説明

熱硬化性水性塗料及び塗膜形成方法

【課題】 耐水性等の塗膜性能及び塗面平滑性、メタリック感などの仕上がり性に優れた塗膜を得ることのできる熱硬化性水性塗料及び塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】 特定の反応性乳化剤を使用して、ラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体、メタクリル酸及び水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体を含むラジカル重合性不飽和単量体を多段階反応で乳化重合することにより合成された水分散性アクリル重合体粒子を含有することを特徴とする熱硬化性水性塗料及びこれを用いた塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の水分散性アクリル重合体粒子を含んでなる、メタリック感、塗面平滑性等の仕上がり性に優れた塗膜を形成しうる水性塗料及び該水性塗料を用いた塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料分野において、環境保全及び省資源の観点から、有機溶剤の使用量削減が重要な課題となっている。近年、その対策として、塗料中の有機溶剤量を減少させるために、塗料の水性化及び高固形分化の開発が進められている。
【0003】
自動車塗料分野における水性塗料として、例えば、多価カルボン酸樹脂、アミノ樹脂、線状低分子ポリエステルジオールおよびベンゾインを主成分とする熱硬化性水性塗料(例えば、特許文献1)が知られているが、固形分濃度が低く、塗膜の平滑性等が充分でなく、また、塗膜の耐水性等の塗膜性能も十分なものではない。
【0004】
自動車塗料の中でも特に、上塗り塗料においては外観品質に優れた塗膜であることが求められており、メタリック塗装に際しては、メタリックベース塗料中のアルミニウムなどの鱗片状光輝性顔料を良好に配向させることによりメタリック感等の仕上がり性に優れた塗膜外観が得られることが求められている。
【0005】
このようなメタリック塗装に用いられる水性メタリックベース塗料として、例えば、架橋重合体微粒子を水性ベース塗料中に含有することを特徴とする、メタリック顔料のフリップフロップ効果を最大限に発揮させ且つメタリック感に優れた塗膜を形成するベースコート組成物(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながら、該組成物は塗装条件、特に湿度の変化によりタレ、ムラ等の塗膜欠陥が生じやすいという欠陥がある。
【0006】
また、2コート1ベークの塗装方法において、例えば、水性メタリックベース塗料で使用する塗料として特に、重合体微粒子を含有する水分散体に、例えばステアリルアクリレート、ステアリルメタアクリレート等の特定の長鎖のモノマーを共重合した水分散体を使用する塗膜形成方法(例えば、特許文献3)も提案されているが、塗装作業性及び平滑性、メタリック感等の仕上がり性が不十分であるなどの問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平4−93374号公報
【特許文献2】特公平3−14869号公報
【特許文献3】特開2001−104878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐水性等の塗膜性能に優れ、塗面平滑性、メタリック感などの仕上がり性に優れた塗膜を得ることのできる熱硬化性水性塗料及び塗膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、特定の反応性乳化剤を使用して、ラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体、メタクリル酸及び水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体を含むラジカル重合性不飽和単量体を多段階反応で乳化重合することにより合成された水分散性アクリル重合体粒子を含有することを特徴とする熱硬化性水性塗料及びこれを用いた塗膜形成方法によれば、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明は、(A)水分散性アクリル重合体粒子、(B)架橋剤及び(C)顔料を含有する塗料であって、
上記(A)成分が、ラジカル重合性不飽和単量体をスルホン酸化合物のアンモニウム塩である反応性乳化剤を使用して、多段階反応で乳化重合することにより合成されるものであり、該ラジカル重合性不飽和単量体として、ラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体を、ラジカル重合性不飽和単量体の総量を基準にして、0.1〜5.0重量%含有し、かつメタクリル酸及び水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体を必須成分として含有するものであって、該(A)成分が1〜70mgKOH/gの範囲内の水酸基価、5〜90mgKOH/gの範囲内の酸価を有する水分散性アクリル重合体粒子であることを特徴とする熱硬化性水性塗料を提供するものである。
【0011】
本発明は、また、上記の熱硬化性水性塗料を用いて複層塗膜を形成する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱硬化性水性塗料によれば、仕上がり性及び耐水性等の塗膜性能に優れた塗膜を得ることができる。また、特に水性メタリックベースコート塗料とした場合には、平滑性、メタリック感等の仕上がり性に優れた塗膜を得ることができる。
【0013】
その結果、水性塗料により、キラキラとして光輝感が良好な意匠性及び耐水性等の塗膜性能に優れたメタリック塗膜を形成することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の熱硬化性水性塗料及び塗膜形成方法についてさらに詳細に説明する。
【0015】
熱硬化性水性塗料
本発明の熱硬化性水性塗料(以下、「本塗料」という。)は、(A)水分散性アクリル重合体粒子、(B)架橋剤及び(C)顔料を含有する塗料である。
水分散性アクリル重合体粒子(A)
本塗料の水分散性アクリル重合体粒子(A)は、スルホン酸化合物のアンモニウム塩である反応性乳化剤を使用して、特定量のラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体、メタクリル酸及び水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体を含有するラジカル重合性不飽和単量体を多段階反応で乳化重合することにより合成される水分散性アクリル重合体粒子である。
【0016】
上記乳化剤としては、水分散性アクリル重合体粒子を形成するラジカル重合性不飽和単量体の乳化重合反応における共重合性、本塗料より得られる塗膜の耐水性等の塗膜性能及び環境対策のための残存モノマー削減等の観点から、スルホン酸化合物のアンモニウム塩である反応性乳化剤が使用される。このような反応性乳化剤としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩をあげることができる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を基本構造とするアニオン性乳化剤で、その疎水基の一部としてラジカル重合性のアリル基を導入した化合物等をあげることができる。
【0017】
上記乳化剤の市販品としては、例えば、アクアロンKH−10(第一工業製薬社製)、ラテムルS−180A(花王社製)、SR−1025(旭電化工業社製)等を挙げることができる。
【0018】
上記反応性乳化剤の濃度は、水分散性アクリル重合体粒子を形成するラジカル重合性不飽和単量体の固形分総重量に対して、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の範囲内であるのが適している。
【0019】
また、必要に応じて、上記反応性乳化剤以外のアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤なども乳化剤として併用することができる。具体的にはアニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミドなどが挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、アルキルベダイン等が挙げられる。
【0020】
上記必要に応じて併用される乳化剤の濃度は、水分散性アクリル重合体粒子を形成するラジカル重合性不飽和単量体の固形分総重量に対して、反応性乳化剤との合計量で、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の範囲内であるのが適している。
【0021】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、多段階反応により合成され、具体的には、例えば、2層構造であるコア/シェル構造、3層構造である第1コア/第2コア/シェル構造を有するもの等をあげることができる。塗膜性能及び水分散性アクリル重合体粒子の生産性の観点から、2層構造であるコア/シェル構造のものを好適に使用することができる。
また、水分散性アクリル重合体粒子(A)は、必須成分としてラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体を使用することにより、粒子内架橋されていることを特徴とするものである。本発明においては、塗膜性能及び塗膜の仕上り性の観点から、特に、コア部分が粒子内架橋され、シェル部分が未架橋であるものを好適に使用することができる。
【0022】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、必須成分であるラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−1)、メタクリル酸(M−2)及び水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−3)並びに必要に応じて、その他のラジカル重合性不飽和単量体(M−4)を併用して、多段階反応で乳化重合することにより得ることができる。
【0023】
本発明においては、必須成分として、特にラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−1)及びメタクリル酸(M−2)を使用することを特徴としている。ラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−1)を使用することでポリマー中に水素結合力のあるアミド基を効果的に導入しながら三次元架橋した重合体粒子を合成することができる。この重合体粒子を塗料として用いた場合、水素結合力のあるアミド基により粒子内部まで水が浸透するため良好な粘度発現効果が得られ、また、ポリマー中にアミド基が局在化することなく分布していることにより良好な塗膜性能を得ることができるものと考えられる。1分子中に1個のラジカル重合性不飽和基を持つアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体ではポリマー中においてアミド基が局在化しやすいため、良好な耐水性等の塗膜性能を得ることができないと推定される。
【0024】
水分散性アクリル重合体粒子(A)に酸基を導入するためのカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、通常、アクリル酸、メタクリル酸が同様に用いられることが考えられるが、本発明においては、塗膜性能と粘度発現性の両立のため、メタクリル酸を用いることを特徴としている。塗膜の耐水性に関して、メタクリル酸はアクリル酸に比べ、水中での解離度が低く、親水性官能基であるカルボキシル基がアクリル酸に比べより粒子内部に均一に分布するため、耐水性が良好になるものと推定している。
【0025】
なお、粒子内架橋する手法として、得られる塗膜の仕上り性及び塗膜性能の低下をきたさない程度に、必要に応じて、例えば、(M−1)以外のラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するラジカル重合性不飽和単量体(M−5)を少量併用する方法、グリシジル基を有するラジカル重合性不飽和単量体とカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和単量体とをそれぞれ少量併用する方法、水酸基を有するラジカル重合性不飽和単量体(M−3)とイソシアネート基を有するラジカル重合性不飽和単量体をそれぞれ少量併用する方法などを併用することもできる。
【0026】
本塗料の水分散性アクリル重合体粒子(A)は、コア/シェル構造のものを合成するには、具体的には、例えば、最初にラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−1)及び、(M−1)以外のラジカル重合性不飽和単量体を乳化重合(この際、メタクリル酸(M−2)を全く含有しない又は少量含有する)し、その後、メタクリル酸(M−2)を多量に含むラジカル重合性不飽和単量体を加えて乳化重合することにより得ることができる。
【0027】
上記におけるメタクリル酸(M−2)の配合割合は、最初のコア部の合成においては、コア部を形成するラジカル重合性不飽和単量体の総量を基準にして、0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、その後のシェル部の合成においては、シェル部を形成するラジカル重合性不飽和単量体の総量を基準にして、5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%である。
【0028】
ラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−1)としては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0029】
水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−3)は、1分子中に水酸基と1個のラジカル重合性不飽和基とを有する化合物であり、この水酸基は架橋剤と反応する官能基として作用することができる。該単量体(M−3)としては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10個の2価アルコールとのモノエステル化物、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなど、また、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどを挙げることができる。
【0030】
これらの水酸基を有するラジカル重合性不飽和単量体(M−3)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
その他のラジカル重合性不飽和単量体(M−4)は、上記単量体(M−1)、(M−2)及び(M−3)以外の単量体であって、1分子中に1個のラジカル重合性不飽和基を有する化合物であり、その具体例を以下の(1)〜(7)に列挙する。
【0032】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物:例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート等。
【0033】
(2)芳香族系ビニルモノマー:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
【0034】
(3)グリシジル基含有ビニルモノマー:1分子中にグリシジル基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物で、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等。
【0035】
(4)含窒素アルキル(炭素数1〜20)アクリレート:例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等。
【0036】
(5)ビニル化合物:例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル等。
【0037】
(6)重合性不飽和結合含有ニトリル系化合物:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
【0038】
(7)ジエン系化合物:例えばブタジエン、イソプレン等。
【0039】
これらのその他のラジカル重合性不飽和単量体(M−4)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0040】
前記(M−1)以外のラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するラジカル重合性不飽和単量体(M−5)としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート等をあげることができ、ここでは前記ジエン系化合物は含まれない。
【0041】
水分散性アクリル重合体粒子(A)におけるラジカル重合性不飽和単量体の配合割合は、ラジカル重合性不飽和単量体の総量を基準にして、ラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−1)が0.1〜5.0重量%、好ましくは0.5〜4.0重量%、メタクリル酸(M−2)が0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−3)が0.1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%である。
【0042】
上記ラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−1)の配合量が0.1重量%未満であると、粘性効果が不十分となって、塗膜の仕上り性が劣り、5.0重量%を超えると、水分散性アクリル重合体粒子(A)の貯蔵安定性が低下する傾向がある。上記メタクリル酸(M−2)の配合量が0.1重量%未満であると、水分散性アクリル重合体粒子(A)の粘性効果が不十分となって塗膜の仕上り性が劣り、20重量%を超えると、塗膜の耐水性が低下する傾向がある。上記水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(M−3)の配合量が0.1重量%未満であると、塗膜の硬化性が不十分となり、20重量%を超えると、塗膜の耐水性が低下する傾向がある。
【0043】
水分散性アクリル重合体粒子(A)が2層構造の場合、コア部/シェル部の重量比は、用いられる全ラジカル重合性不飽和単量体の重量に対して、95/5〜50/50、好ましくは、85/15〜60/40の範囲内である。コア部の重量が全ラジカル重合性不飽和単量体の重量に対して50重量部未満であると、塗膜の耐水性が劣る傾向がある。また、コア部の重量が全ラジカル重合性不飽和単量体の重量に対して90重量部を超えると、水分散性アクリル重合体粒子(A)の粘性効果が不十分となって塗膜の仕上り性が劣る傾向がある。
【0044】
また、ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アンモニウム等に代表される過酸化物、これら過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤とが組み合わされたいわゆるレドックス系開始剤、4,4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)などのアゾ化合物等を挙げることができ、ラジカル重合開始剤の量は水分散性アクリル重合体粒子を形成するラジカル重合性不飽和単量体の固形分総重量に対して、通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内であるのが適している。
【0045】
乳化重合反応中における全ラジカル重合性不飽和単量体の濃度は、通常、0.1〜60重量%、好ましくは0.5〜50重量%の範囲内であるのが適している。
【0046】
乳化重合の際の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤により異なるが、通常60〜90℃、反応時間は通常5〜10時間とすることができる。
【0047】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、得られる塗膜の耐水性や硬化性等の観点から、1〜70mgKOH/g、好ましくは2〜60mgKOH/g、さらに好ましくは5〜50mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有するのが好適である。また、水分散性アクリル重合体粒子(A)は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性等の観点から、5〜90mgKOH/g、好ましくは10〜70mgKOH/g、さらに好ましくは15〜50mgKOH/gの範囲内の酸価を有するのが好適である。さらに、水分散性アクリル重合体粒子(A)は、10〜1000nm、好ましくは20〜500nmの範囲内の粒子径を有することができる。
【0048】
水分散性アクリル重合体粒子(A)は塩基性化合物で中和することが好ましい。
水分散性アクリル重合体粒子(A)の中和剤としては、アンモニア又は水溶性アミノ化合物、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、モルホリン等を好適に使用することができる。
【0049】
架橋剤(B)
本塗料の架橋剤(B)は、特に制限されるものではなく、例えば、以下に述べるブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)、水分散性ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)、メラミン樹脂(b)等を好適に用いることができる。
【0050】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)は、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックしたものである。
【0051】
上記のポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類;これらの脂肪族ポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は−2,6−)ジイソシアネート、1,3−(若しくは1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類;これらの脂環族ジイソシアネ−トのビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−又はp−)フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;水添MDI、及び水添MDIの誘導体;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
【0052】
また、ブロック剤は、これらのポリイソシアネート化合物中の遊離のイソシアネート基を封鎖するものであり、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱すると、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基が再生し、水酸基と容易に反応することができるようになる。かかるブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル系;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル系;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;
マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジフェニルなどのマロン酸ジアルキルエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなどのアセト酢酸エステル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどのアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
【0053】
塗料の低有機溶剤量化(低VOC化)のためには架橋剤(B)からも有機溶剤量を減らした方がよく、そのためには、塗膜性能を低下させない範囲で、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)に水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)を用いることができる。
【0054】
水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)には、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をヒドロキシモノカルボン酸類を含むブロック剤でブロックし、ヒドロキシモノカルボン酸類により導入されたカルボキシル基を中和することによって水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート化合物をあげることができる。この場合、ポリイソシアネート化合物の少なくとも1個のイソシアネート基がヒドロキシモノカルボン酸類のヒドロキシル基に付加するように反応させるのが、得られるブロック化ポリイソシアネート硬化剤の水分散性の観点から好ましい。
【0055】
上記ポリイソシアネート化合物としては、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)において例示したものと同様のポリイソシアネート化合物を用いることができるが、なかでも特に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)の誘導体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の誘導体、水添MDI及び水添MDIの誘導体が好適である。
【0056】
ブロック剤としては、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(b)において例示したブロック剤と同様のものを用いることができる。また、ヒドロキシモノカルボン酸類としては、例えば、2−ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロパン酸、12−ヒドロキシ−9−オクタデカン酸(リシノレイン酸)、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパン酸(ヒドロキシピバリン酸)、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)等を挙げることができ、この中で、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパン酸(ヒドロキシピバリン酸)が好ましい。反応はイソシアネート基に対して反応性でない溶媒中、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類;N−メチルピロリドン(NMP)等の溶媒中で行なうことができる。
【0057】
メラミン樹脂(b)としては、具体的には、ジ−、トリー、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−メチロールメラミンおよびそれらのアルキルエーテル化物(アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシルアルコール等が挙げられる)並びにそれらの縮合物などを挙げることができ、市販品として、例えば、日本サイテックインダストリーズ社製のサイメル254などのサイメルシリーズ;三井化学社製のユーバン20SBなどのユーバンシリーズなどを使用することができる。
また、メラミン樹脂(b)を硬化剤として使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸、およびこれらの酸とアミンとの塩を触媒として使用することができる。
【0058】
顔料(C)
本塗料の顔料(C)としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などの着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイトなどの体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末などの光輝性顔料などをあげることができる。
【0059】
顔料は通常、本塗料に使用される樹脂の一部を使用して顔料ペーストをつくり、これを残りの水性ワニスに他の成分と共に添加することにより配合することができる。顔料ペーストの作製にあたっては必要に応じて適宜、消泡剤、分散剤、表面調整剤などの慣用の添加剤を使用することができる。
【0060】
本塗料をメタリック仕様の水性ベースコート塗料として使用する場合には、光輝性顔料及び必要に応じて着色顔料が添加される。
【0061】
本発明の熱硬化性水性塗料は、例えば、中和塩基を含む水性媒体に(A)成分の水分散性アクリル重合体粒子を分散し、これに(B)成分の架橋剤、さらに(C)成分の顔料(顔料は前記の顔料ペーストとして添加)を加えて分散することによって調製することができる。その際、中和塩基は通常、熱硬化性水性塗料のpHが7〜9となる範囲内で使用することができる。
【0062】
本塗料中の(A)水分散性アクリル重合体粒子、(B)架橋剤及び(C)顔料の配合量は、厳密に制限されるものではなく、該塗料の用途等に応じて広い範囲で変えることができるが、一般には、熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部を基準として、固形分として、水分散性アクリル重合体粒子(A)は5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%の範囲内、架橋剤(B)は5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲内、また、顔料(C)は熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部に対して、1〜250重量部、好ましくは3〜150重量部の範囲内とすることができる。
【0063】
本塗料には、前記した(A)及び(B)成分の他に、必要に応じてさらに、その他の樹脂成分も含有させることができる。このような樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができ、なかでも、以下に述べるアクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好適である。
【0064】
アクリル樹脂
必要に応じて本塗料に含有させることができるアクリル樹脂としては特に制限はなく、例えば、ラジカル重合性不飽和単量体を常法に従い溶液重合により共重合することによって合成することができるアクリル樹脂を挙げることができる。溶液重合に使用し得る有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール系、ジプロピレングリコール系等の親水性有機溶剤が好ましい。また、水分散性の観点から、該アクリル樹脂はカルボキシル基等の酸基を有しているものが好ましい。
【0065】
ラジカル重合性不飽和単量体としては、従来から既知のものを使用することができ、例えば、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を使用することができる。
水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレートなどをあげることができる。
【0066】
カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。
【0067】
その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アロニックスM110(東亞合成)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシ(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシランなどを挙げることができる。
【0068】
なお、上記において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタアクリレート」を意味する。
【0069】
アクリル樹脂は一般に1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有するのが好ましい。また、アクリル樹脂は一般に10〜250mgKOH/g、好ましくは30〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価及び一般に10〜100mgKOH/g、好ましくは20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。
【0070】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0071】
アクリル樹脂の量は熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部を基準として、固形分として、0〜40重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲内とすることができる。
【0072】
ポリエステル樹脂
必要に応じて本塗料に含有させることができるポリエステル樹脂としては特に制限はなく、例えば、常法に従って、多塩基酸と多価アルコ−ルとをエステル化反応させることによって合成することができるポリエステル樹脂をあげることができる。
【0073】
多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸およびこれらの無水物などをあげることができ、また、多価アルコ−ルは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどをあげることができる。
【0074】
また、ポリエステル樹脂として、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸などで変性した脂肪酸変性ポリエステル樹脂も使用することができる。これらの脂肪酸による変性量は一般に、油長で30重量%以下であることが好ましい。また、安息香酸などの一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。また、例えば、ポリエステル樹脂に酸基を導入するために、前記多塩基酸と多価アルコールのエステル化反応後、さらに、トリメリット酸、無水トリメリット酸などの多塩基酸及びそれらの無水物を反応させることもできる。
【0075】
ポリエステル樹脂は一般に1,000〜200,000、好ましくは2,000〜50,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。また、ポリエステル樹脂は一般に10〜250mgKOH/g、好ましくは30〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価及び一般に10〜100mgKOH/g、好ましくは20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。
【0076】
ポリエステル樹脂の量は熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部を基準として、固形分として、0〜40重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲内とすることができる。
【0077】
また、本塗料には、必要に応じて(A)成分以外の樹脂粒子として、水分散性ウレタン重合体粒子を含有させることもできる。
【0078】
水分散性ウレタン重合体粒子
水分散性ウレタン重合体粒子は、例えば、応力緩和効果等の塗膜物性を向上させる目的で用いられるものであり、例えば、自動車用途に用いた場合、塗膜の走行中の石はねによる塗膜の耐損傷性(耐チッピング性という)等の向上や付着性の向上などに効果がある。
【0079】
水分散性ウレタン重合体粒子は、活性水素含有化合物、分子内に活性水素及び、アニオン基またはアニオン形成性基を有する化合物、及び有機ポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン重合体を、水中に分散、又は溶解することにより得ることができる。
【0080】
活性水素含有化合物としては、例えば、高分子ポリオール、低分子ポリオールおよびポリアミンが挙げられる(例えば、特開平3−9951号公報明細書に記載のもの)。
【0081】
高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールが好ましい。該高分子ポリオールは通常200〜3000、好ましくは250〜2000の範囲内のOH基当量を有することができる。低分子ポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、ペンタエリスリトールおよびトリメチロールプロパンが好ましい。ポリアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンが好ましい。
【0082】
前記分子内に活性水素及び、アニオン基またはアニオン形成性基を有する化合物としては、例えば、ジヒドロキシカルボン酸(α,α’−ジメチロールプロピオン酸、α,α’−ジメチロール酪酸など)、ジヒドロキシスルホン酸化合物〔3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩など〕、ジアミノカルボン酸(例えば、ジアミノ安息香酸など)が挙げられ、これらを中和するための塩基性化合物としては、有機塩基(例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミンなど)、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)が挙げられる。
【0083】
有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、2,4又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0084】
前記ウレタン重合体を製造するにあたって、活性水素含有化合物、分子内に活性水素及び、アニオン基またはアニオン形成性基を有する化合物、及び有機ポリイソシアネート化合物の反応は、各成分を一度に反応させるワンショット法、又は、例えば、活性水素含有化合物(たとえば高分子ポリオール)の一部、分子内に活性水素及び、アニオン基またはアニオン形成性基を有する化合物、及び有機ポリイソシアネート化合物を反応させてイソシアネート末端のプレポリマーを生成した後、活性水素含有化合物の残部を反応させる多段法のいずれの方法によっても行なうことができる。
【0085】
上記の反応は、通常40〜140℃、好ましくは60〜120℃で行うことができる。反応はイソシアネートに不活性な有機溶媒(アセトン、トルエン、ジメチルホルムアミド等)中で行なってもよく、該有機溶媒は反応の途中又は反応後のいずれにおいて添加してもよい。
【0086】
水分散性ウレタン重合体粒子は、上記の如くして得られる親水基を有するウレタン重合体を、塩基性化合物で中和してアニオン基を形成させた後、水中に分散又は溶解することにより得ることができる。
【0087】
また、ウレタン重合体を水中に分散又は溶解する際に、必要に応じて、アニオン性及び/又はノニオン性の界面活性剤を併用することもできる。
【0088】
水分散性ウレタン重合体粒子の量は熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部を基準として、固形分として、0〜40重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲内とすることができる。
【0089】
本塗料には、その他必要に応じて、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、劣化防止剤、流れ防止剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤を含有させることができる。
【0090】
硬化触媒としては、例えば、有機金属、酸及び塩基の各化合物をあげることができる。
有機金属化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、酢酸リチウム、アセチルアセトン鉄(III)、2−エチルヘキサン酸亜鉛、酢酸銅、三塩化バナジウム、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、テトラブチル錫、ジブチル錫オキシド、テトラ−n−ブチル−1,3−ジアセチルオキシジスタノキサン、テトラ−n−プロピル−1,3−ジアセチルオキシジスタノキサン、テトラ−n−ブチル−1,3−ジラウリルオキシジスタノキサン等の金属触媒を挙げることができ、特に、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジスタノキサン類等の有機錫系化合物が好ましく、更に、低温焼き付けが要求される場合には、ジブチル錫ジアセテートが好適に用いられる。
【0091】
酸化合物としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ブチルリン酸、オクチルリン酸などをあげることができ、これらの酸のアミン中和物なども好適に用いられる。
【0092】
塩基化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N−ペンタメチルジエチレントリアミン、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の化合物をあげることができる。
【0093】
硬化触媒として上記したこれらの化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。硬化触媒の使用量はその種類により異なるが、樹脂成分合計固形分重量100重量部に対し、通常、0.05〜5重量部程度が好適である。
【0094】
前記紫外線吸収剤としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等をあげることができる。
【0095】
紫外線吸収剤を含有させる場合、塗料中の含有量としては、樹脂固形分総合計量100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、特に0.2〜5重量部、さらに特に0.3〜2重量部の範囲内が耐侯性、耐黄変性等の面から好ましい。
【0096】
前記光安定剤としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤をあげることができる。
【0097】
光安定剤を含有させる場合、塗料中の含有量としては、樹脂固形分総合計量100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、特に0.2〜5重量部、さらに特に0.3〜2重量部の範囲内が耐侯性、耐黄変性の面から好ましい。
【0098】
塗膜形成方法
本塗料を適用し得る被塗物としては、特に限定されないが、例えば、自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体が好ましい。また、これら車体を形成する冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板;アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等であってもよい。
【0099】
また、被塗物としては、上記車体や金属基材の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物は、上記車体、金属基材等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。
【0100】
本塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などが挙げられ、これらの塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加されていてもよい。この中でも特にエアスプレー塗装方法が好ましい。熱硬化性水性塗料の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜70μm程度となる量が好ましい。
【0101】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装する場合には、熱硬化性水性塗料の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップ#No.4粘度計において、20℃で15〜60秒程度の粘度範囲となるように、適宜、有機溶剤及び/又は水を用いて調整しておくことが好ましい。
【0102】
ウエット塗膜の硬化は、被塗物に本塗料を塗装した後、加熱することにより行われる。
【0103】
加熱は、公知の加熱手段により行うことができる。例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、通常80〜180℃、好ましくは100〜160℃の範囲内が適している。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常、20〜40分間程度とすることができる。
【0104】
本塗料は、自動車用塗料として好適に用いることができ、とくに、上塗り用のベースコート塗料として、より好適に用いることができる。
【0105】
上塗り用のベースコート塗料として使用するにあたっては、例えば、電着塗装及び/又は中塗り塗装が施された被塗物上に、本塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、その未硬化の塗膜上にクリヤコート塗料を塗装してベースコートとクリヤコートを同時に加熱硬化させる2コート1ベーク方式によって複層塗膜を形成せしめることができる。
【0106】
また、被塗物上に中塗り塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなくその未硬化の中塗り塗膜上に上塗りベースコート塗料として本塗料を塗装し、さらに該塗膜を硬化させることなく、その未硬化の上塗りベースコート塗膜上にクリヤコート塗料を塗装して、中塗り、上塗りベースコート及びクリヤコートの3層の塗膜を同時に加熱硬化させることにより、3コート1ベーク方式によって複層塗膜を形成せしめることもできる。
【0107】
上記で用いられる中塗り塗料としては、従来から公知の熱硬化型中塗り塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂系などの基体樹脂にアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物等の硬化剤を、基体樹脂が含有する反応性官能基と反応性を有する硬化剤を適宜組み合わせてなる塗料を使用することができる。上記ポリイソシアネ−ト化合物及びブロックポリイソシアネート化合物としては、例えば前記架橋剤(B)について述べたものと同じものを使用することができる。中塗塗料としては、環境問題、省資源等の観点から、有機溶剤の使用量の少ないハイソリッド型塗料、水性塗料、粉体塗料等を好適に使用することができる。
【0108】
上記で用いられるクリヤコート塗料としては、従来から公知の熱硬化型クリヤコート塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂系などの基体樹脂にアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリカルボン酸又はその無水物、反応性シラン化合物等の硬化剤を、基体樹脂が含有する反応性官能基と反応性を有する硬化剤を適宜組み合わせてなる有機溶剤希釈塗料を使用することができる。上記ポリイソシアネ−ト化合物及びブロックポリイソシアネート化合物としては、例えば前記架橋剤(B)について述べたものと同じものを使用することができる。また、クリヤコート塗料としては、環境問題、省資源等の観点から、有機溶剤の使用量の少ないハイソリッド型塗料、水性塗料又は粉体塗料等を用いることもできる。
【0109】
とくに、アクリル樹脂/メラミン樹脂系、アクリル樹脂/ポリイソシアネート硬化剤系、アクリル樹脂/ブロックポリイソシアネート硬化剤系又は酸基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂系のクリヤコート塗料を好適に用いることができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものであり、また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基くものである。
【0111】
水分散性アクリル重合体粒子(A)の製造例
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部、アクアロンKH−10(注1)0.5部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物1のうちの全量の1%及び3%過硫酸アンモニウム水溶液10.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物1を3時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物2を2時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5.0%ジメチルエタノールアミン水溶液42部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、酸価32mgKOH/g、水酸基価43mgKOH/gの水分散性アクリル重合体粒子1(固形分30wt%)を得た。
(注1)アクアロンKH−10:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩:第一工業製薬株式会社製、有効成分97%。
【0112】
モノマー乳化物1:脱イオン水70部、アクアロンKH−10 1部、メチレンビスアクリルアミド3部、スチレン4部、メチルメタクリレート13部、エチルアクリレート30部及びn−ブチルアクリレート20部を混合攪拌して、モノマー乳化物1を得た。
【0113】
モノマー乳化物2:脱イオン水10部、アクアロンKH−10 1部、過流酸アンモニウム0.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート2部、n−ブチルアクリレート4部、ヒドロキシエチルアクリレート10部及びメタクリル酸5部を混合攪拌して、モノマー乳化物2を得た。
【0114】
製造例2〜8
下記表1に示す配合で、製造例1と同様にして合成し、水分散性アクリル重合体粒子2〜8を得た。製造例1と併せて、得られた水分散性アクリル重合体粒子2〜8の固形分重量濃度、酸価及び水酸基価を併せて下記表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
(注2)Newcol562SN:日本乳化剤社製、商品名、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル・ナトリウム塩、有効成分30%。
【0117】
ポリエステル樹脂の製造例
製造例9
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール142部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸46部を加え、180℃で1時間反応させて、酸価が49mgKOH/g、水酸基価が140mgKOH/g、数平均分子量が1600であるポリエステル樹脂1を得た。
【0118】
熱硬化性水性塗料(上塗りベースコート塗料)の製造例
実施例1
製造例9で得たポリエステル樹脂1 40部に、攪拌しながらサイメル325(日本サイテックインダストリーズ社製、メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分80%)37.5部及び製造例1で得た水分散性アクリル重合体粒子1(固形分30%)100部を添加した。その後、アルミ顔料分として20部となる量のアルミペーストGX180A(旭化成社製、アルミニウムフレークペースト)を攪拌しながら添加して混合分散し、さらに、ジメチルエタノールアミン及び脱イオン水を添加してpH8.0、フォードカップNo.4による測定で20℃にて40秒の粘度となるように調製し、熱硬化性水性塗料1を得た。
【0119】
実施例2〜6及び比較例1〜8
下記表2に示す配合で、実施例1と同様にして調製し、熱硬化性水性塗料2〜14を得た。なお、表2に示す熱硬化性水性塗料の配合は各成分の固形分重量比である。
【0120】
塗膜形成方法(試験板の作製1)
また、上記実施例1〜6及び比較例1〜8で得られた熱硬化性水性塗料1〜14について、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、塗膜性能試験を行なった。
(被塗物)リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、エレクロン9600(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱し硬化させ、その上にアミラックTP−65−2(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗り塗料)を膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させて被塗物とした。
【0121】
被塗物上に上記実施例及び比較例にて製造した熱硬化性水性塗料を回転式静電塗装機を用いて、ブース温湿度25℃/75%で、膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いでその未硬化のベースコート塗面上にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系溶剤型上塗りクリヤ塗料)をフォードカップ#No.4を用いて、スワゾール1000(コスモ石油社製、石油系芳香族炭化水素溶剤)を添加して塗料温度20℃で30秒の粘度に調整して、ミニベル型回転式静電塗装機を用い、ブース温湿度25℃/75%で、膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。
【0122】
性能試験結果1
上記のようにして形成された各々の試験板及び塗料の性能試験結果を併せて下記表2に示す。試験方法及び評価方法は以下の通りである。
【0123】
塗膜の平滑性:試験板の外観を目視にて評価した。
○:平滑性、ツヤ、鮮映性がすべて良好
△:平滑性、ツヤ、鮮映性のいずれかが、やや劣る
×:平滑性、ツヤ、鮮映性のいずれかが、顕著に劣る
IV値:レーザー式メタリック感測定装置(アルコープLMR−200(関西ペイント社製))を用いて測定したIVの値。IVはメタリック塗膜の白さのことで、メタリック顔料が塗面に対して平行に均一に配向するほど白くなり、メタリック感がよく、IV値が大きくなるほど白いことを示す。
【0124】
メタリックムラ:試験板のメタリックムラの具合を目視にて評価した。○:メタリックムラが認められない、△:メタリックムラが少し認められる、×:メタリックムラが多く認められる。
【0125】
耐水性:40℃の脱イオン水に240時間浸漬後の外観を目視にて評価した。
○:全く異常が認められない。
△:フクレ、ブリスター等の発生は認められないが、白化が認められる。
×:フクレ、ブリスター等の発生及び白化がともに認められる。
【0126】
貯蔵安定性:40℃にて10日間各熱硬化性水性塗料を貯蔵した後の状態を調べた。
○:問題なく良好。
△:塗料の粘度上昇がややみられる。
×:塗料の著しい粘度上昇がみられる。
【0127】
【表2】

【0128】
(注3)バイヒジュールVP LS2310:住化バイエルウレタン社製、水分散性を付与したブロック化脂肪族ポリイソシアネート硬化剤、固形分40%。
(注4)スーパーフレックス410:第一工業製薬社製、商品名、水分散性ウレタン重合体粒子(水性ポリカーボネート系ウレタン樹脂液)、固形分40%。
(注5)アクリル樹脂1:フラスコにプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後更にプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。これにジエタノールアミン7.4部を加えて中和することにより得られた、重量平均分子量58,000、水酸基価72mgKOH/g、酸価47mgKOH/gのアクリル樹脂(固形分重量濃度55%)。
【0129】
塗膜形成方法(試験板の作製2)
熱硬化性水性塗料1及び10についてはさらに以下の実施例7及び比較例9の記載にしたがって、2種類の試験板を作製した。
(被塗物)リン酸亜鉛化成処理を施した厚さ0.8mmのダル鋼板上に、エレクロン9600(関西ペイント社製、商品名、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して電着塗膜を形成させたものを被塗物とした。
(実施例7)
被塗物上にWP−300T(ポリエステル樹脂/ポリイソシアネート硬化剤系水性中塗り塗料、関西ペイント社製)を膜厚35μmとなるように塗装した。2分間放置後、80℃で5分間プレヒートを行なってから、未硬化の該水性中塗り塗膜上に実施例1で製造した熱硬化性水性塗料1を回転式静電塗装機を用いて、ブース温湿度25℃/75%で、膜厚15μmとなるように塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。
次いで、未硬化の該熱硬化性水性塗料1の塗膜上にマジクロンTC−71(関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系溶剤型上塗りクリヤ塗料)をフォードカップ#No.4を用いて、スワゾール1000を添加して塗料温度20℃で30秒の粘度に調整して、ミニベル型回転式静電塗装機を用い、ブース温湿度25℃/75%で、膜厚40μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して3層の塗膜を同時に硬化させることにより試験板を作製した。
(比較例9)
実施例7において、熱硬化性水性塗料1のかわりに比較例4で得た熱硬化性水性塗料10を使用する以外は、実施例7と同様に操作して試験板を作製した。
性能試験結果2
上記のようにして作製した各試験板の性能試験結果を表3に示した。試験方法及び評価方法は性能試験結果1で示した方法と同様にして試験及び評価を行なった。
【0130】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水分散性アクリル重合体粒子、(B)架橋剤及び(C)顔料を含有する塗料であって、
上記(A)成分が、ラジカル重合性不飽和単量体をスルホン酸化合物のアンモニウム塩である反応性乳化剤を使用して、多段階反応で乳化重合することにより合成されるものであり、該ラジカル重合性不飽和単量体として、ラジカル重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有ラジカル重合性不飽和単量体を、ラジカル重合性不飽和単量体の総量を基準にして、0.1〜5.0重量%含有し、かつメタクリル酸及び水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体を必須成分として含有するものであって、該(A)成分が1〜70mgKOH/gの範囲内の水酸基価、5〜90mgKOH/gの範囲内の酸価を有する水分散性アクリル重合体粒子であることを特徴とする熱硬化性水性塗料。
【請求項2】
架橋剤(B)が、メラミン樹脂及び/又はブロックポリイソシアネート化合物である請求項1に記載の熱硬化性水性塗料。
【請求項3】
熱硬化性水性塗料中の樹脂固形分100重量部を基準として、固形分として、前記(A)成分を5〜80重量部含有する請求項1又は2に記載の熱硬化性水性塗料。
【請求項4】
被塗物に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性水性塗料をベースコート塗料として塗装し、さらに未硬化の該ベースコート塗面上にクリヤコート塗料を塗装してベースコート及びクリヤコートを同時に硬化させることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項5】
被塗物に、中塗り塗料を塗装し、未硬化の該中塗り塗面上に請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性水性塗料をベースコート塗料として塗装し、さらに未硬化の該ベースコート塗面上にクリヤコート塗料を塗装して、中塗り、ベースコート及びクリヤコートの3層の塗膜を同時に硬化させることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項6】
クリヤコート塗料がアクリル樹脂/メラミン樹脂系、アクリル樹脂/ポリイソシアネート硬化剤系、アクリル樹脂/ブロックポリイソシアネート硬化剤系又は酸基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂系塗料である請求項4又は5に記載の複層塗膜形成方法。

【公開番号】特開2006−176618(P2006−176618A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370683(P2004−370683)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】