説明

熱溶着フィルムおよびその製造方法

【課題】従来の技術では装飾層を保護する保護層を別途設ける必要があった。しかし保護層を設ける工程では、環境の要因による製品の不具合、コストの増加、そして環境への影響という問題点があった。これに鑑み、製造工程を簡素化し、製造コストを削減することができる熱溶着フィルムを提供する。
【解決手段】熱溶着フィルムは、熱溶着剤膜と、熱溶着剤膜上に設けられた保護層とを備える。熱溶着剤膜は熱を受けて接着力を発現する。前記保護層の外表面に熱が加わると、前記熱溶着剤膜から発現される前記接着力により熱溶着フィルムは被接着体上に貼付される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱溶着フィルムに関し、さらに特に、筐体に貼付され、筐体の外観を強調する熱溶着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写技術は、熱転写フィルムの図案または標識を物品の表面に転写する技術である。通常、図案を有する熱転写フィルムを予め準備した後、熱転写フィルムに圧力および高温を付与することにより、その上の図案は他の物品の表面に転写される。
【0003】
図1Aは従来の熱転写フィルムの断面図である。熱転写フィルム100は基材110と、剥離層120と、装飾層130と、接着層140とからなる。剥離層120は基材110の一方の面に塗装されている。剥離層120上には例えばインク層または金属層といった装飾層130が設けられており、装飾層130の外面には接着層140が塗装されている。図1Bは、従来の転写フィルム100を用いた転写方式を概略的に示している。まず、接着層140を物品150の側に配して熱転写フィルム100で物品150の外面を被覆する。続いて熱転写フィルム100の基材110側を加圧および加熱することで、接着層140を物品150上に接着させる。その後、基材110を剥離層120にて装飾層130から剥離する。剥離層120と装飾層130との間の接着力は装飾層130と接着層140との間の接着力よりも弱いため、基材110と剥離層120とを装飾層130から剥離することができて、物品150上には装飾層130が残されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材110を剥離した後は、装飾層130は外部に直に接触することになるため、擦り傷や損傷が生じやすい。したがって、通常は装飾層130を保護すべく、別途保護層を吹きつけたり塗装したりすることを要する。しかしながら、保護層を吹きつけたり塗装したりする工程において、空気中の微粒粉塵またはいくつかの加工工程が、製品に欠陥を生じさせることがあり、そのため熱転写工程のコストが予想外に増大してしまう。また加えて、保護層の吹きつけ塗装およびベーキング工程において、その中の有機溶剤が揮発することで環境に害を及ぼすこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、熱溶着フィルムを提供するものである。熱溶着フィルムは、熱溶着剤膜と保護層とを備える。保護層は、熱溶着フィルム上に密着して設けられている。熱を受けたとき、熱溶着剤膜は溶融して接着力を発現する。この態様において、熱溶着剤膜は保護層をその上に直に設けるための基材として機能する。保護層の外表面に熱が加わると、熱溶着剤膜は接着力を発現して被接着体上に貼付される。
【0006】
上記の態様において、前記熱溶着剤膜の材質は、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(ethylene vinyl acetate−based resin)、ポリアミド系樹脂(polyamide−based resin)、ポリエステル系樹脂(polyester−based resin)、ポリウレタン系樹脂(polyurethane−based resin)、エポキシ系樹脂(epoxy−based resin)、ポリエチレン系樹脂(polyethylene−based resin)、ポリプロピレン系樹脂(polypropylene−based resin)または熱可塑性ラバ−(thermoplasticrubber)とすることができる。
【0007】
上記の態様において、前記保護層は放射線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂からなる。
【0008】
実施形態の一例において、保護層は装飾層を備えている。この装飾層は熱溶着剤膜に密着している。他の実施形態において、装飾層はインク層、金属層、樹脂フィルムまたはセルロースフィルムとすることができる。
【0009】
本発明の他の態様によれば、熱溶着フィルムの製造方法を提供するものである。この方法は、熱で溶融して接着力を発現する熱溶着剤膜を準備する工程と、熱溶着剤膜上に保護層を設ける工程と、エネルギーを付与して保護層を硬化させる工程と、を含む。前記熱溶着フィルムは、硬化された前記保護層の外表面に熱が加わると、前記接着力により被接着体上に貼付される。
【0010】
本発明のさらに他の態様によれば、熱接着方法を提供する。この方法は、(1)熱を受けて接着力を発現する熱溶着剤膜と、熱溶着剤膜上に密着して設けられている保護層とを備え、熱溶着剤膜が保護層を直接設けるための基材として機能する熱溶着フィルムを準備する工程と、(2)熱溶着剤膜が保護層と被接着体との間に位置するように熱溶着フィルムを被接着体上に配置する工程と、(3)熱接着フィルムにおける保護層の外表面を加熱して熱溶着剤膜を溶融させて、溶融した熱溶着剤膜から発現される接着力により、前記熱溶着フィルムと前記被接着体とを密着貼付する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱溶着フィルムによれば、製造工程を簡素化し、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】従来技術の熱転写フィルムの断面概略図である。
【図1B】従来技術の熱転写フィルムの断面概略図である。
【図2】本発明の実施形態の一例を示す断面概略図である。
【図3A】本発明の実施形態の他の一例を示す断面概略図である。
【図3B】本発明の実施形態の他の一例を示す断面概略図である。
【図4】本発明の実施形態の一例により熱溶着フィルムを筐体に適用した断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2を参照されたい。これは本発明の実施の形態の一例である熱溶着フィルム200の断面概略図である。熱溶着フィルム200は、例えばコンピュータの筐体、ノート型パソコンの筐体、またはその他電子製品の筐体の外面に貼付されるためのものである。図2に示すように、熱溶着フィルム200は熱溶着剤膜210と、熱溶着剤膜210上に密着して設けられている保護層230とを備えている。
【0014】
熱溶着剤膜210は熱溶着フィルム200を筐体の表面に貼付するためのものである。熱溶着剤膜210は加熱されたときに溶融状態となり、これにより接着力を発現することになる。より詳細に言えば、熱溶着剤膜210は室温では固体であるが、高温時には溶融して接着力を発現する。温度が室温にまで戻ると、熱溶着剤膜210はまた固体に戻る。本発明においては、熱溶着剤膜210は基材および接着剤の機能を兼ね備えている。常温(言い換えれば融点よりも低い温度)においては、保護層230を熱溶着剤膜210上に直接設けることができる。しかし、熱溶着剤膜210が高温にさらされると、熱溶着剤膜210は熱により溶融して接着力を発現し、これにより熱溶着フィルム200は筐体の表面に貼付される。
【0015】
熱溶着剤膜210の材質としては、制限されるものではないが、例えばエチレン−酢酸ビニル系樹脂(ethylene vinyl acetate−based resin)、ポリアミド系樹脂(polyamide−based resin)、ポリエステル系樹脂(polyester−based resin)、ポリウレタン系樹脂(polyurethane−based resin)、エポキシ系樹脂(epoxy−based resin)、ポリエチレン系樹脂(polyethylene−based resin)、ポリプロピレン系樹脂(polypropylene−based resin)または熱可塑性ラバー(thermoplasticrubber)とすることができる。
【0016】
またさらなる実施形態においては、熱溶着剤膜210の厚みは約5μmから約800μmの間である。例えば熱溶着剤膜210の厚みを約50μm、100μm、200μm、300μm、500μmまたは700μmとすることができる。さらに特定の実施形態においては、熱溶着剤膜210は、ポリエステル系樹脂からなり、その厚みを75μmから100μmとすることができる。
【0017】
保護層230は、熱溶着フィルム200が貼付された筐体を保護するために、熱溶着剤膜210上に配置される。保護層230は透明または不透明の材料からなり、その適用に応じていずれかが用いられる。例えば、筐体の外観に光沢をもたらしたい場合は、透明の保護層230を用いれば、筐体に光沢のある外観を付与することができる。一方、他の実施形態においては、保護層230中に顔料(pigment)を加えて、保護層230に色を持たせて筐体自体の色を覆い隠してもよい。
【0018】
本発明の実施形態の一例によれば、保護層230は放射線硬化性樹脂または電子線硬化性樹脂製とすることができる。実施形態の一例においては、放射線硬化性樹脂を熱溶着剤膜210上に塗装して、放射線硬化性樹脂層を熱溶着剤膜210上に形成した後、放射線エネルギー(例えば紫外線)をこの樹脂層に照射すると、放射線硬化性樹脂層は紫外線の照射後に硬化して、保護層230が形成される。実施形態の他の一例においては、電子線硬化性樹脂を熱溶着剤膜210上に塗布して、さらに電子線をこの電子線硬化性樹脂層に照射すると、電子線硬化性樹脂層は電子線の照射後に硬化して保護層230が形成される。
【0019】
実施形態の一例において、放射線硬化性樹脂または電子線硬化性樹脂は少なくとも一種の単量体を含んでおり、前記単量体としては例えば、メタクリル酸系単量体(methacrylate−based monomer)、アクリル酸系単量体(acrylate−based monomer)、ビニル系単量体 (vinyl−based monomer)、ビニルエーテル系単量体(vinyl−ether based monomer)またはエポキシ系単量体 (epoxy−based monomer)とすることができる。ただし本発明は上記した単量体に限定されない。
【0020】
実施形態の他の一例において、放射線硬化性樹脂または電子線硬化性樹脂は少なくとも一種の低重合体を含み、前記低重合体としては、例えば不飽和ポリエステル系低重合体(unsaturated polyester−based oligomer)、エポキシアクリル酸系低重合体(epoxy acrylate−based oligomer)、ポリウレタンアクリル酸系低重合体 (polyurethane acrylate−based oligomer)、ポリエステルアクリル酸系低重合体 (polyester acrylate−based oligomer)、ポリエーテルアクリル酸系低重合体 (polyether acrylate−based oligomer)、アクリル系低重合体(acrylated acrylic oligomer)またはエポキシ系樹脂低重合体(epoxy−based resin oligomer)とすることができる。ただし本発明は上記した低重合体に限定されない。
【0021】
特定の実施形態において、放射線硬化性樹脂は、二官能性アクリル酸系単量体を約60から120重量部、二官能性エポキシアクリル酸系低重合体を約60から120重量部、光開始剤を約5から10重量部、酢酸エチルを約50から100重量部含む。例えば、放射線硬化性樹脂は、二官能性アクリル酸系単量体を80から100重量部、二官能性エポキシアクリル酸系低重合体を80から100重量部、光開始剤を6から8重量部、酢酸エチルを60から80重量部含むようにできる。
【0022】
本発明の他の実施形態によれば、保護層230は熱硬化性樹脂製とすることができる。保護層230の材質に好ましい熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではないが、アクリル酸系樹脂(acrylic−based resin)、アクリルポリオール系樹脂(acrylic polyol based resin)、ビニル系樹脂 (vinyl−based resin)、ポリエステル系樹脂(polyester−based resin)、エポキシ系樹脂(epoxy−based resin)およびポリウレタン系樹脂(polyurethane−based resin)とすることができる。
【0023】
保護層230の厚みには特殊な限定はない。実施形態の一例においては、保護層230の厚みは約5〜100μmであり、例えば10μm、20μm、30μm、50μmまたは80μmとすることができる。
【0024】
図3Aおよび図3Bを参照されたい。これは本発明の実施形態の他の一例における熱溶着フィルム300の断面概略図である。熱溶着フィルム300は熱溶着剤膜310と、装飾層320を有する保護層330とを備えている。本実施形態において、保護層330は装飾層320と、樹脂層322(保護材料層)とを備えており、装飾層320は熱溶着剤膜310に密着している。
【0025】
図3Aおよび図3Bに示すように、装飾層320は熱溶着剤膜310上に設けられ、図案またはデザインを供給する。装飾層320の材料または図案としては、何らかの限定はなく、熱溶着フィルム300で表現したい図案、デザインおよび外観により決まる。図3Aに示すように、装飾層320は、熱溶着剤膜210全体を覆う連続層とすることができる。または、図3Bに示すように、装飾層320は、熱溶着剤膜310の一部を覆って図案化された装飾層320としても良い。実施形態の一例において、装飾層320はインク層であって、例えば、ローラ印刷などの方式でインク層を熱溶着剤膜310上に形成することができる。他の実施形態においては、装飾層320は金属層であって、例えば蒸着またはスパッタリングの方式で金属を熱溶着剤膜310上に蒸着またはスパッタリングして形成することができる。その他の実施形態において、金属層の材料は金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、スズまたはチタンとすることができる。装飾層320を金属層としたとき、熱溶着フィルム300は金属的な質感を備えた外観とすることができる。
【0026】
他の実施形態において、装飾層320は例えば金属フィルム、樹脂フィルムまたはセルロースフィルムといったフィルムとすることができる。この形態においては、加熱または圧力を加えて、金属フィルム、樹脂フィルムまたはセルロースフィルムを熱溶着剤膜310上に貼付することができる。
【0027】
特定の実施形態において、装飾層320は蒸着方式で形成された厚みが約50nm〜300nmである銀層となっている。他の特定の実施形態においては、装飾層320は厚みが約10μmから約30μmである繊維的な質感を持つセルロースフィルムとなっている。
【0028】
装飾層320を保護するために、樹脂層322(または保護材料層)を装飾層320上に設けている。装飾層320としてインク層が使用された場合には、樹脂層322(または保護材料層)はインク層の脱落または擦り傷を防止することができる。装飾層320として金属層が採用された場合には、樹脂層322(または保護材料層)は透明の保護層とすることができ、金属層に擦り傷が生じるのを防止するだけでなく、金属層の光沢および質感を向上させることができる。装飾層320が金属フィルム、樹脂フィルムまたはセルロースフィルムである場合には、樹脂層322はこれらフィルムの劣化または装飾層の表面の損傷を防止することができる。樹脂層322の材料としては、上記した放射線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂とすることができる。
【0029】
また、装飾層320は予め保護層330内に形成されていてもよい。例えば、装飾層320を樹脂層322(保護材料層)上に配置することで、装飾層320と樹脂層322により構成される保護層330が予め形成される。続いて、熱溶着剤膜310上に保護層330が配置される。より好ましい配設方式は、装飾層320を樹脂層322と熱溶着剤膜310との間に配置するものである。
【0030】
図4を参照されたい。これは本発明の実施形態の一例により、熱溶着フィルム300を筐体400に適用した断面概略図である。図4に示すように、熱溶着フィルム300の熱溶着剤膜310は筐体400の表面上に貼付されている。熱溶着剤膜310上には装飾層320および保護材料層(樹脂層)322からなる保護層330が設けられている。実施形態の一例において、装飾層320は蒸着アルミニウム層であり、その場合、筐体における熱溶着フィルム300が貼付されている部分は金属的な質感が呈せられる。
【0031】
本発明の他の態様によれば、熱溶着フィルムの製造方法を提供するものである。この方法は、熱を受けて接着力を発現する熱溶着剤膜を準備する工程と、熱溶着剤膜上に保護層を設ける工程と、エネルギーを付与して保護層を硬化させる工程と、を含み、熱溶着フィルムは、硬化された保護層の外表面に熱が加わると、前記接着力により被接着体上に貼付されるものである。実施形態の一例において、前記保護層内には装飾層が設けられており、しかも前記装飾層は熱溶着剤膜に密着している。前記方法において、付与されるエネルギーは熱エネルギーまたは光エネルギーとすることができる。
【0032】
本発明のさらに他の態様によれば、熱接着方法を提供する。この方法は、(1)熱を受けて接着力を発現する熱溶着剤膜と、熱溶着剤膜上に密着して設けられている保護層とを備え、熱溶着剤膜は保護層を直接設けるための基材として機能する熱溶着フィルムを準備する工程と、(2)熱溶着剤膜が保護層と被接着体との間に位置するように熱溶着フィルムを被接着体上に配置する工程と、(3)熱溶着フィルムにおける保護層の外表面を加熱して熱溶着剤膜を溶融させて、溶融した熱溶着剤膜から発現される接着力により、前記熱溶着フィルムと前記被接着体とを密着貼付する工程と、を含む。実施形態の一例において、前記方法は、前記保護層に圧力を付与する工程をさらに含む。他の実施形態において、前記方法における保護層は熱溶着剤膜に密着している装飾層をさらに備えている。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
本実施例では、図2に示すように、熱溶着フィルム200は熱溶着剤膜210と、保護層230とを備えている。熱溶着剤膜210は厚みが100μmでありポリエステル樹脂により形成されている。保護層230は放射線硬化性樹脂により形成されており、放射線硬化性樹脂は、二官能性アクリル酸系単量体(二官能性アクリル酸エステル系単量体)を約80重量部、二官能性エポキシアクリル酸系低重合体(二官能性エポキシアクリル酸エステル系低重合体)を約100重量部、光開始剤を約5重量部、酢酸エチル(溶剤として)を約100重量部で混合し、この混合物を重合させることにより得られる。この放射線硬化性樹脂を熱溶着剤膜210上に塗布して、続いて約80℃の熱風でベーキングする。最後にエネルギー量が約800mJ/cmの紫外線を照射して、樹脂層を硬化させて保護層230を形成する。放射線硬化性樹脂層の塗布厚みを調節することで保護層230の厚みを制御することができる。本実施例において、保護層230の厚みは約8μmである。
【0034】
(実施例2)
本実施例では、図3Aに示すように、熱溶着フィルム300は熱溶着剤膜310と、装飾層320と、樹脂層322とを備えている。熱溶着剤膜310は厚みが約75μmでありポリエステル樹脂により形成されている。装飾層320は蒸着工程により形成された厚みが約200nmであるアルミニウム層である。樹脂層322は放射線硬化性透明樹脂で形成されており、放射線硬化性透明樹脂は、二官能性アクリル酸系単量体(二官能性アクリル酸エステル系単量体)を約100重量部、二官能性エポキシアクリル酸系低重合体(二官能性エポキシアクリル酸エステル系低重合体)を約100重量部、光開始剤を約8重量部、酢酸エチル(溶剤として)を約75重量部で混合し、この混合物を重合させることにより得られる。この放射線硬化性透明樹脂を装飾層320上に塗布して、続いて約80℃の熱風でベーキングする。最後にエネルギー量が約800mJ/cmの紫外線を照射して、透明樹脂層を硬化させて樹脂層322を形成する。放射線硬化性透明樹脂層の塗布厚みを調節することで、樹脂層322の厚みを制御することができる。本実施例において、保護層330の厚みは約10μmである。
【0035】
(実施例3)
本実施例において、熱溶着剤膜310は厚みが100μmでありポリエステル樹脂により形成されている。装飾層320は印刷方式で形成された厚みが約5μmであるインク層である。最後に装飾層320上に樹脂層322(保護材料層)を形成する。保護層330は装飾層320と樹脂層322とから構成されており、作製方法および材料は実施例2に記載するものと同様である。
【0036】
(実施例4)
本実施例において、熱溶着剤膜310は厚みが150μmでありポリエステル樹脂により形成されている。装飾層320は繊維的な外観を付与する厚みが約20μmであるセルロースフィルムである。外的な圧力を付与する方式で、セルロースフィルムを熱溶着剤膜310上に貼付する。最後に装飾層320上に樹脂層322(保護材料層)を形成する。樹脂層322の作製方法および材料は実施例2に記載するものと同様である。
【0037】
ここで、当業者であれば、本発明の技術的思想および範囲を逸脱することなく、各種の変更および修正を行うことができるのは明白であろう。そのような観点から、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で、変更や修正されるものも保護範囲内とするものである。
【符号の説明】
【0038】
100 熱転写フィルム
110 基材
120 剥離層
130 装飾層
140 接着層
150 物品
200 熱溶着フィルム
210 熱溶着剤膜
230 保護層
300 熱溶着フィルム
310 熱溶着剤膜
320 装飾層
322 樹脂層
330 保護層
400 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を受けて接着力を発現する熱溶着剤膜と、
前記熱溶着剤膜に密着して設けられ、放射線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂により形成される保護層と、を備え、
前記熱溶着剤膜は、前記保護層を直接設けるための基材として機能し、前記保護層の外表面に熱が加わると、前記接着力により熱溶着フィルムを被接着体上に貼付させるものであり、かつ前記熱溶着剤膜は、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(ethylene vinyl acetate−basedresin)、ポリアミド系樹脂(polyamide−based resin)、ポリエステル系樹脂(polyester−based resin)、ポリウレタン系樹脂(polyurethane−based resin)、エポキシ系樹脂(epoxy−based resin)、ポリエチレン系樹脂(polyethylene−based resin)、ポリプロピレン系樹脂(polypropylene−based resin)および熱可塑性ラバ−(thermoplastic rubber)からなる群から選ばれる材質を含有することを特徴とする熱溶着フィルム。
【請求項2】
前記保護層が、前記熱溶着剤膜に密着している装飾層を備えていることを特徴とする請求項1に記載の熱溶着フィルム。
【請求項3】
前記装飾層が、インク層、金属層、樹脂フィルムまたはセルロースフィルムを含むことを特徴とする請求項2に記載の熱溶着フィルム。
【請求項4】
前記放射線硬化性樹脂または前記電子線硬化性樹脂が単量体を含んでおり、前記単量体は、メタクリル酸系単量体(methacrylate−basedmonomer)、アクリル酸系単量体(acrylate−based monomer)、ビニル系単量体 (vinyl−based monomer)、ビニルエーテル系単量体(vinyl−etherbased monomer)およびエポキシ系単量体(epoxy−based monomer)からなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の熱溶着フィルム。
【請求項5】
前記放射線硬化性樹脂または前記電子線硬化性樹脂が低重合体を含んでおり、前記低重合体は、不飽和ポリエステル系低重合体(unsaturated polyester−based oligomer)、エポキシアクリル酸系低重合体(epoxyacrylate−based oligomer)、ポリウレタンアクリル酸系低重合体(polyurethane acrylate−based oligomer)、ポリエステルアクリル酸系低重合体 (polyester acrylate−basedoligomer)、ポリエーテルアクリル酸系低重合体(polyether acrylate−based oligomer)、アクリル系低重合体(acrylated acrylic oligomer)およびエポキシ系樹脂低重合体(epoxy−basedresin oligomer)からなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の熱溶着フィルム。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂が、アクリル酸系樹脂(acrylic−basedresin)、アクリルポリオール系樹脂(acrylic polyol basedresin)、ビニル系樹脂 (vinyl−based resin)、ポリエステル系樹脂(polyester−basedresin)、エポキシ系樹脂(epoxy−based resin)およびポリウレタン系樹脂(polyurethane−based resin)からなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の熱溶着フィルム。
【請求項7】
熱を受けて接着力を発現することが可能な熱溶着剤膜を準備する工程と、
熱溶着剤膜上に、放射線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂から形成される保護層を設ける工程と、
エネルギーを付与して保護層を硬化させる工程と、を含み、
熱溶着フィルムは、硬化された前記保護層の外表面に熱が加わると、前記接着力により被接着体上に貼付されるものであることを特徴とする熱溶着フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記保護層を設ける工程が、前記熱溶着剤膜に密着させて、保護層における装飾層を設ける工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の熱溶着フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記装飾層が、インク層、金属層、樹脂フィルムまたはセルロースフィルムを含むことを特徴とする請求項8に記載の熱溶着フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記エネルギーが熱エネルギーまたは光エネルギーであることを特徴とする請求項7に記載の熱溶着フィルムの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−162892(P2010−162892A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−293735(P2009−293735)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(500045431)コンパル エレクトロニクス インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】