説明

熱源システム運転方法及び熱源システム

【課題】負荷機器の入口熱媒温度が相対的に過剰能力の温度になることやそれに伴う一次流量の過大化に原因するエネルギ浪費を効果的に防止する。
【解決手段】二次流量Q2の変化に応じて一次流量Q1を調整する一次流量調整(一次流量制御)を行なう熱源システムにおいて、負荷機器3の入口熱媒温度tiついて、負荷機器3で処理対象を所要の目標状態に処理することが可能な熱媒温度で、かつ、その処理に必要な限界温度寄りの熱媒温度を適正入口熱媒温度tisとし、一次流量調整での二次流量Q2に対する一次流量Q1の比率である運転流量比率βを、熱源ユニットUからの送出熱媒Cとバイパス路12において還路部分4bの側から往路部分4aの側に向かうバイパス熱媒Cとの混合により負荷機器3の入口熱媒温度tiが適正入口熱媒温度tisになる状態に調整するバイパス利用一次流量調整(バイパス利用一次流量制御)を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調設備などで用いる熱源システム運転方法及び熱源システムに関し、
詳しくは、熱媒を設定出口熱媒温度に冷却又は加熱する熱源機とその熱源機に熱媒を送給する一次ポンプとを直列接続した熱源ユニットを負荷機器に対する熱媒循環路に介装し、この熱源ユニットと前記負荷機器との間において前記熱媒循環路における負荷機器側への往路部分と負荷機器側からの還路部分とを接続するバイパス路を設けるとともに、前記熱媒循環路における前記バイパス路の接続点よりも負荷機器寄りの箇所に前記負荷機器に対して熱媒を送給する二次ポンプを介装した熱源システムにおいて、
前記負荷機器側の熱媒流量である二次流量の変化に応じて一次ポンプ送出流量の調整により前記熱源ユニット側の熱媒流量である一次流量を調整する一次流量調整を行なう熱源システム運転方法に関する。
【0002】
また、その一次流量調整として、前記負荷機器側の熱媒流量である二次流量の変化に応じて一次ポンプ送出流量の調整により前記熱源ユニット側の熱媒流量である一次流量を調整する一次流量制御を実行する制御手段を設けてある熱源システムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、この種の熱源システム(及びその運転方法)については、熱源機の運転効率が異なる2以上の熱源機を運転する場合、一次流量制御として、熱源ユニット側の熱媒流量である一次流量(即ち、運転一次ポンプの合計送出流量)を負荷機器側の熱媒流量である二次流量(負荷流量とも言う)に等しい流量に調整するとともに、その一次流量を運転熱源機の運転効率に応じた配分比率で運転熱源機に配分するように運転一次ポンプの送出流量を調整する流量配分制御を実施するものが提案されている。(特許文献1参照、特に段落0020)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−292374号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の如く一次流量制御において一次流量を二次流量に等しい流量に調整する場合、バイパス路にはバイパス流が生じず熱源機から送出される設定出口熱媒温度の熱媒がそのまま負荷機器に送給される。即ち、負荷機器の入口熱媒温度が熱源機の設定出口熱媒温度と等しい温度になる。
【0006】
しかし、このように一次流量を二次流量に等しい流量に調整するだけでは、例えば負荷機器が空調機である場合において、処理対象空気の除湿が不要になって処理対象空気の顕熱処理だけが必要になるなど、負荷機器が処理する処理対象の目標状態の変化や処理前状態の変化などに起因して、熱源機の設定出口熱媒温度と等しい温度である負荷機器の入口熱媒温度が負荷機器にとって相対的に過剰能力の温度(即ち、熱源機で熱媒を冷却する冷熱熱源システムでは必要以上に低い温度、また、熱源機で熱媒を加熱する温熱熱源システムでは必要以上に高い温度)となることがある。
【0007】
また、このように負荷機器の入口熱媒温度が相対的に過剰能力の温度になる状況では、負荷機器の入口熱媒温度と出口熱媒温度との差である入出口熱媒温度差が設計値よりも小さくなって、負荷機器側の熱媒流量である二次流量が実質的に過大な状態になり、それに伴い、一次流量を二次流量に等しい流量に調整する一次流量制御のため一次流量も実質的に過大な状態になり、場合によっては、その一次流量が過大になる流量上の要因のみで熱源ユニットの運転ユニット数を増加させる本質的に無駄な増段処理が必要になることもある。
【0008】
そして、これら負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化や一次流量の過大化のために熱源機ユニットの運転において大きなエネルギ浪費を生じる問題があった。
【0009】
これに対し、負荷機器が処理する処理対象の目標状態の変化や処理前状態の変化などに応じて熱源機の設定出口熱媒温度を設定変更することで上記問題を解消することも考えられるが、この場合、熱源機における設定出口熱媒温度の大きな変更幅での設定変更や頻繁な設定変更を招くことになって、熱源機運転や制御システムの不安定化あるいはまた熱源機の劣化助長などを招く問題が生じる。
【0010】
これらの実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な流量制御形態を採ることにより、熱源機における設定出口熱媒温度の大きな変更幅での設定変更や頻繁な設定変更を効果的に回避しながら、上記の如き負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化やそれに伴う一次流量の過大化に原因するエネルギ浪費を効果的に防止する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1特徴構成は熱源システム運転方法に係り、その特徴は、
熱媒を設定出口熱媒温度に冷却又は加熱する熱源機とその熱源機に熱媒を送給する一次ポンプとを直列接続した熱源ユニットを負荷機器に対する熱媒循環路に介装し、
この熱源ユニットと前記負荷機器との間において前記熱媒循環路における負荷機器側への往路部分と負荷機器側からの還路部分とを接続するバイパス路を設けるとともに、
前記熱媒循環路における前記バイパス路の接続点よりも負荷機器寄りの箇所に前記負荷機器に対して熱媒を送給する二次ポンプを介装した熱源システムにおいて、
前記負荷機器側の熱媒流量である二次流量の変化に応じて一次ポンプ送出流量の調整により前記熱源ユニット側の熱媒流量である一次流量を調整する一次流量調整を行なう熱源システム運転方法であって、
前記負荷機器の入口熱媒温度について、前記負荷機器で処理対象を所要の目標状態に処理することが可能な熱媒温度で、かつ、その処理に必要な限界温度寄りの熱媒温度を適正入口熱媒温度とし、
前記一次流量調整での前記二次流量に対する前記一次流量の比率である運転流量比率を、前記熱源ユニットからの送出熱媒と前記バイパス路において前記還路部分の側から前記往路部分の側に向かうバイパス熱媒との混合により前記負荷機器の入口熱媒温度が前記適正入口熱媒温度になる状態に調整するバイパス利用一次流量調整を行なう点にある。
【0012】
この種の熱源システムでは何らかの原因で一次流量が二次流量よりも少ない場合、バイパス路で熱媒循環路の還路部分側から往路部分側へ向かう一次・二次差分流量のバイパス流が生じて、負荷機器を通過した熱媒の一部(差分流量分)がバイパス熱媒となって熱源ユニットからの送出熱媒に混合され、この混合熱媒が負荷機器に送給されることで負荷機器の入口熱媒温度が熱源機の設定出口熱媒温度よりも負荷機器能力の低減側(即ち、冷熱熱源システムでは上昇側、温熱熱源システムでは低下側)に変動することが一般に知られている。
【0013】
本発明はこの入口熱媒温度の変動現象を利用して前述の課題を解決するものであり、上記方法によれば、負荷機器が処理する処理対象の目標状態の変化や処理前状態の変化などが原因で、前述の如く負荷機器の入口熱媒温度が相対的に過剰能力の温度となり、また、それに伴い負荷機器の入出口熱媒温度差が小さくなって一次・二次流量が実質的に過大な状態になるような状況のとき、上記バイパス利用一次流量調整により二次流量に対する一次流量の比率である運転流量比率を調整することで、往路部分向きバイパス熱媒と熱源ユニットから送出される設定出口熱媒温度の熱媒との混合により負荷機器の入口熱媒温度を適正入口熱媒温度に調整することができる。
【0014】
即ち、負荷機器において処理対象を目標状態に処理することが可能な熱媒温度で、かつ、その処理に必要な限界温度寄りの熱媒温度である適正入口熱媒温度(言わば、負荷機器にとって能力的に必要最低限に近い熱媒温度)に負荷機器の入口熱媒温度を調整することができ、これにより、負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化、及び、それに伴う一次流量の過大化を防止することができて、それら入口熱媒温度の相対的な過剰能力化や一次流量の過大化に原因するエネルギ浪費を効果的に防止することができ、省エネルギ面で一層有利にすることができる。
【0015】
また、このようにバイパス熱媒と熱源ユニットからの送出熱媒との混合により、負荷機器の入口熱媒温度を熱源機の設定出口熱媒温度よりも負荷機器能力低減側の適正入口熱媒温度に調整して、負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化やそれに伴う一次流量の過大化を防止するから、熱源機における設定出口熱媒温度の設定変更を不要にすることができ、ないしは、その設定変更を行なうとしても熱源機における設定出口熱媒温度の設定変更だけで負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化やそれに伴う一次流量の過大化を防止するのに比べ、設定変更の変更幅や頻度を効果的に低減することができ、これにより、熱源機における設定出口熱媒温度の大きな変更幅での設定変更や頻繁な設定変更に原因する熱源機運転や制御システムの不安定化並びに熱源機の劣化助長なども効果的に回避することができる。
【0016】
なお、上記方法の実施においてバイパス利用一次流量調整は、種々の計測情報や熱源システム構成機器の特性情報などに基づき自動的に行なう実施形態、あるいは、システム管理者などが人為操作により行なう実施形態、あるいはまた、その一部のみを自動的に行い残部(例えば、適正入口熱媒温度の決定)を人為操作により行なう実施形態のいずれを採用してもよい。
【0017】
また、上記方法により防止する負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化やそれに伴う一次流量の過大化は、負荷機器が処理する処理対象の目標状態の変化や処理前状態の変化に原因するものに限らず、負荷機器の運転効率の向上や設置条件の向上、あるいはまた、負荷機器の改良や補修など、どのような原因で生じるものであってもよい。
【0018】
本発明の第2特徴構成は熱源システムに係り、その特徴は、
熱媒を設定出口熱媒温度に冷却又は加熱する熱源機とその熱源機に熱媒を送給する一次ポンプとを直列接続した熱源ユニットを負荷機器に対する熱媒循環路に介装し、
この熱源ユニットと前記負荷機器との間において前記熱媒循環路における負荷機器側への往路部分と負荷機器側からの還路部分とを接続するバイパス路を設けるとともに、
前記熱媒循環路における前記バイパス路の接続点よりも負荷機器寄りの箇所に前記負荷機器に対して熱媒を送給する二次ポンプを介装し、
前記負荷機器側の熱媒流量である二次流量の変化に応じて一次ポンプ送出流量の調整により前記熱源ユニット側の熱媒流量である一次流量を調整する一次流量制御を実行する制御手段を設けてある熱源システムであって、
前記制御手段は、前記負荷機器の入口熱媒温度について、前記負荷機器で処理対象を所要の目標状態に処理することが可能な熱媒温度で、かつ、その処理に必要な限界温度寄りの熱媒温度を適正入口熱媒温度とし、
前記一次流量制御での前記二次流量に対する前記一次流量の比率である運転流量比率を、前記熱源ユニットからの送出熱媒と前記バイパス路において前記還路部分の側から前記往路部分の側に向かうバイパス熱媒との混合により前記負荷機器の入口熱媒温度が前記適正入口熱媒温度になる状態に調整するバイパス利用一次流量制御を実行する構成にしてある点にある。
【0019】
つまり、この構成では、前述した第1特徴構成の熱源システム運転方法において実施するバイパス利用一次流量調整をバイパス利用一次流量制御として種々の計測情報や熱源システム構成機器の特性情報などに基づき制御手段に実行させる。
【0020】
従って、熱源機における設定出口熱媒温度の大きな変更幅での設定変更や頻繁な設定変更を回避しながら、負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化やそれに伴う一次流量の過大化に原因するエネルギ浪費を効果的に防止するという前述運転方法により得られる効果を人手を要さず自動的かつ確実に得ることができる。
【0021】
なお、上記構成の実施において負荷機器の適正入口熱媒温度は過去の運転実績等に基づいてシステム管理者が人為的に決定するものにしてもよい。
【0022】
本発明の第3特徴構成は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の決定手法により前記適正入口熱媒温度を自動的に決定する構成にしてある点にある。
【0023】
つまり、この構成によれば、負荷機器における適正入口熱媒温度の再決定が必要になるような状況変化に対して自動的に対応することができ、これにより、負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化やそれに伴う一次流量の過大化に原因するエネルギ浪費を一層確実かつ効果的に防止することができる。
【0024】
なお、上記構成の実施において採用する適正入口熱媒温度の決定手法については、熱源システム構成機器の特性情報に基づく数式演算や運転シミュレートにより適正入口熱媒温度を決定する手法、あるいはまた、熱源システム構成機器の機器特性に基づき予め作成したデータテーブルからの読み出しにより適正入口熱媒温度を決定する手法など、種々の手法を採用することができる。
【0025】
本発明の第4特徴構成は第3特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記二次ポンプの送出熱媒の一部を前記二次ポンプの吸入側に戻す戻し路を設けるとともに、この戻し路を通じて前記二次ポンプの吸入側に戻す戻し熱媒の流量を調整して前記二次ポンプの送出熱媒圧力と吸入熱媒圧力との熱媒圧力差を設定値に調整する圧力調整弁を設ける構成において、
前記制御手段は、前記戻し路における戻し熱媒流量を前記二次流量に加えた演算最大流量の熱媒が前記負荷機器に送給されるとする仮想流量条件の下で、前記適正入口熱媒温度を決定する構成にしてある点にある。
【0026】
つまり、上記の如き戻し路及び圧力調整弁を設ける熱源システムでは、戻り路を通じて二次ポンプ吸入側へ戻る戻り熱媒流量の分だけ、二次ポンプにおいてエネルギ浪費が生じる。
【0027】
これに対し、上記構成によれば、戻し路における戻し熱媒流量(換言すれば、余裕流量)を二次流量に加えた演算最大流量が負荷機器に送給されるとする仮想流量条件の下で負荷機器の適正入口熱媒温度を決定するから、バイパス利用一次流量制御による前記運転流量比率の調整により負荷機器の入口熱媒温度を適正入口熱媒温度に調整することにおいて、負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化やそれに伴う一次流量の過大化の防止とともに、戻し路における戻し熱媒流量も併せて最小化することができ、これにより、エネルギ浪費を一層低減して省エネルギ面で一層有利にすることができる。
【0028】
本発明の第5特徴構成は第2〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、前記熱源機の出口熱媒温度について、前記熱源ユニットの運転状態が所定の最適運転状態になる最適出口熱媒温度を熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の選定手法により選定して、その最適出口熱媒温度を前記設定出口熱媒温度とする構成にしてある点にある。
【0029】
つまり、この構成によれば、所定の最適運転状態として例えば運転熱源ユニット全体としての熱源機消費エネルギが最小となる運転状態を選択した場合、熱源機の出口熱媒温度について運転熱源ユニット全体としての熱源機消費エネルギが最小となる最適出口熱媒温度が自動的に選定され、その最適出口熱媒温度が熱源機の設定出口熱媒温度として採用される。
【0030】
即ち、このことにより、運転熱源ユニット全体としての熱源機の消費エネルギを効果的かつ確実に低減することができて、熱源システム全体としての消費エネルギを効果的かつ確実に低減することができる。
【0031】
従って、所定の最適運転状態として所要の目的で種々の運転状態を選択することにより、熱源機における設定出口熱媒温度の選定上で、熱源システムの運転を所要の目的に即して最適化することができ、この点で一層優れた熱源システムにすることができる。
【0032】
また、このように熱源機の設定出口熱媒温度を自動的に設定変更する構成にしても、負荷機器における入口熱媒温度の相対的な過剰能力化やそれに伴う一次流量の過大化を防止するための熱源機における設定出口熱媒温度の設定変更は前述のバイパス利用一次流量制御により不要にし得るから、熱源機における設定出口熱媒温度の大きな変更幅での設定変更や頻繁な設定変更に原因する熱源機運転や制御システムの不安定化並びに熱源機の劣化促進は効果的に回避することができる。
【0033】
なお、上記構成の実施において所定の最適運転状態としては、熱源機消費エネルギが最小となる運転状態に限らず、運転コストが最小となる運転状態や、換算二酸化炭素排出量が最小となる運転状態、あるいはまた、熱源機消費エネルギ、運転コスト、換算二酸化炭素排出量などの2以上の運転評価値の夫々に重み係数を乗じた値の和が最小となる運転状態など、種々の運転状態を最適運転状態として採用することができる。
【0034】
また、上記構成の実施において採用する最適出口熱媒温度の選定手法については、熱源システム構成機器の特性情報に基づく数式演算や運転シミュレートにより熱源機の最適出口熱媒温度を選定する手法、あるいはまた、熱源システム構成機器の機器特性に基づき予め作成したデータテーブルからの読み出しにより熱源機の最適出口熱媒温度を選定する手法など、種々の手法を採用することができる。
【0035】
本発明の第6特徴構成は、第2〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、前記熱媒循環路に並列状態で介装された複数の前記熱源ユニットに対する前記一次流量の配分について、運転熱源ユニット全体としての運転状態が所定の最適運転状態となる最適流量配分比率を熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の選定手法により選定して、その最適流量配分比率に応じて運転一次ポンプの送出流量を調整する最適流量配分制御を前記バイパス利用一次流量制御とともに実行する構成にしてある点にある。
【0036】
つまり、この構成によれば、所定の最適運転状態として例えば前述と同様に運転熱源ユニット全体としての熱源機消費エネルギが最小となる運転状態を選択した場合、最適流量配分制御により、運転熱源ユニットに対する一次流量の配分について運転熱源ユニット全体としての熱源機消費エネルギが最小となる最適流量配分比率が自動的に選定され、その最適流量配分比率で運転熱源ユニットに対して一次流量が配分される。
【0037】
即ち、このことにより、運転熱源ユニット全体としての熱源機の消費エネルギを効果的かつ確実に低減することができて、熱源システム全体としての消費エネルギを効果的かつ確実に低減することができる。
【0038】
従って、所定の最適運転状態として所要の目的で種々の運転状態を選択することにより、運転熱源ユニットに対する一次流量配分比率の選定上で、熱源システムの運転を所要の目的に即して最適化することができ、この点で一層優れた熱源システムにすることができる。そして、特に複数の熱源ユニットにおける熱源機に能力や性能あるいは形式や構造の異なる異種のものが含まれる場合に極めて有用である。
【0039】
なお、上記構成の実施において所定の最適運転状態としては、前述第5特徴構成の場合と同様、熱源機消費エネルギが最小となる運転状態に限らず、運転コストが最小となる運転状態や、換算二酸化炭素排出量が最小となる運転状態、あるいはまた、熱源機消費エネルギ、運転コスト、換算二酸化炭素排出量などの2以上の運転評価値の夫々に重み係数を乗じた値の和が最小となる運転状態など、種々の運転状態を最適運転状態として採用することができる。
【0040】
また、上記構成の実施において採用する最適流量配分比率の選定手法についても、熱源システム構成機器の特性情報に基づく数式演算や運転シミュレートにより運転熱源ユニットに対する一次流量の最適流量配分比率を選定する手法、あるいはまた、熱源システム構成機器の機器特性に基づき予め作成したデータテーブルからの読み出しにより運転熱源ユニットに対する一次流量の最適流量配分比率を選定する手法など、種々の手法を採用することができる。
【0041】
そしてまた、上記構成の実施においては、運転熱源ユニットに対する一次流量の最適配分に加え、運転熱源ユニットの組み合わせについても、運転熱源ユニット全体としての運転状態が所定の最適運転状態となる最適組み合わせを熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の選定手法により選定して、その最適組み合わせで熱源ユニットを運転する熱源機最適組み合わせ制御を制御手段に実行させるのが好ましい。
【0042】
本発明の第7特徴構成は第2〜第6特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、前記バイパス利用一次流量制御において前記運転流量比率を調整するのに、前記負荷機器の入口熱媒温度の計測値と前記適正入口熱媒温度との偏差に応じて、その偏差の解消側に前記一次流量を調整する構成にしてある点にある。
【0043】
つまり、この構成によれば、例えば、バイパス利用一次流量制御を行なうのに、負荷機器の入口熱媒温度が適正入口熱媒温度となる運転流量比率を計測情報に基づき演算し、その演算により求めた運転流量比率を目標比率として一次流量を調整する実行方式を採るなどに比べ、一般に多用される偏差に応じた流量制御だけでバイパス利用一次流量制御を行なうことができて制御構成を簡略化することができる。
【0044】
また、負荷機器の入口熱媒温度が適正入口熱媒温度となる運転流量比率の頻繁な変化に対しても円滑かつ柔軟に対応することができ、この点で、熱源システムの運転安定性も一層高めることができる。
【0045】
本発明の第8特徴構成は第2〜第7特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、前記熱媒循環路に並列状態で介装された複数の前記熱源ユニットについて、その運転ユニット数を前記負荷機器の負荷熱量の変化に応じ変更する熱源台数制御を実行するとともに、
この熱源台数制御で前記熱源ユニットの運転ユニット数を増加させる増段処理に際して、前記運転流量比率を前記バイパス利用一次流量制御による調整比率よりも所定比率幅だけ予め増大させておく増段用過渡制御を実行する構成にしてある点にある。
【0046】
この種の熱源システムでは、熱源機の起動後、その起動熱源機の出口熱媒温度が設定出口熱媒温度まで立ち上がるのに長時間を要することから、熱源台数制御の増段処理で熱源ユニットの運転ユニット数を増加させたとき、既に運転状態にある熱源機から送出される設定出口熱媒温度の熱媒に新たに起動した立ち上がり過程の熱源機から送出される未だ設定出口温度に至っていない熱媒が混合され、これが原因で、負荷機器の入口熱媒温度が負荷機器能力の低減側に変動して負荷機器の機能に支障を来たすことがある。
【0047】
これに対し、上記構成によれば、増段処理に際して増段用過渡制御により二次流量に対する一次流量の比率である運転流量比率をバイパス利用一次流量制御による調整比率よりも所定比率幅だけ予め増大させておく(即ち、一次流量を既に運転状態にある一次ポンプの送出流量調整によりバイパス利用一次流量制御よる調整流量よりも所定流量幅だけ予め増大させておく)から、その増大分だけ、増段処理において新たに起動した熱源機からの送出熱媒の混合に原因する上記の如き負荷機器における入口熱媒温度の負荷機器能力低減側への変動を未然に抑止することができる。
【0048】
因みに、バイパス利用一次流量制御においても、増段処理により負荷機器の入口熱媒温度が負荷機器能力の低減側に変動したとき、負荷機器の入口熱媒温度を運転流量比率の調整により適正入口熱媒温度に復帰させる機能はあるが、この機能は負荷機器における入口熱媒温度が適正入口熱媒温度よりも負荷機器能力の低減側に変動したことに対して発揮されるものである。
【0049】
これに対し、上記増段用過渡制御であれば、増段処理により負荷機器の入口熱媒温度が適正入口熱媒温度よりも負荷機器能力の低減側に変動することを未然に防止することができ、この点で、バイパス利用一次流量制御に上記増段用過渡制御を組み込む方が負荷機器の機能を極力安定的に保つ上で一層有利である。
【0050】
なお、上記構成の実施において増段用過渡制御の開始時点については、負荷機器における負荷熱量が運転熱源ユニット全体としての能力調整範囲における上限寄りの所定閾能力まで増大したときに増段用過渡制御を開始するなど、熱源システムの特性や運転条件などに応じて適当な開始時点を適宜選択すればよい。
【0051】
増段用過渡制御により増大させる運転流量比率の比率幅(増大幅)も熱源システムの特性や運転条件などに応じて適宜決定すればよく、熱源システムの運転状況に応じて増大させる比率幅を変更するようにしてもよい。
【0052】
また、増段用過渡制御においては熱源システムの運転を極力安定的に保つため運転流量比率を漸次的に増大させるのが望ましく、負荷機器の負荷熱量の増大に応じて運転流量比率を漸次的に増大させるようにしてもよい。
【0053】
本発明の第9特徴構成は第8特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記制御手段は、前記増段処理を実行した後の所定保持期間の間、その増段処理で新たに起動した熱源ユニットの一次ポンプ送出流量を設定制限流量に固定して、前記一次流量が前記増段用過渡制御による増大一次流量から設定制限流量だけ増大した状態を保つ増段後保持制御を実行し、その所定保持期間が経過した後、前記増段後保持制御を解除して前記バイパス熱媒混合一次流量制御に復帰する構成にしてある点にある。
【0054】
つまり、増段処理の後、その増段処理で新たに起動した熱源機の出口熱媒温度が立ち上がる以前に通常のバイパス利用一次流量制御に復帰すると、増段用過渡制御を実施しない場合と同様に負荷機器の入口熱媒温度が負荷機器能力の低減側に変動してしまう虞が高いことから、増段処理後におけるバイパス利用一次流量制御への復帰は増段処理で新たに起動した熱源機の出口熱媒温度が十分に立ち上がった後にすべきである。
【0055】
しかし、増段処理後において増段用過渡制御による運転流量比率の増大状態(即ち、一次流量の増大状態)を新たに起動した熱源機の出口熱媒温度が十分に立ち上がるまで保持するにしても、新たに起動した熱源機の出口熱媒温度が十分に立ち上がる以前に、運転熱源ユニットに対する増段処理後の一次流量配分(例えば、均等配分や運転効率に応じた配分など)で新たに起動した熱源機の処理熱媒流量が大きくなると、未だ温度的に立ち上がっていない熱媒の一次流量中における混合比率が大きくなり、そのことで負荷機器の入口熱媒温度が負荷機器能力の低減側に変動してしまう虞が残る。
【0056】
これに対し、上記構成によれば、増段処理を実行した後の所定保持期間の間、増段後保持制御として増段用過渡制御による一次流量の増大状態を保つとともに、新たに起動した熱源ユニットの一次ポンプ送出流量(即ち、新たに起動した熱源機の処理熱媒流量)を設定制限流量に固定するから、所定保持期間として適当な期間を確保すれば、増段用過渡制御による一次流量の増大状態を尚早に解除することに原因する負荷機器入口熱媒温度の負荷機器能力低減側への変動を確実に防止するとともに、増段処理後の一次流量配分で新たに起動した熱源機の処理熱媒流量が大きくなることに原因する負荷機器入口熱媒温度の負荷機器能力低減側への変動も効果的に防止することができる。
【0057】
即ち、このことにより、増段処理の際に負荷機器の入口熱媒温度が適正入口熱媒温度よりも負荷機器能力の低減側に変動することを一層効果的かつ確実に防止することができる。
【0058】
なお、上記構成の実施において所定保持期間は、増段処理で新たに起動した熱源機の出口熱媒温度の計測値が設定出口熱媒温度になるまでの期間や、熱源機の起動後、その出口熱媒温度が設定出口熱媒温度に立ち上がる時間を見込んだ設定時間など、増段処理で新たに起動した熱源機が立ち上がるのに要する時間を概ね確保できる期間であれば、どのような決定形態で期間長を決定するものであってもよい。
【0059】
第1特徴構成の熱源システム運転方法の実施においては、上述第3〜第9特徴構成で制御手段に実行させる各制御をシステム管理者が人為的に行なうようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】熱源システムの全体構成図
【図2】制御システムのブロック図
【図3】データテーブルの模式図
【図4】通常時の一次流量制御における運転流量比率αの決定方式を説明するグラフ
【図5】バイパス利用一次流量制御における運転流量比率βの調整方式を説明するグラフ
【図6】通常時の一次流量制御の実行状態を説明する概略システム図
【図7】増段用過渡制御の実行状態を説明する概略システム図
【図8】バイパス利用一次流量制御の実行状態を説明する概略システム図
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は空調設備などに用いる変流量式の熱源システムを示し、冷水や冷却ブラインなどの熱媒Cを設定出口熱媒温度tssに冷却する熱源機としての冷凍機1と、その冷凍機1に熱媒Cを送給する一次ポンプ2とを直列接続して熱源ユニットUを構成し、この熱源ユニットUの複数を負荷機器3群に対する熱媒循環路4に並列状態で介装してある。
【0062】
一次ポンプ2にはインバータINVによるモータ回転数の調整により送出流量qsの調整が可能な可変ポンプを用いており、冷凍機1の制御部は、対応する一次ポンプ2の熱媒送出流量qsに応じて冷凍機1の冷却出力を調整することで冷凍機1の出口熱媒温度tsを設定出口熱媒温度tssに調整する。
【0063】
熱源ユニットUからの送出熱媒Cを負荷機器3群に送給する熱媒循環路4の往路部分4aには、各熱源ユニットUからの送出熱媒Cを集合させる一次ヘッダ5、及び、負荷機器3群に対して熱媒Cを送給する二次ヘッダ6を設けてあり、一次ヘッダ5と二次ヘッダ6とは複数の中継路7により接続し、これら中継路7には、一次ヘッダ5の受け入れ熱媒Cを二次ヘッダ6を通じて負荷機器3群に送給する二次ポンプ8を介装してある。
【0064】
また、一次ヘッダ5と二次ヘッダ6とを接続する戻し路9を中継路7と並列に設け、この戻し路9には圧力調整弁10を介装してある。
【0065】
負荷機器3群で保有冷熱が消費されて温度上昇した熱媒C(各負荷機器3から送出されて集合した混合冷媒)を熱源ユニットUに戻す熱媒循環路4の還路部分4bには還りヘッダ11を設けてあり、この還りヘッダ11において各熱源ユニットUに戻す熱媒Cを分配する。
【0066】
一次ヘッダ5と還りヘッダ6とはバイパス路12で接続してあり、換言すれば、二次ポンプ8の介装箇所よりも熱源ユニットU寄りの箇所で熱媒循環路4の往路部分4aと還路部分4bとをバイパス路12により接続してある。
【0067】
熱媒循環路4に並列状態で介装された負荷機器3は個別に流量調整弁3aを備えており、この流量調整弁3aにより各負荷機器3の負荷熱量gxに応じて各負荷機器3の熱媒流量qxが個別に調整される。
【0068】
即ち、熱媒循環路4はバイパス路12により接続した一次ヘッダ5と還りヘッダ6とを境として熱源ユニットU側である一次側と負荷機器3側である二次側とに区分されるが、熱媒循環路4における二次側部分の熱媒流量である二次流量Q2(即ち、負荷機器3群全体としての熱媒流量Σqx)は負荷機器3群全体としての負荷熱量Gx(=Σgx)に応
じて調整される。
【0069】
そして、熱源ユニットU側の熱媒流量である一次流量Q1(即ち、運転熱源ユニットUにおける一次ポンプ2の合計送出流量Σqs)と二次流量Q2とが等しい状態(Q1=Q
2)では、バイパス路12にバイパス流は生じずバイパス熱媒流量ΔQ=0となるが、一次流量Q1が二次流量Q2よりも大きい状態(Q1>Q2)では、その差分流量ΔQ(=Q1−Q2)で往路部分4a側から還路部分4b側に向かう正のバイパス流がバイパス路12に生じ、この正のバイパス流を形成するバイパス熱媒Cは負荷機器3群からの戻り熱媒Cと還りヘッダ11で混合して負荷機器3を通過することなく運転熱源ユニットUに戻される。
【0070】
また逆に、一次流量Q1が二次流量Q2よりも小さい状態(Q1<Q2)では、その差分流量ΔQ(=Q2−Q1)で還路部分4b側から往路部分4a側に向かう負のバイパス流(逆向きバイパス流)がバイパス路12に生じ、この負のバイパス流を形成するバイパス熱媒Cは運転熱源ユニットUからの送出熱媒Cと一次ヘッダ5で混合されて再び負荷機器3群に再び送給される。
【0071】
二次ポンプ8については後述のシステム制御装置14が還路部分4bの流量計F2により計測される二次流量Q2の変化に応じて二次ポンプ8の運転台数を変更する二次ポンプ台数制御を実行するとともに、差圧センサS3により計測される一次ヘッダ5と二次ヘッダ6との熱媒圧力差Δpに応じ戻し路9における圧力調整弁10の開度を調整して負荷機器3群に送給する熱媒Cの圧力を適正送給圧力に調整する。
【0072】
図示は省略したが、この熱源システムは、上記の各構成機器の他、各熱源ユニットUの冷凍機1に供給する冷却水Wを冷却する冷却塔CTや、冷凍機1と冷却塔CTとの間で冷却水Wを循環させる冷却水ポンプなども備えている。
【0073】
また、この熱源システムは制御システムとして、システム管理器13とシステム制御装置14とを備えており、これらシステム管理器13とシステム制御装置14は相互通信可能にしてある。
【0074】
システム管理器13はシステム各部における流量、圧力、温度等の計測情報や記憶手段に格納してある熱源システム構成機器の特性情報(熱源機特性やポンプ特性等の情報)などに基づき各時点における熱源システムの適正運転状態を逐次策定し、その策定結果をシステム制御装置14に送信する。
【0075】
これに対し、システム制御装置14はシステム管理器13から送信される適正運転状態の策定結果に応じて熱源システムにおける各機器の制御部に制御信号を送信し、これにより、熱源システムの運転状態を基本的にはシステム管理器13が策定した適正運転状態に即した運転状態にする。
【0076】
また、システム制御装置14は熱源システムに装備した種々のセンサから送られる計測情報や各機器の制御部から送られる機器状態情報を受信して、それらの受信情報を適正運転状態の策定等のための情報としてシステム管理器13に送信する。
【0077】
センサ類としては、各熱源ユニットUにおける冷凍機1の入口熱媒温度tr及び出口熱媒温度tsを計測する温度センサS1,S2、各熱源ユニットUにおける一次ポンプ2の熱媒送出流量qsを計測する流量計F1,一次ヘッダ5と二次ヘッド6との熱媒圧力差Δpを検出する前記差圧センサS3、二次ヘッダ6における熱媒温度ti(即ち、負荷機器3の入口熱媒温度)を計測する温度センサS4、二次流量Q2(=Σqx)を計測する前
記流量計F2、負荷機器3群からの混合戻り熱媒Cの温度tomを計測する温度センサS5を装備してある。
【0078】
また、図示は省略したが、外気温度や外気湿度などの外気状態を計測するセンサ、あるいはまた、冷凍機1の入口冷却水温度や出口冷却水温度を計測するセンサなども装備してある。
【0079】
システム管理器13及びシステム制御装置14は熱源システムを統括的に制御する制御手段として次の(イ)〜(チ)の制御処理を実行するものにしてある(図2参照)。
【0080】
(イ)負荷機器3の適正入口熱媒温度(設定値)tisについて
システム管理器13は、負荷機器3の入口熱媒温度tiについて、計測情報や機器状態情報等に基づき把握する熱源システムの運転状況あるいはシステム管理者からの付与指令などに応じ適正入口熱媒温度(設定値)tisを決定する。
【0081】
この適正入口熱媒温度tisは、その温度の熱媒Cを負荷機器3群に送給すれば流量調整弁3aによる熱媒流量qxの調整下で各負荷機器3の負荷熱量gx(換言すれば、負荷機器3群全体としての負荷熱量Gx)を十分に処理することができて各負荷機器3の機能を良好に維持し得る温度範囲のうちから決定する熱媒温度であり、本例では、その決定にあたり省エネルギ化の観点から、その温度範囲における上限寄りの熱媒温度(温熱熱源システムでは下限寄りの熱媒温度)を適正入口熱媒温度tisとする。
【0082】
具体的には、この適正入口熱媒温度tisを決定するのに例えば次の如き手法を採用することができる。
【0083】
(手法例1)
熱源システム構成機器の特性情報に基づき予め作成しておくデータテーブルとして、熱負荷演算などにより予め求めた季節や曜日あるいは時刻ごとの適正入口熱媒温度tisを書き込んだデータテーブルを記憶手段に記憶させておき、このデータテーブルから該当日や該当時刻の適正入口熱媒温度tisを読み出す。
【0084】
そして、この読み出した温度について現状における実際の負荷熱量Gxなど現在の実際の運転状況に応じた補正が必要か否かを外気状態などの計測情報や処理対象を所要の目標状態に処理する各負荷機器3の運転状態情報などに基づき判定し、補正が不要な場合には、データテーブルから読み出した温度をそのまま適正入口熱媒温度tisとして決定する。
【0085】
また、補正が必要な場合には、読み出した温度を上記計測情報や運転状態情報などに基づき実状に即したものに補正し、その補正後の温度を適正入口熱媒温度tisとして決定する。
【0086】
なお、読み出した温度の補正が必要な場合としては、例えば負荷機器3としての空調機において、処理対象空気の除湿が不要になり処理対象空気の顕熱処理だけが必要になった場合や、処理対象空気の温度や湿度などの処理前の状態が変化した場合などを挙げることができる。
【0087】
(手法例2)
戻し路9における戻し熱媒流量qbを二次流量Q2に加えた演算最大流量(Q2+qb)の熱媒Cが負荷機器3群に送給されるとする仮想流量条件の下で、熱源システム構成機器の特性情報や種々の計測情報などに基づき、各負荷機器3が処理対象を処理するのに要する適正入口熱媒温度tisを決定する。
【0088】
つまり、戻し路9における戻し熱媒流量qbは言わば余裕熱媒流量であることから、負荷機器3群全体としての熱媒流量である二次流量Q2のうち各負荷機器3の熱媒流量qxが占める流量占有比率r(qx)を求め、負荷機器3の夫々について戻し路9の熱媒流量qbにその負荷機器3の流量占有比率r(qx)を乗じた個別の余裕流量Δqx(=qb×r(qx))を求める。
【0089】
そして、各負荷機器3の熱媒流量qxに個別余裕流量Δqxを加えた個別の演算最大熱媒流量qxm(=qx+Δqx)と各負荷機器3が処理する処理対象の処理前条件とを与条件として、各負荷機器3で処理対象を目標状態に処理するのに必要な入口熱媒温度を熱源システム構成機器の特性情報に基づく数式演算や運転シミュレート、あるいは、熱源システム構成機器の特性情報に基づき予め作成したデータテーブルからの読み出しなどにより求め、このように求めた入口熱媒温度を適正入口熱媒温度tisとして決定する。
【0090】
なお、この方式でも、負荷機器3が空調機である場合、処理対象空気を目標状態に冷却処理するのに処理対象空気の除湿が必要か否かや、処理対象空気の温度や湿度などの処理前の状態の変化などにより適正入口熱媒温度tisが異なるものになる。
【0091】
(手法例3)
過去の運転実績や各日の気象予測などに基づきシステム管理者が適正入口熱媒温度tisを決定してシステム管理器13に入力し、これに対し、システム管理器13は入力された温度を適正入口熱媒温度tisとして採用する。
【0092】
なお、この場合、システム管理器13は、前述と同様、適正入口熱媒温度として入力された温度について現状の実際の運転状況に応じた補正が必要か否かを外気状態などの計測情報や各負荷機器3の運転状態情報などに基づき判定し、補正が必要な場合には、入力された温度を実状に即したものに補正して、その補正後の温度を適正入口熱媒温度tisとして採用するようにするのが望ましい。
【0093】
適正入口熱媒温度tisの決定には上記方式に限らず、その他にも種々の方式を採用できるが、各負荷機器3ごとに適正入口熱媒温度tisが異なる場合は、それらの中から最も低温のもの(温熱熱源システムでは最も高温のもの)を負荷機器3群全体としての適正入口熱媒温度tisとして採用する。
【0094】
また、上記の如き種々の方式により求めた適正入口熱媒温度から所定温度(例えば0.5℃)を減じた温度を最終的な適正入口熱媒温度tisとして決定するようにして、安全率を見込むようにしてもよい。
【0095】
(ロ)冷凍機1の設定出口熱媒温度(最適値)tssについて
システム管理器13は熱源システムの運転状況やシステム管理者からの付与指令などに応じ冷凍機1の設定出口熱媒温度(最適値)tssを選定する。そして、システム制御装置14はその選定に応じて各冷凍機1の設定出口熱媒温度tssを設定変更する。
【0096】
この設定出口熱媒温度tssは前記の如くシステム管理器13が決定する負荷機器3の適正入口熱媒温度tis以下の温度範囲のうちから選定する熱媒温度であり、本例ではシステム管理器13は、冷凍機1の出口熱媒温度tsについて、適正入口熱媒温度tis以下の温度範囲の中から、運転熱源ユニットU全体としての運転状態が所定の最適運転状態になる最適出口熱媒温度を熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の選定手法により選定し、その最適出口熱媒温度を冷凍機1の設定出口熱媒温度tssとする。
【0097】
具体的には、この最適出口熱媒温度(=tss)の選定手法として例えば次の如き手法を採用することができる。
【0098】
適正入口熱媒温度tis以下の温度範囲のうちで、運転熱源ユニットU全体としての運転状態について所定の運転評価値haが最良となる最適出口熱媒温度を熱源システム構成機器の特性情報に基づく数式演算や運転シミュレート、あるいは、熱源システム構成機器の特性情報に基づき予め作成したデータテーブルからの読み出しなどにより選定する。
【0099】
このときの運転評価値haとしては、運転熱源ユニットU全体としての消費エネルギ、運転コスト、換算二酸化炭素排出量、あるいは、それらの2以上の運転評価値の夫々に重み係数を乗じた値の和値、あるいはまた、運転効率など、種々のものを採用することができる。
【0100】
つまり、運転評価値haとして運転熱源ユニットU全体としての消費エネルギや運転コストを採用した場合、運転熱源ユニットU全体としての消費エネルギや運転コストが最小(最良)となる最適出口熱媒温度が選定され、また、運転評価値haとして運転熱源ユニットU全体としての運転効率を採用した場合、運転熱源ユニットU全体としての運転効率が最大(最良)となる最適出口熱媒温度が選定される。
【0101】
また、この最適出口熱媒温度(=tss)の選定にデータテーブルを用いる場合、図3に示す如く、負荷機器3群全体として負荷熱量Gxと外気湿球温度towと後述する運転熱源ユニットUの組み合わせK(本例では組み合わせ番号で表現)との3者を独立変数とし、かつ、異なる運転評価値ha1〜ha3の各々が最良となる運転評価値ごとの最適出口熱媒温度(tss)を従属変数とするデータテーブルDaを予め作成しておき、このデータテーブルDaを用いて各時点の熱源システム運転状況やシステム管理者の付与指令などに応じ、特定運転評価値についての最適出口熱媒温度を設定出口熱媒温度tssとして選定するようにしてもよい。
【0102】
設定出口熱媒温度tssの選定には、その他、種々の手法を採用できるが、設定出口熱媒温度tssを連続的に変更することは設定出口熱媒温度tssの頻繁な設定変更を招いて熱源システム運転の不安定化を招く虞があることから、ここで選定する設定出口熱媒温度tssは所定温度間隔の段階的な温度にするのが望ましい。
【0103】
また、システム管理器13による設定出口熱媒温度tssの選定に対して、システム制御装置14による設定出口熱媒温度tssの設定変更に制限を設けるなどしてもよい。
【0104】
(ハ)運転熱源ユニットUの最適組み合わせKについて
システム管理器13は、運転熱源ユニットUの組み合わせについて、運転熱源ユニットU全体としての運転状態が所定の最適運転状態となる最適組み合わせK(本例では組み合わせ番号で表現)を熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の選定手法により選定する。
【0105】
一方、システム制御装置14は、流量計F2により計測される二次流量Q2、及び、センサS4,S5により計測される負荷機器3の入口熱媒温度tiと負荷機器3群からの混合戻り熱媒Cの温度tomとに基づき負荷機器3群全体としての負荷熱量Gx(=Q2×(tom−ti))を演算し、この演算結果に基づき熱源機台数制御として、現状の運転熱源ユニットUでは負荷機器3群全体としての負荷熱量Gxを処理できない状況になったとき、増段処理として熱源ユニットUの運転ユニット数を増加させる。
【0106】
また、熱源ユニットUの運転ユニット数を現状の運転ユニット数から減少させても負荷機器3群全体としての負荷熱量Gxを処理できる状況になったとき、減段処理として熱源ユニットUの運転ユニット数を減少させる。
【0107】
そして、このように負荷熱量Gxの変化に応じ熱源ユニットUの運転ユニット数を変更する熱源台数制御の増減段処理において、システム制御装置14はシステム管理器13により選定されているその時の最適組み合わせKに従って熱源ユニットUの発停を行い、これにより、運転熱源ユニットUの組み合わせをシステム管理器13により選定された最適組み合わせKに即した組み合わせにする。
【0108】
システム管理器13による上記最適組み合わせKの選定については例えば次の如き手法を採用することができる。
【0109】
過去の運転実績や気象予測などに基づき負荷機器3群全体としての負荷熱量Gxの将来の推移を予測し、この予測負荷推移に基づき、運転熱源ユニットUのユニット数変更が次に必要になると予測される次回の増減段処理から、その後において運転熱源ユニットUのユニット数変更が再び必要になると予測される次々回の増減段処理に至るまでの期間を対象期間とする。
【0110】
そして、この対象期間中において負荷機器3群全体としての負荷熱量Gx(予測)を処理し得る運転熱源ユニットUの組み合わせで、かつ、その対象期間中における運転熱源ユニットU全体としての運転状態について所定の運転評価値hbが最良となる最適組み合わせKを熱源システム構成機器の特性情報に基づく数式演算や運転シミュレート、あるいは、熱源システム構成機器の特性情報に基づき予め作成したデータテーブルからの読み出しなどにより選定する。
【0111】
このときの運転評価値hbとしては、前述と同様、運転熱源ユニットU全体としての上記対象期間中における消費エネルギや運転コストなど、種々のものを採用することができる。
【0112】
(ニ)正の運転流量比率α(一次流量Q1の増大側補正係数)について
ここで言う正の運転流量比率αは、二次流量Q2(=Σqx)に対する一次流量Q1(
=Σqs)の増大側の比率であり、一次流量Q1と二次流量Q2との関係を示す式1(Q
1=α×Q2)においてα≧1の値を採る運転流量比率である。
【0113】
そして、システム管理器13はこの正の運転流量比率αを例えば次の如く決定する。
【0114】
運転冷凍機1の最大出力に対する現状出力の比率である負荷率Rについて、図4に示す如く運転冷凍機1夫々の負荷率Rのうち最小の負荷率Rminが設定閾負荷率Rs(例えば負荷率90%)まで増大すると、その後の最小負荷率Rminの増大(換言すれば、負荷機器3群全体としての負荷熱量Gxの増大)に応じて正の運転流量比率αを設定最小値αminから設定最大値αmaxへ向けて比例的に漸次増大させる。
【0115】
なお、この正の運転流量比率αについては、バイパス路12において通常時は正負いずれの向きのバイパス流も生じないように、又は、往路部分4a側から還路部分4b側へ向かう僅かな正のバイパス流が生じるように、その最小値αminを1.0又は1.0よりも若干大きい値にしておくのが望ましい。
【0116】
また、この正の運転流量比率αの最大値αmaxについては、同図4に示す如くαmaxとして固定値(例えば、2.0)を採用するのに代え、負荷機器3の入出口熱媒温度差Δtx(=to−ti)が設計値よりも大きいほど最大値αmaxを大きくする(換言すれば、正の運転流量比率αの増大幅を大きくする)ようにしたり、また、負荷機器3の入口熱媒温度tiが前述の適正入口熱媒温度tisよりも高温側に逸脱しているとき、その逸脱がない場合よりも最大値αmaxを大きくする(正の運転流量比率αの増大幅を大きくする)ようにしてもよい。
【0117】
(ホ)負の運転流量比率β(一次流量Q1の減少側補正係数)について
ここで言う負の運転流量比率βは、二次流量Q2(=Σqx)に対する一次流量Q1(
=Σqs)の減少側の比率であり、一次流量Q1と二次流量Q2との関係を示す式2(Q
1=β×Q2)においてβ<1の値を採る運転流量比率である。
【0118】
そして本例では、システム管理器13及びシステム制御装置14は、この負の運転流量比率βの調整として、後述するバイパス利用一次流量制御の初期工程で、先ず、運転冷凍機1の出口熱媒温度tsが設定出口熱媒温度tssに安定している状況下で運転一次ポンプ2の送出流量qsの調整により一次流量Q1(=Σqs)を漸次的に減少させて、この一次流量Q1の減少操作により負荷機器3の入口熱媒温度ti(計測値)が前述の如く決定された負荷機器3の適正入口熱媒温度tisになる状態に負の運転流量比率β(<1.0)を調整する(換言すれば、負の運転流量比率βの初期値を決定する)。
【0119】
また、その後、後述するバイパス利用一次流量制御において、図5に示す如く負荷機器3の入口熱媒温度ti(計測値)と適正入口熱媒温度tisとの偏差Δtiに応じて、その偏差Δtiの解消側に一次流量Q1を調整することで、負荷機器3の入口熱媒温度tiが適正入口熱媒温度tisとなる状態を維持するように負の運転流量比率β(<1.0)を調整する。
【0120】
なお、このように負荷機器3の入口熱媒温度ti(計測値)と適正入口熱媒温度tisとの偏差Δtiに応じた一次流量Q1の調整により負の運転流量比率β(<1.0)を調整するのに代え、負の運転流量比率βを次の如く決定及び調整するようにしてもよい。
【0121】
バイパス路12において還路部分4b側から往路部分4a側へ流れる負のバイパス流を形成するバイパス熱媒Cと、運転熱源ユニットUから送出される設定出口熱媒温度tssの熱媒Cとの一次ヘッダ5での混合比率について、その混合により負荷機器3の入口熱媒温度tiが適正入口熱媒温度tisとなる混合比率m(m=(Q2−Q1)/Q1,Q2>Q1)を計測情報に基づき演算により求め、この混合比率mが現出される負の運転流量比率βを式3(m=(Q2−Q1)/Q1)と式2(Q1=β×Q2)との関係(β=1/m+1)に基づく演算により決定する。
【0122】
そして、この決定された負の運転流量比率βを目標比率として運転一次ポンプ2の送出流量qsの調整により一次流量Q1を調整することで、負荷機器3の入口熱媒温度tiが適正入口熱媒温度tisになる状態に負の運転流量比率βを調整する。
【0123】
(ヘ)一次流量制御について
a.通常の一次流量制御
システム制御装置14は、二次流量Q2の変化に応じ一次流量Q1を調整する一次流量制御として、システム管理器13により決定された負荷機器4の適正入口熱媒温度tisとシステム管理器13による選定に従って設定変更した冷凍機1の設定出口熱媒温度tssとの関係について、それら両温度の差温Δts(=tis−tss)が設定閾差温Δtsx未満で、かつ、システム管理器13が決定する正の運転流量比率αが設定最小値αminにある状況では、図6に示す如く、Q1=α×Q2、α=αminの流量関係を維持するように、二次流量Q2(=Σqx)の変化に応じ一次流量Q1(=Σqs)を運転一
次ポンプ2の送出流量調整により調整する通常時の一次流量制御を実行する。
【0124】
なお、設定閾差温Δtsxとしては熱源システムの運転条件等に応じて適当な温度差を設定すればよく、例えばΔtsx=0を採用してもよい。
【0125】
b.増段用過渡制御
また、システム制御装置14は、上記差温Δts(=tis−tss)が設定閾差温Δtsx未満の状況で、運転冷凍機1における最小負荷率Rminが設定閾負荷率Rs以上となりシステム管理器13により決定される正の運転流量比率αが設定最小値αminから漸次的に増大(図3参照)すると、増段用過渡制御として図7に示す如く、正の運転流量比率αに従ってQ1=α×Q2、α>αmin≧1.0の流量関係を維持するように二次流量Q2(=Σqx)の変化に応じ一次流量Q1(Σqs)を調整し、これにより、通
常時の一次流量制御に比べ一次流量Q1を二次流量Q2に対して相対的に増大させる。
【0126】
即ち、この増段用過渡制御では、運転冷凍機1における最小負荷率Rminが100%負荷率まで上昇(換言すれば、運転冷凍機1夫々の負荷率が100%に上昇)して熱源台数制御により増段処理が行なわれるのに先立ち、上記の如く正の運転流量比率αを増大させて一次流量Q1を二次流量Q2に対して予め相対的に増大させておくことで、増段処理の際に新たに起動した冷凍機1の立ち上がり遅れに原因して負荷機器3の入口熱媒温度tiが適正入口熱媒温度tisよりも上昇側に大きく変動した状態になるのを防止する。
【0127】
c.バイパス利用一次流量制御
一方、システム制御装置14は、上記差温Δts(=tis−tss)が設定閾差温Δtsxより大きく、かつ、システム管理器13が決定する正の運転流量比率αが設定最小値αminにある状況では、図8に示す如く、運転熱源ユニットUから送出される設定出口熱媒温度tssの熱媒Cと、バイパス路12において往路部分4a側へ向かう負のバイパス流を形成するバイパス熱媒Cとの混合により、負荷機器3の入口熱媒温度tiが適正入口熱媒温度tisになる状態に、負の運転流量比率βを調整する流量比率調整を伴いながら、Q1=β×Q2、β<1.0の流量関係を維持するように二次流量Q2の変化に応じ一次流量Q1を調整するバイパス利用一次流量制御を実行する。
【0128】
即ち、このバイパス利用一次流量制御では、負荷機器3を通過した後の熱媒Cに残存する保有冷熱を有効利用して、運転熱源ユニットUから送出される設定出口熱媒温度tssの熱媒Cと、バイパス路12において負のバイパス流を形成するバイパス熱媒Cとの一次ヘッダ5での混合により、負荷機器3の入口熱媒温度tsを適正入口熱媒温度tisに調整する。
【0129】
なお、バイパス利用一次流量制御では上述の如く負荷機器3の入口熱媒温度tiと適正入口熱媒温度tisとの偏差Δtiに応じ負の運転流量比率βを調整して一次流量Q1を調整する形態を採るが、これに加えて、システム制御装置14は上記差温Δts(=tis−tss)が設定閾差温Δtsxより大きい状況で、運転冷凍機1における最小負荷率Rminが設定閾負荷率Rs以上となりシステム管理器13により決定される正の運転流量比率αが設定最小値αminから漸次的に増大(図3参照)すると、バイパス利用一次流量制御における増段用過渡制御として、二次流量Q2に対する一次流量Q1の比率である運転流量比率(Q1/Q2)をバイパス利用一次流量制御による調整比率(即ち、上記負の運転流量比率β)よりも正の運転流量比率α(>αmin)の幅だけ予め増大させる制御を実行するものにしてもよい。
【0130】
つまり、このバイパス利用一次流量制御における増段用過渡制御により、バイパス利用一次流量制御の実行下において熱源台数制御による増段処理が行なわれる際にも、その増段処理に先立ち、負の運転流量比率βを実質的に増大させて一次流量Q1を二次流量Q2に対して予め相対的に増大させておき、これにより、バイパス利用一次流量制御の実行下においても増段処理の際に新たに起動した冷凍機1の立ち上がり遅れに原因して負荷機器3の入口熱媒温度tiが適正入口熱媒温度tisよりも上昇側に変動するのを確実に防止する。
【0131】
(ト)一次流量Q1の最適流量配分制御について
システム管理器13は、運転熱源ユニットUに対する一次流量Q1の配分について、運転熱源ユニットU全体としての運転状態が所定の最適運転状態となる最適流量配分比率r(qs)を選定する。
【0132】
これに対し、システム制御装置14は上記一次流量制御(増段用過渡制御やバイパス利用一次流量制御を含む)とともに、運転一次ポンプ2の熱媒送出流量qsをシステム管理器13により選定された最適流量配分比率r(qs)に従って調整する最適流量配分制御を実行する。
【0133】
上記最適流量配分比率r(qs)の選定については、前述と同様、運転熱源ユニットU全体としての運転状態について所定の運転評価値hcが最良となる最適流量配分比率r(qs)を熱源システム構成機器の特性情報に基づく数式演算や運転シミュレートあるいは熱源システム構成機器の特性情報に基づき予め作成したデータテーブルからの読み出しなどにより選定する方式を採用することができる。
【0134】
なお、この最適流量配分制御において、いずれかの運転一次ポンプ2に対する配分流量qsがその一次ポンプ2の最大送出流量を越える場合には、その一次ポンプ2に対する配分流量qsをその一次ポンプ2の最大送出流量にした状態で他の運転一次ポンプ2に対する一次流量配分比率を再決定するのが望ましい。
【0135】
また、この最適流量配分制御において、いずれかの運転一次ポンプ2に対する配分流量qsの変更幅が大きくて、その一次ポンプ2の送出流量qsの調整速度が適正範囲の上限よりも大きくなる場合には、その一次ポンプ2の送出流量qaの調整速度を適正範囲の上限速度に制限するのが望ましい。
【0136】
(チ)増段後保持制御について
システム制御装置14は、前述の如く増段用過渡制御により一次流量Q1を二次流量Q2に対し予め相対的に増大させた状態で熱源台数制御による増段処理を実行した後、その増段処理で新たに起動した冷凍機1についてセンサS2により計測される出口熱媒温度tsが設定出口熱媒温度tssに立ち上がるまでの期間を保持期間ΔTとして、この保持期間ΔTの間、前述の通常(又はバイパス利用)の一次流量制御及び最適流量配分制御に代え増段後保持制御として、増段処理で新たに起動した熱源ユニットUにおける一次ポンプ2の熱媒送出流量qsを小流量の設定制限流量qsminに固定し、増段処理後の一次流量Q1がその設定制限流量qsmin分だけ増段用過渡制御による増大一次流量から増大した状態を保つ。
【0137】
そして、システム制御装置14は、この保持期間ΔTが経過した後、増段後保持制御を解除して前述の一次流量制御及び最適流量配分制御に復帰する。
【0138】
なお、この保持期間ΔTは、新たに起動した冷凍機1の出口熱媒温度tsの計測値が設定出口熱媒温度tssに立ち上がるまでの期間に限らず、新たに起動した冷凍機1の出口熱媒温度tsが設定出口熱媒温度tssに立ち上がるのに要する時間を見込んだ設定時間などにしてもよい。
【0139】
〔別実施形態〕
上述の実施形態では、負荷熱量Gxの変化に応じて熱源ユニットUの運転ユニット数を変更する熱源台数制御、二次流量Q2の変化に応じて一次流量Q1を調整する一次流量制御、運転熱源ユニットUに対する一次流量Q1の配分比率を最適流量配分比率r(qs)に調整する最適流量配分制御、増段処理に際して運転流量比率α(又はβ)を予め増大させておく増段用過渡制御、増段処理後に一次流量制御及び最適流量配分制御を不実施とする増段後保持制御の夫々を制御手段としてのシステム管理器13及びシステム制御装置14に実行させる熱源システムを例示したが、熱源システム運転方法として、これらの制御により行なう各調整の全部ないし一部をシステム管理者が人為的に行なうようにしてもよい。
【0140】
前述の実施形態では、負荷機器3の適正入口熱媒温度(設定値)tisと冷凍機1の設定出口熱媒温度(最適値)tssとの差温Δtsが設定閾差温Δtsx未満か否かで通常の一次流量制御とバイパス利用一次流量制御とを区別して実行するように説明したが、本発明の実施にあたっては、冷凍機1の設定出口熱媒温度tssと負荷機器3の適正入口熱媒温度tisとが等しくなるときに負の運転流量比率βをβ≒1.0にすることをバイパス利用一次流量制御に含めた状態で、通常時の一次流量制御もバイパス利用一次流量制御の一部として実行する制御方式を採用してもよい。
【0141】
前述の実施形態では冷凍機1の設定出口熱媒温度tssを最適出口熱媒温度に自動変更するシステム構成を示したが、本発明は冷凍機1の設定出口熱媒温度tssを固定値ないしはシステム管理者等が人為的に設定する設定値とする場合にも適用できる。
【0142】
また、本発明は、熱源ユニットUを構成する熱源機に冷温水発生機やボイラなどを用いて、その熱源機により熱媒を加熱する温熱熱源システムにも適用できる。
【0143】
その他、本発明の実施において、熱源システム各部の具体的な構成や各制御の具体的な実行方式は前述の実施形態で示したものに限らず、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は空調設備で用いる熱源システムに限らず、種々の冷熱用途や温熱用途の熱源システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0145】
C 熱媒
tss 設定出口熱媒温度(最適出口熱媒温度)
1 熱源機
2 一次ポンプ
U 熱源ユニット
3 負荷機器
4 熱媒循環路
4a 往路部分
4b 還路部分
12 バイパス路
8 二次ポンプ
Q2 二次流量
Q1 一次流量
t1 負荷機器の入口熱媒温度
tis 負荷機器の適正入口熱媒温度
β 運転流量比率
13,14 制御手段
9 戻し路
Δp 熱媒圧力差
10 圧力調整弁
qb 戻し熱媒流量
ts 熱源機の出口熱媒温度
r(qs) 最適流量配分比率
qs 一次ポンプ送出流量
Δti 負荷機器入口熱媒温度の偏差
Gx 負荷熱量
ΔT 保持期間
qsmin 設定制限流量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を設定出口熱媒温度に冷却又は加熱する熱源機とその熱源機に熱媒を送給する一次ポンプとを直列接続した熱源ユニットを負荷機器に対する熱媒循環路に介装し、
この熱源ユニットと前記負荷機器との間において前記熱媒循環路における負荷機器側への往路部分と負荷機器側からの還路部分とを接続するバイパス路を設けるとともに、
前記熱媒循環路における前記バイパス路の接続点よりも負荷機器寄りの箇所に前記負荷機器に対して熱媒を送給する二次ポンプを介装した熱源システムにおいて、
前記負荷機器側の熱媒流量である二次流量の変化に応じて一次ポンプ送出流量の調整により前記熱源ユニット側の熱媒流量である一次流量を調整する一次流量調整を行なう熱源システム運転方法であって、
前記負荷機器の入口熱媒温度について、前記負荷機器で処理対象を所要の目標状態に処理することが可能な熱媒温度で、かつ、その処理に必要な限界温度寄りの熱媒温度を適正入口熱媒温度とし、
前記一次流量調整での前記二次流量に対する前記一次流量の比率である運転流量比率を、前記熱源ユニットからの送出熱媒と前記バイパス路において前記還路部分の側から前記往路部分の側に向かうバイパス熱媒との混合により前記負荷機器の入口熱媒温度が前記適正入口熱媒温度になる状態に調整するバイパス利用一次流量調整を行なう熱源システム運転方法。
【請求項2】
熱媒を設定出口熱媒温度に冷却又は加熱する熱源機とその熱源機に熱媒を送給する一次ポンプとを直列接続した熱源ユニットを負荷機器に対する熱媒循環路に介装し、
この熱源ユニットと前記負荷機器との間において前記熱媒循環路における負荷機器側への往路部分と負荷機器側からの還路部分とを接続するバイパス路を設けるとともに、
前記熱媒循環路における前記バイパス路の接続点よりも負荷機器寄りの箇所に前記負荷機器に対して熱媒を送給する二次ポンプを介装し、
前記負荷機器側の熱媒流量である二次流量の変化に応じて一次ポンプ送出流量の調整により前記熱源ユニット側の熱媒流量である一次流量を調整する一次流量制御を実行する制御手段を設けてある熱源システムであって、
前記制御手段は、前記負荷機器の入口熱媒温度について、前記負荷機器で処理対象を所要の目標状態に処理することが可能な熱媒温度で、かつ、その処理に必要な限界温度寄りの熱媒温度を適正入口熱媒温度とし、
前記一次流量制御での前記二次流量に対する前記一次流量の比率である運転流量比率を、前記熱源ユニットからの送出熱媒と前記バイパス路において前記還路部分の側から前記往路部分の側に向かうバイパス熱媒との混合により前記負荷機器の入口熱媒温度が前記適正入口熱媒温度になる状態に調整するバイパス熱媒混合一次流量制御を実行する構成にしてある熱源システム。
【請求項3】
前記制御手段は、熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の決定手法により前記適正入口熱媒温度を自動的に決定する構成にしてある請求項2記載の熱源システム。
【請求項4】
前記二次ポンプの送出熱媒の一部を前記二次ポンプの吸入側に戻す戻し路を設けるとともに、この戻し路を通じて前記二次ポンプの吸入側に戻す戻し熱媒の流量を調整して前記二次ポンプの送出熱媒圧力と吸入熱媒圧力との熱媒圧力差を設定値に調整する圧力調整弁を設ける構成において、
前記制御手段は、前記戻し路における戻し熱媒流量を前記二次流量に加えた演算最大流量の熱媒が前記負荷機器に送給されるとする仮想流量条件の下で、前記適正入口熱媒温度を決定する構成にしてある請求項3記載の熱源システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記熱源機の出口熱媒温度について、前記熱源ユニットの運転状態が所定の最適運転状態になる最適出口熱媒温度を熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の選定手法により選定して、その最適出口熱媒温度を前記設定出口熱媒温度とする構成にしてある請求項2〜4のいずれか1項に記載の熱源システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記熱媒循環路に並列状態で介装された複数の前記熱源ユニットに対する前記一次流量の配分について、運転熱源ユニット全体としての運転状態が所定の最適運転状態となる最適流量配分比率を熱源システム構成機器の特性情報に基づく所定の選定手法により選定して、その最適流量配分比率に応じて運転一次ポンプの送出流量を調整する最適流量配分制御を前記バイパス熱媒混合一次流量制御とともに実行する構成にしてある請求項2〜5のいずれか1項に記載の熱源システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記バイパス利用一次流量制御において前記運転流量比率を調整するのに、前記負荷機器の入口熱媒温度の計測値と前記適正入口熱媒温度との偏差に応じて、その偏差の解消側に前記一次流量を調整する構成にしてある請求項2〜6のいずれか1項に記載の熱源システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記熱媒循環路に並列状態で介装された複数の前記熱源ユニットについて、その運転ユニット数を前記負荷機器の負荷熱量の変化に応じ変更する熱源台数制御を実行するとともに、
この熱源台数制御で前記熱源ユニットの運転ユニット数を増加させる増段処理に際して、前記運転流量比率を前記バイパス利用一次流量制御による調整比率よりも所定比率幅だけ予め増大させておく増段用過渡制御を実行する構成にしてある請求項2〜7のいずれか1項に記載の熱源システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記増段処理を実行した後の所定保持期間の間、その増段処理で新たに起動した熱源ユニットの一次ポンプ送出流量を設定制限流量に固定して、前記一次流量が前記増段用過渡制御による増大一次流量から設定制限流量だけ増大した状態を保つ増段後保持制御を実行し、その所定保持期間が経過した後、前記増段後保持制御を解除して前記バイパス熱媒混合一次流量制御に復帰する構成にしてある請求項8記載の熱源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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