれを通過させる。
【0043】
このように感熱性粘着シート10の搬送と熱活性化を行っている最中に、感熱性粘着シート10の切断すべき位置が刃15a,15bに対向する位置に到達したら、即座に送出ローラ7,8を停止して刃15a,15bによる切断を行う。この時、挿入ローラ6a,6bは回転し続け、感熱性粘着シート10の、送出ローラ7,8の下流側の部分は、弛み部を徐々に解消させながら、停止することなく移動し続ける。
【0044】
このようにして、片面に所望の記録が施され反対面に粘着性が発現し、所定の長さに切断された、感熱性粘着シート10からなる粘着ラベルが完成する。
【0045】
本実施形態のプリンタによると、記録装置14の記録用プラテンローラ18と、熱活性化装置1の熱活性化用プラテンローラ3とで、材質や当接圧力をそれぞれ変えるという、従来にない構成を採用することによって、記録装置14の記録用サーマルヘッド17および記録用プラテンローラ18によって、感熱性粘着シート10の良好な記録と良好な搬送が実現できるとともに、前記したように、熱活性化装置1の熱活性化用プラテンローラ3が適切なゴム潰れ量を持つ良好な下敷きとして機能して良好な熱活性化を行えるとともに、感熱性粘着シート10の感熱性粘着剤層中に非活性部分が存在していても、熱活性化用サーマルヘッド2に対向する位置で停滞せず、斜行やジャミング等の搬送不良の発生を抑え、挿入ローラ6a,6bおよび熱活性化用プラテンローラ3の回転に対応した速度で感熱性粘着シート10を円滑に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態の熱活性化装置を示す全体構成図である。
【図2】本発明において用いられる感熱性粘着シートの一例を示す拡大断面図である。
【図3】サーマルヘッドまたはプラテンローラとシート材の様々な組み合わせにおける、荷重と摩擦力の関係を示すグラフである。
【図4】図1に示す熱活性化装置を含むプリンタを示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0047】
1 熱活性化装置
2 熱活性化用サーマルヘッド
3 熱活性化用プラテンローラ
4,12 ばね
5,11 支持部材
5a,11a 軸
6a,6b 挿入ローラ
7,8 送出ローラ
9 ガイド部材
10 感熱性粘着シート
10a 感熱性粘着剤層
10b シート状基材
10c 断熱層
10d 記録可能層
13 ロール収納機構
14 記録装置
15 カッター機構
15a 固定刃
15b 可動刃
17 記録用サーマルヘッド
18 記録用プラテンローラ
19 排出ローラ
20 排出ガイド
S1,S2 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材の一方の面に感熱性粘着剤層が形成されている感熱性粘着シートの前記感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化用サーマルヘッドと、
前記熱活性化用サーマルヘッドと対向して配置され、前記熱活性化用サーマルヘッドに対して5〜10gf/mm2の圧力で当接し、かつ前記熱活性化用サーマルヘッドとの間を前記感熱性粘着シートを通過させて搬送する、フロロシリコンゴムを主成分とする熱活性化用プラテンローラと
を有する熱活性化装置。
【請求項2】
前記熱活性化用プラテンローラは、十点平均粗さRzが10〜15μmの表面粗さを有する、請求項1に記載の熱活性化装置。
【請求項3】
前記熱活性化用プラテンローラは30〜50度のゴム硬度を有する、請求項1または2に記載の熱活性化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱活性化装置と、
シート状基材の他方の面に形成されている記録可能層を加熱して記録する記録用サーマルヘッドと、前記記録用サーマルヘッドと対向して配置され、前記記録用サーマルヘッドとの間を前記感熱性粘着シートを通過させる記録用プラテンローラとを含む記録装置と
を有するプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−76662(P2007−76662A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263881(P2005−263881)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】