説明

熱転写受像シート用樹脂

【課題】染料の染着性と熱転写受像シートの離型性のいずれにも優れた熱転写受像シートに用いる樹脂、該樹脂を用いた樹脂分散液、及び熱転写受像シートを提供する。
【解決手段】(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる両反応性モノマー、を付加重合及び縮重合させることにより得られる、熱転写受像シート用樹脂であって、前記(a)ポリエステルの原料モノマーが、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含むアルコール成分を含有する熱転写受像シート用樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写受像シート用樹脂、及び該樹脂を用いた熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
昇華性染料を記録剤とし、これを基材に担持させた熱転写シートを用いて、昇華性染料で染着可能な熱転写受像シート上にカラー画像を形成する方法が提案されている。これは加熱手段としてプリンターのサーマルヘッドなどを使用し、加熱によって染料を受像シートに転写させてカラー画像を得るものである。このようにして形成された画像は、染料を用いることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、中間色の再現性や階調性に優れ、高品質の画像が期待できる。
熱転受像写シートには、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、染料受容層にポリエステルが用いられ、その原料モノマーとしてビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いることが知られている。例えば、染料受容層が、脂環族ジカルボン酸化合物を40モル%以上含むジカルボン酸成分と、ビスフェノールA骨格を有するジオール化合物を15モル%以上含むジオール成分とから生成したポリエステル樹脂を染料受容性樹脂として含有する熱転写受像シート(特許文献1)が開示されている。しかし、このような熱転写受像シートは染料の染着性に優れる反面、熱転写受像シートの離型性が劣る結果となる。一方、熱転写受像シートの離型性の観点から染料受容層にスチレン樹脂やアクリル系樹脂を用いる方法が提案されている(特許文献2)が、逆に、染料の染着性に劣る結果となり、十分な画像性能を得ることができない。
また、ポリエステルとポリスチレン等の熱可塑性樹脂との混合樹脂や、主鎖が不飽和結合を有するポリエステル、側鎖がラジカル重合性不飽和単量体の重合体である樹脂を染料受容層に用いる技術(特許文献3、4)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−19306号公報
【特許文献2】特開2002−283750号公報
【特許文献3】特開平6−24156号公報
【特許文献4】特開平10−60063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献3あるいは特許文献4に開示された樹脂では、染料の染着性と熱転写受像シートの離型性のいずれもが優れた熱転写受像シートは得られていなかった。
本発明は、染料の染着性と熱転写受像シートの離型性のいずれにも優れた熱転写受像シートに用いられる樹脂、該樹脂の製造方法、該樹脂を用いた樹脂分散液の製造方法、及び熱転写受像シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
[1](a)ポリエステルの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる化合物、を重合させることにより得られる、熱転写受像シート用樹脂であって、前記(a)ポリエステルの原料モノマーが、式(I)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1O及びR2Oは各々オキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表し、x及びyはそれぞれ正の数であり、かつxとyの和の平均値は2〜7である。但し、x個のR1Oは各々同一でも異なっていてもよく、またy個のR2Oは各々同一でも異なっていてもよい。)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含むアルコール成分を含有する熱転写受像シート用樹脂、
【0008】
[2](1)(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる化合物、を混合する工程、
(2)主として付加重合反応により、前記(c)の化合物由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分を得る工程、及び
(3)主として縮重合反応により、ポリエステルの原料モノマー及び前記(c)の化合物由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分とを反応させる工程、
を有し、前記(a)ポリエステルの原料モノマーが、上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含むアルコール成分を含有する、熱転写受像シート用樹脂の製造方法、
[3]水性媒体中に、上記[1]に記載の熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂を分散させる、熱転写受像シート用樹脂分散液の製造方法、及び
[4]基材、及び上記[1]に記載の熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、染料の染着性と熱転写受像シートの離型性のいずれにも優れた熱転写受像シートに用いる樹脂、該樹脂の製造方法、該樹脂を用いた樹脂分散液の製造方法、及び熱転写受像シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[熱転写受像シート用樹脂]
本発明の熱転写受像シート用樹脂は、(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる化合物、を付加重合及び縮重合させることにより得られる、熱転写受像シート用樹脂であって、前記(a)ポリエステルの原料モノマーが、上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含むアルコール成分を含有するものである。
【0011】
本発明の熱転写受像シート用樹脂は、ポリエステルと付加重合系樹脂とが、その少なくとも一部で化学結合した樹脂であって、該樹脂は、前述の通り、(a)前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むポリエステルの原料モノマーと、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマーとを、(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる化合物(以下、両反応性モノマーという)の存在下で付加重合および縮重合させて得られるものである。
【0012】
本発明の熱転写受像シート用樹脂により、染料の染着性と熱転写受像シートの離型性のいずれにも優れた熱転写受像シートが得られる理由は不明であるが、本発明の熱転写受像シート用樹脂は、例えば、ポリエステルの末端のヒドロキシ基が、付加重合系樹脂に取り込まれた両反応性モノマーのカルボキシル基と反応し、化学結合することにより、ポリエステル成分中に付加重合系樹脂成分が微細に、かつ均一に分散するためと考えられる。この点で、本発明は、ポリエステル中の不飽和結合が開裂して側鎖にラジカル重合系樹脂がグラフト化した従来のグラフト樹脂とは相違するものである。ここでは、本発明の熱転写受像シート用樹脂における前記両反応性モノマーは、付加重合系樹脂成分として考える。
【0013】
((a)ポリエステルの原料モノマー)
ポリエステルの原料モノマーとしては特に制限はなく、通常ポリエステルの原料モノマーとして知られる公知のアルコール成分と公知のカルボン酸成分をいずれも使用することができる。
前記ポリエステルの原料モノマーであるアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられる。このアルコール成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明においては、前記ポリエステルの原料成分であるアルコール成分として、熱転写受像シートの離型性(熱融着性ともいう)及び熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、式(I)
【化2】

【0015】
で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物が用いられる。式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、同様の観点から、原料アルコール成分中に80モル%以上含有され、好ましくは90モル%以上含有され、さらに好ましくは実質100モル%含有される。
【0016】
一般式(I)において、R1O及びR2Oは、それぞれオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。x及びyはそれぞれ上記オキシエチレン基又はオキシプロピレン基のモル数を表わし、いずれも正の数である。R1OとR2Oは同一でも異なっていてもよく、また、x個のR1Oは各々同一でも異なっていてもよく、またy個のR2Oは各々同一でも異なっていてもよい。カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyの和の平均値は2〜7であり、好ましくは2〜5である。
前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物としては、具体的には、前記付加モル数を有するポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0017】
本発明においては、熱転写受像シートの離型性の観点から、前記アルコール成分として、3価以上のアルコールを用いることが好ましく、具体的には、グリセリン、ペンタエリスリトールを用いることがより好ましい。
【0018】
また、原料成分としてのカルボン酸成分としては、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、及びオクテニルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、前記各種の酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。カルボン酸成分中には、熱転写受像シートの離型性及び熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、芳香族ジカルボン酸を含むことが好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸は、同様の観点から、ポリエステルの原料モノマーであるカルボン酸成分におけるジカルボン酸中、50モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましく、90モル%以上含有することがより好ましく、実質100モル%がよりさらに好ましい。前記カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明においては、熱転写受像シートの離型性の観点から、前記カルボン酸成分として、3価以上のカルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステルを用いることが好ましく、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸、それらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステルを用いることがより好ましく、さらに好ましくはトリメリット酸及びその無水物である。本発明においては、これらの3価以上のカルボン酸は、後述の付加重合及び縮重合の後で、添加することもでき、同様の観点から好ましい。
前記3価以上のカルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステルは、前記観点から、全カルボン酸成分中、10〜40モル%含有することが好ましく、10〜35モル%含有することがより好ましく、10〜25モル%がよりさらに好ましい。
【0020】
本発明においては、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、アルキル基及び/又はアルケニル基で置換されたコハク酸を用いることも好ましい方法である。上記コハク酸としては、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基で置換されたコハク酸を用いることがより好ましく、炭素数8〜22の、より好ましくは炭素数10〜20の、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、又は炭素数8〜22の、より好ましくは炭素数10〜20の、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルケニル基がより好ましい。
具体的には、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸において、アルキル基としては、例えば各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種アイコシル基などを挙げることができる。
また、アルケニル基としては、例えば各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、各種アイコセニル基などを挙げることができる。
【0021】
ポリエステルの原料モノマーの縮重合は、前記アルコール成分とカルボン酸成分とを、例えば不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒を用いて行う。上記縮重合の際の温度は、原料モノマーの反応性と熱分解性の観点から、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜240℃、さらにより好ましくは175〜240℃である。本発明の熱転写受像シートの離型性及び熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、ポリエステルはブロードな分子量分布を有するものであることが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。エステル化触媒としては、錫触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、2酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられるが、これらの中では、錫触媒及びチタン触媒が好ましく、錫触媒の中では、酸化ジブチル錫、ジオクチル酸錫及びその塩が好ましい。
【0022】
((b)付加重合系樹脂の原料モノマー)
(b)付加重合系樹脂の原料モノマーは、スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する。
付加重合系樹脂としては、付加重合反応の反応性の観点から、好ましくはラジカル重合反応により得られるビニル系樹脂等が挙げられる。付加重合系樹脂の原料モノマーは、スチレン又はスチレン誘導体の少なくとも一種を含有する。スチレン誘導体としては、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレ、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等が挙げられる。
【0023】
これらの中では、熱転写受像シートの離型性の観点から、スチレン誘導体が好ましく、モノマーの原料価格、熱転写受像シート用樹脂の保存安定性の観点からは、スチレンが好ましい。スチレンあるいはスチレン誘導体の含有量は、熱転写受像シートの離型性及び熱転写受像シート用樹脂の保存安定性の観点から、付加重合系樹脂の原料モノマー中、55重量%以上が好ましく、65重量%以上がより好ましく、75重量%以上がさらに好ましい。
【0024】
スチレン又はスチレン誘導体以外の付加重合系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
なお、付加重合系樹脂の原料モノマーの付加重合には、公知の重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて使用してもよい。上記付加重合の際の温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、ジブチルパーオキサイド等の開始剤を用いる場合には、反応系内の粘度を下げ付加重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜170℃である。
【0025】
((c)両反応性モノマー)
(c)両反応性モノマーとは、分子内に、カルボキシル基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物であり、アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる。アクリル酸、メタアクリル酸の誘導体としては、
クロトン酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2−メチル2−ペンテン酸、4−メチル2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸などが挙げられる。このような両反応性モノマーを用いることにより、染料の染着性と熱転写受像シートの離型性に優れた熱転写受像シート用樹脂が得られる。
本発明において(c)両反応性モノマーの使用量は、ポリエステル樹脂成分への付加重合系樹脂成分の分散性と、付加重合反応及び縮重合反応の反応制御の観点から、(a)ポリエステルの原料モノマーであるカルボン酸成分に対し、1〜40モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましい。
【0026】
(熱転写受像シート用樹脂の製造)
本発明の熱転写受像シート用樹脂は、上記(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)両反応性モノマー、の各モノマーを、付加重合および縮重合することにより得られる。すなわち、本発明においては、(a)ポリエステルの原料モノマーと(b)付加重合系樹脂の原料モノマーに加えて、さらに上記(a)ポリエステルの原料モノマー及び前記(b)付加重合系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る(c)両反応性モノマーを用いる。これにより、本発明の熱転写受像シート用樹脂は、ポリエステル成分と付加重合系樹脂成分とが、その少なくとも一部で両反応性モノマーを介して結合する。
【0027】
本発明において、熱転写受像シート用樹脂の重合は、縮重合反応と付加重合反応を同一反応容器中で順次又は並行して行うことにより行われる。本発明の熱転写受像シート用樹脂は、(c)両反応性モノマーを(b)付加重合系樹脂の原料モノマーと反応させ、該反応により得られた付加重合系樹脂に取り込まれた両反応性モノマー由来の官能基と、ポリエステルの原料のアルコールの末端ヒドロキシ基が反応することにより得られるものであることが好ましく、このような方法により得られるものであれば、付加重合反応と縮重合反応の開始、進行及び完結は、時間的に制限はなく、それぞれの反応に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させればよい。縮重合反応及び付加重合反応は、それぞれ前述の条件により行うことができる。
【0028】
[熱転写受像シート用樹脂の製造方法]
(熱転写受像シート用樹脂の製造方法)
本発明の熱転写受像シート用樹脂は、(1)(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる両反応性モノマー、を混合する工程、(2)主として付加重合反応により、両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分を得る工程、及び(3)主として縮重合反応により、ポリエステルの原料モノマー及び前記両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分とを反応させる工程、を有し、前記(a)ポリエステルの原料モノマーが、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含むアルコール成分を含有する、熱転写受像シート用樹脂の製造方法により得ることが好ましい。なお、前記付加重合反応、縮重合反応はそれぞれ独立して行われる必要はなく、並行して行われてもよいが、工程(2)では主として付加重合反応が、工程(3)では主として縮重合反応が行われることが好ましい。
【0029】
好ましくは、本発明の熱転写受像シート用樹脂は、主として付加重合反応により両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分を得た後、主として縮重合反応によりポリエステル成分を形成させ、両反応性モノマー由来の官能基とポリエステル成分とを反応させる方法により得られる。このような方法により樹脂を得ることにより、ポリエステル樹脂成分中の付加重合系樹脂成分がより微細に、かつ均一に分散することになり好ましい。なお、本発明において、前記「主として」とは、本発明の効果を阻害しない範囲において、同時にあるいは並行して他の反応が起こっていてもよい趣旨である(以下、同様の表記は同様の意味を示す)。また、前記「両反応性モノマー由来の官能基」とは、前記両反応性モノマーに由来し、ポリエステルが有するカルボキシル基やヒドロキシ基などの官能基と縮重合反応しうる官能基を指す。
【0030】
前記方法は、具体的には、まず、(b)付加重合系樹脂の原料モノマー、と(c)両反応性モノマーとを混合し、好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜170℃で主として付加重合反応させて両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分を得た後、(a)ポリエステルの原料モノマーを、好ましくは触媒を添加して、混合し、反応温度を、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜240℃、さらに好ましくは175〜240℃に上昇させた後、主として縮重合反応によりポリエステル成分を形成させ、前記付加重合系樹脂成分の両反応性モノマー由来の官能基とポリエステル成分を反応させて行うことができる。(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)両反応性モノマーは最初に混合しておいてもよい。
【0031】
また、本発明の熱転写受像シート用樹脂は、主として縮重合反応によりポリエステル成分を得た後、主として付加重合反応により両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分を形成させ、前記ポリエステル成分と付加重合系樹脂成分の両反応性モノマー由来の官能基とを反応させて得ることもできる。
このような方法は、具体的には、(a)ポリエステルの原料モノマーを、好ましくは触媒を添加して、混合し、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜240℃で主として縮重合反応によりポリエステル成分を得た後、反応温度を好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜170℃に低下させた後、付加重合系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーを混合し、主として付加重合反応により両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分を形成させ、前記ポリエステル成分と付加重合系樹脂成分の両反応性モノマー由来の官能基とを反応させて行うことができる。
【0032】
本発明においては、(a)ポリエステルの原料モノマーの(b)付加重合系樹脂の原料モノマー及び(c)両反応性モノマーの両モノマーに対する重量比[(a)/(b)+(c)]は、染料の染着性と熱転写受像シートの離型性を両立させる観点から、20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜80/20がより好ましく、40/60〜75/25がさらに好ましく、50/50〜70/30がよりさらに好ましい。ポリエステル成分が付加重合系樹脂成分に対して多く存在する場合、ポリエステル成分中に付加重合系樹脂成分がより微細に、かつ均一に分散することができ好ましい。上記比は、ポリエステル成分の付加重合系樹脂成分に対する重量比を示すものと考えられる。
また、(b)付加重合系樹脂の原料モノマーの(c)両反応性モノマーに対する重量比[(b)/(c)]はポリエステル樹脂成分中の付加重合系樹脂成分の分散性と、反応の制御の観点から、80/20〜99/1であることが好ましく、89/11〜98/2がより好ましく、93/7〜97/3がさらに好ましく、95/5〜97/3がよりさらに好ましい。
【0033】
(熱転写受像シート用樹脂)
熱転写受像シート用樹脂は、(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる両反応性モノマー、を付加重合及び縮重合させることにより得られるものであるが、前述の製造方法により得ることが好ましい。
【0034】
熱転写受像シートの離型性、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、本発明の熱転写受像シート用樹脂の軟化点は80〜250℃であることが好ましく、120〜250℃がより好ましい。また、ガラス転移点は50℃以上であることが好ましく、50〜85℃がより好ましい。酸価は、樹脂の水性媒体中での分散性の観点から、10〜40mgKOH/gが好ましく、15〜30mgKOH/gがより好ましい。ガラス転移点、軟化点及び酸価は、いずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、熱転写受像シートを得る際の造膜性等の観点から、本発明の熱転写受像シート用樹脂の数平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましい。
【0035】
[熱転写受像シート用樹脂分散液の製造方法]
本発明における熱転写受像シート用樹脂分散液の製造方法は、水性媒体中に、前述の熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂を分散させるものである。
本発明において、上記製造方法としては、上記熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂を乳化して行う方法が好ましい。
【0036】
本発明において、熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂において、熱転写受像シート用樹脂については前述の通りであるが、これ以外の樹脂としては、熱転写受像シートの受容層として用いられる公知の樹脂、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のビニルポリマー、ポリスチレン系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等を挙げることができ、熱転写受像シートの離型性、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートが好ましい。
【0037】
本発明においては、熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂は、環境性の観点から、水性媒体中に分散させてなる樹脂分散液中の樹脂粒子として、必要に応じて離型剤等とともに樹脂分散液中に含有されることが好ましい。熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂中の熱転写受像シート用樹脂の含有量は、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、100重量%であることがさらに好ましい。
【0038】
(樹脂分散液)
前記熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂を分散させる水性媒体としては、水を主成分とするもの、すなわち、水が50重量%以上のものである。環境性の観点から、水性媒体中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%がさらに好ましい。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
【0039】
本発明においては、前記樹脂分散液は、熱転写受像シートと昇華性染料を有する転写シートとの離型性(熱融着性)を改善し、画像濃度及び画質を向上させる観点から、オキサゾリン基を有する化合物を添加してなることが好ましい。
オキサゾリン基を有する化合物(以下、「オキサゾリン化合物」ということがある)としては、分子内にオキサゾリン基を複数含有するものが使用可能である。分子内にオキサゾリン基を複数含有する化合物としては、2,2−(1,3−フェニレン)−ビス2−オキサゾリン、2,2−(1,4−フェニレン)−ビス2−オキサゾリンなどの2官能タイプ;オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合した多官能タイプ(以下、「オキサゾリン重合体」ということがある)が挙げられるが、熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂との架橋反応性の観点から、オキサゾリン重合体が好ましい。
【0040】
オキサゾリン化合物を使用することにより、熱転写受像シート用樹脂を含有する樹脂との反応による架橋効果が効果的に発現し、架橋反応が促進されることにより、樹脂分散液を構成する樹脂の分子量が高くなり、熱転写受像シートとの離型性及び熱融着性が改善されるものと考えられる。オキサゾリン重合体は、例えば、オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合することによって得られる。必要に応じて、オキサゾリン基を有する重合性単量体と共重合可能な、オキサゾリン基を有しない重合性単量体との共重合によって得られる。
【0041】
オキサゾリン基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5− メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2− オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2− オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2− オキサゾリン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが、工業的に入手しやすいため好ましい。
【0042】
オキサゾリン基を有しない重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有α,β−不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、ジビニルベンゼン等のα,β−不飽和芳香族炭化水素等を挙げることができる。これらは1種類のみで用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
オキサゾリン重合体の重量平均分子量は、熱転写受像シート用樹脂を含有する樹脂との架橋反応性および生産性の観点から、500〜2,000,000であることが好ましく、1,000〜1,000,000であることがより好ましい。
【0044】
本発明において、オキサゾリン化合物は粉体粒子として用いることもできるが、熱転写受像シート用樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、水性媒体中に分散若しくは溶解されたものとして含有されることが好ましい。オキサゾリン化合物が水性媒体中に分散されたものである場合、オキサゾリン化合物の分散粒子は、熱転写受像シート用樹脂との架橋反応性の観点から、その体積中位粒径(D50)が0.02〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8μmである。ここで「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。その測定方法は後述の通りである。また、オキサゾリン化合物が分散若しくは溶解される水性媒体としては、前述のものが同様に用いられる。
【0045】
尚、オキサゾリン化合物の一般的な市販品としては、日本触媒社製のエポクロスWSシリーズ(水溶性タイプ)、Kシリーズ(エマルションタイプ)などが使用可能である。
前記オキサゾリン化合物の樹脂分散液中における含有量あるいは添加量は、熱転写受像シート用樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂100重量部に対して、固形分として0.1〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。
【0046】
樹脂分散液中における熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂粒子は、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、その体積中位粒径(D50)が1μm以下であることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、さらに好ましくは50〜800nmである。
熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂は、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、前記樹脂分散液の固形分中に、80〜100重量%含有されることが好ましく、より好ましくは85〜100重量%含有され、更に好ましくは90〜100重量%含有される。
【0047】
前記樹脂分散液は、その保存安定性、及びこの樹脂分散液を用いて得られた熱転写受像シートの保存安定性、離型性の観点から、その固形分のガラス転移点が40〜80℃であることが好ましく、より好ましくは50〜75℃である。また軟化点は80〜250℃であることが好ましく、より好ましくは100〜220℃である。数平均分子量は、前記熱転写受像シート用樹脂の分子量と同様である。
樹脂分散液中の固形分濃度は、生産性の観点から、20〜45重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜40重量%、さらに好ましくは30〜40重量%である。また、樹脂分散液の25℃におけるpHは樹脂分散液の保存安定性の観点から、5〜10であることが好ましく、より好ましくは6〜9、さらに好ましくは7〜9である。
【0048】
(樹脂分散液の製造)
前記熱転写受像シート用樹脂分散液は、水性媒体中に、前述の熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂を分散させる方法、好ましくは、さらにこれにオキサゾリン化合物を添加する工程を有する方法により製造することができる。
前記樹脂分散液は、例えば、前記熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂をケトン系溶剤に溶解させ、中和剤を加えて該熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂のカルボキシル基をイオン化し、次いで水を加えた後、ケトン系溶剤を留去して水系に転相する方法により得ることができる。具体的には、攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた反応器を準備し、ケトン系溶剤に溶解した熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂に、中和剤等を加え、カルボキシル基をイオン化し(すでにイオン化されている場合は不要)、次いで水を加えた後、ケトン系溶剤を留去して水系に転相して得ることができる。ケトン系溶剤への溶解、中和剤の添加は、通常ケトン系溶剤の沸点以下の温度で行い、また、ここで用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
用いられるケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられ、樹脂の溶解性及び溶剤の留去の容易性の観点から、好ましくは、メチルエチルケトンが用いられる。
【0049】
中和剤としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、アリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,6−ジアミノヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,12−ジアミノドデカン、二量体脂肪酸ジアミン、2,2,4,−トリメチルヘキサメチレンジアミン等のアミン類等を挙げることができ、樹脂の乳化性及び揮発性の観点から、好ましくはアンモニアである。これらの中和剤の使用量は、少なくとも熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂の酸価を中和できる量であればよい。
【0050】
本発明の樹脂分散液の製造方法がオキサゾリン化合物を添加するものである場合、オキサゾリン化合物の樹脂分散液への添加は、水性媒体中で、オキサゾリン化合物未添加の樹脂分散液とオキサゾリン化合物とを、系内の温度で好ましくは20〜100℃、より好ましくは70〜98℃で混合して行う。具体的には、オキサゾリン化合物未添加の樹脂分散液を前記温度に加熱して、オキサゾリン化合物を20〜100℃で、より好ましくは70〜98℃に加熱して添加する。
【0051】
[熱転写受像シート]
本発明の熱転写受像シートは、基材、及び前述の熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有するものである。
【0052】
(基材)
基材としては、例えば合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフイルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて造膜した白色不透明フイルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。また、前記基材を組み合わせた積層体も使用できる。
これらの基材の厚みは、例えば、10〜300μm程度が一般的である。前記の如き基材には、染料受容層との密着力を向上する観点から、その表面にプライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
【0053】
(染料受容層)
染料受容層は、前述の樹脂分散液を含む塗工液を、前記基材上に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布及び乾燥して形成することによって得られる。以上の如く形成される染料受容層の厚さは、一般には1〜50μmの厚さであり、画質及び生産性の観点から、3〜15μmであることが好ましい。また、乾燥後の固形分量としては、染料受容層1m2当たり3〜15gであることが好ましい。
【0054】
前記染料受容層を形成する塗工液には、前記樹脂分散液とともに離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、水分散性あるいは水溶性の変性シリコーンオイル及び/又は無水珪酸の微粒子のコロイド溶液(例えば、コロイダルシリカ)等を使用することが好ましい。前記無水珪酸の微粒子のコロイド溶液中の重量平均粒径は熱転写受像シート中の分散性の観点から、100nm以下が好ましく、20nm以下のコロイダルシリカを使用することがより好ましい。また、前記離型剤以外に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の離型剤を含有することができる。これらの離型剤は、熱転写受像シートの離型性、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、塗工液中に、熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部含有することが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部含有することができる。
【0055】
また、塗工液には、染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を含有することができる。これらの顔料や充填剤は、熱転写受像シートの白色度の観点から、塗工液中に、熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部含有することができる。
塗工液には、さらに必要に応じて、例えば、グリコールエーテル類等の造膜助剤、架橋剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
なお、前記塗工液には、得られる熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂が自己分散性を有すること、及び熱転写受像シートの疎水性を向上させる観点から、界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0056】
[熱転写方法]
本発明においては、前述の基材に前記染料受容層を設けてなる熱転写受像シートの該受容層面に、昇華性染料を有する転写シートを、加熱下圧着し、染料の転写を行って、転写画像を得る。
本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シートは、通常、紙やポリエステルフィルム上に昇華性染料を含む染料層を設けたものであり、従来公知の転写シートをいずれも使用することができる。
【0057】
本発明の熱転写受像シートに好適に使用できる昇華性染料としては、例えばイエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系が挙げられる。
また、熱転写時の熱エネルギーの付与手段としては、従来公知の付与手段がいずれも使用でき、例えば、サーマルプリンター等の記録装置によって、記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって行うことが出来る。
【実施例】
【0058】
以下に実施例等により、本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例等においては、各性状値は次の方法により測定、評価した。
[樹脂の酸価]
JIS K0070に従って測定する。但し、測定溶媒は、エタノールとエーテルの混合溶媒を、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))とした。
【0059】
[樹脂の軟化点及びガラス転移点]
(1)フローテスター(島津製作所製、「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
(2)ガラス転移点
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、Pyris6DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0060】
[樹脂分散液中の樹脂粒子の粒径]
レーザー回折型粒径測定機(HORIBA社製、「LA−920」)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定する。
【0061】
[樹脂分散液の固形分濃度]
赤外線水分計(ケツト科学研究所社製:FD−230)を用いて、分散液5gを乾燥温度150℃,測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)にて、ウェットベースの水分%を測定する。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(%)=100−M
M:ウェットベース水分(%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
【0062】
実施例1(樹脂aの製造)
表1に示す無水トリメリット酸を除くポリエステルの原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で攪拌しつつ、表1に示す付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより72ml/minの滴下速度にて1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、ビニル系樹脂単量体の除去を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を加え、230℃にて常圧(101.3kPa)で6時間反応後、8.0kPaにて1時間、反応を行った。200℃まで冷却後、表1に示す無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで反応を行い、樹脂aを得た。
【0063】
実施例2(樹脂bの製造)
表1に示す無水トリメリット酸を除くポリエステルの原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で攪拌しつつ、表1に示す付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより72ml/minの滴下速度にて1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、付加重合系樹脂の原料モノマーの除去を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を加え、180℃にて常圧(101.3kPa)で6時間反応後、200℃にて常圧で2時間反応させ、その後、8.0kPaにて1時間、反応を行った。表1に示す無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで反応を行い、樹脂bを得た。
【0064】
実施例3(樹脂cの製造)
表1に示すポリエステルの原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で攪拌しつつ、表1に示す付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより70ml/minの滴下速度にて1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、付加重合系樹脂の原料モノマーの除去を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を加え、230℃にて常圧(101.3kPa)で6時間反応後、210℃まで冷却し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで8.0kPaにて反応を行い、樹脂cを得た。
【0065】
実施例4(樹脂dの製造)
表1に示すポリエステルの原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で攪拌しつつ、表1に示す付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより68ml/minの滴下速度にて1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、付加重合系樹脂の原料モノマーの除去を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を加え、180℃にて常圧で6時間反応後、200℃にて常圧(101.3kPa)で2時間反応させ、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで8.0kPaにて反応を行い、樹脂dを得た。
【0066】
実施例5(樹脂eの製造)
表1に示す無水トリメリット酸を除くポリエステルの原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で攪拌しつつ、表1に示す付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより50ml/minの滴下速度にて1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、付加重合系樹脂の原料モノマーの除去を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を加え、230℃にて常圧(101.3kPa)で7時間反応後、8.0kPaにて1時間、反応を行った。200℃まで冷却後、表1に示す無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで反応を行い、樹脂eを得た。
【0067】
実施例6(樹脂fの製造)
表1に示す無水トリメリット酸を除くポリエステルの原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で攪拌しつつ、表1に示す付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより72ml/minの滴下速度にて1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、付加重合系樹脂の原料モノマーの除去を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を加え、230℃にて常圧(101.3kPa)で6時間反応後、8.0kPaにて1時間、反応を行った。200℃まで冷却後、表1に示す無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで反応を行い、樹脂fを得た。
【0068】
比較例1(樹脂gの製造)
表1に示す無水トリメリット酸を除くポリエステルの原料モノマーとエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、230℃にて常圧で6時間反応後、8.0kPaにて1時間、反応を行った。200℃まで冷却後、表1に示す無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで反応を行い、樹脂gを得た。
【0069】
比較例2(樹脂hの製造)
表1に示す無水トリメリット酸を除くポリエステルの原料モノマーとエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、180℃にて常圧で6時間反応後、200℃にて常圧(101.3kPa)で2時間反応させ、その後、8.0kPaにて1時間、反応を行った。表1に示す無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで反応を行い、樹脂hを得た。

各実施例及び比較例において使用したモノマー組成及び得られた樹脂の性状を表1にまとめて示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例7〜12及び比較例3、4(樹脂分散液A〜Hの製造)
窒素導入管、還流冷却管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに表2に示す配合で、樹脂a〜hを入れ、25℃でメチルエチルケトンに溶解させた。次いで、25%アンモニア水を添加して、攪拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下50℃でメチルエチルケトンを留去し、樹脂分散液A〜Hを得た。得られた樹脂分散液A〜Hの各々の組成及び樹脂粒子の体積中位粒径、固形分、pHを表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例13〜18及び比較例5、6(樹脂分散液I〜Pの製造)
表3に示す配合で、それぞれ樹脂分散液A〜H、水溶性のオキサゾリン含有重合体(日本触媒社製 エポクロスWS−700)を窒素導入管、還流冷却管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、攪拌下95℃で4時間反応させ、樹脂分散液I〜Pを得た。得られた樹脂分散液I〜Pの各々組成及び分散粒子の体積中位粒径、固形分、pHを表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
製造例1(ポリスチレン分散液の製造)
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、水100g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7g、過硫酸ナトリウム0.08を仕込み、窒素気流下、撹拌を行い、80℃に昇温した。一方、ガラス製ビーカーに、スチレン100g、水86g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6.0g、過硫酸ナトリウム0.3を仕込み、攪拌、溶解させ、ホモミキサーで10分処理し、乳化物を調整した。この乳化物を滴下ロートに仕込み、四つ口フラスコに3時間かけて一定速度で滴下し、滴下終了後、さらに2時間かけて熟成を行った。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、ポリスチレン分散液を得た。得られたポリスチレン分散液の分散粒子の体積中位粒径は114nm、固形分33.4%であった。
【0076】
実施例19〜24及び比較例7〜10(熱転写受像シートの製造)
表4に示す組成、配合で25℃にて混合し、塗工液A1〜J1を作製した。この塗工液の各々を合成紙YUPO FGS−250(厚さ250μm、坪量200g/m2)にワイヤーバーにより乾燥後に5.0g/m2になるように塗布し、50℃2分で乾燥させて熱転写受像シートを得た。この熱転写受像シートに市販の昇華型プリンタ(キヤノン社製、SELPHY)を用いて各色(黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B))の階調パターンを印画し、下記の方法で染着性(最高濃度)を評価した。また、5×5cmの黒ベタを3枚連続で印画し、印画時のインクリボンとの離型性(熱融着性)を評価した。それぞれ下記のように測定し評価した。結果を表4に示す。
【0077】
【表4】

【0078】
評価方法
[染着性-(最高濃度)]
黒の高濃度印画(18階調目)で熱転写した印字画像の濃度をグレタグで測定した。
[離型性―(熱転写受像シートとの離型性の評価)]
黒ベタ印画時のインクリボンと熱転写受像シートの剥離音から熱融着性の有無を判断した。
A:連続3枚の印画で異音なく剥離できる。
B:連続3枚の印画で若干の異音があるが、剥離できる。
C:連続3枚の印画が困難である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の熱転写受像シート用樹脂を用いた熱転写受像シートは、熱転写受像シートへの染料の染着性と熱転写受像シートの離型性のいずれにおいても優れたものであることから、優れた画像性能を有する熱転写受像シートとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる化合物、を付加重合及び縮重合させることにより得られる、熱転写受像シート用樹脂であって、前記(a)ポリエステルの原料モノマーが、式(I)
【化1】

(式中、R1O及びR2Oは各々オキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表し、x及びyはそれぞれ正の数であり、かつxとyの和の平均値は2〜7である。但し、x個のR1Oは各々同一でも異なっていてもよく、またy個のR2Oは各々同一でも異なっていてもよい。)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含むアルコール成分を含有する熱転写受像シート用樹脂。
【請求項2】
前記(a)ポリエステルの原料モノマーと(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマーの重量比[(a)/(b)]が20/80〜80/20である、請求項1記載の熱転写受像シート用樹脂。
【請求項3】
(a)ポリエステルの原料モノマーにおけるジカルボン酸成分が、芳香族ジカルボン酸を50モル%以上含有する、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート用樹脂。
【請求項4】
(1)(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる化合物、を混合する工程、
(2)主として付加重合反応により、前記(c)の化合物由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分を得る工程、及び
(3)主として縮重合反応により、ポリエステルの原料モノマー及び前記(c)の化合物由来の官能基を有する付加重合系樹脂成分とを反応させる工程、
を有し、前記(a)ポリエステルの原料モノマーが、式(I)
【化2】

(式中、R1O及びR2Oは各々オキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表し、x及びyはそれぞれ正の数であり、かつxとyの和の平均値は2〜7である。但し、x個のR1Oは各々同一でも異なっていてもよく、またy個のR2Oは各々同一でも異なっていてもよい。)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含むアルコール成分を含有する、熱転写受像シート用樹脂の製造方法。
【請求項5】
水性媒体中に、請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂を含む樹脂を分散させる、熱転写受像シート用樹脂分散液の製造方法。
【請求項6】
水性媒体中に、さらにオキサゾリン化合物を添加する工程を有する、請求項5記載の熱転写受像シート用樹脂分散液の製造方法。
【請求項7】
基材、及び請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート。

【公開番号】特開2010−131906(P2010−131906A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311204(P2008−311204)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】