説明

熱転写シート、熱転写受像シートと、それに使用するボビンもしくはカセット

【課題】 熱転写プリンターに対し適正な印字が行えるように、プリンターメーカーから品質保証の認定を受けた熱転写シート、熱転写受像シートの媒体、その媒体を巻き上げるボビン、もしくは、その媒体を収納するカセット、すなわち純正品である消耗品に限定して、プリンターで使用するように規制できることができ、印字品質の劣化やサーマルヘッドの劣化を防止できる熱転写シート、熱転写受像シートの媒体と、その媒体を巻き上げるボビン、もしくは、その媒体を収納するカセットを提供する。
【解決手段】 基材フィルム2の一方の面に少なくとも熱転写性色材層3を設け、該基材フィルム2の他方の面に少なくとも耐熱滑性層4が設けられた熱転写シート1において、該熱転写性色材層3、耐熱滑性層4の少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写プリンターに対し適正な印字が行えるように、プリンターメーカーから品質保証の認定を受けた熱転写シート、熱転写受像シートの媒体、その媒体を巻き上げるボビン、もしくは、その媒体を収納するカセット、すなわち純正品である消耗品に限定して、プリンターで使用するように規制できることができ、印字品質の劣化やサーマルヘッドの劣化を防止できる熱転写シート、熱転写受像シートの媒体と、その媒体を巻き上げるボビン、もしくは、その媒体を収納するカセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱転写プリンター、ファクシミリ等に用いられる熱転写記録媒体として、基材フィルムの一方の面に熱溶融性インキ層または昇華性染料インキ層の熱転写層を設けた熱転写シートが使用されている。従来の熱転写シートは、基材フィルムとして、厚さ3〜20μm程度のポリエステルのようなプラスチックフィルムを用い、この基材フィルム上にワックスに顔料や染料等の着色剤を混合した熱溶融性のインキまたは、樹脂バインダーに昇華性染料を分散ないし溶解させたインキを塗布して、熱溶融性インキ層または昇華性染料インキ層を設けたものである。そして、基材フィルムの裏側から、サーマルヘッドにより所定箇所を加熱・加圧し、熱溶融性インキ層または昇華性染料インキ層のうち、印字部に相当する箇所のインキ層を溶融、または昇華させ、受像シートに転写して印字を行うものである。
【0003】
また、熱転写シートは一般的に長尺物で供給用ボビン等に巻き上げられ、その熱転写シートの巻き終わりの端と巻き取り用ボビンを接着させた一対の巻き取り状のものが使用されている。そして、その熱転写シートは、熱転写シートカセットに収納されることが多く行なわれている。また、その熱転写シートと組み合わせて使用する受像シートは、基材上に熱転写層からの着色剤、染料を定着させるために、受容層を設けることが行なわれている。特に昇華性染料インキ層の熱転写層を設けた熱転写シートと組み合わせて使用する受像シートでは、基材上に染料受容層を設けることが行なわれている。このような受像シートは、大量に印字処理するような用途では、枚葉状に仕上げたシートではなく、長尺状の連続した巻取り形態の受像シートを供給用ボビンに巻き上げたものを、プリンターに装着して使用することが行われている。
【0004】
熱転写プリンターは、多種類のものが存在し、印字画像の鮮明性、高濃度、高感度等の印字品質の優れたものが要求されている。それに対し、プリンターで使用される熱転写シート及び熱転写受像シートは、その使用量が増大してきており、プリンターメーカーから品質保証の認定を受けていない製品、つまりプリンターメーカーの純正品でない、いわゆる海賊品の熱転写シートや熱転写受像シートが市場に多く出回ってきている。この海賊品をプリンターで使用すると、そのプリンターとのマッチング性に劣り、印字品質の劣化やプリンターのサーマルヘッドの劣化が多発し、問題が発生している。
【0005】
これに対して、特許文献1では、基材フィルム上に熱転写層を設けた熱転写シートの先端部に、該熱転写シートが純正品であることを同定するマークを設けてあり、該熱転写シートに対応する熱転写プリンターから該マークにエネルギーが加えられることにより、マークが破壊されることが開示されている。そのマークは、高周波に対して共振する回路である。しかし、このマークは目視にて、その存在が第三者に分かってしまうものであり、そのマークを貼り替えることが可能であり、偽造防止として十分なものではない。
【0006】
また、特許文献2では、リサイクルや品質管理、偽造防止のために、プリンター装置内に着脱自在に装着して使用される消耗品を収容ないし保持するための保持部品であって、この保持部品の一部に、非接触型情報記憶手段が、前記保持部品を構成する基材に一体的に接合するようにインモールド成型されてなることを特徴とするインモールド成型部品が提案されている。しかし、非接触型情報記憶手段が、波によって情報の非接触的による入出力を行うためのアンテナと該アンテナに接続された情報処理のための記憶素子からなるもので、その存在が第三者に分かってしまうものであり、またその記憶素子の記憶内容を第三者に読み取られる恐れが十分にある。
【0007】
また、特許文献3には、基材フィルム上に熱転写層を設けた熱転写シートにおいて、該熱転写シートの先端部に、該熱転写シートが純正品であることを同定するパターン状マークを設けていることを特徴とする熱転写シートが提示され、前記のパターン状マークが、紫外線、赤外線のいずれかの光線に対し、吸収または発光して、検知可能であることが示されている。このマークは可視光領域で判読できなく、不可視情報であり、海賊品の製造を困難にさせることが記載されている。しかし、紫外線、赤外線の吸収または発光を調べることは、不可能なものではなく、偽造して海賊品を製造することができてしまう問題がある。
【特許文献1】特開2000−94844号公報
【特許文献2】特開2003−211802号公報
【特許文献2】特開2000−141929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の課題を解決すべく、熱転写プリンターに対し適正な印字が行えるように、プリンターメーカーから品質保証の認定を受けた熱転写シート、熱転写受像シートの媒体、その媒体を巻き上げるボビン、もしくは、その媒体を収納するカセット、すなわち純正品である消耗品に限定して、プリンターで使用するように規制できることができ、印字品質の劣化やサーマルヘッドの劣化を防止できる熱転写シート、熱転写受像シートの媒体と、その媒体を巻き上げるボビン、もしくは、その媒体を収納するカセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、基材フィルムの一方の面に少なくとも熱転写性色材層を設け、該基材フィルムの他方の面に少なくとも耐熱滑性層が設けられた熱転写シートにおいて、該熱転写性色材層、耐熱滑性層の少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする。また請求項2の発明は、基材フィルムの一方の面に、中間層Aを介して、熱転写性色材層を設け、該基材フィルムの他方の面に、中間層Bを介して、耐熱滑性層が設けられた熱転写シートにおいて、該中間層Aと中間層Bの少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする。請求項3の発明は、基材フィルムの一方の面に少なくとも熱転写性色材層を設け、該基材フィルムの他方の面に少なくとも耐熱滑性層が設けられた熱転写シートにおいて、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有する検知マークが設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、基材の一方の面に少なくとも受容層を設け、該基材の他方の面に少なくとも裏面層が設けられた熱転写受像シートにおいて、該受容層、裏面層の少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする。請求項5の発明は、基材の一方の面に、中間層Cを介して、受容層を設け、該基材の他方の面に、中間層Dを介して、裏面層が設けられた熱転写受像シートにおいて、該中間層Cと中間層Dの少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする。請求項6の発明は、基材の一方の面に少なくとも受容層を設け、該基材の他方の面に少なくとも裏面層が設けられた熱転写受像シートにおいて、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有する検知マークが設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項7の発明は、熱転写シートもしくは熱転写受像シートを巻きつけて担持するボビン、もしくは該ボビンを保持するカセットにおいて、該ボビンもしくはカセットがプラスチック成形による加工品で、該加工品に特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする。さらに、請求項8の発明は、請求項7に記載するボビンもしくはカセットにおいて、それに使用される熱転写シートが請求項1〜3のいずれか一つに記載のものであることを特徴とする。また、請求項9の発明は、請求項7に記載するボビンもしくはカセットにおいて、それに使用される熱転写受像シートが請求項4〜6のいずれか一つに記載のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明における上記の構成をとる熱転写シート、もしくは、熱転写受像シートは、基材(フィルム)以外の塗工される層、あるいは検知マークに、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有しているので、プリンターメーカーから品質保証の認定を受けた純正品であることを特定でき、その純正品のみがプリンターで使用可能として、海賊品の使用を禁止できる。また、プリンターメーカーから品質保証の認定を受けた純正品であるので、プリンターとのマッチッグが良好であり、印字品質の劣化やサーマルヘッドの劣化を防止できる。
【0013】
本発明における上記の構成をとるボビンもしくはカセットは、プラスチック成形による加工品であり、該加工品に特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有しているので、プリンターメーカーから品質保証の認定を受けた純正品であることを特定でき、その純正品のみがプリンターで使用可能として、海賊品の使用を禁止できる。また、プリンターメーカーから品質保証の認定を受けた純正品であるので、プリンターとのマッチッグが良好であり、プリンターでの搬送トラブルもなく、印字品質の良好なものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、本発明の熱転写シートは、図1に示すように、基材フィルム2の一方の面に熱転写性色材層3を設け、また該基材フィルム2の他方の面に耐熱滑性層4を設けた構成の熱転写シート1である。この熱転写シート1の熱転写性色材層3、耐熱滑性層4の少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有している。また、本発明の熱転写シートは、図2に示すように、基材フィルム2の一方の面に、中間層A(5)を介して、熱転写性色材層3を設け、該基材フィルム2の他方の面に、中間層B(6)を介して、耐熱滑性層4が設けられた構成の熱転写シート1である。この熱転写シート1における中間層A(5)と中間層B(6)の少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有している。
【0015】
また、本発明の熱転写シートは、図3に示すように、基材フィルム2の一方の面に、熱転写性色材層として、イエロー色材層(Y)、マゼンタ色材層(M)、シアン色材層(C)が面順次に繰り返し、形成され、また各色材層の先頭部に、検知マークが形成されている。すなわち、イエロー色材層(Y)の先頭部には、検知マーク7が形成され、マゼンタ色材層(M)の先頭部には、検知マーク8が形成され、シアン色材層(C)の先頭部には、検知マーク9が形成されている。これらの検知マーク7、8、9には、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質が含有されている。
【0016】
(基材フィルム)
本発明の熱転写シートで用いられる基材フィルム2としては、従来の熱転写シートに使用されているものと同じ基材フィルムをそのまま用いることが出来ると共に、その他のものも使用することが出来、特に制限されない。好ましい基材フィルムの具体例としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、セロハン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、塩化ゴム、アイオノマー等のプラスチック、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、不織布等があり、又、これらを複合した基材フィルムであってもよい。この基材フィルムの厚さは、その強度及び熱伝導性が適切になるように材料に応じて適宜変更することが出来るが、その厚さは、好ましくは、例えば、2〜25μmである。
【0017】
(耐熱滑性層)
また、基材の他方の面に、サーマルヘッドの粘着を防止し、且つ、滑り性を良くするために、耐熱滑性層4を設けることも可能である。この耐熱滑性層は、バインダー樹脂に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を加え、滑り剤、界面活性剤、無機粒子、有機粒子、顔料等を添加したものを、好適に使用し、形成される。耐熱滑性層に使用されるバインダー樹脂は、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、硝化綿などのセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−スチレン共重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性またはフッ素変性ウレタン樹脂などが、あげられる。これらのなかで、数個の反応性基、例えば、水酸基を有しているものを使用し、架橋剤として、ポリイソシアネートなどを併用して、架橋樹脂を使用することが好ましい。
【0018】
特定の波長領域の電磁波の照射に対し、例えば、所定波長領域の紫外線の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質として、具体的には、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Ln)のいずれかからなるランタノイド系元素、それらの1種もしくは2種以上の元素、2種以上の元素の化合物、またそれらの元素もしくは化合物を含むものが挙げられる。但し上記の化合物は、酸化物、硫化物、有機錯体等が挙げられる。また、ユーロピウム(Eu3+)を含む酸化イットリウム(Y23)であっても良く、いわゆる希土類元素を使用した物質が利用できる。
【0019】
上記の希土類元素の一種または二種以上を組み合せたものが好ましく用いられる。本発明で使用する希土類の物質としては、同じ元素を含むものであっても、組み合わせられる他の元素の種類や、組み合わせの比率が異なれば、別の物質として扱うことができる。上に挙げた希土類の物質としては、例えば、プラゲノム社から入手できる。この特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質は、その大きさは、平均粒径で、0.1〜10μm、好ましくは0.1〜1μmのものである。それは、塗工液の中に、添加して、形成される層の透明性が良く、偽造防止性で有利であるからである。また、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、耐熱滑性層用塗工液の固形分に対し、質量比で、0.005〜10%程度であり、その添加量が少ないと、蛍光強度が低く、検出が困難になる。(専用センサーによる検出)また、一方で、その添加量が多すぎると、粘度が高くなったり、塗工液の安定性が低下したり、印刷適性が低下する。
【0020】
耐熱滑性層を形成する手段は、上記のごとき、バインダー樹脂に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を加え、滑り剤、界面活性剤、無機粒子、有機粒子、顔料等を添加した材料を、適当な溶剤中に溶解または分散させて、塗工液を調製し、この塗工液をグラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバーなどの慣用の塗工手段により、塗工し、乾燥するものである。耐熱滑性層の厚さは、固形分の塗工量で、0.5g/m2〜5.0g/m2、好ましくは1.0g/m2〜2.0g/m2である。
【0021】
(熱転写性色材層)
本発明の熱転写シートは、基材フィルムの一方の面に熱転写色材層3を設けたもので、その熱転写色材層は熱溶融性インキ層または昇華性染料インキ層(染料層)の2種類に大別される。まず、熱溶融性インキ層は、従来公知の着色剤とバインダー及び上記に説明した特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質よりなり、必要に応じて、鉱物油、植物油、ステアリン酸等の高級脂肪酸、可塑剤、熱可塑性樹脂、充填剤等の種々の添加剤を加えたものが使用される。バインダーとして用いられるワックス成分としては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等がある。更に、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、ポリエステルワックス、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種々のワックスが用いられる。このなかで、特に融点が50〜85℃であるものが好ましい。50℃以下であると、保存性に問題が生じ、又85℃以上であると感度不足になる。
【0022】
バインダーとして用いられる樹脂成分としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、エチルセルロース又はポリアセタール等が挙げられるが、特に従来より感熱接着剤として使用されている比較的低軟化点、例えば、50〜80℃の軟化点を有するものが好ましい。
【0023】
着色剤としては、公知の有機または無機の顔料、あるいは染料の中から適宜選択することができ、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱等により変色、退色しないものが好ましい。また、加熱により発色する物質や、被転写体の表面に塗布されている成分と接触することにより発色するような物質であってもよい。さらに、着色剤の色としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに限定されるものではなく、種々の色の着色剤を使用することができる。さらに、熱溶融性インキ層に、良好な熱伝導性および熱溶融転写性を与えるため、バインダーの充填剤として熱伝導性物質を配合してもよい。このような充填剤としては、例えばカーボンブラック等の炭素質物質、アルミニウム、銅、酸化錫、二硫化モリブデン等の金属および金属化合物等がある。
【0024】
熱溶融性インキ層の形成は、上記のような着色剤成分とバインダー成分と特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質と、さらに、これに必要に応じて水、有機溶剤等の溶媒成分を配合調整した熱溶融性インキ層形成用塗工液を、従来公知のホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の方法で行う。また、水系又は非水系のエマルジョン塗液を用いて形成する方法もある。上記の塗工液における、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、上記の耐熱滑性層で説明した場合と同様である。熱溶融性インキ層の厚みは、必要な印字濃度と熱感度との調和がとれるように、決定すべきであって、乾燥状態で0.1g/m2〜30g/m2の範囲、好ましくは、1g/m2〜20g/m2程度が、好ましい。
【0025】
次に、昇華性染料インキ層は、昇華性染料及び上記に説明した特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質をバインダー樹脂で担持させた層である。使用する染料は、従来公知の熱転写シートに使用される染料はいずれも本発明に有効に使用可能であり、特に限定されない。例えば、幾つかの好ましい染料としては、赤色染料として、MS Red G、Macrolex RedVioret R、Ceres Red 7B、Samaron Red HBSL、Resolin Red F3BS等が挙げられ、又、黄色の染料としては、ホロンブリリアントイエロー6GL、PTY−52、マクロレックスイエロー6G等が挙げられ、又、青色染料としては、カヤセットブルー714、ワクソリンブルーAP−FW、ホロンブリリアントブルーS−R、MSブルー100等が挙げられる。
【0026】
上記の如き昇華性染料を担持するためのバインダー樹脂としては、従来公知のものがいずれも使用でき、好ましいものを例示すれば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂、ポリエステル等が挙げられる。
【0027】
また、昇華性染料インキ層は、上記の染料、上記に説明した特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質と、バインダー樹脂の他に必要に応じて従来公知の種々の添加剤を含めることができる。そして、適当な溶剤中に、上記の染料、バインダー樹脂、上記に説明した特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質と、添加剤を加えて各成分を溶解または分散させてインキを調整し、これを上記の基材フィルム上に、熱溶融性インキ層で挙げた従来公知の塗工形成方法と同様の方法により、昇華性染料インキ層を形成する。昇華性染料インキ層の厚みは、乾燥状態で0.1g/m2〜5.0g/m2、好ましくは0.4〜2.0g/m2程度である。尚、上記の塗工液における、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、上記の耐熱滑性層で説明した場合と同様である。
【0028】
(中間層)
基材フィルムの一方の面に、中間層A(5)を介して、熱転写性色材層を設け、該基材フィルムの他方の面に、中間層B(6)を介して、耐熱滑性層を設けた構成の熱転写シートをとることができる。その中間層Aと中間層Bの少なくとも一方に、上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有させることができる。中間層Aは、基材フィルムと熱転写性色材層との接着性を向上させることが主目的で設けられる。この中間層Aを構成する好ましい樹脂としてはポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂が挙げられる。又、基材フィルムもしくは熱転写性色材層との接着性、又は環境保存性を向上させるために、中間層Aにはメラミン系化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン基を含む化合物、キレート化合物などを添加するのが好ましい。
【0029】
中間層Aを形成するには、上記の樹脂及び特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を主成分にして、塗工適性に応じて選択されたアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、アルコール等の溶剤又は水等に溶解、或いは分散させた組成物からなる塗工液を作成し、グラビアコーター、ダイコーター、ロールコーター、ワイヤー等の慣用の塗工手段を用いて基材フィルム表面に塗布した後、乾燥、固化させることで形成できる。その中間層Aの塗工量は0.05〜0.2g/m2(乾燥時)程度である。尚、上記の塗工液における、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、上記の耐熱滑性層で説明した場合と同様である。
【0030】
中間層Bは、基材フィルムと耐熱滑性層に対し充分な接着性を有すると共に、基材フィルムの熱変形を抑えるような耐熱性、寸法安定性を有していることが望ましい。この中間層Bは、熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂、各種硬化剤と反応基を有する樹脂との混合組成、光及び電離放射線にて架橋反応を生じる塗膜組成物の何れでもよく、これらの成分と特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有させて、適当な溶剤又は水等に溶解、或いは分散させた組成物からなる塗工液を作成し、グラビアコーター、ダイコーター、ロールコーター、ワイヤー等の慣用の塗工手段を用いて基材フィルム表面に塗布した後、乾燥、固化させることで形成できる。その塗工量については固形分基準で1.0g/m2以下、好ましくは0.1〜0.5g/m2の厚さが良い。尚、上記の塗工液における、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、上記の耐熱滑性層で説明した場合と同様である。
【0031】
(検知マーク)
本発明の熱転写シートでは、上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有する検知マークを設けることができる。この検知マークとしては、図3に示すように、熱転写性色材層であるイエロー色材層(Y)、マゼンタ色材層(M)、シアン色材層(C)の異なる色相の各色材層の先頭部に検知マークを設けたり、印画物の1画面を形成するための複数の色材層の先頭部のみに検知マークを設けたりすることができる。また従来から使用されている検知マークの機能を利用することが可能である。尚、図3では、基材フィルムの熱転写性色材層側に、検知マークを設けたが、これに限らず、基材フィルムの耐熱滑性層の上に検知マークを設けることもできる。但し、検知マークを構成する材料は、バインダー樹脂と、マーク検出するための材料、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等、光学的検知に利用できる色材や、磁気的検知可能な材料等、従来から知られた各種検知マークで利用できる材料が使用できるが、本発明では、その検知マークに、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質が添加されている。但し、その検知マークの設定された検知方式に悪影響がでないように、検知マーク用塗工液における、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、上記の耐熱滑性層で説明した場合と同様に、制限されるものである。
【0032】
検知マークのバインダーとなる樹脂としては、可視光線に対して実質的に透明である樹脂が好ましく用いられる。そのような樹脂としては、例えば、ポリエチレン系〔ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体〕、ポリプロピレン(PP)、ビニル系〔ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルホルマール(PVF)〕、ポリスチレン系〔ポリスチレン(PS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、ABS〕、アクリル系〔ポリメチルメタクリレート(PMMA)、MMA−スチレン共重合体〕、ポリカーボネート(PC)、セルロース系〔エチルセルロース(EC)、酢酸セルロース(CA)、プロピルセルロース(CP)、酢酸・酪酸セルロース(CAB)、硝酸セルロース(CN)、フッ素系〔ポリクロロフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)〕、ウレタン系(PU)、ナイロン(登録商標)系〔タイプ6、タイプ66、タイプ610、タイプ11〕、ポリエステル系〔ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0033】
上記の熱転写シートで、基材フィルム以外の該熱転写性色材層、耐熱滑性層、中間層A、B、検知マークのそれぞれに対し、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有することができる説明をしてきたが、熱転写シートの基材フィルムに形成できる転写性保護層にも、上記の蛍光を放射する希土類の物質を含有させることが可能である。上記に説明したように、蛍光を放射する希土類の物質は、微粒子として存在し、透明性が高いため、転写性保護層に添加しても保護層としての機能に悪影響を及ぼさないからである。基材フィルム以外の塗工して形成される層(マークも含む)の2層以上に、上記の蛍光を放射する希土類の物質を含有させることも可能である。但し、蛍光を放射する希土類の物質は、特殊なもので高価なこともあり、熱転写シートを構成する単一層に含有させることが好ましい。
【0034】
本発明の熱転写受像シートは、図4に示すように、基材11の一方の面に受容層12を設け、該基材11の他方の面に裏面層13が設けられた構成の熱転写受像シート10であり、この熱転写受像シートの受容層12、裏面層13の少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有している。また、本発明の熱転写受像シートは、図5に示すように、基材11の一方の面に、中間層C(14)を介して、受容層12を設け、該基材11の他方の面に、中間層D(15)を介して、裏面層13が設けられた構成の熱転写受像シート10である。この熱転写受像シート10における中間層C(14)と中間層D(15)の少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有している。
【0035】
また、本発明の熱転写シートは、図6に示すように、基材11の一方の面に、受容層12を設け、該基材11の他方の面に裏面層13が設けられた熱転写受像シート10において、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有する検知マーク16が、裏面層13上に形成されている。図6では、裏面層13上に検知マーク16を設けたものが示されているが、これに限らず、基材の受容層側に検知マークを設けたり、その形成位置は適宜変えることができる。
【0036】
(基材)
本発明の熱転写受像シートに用いる基材11としては、受容層を保持するという役割を有するとともに、画像形成時に加えられる熱に耐え、取り扱い上支障のない機械的特性を有することが望ましい。このような基材の材料は特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルムまたはシートが使用でき、特に限定されない。
【0037】
上記にあげたものやこれらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色フィルム、あるいは基材内部に空隙(ミクロボイド)を有するシート、他にコンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等を用いることができる。上記の基材内部に空隙(ミクロボイド)を有するものは、従来公知のものでよく、例えば、東洋紡績株式会社製のトヨパールSSP4255(厚み35μm)、モービルプラスチックヨーロッパ製のMW247(厚み35μm)等の基材内部にミクロボイド(微細な空孔)を有するポリプロピレンフィルム、ダイヤホイル株式会社製のW−900(50μm)、東レ株式会社製のE−60(50μm)等の内部にミクロボイドを有するポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0038】
また、基材として、上記の基材の複数の任意の組合わせで、接着剤層により貼り合わせた基材、すなわち貼り合わせ基材も使用できる。貼り合わせ基材は、セルロース繊維紙やプラスチックフィルム等の芯材に接着剤層を用いて、合成紙や基材内部に空隙(ミクロボイド)を有するフィルム等のクッション性のある貼合材と貼り合わせることができる。尚、貼り合わせ基材は、芯材の片側に、貼合材を貼り合わせても、芯材の両側に貼合材を貼り合わせたものでも、いずれでも良い。貼り合わせの方法は、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ECラミネーション、ヒートシール等公知の方法を使用することができる。接着剤層は、芯材側に塗工してもよいし、貼合材側に塗工してもよいが、芯材に紙を用いる場合は紙の地合いを効果的に消すために、紙側に塗工することが好ましい。また、上記の基材の表面及び又は裏面に、コロナ放電処理等の易接着処理した基材も使用できる。
【0039】
(接着剤層)
熱転写受像シートの場合、基材として接着剤層を使用して、複数の材料を貼り合わせたものが使用可能であるが、この際の接着剤層に、上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有させることも可能である。接着剤層は、接着剤を主体として構成される。接着剤としては、接着機能を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、ウレタン系樹脂、α−オレフィン−無水マレイン酸樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウリア系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、シアノアクリレート系樹脂等が使用できる。中でもアクリル系樹脂の反応型のものや、変成したもの等が好ましく使用することができる。
【0040】
また、接着剤を硬化剤を用いて硬化させると、接着力も向上し、耐熱性も上がるため好ましい。硬化剤としては、イソシアネート化合物が一般的であるが、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物等を使用することができる。接着剤層の形成は、一般的に行われている塗工手段を用いることができ、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の手段により、塗工し、乾燥する。
【0041】
(受容層)
基材上に設ける受容層12は、従来公知のものが使用できる。例えば、受容層は、色材を転写または染着し易い樹脂を主成分とするワニスに、必要に応じて離型剤等の各種添加剤を加えて構成する。染着し易い樹脂は、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、及びその共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニル系モノマ−との共重合体、アイオノマー、セルロ−ス誘導体等の単体、又は混合物を用いることができ、これらの中でもポリエステル系樹脂、及びビニル系樹脂が好ましい。但し、本発明の受容層は、上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有させることができる。受容層形成のための塗工液で、上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、上記の耐熱滑性層で説明した場合と同様である。
【0042】
受容層は、画像形成時に熱転写シ−トとの熱融着を防ぐために、離型剤を配合することもできる。離型剤は、シリコ−ンオイル、リン酸エステル系可塑剤、フッ素系化合物を用いることができるが、この中でもシリコ−ンオイルが好ましく用いられる。離型剤の添加量は、受容層形成樹脂に対して0.2〜30質量部が好ましい。離型剤は、上述のように受容層に添加してもよいが、受容層表面に上述の材料を用いて別途形成しても良い。受容層中には、必要に応じて蛍光増白剤その他の添加剤を添加してもよい。受容層の塗布は、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的な方法で行なわれる。そして、その塗布量は0.5〜10g/m2(固形分換算)が好ましい。尚、熱転写受像シートは、基材を適宜選択することによって、郵便葉書、各種カード類、透過型原稿作成用シート等の多くの用途に適用することができ、その基材が染着性のあるものであれば、受容層を設けないで、基材自体の上に熱転写画像を形成することも可能である。
【0043】
(裏面層)
基材の受容層を設けた面と反対の面に、熱転写受像シートの搬送性の向上や、カール防止などのために、裏面層13を設けることができる。このような機能をもつ裏面層として、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ハロゲン化ポリマー等の樹脂中に、添加剤として、アクリル系フィラー、ポリアミド系フィラー、フッ素系フィラー、ポリエチレンワックスなどの有機系フィラー、及び二酸化珪素や金属酸化物などの無機フィラーを加えたものが使用できる。但し、本発明の裏面層は、上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有させることができる。裏面層形成のための塗工液で、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、上記の耐熱滑性層で説明した場合と同様である。
【0044】
この裏面層として、上述の樹脂を硬化剤により硬化したものを使用することがさらに好ましい。硬化剤としては、一般的に公知のものが使用できるが、中でもイソシアネート化合物が好ましい。さらに、上記裏面スリップ層中には、添加剤として、有機フィラーまたは無機フィラーを添加しても良い。これらのフィラーの働きで、プリンター内での熱転写受像シートの搬送性が向上し、また、ブロッキングを防ぐなど熱転写受像シートの保存性も向上する。有機フィラーとして、アクリル系フィラー、ポリアミド系フィラー、フッ素系フィラー、ポリエチレンワックスなどがあげられる。この中では、特にポリアミド系フィラーが好ましい。また、無機フィラーとして、二酸化珪素や金属酸化物などがあげられる。
【0045】
(中間層)
上記の受容層と基材との間に、中間層C(14)を設けることができる。中間層Cとは、基材と受容層の間にある全ての層を指し、多層構成でもかまわない。中間層Cの機能としては、耐溶剤性能、バリア性能、接着性能、白色付与能、隠蔽性能、帯電防止機能等が挙げられるが、これらに限定されることなく、従来公知の中間層全てが使用できる。但し、本発明の中間層Cは、上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有させることができる。中間層形成のための塗工液で、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、上記の耐熱滑性層で説明した場合と同様である。
【0046】
中間層Cで、例をあげると、クッション性を付与する樹脂として、弾性変形や塑性変形の大きな樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系共重合体樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを用いて、熱転写受像シートの印字感度を向上させたり、画像のざらつきを防止することができる。その他、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂や、硬化剤等により硬化させた樹脂を用いて中間層を設けた場合には、熱転写受像シートを複数枚重ねて保存したときにシート同士が密着してしまうのを防止するなど、熱転写受像シートの保存性能を向上させることができる。
【0047】
また、本発明の熱転写受像シートでは、基材と裏面層との間に中間層Dを形成することができる。この場合の中間層Dも、上記の中間層Cで説明したような各種性能をもつものを適宜選択することができる。例えば、接着性を付与させる樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合体系樹脂等が挙げられる。但し、本発明の中間層Dは、上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有させることができる。中間層形成のための塗工液で、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質の添加量は、上記の耐熱滑性層で説明した場合と同様である。
【0048】
(検知マーク)
本発明の熱転写受像シートでは、上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有する検知マーク16を設けることができる。この検知マークについては、上記で説明した熱転写シートの検知マークと同様の材料構成で形成することができる。
【0049】
上記の熱転写受像シートで、受容層、裏面層、中間層C、D、検知マーク、そして貼り合わせ基材における接着剤層のそれぞれに対し、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有することができる説明をしてきたが、熱転写受像シートに形成できる、その他の塗工層にも、上記の蛍光を放射する希土類の物質を含有させることが可能である。また、上記の熱転写受像シートで塗工して形成される層(マークも含む)の2層以上に、上記の蛍光を放射する希土類の物質を含有させることも可能である。但し、蛍光を放射する希土類の物質は、特殊なもので高価なこともあり、熱転写受像シートを構成する単一層に含有させることが好ましい。
【0050】
(ボビンもしくはカセット)
図7に本発明の熱転写シートもしくは熱転写受像シートを巻きつけて担持するボビンの例を示す。図示したボビン20は、胴部21と鍔部22、23と駆動側軸部24と従動側軸部25から構成されている。駆動側軸部24の内側に、図示してはいないが、一定間隔で、溝を形成しておき、その溝とプリンター側の駆動軸の歯車を噛み合わせて、プリンター内でボビンを回転させることができる。図7では、鍔部22、23を設けているが、熱転写シートあるいは熱転写受像シートが巻かれる際に蛇行せず、定位置に巻かれるように、熱転写シートあるいは熱転写受像シートのエッジガイドの機能をもたせたものである。尚、熱転写シートもしくは熱転写受像シートを巻きつけて担持するボビンの形状は、これに限らず、鍔部を1箇所のみ設けたり、また鍔部を全く設けないものであってもよく、使用される熱転写プリンターに装着できる構造を有していればよい。
【0051】
図8に本発明のカセットの例として、熱転写シートを巻きつけて担持するボビンを保持するカセットを示す。図示したカセット30は中央にそれぞれ大きな窓部33を備え、カセット内部には、図示していないが、記録幅に応じた広幅の熱転写シート1を繰り出す供給ロールと、それを巻取る巻取ロールが収納される。このカセット30は、上ケース31と下ケース32とからなり,両者の突き合わせ面を接合することにより,組み立てられている。尚、熱転写シートを繰り出す供給ロールは、供給ボビンに熱転写シートが巻き上げられたもので、また印字され使用された熱転写シートは、巻上ボビンに巻き取られ、巻取りロールとなる。この供給ロールと巻取りロールは、カセット30内に間隔を置いて互いに平行な状態で配置される。
【0052】
カセットには,供給ロールと巻取ロールとの間に延びた熱転写シートの両面を露出させるよう、カセットの上ケース及び下ケースに、大きい窓が形成されており、このカセットをプリンターに装着すると、例えば、巻取ロールにプリンターの駆動装置が連結され,且つ前記窓を通して熱転写シートの片面にサーマルヘッドが、反対面に熱転写受像シートが位置し、駆動装置によって巻取ロールが回転して、供給ロールから熱転写シートを引き出し、サーマルヘッドによって画像記録が行なわれる。尚、熱転写シートを巻きつけて担持するボビン、つまり熱転写シートの供給ロール、巻取ロールを保持するカセットは、上記の構造に限らず、使用される熱転写プリンターに装着できる構造をとればよい。また、カセットの例として、熱転写シートを巻きつけて担持するボビンを保持するものは示したが、これに限らずに、熱転写シートと熱転写受像シートの両方を収納するカセットであってもよい。
【0053】
上記に説明した本発明のボビンもしくはカセットは、プラスチック(熱可塑性樹脂)を使用して射出成形や押し出し成形等の成形方法で成形される加工品であり、該加工品に上記で説明した特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質が含有されている。ボビンもしくはカセットを構成する熱可塑性樹脂は、射出成形や押し出し成形等の成形方法で成形できるものあれば、特に限定されない。具体的には、ポリスチレン、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート等の樹脂が挙げられる。また、樹脂は、単一種類だけではなく、異なる樹脂を混合した、いわゆるポリマーブレンドとしてもよい。単一種類の樹脂では不足する性能を、別の樹脂を混合して補充し、より以上の性能を引き出すことができる。また、上記の樹脂の中でも、ポリプロピレンが好ましく、使用することができる。ポリプロピレンは、引張強度、剛性等の機械的性質が強く、表面は傷つきにくい。また、汎用樹脂であり、低価格であり、成形加工しやすい。
【0054】
本発明のボビンもしくはカセットは、上記の熱可塑性樹脂に対し、上記で説明した特定の波長領域の電磁波の照射により、蛍光を放射する希土類の物質を、質量比で、0.005〜10%程度の割合で添加される。それは、熱可塑性樹脂が加熱されて溶融状態で、上記の蛍光を放射する希土類の物質を添加して、樹脂中に、その蛍光を放射する希土類の物質を分散させるものである。その蛍光を放射する希土類の物質の添加量が少ないと、蛍光強度が低く、検出が困難になる。(専用センサーによる検出)また、一方で、その添加量が多すぎると、粘度が高くなったり、プラスチック成形における加工適性が低下する。
【0055】
上記に説明した本発明の熱転写シート、熱転写受像シートと、それに使用するボビンもしくはカセットには、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有している。この熱転写シート、熱転写受像シートと、それに使用するボビンもしくはカセットは、プリンターメーカーから品質保証の認定を受けた純正品であるので、熱転写プリンターで使用可能となるが、純正品でない海賊品はプリンターで使用できなくなる。この使用される方法について、以下に説明する。
【0056】
本発明の熱転写シート、熱転写受像シートと、それに使用するボビンもしくはカセットに含まれる上記の特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を、検知装置で検知して、正常に検知した場合は、熱転写プリンターが作動され、印字開始されるが、検知できない場合(不良検知)は、熱転写プリンターが作動しないように、制御装置で、コントロールされるものである。その検知装置は、特定の波長領域の電磁波を照射する発光器と、その発光器からの照射により、対象物から発せられる蛍光を受光して、電気信号に変換する受光器からなる。また、上記の検知装置と制御装置をプリンターに組み込んで使用されるが、必要に応じて、正常検知と、不良検知の区別を表示させる表示装置を、さらに組み込んで使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の熱転写シートの一つの実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の熱転写シートの他の実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の熱転写シートの他の実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明の熱転写受像シートの一つの実施形態を示す概略図である。
【図5】本発明の熱転写受像シートの他の実施形態を示す概略図である。
【図6】本発明の熱転写受像シートの他の実施形態を示す概略図である。
【図7】本発明の熱転写シートもしくは熱転写受像シートを巻きつけて担持するボビンの例を示す概略図である。
【図8】本発明である、熱転写シートを巻きつけて担持するボビンを保持するカセットの例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0058】
1 熱転写シート
2 基材フィルム
3 熱転写性色材層
4 耐熱滑性層
5 中間層A
6 中間層B
7、8,9 検知マーク
10 熱転写受像シート
11 基材
12 受容層
13 裏面層
14 中間層C
15 中間層D
16 検知マーク
20 ボビン
21 胴部
22、23 鍔部
24 駆動側軸部
25 従動側軸部
30 カセット
31 上ケース
32 下ケース
33 窓部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に少なくとも熱転写性色材層を設け、該基材フィルムの他方の面に少なくとも耐熱滑性層が設けられた熱転写シートにおいて、該熱転写性色材層、耐熱滑性層の少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
基材フィルムの一方の面に、中間層Aを介して、熱転写性色材層を設け、該基材フィルムの他方の面に、中間層Bを介して、耐熱滑性層が設けられた熱転写シートにおいて、該中間層Aと中間層Bの少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする熱転写シート。
【請求項3】
基材フィルムの一方の面に少なくとも熱転写性色材層を設け、該基材フィルムの他方の面に少なくとも耐熱滑性層が設けられた熱転写シートにおいて、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有する検知マークが設けられていることを特徴とする熱転写シート。
【請求項4】
基材の一方の面に少なくとも受容層を設け、該基材の他方の面に少なくとも裏面層が設けられた熱転写受像シートにおいて、該受容層、裏面層の少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項5】
基材の一方の面に、中間層Cを介して、受容層を設け、該基材の他方の面に、中間層Dを介して、裏面層が設けられた熱転写受像シートにおいて、該中間層Cと中間層Dの少なくとも一方に、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項6】
基材の一方の面に少なくとも受容層を設け、該基材の他方の面に少なくとも裏面層が設けられた熱転写受像シートにおいて、特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有する検知マークが設けられていることを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項7】
熱転写シートもしくは熱転写受像シートを巻きつけて担持するボビン、もしくは該ボビンを保持するカセットにおいて、該ボビンもしくはカセットがプラスチック成形による加工品で、該加工品に特定の波長領域の電磁波の照射に対し、蛍光を放射する希土類の物質を含有していることを特徴とするボビン、もしくはカセット。
【請求項8】
前記のボビンもしくはカセットにおいて、それに使用される熱転写シートが請求項1〜3のいずれか一つに記載のものであることを特徴とする請求項7に記載するボビン、もしくはカセット。
【請求項9】
前記のボビンもしくはカセットにおいて、それに使用される熱転写受像シートが請求項4〜6のいずれか一つに記載のものであることを特徴とする請求項7に記載するボビン、もしくはカセット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−64360(P2010−64360A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232780(P2008−232780)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】