説明

熱転写プリンタ、受像紙、印画方法、及び熱転写プリントシステム

【課題】両面印画時に受像紙のセット方向を検知、確認することが可能な熱転写プリンタ、受像紙等を提供する。
【解決手段】熱転写プリンタ1で複数枚の受像紙41に両面印画を行う場合、USBメモリ、SDカード等のメディアから画像データを取得し、入力部13により印画条件を入力する。熱転写プリンタ1の制御部11は、センサ33が受像紙41のマーク65あるいは孔67を所定の位置で検知した場合、熱転写プリンタ1の制御部11は受像紙41が正しいセット方向であると判定し、印画部16に指示し、画像データを受像紙41の表面に印画する。受像紙41の表面への印画が全て終了した後、熱転写プリンタ1の制御部11は裏面印画のためにセットされた受像紙41のセット方向が正しいかどうか判定し、正しい場合、印画部16に指示し、画像データを受像紙41の裏面に印画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写プリンタ、特に、両面印画時に受像紙のセット方向を検知、確認する熱転写プリンタ、受像紙等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱転写方式を用いて被転写体に文字や画像を形成することが行われている。熱転写方式としては、感熱昇華型転写方式と感熱溶融型転写方式が広く用いられている。近年では、一般家庭においてデジタルカメラで撮影した画像データを家庭用の熱転写プリンタで写真として印画するということが普及している。
家庭で複数枚の画像を両面印刷し、フォトブック等を作成する場合、枚葉タイプの受像紙を家庭用の熱転写プリンタにセットし、画像データの印画を開始するが、受像紙のセット方向を誤ってしまい、表、裏面での印画方向が異なり上下逆さまに画像が印画される等の不具合が発生することがある。
【0003】
特許文献1に記載の方法では、誤って専用熱転写受像紙以外の用紙を投入して熱転写プリンタに損傷を与えないため、また熱転写受像紙の表裏の入れ間違い防止などのために、熱転写受像紙検出用のセンサを検知するための検知マークとして機能するロゴマーク、図柄等を設けることによって、誤動作を防止するという方法を開示している。
【0004】
特許文献2に記載の方法では、両面印刷を行う際、両面印刷可能な両面熱転写受像紙に対してのみ両面印刷を行うことができるようにするため、印画開始時に表、裏の両面に用紙判定マークを印画し、センサにより表、裏の両面に用紙判定マークが印画されていることを判定することにより、熱転写受像紙の両面に感熱層が形成されているかどうかを判別し、両面印画を行うという方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−307801号公報
【特許文献2】特開2009−018593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、特許文献1に開示された方法では、片面印刷可能な受像紙の表裏を判別することは可能であるが、両面印刷のための受像紙に適用することはできない。特許文献2に開示された方法では、受像紙の表裏を判別することはできるが、上下方向を判別することはできない。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、両面印画時に受像紙のセット方向を検知、確認することが可能な熱転写プリンタ、受像紙等を提供することである。具体的には、受像紙の一方の面を印画後に表面と裏面を入れ替えてプリンタにセットする際に、受像紙を正しくセットし、印画方向を間違えないことである。この方法により、1枚目の画像データを印画(表面)し、2枚目の画像データを印画(裏面)するために受像紙を誤った方向にセットした場合、表、裏の画像が上下逆さまに印画されてしまい、フォトブックの用途に使用できなくなってしまう等の不具合を防ぐことが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、サーマルヘッドがプラテンローラとの間で熱転写シートと受像紙を圧接するとともに、画像データに応じて発熱部を構成する発熱素子を発熱させ、熱転写シートの色材層の色材を受像紙に転写することにより、両面に受容層を有する受像紙に前記画像データを印画する熱転写プリンタであって、前記画像データを取得する画像取得手段と、前記受像紙上の検知マークを検知し、前記受像紙のセット方向を確認するセット方向確認手段と、前記セット方向確認手段によって前記受像紙のセット方向が正しいと判断されると、前記受像紙に前記画像データを印画する印画手段と、を具備することを特徴とする熱転写プリンタである。
【0009】
前記検知マークは、前記受像紙の片面の端部に形成されており、前記セット方向確認手段は、前記検知マークを検知する二つのセンサを備える。あるいは、前記検知マークは、前記受像紙の両面の端部に形成されており、前記セット方向確認手段は、前記検知マークを検知する一つのセンサを備えるようにしてもよい。
また、前記検知マークは、前記受像紙に形成された孔であり、前記プラテンローラの円筒面上に突起部が設けられ、前記セット方向確認手段は、前記突起部に受像紙41の孔を嵌め合わせることにより孔を検知し、前記受像紙のセット方向を確認するようにしてもよい。
受像紙にマーク、孔等の検知マークを形成することにより、熱転写プリンタにおける両面印画時に、受像紙のセット方向を検知、確認することが可能となる。
また、前記印画手段は、とじ代部分を前記受像紙の短辺と長辺のいずれにするか選択可能であることが望ましい。
【0010】
第2の発明は、両面に受容層が設けられ、第1の発明の熱転写プリンタが受像紙のセット方向を確認するための検知マークを具備することを特徴とする受像紙である。
【0011】
第3の発明は、サーマルヘッドがプラテンローラとの間で熱転写シートと受像紙を圧接するとともに、入力された画像データに応じて発熱部を構成する発熱素子を発熱させ、熱転写シートの色材層の色材を受像紙に転写することにより、両面に受容層を有する受像紙に前記画像データを印画する熱転写プリンタにおいて、画像データを受像紙の両面に印画する印画方法であって、前記画像データを取得する画像取得工程と、前記受像紙上の検知マークを検知し、前記受像紙のセット方向を確認するセット方向確認工程と、前記セット方向確認工程によって前記受像紙のセット方向が正しいと判断されると、前記受像紙に前記画像データを印画する印画工程と、を具備することを特徴とする印画方法である。
【0012】
第4の発明は、サーマルヘッドがプラテンロールとの間で熱転写シートと受像紙を圧接するとともに、画像データに応じて発熱部を構成する発熱素子を発熱させ、熱転写シートの色材層の色材を受像紙に転写することにより、両面に受容層を有する受像紙に前記画像データを印画する熱転写プリンタと、前記受像紙とで構成される熱転写プリントシステムであって、前記熱転写プリンタは、前記画像データを取得する画像取得手段と、前記受像紙上の検知マークを検知し、前記受像紙のセット方向を確認するセット方向確認手段と、前記セット方向確認手段によって前記受像紙のセット方向が正しいと判断されると、前記受像紙に前記画像データを印画する印画手段と、を具備することを特徴とする熱転写プリントシステムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、両面印画時に受像紙のセット方向を検知、確認することが可能な熱転写プリンタ、受像紙等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る熱転写プリンタ1のハードウエア構成の概要を示す図
【図2】熱転写プリンタ1の印画部16の構成の一例を示す図
【図3】受像紙41の断面構成の一例を示す図
【図4】受像紙41に形成されるマーク65の一例を示す図
【図5】受像紙41に形成される孔67の一例を示す図
【図6】本発明に係る熱転写プリンタ1の両面印画処理の流れを示すフローチャート
【図7】表面のみにマーク65を形成した受像紙41のセット方向の判定を説明するための模式図
【図8】両面にマーク65を形成した受像紙41のセット方向の判定を説明するための模式図
【図9】受像紙41のとじ代部分63の位置によるセット方向の判定を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明に係る熱転写プリンタの実施形態を詳細に説明する。
最初に、図1を参照しながら、本発明に係る熱転写プリンタ1の概要について説明する。
熱転写プリンタ1は、枚葉タイプの受像紙を印刷するための家庭用プリンタで、感熱昇華型転写方式、感熱溶融型転写方式のどちらでもよい。熱転写プリンタ1は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14、メディア入出力部15、印画部16等がバス17を介して接続される。
【0016】
制御部11は、プログラムの実行を行うCPU(Central Processing Unit)と、プログラム命令あるいはデータ等を格納するためのRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成される。制御部11は、記憶部12に格納されるプログラムに従って、バス17を介して接続された各装置を制御する。
【0017】
記憶部12は、熱転写プリンタ1の各装置を制御するプログラムや、画像データ、各種制御データが格納される。これらのプログラムのコードは、制御部11のCPUにより記憶部12から必要に応じてRAMに読み出され、各種機能として実行し、印画部16に画像データを送り印画指示等を行う。
【0018】
入力部13は、数字キー、矢印キー、ファンクションキー、タッチパネル等のユーザインタフェース装置で、熱転写プリンタ1で印画する画像の選択、印画条件の入力等を行う。
表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイ等で、熱転写プリンタ1の状態や、ユーザにより入力部13を介して入力された情報等を表示する。
【0019】
メディア入出力部15は、印画する画像を取得する画像データ取得手段で、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード、ミニSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)、xDピクチャーカード、コンパクトディスク等のメディア等から画像データを読み込むことにより、画像データを取得する。
なお、熱転写プリンタ1は、図示しない通信部により、インターネット等のネットワークに接続して画像を取得したり、あるいは、赤外線通信、Bluetooth、USB接続等によりコンピュータから画像を取得したりしてもよい。
【0020】
印画部16は、図示していないが、基板上に一列に形成される複数の発熱抵抗体からなるサーマルヘッドとサーマルヘッド駆動部等から構成される。印画部16は、制御部11の指示で印画する画像データを送られると、画素値に応じたエネルギーをサーマルヘッドに印加し、これにより印加部分の熱転写シートのインクが溶けて記録紙に付着し、受像紙上に出力画像を印画する。
なお、熱転写シートには、イエローY、マゼンタM、シアンC、さらに転写された染料を保護する機能を付与する熱転写性保護層があり、これらのインクを重ねて転写することでカラー印画を行う。
【0021】
次に、図2を参照しながら、熱転写プリンタ1の印画部16の構成の一例について説明する。
【0022】
図2に示すように、熱転写プリンタ1の印画部16は、サーマルヘッド21、熱転写シート23、熱転写シート供給ロール25、熱転写シート巻取ロール27、ニップローラ29、プラテンローラ31、センサ33、給紙口35、排出口37等を有する。その他、熱転写プリンタ1は、受像紙41の搬送機構、印画制御を行う制御部等を備える。
【0023】
受像紙41は、枚葉タイプの受像紙で、印画を行うため、給紙口35から図示しない搬送ローラ等により搬送される。熱転写プリンタ1が受像紙41のセット方向を検知するため、受像紙41上にはセット方向検知のためのマーク、あるいは、孔を形成する。受像紙41の詳細については後述する。
熱転写シート23は、基材シート上にイエローY、マゼンタM、シアンC、保護層の色材層が設けたものである。
熱転写シート23の平面構成は、イエローY、マゼンタM、シアンCの色材層を有する領域が面順次に設けられる。色材の転写順は、イエローY、マゼンタM、シアンC、保護層となる。また、ブラックKの色材層を有する領域を平面構成としてさらに加えてもよい。
【0024】
サーマルヘッド21は、図示しない発熱部、画像情報入力部、昇降部、制御部等を有する。
印画を行う際、サーマルヘッド21は、プラテンロール31との間で熱転写シート23と受像紙41を圧接するとともに、画像情報入力部により入力された画像データに応じて発熱部を構成する発熱素子を発熱させ、熱転写シート23の色材層の色材を受像紙41に転写する。
【0025】
熱転写供給ロール25は、熱転写シート23を巻き付けたもので、熱転写供給ロール25に巻きつけられた熱転写シート23は印画時に搬送され、サーマルヘッド21の発熱部を経由して、熱転写シート巻取ロール27に巻き取られる。
【0026】
プラテンローラ31は、円筒状であり、図示しないモータ等の駆動機構を備え、受像紙41を搬送する。プラテンローラ31の円筒面では、受像紙41が搬送されるとともに、サーマルヘッド21による印画が行われる。
ニップローラ29は、受像紙41の搬送を補助するローラである。一組のニップローラは、サーマルヘッド21を挟む位置にプラテンローラ31と近接して設けられる。
印画を行う際は、プラテンローラ31とニップローラ29で受像紙41を挟持しながら確実に搬送を行う。また、ニップローラ29は平滑な表面を有し、受像紙41の表面に凹凸を生じさせることはない。
【0027】
センサ33は、受像紙41のセット方向を確認するため、受像紙41上に形成される後述するマークを検知する。受像紙41上に形成されるマークとセンサ33の組み合わせは種々考えられ、例えば、センサ33は赤外線センサ、CCDイメージセンサ、可視光センサ等である。
センサ33は、サーマルヘッド21に対して印画方向の上流側に設けられているが、センサ33の位置はこれに限らず、例えば、サーマルヘッド21に対して下流側に設けるようにしてもよい。
また、センサ33は受像紙41の表裏の両面側に設けられているが、例えば、受像紙41の両面にマークを形成する場合、表面側のみ、あるいは裏面側のみに設けるようにしてもよい。
【0028】
熱転写プリンタ1が受像紙41のセット方向を検知するため、受像紙41上に孔を形成した場合、センサ33はマークを形成した場合と同様の位置に、表面側のみ、あるいは裏面側のみに設けるようにしてもよい。この場合、センサ33は孔を検知マークとして検知し、受像紙41のセット方向を確認する。
もしくは、センサ33はプラテンローラ31上に設けてもよい。この場合、センサ33はプラテンローラ31の円筒面上の突起部として設け、突起部に受像紙41の孔を嵌め合わせることにより孔を検知し、受像紙41のセット方向を確認する。
【0029】
次に、図3、4、5を参照しながら、熱転写プリンタ1で使用する受像紙41の詳細について説明する。
図3は、受像紙41の断面構成の一例を示す図、図4は、受像紙41に形成されるマーク65の一例を示す図、図5は、受像紙41に形成される孔67の一例を示す図である。
【0030】
受像紙41は、熱転写プリンタ1により画像データを印画し、フォトブックを作成するための受像紙である。
図3に示すように、受像紙41は紙材59の両面に、接着層57、多孔フィルム55、プライマ53、受容層51が順次設けられる構成となっている。
これらは、強度、耐熱性、色材の染着性などを考慮して、様々な構成あるいは材料を用いることができる。
また、受像紙41の受容層51に熱転写シート23の色材が転写されるが、この受容層51を両面に設けていることで、受像紙41の両面印画が可能である。
【0031】
図4、図5に示すように、受像紙41は、画像を印画する領域である印刷部分61と、フォトブック等の製本の際にとじ代となるとじ代部分63を両面の同じ領域に有する。受像紙41のセット方向を検知するため、受像紙41のとじ代部分63(端部)に検知マークとしてマーク65、あるいは、孔67を形成する。マーク65、孔67は、熱転写プリンタ1のセンサ33により検知可能である。
【0032】
マーク65は、受像紙41のセット方向を識別できる形状ならばよく、例えば、方位記号のようなマーク、■や●などの形状記号をとじ代部分63に形成する。マーク65を表面、裏面に形成する場合には、表面と裏面のマーク65のどちらかが上(もしくは下)でセンサ33に検知される時に同じ位置になることが望ましい。すなわち、検知範囲の小さい一つのセンサ33によって表面と裏面の両方が検知できる位置に、それぞれのマーク65を形成することが望ましい。
孔67は、とじ代部分63の任意の場所に任意の形状で形成する。
【0033】
次に、図6を参照しながら、熱転写プリンタ1において両面印画を行う処理について説明する。
図6は、本発明に係る熱転写プリンタ1の両面印画処理の流れを示すフローチャートである。
【0034】
熱転写プリンタ1で複数枚の受像紙41に両面印画を行う場合、ユーザは、デジタルカメラ等で撮影した画像データを保存したUSBメモリ、SDカード等のメディアを熱転写プリンタ1に挿入すると、熱転写プリンタ1の制御部11はメディア入出力部15により画像データを取得する。また、熱転写プリンタ1の制御部11は、ユーザが数字キー、矢印キー、ファンクションキー等の入力部13により入力される印画条件を取得する(ステップ101)。取得した画像データ、印画条件は、記憶部12に格納する。印画条件は、各画像データの印画方向、表裏、ページ数等である。
熱転写プリンタ1は、赤外線通信、Bluetooth、USB接続、ネットワーク接続等を介してコンピュータから画像データを取得してもよいし、あるいは、インターネット等のネットワークを介してサーバから取得してもよい。
【0035】
熱転写プリンタ1の制御部11は、センサ33により受像紙41上のマーク65、あるいは、孔67を検知し、受像紙41のセット方向が正しいかどうかを確認する(ステップ102)。
センサ33が受像紙41のマーク65あるいは孔67を所定の位置で検知した場合、熱転写プリンタ1の制御部11は受像紙41が正しいセット方向であると判定するが(ステップ103)、所定の位置で検知できない場合、受像紙41のセット方向は正しくないと判定し、受像紙41のセット方向が正しくないことを表示部14に警告表示し(ステップ104)、再び受像紙41がセットされるのを待つ。
【0036】
受像紙41が正しいセット方向にセットされていることを確認した後、熱転写プリンタ1の制御部11は、印画部16に指示し、ユーザにより指定された画像データを受像紙41の表面に印画する(ステップ105)。
熱転写プリンタ1の制御部11は、受像紙41の表面への画像データの印画が全て終了したか判定し(ステップ106)、全て終了するまでステップ102からステップ106の処理を繰り返す。
【0037】
受像紙41の表面の印画終了後、熱転写プリンタ1の制御部11は、表面の印画が終了したので、受像紙41の裏面を印画するため、受像紙41をセットするように表示部14に表示する。
ユーザが、熱転写プリンタ1に受像紙41をセットした後、熱転写プリンタ1の制御部11は、センサ33により受像紙41上のマーク65、あるいは、孔67を検知し、受像紙41のセット方向が正しいかどうかを確認する(ステップ107)。
センサ33が受像紙41のマーク65あるいは孔67を所定の位置で検知した場合、熱転写プリンタ1の制御部11は受像紙41が正しいセット方向であると判定するが(ステップ108)、所定の位置で検知できない場合、受像紙41のセット方向は正しくないと判定し、受像紙41のセット方向が正しくないことを表示部14に警告表示し(ステップ109)、再び受像紙41がセットされるのを待つ。
【0038】
受像紙41が正しいセット方向にセットされていることを確認した後、熱転写プリンタ1の制御部11は、印画部16に指示し、ユーザにより指定された画像データを受像紙41の裏面に印画する(ステップ110)。
熱転写プリンタ1の制御部11は、受像紙41の裏面への画像データの印画が全て終了したか判定し(ステップ111)、全て終了するまでステップ107からステップ111の処理を繰り返す。
【0039】
次に、図7、8、9を参照しながら、受像紙41のセット方向の判定の一例について説明する。
図7は、表面のみにマーク65を形成した受像紙41のセット方向の判定を説明するための模式図、図8は、両面にマーク65を形成した受像紙41のセット方向の判定を説明するための模式図、図9は、受像紙41のとじ代部分63の位置によるセット方向の判定を説明するための模式図である。
【0040】
図7は、受像紙41の搬送の様子を図2の上方から見た図である。センサ33aは、受像紙41の搬送路の上に配置され、センサ33bは受像紙41の搬送路の下に配置されている。受像紙41には、表面のみにマーク65が形成されている。受像紙41は左から右に搬送され、センサ33a、センサ33bがセット方向を確認する。
受像紙41のセット方向とは、図7に示す4パターンがある。すなわち、(a)表面が上部かつマーク65が前方、(b)表面が上部かつマーク65が後方、(c)裏面が上部かつマーク65が前方、(d)裏面が上部かつマーク65が後方、の4パターンがある。
例えば、とじ代部分63が前方に位置する印画方向が正しいとする。この場合、表面が正しい方向にセットされているかどうかを判断する図6のステップ102では、搬送路の上に設置されているセンサ33aがマーク65を検知すると、セット方向が正しいと判断する。すなわち、ステップ102では、受像紙41が図7に示す(a)のようにセットされていれば、正しいと判断する。
また、裏面が正しい方向セットされているかどうか判断する図6のステップ107では、搬送路の下に設置されているセンサ33bがマーク65を検知すると、セット方向が正しいと判断する。すなわち、ステップ107では、受像紙41が図7に示す(c)のようにセットされていれば、正しいと判断する。
【0041】
図8は、受像紙41の搬送の様子を図2の上方から見た図である。センサ33は、受像紙41の搬送路の上もしくは下どちら一方に配置されている。受像紙41には、表面、裏面の両面にマーク65が形成されている。尚、センサ33が表面と裏面の区別ができるように、マーク65の形状は表面と裏面で異なるものとしても良い。例えば、図8に示すように、表面は●、裏面は■としても良い。受像紙41は左から右に搬送され、センサ33がセット方向を確認する。
【0042】
表面、裏面の両面にマーク65が形成される場合、受像紙41のセット方向とは、図8に示す4パターンがある。すなわち、(e)マーク65が前方かつ表面、裏面のマーク65の位置は同じ、(f)マーク65が後方かつ表面、裏面のマーク65の位置は同じ、(g)マーク65が前方かつ表面、裏面のマーク65の位置は異なる、(h)マーク65が後方かつ表面、裏面のマーク65の位置は異なる、の4パターンがある。表面、裏面のマーク65の位置が同じとは、センサ33に検知される時に同じ位置になることを意味する。また、表面、裏面のマーク65の位置が異なるとは、センサ33に検知される時に異なる位置になることを意味する。
ここで、マーク65が表面、裏面それぞれ同じ位置に形成されているパターンは、(e)、(f)である。(e)、(f)の場合、センサ33が検知する範囲が小さくて済み、センサ33の検知範囲を大きくすることも、複数配置する必要もなくなるため望ましい。
【0043】
例えば、とじ代部分63が前方に位置する印刷方法が正しいとする。この場合、表面が正しい方向にセットされているかどうかを判断する図6のステップ102では、搬送路の上下いずれかに設置されているセンサ33が表面のマーク65(●)を受像紙41の前方で検知すると、セット方向が正しいと判断する。すなわち、ステップ102では、受像紙41が図8に示す(e)もしくは(g)の場合は、正しいと判断する。一方、受像紙41が図8に示す(f)もしくは(h)の場合は、誤りと判断する。
また、裏面が正しい方向にセットされているかどうかを判断する図6のステップ107では、搬送路の上下いずれかに設置されているセンサ33がマーク65(■)を受像紙41の前方で検知すると、セット方向が正しいと判断する。すなわち、ステップ107では、受像紙41が図8に示す(e)もしくは(g)の場合は、正しいと判断する。一方、受像紙41が図8に示す(f)もしくは(h)の場合は、誤りと判断する。
【0044】
図9は、フォトブック等の製本の際にとじ代となるとじ代部分63を短辺に形成する場合、及び、長辺に形成する場合の受像紙41を示している。図9に示す(i)のように、印画前の受像紙41においてマーク65が形成されている。
例えば、マーク65が前方となるように受像紙41を熱転写プリンタ1にセットする印刷方法が正しいとする。
とじ代部分63を受像紙41の短辺に形成する場合、熱転写プリンタ1は、表面が正しい方向にセットされていることを確認すると、図9に示す(j)のように印画方向の先端部分を未印画領域として残してとじ代部分63とし、印刷部分61に画像データを印画する。次に、熱転写プリンタ1は、裏面が正しい方向にセットされていることを確認すると、図9に示す(j)のように印画方向の先端部分を未印画領域として残してとじ代部分63とし、印刷部分61に画像データを印画する。尚、セット方向の判定は、図7にて説明した通りである。
【0045】
とじ代部分63を受像紙41の長辺に形成する場合、熱転写プリンタ1は、表面が正しい方向にセットされていることを確認すると、図9に示す(k)のようにマーク65を含む長辺部分を未印画領域として残してとじ代部分63とし、印刷部分61に画像データを印画する。次に、熱転写プリンタ1は、裏面が正しい方向にセットされていることを確認すると、図9に示す(k)のようにマーク65を含む長辺部分を未印画領域として残してとじ代部分63とし、印刷部分61に画像データを印画する。尚、セット方向の判定は、図8にて説明した通りである。
【0046】
このように、熱転写プリンタ1は、受像紙41を交換することなく、とじ代部分63を短辺と長辺のいずれにするか随時選択して両面印画を行うことができる。
尚、マーク65を片面に形成する場合、(i)のように四隅のいずれかにマーク65を形成することで、熱転写プリンタ1は、とじ代部分63を短辺と長辺のどちらに形成しても、マーク65が表面と裏面の両方のとじ代部分63に含まれるように印画できる。
一方、マーク65を表面と裏面の両面に形成する場合を考える。センサ33は受像紙41の搬送路の上か下のいずれか一方に設置するものとする。この場合、とじ代部分63を短辺と長辺のどちらに形成しても、それぞれのマーク65が表面と裏面のとじ代部分63に含まれるように印画するためには、図8の(g)または(h)の位置にマーク65を形成する。すなわち、表面、裏面のマーク65の位置が、センサ33に検知される時に異なる位置になるように形成する。センサ33は、検知範囲が短辺方向の長さ程度のものとするか、短辺方向の両端に2つ配置する。
【0047】
以上では、熱転写プリンタ1において、複数枚の受像紙41の表面を連続して印画し、ユーザが複数枚の受像紙41を裏返し、裏面を連続して印画する方法について説明した。しかし、両面印画の方法はこれに限られない。例えば、熱転写プリンタ1が受像紙41を反転する機構を有する場合、あるいは、受像紙41の両面を印画する機構を有する場合、受像紙41を1枚ずつ表面、裏面印画してもよい。この場合、各受像紙41についてステップ106、ステップ111の判定処理を除いた処理を行い、両面印画を行う。これによって、ユーザは裏面印画のために受像紙41を手動でセットする必要はない。
【0048】
以上説明したように、本発明の形態に係る熱転写プリンタでは、両面印画時に受像紙のセット方向を検知、確認することが可能な熱転写プリンタ、受像紙等を提供することが可能である。
【0049】
また、受像紙にマーク、孔等の検知マークを形成することにより、熱転写プリンタは印画時に検知マークを検知した後、所定量だけ受像紙を引き戻し、あるいは送り出すことにより、印画の位置合わせをより正確に行うこともできる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る熱転写プリンタ等の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0051】
1………熱転写プリンタ
11………制御部
12………記憶部
13………入力部
14………表示部
15………メディア入出力部
16………印画部
21………サーマルヘッド
23………熱転写シート
25………熱転写シート供給ロール
27………熱転写シート巻取ロール
29………ニップローラ
31………プラテンローラ
33、33a、33b………センサ
35………給紙口
37………排出口
41………受像紙
51………受容層
53………プライマ
55………多孔PPフィルム
57………接着層
59………紙材
61………印刷部分
63………とじ代部分
65………マーク
67………孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドがプラテンローラとの間で熱転写シートと受像紙を圧接するとともに、画像データに応じて発熱部を構成する発熱素子を発熱させ、熱転写シートの色材層の色材を受像紙に転写することにより、両面に受容層を有する受像紙に前記画像データを印画する熱転写プリンタであって、
前記画像データを取得する画像取得手段と、
前記受像紙上の検知マークを検知し、前記受像紙のセット方向を確認するセット方向確認手段と、
前記セット方向確認手段によって前記受像紙のセット方向が正しいと判断されると、前記受像紙に前記画像データを印画する印画手段と、
を具備することを特徴とする熱転写プリンタ。
【請求項2】
前記検知マークは、前記受像紙の片面の端部に形成されており、
前記セット方向確認手段は、前記検知マークを検知する二つのセンサを備えることを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンタ。
【請求項3】
前記検知マークは、前記受像紙の両面の端部に形成されており、
前記セット方向確認手段は、前記検知マークを検知する一つのセンサを備えることを特徴とする請求項1記載の熱転写プリンタ。
【請求項4】
前記検知マークは、前記受像紙に形成された孔であり、
前記プラテンローラの円筒面上に突起部が設けられ、
前記セット方向確認手段は、前記突起部に受像紙41の孔を嵌め合わせることにより孔を検知し、前記受像紙のセット方向を確認することを特徴とする請求項1に記載の熱転写プリンタ。
【請求項5】
前記印画手段は、とじ代部分を前記受像紙の短辺と長辺のいずれにするか選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写プリンタ。
【請求項6】
両面に受容層が設けられ、
請求項1記載の熱転写プリンタが受像紙のセット方向を確認するための検知マークを具備することを特徴とする受像紙。
【請求項7】
サーマルヘッドがプラテンローラとの間で熱転写シートと受像紙を圧接するとともに、入力された画像データに応じて発熱部を構成する発熱素子を発熱させ、熱転写シートの色材層の色材を受像紙に転写することにより、両面に受容層を有する受像紙に前記画像データを印画する熱転写プリンタにおいて、画像データを受像紙の両面に印画する印画方法であって、
前記画像データを取得する画像取得工程と、
前記受像紙上の検知マークを検知し、前記受像紙のセット方向を確認するセット方向確認工程と、
前記セット方向確認工程によって前記受像紙のセット方向が正しいと判断されると、前記受像紙に前記画像データを印画する印画工程と、
を具備することを特徴とする印画方法。
【請求項8】
サーマルヘッドがプラテンロールとの間で熱転写シートと受像紙を圧接するとともに、画像データに応じて発熱部を構成する発熱素子を発熱させ、熱転写シートの色材層の色材を受像紙に転写することにより、両面に受容層を有する受像紙に前記画像データを印画する熱転写プリンタと、前記受像紙とで構成される熱転写プリントシステムであって、
前記熱転写プリンタは、
前記画像データを取得する画像取得手段と、
前記受像紙上の検知マークを検知し、前記受像紙のセット方向を確認するセット方向確認手段と、
前記セット方向確認手段によって前記受像紙のセット方向が正しいと判断されると、前記受像紙に前記画像データを印画する印画手段と、
を具備することを特徴とする熱転写プリントシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−228127(P2010−228127A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75429(P2009−75429)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】