説明

熱源利用空気調和装置

【課題】エネルギーの点で地球環境の課題として現在の電動式圧縮機を持った冷凍サイクルで室内を冷暖房するシステムに対し、太陽熱や燃料電池の排熱で作動することができる冷暖房装置の実現は過去多くの技術検討や提案がなされてきた。最も製品価格が安い方式としての吸着式除湿を生かした冷房機ではそのエネルギー効率COP=0.5程度であり、
莫大な熱源量が必要で、装置の大きさが大きすぎるという基本的課題があった。
【解決手段】熱源を消費する吸着式除湿を除湿機能のみに限定し、50%以上の割合を占める冷却機能に水蒸発換気排熱式室内空気冷却器を開発し、且つ水蒸発換気冷却式室外空気冷却器と組み合わせるシステムを提示した。この方式によりエネルギー消費の少ない冷却装置を得た。これと吸着式除湿器と組み合わせて巧みに運転制御することにより上記の課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽熱、燃料電池の排熱、ガスエンジン発電装置の排熱など、低温度の熱源を利用して室内空気を除湿し、且つ換気による空気の温度と湿度を高めて排気させることにより冷却し、これらを巧みに組み合わせることにより高いエネルギー効率で冷房を行うことが可能な熱源を利用した空気調和装置を実現させるためのキー技術について提案している。この分野の冷房装置としては吸収式冷凍機、吸着式冷房装置、デシカント除湿装置などが既に実現されて利用されているが何れもエネルギー効率が低い。換気との巧みな組み合わせによる優れた冷房装置の事例は見られない。
【0002】
従来の吸収式などの熱源を利用した冷房乃至は冷凍装置では85℃程度の比較的高温度の低温熱源を利用するもので、太陽熱など60℃程度の低温度熱源を利用して高性能で経済性で有効な装置を実現することが出来なかったため、高温度の工場排熱、特殊熱機器排熱などの破棄すべき排熱があるところ、乃至はガス燃料などを消費することが許されるところで利用されるものが多く、その市場は限定的であった。この為、装置の生産台数は限定的で1000台/年規模の事業者が数社であり、電動式の圧縮冷凍サイクル方式の通常のエアコンの事業者、例えば中国の事業者が1000万台/年もの多量な生産をしている多数の事業者と比較して製品のコストの差異は大きな隔たりがあった。
【0003】
しかも、熱源を利用した冷凍装置や冷房装置では複雑な特殊構造な冷凍装置など、例えば二重効用、三重効用吸収式冷凍機など、を除いて、一般に冷房に用いられる吸着式除湿機や冷房機などに於いてはエネルギー効率(冷房能力と消費熱源熱量の比)を示すCOPは0.5程度と低く、即ち熱源熱量1に対し0.5程度の冷房能力の熱量しか得られず、必要な冷房能力を得るのに熱源熱量が多量に必要であるという欠点があった。また装置の容積の点でも電動式圧縮機を用いた空調装置に比べ2倍以上と大きく、従って製品コストも極めて高額にならざるを得なかった。
これを打開するための有効な手段として低温度の熱源を用いたデシカント除湿機構と、エネルギー消費を最小限に抑えて作動することができる換気の排熱を巧みに利用した冷房機構の組みあわせは有効な方式である点に着目し、この方式の具体化、実現化の技術が本発明の技術分野である。
【背景技術】
【0004】
特許文献1及び2には何れも換気の排熱の空気の温湿度即ちエンタルピーを高めてその結果室内空間を冷房する方式ではあるが、何れも加熱源乃至は冷却源などを用いている。即ち外部エネルギーを利用して換気冷房乃至は換気除湿を行っている事例であり、そのエネルギー効率は優れているとは云えない。確かに、これらの技術は建物の内部空間から単純に室内空気を排気する方式に比べて換気による空調エネルギーの損失が減少する効果を生じている。しかも何れも換気エレメント乃至は全熱交換器と呼ばれる室内外空気間の温度と湿度即ち全熱の交換器を設置して換気によるエネルギー損失を低減させている効果も有しているし、デシカント除湿機能や除湿運転機能を備えている点では湿度制御による空調の快適性確保という点でも優れたシステムである。
【0005】
しかしながら、前述した加熱乃至は冷却にエネルギー源を消費している事に加え、デシカント除湿機能と排気を利用した換気空調の間には相乗効果が無く、消費エネルギー削減効果が限定的である。即ち特許文献1では冷却器と再熱器の実現に多大なエネルギーを消費しており、特許文献2では冷却器6、7と加熱再手段4にやはり多大なエネルギーを消費している。即ち除湿の機能のためには兎も角、冷却機能にエネルギー消費を押さえた技術は見ることが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−123444号広報
【特許文献2】特開2000−111096号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとしている課題は、動力源乃至は熱源をほとんど消費することなく 室内空間を冷却できる装置の実現と、極めて広範囲に獲得できる低温度の熱源、即ち太陽熱で得られる様な60℃前後の温熱や、70℃程度の低温度作動型の燃料電池の65℃前後の排熱など、比較的低温度の温熱エネルギーや自然エネルギーを利用して作動ができる除湿装置の実現、さらにはその双方を組み合わせて効果を高める事ができる冷房システムの実現である。その狙いとは総合エネルギー効率であるCOPが1.2以上の高効率であり、冷房運転による室内空間の温湿度及び空気の流れなどによって影響される冷房快適性であり、且つコンパクトで民生用機器として実用性に耐える経済性を持ったシステムの実現である。
【0008】
具体的な課題として、上記の熱源を利用した装置として現在実現されているデシカント冷房装置のエネルギー効率COPは0.5程度で消費熱量に対し50%の冷房熱量しか得られないため、必要な冷房熱量を得るには多量のエネルギーが必要で装置の容積は実用性が失われてしまうほど大型となるという問題がある。この問題を解消するには、COPが高いエネルギー効率の性能を有する装置であることが重要であり、発明者らはその目標値を1.2に設定している。例えば住宅用の5000KCal/h(5.8KW)の冷房装置を考えた場合、現在実現されている民生用のCOP0.5レベルのデシカント吸着式冷房装置と、本発明が目標としているCOP1.2以上の高性能な冷房装置を運転するときに必要となる太陽熱温水装置の容量の違いは大きなものがある。
【0009】
即ちそのパネルの太陽熱の集熱特性が平均的な特性である400W/平米の場合、その必要なパネルの総面積は12平米対29平米と2.4倍の差があり、COP0.5のままではパネルの面積が大きいために生じるコスト増加、屋根など設置場所の制約、工事費の増加などに直接結びつくという問題がある。同時に装置は大型になり、製品コストは高くなり、このため普及が進まないでいる。
さらに重要な課題として、装置の容積とコストが挙げられる。デシカント冷房装置の全体のコストを考えると、装置を小型化することによる材料費の低減と同時に、デシカントに利用する吸着材を塗布した吸着材エレメントの材料費の低減が重要である。従って、この吸着材エレメントを如何に小型化してその材料費を低減させ、冷房装置を小型化してコストの低減を図り、その状態で冷房能力を確保することが重要な課題となる。
【0010】
その目標値としては、現在普及している圧縮機と冷凍サイクル持った電気モーターを駆動源としたエアコンに匹敵する小容積となるが、具体的には現状の室内機と室外機に分離された所謂スプリット型エアコンの室外ユニットの2倍の容積を目標としたい。
以上の課題を解決するにはこの吸着剤エレメントの容積ベースの性能向上とコストダウンが必要であり、その構造機構の工夫が課題のひとつであると言える。
前述した様に、本発明では吸着材による除湿機能を活かすと同時に、動力や熱量などのエネルギーを必要としない新しい冷却方式を発明して提案する。さらに吸着剤の除湿方式とこの新しい冷却方式の両者を組み合わせて新しい冷房方式を構成するという技術を発明として提示して、前述した課題を解決しようとするものである。従って最も重要な課題は
この冷却方式を実現するためにその方式と細部構造、材料を具体化することであるといえる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1には、室内空気を導入して2分割し、一方の空気を換気空気とし、その換気させる空気の保有熱量(エンタルピー)を増加させて室外に排気することにより他方の室内吹き出し空気を冷却して室内を冷却させる方式を提示している。この具体例は図2の中の冷却装置室内機102に示される。
この方式では室内空気から除湿することは出来ないため、請求項3に提示した様に、デシカント方式の除湿装置を請求項1の冷却装置の入り口室内空気を除湿する方式を提示している。この二つの機能装置のドッキングが極めて高い効果を生むことは後述する。
【0012】
水蒸発冷却方式についてその原理を詳述する。即ち、空気に散水して水の蒸発潜熱により加湿して冷却する方法は良く知られている。庭の打ち水や散水式冷却装置などがその原理を利用している。この空気状態の変化を示すと、室内の空気を湿り空気線図(図1に示す)上でA点に示す。水蒸発潜熱によりその空気は等エンタルピ線上をA点から湿度100%のラインとの交点であるB点方向に移行しており、温度は下がるが湿度が上昇する。これを室内の冷房に利用すれば室内の湿度が上昇して住人は不快に感じることが多い。
【0013】
この方式をさらに改善した方法として、室内の空気を2分割し、一方の空気中に散水して空気そのものを冷却し、この散水冷却された空気で他方の空気を冷却する方式がある。理想的に熱交換を行えば、他方の空気は絶対湿度が上昇することなく、その空気を露点温度E点の途中であるF点まで冷却することが可能である。この時一方の空気はB点からG点まで温度湿度共に上昇している。即ち一方の空気の風量と他方の空気の風量の比はそのエンタルピー変化である(IA−IF)と(IG−IB)の比に逆比例する。ここで、Iはエンタルピを表し、IEとはE点での空気のエンタルピーを示している。
【0014】
次に室内空気をA点で二つに分割するのでは無くて、上記原理で一方の空気で冷却された後のC点で二分割することを考える。分割された一方の空気は分割する前の全体の空気をA点からC点まで冷却し、一方の空気はB点からでは無くC点からJ点にまで加熱され加湿される。この結果(IG−IC)は(IA−IF)よりさらに大きなエンタルピーの差になるから、30%より更に少ない風量、例えば25%程度で一方の75%の空気を冷却することができる。この結果は排熱の一方の空気風量の割合は減少し換気風量が減少する。これによって少ない換気量で同一の室内空気冷却量が確保できるという大きな効果を生むことができる。請求項1に示した基本技術であり、図2の冷却装置室内機102に示される。
【0015】
図2に示される室内冷却用熱交換器1、2、3と室内水蒸発器4、5、6とはチューブを垂直に配置したフィンチューブ熱交換器から構成されその中央の仕切り面で分割した流路を全量の室内空気が下側を通り、その時に室内冷却用熱交換器で冷却される。一方その出口でこの空気は少量と多量に2分割され多量な空気が室内に吹き出され、少量の空気は反転して中央の仕切り面の上側の三つのフィンチューブ熱交換器を通過する。この時三つの熱交換器の上流側から水道水が散布するから少量の空気は水の潜熱で冷却されると同時にフィンチューブ熱交換器を冷却する。この熱交換器は水が散布される状態で作動するからここでは室内水蒸発器と呼称する。
【0016】
水蒸発器と室内冷却用熱交換器はその垂直な多数本のチューブで上下に連結されており、そのため、その内部に注入された水がチューブ内を循環し、蒸発と凝縮を繰り返して熱を伝える。即ち室内冷却用熱交換器から室内水蒸発器へと伝熱される。この結果そこを流れる全量の室内空気は分割後の少量の室内空気により冷却されることとなる。少量の室内空気は水を蒸発させ、全量の室内空気から熱を奪って高温高湿となり、図1中ではH点までエンタルピが上昇して室外に排気される。この分だけ換気が生じることとなる。この結果、換気空気によって室内空気は冷却される。
【0017】
さらにこの効果を高める技術を請求項2に提示した。前記の熱交換をさらに良くするために、この全量の空気と分割後の少量の空気を対向流状態で熱交換させる方法である。即ち熱交換器を極めて高性能なものを使って理想的に熱交換させた場合、全量の空気はC点更には理想的にはE点まで冷却され、一方の分割後の少量の空気はH点を越えた点まで理想的にはJ点まで加湿加熱されることになる。この場合、湿り空気線図から明白な様に(IJ−IC)は(IG−IB)より極めて大きなエンタルピ差となる。このため一方の分割した少量の空気は更に少量で成り立つ事が分かる。
【0018】
これを具体的に実現するには図2の様に熱的にも構造的にも分離された三つの室内冷却用熱交換器と三つの室内水蒸発器を構成する三つのフィンチューブ熱交換器を設置した事例である。この熱交換器を多数設置して理想的に熱交換させた場合室内吹き出し空気は図1のE点となり、室外吹き出し空気はJ点となる。ここで重要な事は多数の室内冷却用熱交換器と室内水蒸発器はそこを流れる空気の最上流と最下流のもの同志がこの事例の様なヒートパイプで連結された様に熱交換関係に構成されていることである。これにより夫々の空気の到達点は限りなくE点とJ点に近付くことができ、装置全体の室内を冷却する特性を向上させることができる。勿論空気の流れ中で最上流、最下流に位置し室内冷却熱交換器と室内水蒸発器は夫々の空気が対向流となる順番で配置され、相互に伝熱関係に構成する。
【0019】
この原理を用いて空調装置を考えたものが請求項1、2に記載の発明である。この空調装置には以上の説明で分かるとおり、全ての作動空気は大気圧状態で作動する。かつ、一方の空気を冷却するためには圧縮機乃至は加熱装置などエネルギーを多量に消費する機構は使用しない。唯一の消費エネルギーは図2で示されるように空気を流通させる為に必要な送風機を駆動するファンモータや水ポンプで消費されるモータ電力のみである。これは電動圧縮式のエアコンに消費される電力や吸収式の冷凍機に消費される熱源熱量に比べ10分の一程度に小さな消費エネルギーである。
【0020】
請求項1、2の発明は。室内を冷却すると同時にエンタルピーの高くなった蒸し暑い空気を室外に排気して冷房効果を発揮させると同時に換気効果を持たせているものである。人が多く集まる劇場やデパートは勿論、現在では換気量の確保が法律によっても推奨され規定されており、通常の電気動力の冷媒循環式のエアコンでは換気ダクト装置の併設が必要で、設備の大型化、コスト増大、排気ロスによる必要空調能力の増大など、大きな課題を抱えている現状からみて、次世代の空調方式として極めて有効な方式を提示する発明である。
【0021】
前述した様に他方の空気で一方の空気を冷却するための具体的な方策は、隔壁を隔てた流路に両方の空気を流して隔壁を通して熱交換させたり、請求項10に提示した様に
他方の空気との熱交換器と一方の空気の熱交換器を管路でつなぎ、その管路内に水などの蒸発媒体を充填してその水の自然循環により伝熱させる所謂ヒートパイプ機能により熱交換させる事が可能である。
【0022】
この両方の空気間の熱交換の性能は空気調和装置全体の性能に大きな影響を持つ。この性能を高める手段として請求項2の発明を提示した。即ち室内冷却用熱交換器及び室内水蒸発器を複数設けて空気との熱交換性能を向上させるものである。当然ながら夫々の室内冷却用熱交換器と室内水蒸発器は熱交換関係に置かれており、室内水蒸発器は空気冷却用熱交換器を冷却する関係である。請求項2の技術はこの関係を高い熱交換性能が得られる所謂対抗流熱交換の方式を採用させるための技術である。
【0023】
即ち、室内冷却用熱交換器と室内水蒸発器を夫々多数乃至は通風方向に二重三重の構造を持たせて設置するのが前提である。請求項2では夫々2個以上の空気冷却用熱交換器と室内水蒸発器を設置して夫々最上流側と最下流側の空気冷却熱交換器と室内水蒸発器とを熱交換させ、順次相互に対向流となる様に構成させる。
【0024】
以上は室内空気を冷却させるための発明に関する。
実際にはこれに加えて湿度の制御、具体的には除湿が必要となる。請求項3は請求項1、2と組み合わせてデシカント除湿機を組みこむ技術である。通常、デシカントを用いた冷房装置では、デシカント材と空気を接触させて除湿させると同時に温度上昇させる。図1では空気はA点からAA点に移動する。通常はこの空気を室外空気などで冷却した後に水を散水加湿して適温適湿な空気に調整して冷房を完了させる。
本発明では除湿され高温度化した空気(AA点)をそのまま請求項1、2、に記載した空気調和装置に導入して冷却するもので、室外空気による冷却と加湿による温湿度調整は不要である。但し、図2に示した様なデシカント除湿機21の前後の空気間で熱交換させて消費熱量を回収させて熱効率を向上させる事は有効である。
【0025】
この方式によれば冷却装置室内機102の室内空気入り口はデシカント除湿器21から出た高温度低湿度の室内空気がそのまま導入されており、その結果全室内空気の入り口温度は比較的高温度で、それが前述した様に、結果として分割されて室外に排気される室内空気の温湿度状態は図2で示したJJ点の様に高温度高湿度の空気となる為、換気による室内を冷却するという目標に一致した運転となるわけである。従ってデシカント除湿器21の下流には室外空気による冷却装置を設置したり、散水して温湿度調整することは本システムでは有効な施策とはならない。
【0026】
室内空気の湿度が低い時にはデシカント除湿の作動を停止し、高い時には作動させる。このように切り替えても本発明の冷房装置では室内空気の冷却効果は維持できる。従って請求項4では湿度によるデシカント除湿運転の作動を停止することを提示している。具体的には図2のデシカント切り替えダンパを切り替えて室内空気をデシカント除湿器21を通過させない様に制御し、熱源媒体の供給を停止する。
【0027】
本発明において、室内冷房機の効果をさらに高める技術を請求項9に提示している。請求項1〜4の発明は室内空気の一部を室外に排気することにより成立している。然しながらこの結果、作動中は常時換気が生じており、その換気量に見合う分は高温高湿度の室外空気が室内に強制導入される。この結果この換気による冷房能力の損失は大きく、以上の冷房装置の効果の半分は消失させてしまうほどの場合がある。
【0028】
請求項5は請求項1の室内外を反転させた方式と考えれば理解し易い。違いは請求項1の場合室外へ排気空気量は30%程度と少ないが、請求項5は換気風量と看做される室内への吹き出し風量は室外への排気風量より多い。この結果図2に提示した様に冷却装置室内機102と冷却装置室外機103の双方の換気量を等しく設定してやればこの冷房装置以外の部分に生じる換気量を抑えてゼロにする事も可能となる。
請求項5に示した冷却装置は請求項1と同等な技術を用いたに過ぎないが、請求項9や図1の様にその双方を1つの冷房装置に組み込んで同時に作動させる事による換気ロス低減の効果を実現させる上で画期的な発明である。
【0029】
その技術を具体的に提示したのは請求項9である。この場合、冷却装置室内機である空気調和機と冷却装置室外機である空調装置を合わせて一体とし、同時に作動させ、より高度な空気調和装置を実現するという効果を生む。
ここで分かることは、冷却装置室内機102の室外への排気風量と冷却装置室外機103の室内吹き出し風量を等しく設定すると、冷却装置室外機の全風量は冷却装置室内機の全風量の約20〜40%と小さな割合に設定してやる事が双方を一体化したときの最適運転を実現する条件となる。
【0030】
請求項6は請求項2の室内空気処理を室外空気処理に置き換えたものである。請求項7は請求項3が請求項2に対して湿度制御機能を付加するという機能を提示した目的と手段は同じである。
デシカント除湿装置101の熱源としては、太陽熱、燃料電池排熱、ガスエンジンコジェネ排熱、ヒートポンプ凝縮熱、ガス燃焼熱など多くの種類の熱源を利用できる。
【0031】
請求項8は請求項4と同等な機能を果たす技術を提示したものであるが、重要な違いがある。即ち請求項8は作動空気である室外空気の湿度を検知するのではなくて、あくまでも空調対象である室内空気の湿度を検知して作動制御を行うものである。室内の顕熱負荷と潜熱負荷の状態によって湿度が変わるわけで、その湿度を検知することこそ重要である。図2に示した冷房装置に於いては室内空気の温湿度センサー25によって全体の作動を制御する。
【0032】
請求項9は請求項1、2、3、4の室内空気を扱う空気調和装置と請求項5、6、7、8の室外空気を扱う空気調和装置を組み合わせて1つの空気調和装置とするもので、基本的には双方の換気風量を同じ風量にして出入りの換気風量をゼロにすることにより実質的に空気の入れ替えは行っているので、その他の換気を必要としない空気調和装置をつくりあげようとする狙いである。図2に記載の実施例はこの一例である。
【0033】
請求項10は室内乃至は室外冷却用熱交換器と室内乃至は室外水蒸発器の構成とその間の伝熱に両者にまたがって配設された管路を用い、その管路内に水等の冷媒をチャージして蒸発凝縮によってそれを循環させて伝熱を行う所謂ヒートパイプ方式を用いた方法を提示している。ヒートパイプは伝熱性能が高く、簡単な構造で、信頼性の高い伝熱方式である。
【発明の効果】
【0034】
以上の発明により以下の様な効果を期待できる。
1、水蒸発潜熱を有効に使って、ファンモータと水ポンプ以外に熱源や動力源を使わずに室内空気の冷却を行う空気調和装置を提供できる。
2、室内空気を扱う空気調和装置と室外空気を扱う空気調和装置を組み合わせて、換気量として室内外の出入り空気量をバランスさせた空気調和装置を提供できる。
3、以上の装置に熱源を利用したデシカント除湿器を組み込んで除湿と冷却の双方を効率よく行う空気調和装置を提供できる。
【0035】
4、室内空気湿度を検知して湿度が低い時はデシカント除湿器の作動を停止して熱源の使用量を削減できる空気調和装置を提供できる。
5、以上の空気調和装置は圧縮機や冷凍サイクルを用いた従来の空気調和装置に比べ、製造減価の低減が期待でき、また一次エネルギー使用量の少ない空気調和装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の空気の状態変化を示す湿り空気線図
【図2】本発明による代表的な空気調和装置の構造図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以上の発明を具体化したパッケイジ型の高効率空気調和装置の代表事例を図2に示す。この装置は最下部のデシカント除湿装置101、中間の冷却装置室内機102、最上部の冷却装置室外機から構成されている。デシカント除湿装置の中心はデシカント除湿器21であり、フィンチューブ熱交換器のフィンの外表面に吸着材であるゼラチンの結晶を焼き付けて湿気を吸収できる構造になっている。熱源媒体管路22から25℃の水道水がデシカント除湿器の銅管内に送られるとデシカント切り替えダンパ52でガイドされた室内空気はその湿度分をデシカント除湿器の吸着材に吸着される。この運転を5分程度継続すると、デシカント切り替えダンパが切り替えられて室外空気が導入され、同時に熱源媒体管路22に太陽熱温水器で暖められた60℃の温熱媒体であるプロピレングリコールが送られる。この結果デシカント除湿器21の吸着材から放湿され、この放湿作業は5分程度継続される。これを繰り返して室内空気から除湿し、その場合は室外空気へと放湿される。放湿運転の時はその出口空気から熱回収器23で熱を回収し、入り口の熱回収放熱器24に於いて放熱するから太陽熱の消費量は削減される。熱回収器23と熱回収放熱器24とは図示していないが、ヒートパイプを介して伝熱関係に構成されている。
【0038】
この除湿運転は室内空気の温湿度が温湿度センサーによって検知され、湿度が高く運転すべきと判定された時のみ運転され、それ以外では除湿運転は行われない。
除湿運転作動有無にかかわらず、1000立方m/時間の風量の室内空気は室内ファン62を通して冷却装置室内機102に送られる。その室内空気は室内冷却用熱交換器1、2、3、を通過して冷却されてその75%が室内に吹き出させる。その他の25%である250立方m/時間の室内空気はUターンして室内水蒸発器4、5、6によって加湿加熱されて室外に放出される。この間に室内水蒸発器を冷却し、さらにその中心に配設されたヒートパイプチューブを冷却しその内面に水を凝縮させる。凝縮した水は重力によりヒートパイプ内を落下し冷却装置室内機に達し、そこで蒸発して該冷却装置室内機を冷却し、最終的に室内空気を冷却する。
【0039】
冷却装置室内機の3台の室内冷却用熱交換器の配列と室内水蒸発器の3台の配列は、そこの空気の流れの最上流にあるものと最下流にあるものがヒートパイプを内包した一体のフィンチューブ熱交換器で構成されている。即ち全量の室内空気と分割後の25%の冷却用空気は対向流で熱交換される様に構成されている。室内冷却用熱交換器と室内水蒸発器は4台以上で構成しても良いが装置の複雑化、コスト増加を考慮して3台に設定している。
【0040】
最上部にある冷却装置室外機は、330立方m/時間の室外空気が導入され室外冷却熱交換器11、12、13によって冷却された後その75%である250立方m/時間の風量が室内に吹き出される。残りの25%がUターンして室外水蒸発器14、15、16を通過して散水された水の蒸発熱でこれを冷却し、自身は高湿度高温度になって室外に排出される。以上の室内及び室外水蒸発器は全て6台の散水器7によって散水され水蒸発器のフィン外表面を濡らしながらそこを通過する空気を加湿加熱する。
【0041】
冷却装置室内機102の室外排気風量と冷却装置室外機の室内吹き出し風量は同じ250立方m/時間であるから、換気量として出入り風量が一致している。これは建物の必要換気量の風量と同じ風量に設定している。この結果、通常の冷房機の運転では換気ダクトによる換気量の確保が必要であるが、この冷房機ではその必要が無い。その結果、追加換気で冷気を排出して生じる換気エネルギー損失の発生が無い。
【0042】
以上の事例での室内への吹き出し空気の温度は吸い込み室温に対し10Deg程度冷却されている。またその湿度はデシカント除湿装置101が作動していない時は吹き出し空気の絶対湿度が吸い込み空気と同じであるが、デシカント除湿装置101を作動する事によって室内空気の相対湿度は10%程度低下させることができる。この湿度はデシカント除湿装置の作動時間割合を調整することで設定される。
【0043】
室外冷却熱交換器と室外水蒸発器の構成と配置は冷却装置室内機102のそれと同様の考えでなされている。
以上の事例で分かる通り、この空気調和器によれば室内の冷却には殆ど動力も熱量も使わないし、除湿に対しても太陽熱や燃料電池の排熱などの低温度熱源を利用できる。しかしてエネルギー地球環境の点では極めて優れた冷房機能を提供できるものである。因みに
総合エネルギー効率COP=1.2以上が得られるから、電動圧縮機を用いた冷房機に比較して一次エネルギー使用量は少なく、地球環境に優れている冷房が提供できる。
暖房には暖房用放熱器24に太陽熱媒体を通じて暖房すれば、まさに一次エネルギー使用量最小の空調機が実現できるものである。
さらに温度と湿度が容易に設定できるから、従来の電動式圧縮機で室内熱交換器を冷やして冷房する方式に比べて、快適性、健康性などに優れた冷房運転が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上の説明でわかる通り、極めて広い市場での地球環境に優れた空調機を提供できるから、従来の電動圧縮機式の空調機の広大な世界市場である約4兆円の市場に浸透していくことが期待される。その10%でも4000億円の事業を構成することができるから、産業上の視点でも極めて重要な発明であると認識している。
【符号の説明】
【0045】
1 室内冷却用熱交換器1
2 室内冷却用熱交換器2
3 室内冷却用熱交換器3
4 室内水蒸発器1
5 室内水蒸発器2
6 室内水蒸発器3
7 散水器
11 室外冷却用熱交換器1
12 室外冷却用熱交換器2
13 室外冷却用熱交換器3
14 室外水蒸発器1
15 室外水蒸発器2
16 室外水蒸発器3
21 デシカント除湿器
22 熱源媒体管路
23 熱回収器
24 熱回収放熱器
25 暖房用放熱器
26 温湿度センサー
51 デシカント切り替えダンパー1
52 デシカント切り替えダンパー2
53 室内ダンパー
61 室外ファン
62 室内ファン
63 室外ファン
101デシカント除湿装置
102冷却装置室内機
103冷却装置室外機




【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内に導入した室内空気の全量を室内冷却用熱交換器で冷却した後に少量と多量の室内空気とに2分割し、前記多量の室内空気を室内に吹き出させて室内を冷房し、前記少量の室内空気を室内水蒸発器によって加湿した後に屋外に排気するとともに、前記室内冷却用熱交換器と前記室内水蒸発器とを熱交換関係に構成して前記室内冷却用熱交換器から前記室内水蒸発器へと伝熱させて熱移動させることにより、装置内に導入した前記室内空気の全量を、分割後に室内水蒸発器に置いて加湿されて同時に冷却された前記少量の室内空気によって冷却させる様に構成したことを特徴とした空気調和装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和装置に於いて、前期室内冷却用熱交換器を空気の流れ方向に沿って、熱的に分離された状態で2個以上設置し、一方前記室内水蒸発器を空気の流れ方向に沿って熱的に分離された状態で同数個設置し、
前記室内空気の全量が最初に熱交換する最上流の前記室内冷却用熱交換器と前記少量の空気が最後に加湿される場所である最下流にある前記室内水蒸発器とが、また室内空気の全量が最後に熱交換する最下流の前記室内冷却用熱交換器と前記少量の室内空気が最初に加湿される最上流の前記室内水蒸発器とを夫々熱交換関係に構成したことを特徴とした空気調和装置。
【請求項3】
吸着剤で空気の湿分を吸着し、該吸着剤を熱源により加熱して吸着した湿分を脱着し、これを繰り返し行う方式の水分吸着式除湿機、即ち通称デシカント除湿機と呼ばれる除湿装置を組み込んで前記空気調和装置に入る室内空気の除湿を行うようにしたことを特徴とした請求項1及び2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
室内空気の湿度を検知し、該湿度が設定値以上の時のみ前記水分吸着式除湿機を作動させ、設定値以下の時には作動させないことを特徴とした請求項3に記載の空気調和装置。
【請求項5】
装置内に導入した室外空気の全量を室外冷却用熱交換器で冷却した後に少量と多量の空気に2分割し、前記多量の室外空気を室内に吹き出させて室内を冷房し、前記少量の室外空気を室外水蒸発器によって加湿した後に室外に排気するとともに、前記室外冷却用熱交換器と前記室外水蒸発器とを熱交換関係に構成して前記室外冷却用熱交換器から前記室外水蒸発器へと伝熱させて熱移動させることにより、装置内に導入した前記室外空気の全量を、分割後に室外水蒸発器に置いて加湿されて同時に冷却された前記少量の室外空気によって冷却させる様に構成したことを特徴とした空気調和装置。
【請求項6】
請求項5に記載の空気調和装置に於いて、前期室外冷却用熱交換器を空気の流れに沿って、熱的に分離された状態で2個以上設置し、一方前記室外水蒸発器を空気の流れ方向に沿って、熱的に分離された状態で同数個設置し、
前記室外空気の全量が最初に熱交換する最上流の前記室外冷却用熱交換器と前記少量の空気が最後に加湿される場所である最下流にある前記室外水蒸発器とが、また室外空気の全量が最後に熱交換する最下流の前記室外冷却用熱交換器と前記少量の室外空気が最初に加湿される最上流の前記室外水蒸発器とを夫々熱交換関係に構成したことを特徴とした空気調和装置。
【請求項7】
吸着剤で空気の湿分を吸着し、該吸着剤を熱源により加熱して吸着した湿分を脱着し、これを繰り返し行う方式の水分吸着式除湿機、即ち通称デシカント除湿機と呼ばれる除湿装置を組み込んで前記空気調和装置に入る室外空気の除湿を行うようにしたことを特徴とした請求項5及び6に記載の空気調和装置。

【請求項8】
室内空気湿度を検知し、該湿度が設定値以上の時のみ前記水分吸着式除湿機を作動させ、設定値以下の時は作動させないことを特徴とした請求項7に記載の空気調和装置。
【請求項9】
請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の空気調和装置と、請求項5、6、7、8の何れか一項に記載の空気調和装置の双方を合わせて一体の装置としたことを特徴とした空気調和装置。
【請求項10】
前記室内冷却用熱交換器乃至と前記室内水蒸発器及び前記室外冷却用熱交換器と前記室外水蒸発器とを連通する管路を用い、該管路の管内に水乃至は冷媒液を注入して自然蒸発循環方式のヒートパイプとなし、該ヒートパイプによって前記室内冷却用熱交換器と前記室内水蒸発器及び前記室外冷却用熱交換器と前記室外蒸発器との間で伝熱を行わせたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9の何れか一項に記載の空気調和装置。


【図1】
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【図2】
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