説明

熱硬化性樹脂組成物及びその製造方法

【課題】ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の溶液での保存において、前記熱硬化性樹脂の分子量増加を抑制することのできる熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】下記式(I)で示されるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒と、シクロヘキサノンと、を含む熱硬化性樹脂組成物。


式(I)において、Arは、4価の芳香族基を表す。Rは、置換又は無置換の炭化水素基を表す。nは、2〜500の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及びその製造方法に関する。より詳しくは、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が溶解している溶液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子構造中にベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、耐熱性や難燃性に加え、寸法安定性、電気絶縁性、及び低吸水性等といった、他の熱硬化性樹脂には見られない優れた特性を有するため、各種積層板や半導体封止材等のエレクトロニクス材料、摩擦材や砥石等の結合材として注目されている。
【0003】
ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、オキサジン環がベンゼン環に隣接した構造を有する熱硬化性樹脂であり、通常、フェノール化合物、アミン化合物、及びアルデヒド化合物を反応させることにより製造される。
【0004】
Scheme1に例示するベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、フェノール化合物としてフェノールを用い、アミン化合物としてアニリンを用い、アルデヒド化合物としてホルムアルデヒド用いて製造することができる。そして、Scheme1に示すように、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(左記)は加熱されることにより開環重合を起こし、ポリベンゾオキサジン(右記)となる。そして、特許文献1には、キャスト溶液を調製する際の溶媒として、ジオキサン等が開示されている。
Scheme1:
【0005】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−64180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂(以下、「ベンゾオキサジン樹脂」と略称する場合がある。)は、ジオキサン等に対する溶解性が低い。また、合成後に得られた溶液をそのまま保存しておいたり、上記熱硬化性樹脂を溶液保存しておいたりすると、溶液中で上記樹脂の重量平均分子量(Mw)が増加してしまう。その結果、粘度上昇によるハンドリング性の低下や、他の配合材料との相溶性の悪化が引き起こされ、さらには溶液自体がゲル化してしまう場合さえある。このように、ベンゾオキサジン樹脂は、溶液の状態での保存安定性が悪いという問題がある。
【0008】
溶液状態での保存安定性が悪いため、ベンゾオキサジン樹脂の製造工程等において溶液中での反応終了後、公知の方法、例えば、貧溶媒による再沈法、濃縮固化法(溶媒減圧留去)、スプレードライ法等により、溶液中の上記樹脂を回収する必要がある。しかしながら、それでは製造プロセスが増えるという問題がある。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の溶液での保存において、前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の分子量増加を抑制することのできる熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に対して鋭意研究を行った結果、下記手段にて、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は以下のとおりである。
〔1〕
下記式(I)で表されるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、
エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、
アミド系溶媒と、
シクロヘキサノンと、
を含む熱硬化性樹脂組成物。
【0012】
【化2】

式(I)において、Ar1は、4価の芳香族基を表す。R1は、置換又は無置換の炭化水素基を表す。nは、2〜500の整数を表す。
〔2〕
前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔3〕
前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔4〕
前記アミド系溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔5〕
前記アミド系溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔6〕
前記熱硬化性樹脂組成物における前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒の含有量が、0.1〜18wt%である、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔7〕
前記熱硬化性樹脂組成物における前記アミド系溶媒の含有量が、0.1〜20wt%である、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔8〕
前記熱硬化性樹脂組成物における前記シクロヘキサノンの含有量が、20〜70wt%である、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔9〕
前記熱硬化性樹脂組成物における前記熱硬化性樹脂の含有量が、5〜50wt%である、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔10〕
さらに無機充填材を含む、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔11〕
前記無機充填材がシリカである、〔10〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔12〕
前記熱硬化性樹脂組成物における前記無機充填材の含有量が、40〜70wt%である、〔10〕又は〔11〕に記載の熱硬化性樹脂組成物。
〔13〕
前記無機充填材の表面が有機化処理されている、〔10〕〜〔12〕のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
樹脂組成物。
〔14〕
前記無機充填材の表面がビニル基を有する、〔10〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
〔15〕
下記式(I)で示されるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を、エーテル基とアルコール性
ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒と、シクロヘキサノンとを含む混合溶媒中に溶解させる工程を少なくとも有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【0013】
【化3】

式(I)において、Ar1は、4価の芳香族基を表す。R1は、置換又は無置換の炭化水素基を表す。nは、2〜500の整数を表す。
〔16〕
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒とを含む混合溶媒中で反応させて、前記熱硬化性樹脂を含む反応溶液を得る工程と、
前記反応溶液に前記シクロヘキサノンを添加する工程と、
を有する、〔15〕に記載の製造方法。
〔17〕
前記熱硬化性樹脂組成物における前記シクロヘキサノンの添加量が、20〜70wt%である、〔13〕又は〔14〕に記載の製造方法。
〔18〕
さらに、無機充填材を添加する工程を有する、〔15〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔19〕
前記反応溶液に前記シクロヘキサノンを添加する工程として、前記反応溶液に、無機充填材と前記シクロヘキサノンとを含むスラリーを添加する工程を行う、〔16〕又は〔17〕に記載の製造方法。
〔20〕
前記無機充填材がシリカである、〔18〕又は〔19〕に記載の製造方法。
〔21〕
前記熱硬化性樹脂組成物における前記無機充填材の添加量が、40〜70wt%である、〔18〕〜〔20〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔22〕
前記無機充填材の表面が有機化処理されている、〔18〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔23〕
前記無機充填材の表面がビニル基を有する、〔18〕〜〔22〕のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の溶液での保存において、前記ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の分子量増加を抑制することができる熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1で製造された熱硬化性樹脂αが溶解している溶液aのプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)である。
【図2】実施例及び比較例で製造した溶液の分子量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0017】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、下記式(I)で表されるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒と、シクロヘキサノンと、を含む。溶媒として、エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒と、シクロヘキサノンとを含む混合溶媒を用いることにより、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の分子量増加を長期間に渡り抑制できる。
【0018】
【化4】

式(I)において、Ar1は、4価の芳香族基を表す。R1は、置換又は無置換の炭化水素基を表す。nは、2〜500の整数を表す。
【0019】
本実施形態のベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、上記式(I)で示されるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂であればよい。
【0020】
Ar1は、4価の芳香族基であり、その種類は特に限定されないが、耐熱性の観点から、下記G1からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
G1:
【0021】
【化5】

上記式において、*はオキサジン環1位の酸素原子への結合部位を示し、**はオキサジン環4位の炭素原子への結合部位を表す。
【0022】
Xは、直接結合手、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。脂肪族の有機基又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。
【0023】
Xは、左右のフェノール性水酸基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Xの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。Xは、下記G2からなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。
G2:
【0024】
【化6】

【0025】
Xは、耐熱性の観点から、下記G2’からなる群より選択される少なくとも一つであることがより好ましい。
G2’:
【0026】
【化7】

【0027】
式(1)におけるR1は、置換又は無置換の炭化水素基であり、その種類は限定されない任意の炭化水素基である。具体的には、炭素数1〜20の、ヘテロ元素を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造を持つ脂肪族、又は芳香族のジアミン残基の有機基を表す。特に、R1が、下記式(1)又は式(2)で表される有機基であることが好ましい。
【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

式中、*は、結合部位を表す。
【0030】
式中、Yは、直接結合手、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。脂肪族又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されず、炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0031】
Yは、左右の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Yの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0032】
Yは、下記G3からなる群より選択される少なくとも一つの有機基であってもよい。
G3:
【0033】
【化10】

G3中、*は結合部位を表す。
【0034】
1は、フィルム等の硬化体の耐熱性の観点から、式(1)又は式(2a)で表される有機基であることがより好ましい。
【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

式中、Yは、メチレン鎖又は直接結合手を表す。
【0037】
nは、2〜500の整数であり、他材料との相溶性の観点から、2〜400であることが好ましく、2〜300であることがより好ましい。
【0038】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物において、前記熱硬化性樹脂の含有量は、5〜70wt%であることが好ましく、5〜60wt%であることがより好ましく、5〜50wt%であることが更に好ましい。熱硬化性樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、前記熱硬化性樹脂の保存安定性を改善することができる。
【0039】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物では、上述したベンゾオキサジン樹脂を取り出して、ベンゾオキサジン樹脂を含む成形体とすることもできる。また、ベンゾオキサジン樹脂を含む硬化体とすることができる。かかる成形体や硬化体は、ベンゾオキサジン樹脂または熱硬化性樹脂組成物を、従来公知の方法により成形又は硬化して得られる。かかる成形体や硬化体は、電子部品・電子機器及びその材料として用いることができる。特に、低熱線膨張率(低CTE)が要求される多層基板、積層板、封止剤、接着剤等の用途に好適である。電子機器としては、例えば、携帯電話、表示機器、車載機器、コンピュータ、通信機器等が挙げられる。電子部品としては、航空機部材、自動車部材、建築部材等の用途にも使用でき、導電材料、特に金属フィラーの耐熱性接着剤として利用して直流又は交流の電流を流すことができる回路を形成する用途に用いてもよい。電子機器としては、例えば、携帯電話、表示機器、車載機器、コンピュータ、通信機器等の材料として用いることができる。
【0040】
(エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒)
エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、生成する樹脂の溶解性の観点から、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物において、前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒の含有量は、0.1〜40wt%であることが好ましく、0.1〜30wt%であることがより好ましく、0.1〜20wt%であることが更に好ましく、0.1〜18wt%であることがより更に好ましい。
【0042】
(アミド系溶媒)
アミド系溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、生成する樹脂の溶解性の観点からN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。アミド系溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物において、前記アミド系溶媒の含有量は、0.1〜40wt%であることが好ましく、0.1〜30wt%であることがより好ましく、0.1〜20wt%であることが更に好ましい。アミド系溶媒の含有量を上記範囲とすることにより、前記熱硬化性樹脂の溶解性を確保することができる。
【0044】
(シクロヘキサノン)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、シクロヘキサノンを含有する。従来、ベンゾオキサジン樹脂の製造工程では、シクロヘキサノンは反応を阻害する溶媒であるので、使用を避けるべきであると考えられていた。しかしながら、意外にも、本発明者は、ベンゾオキサジン樹脂にシクロヘキサノン等を配合した熱硬化性樹脂組成物とすることにより、ベンゾオキサジン樹脂の溶液での保存において、分子量増加を効果的に抑制できることを見出した。その作用機構としては、定かではないが、以下のように推測される。本実施形態で用いるベンゾオキサジン樹脂は剛直骨格を有するものであるが、シクロヘキサノンは係る構造のベンゾオキサジン樹脂に対する溶解性が良好であり、ベンゾオキサジン樹脂の反応活性部位をシクロヘキサノンが溶媒和により安定化させているものと推測される。その結果、ベンゾオキサジン樹脂の分子量増加を抑制できているものと推測される(但し、本実施形態の作用はこれに限定されない)。
【0045】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物において、前記シクロヘキサノンの含有量は、10〜80wt%であることが好ましく、15〜70wt%であることがより好ましく、20〜70wt%であることが更に好ましい。シクロヘキサノンの含有量を上記範囲とすることにより、ベンゾオキサジン樹脂の分子量増加をより効果的に抑制することができる。
【0046】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物では、上記した成分以外に、必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、無機充填材、離型剤、接着性付与剤、界面活性剤、着色剤、カップリング剤、レベリング剤、その他の熱硬化性樹脂等を添加することができる。これらの中でも、熱硬化性樹脂組成物の保存安定性の観点から、無機充填材を更に含むことが好ましい。無機充填材としては、特に限定されず、種々の無機充填剤を用いることができる。例えば、シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、汎用性等の観点から、シリカがより好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
特にシリカを用いる場合、分散性等の観点から、シリカスラリーであることが好ましい。シリカスラリーとしては、撹拌機、撹拌子、各種超音波装置、各種シェイカー装置等により作製することができる。使用する溶媒等としては、特に限定されないが、本実施形態で用いるエーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分しないに有する溶媒、アミド系溶媒、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。その中でも、ベンゾオキサジンの溶解性という観点から、ジメチルホルムアミド(DMF)、シクロヘキサノンのいずれかであることが好ましく、シクロヘキサノンであることがより好ましい。特に、シクロヘキサノンを用いることにより、シリカの凝集を効果的に抑制することができる。シリカを分散させる溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
そのほかに、シリカスラリーとして、シリカの分散性を一層向上させるために、表面が有機化処理されていることが好ましい。シリカの表面処理方法としては、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、信越化学工業株式会社HP(URL: http://www.silicone.jp/j/catalog/pdf/silanecoupling_j.pdf)に開示されている方法を採用することができる。シリカ表面処理を行い、前記記載の溶媒等に分散させることによりシリカスラリーを調製することができる。なお、無機充填材の表面は、ビニル基を有することが好ましい。
【0049】
表面を有機化処理する際の、シランカップリング剤は特に限定されないが、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシラン、アクリロキシシラン、メタクリロキシシラン、ビニルシラン、イミダールシラン等が上げられる。ベンゾオキサジンとの副反応抑制という観点から、ビニルシランが好ましい。シランカップリング剤は、1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物において、前記無機充填材の含有量は、20〜90wt%であることが好ましく、30〜80wt%であることがより好ましく、40〜70wt%であることが更に好ましい。無機充填材の含有量を上記範囲とすることにより、前記熱硬化性樹脂の保存安定性を向上させることができる。
【0051】
(製造方法)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記式(I)で表されるベンゾオキサジン樹脂を、エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒と、シクロヘキサノンとを含む混合溶媒中に溶解させる工程を少なくとも有する方法が挙げられる。
【0052】
本実施形態では、溶媒であるエーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒、アミド系溶媒、及びシクロヘキサノンの添加の順番等は特に限定されず、適宜好適な順番を選択することができる。好ましい態様としては、例えば、上記ベンゾオキサジン樹脂の製造工程において、エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒、アミド系溶媒、及びシクロヘキサノンの少なくとも1種以上を用いて反応溶液を得て、その反応溶液にシクロヘキサノンを添加する方法等も採用することができる。
【0053】
特に、二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒とを含む混合溶媒中で反応させて、前記ベンゾオキサジン樹脂を含む反応溶液を得る工程と、前記反応溶液に、前記シクロヘキサノンを添加する工程と、を有する方法が好ましい。シクロヘキサノンは、ベンゾオキサジン樹脂の製造工程において反応を阻害する溶媒であるので、ベンゾオキサジン樹脂の製造工程では用いずに、反応終了後に加えることが好ましい。これにより、反応溶液のゲル化をより効果的に抑制することができ、ベンゾオキサジン樹脂を効率よくかつ安定的に製造することができる。なお、シクロヘキサノンを添加するタイミングは特に限定されず、反応終了後すぐに添加してもよいし、反応終了後、室温まで反応溶液を冷却してから添加してもよい。
【0054】
さらに、上記した無機充填材を含む熱硬化性樹脂組成物を製造する場合、無機充填材の添加のタイミングは特に限定されず、シクロヘキサノンを添加する工程の前後で添加してもよいし、同時に添加してもよい。特に、上記したシクロヘキサノンを溶媒とするシリカスラリーを配合する場合、無機充填材とシクロヘキサノンを含むスラリーとして添加する工程であることが好ましい。このようにスラリーとして添加することにより、シクロヘキサノンと無機充填材を同時に添加することができるので、簡便であり、かつ無機充填材の分散性を確保することができる。なお、事前に無機充填材とシクロヘキサノンとを混合してスラリーを準備する工程を設けてもよい。より好ましい態様としては、上記したように、二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒とを含む混合溶媒中で反応させて、前記ベンゾオキサジン樹脂を含む反応溶液を得ておき、事前に調製した上記スラリー(例えば、無機充填材をシクロヘキサノン中に分散させたスラリー)をその反応溶液に添加することが好ましい。
【0055】
以下、ベンゾオキサジン樹脂の製造方法も踏まえて、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0056】
まず、ベンゾオキサジン樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。製造方法の具体例としては、二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒、及びアミド系溶媒を含む混合溶媒中で反応させる工程を有する方法が挙げられる。
【0057】
二官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(3)で表されるフェノール性水酸基を2つ有する化合物等が挙げられる。
式(3):

HO−Ar2−OH

Ar2は、ヘテロ元素を含んでいてもよい芳香族の有機基を表す。
【0058】
二官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(4)又は式(5)で表される化合物等が挙げられる。
【0059】
【化13】

【0060】
式(4)中、Xは、直接結合手、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。脂肪族の有機基又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されず、例えば、炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は置換、若しくは無置換芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0061】
式(4)中、Xは、左右のフェノール性水酸基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、Xの結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0062】
二官能フェノール化合物が前記式(4)で表される化合物であり、式中のXが上記有機基のいずれかである場合、Xは下記G4からなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。
G4:
【0063】
【化14】

G4中、*は前記式(4)における芳香環への結合部位を表す。
【0064】
G4の中でも、下記G4aからなる群のいずれかであることがより好ましい。
G4a:
【0065】
【化15】

G4a中、*は前記式(4)における芳香環への結合部位を表す。
【0066】
二官能フェノール化合物の具体例としては、特に限定されず、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(ビスフェノールP)、4,4’−メチレンジフェノール(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、4,4’−ビフェノール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ベンゼンジオール(ヒドロキノン)、1,3−ベンゼンジオール(レゾルシノール)、1,2−ベンゼンジオール(カテコール)等が挙げられる。これらの中でも、後述するフィルム等の成形体及び硬化体の耐熱性を一層改善できる観点から、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、1,4−ベンゼンジオール(ヒドロキノン)、1,5−ジヒドロキシナフタレン、及び2,6−ジヒドロキシナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。二官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(5)で表されるアミノ基を2つ有する化合物等が挙げられる。
式(5):

2N−R2−NH2

2は、ヘテロ元素を含んでいてもよい直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族又は芳香族の有機基を表す。
【0068】
ジアミン化合物としては、脂環式ジアミン化合物、直鎖脂肪族ジアミン化合物、及び芳香族ジアミン化合物等が挙げられる。
【0069】
脂環式ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(6)又は式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0070】
【化16】

【0071】
式(6)及び式(7)で表される化合物においては、シス異性体、トランス異性体、又はシス異性体とトランス異性体の任意の混合物であってもよい。
【0072】
直鎖脂肪族ジアミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記G5からなる群より選択される化合物等が挙げられる。
G5:
【0073】
【化17】

【0074】
芳香族ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば、下記式(8)又は式(9)で表される化合物等が挙げられる。
【0075】
【化18】

【0076】
式(9)中、X’は、直接結合手、又はヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい、直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族、又は芳香族の有機基を表す。脂肪族の有機基又は芳香族の有機基は、それぞれ置換基を有していてもよい。
置換基としては、特に限定されず、炭素数1〜20の直鎖、分岐、若しくは環状の構造の脂肪族炭化水素基、又は置換若しくは無置換芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0077】
式(9)中、X’は、左右のアミノ基の結合位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれかで結合していればよく、X’の結合位置は、左右のベンゼン環において、同一の位置であってもよく、オルト位とパラ位のように異なっていてもよい。
【0078】
ジアミン化合物が前記式(9)で表される化合物であり、X’が上記有機基である場合、X’は下記G6からなる群より選択される少なくとも一つの有機基であってもよい。
G6:
【0079】
【化19】

G6中、*は前記式(9)における芳香環への結合部位を表す。
【0080】
ジアミン化合物としては、特に限定されず、例えば、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3(4),8(9),−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の脂環式ジアミン化合物;1,2−ジアミノエタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,18−ジアミノオクタデカン等の直鎖脂肪族ジアミン化合物;p−フェニレンジアミン(PDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンM)、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンP)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等の芳香族ジアミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、フィルム等の硬化体の耐熱性を改善させるという観点から、p−フェニレンジアミン(PDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、及び4,4’−ジアミノビフェニルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
ジアミン化合物の使用量は、全二官能フェノール化合物1molに対して、0.1〜2molであることが好ましく、0.3〜1.8molであることがより好ましく、0.5〜1.5molであることが更に好ましい。例えば、二官能フェノール化合物として、式(4)で表される化合物を用いる場合、式(4)で表される化合物1molに対して、ジアミン化合物の使用量を上記範囲とすることを意味する。二官能フェノール化合物1molに対するジアミン化合物の使用量を、2mol以下とすることにより、反応溶液のゲル化を効果的に抑制することができる。二官能フェノール化合物1molに対するジアミン化合物の使用量を0.1mol以上とすることにより、二官能フェノール化合物を残存することなく十分に反応させて、ベンゾオキサジン樹脂を更に高分子量化させることができる。
【0082】
アルデヒド化合物としては、特に限定されず、例えば、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ホルムアルデヒド等が挙げられる。これらの中でも、高分子量化させるという観点から、少なくともホルムアルデヒドであることが好ましい。ホルムアルデヒドとしては、その重合体であるパラホルムアルデヒドや、水溶液の形であるホルマリン等の形態で使用することが可能である。また、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドとアルコール類を反応させることで得られる、ヘミアセタールとして使用することも可能である。その際のアルコールとしては特に限定されないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、留去のしやすさという観点からメタノールが好ましい。アルコールは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
アルデヒド化合物の使用量は、ジアミン化合物1molに対して、4〜8molであることが好ましく、4〜7molであることがより好ましく、4〜6molであることが更に好ましい。アルデヒド化合物の使用量を8mol以下とすることにより、人体及び環境への影響を低減できる。アルデヒド化合物の使用量を4mol以上とすることにより、ベンゾオキサジン樹脂を更に高分子量化させることができる。
【0084】
ベンゾオキサジン樹脂の製造方法において、二官能フェノール化合物と共に単官能フェノール化合物を添加して反応させてもよい。単官能フェノール化合物を併用した場合、反応性末端がベンゾオキサジン環で封止された重合体が生成する。その結果、合成反応中での分子量の制御が可能であり、溶液のゲル化を防ぐことができる。また、反応性末端の封止は、得られたベンゾオキサジン樹脂の保存安定性も向上させ、不溶化を防止することができる。
【0085】
単官能フェノール化合物としては、特に限定されず、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ドデシルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−エトキシフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール等が挙げられる。これらの中でも、末端封止効果の観点からフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、1−ナフトール、2−ナフトールが好ましい。単官能フェノール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
して0.5mol以下であることが好ましい。単官能フェノール化合物の使用量が二官能フェノール化合物1molに対して0.5mol以下であることにより、合成反応中にベンゾオキサジン樹脂を高分子量化させることができ、また、単官能フェノール化合物を十分に反応させることにより、残存量を減少させることができる。
【0087】
本実施形態では、熱硬化性樹脂の反応中でも生成する樹脂のゲル化を抑制でき、適度に高分子量化された、ベンゾオキサジン樹脂を得ることができる。そして、シクロヘキサノンを更に加えることにより、溶液として保存時における分子量増加も抑制することができる。さらに、かかる混合溶媒を用いて得られるベンゾオキサジン樹脂は、従来に比して、熱線膨張率の低減化が図られており、優れた寸法安定性を有する。
【0088】
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物の反応に使用する混合溶媒の量は、特に限定されないが、二官能フェノール化合物のモル濃度が0.1〜5.0mol/Lとなる量であることが好ましく、0.2〜4.0mol/Lとなる量であることがより好ましく、0.3〜3.0mol/Lとなる量であることがさらに好ましい。二官能フェノール化合物のモル濃度が0.1mol/L以上であることにより、ベンゾオキサジン樹脂の合成反応速度を更に促進させることができ、合成効率の上昇を図ることができる。二官能フェノール化合物のモル濃度が5.0mol/L以下であることにより、ベンゾオキサジン樹脂の合成反応時に、反応溶液のゲル化をより効果的に抑制することができるとともに、ベンゾオキサジン樹脂の不溶化を防止することができる。
【0089】
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物及びアルデヒド化合物等の原料を添加混合する順序は、特に限定されず、例えば、混合溶媒に、二官能フェノール化合物、ジアミン化合物及びアルデヒド化合物を順次に添加混合してもよいし、各原料を一度に添加混合してもよい。反応溶媒として、エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒、及びアミド系溶媒の混合溶媒を用いる場合、二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物とを、混合溶媒に、先に混合することが好ましい
【0090】
本実施形態において原料の混合溶解を効率的に行うために、溶媒を加温することが好ましく、また、適宜、撹拌機、撹拌子等を使用して溶媒の撹拌下、二官能フェノール化合物等を添加混合してもよい。反応中は、必要に応じて、窒素ガス等の不活性ガスをパージしてもよい。加温処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、油浴等の温度調節器を用いて、所定の温度まで一気に上昇させた後に、その温度で一定に保つ方法等が挙げられる。
【0091】
加温処理の際の温度は、特に限定されないが、反応溶液温度が10〜150℃の範囲であることが好ましく、30〜150℃であることがより好ましく、50〜150℃の範囲であることが更に好ましい。反応溶液温度を10℃以上とすることにより、ベンゾオキサジン樹脂の合成反応を効果的に促進させることができ、反応効率を更に上昇させることができる。反応溶液温度を150℃以下とすることにより、反応溶液のゲル化を効果的に抑制でき、得られるベンゾオキサジン樹脂の不溶化を効果的に防止できる。反応溶液の加熱を行っている間は、溶媒を還流させてもよい。
【0092】
反応効率化の観点から、アルデヒド化合物を添加する前に、二官能フェノール化合物と、ジアミン化合物と、エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒及びアミド系溶媒を含む混合溶媒と、の混合溶液を予め加温処理することが好ましい。なお、シクロヘキサノンは、反応終了後に加えることで、ベンゾオキサジン樹脂の生成を阻害せず、効率よく反応を促進させることができる。
【0093】
ベンゾオキサジン樹脂の製造方法においては、生成する水を留去する工程を更に有してもよい。反応により生成する水を留去することで、ベンゾオキサジン樹脂の合成反応時間を短縮させることが可能となり、反応の効率化を図ることができる。生成する水の留去の方法やタイミングは、特に限定されるものではなく、例えば、反応溶液中の溶媒と共沸させることにより行うことができる。より具体的には、コック付きの等圧滴下ロート、ジムロート冷却器、ディーン・スターク装置等を用いることで生成する水の留去を行うことができる。また、反応工程中に反応容器内を減圧にすることで、生成する水を系外へ除去してもよい。
【0094】
加温処理の処理時間は、特に限定されないが、例えば、加温開始後1〜15時間程度であることが好ましく、2〜10時間程度がより好ましい。加温後、反応溶液を、油浴等の温度調節器の接触から開放して放冷してもよいし、あるいは冷媒等を用いて冷却してもよい。
【0095】
ベンゾオキサジン樹脂の製造方法では、合成反応後に、反応を終了した混合溶液を塩基性水溶液で洗浄する工程を、更に有してもよい。洗浄工程を更に行うことにより、反応溶液から未反応の二官能フェノール化合物や単官能フェノール化合物を効果的に取り除くことができる。洗浄工程の塩基性水溶液による洗浄に次いで、蒸留水等で数回洗浄することにより、ナトリウムイオン等の塩基性水溶液由来のイオンを取り除くこともできる。
【0096】
上記洗浄に用いる塩基性水溶液としては、塩基性化合物を水に溶解させた水溶液ならば特に限定されない。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、汎用性の観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0097】
このようにして得られるベンゾオキサジン樹脂は、適度に高分子量化されている。そのため、その後の開環反応により得られるフィルム等の最終製品のガラス転移温度や熱分解温度といった耐熱性や可とう性等の物性を向上させることができる。また、かかる製造方法によれば、反応溶液のゲル化を抑制できるので、ベンゾフェノン骨格やビフェニル骨格(例えば、式(4)参照)等の剛直な骨格を有する熱硬化性樹脂であっても製造することができる。
【0098】
ベンゾオキサジン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られるポリスチレン換算値での重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2000〜300000であり、より好ましくは2000〜100000であり、更に好ましくは3000〜50000であり、より更に好ましくは4000〜30000である。ここで、「高分子量化された」とは、繰り返し単位中にベンゾオキサジン環を有する、即ち、プレポリマータイプの熱硬化前のベンゾオキサジン樹脂が、重量平均分子量を2000〜300000程度に制御されていることを意味する。重量平均分子量が2000以上であることは、その後の開環反応により得られる最終製品の耐熱性、可とう性を上昇させることができるため好適である。なお、上記分子量は、本実施形態の組成物に対してエアーガン等を用いて圧縮空気や窒素ガスを吹きかけ、液体成分を除去して樹脂成分を取り出し、それをDMF等の溶離液に溶解させたものを測定することにより求めることができる。
【0099】
熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、樹脂の合成反応中や得られた樹脂の溶液保存中に、溶液の一部を抜き出し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定を行うことで測定できる。
【0100】
ベンゾオキサジン樹脂は、ハロゲンを構造中に有さない構造とすることができ、また、いわゆる不純物としてハロゲンを含まない溶媒を用いて製造することもできため、ゲル化しておらず、かつハロゲンを実質的に含有しない、熱硬化性樹脂組成物を得ることもできる。
【0101】
熱硬化性樹脂組成物は、上述した各種溶媒を含んでいてもよい。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、ベンゾオキサジン環等を開環反応させることより、積層板や半導体封止材等のエレクトロニクス材料、摩擦材や砥石等の結合材等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例及び比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例に用いられる評価方法及び測定方法は以下のとおりである。
【0103】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
高速液体クロマトグラフシステム、メーカー:SHIMADZU
システムコントローラー:SCL−10A VP
送液ユニット:LC−10AD VP
VPデガッサー:DGU−12A
示差屈折計(RI)検出器:RID−10A
オートインジェクター:SIL−10AD VP
カラムオーブン:CTO−10AC VP
カラム:東ソー TSKgel α−4000(排除限界分子量1000000)×2(直列)
カラム温度:50℃
流量:0.8mL/分
溶離液:DMF(和光純薬工業社製、安定剤不含、HPLC用)、LiBr 10mmol/L含有
サンプル:0.1wt%
検出器:RI
上記測定条件により、Mwが、それぞれ、707000、354000、189000、98900、37200、17100、9830、5870、2500、1050、500の標準ポリスチレン(東ソー社製)を用いて検量線を作成した。そして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により得られたポリポリスチレン換算値に基づいてサンプルの重量平均分子量(Mw)を測定した。なお、測定サンプルの調製は、後述する溶液に対してエアーガンを用いて圧縮空気を吹きかけ、溶媒を除去し、得られた樹脂を、溶離液(DMF)に溶解させた。
【0104】
1H−NMRの測定]
以下の測定装置及び溶媒を用い、サンプル濃度2wt%で1H−NMRを測定した。
測定装置:JEOL社製、ECX400(400MHz)
溶媒:重ジメチルスルホキシド(DMSO;シグマアルドリッチ社製;0.05体積% TMS(テトラメチルシラン)含有)
【0105】
(ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂αの合成)
室温において、300mLのフラスコ内に、エチレングリコールモノメチルエーテル(以下、「MC」という。) 90.0mL(東邦化学工業社製、製品名「ハイソルブMC」)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。) 60.0mL(ゴードー社製)、キシレン 30.0mL(和光純薬工業社製)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(以下、「DHBP」という。) 77.66g(0.36mol、和光純薬工業社製)、p−フェニレンジアミン(以下、「PDA」という。) 40.39g(0.37mol、大新化成工業社製、製品名「パラミン」)を投入し、系内へ窒素ガスパージを開始した(流量150mL/分)。
前記フラスコを油浴に浸し、反応溶液の温度が45℃になってから、ホルミットM 101.48g(ホルムアルデヒド分46.4%、メタノール分45.0%、広栄化学工業社製、製品名「コーエイホルミットM」)を滴下した。滴下終了後、前記フラスコ内を減圧し0.05MPaとして、反応溶液温度75℃で1時間反応させた。その後、一旦前記フラスコ内を常圧に戻し、前記反応溶液に2−ナフトール 4.05g(0.028mol、和光純薬工業社製)を添加した。再び前記フラスコ内を減圧し0.05MPaとして、反応溶液温度75℃で3時間反応させた。このようにして得られた反応溶液を室温まで冷却し、生成物であるベンゾオキサジン熱硬化性樹脂αが溶解している溶液aを得た。
得られた熱硬化性樹脂αの重量平均分子量(Mw)は約16,000であった。熱硬化性樹脂αが溶解している溶液aのプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)を図1に示す。
DHBP_PDAのオキサジン環
オキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.46ppm
オキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.65ppm
2−ナフトール_PDAのオキサジン環
ナフトキサジン環2位のメチレンプロトンピーク:5.42ppm
ナフトオキサジン環4位のメチレンプロトンピーク:4.88ppm
【0106】
生成物である熱硬化性樹脂αが溶解している溶液aの組成
ガラス製容器に熱硬化性樹脂αが溶解している溶液aを測り取り、ガラス容器にはフタをせず(開放したまま)、160℃に加熱した真空オーブン中に置き、真空ポンプで11時間減圧し続け、溶媒を減圧留去して固形分を得た。その前後の重量差分から、固形分の重量を求めた。その結果、固形分の含有量(熱硬化性樹脂αの含有量)60wt%であった。
溶媒であるMCの含有量は18wt%であり、DMFの含有量は22wt%であった。溶媒組成は、1H−NMRの積分比より算出した。
【0107】
(シリカスラリーの調製)
シリカ(アドマテックス社製、商品名「SO−C2」:平均粒子径0.5μm)をビニルシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−1003」)を用いて表面処理し、シクロヘキサノンに分散させてシリカスラリー(固形分70wt%)を調製した。
【0108】
<実施例1>
熱硬化性樹脂αが溶解している上記溶液a 1.34gに、上記シリカスラリー4.53gを加えて、溶液Aを得た。得られた溶液A中における熱硬化性樹脂aの含有量は13.8wt%であり、シリカの含有量は54wt%であった。MCの含有量は4wt%であり、DMFの含有量は5wt%であり、シクロヘキサノンの含有量は23wt%であった。
なお、最終的に得られた溶液Aの各成分の含有量は、以下の方法により測定した。
溶液Aを適量抜き出し、そのままTG−DTA測定することで、シリカ量を求めた。なお、TG−DTA測定は、SIIナノテクノロジー社製「TG/DTA6200」を用い、空気を200mL/分でフローし、昇温速度10℃/分で、800℃まで昇温させて測定した。溶液Aの固形分濃度は、前記と同様の方法(溶液a中の熱硬化性樹脂αの固形分濃度を求めた方法)で求めた。溶液Aの固形分濃度と前記TG−DTAで求めたシリカ量から、熱硬化性樹脂αの量を求めた。
また、MC、DMF、及びシクロヘキサノンについては、溶液Aをそのまま1H−NMRにより測定することで各溶媒の比率を求めた。その結果と溶液Aの固形分濃度の結果から、各溶媒の含有量を求めた。
【0109】
<実施例2>
熱硬化性樹脂αが溶解している上記溶液a1.34gに、上記シリカスラリー9.07gを加えた以外は実施例1と同様にして、溶液Bを得た。得られた溶液B中における熱硬化性樹脂aの含有量は8wt%であり、シリカの含有量は61.0wt%であった。MCの含有量は2wt%であり、DMFの含有量は3wt%であり、シクロヘキサノンの含有量は26wt%であった。
【0110】
<実施例3>
熱硬化性樹脂αが溶解している上記溶液a1.34gに、シクロヘキサノン1.36gを加えた以外は実施例1と同様にして、溶液Cを得た。得られた溶液C中における熱硬化性樹脂aの含有量は30wt%であった。MCの含有量は9wt%であり、DMFの含有量は11wt%であり、シクロヘキサノンの含有量は50wt%であった。
【0111】
<実施例4>
熱硬化性樹脂αが溶解している上記溶液a1.34gに、シクロヘキサノン2.72gを加えた以外は実施例1と同様にして、溶液Dを得た。得られた溶液D中における熱硬化性樹脂aの含有量は20wt%であった。MCの含有量は6wt%であり、DMFの含有量は7wt%であり、シクロヘキサノンの含有量は67wt%であった。
【0112】
(比較例1)
熱硬化性樹脂αが溶解している上記溶液a1.34gに何も添加しなかったものを溶液Eとした。
【0113】
(比較例2)
熱硬化性樹脂αが溶解している上記溶液a1.34gに、シクロペンタノン1.36gを加えた以外は実施例1と同様にして、溶液Fを得た。
【0114】
(比較例3)
熱硬化性樹脂αが溶解している上記溶液a1.34gに、シクロペンタノン2.72gを加えた以外は実施例1と同様にして、溶液Gを得た。
【0115】
溶液A〜Gを、23℃、1atmの条件下で30日間保存し、その状態を観察した。その結果を図2に示す。なお、溶液Fは、14日目で完全にゲル化したため以降の測定は不可能であった。図2に示されるように、実施例1〜4の溶液A〜Dは、いずれも30日間経過後であっても分子量の増加を十分に抑制できていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の分子量増加を抑制することが可能であり、組成物の粘度増加やゲル化が防止できるので、保存安定性が向上する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と、
エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、
アミド系溶媒と、
シクロヘキサノンと、
を含む熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

式(I)において、Ar1は、4価の芳香族基を表す。R1は、置換又は無置換の炭化水素基を表す。nは、2〜500の整数を表す。
【請求項2】
前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒が、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アミド系溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記アミド系溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒の含有量が、0.1〜18wt%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記アミド系溶媒の含有量が、0.1〜20wt%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記シクロヘキサノンの含有量が、20〜70wt%である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記熱硬化性樹脂の含有量が、5〜50wt%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに無機充填材を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機充填材がシリカである、請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記無機充填材の含有量が、40〜70wt%である、請求項10又は11に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記無機充填材の表面が有機化処理されている、請求項10〜12のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記無機充填材の表面がビニル基を有する、請求項10〜13のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
下記式(I)で表されるベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を、エーテル基とアルコール性
ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒と、シクロヘキサノンとを含む混合溶媒中に溶解させる工程を少なくとも有する、熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【化2】

式(I)において、Ar1は、4価の芳香族基を表す。R1は、置換又は無置換の炭化水素基を表す。nは、2〜500の整数を表す。
【請求項16】
二官能フェノール化合物、ジアミン化合物、及びアルデヒド化合物を、前記エーテル基とアルコール性ヒドロキシル基をそれぞれ一つ以上分子内に有する溶媒と、アミド系溶媒とを含む混合溶媒中で反応させて、前記熱硬化性樹脂を含む反応溶液を得る工程と、
前記反応溶液に前記シクロヘキサノンを添加する工程と、
を有する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記シクロヘキサノンの添加量が、20〜70wt%である、請求項15又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
さらに、無機充填材を添加する工程を有する、請求項15〜17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記反応溶液に前記シクロヘキサノンを添加する工程として、前記反応溶液に、無機充填材と前記シクロヘキサノンとを含むスラリーを添加する工程を行う、請求項16又は17に記載の製造方法。
【請求項20】
前記無機充填材がシリカである、請求項18又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記熱硬化性樹脂組成物における前記無機充填材の添加量が、40〜70wt%である、請求項18〜20のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記無機充填材の表面が有機化処理されている、請求項18〜21のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記無機充填材の表面がビニル基を有する、請求項18〜22のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−180411(P2012−180411A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42800(P2011−42800)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】