説明

熱電発電装置

【課題】熱電変換モジュールを安定して保持しつつ、高い断熱性を確保して熱電変換モジュールの発電効率が低下するのを防止することができる熱電発電装置を提供すること。
【解決手段】熱電発電装置は、プレート41が、熱電変換モジュール27が嵌合される嵌合孔41aを有し、外管23の外周部23aに対向する一方の面41Aおよび冷却水管28の内周部28cに対向する他方の面に突起42a、42bが形成されるので、プレート41が、突起42a、42bによって熱伝導シート43、44を介して外管23および冷却水管28に点接触される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電発電装置に関し、特に、内燃機関から排出される排気ガスを利用して熱電発電を行う熱電発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の内燃機関から排出される排気ガス等には、熱エネルギーが含まれているため、排気ガスをそのまま捨てると熱エネルギーの無駄となる。そこで、排気ガスに含まれる熱エネルギーを熱電発電装置によって回収して電気エネルギーに変換し、例えば、バッテリに充電するようにしている。
【0003】
従来のこの種の熱電発電装置としては、内燃機関から排出された排気ガスが導入される排気管の外周部に熱電変換モジュールの高温側の一側面を対向させるとともに、熱電変換モジュールの低温側の他側面を冷却水が流通する冷却水管に対向させたものが知られている。
【0004】
この熱電変換モジュールは、半導体等の熱電変換素子、電極、高温側となる受熱基板および低温側となる放熱基板等を含んで構成されており、ゼーベック効果を利用して温度の高い排気ガスと温度の低い冷却水とにより、熱電変換モジュールの高温側と低温側との間に温度差を生じさせて発電を行うようになっている。
【0005】
この熱電変換モジュールは、保持部材によって保持されることにより、排気ガスの排気方向に沿って配列されている。この保持部材としては、例えば、熱電変換モジュールの全周を取り囲むようにして熱電変換モジュールが嵌合される嵌合孔を有する断熱材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に示す熱電変換素子は、高温側と低温側の温度差が大きい程、発電効率が向上する性質を有している。このため、熱電変換モジュールを断熱材によって保持して熱電変換モジュールを排気管と冷却水管(ウォータジャケット)との間に位置決めすることにより、断熱材を通して熱が移動するのを阻止し、熱電変換モジュールを通して熱の移動を行うことができ、発電効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−165560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の熱電発電装置にあっては、断熱材によって熱電変換モジュールを保持するようにしているが、断熱材の材料が明確に示されていない。断熱性を有する材料としては、無機鉱物や粘土系の材料が考えられるが、これらの材料は、耐熱性、および断熱性のバランスがよいものの、脆い性質を有しているため、熱電発電装置に加わる振動等によって断熱材の耐久性が悪化してしまい、熱電変換モジュールを安定して保持することができない。
【0009】
これに対して、断熱材として金属材料やセラミックス材料を用いれば、剛性が大きくなり、振動等に対して十分に耐えることができる。ところが、これらの材料の断熱材は、熱伝導性が高いため、排気ガスの熱の多くが断熱材を通して冷却水に流れてしまい、熱電変換モジュールの発電効率が悪化してしまう。
【0010】
また、断熱材として樹脂材料を用いた場合には、高温の排気ガスに晒される環境下では耐熱性の面で問題があり、排気系には使用困難である。また、セラミック繊維等のマット材を使用した場合には、耐熱性、断熱性を確保できるが、剛性が低いため、熱電変換モジュールを安定して保持することができない。
【0011】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、熱電変換モジュールを安定して保持しつつ、高い断熱性を確保して熱電変換モジュールの発電効率が低下するのを防止することができる熱電発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る熱電発電装置は、上記目的を達成するため、(1)内燃機関から排出された排気ガスが導入される排気管と、前記排気管と同軸上に設けられ、冷却水が流通する冷却水管と、一側面が前記排気管に対向するとともに他側面が前記冷却水管に対向し、前記一側面と前記他側面との温度差に応じて熱電発電を行う複数の熱電変換モジュールと、前記排気管と前記冷却水管との間に介装され、複数の前記熱電変換モジュールを保持する保持部材とを備えた熱電発電装置であって、前記保持部材が、前記熱電変換モジュールが嵌合される嵌合孔を有し、前記排気管に対向する面または前記冷却水管に対向する面の少なくとも一方の面に突起が形成されるものから構成されている。
【0013】
この熱電発電装置は、保持部材が、熱電変換モジュールが嵌合される嵌合孔を有し、排気管に対向する面または冷却水管に対向する少なくとも一方の面に突起が形成されるので、保持部材が突起によって排気管および冷却水管の少なくとも一方に点接触する。
【0014】
このため、保持部材と排気管および冷却水管との接触面積を少なくすることができ、保持部材を通して排気ガスと冷却水との間で余分な熱の移動が行われるのを防止して、熱電変換モジュールの発電効率が低下してしまうのを防止することができる。また、保持部材を通して排気ガスと冷却水との間で余分な熱の移動が行われることがないので、保持部材として熱伝導性が高い材料を用いることができ、保持部材の剛性を高くすることができる。
【0015】
この結果、熱電発電装置に振動等が加わった場合に保持部材の耐久性が悪化するのを防止することができ、保持部材によって熱電変換モジュールを排気管と冷却水管との間に安定して保持することができる。
【0016】
上記(1)に記載の熱電発電装置において、(2)前記保持部材が、金属材料またはセラミックス材料から構成されている。
【0017】
この熱電発電装置は、保持部材が、金属材料またはセラミックス材料から構成されるので、保持部材の剛性を高くすることができ、突起による点接触であっても振動等による耐久性が悪化するのを防止することができる。このため、熱電変換モジュールを排気管と冷却水管との間により一層安定して保持することができる。
【0018】
また、剛性が高い材料を用いても保持部材を通して排気ガスと冷却水との間で余分な熱の移動が行われることがないので、熱電変換モジュールの発電効率が低下してしまうのをより一層防止することができる。
【0019】
上記(1)または(2)に記載の熱電発電装置において、(3)前記保持部材の嵌合孔は、前記排気管を流れる排気ガスの排気方向に沿って配列され、前記嵌合孔の周縁に前記突起が形成されるものから構成されている。
【0020】
この熱電発電装置は、保持部材の嵌合孔は、排気管を流れる排気ガスの排気方向に沿って配列され、嵌合孔の周縁に突起が形成されるので、保持部材が排気方向に亘って排気管または冷却水管に点接触する。
【0021】
このため、排気方向に亘って保持部材を通して余分な熱の移動が行われるのを防止して、保持部材によって複数の熱電変換モジュールを安定して保持しつつ熱電変換モジュールの発電効率が低下するのを防止することができる。
【0022】
上記(1)〜(3)に記載の熱電発電装置において、(4)前記保持部材および前記熱電変換モジュールと前記排気管との間に高温側熱伝導シートが介装され、前記保持部材および前記熱電変換モジュールと前記冷却水管との間に低温側熱伝導シートが介装されるものから構成されている。
【0023】
この熱電発電装置は、保持部材および熱電変換モジュールと排気管との間に高温側熱伝導シートが介装され、保持部材および熱電変換モジュールと冷却水管との間に低温側熱伝導シートが介装されるので、熱電変換モジュールの一側面と排気管との密着性および熱電変換モジュールの他側面と冷却水管との密着性が向上して熱の伝達効率を向上させることができる。
【0024】
そして、突起が高温側熱伝導シートおよび低温側熱伝導シートを介して排気管および冷却水管の少なくとも一方に点接触するので、保持部材を通して排気ガスと冷却水との間で余分な熱の移動が行われることがなく、熱電変換モジュールの発電効率が低下してしまうのを防止することができる。
【0025】
これに加えて、保持部材を通して排気ガスと冷却水との間で余分な熱の移動が行われることがないので、保持部材として熱伝導性が高い材料を用いることができ、保持部材の剛性を高くすることができる。
【0026】
この結果、熱電発電装置に振動等が加わった場合に保持部材の耐久性が悪化するのを防止することができ、保持部材によって熱電変換モジュールを排気管と冷却水管との間に安定して保持することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、熱電変換モジュールを安定して保持しつつ、高い断熱性を確保して熱電変換モジュールの発電効率が低下するのを防止することができる熱電発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る熱電発電装置の第1の実施の形態を示す図であり、熱電発電装置を備えるエンジンの排気系の概略構成図である。
【図2】本発明に係る熱電発電装置の第1の実施の形態を示す図であり、熱電発電装置の側面断面図である。
【図3】本発明に係る熱電発電装置の第1の実施の形態を示す図であり、図2のA−A方向矢視断面図である。
【図4】本発明に係る熱電発電装置の第2の実施の形態を示す図であり、熱電発電モジュールの斜視図である。
【図5】本発明に係る熱電発電装置の第2の実施の形態を示す図であり、熱電発電装置の要部側面断面図である。
【図6】本発明に係る熱電発電装置の第2の実施の形態を示す図であり、プレートの上面図である。
【図7】本発明に係る熱電発電装置の第2の実施の形態を示す図であり、他の構成を有する熱電発電装置の要部側面断面図である。
【図8】本発明に係る熱電発電装置の第2の実施の形態を示す図であり、他の構成を有する熱電発電装置の要部側面断面図である。
【図9】本発明に係る熱電発電装置の第2の実施の形態を示す図であり、他の構成を有する熱電発電装置の要部側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る熱電発電装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本実施の形態では、熱電発電装置を、自動車等の車両に搭載される水冷式の多気筒の内燃機関、例えば4サイクルガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)に適用した場合について説明している。また、エンジンは、ガソリンエンジンに限定されるものではない。
図1〜図9は、本発明に係る熱電発電装置の一実施の形態を示す図である。
【0030】
まず、構成を説明する。
図1に示すように、自動車等の車両に搭載される内燃機関としてのエンジン1は、吸気系から供給される空気と燃料供給系から供給される燃料とを適宜の空燃比で混合して成る混合気を燃焼室に供給して燃焼させた後、この燃焼に伴って発生する排気ガスを排気系から大気に放出するようになっている。
【0031】
排気系は、エンジン1に取り付けられたエキゾーストマニホールド2と、このエキゾーストマニホールド2に球面継手3を介して連結された排気管4とを含んで構成されており、エキゾーストマニホールド2と排気管4とによって排気通路が形成されている。
【0032】
球面継手3は、エキゾーストマニホールド2と排気管4との適度な揺動を許容するとともに、エンジン1の振動や動きを排気管4に伝達させないか、あるいは減衰して伝達するように機能する。
【0033】
排気管4上には、2つの触媒5、6が直列に設置されており、この触媒5、6により排気ガスが浄化されるようになっている。
【0034】
この触媒5、6のうち、排気管4において排気ガスの排気方向の上流側に設置される触媒5は、所謂、スタートキャタリスタ(S/C)と呼ばれるものであり、排気管4において排気ガスの排気方向の下流側に設置される触媒6は、所謂、メインキャタリスタ(M/C)またはアンダーフロアキャタリスタ(U/F)と呼ばれるものである。
【0035】
これらの触媒5、6は、例えば三元触媒により構成されている。この三元触媒は、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)を一括して化学反応により無害な成分に変化させるといった浄化作用を発揮する。
【0036】
エンジン1の内部には、ウォータジャケットが形成されており、このウォータジャケットにはロングライフクーラント(LLC)と呼ばれる冷却液(以下、単に冷却水と言う)が充填されている。
【0037】
この冷却水は、エンジン1に取付けられた導出管8から導出された後、ラジエータ7に供給され、このラジエータ7から冷却水の還流管9を経てエンジン1に戻されるようになっている。
【0038】
ラジエータ7は、ウォータポンプ10によって循環される冷却水を外気との熱交換により冷却するものである。
【0039】
また、還流管9にはバイパス管12が連結されており、このバイパス管12と還流管9との間にはサーモスタット11が介装され、このサーモスタット11によって、ラジエータ7を流通する冷却水量とバイパス管12を流通する冷却水量とが調節されるようになっている。
【0040】
例えば、エンジン1の暖機運転時においてはバイパス管12側の冷却水量が増加されて暖機が促進されるようになっている。
【0041】
バイパス管12にはヒータ配管13が連結されており、このヒータ配管13の途中には、ヒータコア14が設けられている。このヒータコア14は、冷却水の熱を利用して車室内の暖房を行うための熱源である。
【0042】
このヒータコア14によって暖められた空気は、ブロアファン15によって車室内に導入されるようになっている。なお、ヒータコア14とブロアファン15とによりヒータユニット16が構成されている。
【0043】
また、ヒータ配管13には後述する熱電発電装置17に冷却水を供給する上流側配管18aが設けられており、熱電発電装置17と還流管9との間には熱電発電装置17から還流管9に冷却水を排出する下流側配管18bが設けられている。
【0044】
このため、熱電発電装置17において排熱回収動作(この排熱回収動作の詳細については後述する)が行われている場合には、下流側配管18bを流れる冷却水は、上流側配管18aを流れる冷却水の温度よりも高くなる。
【0045】
一方、エンジン1の排気系には、熱電発電装置17が設けられており、この熱電発電装置17は、エンジン1から排出される排気ガスの熱を回収し、排気ガスの熱エネルギーを電気エネルギーに変換するようになっている。
【0046】
図2、図3に示すように、熱電発電装置17は、エンジン1から排出された排気ガスGが導入される内管21と、内管21の外方に設けられ、内管21との間で受熱通路22を形成する排気管としての外管23とを備えている。
【0047】
内管21の上流端は、排気管4に連結されており、内管21の内部には排気管4から排気ガスGが導入される排気通路25が形成されている。内管21は、支持部材24を介して外管23に固定されており、外管23の下流端は、テールパイプ19に連結されている。
【0048】
このため、エンジン1から排気管4を通して内管21の排気通路25に排出された排気ガスGは、排気通路25を通してテールパイプ19に排出された後、テールパイプ19から外気に排出される。
また、熱電発電装置17は、熱電変換モジュール27と、外管23と同軸上に設けられた冷却部材としての筒状の冷却水管28とを備えている。
【0049】
図4に示すように、熱電変換モジュール27は、高温側の受熱部を構成する絶縁セラミックス製の受熱基板29と、低温側の放熱部を構成する絶縁セラミックス製の放熱基板30との間に、ゼーベック効果により温度差に応じた熱起電力を発生するN型熱電変換素子31およびP型熱電変換素子32が複数個設置されており、N型熱電変換素子31およびP型熱電変換素子32が電極33a、33bを介して交互に直列に接続されている。また、隣接する熱電変換モジュール27は、配線35を介して電気的に連結されている。
【0050】
この熱電変換モジュール27は、ステンレス等の金属材料またはアルミナ等のセラミックス材料からなる保持部材としてのプレート41に保持されており、このプレート41によって外管23と冷却水管28との間に介装されている。
【0051】
図5、図6に示すように、プレート41には嵌合孔41aが形成されており、この嵌合孔41aは、排気ガスGの排気方向に沿って一定の間隔で配列されている。
熱電変換モジュール27は、全周が嵌合孔41aに取り囲まれるようにして嵌合孔41aに嵌合されるようになっており、プレート41に保持されている。
【0052】
また、嵌合孔41aの周縁には突起42a、42bが形成されている。突起42aは、外管23の外周部23aに対向するプレート41の一方の面41Aに設けられており、プレート41の一方の面41Aから外管23に向かって突出している。
【0053】
また、突起42bは、冷却水管28の内周部28cに対向するプレート41の他方の面41Bに設けられており、プレート41の他方の面41Bから冷却水管28に向かって突出している。
【0054】
また、プレート41および熱電変換モジュール27と外管23の外周部23aとの間には高温側熱伝導シートとしての熱伝導シート43が介装されており、熱電変換モジュール27の受熱基板29および突起42aは、熱伝導シート43を介して外管23の外周部23aに接触している。
【0055】
また、プレート41および熱電変換モジュール27と冷却水管28の内周部28cとの間には低温側熱伝導シートとしての熱伝導シート44が介装されており、熱電変換モジュール27の放熱基板30および突起42bは、熱伝導シート44を介して冷却水管28の内周部28cに接触している。
【0056】
これら熱伝導シート43、44は、例えば、繊維状金属を主材料とする弾性シートから構成されており、外管23と熱電変換モジュール27との密着性および冷却水管28と熱電変換モジュール27との密着性を高める機能を有している。なお、図2では、受熱基板29および放熱基板30を省略して熱電変換モジュール27を簡略化している。
【0057】
この熱電変換モジュール27は、受熱基板29と放熱基板30との温度差に応じて熱電発電を行うことにより、ケーブル35を介してバッテリに電力を供給するようになっている。
【0058】
なお、熱電変換モジュール27は、略正方形のプレート形状をしており、外管23および冷却水管28の間に密着させる必要があるため、外管23および冷却水管28は、図3に示すように、多角形に形成されている。
【0059】
また、外管23および冷却水管28は、円形であってもよい。この場合には、熱電変換モジュール27の受熱基板29および放熱基板30等を湾曲させるようにすればよい。
【0060】
冷却水管28は、上流側配管18aに連結される冷却水導入部28aおよび下流側配管18bに連結される冷却水排出部28bを備えている。
【0061】
この冷却水管28は、冷却水導入部28aから冷却水管28に導入された冷却水が排気ガスGの排気方向と同方向に流れるように、冷却水導入部28aに対して冷却水排出部28bが排気方向下流側に設けられている。このため、冷却水は、受熱通路22に流れる排気ガスGの流れと同方向に流れる。
【0062】
図2に示すように、内管21には複数の連通孔36が形成されており、この連通孔36は、内管21の内部と受熱通路22とを連通している。この連通孔36は、内管21の円周方向に等間隔に形成されているとともに、内管21内を流れる排気ガスGの排気方向、すなわち、内管21の延在方向に沿って配列されている。なお、連通孔36は、等間隔に形成されるものに限定されない。
【0063】
また、支持部材24には支持部材24の円周方向に亘って等間隔に連通孔24aが形成されており、受熱通路22は、連通孔24aを通してテールパイプ19に連通している。なお、連通孔24aは、等間隔に形成されるものに限定されない。
【0064】
また、内管21には開閉弁26が設けられており、この開閉弁26は、内管21の下流端に設けられ、内管21を開閉するように外管23に回動自在に取付けられている。この開閉弁26は、排気通路25を流れる排気ガスGの圧力の大きさに応じて自動的に開閉するものである。
【0065】
すなわち、開閉弁26は、排気ガスGの圧力が低いエンジン1のアイドリング時や低負荷走行時には、図2に実線で示すように、内管21を閉塞することにより、内管21に導入された排気ガスGを受熱通路22に導入する。
【0066】
また、開閉弁26は、排気ガスGの圧力が高いエンジン1の高負荷走行時には、図2に破線で示すように、内管21を解放する。このため、熱電発電装置17は、排気ガスGの背圧が高くなるのを防止して、排気性能が低下するのを防止することができる。
【0067】
次に、作用を説明する。
エンジン1の冷間始動時には、触媒5、6、エンジン1の冷却水の全てが低温(外気温程度)になっている。
【0068】
この状態からエンジン1が始動されると、エンジン1の始動に伴いエンジン1からエキゾーストマニホールド2を経て排気管4に、例えば300〜400℃の排気ガスGが排出されることになり、2つの触媒5、6が排気ガスGにより昇温されることになる。
また、冷却水がラジエータ7を通らずにバイパス管12を経てエンジン1に戻されることによって暖機運転が行われることになる。
【0069】
エンジン1の冷間始動時には、例えば、エンジン1のアイドリングが行われて排気ガスGの圧力が低いため、開閉弁26が閉じた状態となる。このため、排気管4から内管21の排気通路25に導入された排気ガスGが受熱通路22に導入され、受熱通路22を通過する排気ガスGによって冷却水管28を流通する冷却水Wが昇温され、エンジン1の暖機が促される。
【0070】
また、エンジン1の暖機後のエンジン1が低負荷走行時には、排気ガスGの温度が高温となっても排気ガスGの圧力が低いため、開閉弁26が閉じた状態となる。このため、排気管4から内管21の排気通路25に導入された排気ガスGが受熱通路22に導入される。このときには、熱電変換モジュール27によって排気ガスGの熱エネルギーを圧力エネルギーに効率よく変換される。
【0071】
また、エンジン1の高負荷走行時にはエンジン1の冷却性能を高める必要がある。エンジン1の高負荷走行時には、例えば、エンジン1が高回転となって排気ガスGの圧力が高くなるため、内管21に導入された排気ガスGの圧力が高くなり、開閉弁26が解放される。
【0072】
開閉弁26が解放されると、排気通路25とテールパイプ19が連通し、排気ガスGは、受熱通路22を流れることがなく、排気通路25からテールパイプ19に直接、排出される。このため、高温の排気ガスGによって冷却水管28を流通する冷却水Wが昇温されることがない。
【0073】
このとき、サーモスタット11によってバイパス管12と還流管9との連通が遮断されるので、エンジン1から導出管8を介して導出された冷却水がラジエータ7を介して還流管9に導出される。
【0074】
このため、エンジン1に低温の冷却水が供給され、エンジン1の冷却性能を高めることができる。
【0075】
また、エンジン1の高負荷走行時には開閉弁26が解放されるので、排気通路25を流れる排気ガスGの背圧が高くなることがなく、排気ガスGの排気性能が低下するのを防止することができる。
【0076】
次いで、暖機終了後のエンジン1の低負荷走行時の熱電発電装置17の作用を説明する。
排気ガスGの圧力が小さいと、開閉弁26によって内管21が閉塞され、排気通路25とテールパイプ19との連通が遮断される。
【0077】
本実施の形態の熱電発電装置17は、プレート41が、熱電変換モジュール27が嵌合される嵌合孔41aを有し、外管23の外周部23aに対向する一方の面41Aおよび冷却水管28の内周部28cに対向する他方の面に突起42a、42bが形成されるので、プレート41の突起42a、42bが熱伝導シート43、44を介して外管23および冷却水管28に点接触される。
【0078】
このため、プレート41と外管23および冷却水管28との接触面積を少なくすることができ、プレート41を通して排気ガスGと冷却水Wとの間で余分な熱の移動が行われるのを防止することができる。このため、熱電変換モジュール27に熱を集中させることができ、熱電変換モジュール27の発電効率が低下してしまうのを防止することができる。
【0079】
また、プレート41を通して排気ガスGと冷却水Wとの間で余分な熱の移動が行われることがないので、プレート41として熱伝導性が高い金属材料やセラミック材料等を用いることができ、プレート41の剛性を高くすることができる。
【0080】
この結果、熱電発電装置17に振動等が加わった場合にプレート41の耐久性が悪化するのを防止することができ、プレート41によって熱電変換モジュール27を外管23と冷却水管28との間に安定して保持することができる。
【0081】
また、プレート41の材料を金属材料またはセラミックス材料等から構成することができるため、プレート41の剛性を高くすることができ、突起42a、42bによる点接触であっても振動等による耐久性が悪化するのを防止することができる。このため、熱電変換モジュール27を外管23と冷却水管28との間により一層安定して保持することができる。
【0082】
また、剛性が高い材料を用いてもプレート41を通して排気ガスGと冷却水Wとの間で余分な熱の移動が行われることがないので、熱電変換モジュール27の発電効率が低下してしまうのをより一層防止することができる。
【0083】
また、本実施の形態のプレート41は、嵌合孔41aが受熱通路22を流れる排気ガスの排気方向に沿って配列され、嵌合孔41aの周縁に突起42a、42bが形成されるので、プレート41の排気方向に亘って外管23の外周部23aおよび冷却水管28の内周部28cに突起42a、42bを介してプレート41を点接触させることができる。
【0084】
このため、排気方向に亘ってプレート41を通して余分な熱の移動が行われるのを防止して、プレート41によって複数の熱電変換モジュール27を安定して保持しつつ熱電変換モジュール27の発電効率が低下するのを防止することができる。
【0085】
また、本実施の形態では、プレート41および熱電変換モジュール27と外管23の外周部23aの間およびプレート41および熱電変換モジュール27と冷却水管28の内周部28cとの間に熱伝導シート43、44を介装し、熱電変換モジュール27の受熱基板29と外管23との密着性および熱電変換モジュール27の放熱基板30と冷却水管28との密着性を向上させて熱の伝達効率を向上させることができる。
【0086】
なお、本実施の形態では、プレート41の一方の面41Aおよび他方の面41Bに突起42a、42bを形成しているが、両方に形成しなくてもよい。プレート41の一方の面41Aおよび他方の面41Bに突起が形成されていればよい。この場合には、高温の排気ガスにGに晒されるプレート41の一方の面41aに突起が形成されることが好ましい。
【0087】
図7〜図9は、他の構成を有する熱電発電装置を示す図であり、本実施の形態と同一の構成には同一番号を付して説明を省略する。
図7に示す熱電発電装置51は、突起に代えてプレート41の嵌合孔41aの周縁に絶縁性のアルミナマット52a、52bを設けている。
【0088】
このようにすれば、アルミナマット52a、52bを介してプレート51と外管23および冷却水管28とを接触させることができるので、プレート41の剛性を高くしつつ、プレート51に断熱性を付与することができる。
【0089】
図8に示す熱電発電装置61は、突起に代えて、プレート41の他方の面41Bのプレート41の嵌合孔41aの周縁に絶縁性のゴム板62を設け、ゴム板62を冷却水管28の内周部28cに接触させている。
【0090】
このようにすれば、ゴム板62を介してプレート51と外管23および冷却水管28とを接触させることができるので、プレート41の剛性を高くしつつ、プレート51に断熱性を付与することができる。
【0091】
図9に示す熱電発電装置71は、放熱基板30の端部を延長して延長部30aを形成し、この延長部30aに開口を形成し、この開口に延長部にコの字形状の枠部材72の両端を嵌合することにより、枠部材72を介して隣接する熱電変換モジュール27を連結したものである。
【0092】
このようにすれば、プレート41を廃止して熱電変換モジュール27を排気方向に配列することができる。また、外管23と枠部材72との間には距離があり、外管23と枠部材72との間の空間が断熱層となるので、枠部材72として、PPSや芳香族PA等の耐熱性の樹脂から構成することができる。このようにすれば、排気ガスと冷却水との間で余分な熱の移動が行われるのを防止して、熱電変換モジュール27の発電効率が低下してしまうのを防止することができる。
【0093】
以上のように、本発明に係る熱電発電装置は、熱電変換モジュールを安定して保持しつつ、高い断熱性を確保して熱電変換モジュールの発電効率が低下するのを防止することができるという効果を有し、内燃機関から排出される排気ガスを利用して熱電発電を行う熱電発電装置等として有用である。
【符号の説明】
【0094】
1 エンジン(エンジン)
17 熱電発電装置
23 外管(排気管)
27 熱電変換モジュール
28 冷却水管
28c 内周部
36 連通孔
41 プレート(保持部材)
41a 嵌合孔
41A 一方の面
41B 他方の面
42a、42b 突起
43 熱伝導シート(高温側熱伝導シート)
44 熱伝導シート(低温側熱伝導シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスが導入される排気管と、前記排気管と同軸上に設けられ、冷却水が流通する冷却水管と、一側面が前記排気管に対向するとともに他側面が前記冷却水管に対向し、前記一側面と前記他側面との温度差に応じて熱電発電を行う複数の熱電変換モジュールと、前記排気管と前記冷却水管との間に介装され、複数の前記熱電変換モジュールを保持する保持部材とを備えた熱電発電装置であって、
前記保持部材が、前記熱電変換モジュールが嵌合される嵌合孔を有し、前記排気管に対向する面または前記冷却水管に対向する面の少なくとも一方の面に突起が形成されることを特徴とする熱電発電装置。
【請求項2】
前記保持部材が、金属材料またはセラミックス材料からなることを特徴とする請求項1に記載の熱電発電装置。
【請求項3】
前記保持部材の嵌合孔は、前記排気管を流れる排気ガスの排気方向に沿って配列され、前記嵌合孔の周縁に前記突起が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電発電装置。
【請求項4】
前記保持部材および前記熱電変換モジュールと前記排気管との間に高温側熱伝導シートが介装され、前記保持部材および前記熱電変換モジュールと前記冷却水管との間に低温側熱伝導シートが介装されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱電発電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−110218(P2013−110218A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252858(P2011−252858)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】