説明

熱硬化性エポキシ樹脂組成物

【課題】本発明は、室温で安定であり、一方では高い強度を有しており、他方では少なくとも85℃のガラス転移温度が有利である高いガラス転移温度を有している新規な1成分形の熱硬化した組成物、特に接着剤およびホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】平均して1分子当り1個より多いエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂Aと、平均して1分子当り1個より多いエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ付加物Bと、非拡散性支持材中の尿素誘導体に基づく少なくとも1つのチキソトロープ剤Cと、高温により活性化する少なくとも1つのエポキシ樹脂用硬化剤Dを含む組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い衝撃強さおよび高いガラス転移温度の両方で同時に特徴付けられ、特に1成分接着剤として使用することができる熱硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高品質の接着剤が、自動車および実装部品または機械および装置の製造において、従来のリベット打ちおよび押し抜きまたは溶接等の接合方法の代わりに、またはそれらと組み合わせて、次第に使用されるようになってきている。これは、例えば複合材料およびハイブリッド材料の製造等の製造に対する利点および新たな選択肢、または構成部品を設計する大きな自由度をもたらす。自動車の製造で使用するためには、接着剤は、使用するすべての基材、特に電気亜鉛めっきをし、溶融亜鉛めっきをし、その後リン酸塩処理をした鋼板、潤滑処理をした鋼板、および様々なタイプのアルミニウムに対して優れた接着性を持たなければならない。これらの優れた接着特性は、また、特にエージング(入れ替わる気候、塩水噴霧浴、その他)の後も、品質が大きく損失することなく維持されなければならない。その接着剤が車のボディシェルとして使用される場合は、この接着剤の耐洗浄性が、メーカーの施設における工程の信頼性を確保するために少なからず重要である。
【0003】
耐洗浄性は、プレゲルにするかまたはプレゲルにしないで得ることができる。十分な耐洗浄性を得るためには、接着剤はペースト状であって、ボディシェルの炉中に短時間入れるかまたは接合する部品の誘導加熱によってプレゲルにすることができる。
【0004】
ボディシェル接着剤は、通常の焼付け条件下、理想的には180℃30分で硬化しなければならない。さらに、それらは、また、最高約220℃まで安定でなくてはならない。上記の硬化した接着剤または接合にとってのその他の必要条件は、最高約85℃までの高温および最低約-40℃までの低温の両方で動作信頼度が確保されることである。これらの接着剤は、構造用接着剤であり、したがってこれらの接着剤は構造部品を接合するため、その接着剤の高い強度が最も重要である。
【0005】
従来のエポキシ系接着剤は、高い機械的強度、特に高い引張り強さおよび高い引張り剪断強さに特徴がある。その接合が衝撃荷重を受けたときは、しかしながら、従来のエポキシ系接着剤は、普通はもろすぎて、高い引張応力および高い剥離応力の両方が起こる衝突条件下においては、特に自動車産業の必要条件を満たすことができるには程遠い。それらは、また、高温および特に低温における強度が不十分である。
【0006】
エポキシ系接着剤の衝撃荷重下のもろさを低減するための様々な試みが提案されている。エポキシ系接着剤の衝撃強さを改良するために、基本的に2つの方法が文献に提案されている。第1は、少なくとも部分的に橋かけしたコア/シェル型ポリマーのラテックスまたはその他のたわみ性を与えるポリマーおよびコポリマー等の高分子量化合物を添加することによって目的を達成することができる。第2は、ソフトセグメントの導入、例えば、エポキシ成分の適当な変性によってもある程度の強度の増加を達成することができる。
【0007】
上記の第1の方法によるものとして、米国特許第5,290,857号および米国特許第5,686,509号は、微細粉末のコア/シェル型ポリマーをエポキシマトリックス中に混合することによってエポキシ樹脂を如何に耐衝撃性にすることができるかについて記載している。これは、硬くてもろいエポキシマトリックス中に非常に弾力性のある領域を形成することになり、衝撃強さを増大する。米国特許第5,290,857号は、アクリレートまたはメタクリレートポリマーに基づく上記のコア/シェル型ポリマーについて記載している。米国特許第5,686,509号は、コアのポリマーが橋かけしたジエンモノマーからなり、シェルのコポリマーが橋かけしたアクリル酸、メタクリル酸、および不飽和カルボン酸モノマーからなるイオン的に橋かけしたポリマー粒子に基づく類似の組成物について記載している。
【0008】
上記の第2の方法によるものとして、米国特許第4,952,645号は、脂肪族、脂環式、または芳香族カルボン酸、特にダイマーまたはトリマー脂肪酸との反応、ならびに脂肪族または脂環式ジオールとの反応によってたわみ性を与えたエポキシ樹脂組成物について記載している。そのような組成物は、特に低温におけるたわみ性が増大していることに特徴があるはずである。
【0009】
ポリウレタン/エポキシ付加物を用いるエポキシ系接着剤の変性もまた知られている。この場合、プレポリマーの末端イソシアナート基が、少なくとも1つのエポキシ樹脂と反応し、室温で固体であるホットメルト接着剤が得られる。この方法は、EP0343676に記載されている。
【0010】
エポキシ樹脂は、合成ゴムおよびそれらの誘導体等のエラストマーによってたわみやすくすることができることも知られている。この場合の主要な効果は、エポキシ樹脂の極一部の混和性およびそれに相応して誘導された合成ゴムに基づくものであり、その結果としてコア/シェル型ポリマーの効果に匹敵する効果を有するヘテロ分散相が製造工程中に形成される。この上部構造の構築は、硬化プロセス中の定量的組成およびプロセス制御の両方に依存する。当業者に知られている文献には、エポキシ樹脂と反応するカルボニル末端のポリブタジエン/アクリロニトリルコポリマーが、このたわみ性を付与する方法の特に好ましい出発化合物として記載されている。米国特許第5,278,257号およびWO0037554は、主成分としてカルボニル末端ブタジエン/アクリロニトリルまたはブタジエン/メタクリレート配合物(またはそれらのスチレンコポリマー)のエポキシ樹脂およびフェノール末端ポリウレタンまたはポリ尿素との反応によって生成したエポキシ末端基を有する付加物を含有するエポキシ系接着剤調合物について記載している。上記の接着剤は、剥離、衝撃、または衝撃/剥離荷重の下で高いパラメータ値を有することができる。
【0011】
従来技術の重大な欠点は、一般に、衝撃強さを増すことによってガラス転移温度および/または接着剤の強度が減少すること、またはガラス転移温度を上げることによって強度は一般に確かに増加するが、衝撃強さ、ならびに接着強さおよび特に剥離強さが減少することである。この事態は、特に衝突耐性のある接着剤には著しく高い要求が課されるために、構造物ボディシェル用接着剤としての使用を厳しく制限する。
【0012】
加えて、液状ゴムの使用は、全く不利であって、なぜなら、それは、相分離の程度およびひいては衝撃強さの改良が、製造条件または硬化条件に非常に多く依存し、特性に無視できない変化を生ずることを意味するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,290,857号
【特許文献2】米国特許第5,686,509号
【特許文献3】米国特許第4,952,645号
【特許文献4】EP0343676
【特許文献5】米国特許第5,278,257号
【特許文献6】WO0037554
【特許文献7】特許出願EP1152019A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、室温で安定であり、一方では高い強度を有しており、他方では少なくとも85℃のガラス転移温度が有利である高いガラス転移温度を有している新規な1成分形の熱硬化した組成物、特に接着剤およびホットメルト接着剤を提供することである。これは、特に液状ゴムを使用することなく、かつその使用と関連する製造または硬化条件に依存することなく達成される。
【0015】
これらの特性は、事故(衝突)の場合でさえも接合を確保するため、およびそれにより自動車の構造に対する現代の安全要求事項を満たすために、特に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、意外にも本発明による請求項1で特定される組成物によって達成することができた。特に特許出願EP1152019A1に記載されている非拡散性担体中の尿素誘導体に基づくチキソトロープ剤を使用することにより衝撃強さの非常に大きな改良が得られることを示したことはとりわけ予想外であった。ガラス転移温度について最適化した請求項1で使用のエポキシ付加物が、予想した衝撃強さの低下を引き起こさなかったこともまた予想外であった。
【0017】
本発明は、平均して1分子当り1個より多いエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂Aと、平均して1分子当り1個より多いエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ付加物Bと、非拡散性担体中の尿素誘導体に基づく少なくとも1つのチキソトロープ剤Cと、高温により活性化する少なくとも1つのエポキシ樹脂用硬化剤Dを含む組成物に関する。
【0018】
好ましい実施形態によれば、組成物は、さらに、少なくとも1つのコア/シェル型ポリマーEおよび/または少なくとも1つの充填剤Fおよび/または少なくとも1つの反応性希釈剤Gを含有することが記されている。
【0019】
この組成物の1成分接着剤としての使用および該組成物の製造方法についてもまた記載されている。
【0020】
さらに、非拡散性担体中の尿素誘導体に基づくチキソトロープ剤Cの衝撃強さを増す手段としての使用が記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、平均して1分子当り1個より多いエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂Aと、平均して1分子当り1個より多いエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ付加物Bと、非拡散性担体中の尿素誘導体に基づく少なくとも1つのチキソトロープ剤Cと、高温により活性化する少なくとも1つのエポキシ樹脂用硬化剤Dを含む組成物に関する。
【0022】
エポキシ樹脂Aは、平均して1分子当り1個より多いエポキシ基を有する。1分子当り2、3、または4個のエポキシ基が好ましい。エポキシ樹脂Aは、好ましくは液状樹脂、特にビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル(DGEBA)、ビスフェノール-Fのジグリシジルエーテル、およびビスフェノール-A/F(ここでの記号表示「A/F」は、その製造における出発材料としてアセトンとホルムアルデヒドの混合物を使用したことを示す)のジグリシジルエーテルである。これらの樹脂の製造方法のために、明らかにこれより高い分子量成分も液状樹脂中に含まれている。上記の液状樹脂は、例えば、Araldite GY250、Araldite PY304、Araldite GY282(Vantico)、またはD.E.R.331(Dow)として入手可能である。
【0023】
エポキシ付加物Bは、タイプB1および場合によってタイプB2のエポキシ付加物である。
【0024】
エポキシ付加物B1は、少なくとも1つのジカルボン酸、好ましくは少なくとも1つのダイマー酸、特に少なくとも1つの二量体のC4〜C20脂肪酸(C8〜C40ジカルボン酸に相当する)と、少なくとも1つのジグリシジルエーテル、特に、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Fジグリシジルエーテル、またはビスフェノール-A/Fジグリシジルエーテルの反応によって得ることができる。そのエポキシ付加物B1は、たわみやすくする特性を有する。
【0025】
エポキシ付加物B2は、少なくとも1つのビス(アミノフェニル)スルホン異性体または少なくとも1つの芳香族アルコールと少なくとも1つのジグリシジルエーテルとの反応によって得ることができる。該芳香族アルコールは、好ましくは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノール-A)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(=ビスフェノール-F)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロカテコール、ナフトヒドロキノン、ナフトレゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラキノン、ジヒドロキシビフェニル、3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタリド、5,5-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン、および前述の化合物のすべての異性体の群から選択される。好ましいビス(アミノフェニル)スルホン異性体は、ビス(4-アミノフェニル)スルホンおよびビス(3-アミノフェニル)スルホンである。ジグリシジルエーテルは、特に、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Fジグリシジルエーテル、またはビスフェノール-A/Fジグリシジルエーテルである。ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンは、特に好ましい芳香族アルコールとして適している。エポキシ付加物B2は、どちらかといえば硬い構造を有する。
【0026】
特に好ましい実施形態において、エポキシ付加物Bは、エポキシ付加物B1およびエポキシ付加物B2の組合せである。
【0027】
好ましくは、エポキシ付加物Bは、700〜6000g/モル、好ましくは900〜4000g/モル、特に1000〜3300g/モルの分子量を有する。これ以降「分子量」とは、平均分子量Mwを意味する。
【0028】
エポキシ付加物Bは、当業者には周知の方法で調製される。
【0029】
エポキシ樹脂Aの全割合は、重量の和A+Bを基準として、12〜50重量%が有利であり、好ましくは17〜45重量%である。
【0030】
これ以降、各場合の「全割合」とは、所定の範疇に属するすべての成分の和を意味する。例えば、組成物が2つのエポキシ樹脂Aを含有する場合であれば、そのとき全割合は、これら2つのエポキシ樹脂の和である。
【0031】
さらに、エポキシ樹脂Aおよびエポキシ樹脂Bを一緒にした全割合は、組成物全体の重量を基準として、20〜70重量%が有利であり、好ましくは35〜65重量%である。当業者であれば、エポキシ付加物合成用の周知の触媒、例えばトリフェニルホスフィン等を使用することができる。
【0032】
さらに、該組成物は、非拡散性担体中の尿素誘導体に基づく少なくとも1つのチキソトロープ剤Cを含有する。このチキソトロープ剤Cは、担体としてブロック化ポリウレタンプレポリマーを含有しているのが有利である。上記の尿素誘導体および担体材料の調製は、特許出願EP1152019A1に詳細が記載されている。
【0033】
該尿素誘導体は、芳香族単量体ジイソシアナートと脂肪族アミン化合物の間の反応生成物である。いくつかの異なる単量体ジイソシアナートと1つまたは複数の脂肪族アミン化合物との反応、または1つの単量体ジイソシアナートといくつかの脂肪族アミン化合物とを反応させることも全く可能である。4,4'-ジフェニルメチレンジイソシアナート(MDI)とブチルアミンの反応生成物が、特に有利であることが証明された。
【0034】
チキソトロープ剤Cの全割合は、組成物全体の重量を基準として5〜40重量%が有利であり、好ましくは10〜25重量%である。尿素誘導体の割合は、チキソトロープ剤Cの重量を基準として、5〜50重量%が有利であり、好ましくは15〜30重量%である。
【0035】
本発明による組成物は、高温で活性化するエポキシ樹脂のための少なくとも1つの硬化剤Dを含有する。ここでその硬化剤は、ジシアノジアミド、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、およびそれらの誘導体の群から好ましくは選択される。加えて、フェニルジメチル尿素、特にp-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モニュロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェヌロン)、または3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)が、触媒として有効である。イミダゾールおよびアミン錯体の種類の化合物もまた使用することができる。ジシアノジアミドが特に好ましい。
【0036】
硬化剤Dの全割合は、組成物全体の重量を基準として、1〜6重量%が有利であり、好ましくは2〜4重量%である。
【0037】
別の実施形態において、本発明による組成物は、さらに少なくとも1つのコア/シェル型ポリマーEを含有する。該コア/シェル型ポリマーのコアは、好ましくは、-30℃以下のガラス転移温度のポリマーからなり、該コア/シェル型ポリマーのシェルは、好ましくは、70℃以上のガラス転移温度のポリマーからなる。コア材料として使用することができるポリマーの例は、ポリブタジエン、ポリアクリル酸エステル、およびポリメタクリル酸エステル、ならびにそれらのポリスチレン、ポリアクリロニトリル、またはポリスルフィドとのコポリマーもしくはターポリマーである。そのコア材料は、好ましくはポリブタジエンまたはポリアクリル酸ブチルを含有する。シェルポリマーの例は、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートのモノマー、コポリマー、またはターポリマー、またはスチレン/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレートのターポリマーである。ポリメタクリレートを、好ましくはシェル用ポリマーとして使用する。上記のコア/シェル型ポリマーの粒径は、ほぼ0.05〜30μm、好ましくは0.05〜15μmである。3μmより小さい粒径のコア/シェル型ポリマーが特に使用される。コア/シェル型ポリマーは、ポリブタジエンまたはポリブタジエン/ポリスチレンのコアを含有するものを好ましくは使用する。このコア材料は、好ましくは部分的に橋かけする。他のコア材料は、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、特にポリアクリル酸エステルおよびポリメタクリル酸エステルならびにそれらのコポリマーまたはターポリマーである。
【0038】
シェルは、好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシルエステル、アクリル酸ブチルエステル、スチレン、またはメタクリロニトリルに基づくポリマーからなる。
【0039】
市販されているコア/シェル型ポリマー製品は、例えば、F-351(Zeon Chemicals)、ParaloidおよびAcryloid(Rohm and Haas)、Blendex(GE Specialty Chemicals)などである。
【0040】
コア/シェル型ポリマーEの全割合は、組成物全体の重量を基準として、3〜20重量%が有利であり、好ましくは5〜12重量%である。
【0041】
好ましい実施形態において、該組成物は、さらに少なくとも1つの充填剤Fを含有する。ここで充填剤は、好ましくは、雲母、タルク、カオリン、ウォラストナイト、長石、クロライト、ベントナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウム(沈降性または粉砕)、ドロマイト、石英、ケイ酸(火成または沈降性)、クリストバライト、酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、中空セラミック球、中空ガラス球、中空有機物球、ガラス球、着色顔料である。充填剤Fとしては、当業者には周知の市販品の形態の有機物をコートしたものおよびコートしてないものの両方を意味する。
【0042】
充填剤F全体の全割合は、組成物全体の重量を基準として、5〜30重量%が有利であり、好ましくは10〜25重量%である。
【0043】
別の好ましい実施形態において、組成物は、さらに、エポキシ基を有する少なくとも1つの反応性希釈剤Gを含有する。この反応性希釈剤Gは、特に次のものである。
【0044】
- 単官能基の、飽和または不飽和、分枝または直鎖分枝、環式または非環式C4〜C30アルコールのグリシジルエーテル、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリルグリシジルエーテル、およびフルフリルグリシジルエーテルなど。
【0045】
- 二官能基の、飽和または不飽和、分枝または直鎖分枝、環式または非環式C2〜C30アルコールのグリシジルエーテル、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、オクタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなど。
【0046】
- 三官能基または多官能基の飽和または不飽和、分枝または直鎖分枝、環式または非環式アルコールのグリシジルエーテル、例えばエポキシ化ヒマシ油、エポキシ化トリメチロールプロパン、エポキシ化ペンタエリトロール、またはソルビトール等の脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルなど。
【0047】
- フェノール化合物およびアニリン化合物のグリシジルエーテル、例えば、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、3-n-ペンタデシルグリシジルエーテル(カシューナットシェル油から)、N,N-ジグリシジルアニリンなど。
【0048】
- エポキシ化第三級アミン、例えばN,N-ジグリシジルシクロヘキシルアミンなど。
【0049】
- エポキシ化モノカルボン酸またはジカルボン酸、例えばネオデカン酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、安息香酸グリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステルおよびヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー脂肪酸ジグリシジルエステルなど。
【0050】
- エポキシ化二官能基または三官能基の低分子量または高分子量ポリオール、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど。
【0051】
ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、およびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが、特に好ましい。
【0052】
エポキシ基を有する反応性希釈剤Gの全割合は、組成物全体の重量を基準として、1〜7重量%が有利であり、好ましくは2〜6重量%である。
【0053】
組成物の1成分接着剤としての使用は、特に成功であることが証明された。熱硬化した1成分接着剤は、特にこれを、高い衝撃強さと高いガラス転移温度も、その両方を特徴とするように調製することができる。そのような接着剤は熱安定性材料を接合するために必要である。熱安定性材料とは、120℃〜220℃、好ましくは150℃〜200℃の硬化温度に対して、少なくとも硬化時間中は形状が安定している材料を意味する。ここでは、熱安定性材料は、金属およびプラスチック、例えば、ABS、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、SMC等の複合材料、ガラス繊維強化不飽和ポリエステル、エポキシまたはアクリレート複合材料等である。好ましい使用は、少なくとも1つの材料が金属であるときである。特に好ましい使用は、特に自動車産業におけるボディシェルの同一または異なる金属の接合である。好ましい金属は、特に鋼鉄、とりわけ電気亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼、潤滑処理した鋼、および後からリン酸塩処理した鋼、ならびにアルミニウムで、とりわけ自動車の組立てに通常使用されるタイプのものである。
【0054】
高い破壊強度と高い実用温度の望ましい組合せを、本発明による組成物に基づく接着剤により殊のほか実現することができる。
【0055】
上記の接着剤は、一般的には120℃〜220℃、好ましくは150℃〜200℃の温度で硬化して材料を接合連結する。
【0056】
勿論、熱硬化接着剤に加えて、シーラントまたはコーティングも調製することができる。その上、本発明による組成物は、自動車の組立てに適するだけでなく、その他の領域の応用にも適する。特に明らかなのは、船、トラック、バス、または軌道車両等の輸送手段の組立て、あるいは例えば洗濯機等の消費物資の組立てにおける関連した用途である。
【0057】
ホットメルト接着剤は、特にまた、本発明による組成物に基づいて調製することができる。ここでは、エポキシ付加物のヒドロキシ基がイソシアナート基またはイソシアナートプレポリマーと反応する。粘度が結果として上昇し、加熱が必要である。
【実施例】
【0058】
以下に少数の実施例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明の範囲を多少なりとも限定するものではない。実施例で使用する原料は、次のものである。
【0059】
【表1】

【0060】
A/BプレミックスPM1
真空および110℃での攪拌下で、123.9gのダイマー脂肪酸、1.1gのトリフェニルホスフィン、および57.3gのアジピン酸を、エポキシ含量が5.45当量/kgである658gの液状DGEBAエポキシ樹脂と、一定のエポキシ濃度2.85当量/kgが得られるまで5時間反応させた。その反応の終了後、追加の液状DGEBAエポキシ樹脂の118.2gをその反応混合物に加えた。
【0061】
次に、その他の混合物PM2からPM4を調製した。このために、アジピン酸は、バインダ中に2.80〜2.95当量/kgの理論的に同等のエポキシ含量が得られるように種々の芳香族アルコールと置き換えた。
【0062】
A/BプレミックスPM2
真空および110℃での攪拌下で、123.9gのダイマー脂肪酸、1.1gのトリフェニルホスフィン、および95.0gの2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノール-A)を、エポキシ含量が5.45当量/kgである658gの液状DGEBAエポキシ樹脂と、一定のエポキシ濃度2.95当量/kgが得られるまで5時間反応させた。その反応の終了後、追加の液状DGEBAエポキシ樹脂の118.2gをその反応混合物に加えた。
【0063】
A/BプレミックスPM3
真空および110℃での攪拌下で、123.9gのダイマー脂肪酸および28.3gのアジピン酸、1.1gのトリフェニルホスフィン、ならびに47.3gのビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンを、エポキシ含量が5.45当量/kgである658gの液状DGEBAエポキシ樹脂と、一定のエポキシ濃度2.85当量/kgが得られるまで5時間反応させた。その反応の終了後、追加の液状DGEBAエポキシ樹脂の118.2gをその反応混合物に加えた。
【0064】
A/BプレミックスPM4
真空および110℃での攪拌下で、123.9gのダイマー脂肪酸、1.1gのトリフェニルホスフィン、および71.3gのビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンを、エポキシ含量が5.45当量/kgである658gの液状DGEBAエポキシ樹脂と、一定のエポキシ濃度2.82当量/kgが得られるまで5時間反応させた。その反応の終了後、追加の液状DGEBAエポキシ樹脂の118.2gをその反応混合物に加えた。
【0065】
チキソトロープ剤C
チキソトロープ剤Cを、特許出願EP1512019A1に詳細に記されているようにして、上記原料を用いたブロック化プレポリマー中で調製した。
【0066】
担体:ブロック化ポリウレタンプレポリマー:
真空および90℃での攪拌下、0.08gのジブチル錫ジラウレートが存在する中で、600.0gのポリエーテルポリオール(2000g/モル、OH価57mg/gKOH)を、140.0gのIPDIとイソシアナート含量が一定に留まるまで反応させ、イソシアナート末端のプレポリマーを生成させた。続いて遊離のイソシアナート基をカプロラクタム(2%過剰)でブロックした。
【0067】
ブロック化ポリウレタンプレポリマー中の尿素誘導体(UD1)
窒素および穏やかな加熱下で、68.7gのMDIフレークを、上記ブロック化プレポリマーの181.3g中で融解した。続いて、上記ブロック化プレポリマーの219.9g中に溶解した40.1gのN-ブチルアミンを、窒素および急速な攪拌下で、2時間以上かけて滴下しながら加えた。そのアミン溶液の添加が完了した後、その白色ペーストをさらに30分間攪拌した。続いて冷却した後、遊離のイソシアナート含量が<0.1%である柔らかな白色のペーストが得られた(尿素誘導体の割合、約21%)。
【0068】
必要な場合はこの混合物にさらに担体を加えることができる。例えば、実施例に対してはさらに4gの担体(=ブロック化プレポリマー)を加えた。
【0069】
接着剤の形成
様々な接着剤組成物を表1に特定したように調製した。接着剤は、50℃で塗布した後、180℃のオーブン中で30分間硬化した。試験はすべて、接着剤が室温まで冷却した後にのみ実施した。
【0070】
試験方法:
ガラス転移温度Tg(DIN EN ISO 6721-2/DIN EN 61006)
寸法が50×10mmの試験片を、2枚のテフロン(登録商標)フィルムの間に挟んで180℃で30分間硬化した2mm厚さの接着剤のシートから打ち抜いた。
【0071】
測定:振幅1Hz、温度範囲-50℃から+150℃まで、加熱速度2°K/分。ガラス転移温度Tgは、機械損失係数(タンジェントδ)曲線の最大のところとして測定した。
【0072】
引張り剪断強さTSS(DIN EN 1465)
寸法100×25×0.8mmの電気亜鉛めっき鋼(eloZn)を用い、接着剤が、0.3mmの層の厚さで表面積が25×10mmの試験片を用意した。それを180℃で30分間硬化した。引張り速度は、10mm/分とした。
【0073】
衝撃剥離(ISO11343)
寸法90×25×0.8mmの電気亜鉛めっき鋼(eloZn)を用い、接着剤が、0.3mmの層の厚さで表面積が25×30mmの試験片を用意した。それを180℃で30分間硬化した。衝突速度は、2m/秒とした。
【0074】
結果
表1の接着剤形成の結果は、高い衝撃強さ、高いガラス転移温度、および高い強度の組合せが、本発明による組成物を用いて実現できることを示している。本発明によらない例1と7は、実施例2および6と比較すると、チキソトロープ剤すなわち尿素誘導体の衝撃強さへのプラス効果を特にはっきりと示している。実施例2から6は、本発明によるエポキシ付加物の使用の効果の結果、衝撃強さの増加およびTgの上昇の両方を同時に実現することができ、一方で引張り剪断強さは変化しないで維持されることを示している。実施例9と10は、実施例2と6との比較であり、組成物が充填されていると充填されていないとに関わらず必要な特性を得ることができることを示している。実施例8と6は、コア/シェル型ポリマーの存在が、衝撃強さにプラスの効果を有しており、けれどもその効果は、チキソトロープ剤、すなわち尿素誘導体より小さいことを示している。
【0075】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均して1分子当り1個より多いエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ樹脂Aと;それぞれが、平均して1分子当り1個より多いエポキシ基を有する少なくとも1つのエポキシ付加物Bと;高温により活性化する少なくとも1つのエポキシ樹脂用硬化剤Dとを含む組成物中における、衝撃強さを増す手段としての、非拡散性担体中の尿素誘導体に基づくチキソトロープ剤Cの使用。
【請求項2】
前記担体が、ブロック化ポリウレタンプレポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のチキソトロープ剤Cの使用。
【請求項3】
前記尿素誘導体が、芳香族単量体ジイソシアナートと脂肪族アミン化合物との反応生成物であることを特徴とする請求項1または2に記載のチキソトロープ剤Cの使用。
【請求項4】
前記尿素誘導体の割合が、前記チキソトロープ剤Cの重量を基準として、5〜50重量%であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のチキソトロープ剤Cの使用。

【公開番号】特開2010−43288(P2010−43288A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267958(P2009−267958)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【分割の表示】特願2004−501524(P2004−501524)の分割
【原出願日】平成15年4月16日(2003.4.16)
【出願人】(503241216)シーカ・シュヴァイツ・アーゲー (5)
【Fターム(参考)】