説明

熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置及び圧媒ガス供給回収装置

【課題】圧媒ガス中の酸素等の不純物を除去することができ、しかも実用に供することのできる新規な熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置、及び、該圧媒ガス浄化装置を備え、従来に比べて圧媒ガスの廃棄量を大幅に低減することができる熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置を提供すること。
【解決手段】高圧容器10と、高圧容器10の外側に装着された冷却手段40と、高圧容器10内に設けられ、圧媒ガスの流路を形成する圧媒ガス流路形成部材50と、高圧容器10内に設けられ、前記圧媒ガス流路に沿って配置され、酸素親和性の強い金属からなる電気抵抗加熱ヒータ線60と、を備えた熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間等方圧加圧装置へ圧媒ガスを供給及び回収する圧媒ガス供給回収装置に備えられて、圧媒ガス中の不純物として少なくとも酸素を除去する熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置、及び、この圧媒ガス浄化装置を備えている熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱間等方圧加圧装置(以下、HIP装置ともいう)は、処理室を形成する高圧容器内に不活性ガスでなる圧媒ガスを充填し、この高圧容器内に収容されている被処理品を高温高圧ガス雰囲気下で処理する装置であり、鋳物の巣やガス気孔、あるいは焼結体中の残留気孔を圧壊して消滅させる熱間等方圧加圧処理(以下、HIP処理ともいう)に使用されている。近年、このHIP装置の大型化が進み、HIP処理に使用するアルゴンガス等の不活性ガスの使用量(消費量)が増加しつつある。
【0003】
すなわち、通常、HIP処理では、圧媒ガスであるアルゴンガスは、ガス圧が15MPaあるいは20MPaのガスボンベ(圧媒ガス源)からHIP装置の高圧容器(以下、本体高圧容器ともいう)に、まず、本体高圧容器内の圧力が低い時点では両者の差圧を利用して供給される。次いで、本体高圧容器内の圧力がガスボンベと同等の圧力に到達したら、ガスボンベからのアルゴンガスは、圧縮機を駆動して加圧され、本体高圧容器内に所定の例えば100MPaにて充填される。そして、本体高圧容器内を高温高圧ガス雰囲気に保持してHIP処理した後、本体高圧容器内の温度が600℃以下程度に下がった時点で、本体高圧容器内のアルゴンは、まず、前記ガスボンベに両者の差圧を利用して回収される。次いで、本体高圧容器内の圧力がガスボンベと同等の圧力(通常は前記の15〜20MPa)になると、本体高圧容器内からのアルゴンは、圧縮機を駆動して加圧され、前記ガスボンベに回収される。
【0004】
しかし、本体高圧容器内の圧力が3MPa程度まで下がると、圧縮機の効率が低下して圧縮機を駆動してもアルゴンガスの回収速度が遅くなってしまい、その結果、本体高圧容器の蓋を開けて処理品を取り出すまでの時間が長くなってしまい生産性が低下する。
【0005】
このため、通常は、本体高圧容器内の圧力が3MPa程度まで低下した時点で、本体高圧容器内に残ったアルゴンガスを大気放出して捨ててしまうこととなる。このアルゴンガス廃棄量は、HIP装置の大きさ(処理室容積)にも依存するが、最初に充填したアルゴンガスの8〜12%の量であり、HIP装置の大型化に伴い、また、HIP装置の運転頻度の増大に伴って非常に多量となる。使用されるアルゴンガスとしては純度99.99%以上のものが必要であり、その価格は500〜1000円/Nmと高価である。
【0006】
したがって、例えば、最近の大型のHIP装置、円柱状空間をなす処理室の寸法が直径1.6m×高さ4mであって、温度1200℃×圧力100MPaで運転される場合の例では、本体高圧容器内に充填されるアルゴンガスの量は6000Nmにもなり、その10%を1回のHIP処理で放出してしまうとすると、金額にして30万円〜60万円のガスを捨ててしまうこととなる。よって、大気放出されるアルゴンガスの量ができる少なくなるようにすべく、HIP処理後の本体高圧容器内のアルゴンガスできるだけ多く回収して使用することが好ましい。また、経済的観点に加えて、環境保全の観点からも、大気放出されるアルゴンガスの量ができる少なくなるようにすべきである。
【0007】
なお、アルゴンガスの回収量を増大するには、本体高圧容器に接続されたガス回収用の配管系の大径化して、本体高圧容器内の圧力が例えば3MPa程度まで低下した時点で、大容量の圧縮機によって圧媒ガス源である10〜15MPaのガス集合装置、あるいはガスボンベに回収するようにすればその実現が可能となる。しかしながら、大型化されていない従来の処理室寸法が直径600mm×高さ2mのHIP装置では、このようなガス回収装置を設置することはアルゴンガスを放出するよりもコスト高となるために実施されずにきたというのが実情である。
【0008】
さて、本体高圧容器内には、その蓋を開けて被処理品を装入する際に湿度を持った空気が混入し、また、被処理品に吸着している水分やガス成分がHIP処理の過程で圧媒ガスであるアルゴンガスに放出される。このため、HIP処理後の回収されたアルゴンガスは、通常、不純物として、水分に起因する酸素や水素、あるいは二酸化炭素や炭化水素成分を含んでいる。したがって、HIP処理に回収されたアルゴンガスを繰返し使用すると、これらの成分が濃縮されて、処理品表面を汚染するようになってしまう。
【0009】
このため、放出せずに回収して、不足分を新しいアルゴンガスを補充しつつ使用していても、繰返しの使用によってこの不純物成分の量が、許容値(例えば500ppm)を超えないように管理して使用されるのが通例であり、20〜30回のHIP処理後に1回の割合でアルゴンガス源のアルゴンガス全量を捨ててしまわざるをえないのが実情である。
【0010】
ところで、このようなHIP処理後のアルゴンガスを回収して再使用するためにアルゴンガス中の不純物を除去する技術(圧媒ガスの浄化技術)については、例えば、以下に述べる従来技術1、2が知られている。これらの従来技術では、特にTi合金やNi合金の鋳造品のHIP処理において問題とされる不純物である酸素の除去が対象となっており、アルゴンガス中の酸素を除去するため、容器内に酸素親和性の強い金属(ゲッタ材)を充填し、これを該容器外部に設けられている加熱装置で加熱するようになした反応容器を備えている。前記の酸素親和性の強い金属としては、Al、Ti、Zr等が挙げられている。
【0011】
従来技術1(実公昭58−40975号公報)では、図6に示すように、HIP処理後のアルゴンガスを回収するガス回収ラインに、反応容器を設けるようにしたものが提案されている。
【0012】
すなわち、図6に示すように、被処理品を装入した本体高圧容器201内に、アルゴンガスホルダー(圧媒ガス源)202のアルゴンガスを圧縮機203,204を介して圧入し、該本体高圧容器201内において高温高圧ガス雰囲気下で前記被処理品にHIP処理を施し、しかる後、該本体高圧容器201中のアルゴンガスを前記アルゴンガスホルダー202に回収する熱間等方圧加圧装置(熱間静水圧プレス装置)において、前記アルゴンガスホルダー202から前記本体高圧容器201へアルゴンガスを供給するガス供給ライン207と、前記本体高圧容器201から前記アルゴンガスホルダー202にアルゴンガスを回収するガス回収ライン208とが設けられるとともに、前記ガス回収ライン208に、容器内に酸素親和性の強い金属(ゲッタ材)が充填され、かつ、容器外部に加熱装置206,206‘を備えた反応容器205,205’が設けられている。V〜V10は弁である。
【0013】
なお、前記反応容器205,205’は、一方の反応容器内の前記ゲッタ材の交換時には他方の反応容器に切り替えて運転可能なように、ガス回収ライン208において並列に設けられている。
【0014】
このように構成されたHIP装置において、HIP処理が完了すると、ガス回収ライン208を通じてアルゴンガスの回収を行う。まず、ガス回収ライン208の弁V,V,Vを開き、当初は100MPaの高圧下に保持されている本体高圧容器201内と容器外の差圧によって本体高圧容器201内のアルゴンガスを自然回収することができ、100MPaのアルゴンガスを減圧弁Vで15MPa位に減圧してガス回収ライン208を通して回収する。このとき、アルゴンガス中に含まれている酸素を、ガス回収ライン208に備えられている反応容器205(又は205’)内のゲッタ材と反応させて除去するようにしている。
【0015】
次いで、本体高圧容器201とアルゴンガスホルダー202との内圧が均衡して自然回収が不可能となると、弁Vを閉じ、弁V,Vを開いてバイパスライン209を通じ、本体高圧容器201からのアルゴンガスを低圧圧縮機203で圧力を高め、ガス回収ライン208の反応容器205を通してその強制回収を行う。そして、本体高圧容器201内の圧力が数気圧〜10気圧(1MPa)程度まで下がると、弁V,V,V,Vを閉じ、アルゴンガスの回収を終了するようにしている。
【0016】
また、従来技術2(実公昭58−40976号公報)では、図7に示すように、アルゴンガスホルダー302から本体高圧容器301へアルゴンガスを供給するガス供給ライン307における圧縮機303,304と本体高圧容器301との間に、容器外部に加熱装置306,306’を備えた反応容器305,305’を設けている熱間等方圧加圧装置(熱間静水圧プレス装置)が提案されている。なお、図7において、V〜Vは弁、308はガス回収ライン、309,309’はバイパスラインである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実公昭58−40975号公報
【特許文献2】実公昭58−40976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、前述した従来技術2では、ガス供給ライン307における高圧圧縮機304の吐出側と本体高圧容器301との間に反応容器305を設けるようにしたものであるから、反応容器305が本体高圧容器301と同じレベルの高圧状態となり、反応容器305は本体高圧容器301同じ耐圧性が必要であり、非常に厚肉の高圧容器となってしまう。
【0019】
また、前述した従来技術1、2では、反応容器(反応器)205,305は、該容器内に酸素親和性の強い金属を充填し、これを該容器外部に設けられている加熱装置206,306で加熱するようにした外熱式の高圧容器である。酸素親和性の強い金属、例えばTi、Zrを使用して酸素と反応させる場合には、反応容器内部の温度を450〜600℃程度にすることが好ましく、従来技術1、2の反応容器205,305は、外熱式のために容器の冷却がむずかしく、容器材料の耐熱性(容器の耐久性)の点から実用に供するものがなかった。このため、HIP装置を使用している生産現場では、本体高圧容器の処理室内に被処理品とともにTi箔などのゲッタ材を装入して、被処理品表面の酸化防止等を行っているのが実情であった。
【0020】
そこで、本発明の課題は、熱間等方圧加圧装置へ不活性ガスでなる圧媒ガスを供給及び回収するに際し、圧媒ガス中の酸素等の不純物を除去することができ、しかも実用に供することのできる新規な熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置、及び、該圧媒ガス浄化装置を備え、従来に比べて圧媒ガスの廃棄量を大幅に低減することができる熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0022】
請求項1の発明は、不活性ガスでなる圧媒ガスを用いて被処理品を高温高圧ガス雰囲気下で処理する熱間等方圧加圧装置へ圧媒ガスを供給及び回収する圧媒ガス供給回収装置に備えられ、圧媒ガスを導入して該圧媒ガス中の不純物として少なくとも酸素を除去する熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置であって、圧媒ガス導入口及び圧媒ガス排出口がそれぞれ開設された高圧容器と、前記高圧容器の外側に装着されて該高圧容器を冷却する冷却手段と、前記高圧容器内に設けられ、前記圧媒ガス導入口から導入されて前記圧媒ガス排出口より排出される圧媒ガスの流路を形成する圧媒ガス流路形成部材と、前記圧媒ガス流路に沿って配置される不純物除去能を有する材料と、前記高圧容器内に設けられ、前記不純物除去能を有する材料を加熱する加熱手段と、を備えたことを特徴とする熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置である。
【0023】
請求項2の発明は、請求項1記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置において、前記不純物除去能を有する材料が金属材料であり、当該金属材料からなる電気抵抗加熱ヒータ線を前記圧媒ガス流路に沿って配置することにより、前記不純物除去能を有する材料と前記加熱手段とを兼用するようになされていることを特徴とするものである。
【0024】
請求項3の発明は、請求項2記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置において、前記圧媒ガス流路形成部材の材質がセラミックスからなり、該圧媒ガス流路形成部材の外周面に前記不純物除去能を有する金属材料からなる前記電気抵抗加熱ヒータ線が巻回されていることを特徴とするものである。
【0025】
請求項4の発明は、請求項2又は3記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置において、前記高圧容器が下蓋と、該下蓋に着脱可能に装着される倒立コップ状胴部とで構成されており、前記下蓋内に該高圧容器内部と連通する圧媒ガス導入配管及び圧媒ガス排出配管が収納されるとともに、前記電気抵抗加熱ヒータ線に電力を供給するためのヒータ電力供給用配線が該電気抵抗加熱ヒータ線に対して接続・切り離し可能に収納されていることを特徴とするものである。
【0026】
請求項5の発明は、請求項4記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置において、前記圧媒ガス流路形成部材と前記電気抵抗加熱ヒータ線とが一体に組み立てられてなるガス浄化ユニット体が前記下蓋上に載置されており、前記電気抵抗加熱ヒータ線のコネクタにプラグイン構造で接続される前記ヒータ電力供給用配線のプラグインコネクタが前記下蓋に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0027】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置において、前記加熱手段の温度を測定するための測温センサを少なくとも一つを備えていることを特徴とするものである。
【0028】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置を備え、不活性ガスでなる圧媒ガスを用いて被処理品を高温高圧ガス雰囲気下で処理する熱間等方圧加圧装置へ圧媒ガスを供給及び回収する圧媒ガス供給回収装置であって、高圧の圧媒ガスを収容している高圧圧媒ガス源と、中圧の圧媒ガスを収容している中圧圧媒ガス源と、低圧の圧媒ガスを収容している低圧圧媒ガス源と、圧縮機を有し、前記中圧圧媒ガス源と前記熱間等方圧加圧装置とを連絡する圧媒ガス供給ラインと、前記圧媒ガス浄化装置を有し、前記熱間等方圧加圧装置と前記中圧圧媒ガス源とを連絡する圧媒ガス回収ラインと、前記高圧圧媒ガス源と圧媒ガス供給充填ラインとを連絡する高圧圧媒ガス用供給ラインと、前記低圧圧媒ガス源と前記圧媒ガス供給充填ラインとを連絡する低圧圧媒ガス用供給ラインと、前記圧媒ガス回収ラインの前記圧媒ガス浄化装置の圧媒ガス出側と前記低圧圧媒ガス源とを連絡する低圧圧媒ガス用回収ラインと、備えたことを特徴とする熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置である。
【0029】
請求項8の発明は、請求項7記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置において、前記圧媒ガス回収ラインは前記圧媒ガス浄化装置を少なくとも2台有し、これらの圧媒ガス浄化装置が交互に切換え運転可能に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置は、高圧容器内に配置された不純物除去能を有する材料を加熱する加熱手段を、従来装置とは違って前記高圧容器内に設けるようにしたので、前記高圧容器の冷却を該高圧容器の外側に装着された冷却手段によって行うことができる。したがって、本発明によれば、圧媒ガス中の少なくとも酸素を除去することができ、しかも高圧容器の冷却が可能で実用に供することのできる新規な熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置の提供が可能となる。
【0031】
本発明による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置は、実用に供することのできる前記圧媒ガス浄化装置を備えている。したがって、従来と違って、20〜30回のHIP処理後に1回の割合で圧媒ガス源の圧媒ガス全量を捨てるということをなくすことができる。また、圧媒ガス源として、高圧圧媒ガス源及び中圧圧媒ガス源の他に、低圧の圧媒ガスを収容している低圧圧媒ガス源を備え、該低圧圧媒ガス源へもHIP処理後の圧媒ガスを回収するように構成されている。したがって、HIP処理後の圧媒ガスの回収に際し、大気放出を開始するHIP装置本体高圧容器内の圧媒ガスの圧力を従来の3MPa程度から0.3MPa程度にまで引き下げることができ、前記従来の3MPa程度から大気放出する場合に比べて操業時間を大幅に延長することなく、圧媒ガスの廃棄量を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置の構成を概略的に示す正面縦断面図である。
【図2】図1に示す圧媒ガス浄化装置においてガス浄化ユニット体の交換の様子を説明するための図である。
【図3】本発明の別の実施形態による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置の構成を概略的に示す正面縦断面図である。
【図4】本発明のさらに別の実施形態による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置の構成を概略的に示す正面縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置の構成を概略的に示す図である。
【図6】従来のHIP装置の構成を示す図である。
【図7】従来のHIP装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。まず、本発明の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置(以下、単に圧媒ガス浄化装置ともいう)について説明する。
【0034】
図1は本発明の一実施形態による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置の構成を概略的に示す正面縦断面図である。
【0035】
図1において、10は鋼製の高圧容器である。高圧容器10は、断面円形の倒立コップ状胴部20と円盤状をなす下蓋30とにより構成され、容器内部に形成された円柱状の空間に後述するガス浄化ユニット体80が収納されている。そして、高圧容器10の外側に装着されて該高圧容器10を冷却する冷却手段として、前記倒立コップ状胴部20の外周周りには、冷却水が流される冷却水通路41を有する水冷ジャケット40がシールリング42,43を介して装着されている。
【0036】
前記高圧容器10は、この実施形態では容器内の圧力が30MPa程度となる圧力レベル(中圧の圧力レベル)に適用されるものであり、前記倒立コップ状胴部20の下端部内周には雌ネジ20aが形成される一方、前記下蓋30の小径部の外周には前記雌ネジ20aに螺合可能な雄ネジ30aが形成されている(図3参照)。そして、架台等に固定されている下蓋30に対して倒立コップ状胴部20が、円周方向に45度回転させることにより前記ネジ20a,30aによって着脱可能となされている。
【0037】
なお、下蓋と倒立コップ状胴部との着脱構造(取付け取外し構造)については、容器内の圧力レベルがさらに高いものに適用される場合には、前記のようなネジ構造ではなく、下蓋と倒立コップ状胴部がシールリングを介しての単純な嵌合構造であって、かつ、圧媒ガスのガス圧により生じる軸方向荷重を下蓋と倒立コップ状胴部を囲い込むように配置された窓枠状のプレス枠体で保持するようにした構造のものがよい。また、圧力レベルがさらに低い場合には、倒立コップ状胴部の肉厚がさらに薄いものでよく、下蓋と倒立コップ状胴部との着脱構造として、開閉が容易なクラッチ式構造が採用可能である。
【0038】
さて、前記下蓋30内には、HIP処理後にHIP装置の本体高圧容器からの圧媒ガスを高圧容器10内へ導入するための圧媒ガス導入配管31と、酸素が除去された圧媒ガスを高圧容器10内から排出するための圧媒ガス排出配管32とが収納されている。前記圧媒ガス導入配管31の先端は、下蓋30の半径方向における中心部に引き出されており、この圧媒ガス導入配管31によって高圧容器10に圧媒ガス導入口10aが開設されている。また、前記圧媒ガス排出配管32の先端は、下蓋30の半径方向における周辺部に引き出されており、この圧媒ガス排出配管32によって高圧容器10に圧媒ガス排出口10bが開設されている。
【0039】
さらに、下蓋30内にはヒータ電力供給用配線33と、後述する熱電対62,63用の導線(図示せず)とが収納されるとともに、下蓋30の上面には前記ヒータ電力供給用配線33に接続されたプラグインコネクタ34と、前記導線に接続されたプラグインコネクタ(図示せず)が取り付けられている。
【0040】
また、高圧容器10内には、円筒状をなし、上下方向に延びる内筒51と、断面円形で倒立コップ状をなし、前記内筒51の外側に該内筒51と間隔をあけて同心状に位置された外筒52とにより構成され、前記圧媒ガス導入口10aから導入されて前記圧媒ガス排出口10bより排出される圧媒ガスの流路を形成する圧媒ガス流路形成部材50が設けられている。前記の内筒51及び外筒52は、本実施形態では電気絶縁性を有するセラミックスであるアルミナからなっている。前記内筒51は、中心部に貫通孔を有し円形をなす鋼製のベース板70の上面に取り付けられており、前記圧媒ガス導入配管31の先端部が前記貫通孔から突出している。前記外筒52は、その天井面が前記内筒51の上端よりも上方に位置し、かつ、その下端が前記内筒51の下端よりも上方に位置するように、図示しない外筒支持部材によって支持されている。
【0041】
また、外筒52の外側には、該外筒52と間隔をあけて同心状に円筒状の断熱体72が位置されている。この断熱体72は、その下端が前記ベース板70よりも下方に突出する状態で該ベース板70に取り付けられている。ベース板70の脚部にはシールリング71が取り付けられている。
【0042】
そして、本実施形態では、圧媒ガス中の不純物として少なくとも酸素を除去する不純物除去能を有する材料と該不純物除去能を有する材料を加熱する加熱手段とが兼用されるように構成されている。
【0043】
すなわち、電気抵抗加熱ヒータ線60が、前記内筒51の外周面に長手方向に沿って巻回され、本実施形態ではこれに直列接続する態様で、前記外筒52の外周面に長手方向に沿って巻回されている。この電気抵抗加熱ヒータ線60は、不純物除去能を有する材料として、酸素親和性の強い金属からなっている。この酸素親和性の強い金属としては、室温下で安定であって、かつ加熱により活性となるTi、Zrが挙げられる。
【0044】
そして、前記電気抵抗加熱ヒータ線60の始端リードと終端リードとが接続されたヒータ線用のコネクタ61が、前記ベース板70に取り付けられている。この電気抵抗加熱ヒータ線60のコネクタ61と前記ヒータ電力供給用配線33のプラグインコネクタ34とがプラグイン構造で接続されるようになっている。
【0045】
また、電気抵抗加熱ヒータ線60の温度制御を目的として該電気抵抗加熱ヒータ線60の温度を測定するため、内筒51の外周面に巻回されている該電気抵抗加熱ヒータ線60の近傍位置に熱電対62が配置されるとともに、外筒52の外周面に巻回されている該電気抵抗加熱ヒータ線60の近傍位置に熱電対63が配置されている。なお、これらの熱電対62,63の導線用端子に接続されるコネクタ(図示せず)がベース板70に取り付けられており、このコネクタと前記した熱電対用のプラグインコネクタとがプラグイン構造で接続されるようになっている。
【0046】
このようにして、前記の圧媒ガス流路形成部材50、電気抵抗加熱ヒータ線60、熱電対62,63、断熱体72及びベース板70を一体に組み立ててなるガス浄化ユニット体80(図2参照)が形成され、下蓋30上に載置されている。
【0047】
以下、前記のように構成される本実施形態の圧媒ガス浄化装置1の動作について説明する。
【0048】
HIP処理装置の本体高圧容器から高圧のアルゴンガスを回収するに際し、前記本体高圧容器から導かれたアルゴンガスは、前記圧媒ガス導入口10aから高圧容器10内に導入される。高圧容器10内に流入したアルゴンガスは、内筒51の内側を上昇した後に方向反転し、内筒51と外筒52との間に形成されているガス流路を内筒51の外周面に巻回され、抵抗発熱している電気抵抗加熱ヒータ線60に接触しながら下降し、再び方向反転して、外筒52と断熱体72との間に形成されているガス流路を外筒52の外周面に巻回され、抵抗発熱している電気抵抗加熱ヒータ線60に接触しながら上昇し、最後に、断熱体72と倒立コップ状胴部20との間に形成されているガス流路を下降して、前記圧媒ガス排出口10bから圧媒ガス排出配管32へと導かれる。
【0049】
そして、高圧容器10内に流入したアルゴンガスが前記した酸素親和性の強い金属からなる高温の電気抵抗加熱ヒータ線60と接触することにより、アルゴンガス中の酸素と該電気抵抗加熱ヒータ線60とが反応して、アルゴンガス中から酸素が除去される。
【0050】
このように、本実施形態の圧媒ガス浄化装置1では、酸素親和性の強い金属からなる電気抵抗加熱ヒータ線60が発熱源であるため、高圧容器10内にて最高温度になる部材が電気抵抗加熱ヒータ線60であり、多く材料で酸素との反応は温度が高いほど活発なことと併せて非常に好都合である。
【0051】
TiあるいはZrからなる電気抵抗加熱ヒータ線60を用いる場合、抵抗発熱による電気抵抗加熱ヒータ線60の温度は450〜600℃の範囲を満たすことがよい。そこで、前記熱電対62,63によって電気抵抗加熱ヒータ線60の温度を測定し、その測定結果に基づいて、電気抵抗加熱ヒータ線60の温度が前記範囲を満たすように該電気抵抗加熱ヒータ線60に与えるヒータ電力を制御するようにすればよい。
【0052】
ここで、高圧容器10の内部温度が450〜600℃の高温となるため、鋼製の高圧容器10では、耐久性の点からその容器温度が150℃以下となるようにすることがよく、高圧容器10の冷却が必要となる。本実施形態の圧媒ガス浄化装置1では、酸素親和性の強い金属を高圧容器内に充填し、該金属を加熱するための加熱手段を高圧容器の外部に設けるようにした従来技術とは違って、電気抵抗加熱ヒータ線60によって酸素親和性の強い金属(不純物除去能を有する材料)とこれを加熱する手段とを兼用し、この電気抵抗加熱ヒータ線60を高圧容器10内に設けるようにしたので、倒立コップ状胴部20の外周周りに装着された前記水冷ジャケット40によって高圧容器10の冷却を行うことが可能となっている。
【0053】
本実施形態の圧媒ガス浄化装置1では、TiあるいはZrからなる電気抵抗加熱ヒータ線60は、アルゴンガス中の酸素と反応することで、時間の経過とともに、その表面から酸化物が形成されて次第に電気抵抗が増加して、酸素の除去効率が低下してくる。そこで、適宜の期間ピッチにて電気抵抗加熱ヒータ線60の電気抵抗値を測定し、所定の電気抵抗値以上になった時点で、新品に交換するようにすればよい。このように、本実施形態の圧媒ガス浄化装置1は、電気抵抗加熱ヒータ線60の電気抵抗値の変化から容易に電気抵抗加熱ヒータ線60の交換時期を知ることができるという利点もある。
【0054】
そして、本実施形態の圧媒ガス浄化装置1では、前記ガス浄化ユニット体80を備えるとともに、下蓋30に載置されるガス浄化ユニット体80に組み込まれた電気抵抗加熱ヒータ線60が、下蓋30に取り付けられた前記プラグインコネクタ34に対してプラグイン構造で接続・切り離し可能に構成されているので、前記電気抵抗加熱ヒータ線60の交換を容易に短時間で行うことができる。
【0055】
すなわち、図2に示すように、水冷ジャケット40が装着されている倒立コップ状胴部20を、45度回転させて前記ねじ部20a,30aを緩めて、架台に固定されている下蓋30から取り外し、この倒立コップ状胴部20をつり上げて、所定の場所に運ぶ。次いで、ガス浄化ユニット体80を少しつり上げると、これに伴って、ガス浄化ユニット体80の電気抵抗加熱ヒータ線60のコネクタ61(該コネクタ61はベース板70に取り付けられている)が、下蓋30に取り付けられたプラグインコネクタ34から外れるので、そのまま、ガス浄化ユニット体80を所定の場所に運ぶことができる。そして、新品の電気抵抗加熱ヒータ線60が装着されたガス浄化ユニット体80を下蓋30の上方から下降させて下蓋30の所定位置に載置することで、そのままコネクタ61がプラグインコネクタ34にプラグイン構造で接続されることとなる。なお、前記熱電対62,63の着脱も同様になされる。
【0056】
図3は本発明の別の実施形態による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置の構成を概略的に示す正面縦断面図である。ここで、前記図1に示される圧媒ガス浄化装置1と同一部分には図1と同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について説明する。
【0057】
図3に示すように、この圧媒ガス浄化装置2の高圧容器10’は、円筒状胴部21と円盤状をなす上蓋22とからなる倒立コップ状胴部と、下蓋30’とにより構成されている。円筒状胴部21の外周周りに水冷ジャケット40が装着されている。前記上蓋22内には、圧媒ガス排出配管32’が収納されている。
【0058】
この実施形態の圧媒ガス浄化装置2では、図3に示すように、下蓋30’に収納されている圧媒ガス導入配管31を経て高圧容器10’内に流入したアルゴンガスは、内筒51の内側のガス流路→内筒51と外筒52との間のガス流路→外筒52と断熱体72’との間のガス流路を経て、上蓋22に収納されている圧媒ガス排出配管32’へと導かれるようになっている。
【0059】
このように構成される圧媒ガス浄化装置2でも、前記図1に示す圧媒ガス浄化装置1と同様に、HIP処理装置の本体高圧容器からの回収するアルゴンガス中の酸素を除去することができるとともに、高圧容器10’の冷却を円筒状胴部21の外周周りに装着された水冷ジャケット40によって行うことができる。なお、この圧媒ガス浄化装置2では、電気抵抗加熱ヒータ線60の交換に際し、上蓋22が装着された状態で円筒状胴部21を移動させるために、毎回、上蓋22に収納されている圧媒ガス排出配管32’の接続部分の切り離しを行う必要がある。
【0060】
図4は本発明のさらに別の実施形態による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置の構成を概略的に示す正面縦断面図である。
【0061】
前記1の圧媒ガス浄化装置1と異なる点について説明する。図4に示すように、本実施形態の圧媒ガス浄化装置3では、材質が金属もしくはセラミックスからなる内筒51’及び外筒52’により圧媒ガス流路形成部材50'が構成されている。これらの内筒51’の外周面と外筒52’の内周面との間に、酸素親和性の強い金属、例えばTiあるいはZrの小片が充填された酸素親和性の強い金属の充填層90が形成されている。そして、外筒52’の外周面にニクロム線からなる電気抵抗加熱ヒータ線91が巻回されている。92は熱電対である。下蓋30’’内には、圧媒ガス導入配管31、圧媒ガス排出配管32'及びヒータ電力供給用配線33’が収納されている。下蓋30’’と倒立コップ状胴部20とにより高圧容器10”が構成されている。
【0062】
このように構成される圧媒ガス浄化装置3では、HIP処理装置の本体高圧容器から高圧のアルゴンガスを回収するに際し、圧媒ガス導入配管31を経て高圧容器10’’内に流入したアルゴンガスは、内筒51の内側を上昇した後に方向反転し、前記電気抵抗加熱ヒータ線91によって加熱されている前記した酸素親和性の強い金属の充填層90内を該金属に接触しながら下降し、圧媒ガス排出口10bから圧媒ガス排出配管32'へと導かれる。これにより、高圧容器10’’内に流入したアルゴンガスは、該ガス中の酸素が除去される。
【0063】
次に、本発明の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置(以下、単に圧媒ガス供給回収装置ともいう)について説明する。
【0064】
図5は本発明の一実施形態による熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置の構成を概略的に示す図である。
【0065】
図5において、100はHIP装置の本体高圧容器である。111は高圧圧媒ガス源としての高圧Arガス集合装置、112は中圧圧媒ガス源としての中圧Arガス集合装置、113は低圧圧媒ガス源としての低圧Arガス集合装置である。この実施形態では、高圧Arガス集合装置111のガス圧力は30MPa超50MPa以下の範囲であり、中圧Arガス集合装置112のガス圧力は3MPa以上30MPa以下の範囲であり、低圧Arガス集合装置113のガス圧力は1MPa以下である。
【0066】
前記中圧Arガス集合装置112から前記HIP装置の本体高圧容器100に圧媒ガス供給ライン130が連絡している。この圧媒ガス供給ライン130は、上流側から順に、手動式塞止弁MV3、塞止弁V6、塞止弁V1、フィルタ161、圧縮機141、塞止弁V2、圧縮機142及び手動式塞止弁MV1を有している。
【0067】
また、HIP装置の本体高圧容器100から中圧Arガス集合装置112に圧媒ガス回収ライン131が連絡している。この圧媒ガス回収ライン131は、上流側(本体高圧容器100側)から順に、塞止弁V3、減圧調整器151、及び並列に接続された圧媒ガス浄化装置120,120’を有している。圧媒ガス浄化装置120のガス導入側には手動式塞止弁MV5が備えられ、ガス排出側には手動式塞止弁MV6が備えられている。同様に、圧媒ガス浄化装置120’のガス導入側には手動式塞止弁MV5’が備えられ、ガス排出側には手動式塞止弁MV6’が備えられている。
【0068】
なお、前記圧媒ガス浄化装置120,120’は、本実施形態では、前記図1に示される中圧レベル用の前述した構成の圧媒ガス浄化装置である。
【0069】
これらの2台の圧媒ガス浄化装置120,120’は、通常片方のみが使用され、前述した酸素親和性の強い金属からなる電気抵抗加熱ヒータ線の交換などの場合に操業中であってもガス浄化が中断しないように交互に切換えて運転可能なように、備えられている。圧媒ガス浄化装置120の運転時には、他方の圧媒ガス浄化装置120’の前後にある手動式塞止弁MV5’,MV6’が閉じられている。
【0070】
また、前記高圧Arガス集合装置111から前記圧媒ガス供給ライン130における前記圧縮機141と前記塞止弁V2との間に、手動式塞止弁MV2と塞止弁V4とを有する高圧圧媒ガス用供給ライン132が連絡している。
【0071】
また、前記低圧Arガス集合装置113から前記圧媒ガス供給ライン130における前記手動式塞止弁MV3と前記塞止弁V6との間に、手動式塞止弁MV4と圧縮機143とを有する低圧圧媒ガス用供給ライン133が連絡している。
【0072】
さらに、前記圧媒ガス回収ライン130における前記圧媒ガス浄化装置120,120’のガス排出側に位置する前記手動式塞止弁MV6,MV6’と前記塞止弁V6との間から前記低圧Arガス集合装置113に、塞止弁V7と減圧調整器162とを有する低圧圧媒ガス用回収ライン134が連絡している。
【0073】
また、135は圧媒ガス供給ライン130の最上流部に連絡している新ガス補給用ライン、136は塞止弁V5及び真空ポンプP1を有し、圧媒ガス回収ライン131の最上流部に連絡しているガス置換用真空引きラインである。137は塞止弁V11及び真空ポンプP2を有し、圧媒ガス回収ライン131における手動式塞止弁MV6,MV6’の出側部(低圧圧媒ガス用回収ライン134の最上流部)に連絡している圧媒ガス浄化装置用真空引きラインである。138は塞止弁V9を有し、高圧圧媒ガス用供給ライン132における塞止弁V4の出側部から圧媒ガス回収ライン131における塞止弁V3の入側部に連絡するラインである。また、G1〜G6は圧力計である。
【0074】
なお、前記圧媒ガス浄化装置用真空引きライン137の役目を説明すると、前記圧媒ガス浄化装置120について、前述した酸素親和性の強い金属からなる電気抵抗加熱ヒータ線の交換の際に高圧容器内に侵入して残存している空気を除去するため、交換終了後に、手動式塞止弁MV5,MV6’を閉じ、手動式塞止弁MV6と塞止弁V11を開き、真空ポンプP2を運転して前記空気を除去するようにしている。他方の圧媒ガス浄化装置120’についても同様である。
【0075】
以下、前記のように構成される本実施形態の圧媒ガス供給回収装置の動作について説明する。
【0076】
まず、通常、被処理品をHIP装置の本体高圧容器100内に収納後、本体高圧容器100の開閉に伴って混入した大気を除去するために、ガス置換用真空引きライン136によって本体高圧容器100内を真空引きする。さらに、本体高圧容器100内の残留空気を除去するため、低圧Arガス集合装置113からの0.3〜1MPaのアルゴンガスを低圧圧媒ガス用供給ライン133(ただし、圧縮機143は停止状態)及び圧媒ガス供給ライン130(ただし、手動式塞止弁MV3は閉じ、圧縮機141,142は停止状態)によって本体高圧容器100内に充填し、しかる後、塞止弁V10を開いて本体高圧容器100内のガスを大気放出する。このようないわゆるガス置換操作を1〜2回行う。このガス置換操作により、本体高圧容器100内の空気の濃度は数10ppmレベルとなる。
【0077】
次いで、各Arガス集合装置111〜113のガス圧力と本体高圧容器100内のガス圧力との差圧を利用して、低圧Arガス集合装置111、中圧Arガス集合装置112、高圧Arガス集合装置113からこの順にアルゴンガスを本体高圧容器100に充填する。
【0078】
まず、低圧Arガス集合装置111からのアルゴンガスを、低圧圧媒ガス用供給ライン133(ただし、圧縮機143は停止状態)及び圧媒ガス供給ライン130(ただし、手動式塞止弁MV3は閉じ、圧縮機141,142は停止状態)によって本体高圧容器100内に充填する。次いで、中圧Arガス集合装置112からのアルゴンガスを、圧媒ガス供給ライン130(ただし、圧縮機141,142は停止状態)によって本体高圧容器100内に充填する。しかる後、高圧Arガス集合装置113からのアルゴンガスを、高圧圧媒ガス用供給ライン132、及び圧媒ガス供給ライン130における塞止弁V2、圧縮機142(ただし、圧縮機142は停止状態)及び手動式塞止弁MV1を介して、本体高圧容器100内に充填する。
【0079】
次いで、圧縮機141,142を運転してアルゴンガスを本体高圧容器100に強制充填する。すなわち、前段の圧縮機141、又は前段の圧縮機141及び後段の圧縮機142を運転して、中圧Arガス集合装置112からのアルゴンガスを圧媒ガス供給ライン130によって本体高圧容器100内に充填する。このようにして、本体高圧容器100に本体高圧容器100内のガス圧力が100MPaとなるようにアルゴンガスが充填される。
【0080】
そして、本体高圧容器100内に収納された被処理品が所定の温度及び圧力にて所定時間保持された後、本体高圧容器100内のガス温度が当該高圧ガスを排出しても配管系の温度が安全である温度となった時点で、本体高圧容器100内のアルゴンガスのArガス集合装置112,113への回収を行う。
【0081】
まず、本体高圧容器100→圧媒ガス回収ライン131(塞止弁V3→減圧調整器151→手動式塞止弁MV5→圧媒ガス浄化装置120→手動式塞止弁MV6)→塞止弁V6→手動式塞止弁MV3の経路で、本体高圧容器100からのアルゴンガスを中圧Arガス集合装置112に回収する。このとき、圧媒ガス浄化装置120によって本体高圧容器100からのアルゴンガス中の酸素(不純物)が除去される。
【0082】
そして、本体高圧容器100内の圧力と中圧Arガス集合装置112の圧力とが均衡してガス流量が低下すると、塞止弁V6及び手動式塞止弁MV3を閉じ、塞止弁V7及び手動式塞止弁MV4を開き、本体高圧容器100→圧媒ガス回収ライン131→低圧圧媒ガス用回収ライン134(塞止弁V7→減圧調整器152)→手動式塞止弁MV4の経路で、本体高圧容器100からのアルゴンガスを低圧Arガス集合装置113に回収する。なお、必要に応じて、前記の均衡した時点で、圧縮機143を運転して、本体高圧容器100→圧媒ガス回収ライン131→塞止弁V7→減圧調整器152→圧縮機143→手動式塞止弁MV3の経路で、本体高圧容器100からのアルゴンガスを中圧Arガス集合装置112に回収することも可能である。
【0083】
このようにして、中圧Arガス集合装置112には、HIP処理に十分な清浄さを有したアルゴンガスを蓄えておくことができるとともに、本体高圧容器100から従来の3MPa程度までとは違って0.3MPa程度までの低圧で、かつ、圧媒ガス浄化装置120によってアルゴンガス中の酸素が除去されたアルゴンガスを低圧Arガス集合装置113に回収することができる。
【0084】
また、実操業では高圧Arガス集合装置111のガス量が多い方が、HIP処理のガス加圧時間を短くするのに有利である。そこで、HIP装置の加圧に各圧縮機が使用されていないときには、圧縮機143を運転して低圧Arガス集合装置113内のアルゴンガスを中圧Arガス集合装置112に充填すること、また、圧縮機141を運転して、手動式塞止弁MV3→塞止弁V6→塞止弁V1→フィルタ161→圧縮機141→塞止弁V4→手動式塞止弁MV2の経路で、中圧Arガス集合装置112内のアルゴンガスを高圧Arガス集合装置111に充填することがよい。
【0085】
また、中圧Arガス集合装置112内のガス量が不足している場合は、ほぼ同レベルの圧力の新ガスのボンベを前記新ガス補給ライン135に接続して、中圧Arガス集合装置112を常に満タンに近い状態としておくこともよい。このとき、圧縮機143を運転して、新ガス補給ライン135からのアルゴンガスを高圧Arガス集合装置113に補給することもよい。なお、高圧Arガス集合装置111内のアルゴンガスの浄化(酸素除去)を行う必要がある場合は、手動式塞止弁MV2→塞止弁V4→ライン138の塞止弁V9→塞止弁V3→減圧調整器151→手動式塞止弁MV5→圧媒ガス浄化装置120→手動式塞止弁MV6→塞止弁V1→フィルタ161→圧縮機141→塞止弁V4→手動式塞止弁MV2の経路により、高圧Arガス集合装置111内のアルゴンガスの浄化(酸素除去)を行うことができる。
【0086】
このように、圧媒ガス浄化装置120,120’は、基本的に中圧Arガス集合装置112のガス圧レベル、すなわち3〜30MPaの範囲のガス圧のラインに組み込むことが最適である。
【0087】
その理由は、高圧Arガス集合装置111の圧力レベルのラインでは、アルゴンガス中の酸素等の不純物は濃縮されているので、圧媒ガス浄化装置の高圧容器を、比較的小さな内容積のものが使用できるものの、高い耐圧性が必要となるために全体として剛健な構造とせざるをえないためである。また、低圧Arガス集合装置113の集合装置の圧力レベルのラインでは、圧媒ガス浄化装置の高圧容器を、耐圧性の点では簡素化が可能であるものの、大容積の高圧容器となるため、設置スペースの点で大幅に不利となるためである。このような点から、中圧の圧力レベルのラインに圧媒ガス浄化装置を設置することがよい。
【0088】
このように、本実施形態の圧媒ガス供給回収装置は、実用に供することのできる圧媒ガス浄化装置120,120’を備えている。したがって、従来と違って、20〜30回のHIP処理後に1回の割合でアルゴンガス源のアルゴンガス全量を捨てるということをなくすことができる。また、圧媒ガス源として、高圧Arガス集合装置111及び中圧Arガス集合装置112の他に、低圧のアルゴンガスを収容している低圧Arガス集合装置113を備え、該低圧Arガス集合装置113へもHIP装置の本体高圧容器100からのアルゴンガスを回収するように構成されている。したがって、HIP処理後の圧媒ガスの回収に際し、大気放出を開始するHIP装置の本体高圧容器100内のアルゴンガスの圧力を従来の3MPa程度から0.3MPa程度にまで引き下げることができ、前記従来の3MPa程度から大気放出する場合に比べて操業時間を大幅に延長することなく、アルゴンガスの廃棄量を大幅に減らすことができる。
【符号の説明】
【0089】
1,2,3…圧媒ガス浄化装置、
10,10’,10”…高圧容器
10a…圧媒ガス導入口 10b…圧媒ガス排出口
20…倒立コップ状胴部 20a…ねじ部
21…円筒状胴部
22…上蓋
30,30’,30”…下蓋 30a…ねじ部
31…圧媒ガス導入配管
32,32’,32”…圧媒ガス排出配管
33,33’…ヒータ電力供給用配線
34…プラグインコネクタ
40…水冷ジャケット 41…冷却水通路
50,50’…圧媒ガス流路形成部材
51,51’…内筒 52,52’…外筒
60…電気抵抗加熱ヒータ線 61…コネクタ 62,63…熱電対
70…ベース板 72,72’…断熱体
80…ガス浄化ユニット体
90…酸素親和性の強い金属の充填層
91…電気抵抗加熱ヒータ線(ニクロム線) 92…熱電対
100…HIP装置の本体高圧容器
111…高圧Arガス集合装置
112…中圧Arガス集合装置
113…低圧Arガス集合装置
120,120’…圧媒ガス浄化装置
130…圧媒ガス供給ライン
131…圧媒ガス回収ライン
132…高圧圧媒ガス用供給ライン
133…低圧圧媒ガス用供給ライン
134…低圧圧媒ガス用回収ライン
135…新ガス補給用ライン
141,142,143…圧縮機
151,152…減圧調整器
161…フィルタ
V1〜11…塞止弁 MV1〜MV4…手動式塞止弁
MV5,MV5’,MV6,MV6’…手動式塞止弁
P1,P2…真空ポンプ G1〜G6…圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスでなる圧媒ガスを用いて被処理品を高温高圧ガス雰囲気下で処理する熱間等方圧加圧装置へ圧媒ガスを供給及び回収する圧媒ガス供給回収装置に備えられ、圧媒ガスを導入して該圧媒ガス中の不純物として少なくとも酸素を除去する熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置であって、
圧媒ガス導入口及び圧媒ガス排出口がそれぞれ開設された高圧容器と、前記高圧容器の外側に装着されて該高圧容器を冷却する冷却手段と、前記高圧容器内に設けられ、前記圧媒ガス導入口から導入されて前記圧媒ガス排出口より排出される圧媒ガスの流路を形成する圧媒ガス流路形成部材と、前記圧媒ガス流路に沿って配置される不純物除去能を有する材料と、前記高圧容器内に設けられ、前記不純物除去能を有する材料を加熱する加熱手段と、を備えたことを特徴とする熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置。
【請求項2】
前記不純物除去能を有する材料が金属材料であり、当該金属材料からなる電気抵抗加熱ヒータ線を前記圧媒ガス流路に沿って配置することにより、前記不純物除去能を有する材料と前記加熱手段とを兼用するようになされていることを特徴とする請求項1記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置。
【請求項3】
前記圧媒ガス流路形成部材の材質がセラミックスからなり、該圧媒ガス流路形成部材の外周面に前記不純物除去能を有する金属材料からなる前記電気抵抗加熱ヒータ線が巻回されていることを特徴とする請求項2記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置。
【請求項4】
前記高圧容器が下蓋と、該下蓋に着脱可能に装着される倒立コップ状胴部とで構成されており、前記下蓋内に該高圧容器内部と連通する圧媒ガス導入配管及び圧媒ガス排出配管が収納されるとともに、前記電気抵抗加熱ヒータ線に電力を供給するためのヒータ電力供給用配線が該電気抵抗加熱ヒータ線に対して接続・切り離し可能に収納されていることを特徴とする請求項2又は3記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置。
【請求項5】
前記圧媒ガス流路形成部材と前記電気抵抗加熱ヒータ線とが一体に組み立てられてなるガス浄化ユニット体が前記下蓋上に載置されており、前記電気抵抗加熱ヒータ線のコネクタにプラグイン構造で接続される前記ヒータ電力供給用配線のプラグインコネクタが前記下蓋に取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置。
【請求項6】
前記加熱手段の温度を測定するための測温センサを少なくとも一つを備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス浄化装置を備え、不活性ガスでなる圧媒ガスを用いて被処理品を高温高圧ガス雰囲気下で処理する熱間等方圧加圧装置へ圧媒ガスを供給及び回収する圧媒ガス供給回収装置であって、
高圧の圧媒ガスを収容している高圧圧媒ガス源と、中圧の圧媒ガスを収容している中圧圧媒ガス源と、低圧の圧媒ガスを収容している低圧圧媒ガス源と、圧縮機を有し、前記中圧圧媒ガス源と前記熱間等方圧加圧装置とを連絡する圧媒ガス供給ラインと、前記圧媒ガス浄化装置を有し、前記熱間等方圧加圧装置と前記中圧圧媒ガス源とを連絡する圧媒ガス回収ラインと、前記高圧圧媒ガス源と圧媒ガス供給充填ラインとを連絡する高圧圧媒ガス用供給ラインと、前記低圧圧媒ガス源と前記圧媒ガス供給充填ラインとを連絡する低圧圧媒ガス用供給ラインと、前記圧媒ガス回収ラインの前記圧媒ガス浄化装置の圧媒ガス出側と前記低圧圧媒ガス源とを連絡する低圧圧媒ガス用回収ラインと、備えたことを特徴とする熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置。
【請求項8】
前記圧媒ガス回収ラインは前記圧媒ガス浄化装置を少なくとも2台有し、これらの圧媒ガス浄化装置が交互に切換え運転可能に設けられていることを特徴とする請求項7記載の熱間等方圧加圧装置用の圧媒ガス供給回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−179199(P2010−179199A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22573(P2009−22573)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】