燃え代設計計算のデータ入力および表示装置
【課題】燃え代設計計算におけるデータ入力、入力結果表示、および手順の見通しの悪さを、ソフトの単純化と新規概念の導入により解決する手段を提供する。
【解決手段】燃え代設計計算時、構造部材断面寸法情報から燃え代情報を分離することにより構造部材断面定義方法の単純化をし、その分離された燃え代情報を建築物の作り出す内部の空間に外部の空間の概念を導入し内外部の燃え代情報とし、さらに構造部材と内外部空間の使われ方による耐火仕上げ指定情報の条件の組み合わせにより構造部材の燃え方の違いに新規の考えを導入することにより設計者の検討の補助となる表示方法を自動生成する。
【解決手段】燃え代設計計算時、構造部材断面寸法情報から燃え代情報を分離することにより構造部材断面定義方法の単純化をし、その分離された燃え代情報を建築物の作り出す内部の空間に外部の空間の概念を導入し内外部の燃え代情報とし、さらに構造部材と内外部空間の使われ方による耐火仕上げ指定情報の条件の組み合わせにより構造部材の燃え方の違いに新規の考えを導入することにより設計者の検討の補助となる表示方法を自動生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災によって被災し木造建築物が炎にさらされ燃えた場合、建築物の荷重を支える柱、梁、筋交い(以後、柱、梁、筋交いを構造部材と記す)の断面積が小さくなり構造部材の強度が落ち、建築物の倒壊の危険性や倒壊により周辺へ危害が拡大しないよう建築物にたいして一定の安全を確保できるような判断基準を設計者に提示する燃え代設計計算装置のデータ入力法とその表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物は、木造に限らず鉄筋コンクリート構造、鉄骨構造等の建築物に自重、地震力、風圧力、積雪荷重等の外力または振動が加わった際、その建築物が倒壊または危険な状態に至らず十分に安全であるか否かを電子計算機(以後、電子計算機の規模の大小、周辺機器を含め、PCと記す)を用いて構造部材にかかる圧縮応力、引張応力、曲げ応力、せん断応力等を構造設計計算ソフトと呼ばれるPCを稼働させるソフトを用い計算し、総合的に建築物の強度の安全性が評価されている。
【0003】
これまでの構造設計計算ソフトによる木造建築物の強度的安全性評価は、あくまでも木造建築物が、火災に会っていない通常の状態と通常での使用の安全評価が中心であった。しかしながら木造建築物には、火災が起きた場合を想定し燃え代設計計算が、平成12年建設省告示1358号第2でさらに厳しく求められ、構造図面と計算書の整合性についてもさらに厳しく要求されている。
【0004】
特許公開2002−259462では、木造建築物の構造部材が燃え建物を支える断面積が小さくなった場合、構造部材の想定される燃焼面の組み合わせの幾つかのパターンを事前に用意し、設計者が、構造部材の部材一本ごとに事前に用意された燃焼面の組み合わせのパターン(以後、燃焼面の組み合わせのパターンを燃え代パターンと記す)を選択し、燃え代設計計算の構造設計計算ソフトに必要なデータとしてPCに入力し、燃え代設計計算を行い強度的安全性や危険性を表示させる装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2002−259462
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】平成12年建設省告示1358号 第2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
建築設計者が、PCの構造設計計算ソフトを利用した燃え代設計計算で木造建築物の強度的安全性評価をする場合、建築設計者は、建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する断面表(以後、建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する表を断面表と記す)、建築物の室の用途とその室の用途内外の床、壁、天井等の仕上げ荷重を定義する室用途/仕上げ荷重表(以後、建築物の室の用途とその室の用途内外の床、壁、天井等の仕上げ荷重を定義する表を室用途/仕上げ荷重表と記す)および構造部材の一つ一つを個別に仕上げ指定できる個別仕上げ指定(以後、構造部材の一つ一つを個別に仕上げ指定できる表を個別仕上げ指定と記す)と呼ばれる3種の表に燃え代設計計算に必要なデータを入力する。断面表は、構造部材が一義的に定義できる構造部材の断面寸法を入力指定し、室用途/仕上げ荷重表は、木造建築物内外部に作り出される空間である炊事場、居間、寝室等の部屋の用途(以後、建築物内外部に作り出される空間である炊事場、居間、寝室等の部屋の用途を室用途と記す)の境を囲む床、壁、天井および構造部材の仕上げ荷重を入力指定し、個別仕上げ指定は、床、壁、天井および構造部材の仕上げ荷重および仕上げをする面の指定を一つ一つ個別に詳細に指定入力することができる。
【0008】
設計者は、従来、燃え代設計計算の検討の過程で木造建築物が火災に遭遇し耐火仕上げがなされていないために燃焼してしまう構造部材の面(以後、耐火仕上げがなされていないために燃焼してしまう構造部材の面を焼失面と記す)と耐火仕上げがなされているため燃焼しない面(以後、耐火仕上げがなされているため燃焼しない面を非焼失面と記す)の情報を入力する際、建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する断面表に入力する構造部材の断面寸法定義データに対して、構造部材の焼失前の断面が同一断面でありながら燃え代パターンが相違するデータは、火災によって焼失面が生じ焼失前の断面より小さくなり構造部材の断面寸法が異なったものとなったと言う考えから、火災に遭遇する前、同一の構造部材の断面寸法にもかかわらず構造部材の断面定義データと燃え代パターンを一組のデータとし、燃え代パターンごとに構造部材の断面寸法が相違するものとして断面表に入力しており、データ入力および入力結果表示に見通しの悪さがあった。本発明は、このデータ入力および入力結果表示の見通しの悪さの解決手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、設計者が建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する断面表に入力する構造部材の断面寸法定義データに対して、構造部材の断面が同一断面でありながら燃え代パターンが相違するデータは、火災によって焼失面が生じ焼失前の断面より小さくなり構造部材の断面寸法が異なったものであると言う考えから、火災に遭遇する前、同一の構造部材の断面寸法にもかかわらず構造部材の断面定義データと燃え代パターンを一組のデータとし燃え代パターンごとに構造部材の断面寸法が相違するものとして断面表に入力定義していたが、断面表に構造部材の焼失前の断面寸法定義データのみを入力定義し燃え代パターンのデータを断面表から分離することにより、燃え代パターンのデータが相違しても焼失前同一断面の構造部材は、同一の構造部材として断面表へ一入力定義ですむようにし、そのために従来断面表に入力定義していた燃え代パターンの欠落する燃え代パターンの情報を建築物の部屋の用途である室用途とその室用途に使われている床、壁、天井等の仕上げ荷重を定義する室用途/仕上げ荷重表と呼ばれる表で、列方向に建築物内部の空間である炊事場、居間、寝室等の部屋の用途を定義するための室用途と行方向にその室用途の空間内の床、壁、天井の仕上げ指定(以後、室用途の空間内の床、壁、天井の仕上げ指定を内外装仕上げ指定と記す)をする内外装仕上げ指定および構造部材の柱、梁、筋交いの仕上げ指定(以後、構造部材の柱、梁、筋交いの仕上げ指定を構造部材仕上げ指定と記す)をする構造部材仕上げ指定で構成される直交表となっている室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いと室用途との交点に入力する仕上げ荷重を表す数値にマイナス符号の数値を入力しマイナスの符号を耐火仕上げの情報として入力することとした。
【0010】
さらに請求項2の発明では、室用途/仕上げ荷重表の建築構造物の内外部の空間である室用途に建築物の外部の空間全体、すなわち、一般的には建築物をとりまく庭に相当する部分を一つの室用途ととらえ外部と呼ばれる空間概念を炊事場、居間、寝室等の建築物内部の部屋の用途と同じ室用途の概念として室用途/仕上げ荷重表に導入し、室用途/仕上げ荷重表の室用途の外部と構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いとの交点に入力する仕上げ荷重を表す数値にマイナス符号の数値を入力しマイナスの符号を耐火仕上げの情報として入力することにより建築物の外装仕上げの耐火情報とした。
【0011】
次に、構造部材仕上げ指定の柱には、追加条件aとして、矩形の柱の四辺の一辺を考えた場合、その柱の一辺の一部でも耐火仕上げされていない場合、すなわち、その柱の一辺の一部でも室用途/仕上げ荷重表の室用途と構造部材仕上げ指定の柱との交点の数値がマイナスでない数値の室用途に面した場合は、その柱一辺全面を焼失面とすると言う条件を追加条件aとして加え、追加条件bとして梁に加える条件は、建築図面上一般的にZ軸方向を重力方向とするが、梁を基準にZ軸正方向の反重力方向の梁面を梁の上面、Z軸負方向の重力方向の梁面を梁の下面、Y方向に長手の軸方向を持つ梁にはX軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、あるいはX方向に長手の軸方向を持つ梁にはY軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、多層階の建物の場合、梁の上面を上階と下階の室用途の境とし、(1)梁の上面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値の一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の上面全面が焼失面とし、(2)梁の左右側面については、梁の側面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の側面は焼失面とし、(3)梁の下面は下面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、下面全面が焼失面とし、(4)吹き抜けになっている室用途の中間梁は、一つの室用途に梁の全周が囲まれているため、その吹き抜けになっている中間梁が囲われている室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値で耐火仕上げされている、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がある場合を除き全面を焼失面とし、(1)から(4)の4条件を梁に対する追加条件bとして加え、さらに、追加条件cとして円柱および筋交いに対しては、円柱あるいは筋交いが面した全ての室用途/仕上げ荷重表の室用途の構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いの指定数値に一部でも耐火仕上げ指定がない、すなわち、構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いの指定数値に一部でもマイナスの符号がない室用途に面した場合、円柱あるいは筋交いの全周を焼失面とし、すなわち、円柱と筋交いは、全ての周および面が耐火仕上げされた室用途に面している、すなわち、全ての室用途の構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いにマイナスの符号がある数値の場合を除き全面を焼失面とすることを追加条件cとして加える。
【0012】
請求項3の発明では、以上に述べた構造部材の柱、梁、筋交いに対する追加条件a、追加条件bおよび追加条件cと断面表、室用途/仕上げ荷重表および伏図、軸図と呼ばれる室用途の構造部材の配置の位置関係情報図から情報を組み合わせ構造部材の燃え代パターンを自動生成し伏図、軸図の構造部材の柱、梁筋交いに対して焼失面を太線で、非焼失面を細線でPC画面に表示し、設計者は、PCの表示画面に表示された伏図、軸図を参考にPC画面に表示された構造部材の燃え代パターンの確認を行いながら構造部材を個別に仕上げ指定できる個別仕上げ指定で訂正する。個別仕上げ指定は、設計者が法、建築費用および技術的事項を総合的に判断し技術者の意思として自動生成された燃え代パターンに変更を加え決定訂正したことから自動生成された燃え代パターンの条件に優先して燃え代設計計算のデータとされ、その後、設計者によって火災発生から鎮火までの構造部材の燃焼時間の長短を想定した構造部材の焼失厚さに相当する燃え代pを入力され、自動生成された燃え代パターに設計者が最終訂正した燃え代パターンをもとに構造部材の燃え代p減少した断面寸法をPCより生成し、火災被災後に構造部材にかかる荷重等の条件から構造部材の圧縮応力、引張応力、せん断応力、曲げ応力等の許容応力度の検定値を求め燃え代設計計算の安全を評価し、燃え代設計計算の結果は、伏図、軸図あるいは単純化した伏図、軸図上の柱、梁、筋交いのわきに許容応力度を表示した応力図、あるいは、全ての柱、梁、筋交いの許容応力度を数値で表示した検定表と呼ばれる一覧にまとめたものに表示し、被災後許容応力度の検定値が1.0以上である場合には、応力図あるいは検定表に許容応力度の検定値を超えた構造部材を太線あるいは赤色等で表示し、さらにその許容応力度の検定値を赤色太字で表示し点滅させることによって設計者に注意が喚起され、この応力図および検定表を基に設計者は、構造部材の寸法の安全性の検討および耐火仕上げの見直し等の検討を行い燃え代設計計算結果に問題がなくなるまで繰り返し処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により設計者が入力確認する断面表、室用途/仕上げ荷重表の役割分担が明確になったことにより設計時の見通しが良くなり設計者の作業負荷の軽減が図れることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の燃え代設計計算フローの明図。
【図2】本発明の実施するための形態における断面表入力例の説明図。
【図3】同じ実施するための形態における部材配置、室用途の伏図に関する説明図。
【図4】同じ実施するための形態における部材配置、室用途の軸図に関する説明図。
【図5】同じ実施するための形態における室用途/仕上げ荷重表の説明図。
【図6】同じ実施するための形態における柱の燃え代pの説明図。
【図7】同じ実施するための形態における図3の柱4d付近を拡大した説明図。
【図8】同じ実施するための形態における柱の燃え代パターン全種類の説明図。
【図9】同じ実施するための形態における梁に対する追加条件bを説明するための図10をもとに描いた燃え代パターンの説明図。
【図10】図9の追加条件bの燃え代パターンを説明するための室用途/仕上げ荷重表の室用途と構造部材仕上げ指定の梁の仕上げ荷重の例の説明図。
【図11】同じ実施するための形態における梁の全燃え代パターン種類の説明図。
【図12】同じ実施するための形態における柱個別仕上げ指定図の説明図。
【図13】同じ実施するための形態における図12中の仕上げ面のu、d、l、r規定の説明図。
【図14】同じ実施するための形態における梁個別仕上げ指定図(図示なし)梁仕上げ面のu、d、l、r規定の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の燃え代設計計算のデータ入力および表示装置を具体化した実施形態について図1から図14に基づいて説明する。図1は、燃え代設計計算の手順をフローにしたもので、最初に全体の流れを説明し後に各々の流れの説明を行う。燃え代設計計算は、図1のフロー図に示すように構造設計計算Stp1と燃え代設計計算Stp2で構成され、Stp1とStp2でデータが共有されるため一連の設計計算動作として行われることが多い。図1のフロー図においてStp1の構造設計計算部分は、設計条件・部材設定のStp1−1、部材配置のStp1−2、室用途指定・荷重設定のStp1−3、応力解析(結果)のStp1−4、断面算定(結果)のStp1−5の断面算定を行い判定Stp1−6で構造設計計算の断面算定に問題があれば、Stp1−1に戻り、問題点がなくなるまでStp1−1、Stp1−2、Stp1−3の構造設計計算の諸条件の変更を行い判定Stp1−6で構造設計計算の断面算定に問題がなくなるまで繰り返される。
【0016】
次にStp1の構造設計計算完了後、Sep2の燃え代設計計算に進み、燃え代の設定Stp2−1、追加条件a,b,c 燃え代パターン自動生成Stp2−2、室用途/仕上げ荷重表耐火荷重設定確認Stp2−3、個別仕上げ指定確認変更Stp2−4、断面算定のStp2−5の処理を行い判定Stp2−6で燃え代設計の断面算定に問題があればSep1の構造設計計算部分にもどり設計条件・部材設定のStp1−1から室用途指定・荷重設定のStp1−3で諸条件を変更し再度構造設計と燃え代設計を行い、Stp2−5の断面算定に問題がなくなるまで繰り返され、燃え代設計の断面算定Stp2−5に問題がなくなると判定Stp2−6を経て燃え代設計が完了するフローとなる。
【0017】
以下に図1のフローの各ステップを詳細に説明する。燃え代設計計算を行うには、Stp1の構造設計計算段階とStp2の燃え代設計計算段階を分けて計算しても良いが、Stp2の燃え代設計計算において使われる基本的な構造部材の断面寸法定義データ等は、Stp1の構造設計計算のStp1−1の設計条件・部材設定でデータとして入力され、さらに構造設計計算の結果を燃え代設計計算において利用するために構造設計計算後燃え代設計計算を一貫の計算で行うことが多い。建築構造物に使われる全ての構造部材の各部断面寸法を設定定義するためにSet1−1の設計条件・部材設定では、図2に示すような断面表がPC画面に表示されPC画面上から構造部材の寸法を入力する。図2に示した断面表は一例で、入力方法および表示方法は、構造部材の断面形状の寸法定義方法およびPC記憶装置の定義方法によって様々となるが、構造部材の断面形状が一義的に定義できる寸法で入力される。図2では、矩形断面をもった構造部材の各辺長である縦と横の辺長をコンマで区切り寸法が入力される方式となっている。構造部材を定義するために縦横等の複数の数値を入力する場合の寸法数値の区切りの入力、表示方法は、図2の様にコンマである必要はなく、一義的に数値間の区切りをPCが判別できればどの様な方法でも良く円柱であれば、円柱の直径を意味する例えばDを数値の前に付し構造部材の定義数字として入力しても良い。また、図1の流れの中で断面表の入力見落としがあれば作業途中で追加することが出来る。
【0018】
従来の燃え代設計計算では、構造設計計算のソフトを利用していると言うことから、構造設計計算結果に大きな影響を与える構造部材が燃焼し建築物を支える構造部材の断面寸法が小さくなる現象をとらえて、火災に被災する前同一断面寸法の構造部材にもかかわらず、被災により燃え被災前後の構造部材は断面寸法が異なる別の構造部材とみなし燃え代パターンごとに図2の断面表に断面寸法の相違するものとして断面表に定義していた。本発明では、図2の断面表は、被災前の構造部材の断面寸法のみの定義とした。この図2の火災被災前同一断面寸法一定義とした断面表と後述する図5の室用途/仕上げ荷重表および後述する追加条件a、追加条件b、追加条件cの組み合わせ、燃え代パターンを自動生成することによりPCの記憶場所および入力画面が整理され設計者の設計中の思考見通しが改善されている。
【0019】
図1のStp1−1の設計条件・部材設定で図2断面表の断面寸法定義データ入力後、Stp1−2の部材配置に進み構造設計計算をするために既に入力されている図3の平面図に相当する伏図または図4の側面図に相当する軸図と呼ばれる建築構造モデルをPC画面上に呼び出し、構造モデル各部の構造部材の配置と断面寸法を指定する。柱と梁の断面寸法指定の場合には図3の伏図で全ての柱、梁で指定する。例えば柱であれば図3の4aをクリックすると図2の断面表が表示されその図2の断面表から柱4aに要求される断面寸法を選び出し、梁であれば6aをクリックし図2の断面表から6aの梁の断面寸法を指定する。筋交いについては、図3の伏図に表示できないため図3伏図の側面図に相当する図4軸図の梁15をクリックし図2の断面表から梁15がどの様な断面寸法をもった筋交いであるかを指定してゆく。
【0020】
次にStp1−3の室用途指定・荷重設定を行う。Stp1−3室用途・荷重設定は、図5の室用途/仕上げ荷重表に仕上げ荷重情報を入力することで行う。従来、この図5室用途/仕上げ荷重表は、列方向に建築物内のある空間が炊事場1、居間2、寝室3等の部屋の用途を定義するための室用途と行方向に床、壁、天井の仕上げを指定する内外装仕上げ指定および構造部材の仕上げを指定する構造部材仕上げ指定で構成される直交表となっているが、本発明では、図5の室用途に建築物の外の空間すなわち屋外を定義する外部と言う概念を室用途に追加している。図5の室用途/仕上げ荷重表に外部と言う概念を加えることにより、建築物の内外全ての空間の仕上げ荷重を定義することができる。
【0021】
具体的な室用途の指定方法は、図3の4a、4b、4c、4dで囲まれた空間が炊事場1であると定義したい場合、柱4a、4b、4c、4d、4aと柱で囲まれる空間を一巡するようにクリックし図5の室用途/仕上げ荷重表を表示させ室用途の空白の欄に炊事場1と入力する。同様に居間2は、柱5b、5c、5e、4d、5b、寝室3は、柱4b、5a、5b、4c、4bの各々の柱をクリックし室用途の定義画面に居間2、寝室3と入力し図3の伏図の空間の室用途を定義する。本発明では室用途の外部は、必ず必要である概念であるため、内部の室用途を定義すると自動的に室用途欄に定義され表示されるが、柱4a、4b、5a、5b、5c、5d、5e、4d、4aをクリックし建築構造物の内外を区別する閉空間を指定することもできる。
【0022】
図5の室用途/仕上げ荷重表に室用途の入力定義を行うと同時に、図5の行方向の内外装仕上げ指定および構造部材仕上げ指定の各々の床、壁、天井、柱、梁、筋交いに設計者が必要と考えている仕上げ荷重の数値を入力する。図5の列方向の室用途と行方向の内外装仕上げ指定の交点は、各室用途に施される床、壁、天井の1平方メートル当たりの仕上げ荷重を表し、同じく行方向の構造部材仕上げ指定は、各室用途に施される柱、梁、筋交いに施される1平方メートル当たりの仕上げ荷重を表している。
【0023】
本発明では、図5の室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定に仕上げ荷重を入力する際、耐火仕上げを施さず仕上げのみ場合には正の数字、すなわちプラスマイナスの符号を付けず、仕上げもしない場合には、数値を入力せず空白とし、耐火仕上げをする場合には、マイナスの符号を付けた数値を入力するものとする。実際の構造設計計算および燃え代設計計算では、図5室用途/仕上げ荷重表の数値は、各構造部材に掛かる荷重を計算するために使われるため負の仕上げ荷重はあり得ないのでマイナスの符号は、耐火仕上げがなされているか否かを論理上区別する情報と解釈し計算処理され、プログラム上の荷重設定計算の際には、絶対値を取り正の数値として計算することとなる。以上までが図1のStp1構造設計計算段階で燃え代設計計算に必要なデータを入力過程である。
【0024】
次にStp1構造設計計算を行い通常使用での建築物の安全性を確認した後にStp2の燃え代設計計算は、Stp1の構造設計計算の結果を利用し行われるため図2断面表の構造部材の寸法と図5の室用途/仕上げ荷重表の情報およびStp1の構造設計計算結果の各部応力等の情報を燃え代設計計算に引き渡す。その後、図1のStp2の燃え代設計計算においては、構造部材が被災した場合の火災発生から鎮火までの構造部材の燃焼時間を想定した構造部材の焼失厚さに相当する燃え代pを設計者の検討時間に合わせStp2-1の燃え代p設定で入力設定する。この燃え代pの意味は、図6において、柱7は、縦y、横yの辺を持った角柱を考えた場合、柱7の一面7−1が、燃え代pで被災し燃えた場合、構造設計計算時は、縦横yの寸法の断面で応力計算され断面算定されるが、燃え代設計計算に際しては、柱7が縦y、横y−pの寸法の断面で計算されることを示している。
【0025】
次に、本発明では、詳細な構造部材の燃焼面のパターンをPCから自動で生成させるために、図1のStp2−2の追加条件a,b,c燃え代パターン自動生成に進み、柱、梁、筋交いに対して追加の条件、追加条件a、追加条件b、追加条件cの三つの条件を加える。構造部材仕上げ指定の柱には、追加条件aとして、矩形の柱の四辺の一辺を考えた場合、その柱の一辺の一部でも耐火仕上げされていない場合、すなわち、その柱の一辺の一部でも室用途/仕上げ荷重表の室用途と構造部材仕上げ指定の柱との交点の数値がマイナスでない数値の室用途に面した場合は、その柱一辺全面を焼失面とすると言う条件を加える。
【0026】
例えば、図3の4dの柱の部分を説明するために部分拡大した図7で説明する。図3および図7には、各々X軸とY軸の座標軸が描かれているがこの座標軸は、図3、図7で一致して描かれており、XY軸の作り出す平面は、地平面と平行方向すなわち床面と同方向とする。図3および図7は、図5の室用途/仕上げ荷重表に記載されたマイナス符号の数値の意味と追加条件aを適用し描かれており、柱の周囲が太線と細線で描かれていが、太線は、火災被災時燃えて燃え代pだけ炭化する状態を象徴するため太線で表し、細線は、耐火仕上げのために燃えないことを表している。この太線細線での表示方法は、本発明でPCの画面に表示される際にも焼失面、非焼失面を区別する表示として適用されている。柱4dは、炊事場1、居間2、外部17に面し炊事場1と居間2は壁6cで隔てられており、炊事場1および居間2は、壁6jおよび6gによって外部17と隔てられている。図7において柱4dの面4d−1は、図5の室用途/仕上げ荷重表の室用途の炊事場1と構造部材仕上げ材指定の柱の数値の交点がマイナスの数値であり室用途の外部17の構造部材仕上げ材指定の柱もマイナスの数値となっており、柱の面4d−1全てが、耐火仕上げのある室用途に面しているため、非燃焼面となっている。一方、面4d−2面は、炊事場1の柱面には、構造部材仕上げ材指定にマイナスの数値であるが、室用途の居間2の構造部材仕上げ材指定の柱には仕上げ指定の数値がなく、すなわちマイナスの指定がなく燃焼面となるため追加条件aにより面4d−2は、一面全体が燃焼面となる。図3の柱は、図5の室用途/仕上げ荷重表に示された数値が追加条件aを満足するよう全ての柱が、太線と細線で描かれている。追加条件aでの焼失面、非焼失面の柱の燃え代パターンは、室用途/仕上げ荷重表のマイナスの符号の有無と室用途の配置の組み合わせで図8に示す16種類が自動生成されPC画面に表示され、燃え代設計計算の断面データとして使用されることとなる。
【0027】
次に、建築図面上一般的にZ軸方向を重力方向とするが、梁を基準にZ軸正方向の反重力方向の梁面を梁の上面、Z軸負方向の重力方向の梁面を梁の下面、Y方向に長手の軸方向を持つ梁にはX軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、あるいはX方向に長手の軸方向を持つ梁にはY軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、多層階の建物の場合、梁の上面を上階と下階の室用途の境とし、構造部材仕上げ指定の梁には、追加条件bとして、(1)梁の上面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値の一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の上面全面が焼失面とし、(2)梁の左右側面については、梁の側面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の側面は焼失面とし、(3)梁の下面は下面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、下面全面が焼失面とし、(4)吹き抜けになっている室用途の中間梁は、一つの室用途に梁の全周が囲まれているため、その吹き抜けになっている中間梁が囲われている室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値で耐火仕上げされている、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がある場合を除き全面を焼失面とし、(1)から(4)の4条件を梁に対する追加条件bとする。
【0028】
追加条件bの例として図9で説明する。図9は、梁8に対し梁8の上面8−1に上階の床10があり、上階の梁の上面8−1上の壁11で上階の室用途が上室9−1と上室9−4に分かれ、下階は梁の下面8−4上の壁12で室用途が下室9−2と下室9−3に分かれているとする。梁8の上面8−1は、図10の室用途/仕上げ荷重表の室用途の上室9−1と上室9−4の構造部材仕上げ指定の梁にマイナスの数値の耐火指定があるため全面非燃焼面となり、側面8−2は、下室9−2の構造部材仕上げ指定の梁に数値が記載されておらず耐火指定がないため焼失面となり、側面8−3は、下室9−3の構造部材仕上げ指定の梁にマイナスの数値の耐火指定があるため全面非燃焼面となり、下面8−4は、下室9−3には、構造部材仕上げ指定の梁にマイナスの数値の耐火指定があるが、下室9−2の構造部材仕上げ指定の梁にマイナスの数値の耐火仕上げがないため下面8−4全面が焼失面となっている。追加条件bから梁は図11に示す8種類の燃え代パターンを自動生成することとなる。
【0029】
さらに追加条件cとして円柱および筋交いに対しては、円柱あるいは筋交いが面した全ての室用途/仕上げ荷重表の室用途の円柱あるいは筋交いに対し一部でも耐火仕上げ指定がない場合は、全周を焼失面とする。すなわちは円柱と筋交いは、全ての面が耐火仕上げされている場合を除き全面を焼失面とする。
【0030】
以上に述べた柱、梁、筋交い等の追加条件a、追加条件b、追加条件cおよび例として図5や図10に示した室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いの荷重指定の数値のマイナス符号有無と部屋の室用途の配置関係の条件の組み合わせより本発明の燃え代設計計算に必要な燃焼によって減少した断面寸法と表示の焼失面パターンを自動生成し、PC画面に燃え代パターンを表示し燃え代設計計算の断面情報とする。
【0031】
次に図1の室用途/仕上げ荷重表耐火荷重設定確認Stp2−3に入り、設計者は、自動生成された図3伏図の柱の燃え代パターンを見ながら、図1のStp1−3で入力した図5室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定の柱の耐火仕上げの状態が、設計者の意図通りであることを最終確認する。さらに図1の個別仕上げ指定確認変更Stp2−4に進み、最終確認の際に自動生成した柱の燃え代パターンの柱が、設計者の意図と違っている場合には、設計者は意図と相違している柱をダブルクリックすることにより図12に示す柱個別仕上げ指定を呼び出し、図12の仕上げ面を指定し訂正することができる。同様に梁、筋交いについても確認を行い、図4の伏図と図5の室用途/仕上げ荷重表を比較確認し梁、筋交いの個別仕上げ指定を呼び出し訂正する。この際、柱、梁および筋交いの個別仕上げ指定は、設計者の意思で自動生成された燃え代パターンを変更するため全ての室用途/仕上げ荷重表により発生される燃え代パターンに優先して燃え代設計計算のデータとして使用されることとなる。
【0032】
前述した柱の個別仕上げ指定方法は、図12の最下段にある仕上面のu、d、l、rにチェックを入れること意によって指定する。図12柱の仕上げ面の上下左右を示すu、d、l、rは、図13に示すように柱13を基準にXY座標のY軸の正の方向の面をu、負の方向の面をd、Y軸の正方向に向かってX軸の負の方向を左面l、X軸の正の方向を右面rとなるよう柱の上下左右が決められている。図12の例では、uとrにチェックが入っており、チェックを入れることによりuとrの面に耐火仕上げをしたことを示し、図13に示すように非焼失面がuとrの細線で、焼失面がd、lの二面の太線として示されている。梁については、図14に示すように軸図の表現している方向によって異なるが、横軸はX軸あるいはY軸を示し、梁14を基準にZ軸方向の正方向の面を梁の上面u、負の方向の面を梁の下面d、X軸あるいはY軸の負の方向の面を梁の左側面l、X軸あるいはY軸の正の方向の面を梁の右側面rの個別仕上げ指定の仕上げ面を規定している。
【0033】
次にStp2−5断面算定に入り燃え代設計計算の結果を表示させる。自動で生成させた燃え代パターンと個別仕上げ指定を基に燃え代pを平成12年建設省告示1358号でも示されている時間と燃え代pとの関係で燃え代pを変えることにより、構造部材の断面積、断面計数および建築部材にかかる荷重等から構造部材の圧縮応力、引張応力、せん断応力、曲げ応力等から許容応力度の検定値を求め燃え代設計計算の安全を評価する事が出来る。燃え代設計計算の結果は、伏図、軸図あるいは単純化した伏図、軸図上の柱、梁、筋交いのわきに許容応力度を表示した応力図に被災後許容応力度の検定値を表示し検定値が1.0以上である場合には、応力図に許容応力度の検定値を超えた構造部材を太線あるいは赤色等で表示し、さらにその許容応力度の検定値を赤色太字で表示し点滅させることによって設計者に注意を喚起することができる方法とする。あるいは、全ての柱、梁、筋交いを検定表と呼ぶ一覧にまとめたものを表示することもできる。この検定値表においてもPCの画面上に許容応力度の検定値を超えた構造部材を太線で表示し、さらにその許容応力度の検定値を赤色太字で表示し点滅させることによって設計者に注意を喚起することができる方法とする。
【0034】
この応力図および検定表を基に設計者は、構造部材の寸法の安全性の検討および耐火仕上げの見直し等の検討を再度行い問題が無ければ、燃え代設計計算は完了し、問題を発見した場合には、構造設計計算の図1のStp1−1に戻り、構造部材の図2の断面表、図5の室用途/仕上げ荷重表あるいは図12の個別仕上げ指定に変更を加え燃え代設計計算に問題がなくなるまで繰り返し処理を行う。
【符号の説明】
【0035】
Stp1 構造設計計算
Stp1−1 設計条件・部材設定
Stp1−2 部材配置
Stp1−3 室用途指定・荷重設定
Stp1−4 応力解析(結果)
Stp1−5 断面算定(結果)
Stp1−6 構造設計計算の判定
Stp2 燃え代設計計算
Stp2−1 燃え代p設定
Stp2−2 追加条件a,b,c 燃え代パターン自動生成
Stp2−3 室用途/仕上げ荷重表耐火荷重設定確認
Stp2−4 個別仕上げ指定確認変更
Stp2−5 断面算定
Stp2−6 燃え代設計計算の判定
1 炊事場
2 居間
3 寝室
4a 炊事場柱
4b 炊事場寝室間柱
4c 炊事場寝室居間間柱
4d 炊事場居間間柱
5a 寝室外部間柱
5b 寝室居間間柱
5c 居間外部間柱
5d 居間外部間柱
5e 居間外部間柱
6a 梁
6b 梁
6c 梁
6d 梁
6e 梁
6f 梁
6g 梁
6h 梁
6i 梁
6j 梁
6k 梁
6m 梁
7 柱
7−1 柱の燃え代面
8 梁
8−1 梁上面
9−1 上室
9−2 下室
9−3 下室
9−4 上室
10 上質の床
11 上階壁
12 下階壁
13 柱
14 梁
15 筋交い
16 筋交い
17 外部
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災によって被災し木造建築物が炎にさらされ燃えた場合、建築物の荷重を支える柱、梁、筋交い(以後、柱、梁、筋交いを構造部材と記す)の断面積が小さくなり構造部材の強度が落ち、建築物の倒壊の危険性や倒壊により周辺へ危害が拡大しないよう建築物にたいして一定の安全を確保できるような判断基準を設計者に提示する燃え代設計計算装置のデータ入力法とその表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物は、木造に限らず鉄筋コンクリート構造、鉄骨構造等の建築物に自重、地震力、風圧力、積雪荷重等の外力または振動が加わった際、その建築物が倒壊または危険な状態に至らず十分に安全であるか否かを電子計算機(以後、電子計算機の規模の大小、周辺機器を含め、PCと記す)を用いて構造部材にかかる圧縮応力、引張応力、曲げ応力、せん断応力等を構造設計計算ソフトと呼ばれるPCを稼働させるソフトを用い計算し、総合的に建築物の強度の安全性が評価されている。
【0003】
これまでの構造設計計算ソフトによる木造建築物の強度的安全性評価は、あくまでも木造建築物が、火災に会っていない通常の状態と通常での使用の安全評価が中心であった。しかしながら木造建築物には、火災が起きた場合を想定し燃え代設計計算が、平成12年建設省告示1358号第2でさらに厳しく求められ、構造図面と計算書の整合性についてもさらに厳しく要求されている。
【0004】
特許公開2002−259462では、木造建築物の構造部材が燃え建物を支える断面積が小さくなった場合、構造部材の想定される燃焼面の組み合わせの幾つかのパターンを事前に用意し、設計者が、構造部材の部材一本ごとに事前に用意された燃焼面の組み合わせのパターン(以後、燃焼面の組み合わせのパターンを燃え代パターンと記す)を選択し、燃え代設計計算の構造設計計算ソフトに必要なデータとしてPCに入力し、燃え代設計計算を行い強度的安全性や危険性を表示させる装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2002−259462
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】平成12年建設省告示1358号 第2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
建築設計者が、PCの構造設計計算ソフトを利用した燃え代設計計算で木造建築物の強度的安全性評価をする場合、建築設計者は、建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する断面表(以後、建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する表を断面表と記す)、建築物の室の用途とその室の用途内外の床、壁、天井等の仕上げ荷重を定義する室用途/仕上げ荷重表(以後、建築物の室の用途とその室の用途内外の床、壁、天井等の仕上げ荷重を定義する表を室用途/仕上げ荷重表と記す)および構造部材の一つ一つを個別に仕上げ指定できる個別仕上げ指定(以後、構造部材の一つ一つを個別に仕上げ指定できる表を個別仕上げ指定と記す)と呼ばれる3種の表に燃え代設計計算に必要なデータを入力する。断面表は、構造部材が一義的に定義できる構造部材の断面寸法を入力指定し、室用途/仕上げ荷重表は、木造建築物内外部に作り出される空間である炊事場、居間、寝室等の部屋の用途(以後、建築物内外部に作り出される空間である炊事場、居間、寝室等の部屋の用途を室用途と記す)の境を囲む床、壁、天井および構造部材の仕上げ荷重を入力指定し、個別仕上げ指定は、床、壁、天井および構造部材の仕上げ荷重および仕上げをする面の指定を一つ一つ個別に詳細に指定入力することができる。
【0008】
設計者は、従来、燃え代設計計算の検討の過程で木造建築物が火災に遭遇し耐火仕上げがなされていないために燃焼してしまう構造部材の面(以後、耐火仕上げがなされていないために燃焼してしまう構造部材の面を焼失面と記す)と耐火仕上げがなされているため燃焼しない面(以後、耐火仕上げがなされているため燃焼しない面を非焼失面と記す)の情報を入力する際、建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する断面表に入力する構造部材の断面寸法定義データに対して、構造部材の焼失前の断面が同一断面でありながら燃え代パターンが相違するデータは、火災によって焼失面が生じ焼失前の断面より小さくなり構造部材の断面寸法が異なったものとなったと言う考えから、火災に遭遇する前、同一の構造部材の断面寸法にもかかわらず構造部材の断面定義データと燃え代パターンを一組のデータとし、燃え代パターンごとに構造部材の断面寸法が相違するものとして断面表に入力しており、データ入力および入力結果表示に見通しの悪さがあった。本発明は、このデータ入力および入力結果表示の見通しの悪さの解決手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、設計者が建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する断面表に入力する構造部材の断面寸法定義データに対して、構造部材の断面が同一断面でありながら燃え代パターンが相違するデータは、火災によって焼失面が生じ焼失前の断面より小さくなり構造部材の断面寸法が異なったものであると言う考えから、火災に遭遇する前、同一の構造部材の断面寸法にもかかわらず構造部材の断面定義データと燃え代パターンを一組のデータとし燃え代パターンごとに構造部材の断面寸法が相違するものとして断面表に入力定義していたが、断面表に構造部材の焼失前の断面寸法定義データのみを入力定義し燃え代パターンのデータを断面表から分離することにより、燃え代パターンのデータが相違しても焼失前同一断面の構造部材は、同一の構造部材として断面表へ一入力定義ですむようにし、そのために従来断面表に入力定義していた燃え代パターンの欠落する燃え代パターンの情報を建築物の部屋の用途である室用途とその室用途に使われている床、壁、天井等の仕上げ荷重を定義する室用途/仕上げ荷重表と呼ばれる表で、列方向に建築物内部の空間である炊事場、居間、寝室等の部屋の用途を定義するための室用途と行方向にその室用途の空間内の床、壁、天井の仕上げ指定(以後、室用途の空間内の床、壁、天井の仕上げ指定を内外装仕上げ指定と記す)をする内外装仕上げ指定および構造部材の柱、梁、筋交いの仕上げ指定(以後、構造部材の柱、梁、筋交いの仕上げ指定を構造部材仕上げ指定と記す)をする構造部材仕上げ指定で構成される直交表となっている室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いと室用途との交点に入力する仕上げ荷重を表す数値にマイナス符号の数値を入力しマイナスの符号を耐火仕上げの情報として入力することとした。
【0010】
さらに請求項2の発明では、室用途/仕上げ荷重表の建築構造物の内外部の空間である室用途に建築物の外部の空間全体、すなわち、一般的には建築物をとりまく庭に相当する部分を一つの室用途ととらえ外部と呼ばれる空間概念を炊事場、居間、寝室等の建築物内部の部屋の用途と同じ室用途の概念として室用途/仕上げ荷重表に導入し、室用途/仕上げ荷重表の室用途の外部と構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いとの交点に入力する仕上げ荷重を表す数値にマイナス符号の数値を入力しマイナスの符号を耐火仕上げの情報として入力することにより建築物の外装仕上げの耐火情報とした。
【0011】
次に、構造部材仕上げ指定の柱には、追加条件aとして、矩形の柱の四辺の一辺を考えた場合、その柱の一辺の一部でも耐火仕上げされていない場合、すなわち、その柱の一辺の一部でも室用途/仕上げ荷重表の室用途と構造部材仕上げ指定の柱との交点の数値がマイナスでない数値の室用途に面した場合は、その柱一辺全面を焼失面とすると言う条件を追加条件aとして加え、追加条件bとして梁に加える条件は、建築図面上一般的にZ軸方向を重力方向とするが、梁を基準にZ軸正方向の反重力方向の梁面を梁の上面、Z軸負方向の重力方向の梁面を梁の下面、Y方向に長手の軸方向を持つ梁にはX軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、あるいはX方向に長手の軸方向を持つ梁にはY軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、多層階の建物の場合、梁の上面を上階と下階の室用途の境とし、(1)梁の上面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値の一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の上面全面が焼失面とし、(2)梁の左右側面については、梁の側面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の側面は焼失面とし、(3)梁の下面は下面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、下面全面が焼失面とし、(4)吹き抜けになっている室用途の中間梁は、一つの室用途に梁の全周が囲まれているため、その吹き抜けになっている中間梁が囲われている室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値で耐火仕上げされている、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がある場合を除き全面を焼失面とし、(1)から(4)の4条件を梁に対する追加条件bとして加え、さらに、追加条件cとして円柱および筋交いに対しては、円柱あるいは筋交いが面した全ての室用途/仕上げ荷重表の室用途の構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いの指定数値に一部でも耐火仕上げ指定がない、すなわち、構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いの指定数値に一部でもマイナスの符号がない室用途に面した場合、円柱あるいは筋交いの全周を焼失面とし、すなわち、円柱と筋交いは、全ての周および面が耐火仕上げされた室用途に面している、すなわち、全ての室用途の構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いにマイナスの符号がある数値の場合を除き全面を焼失面とすることを追加条件cとして加える。
【0012】
請求項3の発明では、以上に述べた構造部材の柱、梁、筋交いに対する追加条件a、追加条件bおよび追加条件cと断面表、室用途/仕上げ荷重表および伏図、軸図と呼ばれる室用途の構造部材の配置の位置関係情報図から情報を組み合わせ構造部材の燃え代パターンを自動生成し伏図、軸図の構造部材の柱、梁筋交いに対して焼失面を太線で、非焼失面を細線でPC画面に表示し、設計者は、PCの表示画面に表示された伏図、軸図を参考にPC画面に表示された構造部材の燃え代パターンの確認を行いながら構造部材を個別に仕上げ指定できる個別仕上げ指定で訂正する。個別仕上げ指定は、設計者が法、建築費用および技術的事項を総合的に判断し技術者の意思として自動生成された燃え代パターンに変更を加え決定訂正したことから自動生成された燃え代パターンの条件に優先して燃え代設計計算のデータとされ、その後、設計者によって火災発生から鎮火までの構造部材の燃焼時間の長短を想定した構造部材の焼失厚さに相当する燃え代pを入力され、自動生成された燃え代パターに設計者が最終訂正した燃え代パターンをもとに構造部材の燃え代p減少した断面寸法をPCより生成し、火災被災後に構造部材にかかる荷重等の条件から構造部材の圧縮応力、引張応力、せん断応力、曲げ応力等の許容応力度の検定値を求め燃え代設計計算の安全を評価し、燃え代設計計算の結果は、伏図、軸図あるいは単純化した伏図、軸図上の柱、梁、筋交いのわきに許容応力度を表示した応力図、あるいは、全ての柱、梁、筋交いの許容応力度を数値で表示した検定表と呼ばれる一覧にまとめたものに表示し、被災後許容応力度の検定値が1.0以上である場合には、応力図あるいは検定表に許容応力度の検定値を超えた構造部材を太線あるいは赤色等で表示し、さらにその許容応力度の検定値を赤色太字で表示し点滅させることによって設計者に注意が喚起され、この応力図および検定表を基に設計者は、構造部材の寸法の安全性の検討および耐火仕上げの見直し等の検討を行い燃え代設計計算結果に問題がなくなるまで繰り返し処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により設計者が入力確認する断面表、室用途/仕上げ荷重表の役割分担が明確になったことにより設計時の見通しが良くなり設計者の作業負荷の軽減が図れることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の燃え代設計計算フローの明図。
【図2】本発明の実施するための形態における断面表入力例の説明図。
【図3】同じ実施するための形態における部材配置、室用途の伏図に関する説明図。
【図4】同じ実施するための形態における部材配置、室用途の軸図に関する説明図。
【図5】同じ実施するための形態における室用途/仕上げ荷重表の説明図。
【図6】同じ実施するための形態における柱の燃え代pの説明図。
【図7】同じ実施するための形態における図3の柱4d付近を拡大した説明図。
【図8】同じ実施するための形態における柱の燃え代パターン全種類の説明図。
【図9】同じ実施するための形態における梁に対する追加条件bを説明するための図10をもとに描いた燃え代パターンの説明図。
【図10】図9の追加条件bの燃え代パターンを説明するための室用途/仕上げ荷重表の室用途と構造部材仕上げ指定の梁の仕上げ荷重の例の説明図。
【図11】同じ実施するための形態における梁の全燃え代パターン種類の説明図。
【図12】同じ実施するための形態における柱個別仕上げ指定図の説明図。
【図13】同じ実施するための形態における図12中の仕上げ面のu、d、l、r規定の説明図。
【図14】同じ実施するための形態における梁個別仕上げ指定図(図示なし)梁仕上げ面のu、d、l、r規定の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の燃え代設計計算のデータ入力および表示装置を具体化した実施形態について図1から図14に基づいて説明する。図1は、燃え代設計計算の手順をフローにしたもので、最初に全体の流れを説明し後に各々の流れの説明を行う。燃え代設計計算は、図1のフロー図に示すように構造設計計算Stp1と燃え代設計計算Stp2で構成され、Stp1とStp2でデータが共有されるため一連の設計計算動作として行われることが多い。図1のフロー図においてStp1の構造設計計算部分は、設計条件・部材設定のStp1−1、部材配置のStp1−2、室用途指定・荷重設定のStp1−3、応力解析(結果)のStp1−4、断面算定(結果)のStp1−5の断面算定を行い判定Stp1−6で構造設計計算の断面算定に問題があれば、Stp1−1に戻り、問題点がなくなるまでStp1−1、Stp1−2、Stp1−3の構造設計計算の諸条件の変更を行い判定Stp1−6で構造設計計算の断面算定に問題がなくなるまで繰り返される。
【0016】
次にStp1の構造設計計算完了後、Sep2の燃え代設計計算に進み、燃え代の設定Stp2−1、追加条件a,b,c 燃え代パターン自動生成Stp2−2、室用途/仕上げ荷重表耐火荷重設定確認Stp2−3、個別仕上げ指定確認変更Stp2−4、断面算定のStp2−5の処理を行い判定Stp2−6で燃え代設計の断面算定に問題があればSep1の構造設計計算部分にもどり設計条件・部材設定のStp1−1から室用途指定・荷重設定のStp1−3で諸条件を変更し再度構造設計と燃え代設計を行い、Stp2−5の断面算定に問題がなくなるまで繰り返され、燃え代設計の断面算定Stp2−5に問題がなくなると判定Stp2−6を経て燃え代設計が完了するフローとなる。
【0017】
以下に図1のフローの各ステップを詳細に説明する。燃え代設計計算を行うには、Stp1の構造設計計算段階とStp2の燃え代設計計算段階を分けて計算しても良いが、Stp2の燃え代設計計算において使われる基本的な構造部材の断面寸法定義データ等は、Stp1の構造設計計算のStp1−1の設計条件・部材設定でデータとして入力され、さらに構造設計計算の結果を燃え代設計計算において利用するために構造設計計算後燃え代設計計算を一貫の計算で行うことが多い。建築構造物に使われる全ての構造部材の各部断面寸法を設定定義するためにSet1−1の設計条件・部材設定では、図2に示すような断面表がPC画面に表示されPC画面上から構造部材の寸法を入力する。図2に示した断面表は一例で、入力方法および表示方法は、構造部材の断面形状の寸法定義方法およびPC記憶装置の定義方法によって様々となるが、構造部材の断面形状が一義的に定義できる寸法で入力される。図2では、矩形断面をもった構造部材の各辺長である縦と横の辺長をコンマで区切り寸法が入力される方式となっている。構造部材を定義するために縦横等の複数の数値を入力する場合の寸法数値の区切りの入力、表示方法は、図2の様にコンマである必要はなく、一義的に数値間の区切りをPCが判別できればどの様な方法でも良く円柱であれば、円柱の直径を意味する例えばDを数値の前に付し構造部材の定義数字として入力しても良い。また、図1の流れの中で断面表の入力見落としがあれば作業途中で追加することが出来る。
【0018】
従来の燃え代設計計算では、構造設計計算のソフトを利用していると言うことから、構造設計計算結果に大きな影響を与える構造部材が燃焼し建築物を支える構造部材の断面寸法が小さくなる現象をとらえて、火災に被災する前同一断面寸法の構造部材にもかかわらず、被災により燃え被災前後の構造部材は断面寸法が異なる別の構造部材とみなし燃え代パターンごとに図2の断面表に断面寸法の相違するものとして断面表に定義していた。本発明では、図2の断面表は、被災前の構造部材の断面寸法のみの定義とした。この図2の火災被災前同一断面寸法一定義とした断面表と後述する図5の室用途/仕上げ荷重表および後述する追加条件a、追加条件b、追加条件cの組み合わせ、燃え代パターンを自動生成することによりPCの記憶場所および入力画面が整理され設計者の設計中の思考見通しが改善されている。
【0019】
図1のStp1−1の設計条件・部材設定で図2断面表の断面寸法定義データ入力後、Stp1−2の部材配置に進み構造設計計算をするために既に入力されている図3の平面図に相当する伏図または図4の側面図に相当する軸図と呼ばれる建築構造モデルをPC画面上に呼び出し、構造モデル各部の構造部材の配置と断面寸法を指定する。柱と梁の断面寸法指定の場合には図3の伏図で全ての柱、梁で指定する。例えば柱であれば図3の4aをクリックすると図2の断面表が表示されその図2の断面表から柱4aに要求される断面寸法を選び出し、梁であれば6aをクリックし図2の断面表から6aの梁の断面寸法を指定する。筋交いについては、図3の伏図に表示できないため図3伏図の側面図に相当する図4軸図の梁15をクリックし図2の断面表から梁15がどの様な断面寸法をもった筋交いであるかを指定してゆく。
【0020】
次にStp1−3の室用途指定・荷重設定を行う。Stp1−3室用途・荷重設定は、図5の室用途/仕上げ荷重表に仕上げ荷重情報を入力することで行う。従来、この図5室用途/仕上げ荷重表は、列方向に建築物内のある空間が炊事場1、居間2、寝室3等の部屋の用途を定義するための室用途と行方向に床、壁、天井の仕上げを指定する内外装仕上げ指定および構造部材の仕上げを指定する構造部材仕上げ指定で構成される直交表となっているが、本発明では、図5の室用途に建築物の外の空間すなわち屋外を定義する外部と言う概念を室用途に追加している。図5の室用途/仕上げ荷重表に外部と言う概念を加えることにより、建築物の内外全ての空間の仕上げ荷重を定義することができる。
【0021】
具体的な室用途の指定方法は、図3の4a、4b、4c、4dで囲まれた空間が炊事場1であると定義したい場合、柱4a、4b、4c、4d、4aと柱で囲まれる空間を一巡するようにクリックし図5の室用途/仕上げ荷重表を表示させ室用途の空白の欄に炊事場1と入力する。同様に居間2は、柱5b、5c、5e、4d、5b、寝室3は、柱4b、5a、5b、4c、4bの各々の柱をクリックし室用途の定義画面に居間2、寝室3と入力し図3の伏図の空間の室用途を定義する。本発明では室用途の外部は、必ず必要である概念であるため、内部の室用途を定義すると自動的に室用途欄に定義され表示されるが、柱4a、4b、5a、5b、5c、5d、5e、4d、4aをクリックし建築構造物の内外を区別する閉空間を指定することもできる。
【0022】
図5の室用途/仕上げ荷重表に室用途の入力定義を行うと同時に、図5の行方向の内外装仕上げ指定および構造部材仕上げ指定の各々の床、壁、天井、柱、梁、筋交いに設計者が必要と考えている仕上げ荷重の数値を入力する。図5の列方向の室用途と行方向の内外装仕上げ指定の交点は、各室用途に施される床、壁、天井の1平方メートル当たりの仕上げ荷重を表し、同じく行方向の構造部材仕上げ指定は、各室用途に施される柱、梁、筋交いに施される1平方メートル当たりの仕上げ荷重を表している。
【0023】
本発明では、図5の室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定に仕上げ荷重を入力する際、耐火仕上げを施さず仕上げのみ場合には正の数字、すなわちプラスマイナスの符号を付けず、仕上げもしない場合には、数値を入力せず空白とし、耐火仕上げをする場合には、マイナスの符号を付けた数値を入力するものとする。実際の構造設計計算および燃え代設計計算では、図5室用途/仕上げ荷重表の数値は、各構造部材に掛かる荷重を計算するために使われるため負の仕上げ荷重はあり得ないのでマイナスの符号は、耐火仕上げがなされているか否かを論理上区別する情報と解釈し計算処理され、プログラム上の荷重設定計算の際には、絶対値を取り正の数値として計算することとなる。以上までが図1のStp1構造設計計算段階で燃え代設計計算に必要なデータを入力過程である。
【0024】
次にStp1構造設計計算を行い通常使用での建築物の安全性を確認した後にStp2の燃え代設計計算は、Stp1の構造設計計算の結果を利用し行われるため図2断面表の構造部材の寸法と図5の室用途/仕上げ荷重表の情報およびStp1の構造設計計算結果の各部応力等の情報を燃え代設計計算に引き渡す。その後、図1のStp2の燃え代設計計算においては、構造部材が被災した場合の火災発生から鎮火までの構造部材の燃焼時間を想定した構造部材の焼失厚さに相当する燃え代pを設計者の検討時間に合わせStp2-1の燃え代p設定で入力設定する。この燃え代pの意味は、図6において、柱7は、縦y、横yの辺を持った角柱を考えた場合、柱7の一面7−1が、燃え代pで被災し燃えた場合、構造設計計算時は、縦横yの寸法の断面で応力計算され断面算定されるが、燃え代設計計算に際しては、柱7が縦y、横y−pの寸法の断面で計算されることを示している。
【0025】
次に、本発明では、詳細な構造部材の燃焼面のパターンをPCから自動で生成させるために、図1のStp2−2の追加条件a,b,c燃え代パターン自動生成に進み、柱、梁、筋交いに対して追加の条件、追加条件a、追加条件b、追加条件cの三つの条件を加える。構造部材仕上げ指定の柱には、追加条件aとして、矩形の柱の四辺の一辺を考えた場合、その柱の一辺の一部でも耐火仕上げされていない場合、すなわち、その柱の一辺の一部でも室用途/仕上げ荷重表の室用途と構造部材仕上げ指定の柱との交点の数値がマイナスでない数値の室用途に面した場合は、その柱一辺全面を焼失面とすると言う条件を加える。
【0026】
例えば、図3の4dの柱の部分を説明するために部分拡大した図7で説明する。図3および図7には、各々X軸とY軸の座標軸が描かれているがこの座標軸は、図3、図7で一致して描かれており、XY軸の作り出す平面は、地平面と平行方向すなわち床面と同方向とする。図3および図7は、図5の室用途/仕上げ荷重表に記載されたマイナス符号の数値の意味と追加条件aを適用し描かれており、柱の周囲が太線と細線で描かれていが、太線は、火災被災時燃えて燃え代pだけ炭化する状態を象徴するため太線で表し、細線は、耐火仕上げのために燃えないことを表している。この太線細線での表示方法は、本発明でPCの画面に表示される際にも焼失面、非焼失面を区別する表示として適用されている。柱4dは、炊事場1、居間2、外部17に面し炊事場1と居間2は壁6cで隔てられており、炊事場1および居間2は、壁6jおよび6gによって外部17と隔てられている。図7において柱4dの面4d−1は、図5の室用途/仕上げ荷重表の室用途の炊事場1と構造部材仕上げ材指定の柱の数値の交点がマイナスの数値であり室用途の外部17の構造部材仕上げ材指定の柱もマイナスの数値となっており、柱の面4d−1全てが、耐火仕上げのある室用途に面しているため、非燃焼面となっている。一方、面4d−2面は、炊事場1の柱面には、構造部材仕上げ材指定にマイナスの数値であるが、室用途の居間2の構造部材仕上げ材指定の柱には仕上げ指定の数値がなく、すなわちマイナスの指定がなく燃焼面となるため追加条件aにより面4d−2は、一面全体が燃焼面となる。図3の柱は、図5の室用途/仕上げ荷重表に示された数値が追加条件aを満足するよう全ての柱が、太線と細線で描かれている。追加条件aでの焼失面、非焼失面の柱の燃え代パターンは、室用途/仕上げ荷重表のマイナスの符号の有無と室用途の配置の組み合わせで図8に示す16種類が自動生成されPC画面に表示され、燃え代設計計算の断面データとして使用されることとなる。
【0027】
次に、建築図面上一般的にZ軸方向を重力方向とするが、梁を基準にZ軸正方向の反重力方向の梁面を梁の上面、Z軸負方向の重力方向の梁面を梁の下面、Y方向に長手の軸方向を持つ梁にはX軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、あるいはX方向に長手の軸方向を持つ梁にはY軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、多層階の建物の場合、梁の上面を上階と下階の室用途の境とし、構造部材仕上げ指定の梁には、追加条件bとして、(1)梁の上面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値の一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の上面全面が焼失面とし、(2)梁の左右側面については、梁の側面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の側面は焼失面とし、(3)梁の下面は下面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、下面全面が焼失面とし、(4)吹き抜けになっている室用途の中間梁は、一つの室用途に梁の全周が囲まれているため、その吹き抜けになっている中間梁が囲われている室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値で耐火仕上げされている、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がある場合を除き全面を焼失面とし、(1)から(4)の4条件を梁に対する追加条件bとする。
【0028】
追加条件bの例として図9で説明する。図9は、梁8に対し梁8の上面8−1に上階の床10があり、上階の梁の上面8−1上の壁11で上階の室用途が上室9−1と上室9−4に分かれ、下階は梁の下面8−4上の壁12で室用途が下室9−2と下室9−3に分かれているとする。梁8の上面8−1は、図10の室用途/仕上げ荷重表の室用途の上室9−1と上室9−4の構造部材仕上げ指定の梁にマイナスの数値の耐火指定があるため全面非燃焼面となり、側面8−2は、下室9−2の構造部材仕上げ指定の梁に数値が記載されておらず耐火指定がないため焼失面となり、側面8−3は、下室9−3の構造部材仕上げ指定の梁にマイナスの数値の耐火指定があるため全面非燃焼面となり、下面8−4は、下室9−3には、構造部材仕上げ指定の梁にマイナスの数値の耐火指定があるが、下室9−2の構造部材仕上げ指定の梁にマイナスの数値の耐火仕上げがないため下面8−4全面が焼失面となっている。追加条件bから梁は図11に示す8種類の燃え代パターンを自動生成することとなる。
【0029】
さらに追加条件cとして円柱および筋交いに対しては、円柱あるいは筋交いが面した全ての室用途/仕上げ荷重表の室用途の円柱あるいは筋交いに対し一部でも耐火仕上げ指定がない場合は、全周を焼失面とする。すなわちは円柱と筋交いは、全ての面が耐火仕上げされている場合を除き全面を焼失面とする。
【0030】
以上に述べた柱、梁、筋交い等の追加条件a、追加条件b、追加条件cおよび例として図5や図10に示した室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いの荷重指定の数値のマイナス符号有無と部屋の室用途の配置関係の条件の組み合わせより本発明の燃え代設計計算に必要な燃焼によって減少した断面寸法と表示の焼失面パターンを自動生成し、PC画面に燃え代パターンを表示し燃え代設計計算の断面情報とする。
【0031】
次に図1の室用途/仕上げ荷重表耐火荷重設定確認Stp2−3に入り、設計者は、自動生成された図3伏図の柱の燃え代パターンを見ながら、図1のStp1−3で入力した図5室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定の柱の耐火仕上げの状態が、設計者の意図通りであることを最終確認する。さらに図1の個別仕上げ指定確認変更Stp2−4に進み、最終確認の際に自動生成した柱の燃え代パターンの柱が、設計者の意図と違っている場合には、設計者は意図と相違している柱をダブルクリックすることにより図12に示す柱個別仕上げ指定を呼び出し、図12の仕上げ面を指定し訂正することができる。同様に梁、筋交いについても確認を行い、図4の伏図と図5の室用途/仕上げ荷重表を比較確認し梁、筋交いの個別仕上げ指定を呼び出し訂正する。この際、柱、梁および筋交いの個別仕上げ指定は、設計者の意思で自動生成された燃え代パターンを変更するため全ての室用途/仕上げ荷重表により発生される燃え代パターンに優先して燃え代設計計算のデータとして使用されることとなる。
【0032】
前述した柱の個別仕上げ指定方法は、図12の最下段にある仕上面のu、d、l、rにチェックを入れること意によって指定する。図12柱の仕上げ面の上下左右を示すu、d、l、rは、図13に示すように柱13を基準にXY座標のY軸の正の方向の面をu、負の方向の面をd、Y軸の正方向に向かってX軸の負の方向を左面l、X軸の正の方向を右面rとなるよう柱の上下左右が決められている。図12の例では、uとrにチェックが入っており、チェックを入れることによりuとrの面に耐火仕上げをしたことを示し、図13に示すように非焼失面がuとrの細線で、焼失面がd、lの二面の太線として示されている。梁については、図14に示すように軸図の表現している方向によって異なるが、横軸はX軸あるいはY軸を示し、梁14を基準にZ軸方向の正方向の面を梁の上面u、負の方向の面を梁の下面d、X軸あるいはY軸の負の方向の面を梁の左側面l、X軸あるいはY軸の正の方向の面を梁の右側面rの個別仕上げ指定の仕上げ面を規定している。
【0033】
次にStp2−5断面算定に入り燃え代設計計算の結果を表示させる。自動で生成させた燃え代パターンと個別仕上げ指定を基に燃え代pを平成12年建設省告示1358号でも示されている時間と燃え代pとの関係で燃え代pを変えることにより、構造部材の断面積、断面計数および建築部材にかかる荷重等から構造部材の圧縮応力、引張応力、せん断応力、曲げ応力等から許容応力度の検定値を求め燃え代設計計算の安全を評価する事が出来る。燃え代設計計算の結果は、伏図、軸図あるいは単純化した伏図、軸図上の柱、梁、筋交いのわきに許容応力度を表示した応力図に被災後許容応力度の検定値を表示し検定値が1.0以上である場合には、応力図に許容応力度の検定値を超えた構造部材を太線あるいは赤色等で表示し、さらにその許容応力度の検定値を赤色太字で表示し点滅させることによって設計者に注意を喚起することができる方法とする。あるいは、全ての柱、梁、筋交いを検定表と呼ぶ一覧にまとめたものを表示することもできる。この検定値表においてもPCの画面上に許容応力度の検定値を超えた構造部材を太線で表示し、さらにその許容応力度の検定値を赤色太字で表示し点滅させることによって設計者に注意を喚起することができる方法とする。
【0034】
この応力図および検定表を基に設計者は、構造部材の寸法の安全性の検討および耐火仕上げの見直し等の検討を再度行い問題が無ければ、燃え代設計計算は完了し、問題を発見した場合には、構造設計計算の図1のStp1−1に戻り、構造部材の図2の断面表、図5の室用途/仕上げ荷重表あるいは図12の個別仕上げ指定に変更を加え燃え代設計計算に問題がなくなるまで繰り返し処理を行う。
【符号の説明】
【0035】
Stp1 構造設計計算
Stp1−1 設計条件・部材設定
Stp1−2 部材配置
Stp1−3 室用途指定・荷重設定
Stp1−4 応力解析(結果)
Stp1−5 断面算定(結果)
Stp1−6 構造設計計算の判定
Stp2 燃え代設計計算
Stp2−1 燃え代p設定
Stp2−2 追加条件a,b,c 燃え代パターン自動生成
Stp2−3 室用途/仕上げ荷重表耐火荷重設定確認
Stp2−4 個別仕上げ指定確認変更
Stp2−5 断面算定
Stp2−6 燃え代設計計算の判定
1 炊事場
2 居間
3 寝室
4a 炊事場柱
4b 炊事場寝室間柱
4c 炊事場寝室居間間柱
4d 炊事場居間間柱
5a 寝室外部間柱
5b 寝室居間間柱
5c 居間外部間柱
5d 居間外部間柱
5e 居間外部間柱
6a 梁
6b 梁
6c 梁
6d 梁
6e 梁
6f 梁
6g 梁
6h 梁
6i 梁
6j 梁
6k 梁
6m 梁
7 柱
7−1 柱の燃え代面
8 梁
8−1 梁上面
9−1 上室
9−2 下室
9−3 下室
9−4 上室
10 上質の床
11 上階壁
12 下階壁
13 柱
14 梁
15 筋交い
16 筋交い
17 外部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計者が建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する断面表に入力する構造部材の断面寸法定義データに対して、構造部材の断面が同一断面でありながら燃え代パターンが相違するデータは、火災によって焼失面が生じ焼失前の断面より小さくなり、構造部材の断面寸法が異なったものであると言う考えから、火災に遭遇する前、同一の構造部材の断面寸法にもかかわらず構造部材の断面定義データと燃え代パターンを一組のデータとし燃え代パターンごとに構造部材の断面寸法が相違するものとして断面表に入力定義していたが、断面表に構造部材の焼失前の断面寸法定義データのみを入力定義し燃え代パターンのデータを断面表から分離することにより、燃え代パターンのデータが相違しても焼失前同一断面の構造部材は、同一の構造部材として断面表へ一入力定義ですむようにし、そのために従来断面表に入力定義していた燃え代パターンの欠落する燃え代パターンの情報を建築物の部屋の用途である室用途とその室用途に使われている床、壁、天井等の仕上げ荷重を定義する室用途/仕上げ荷重表と呼ばれる表で、列方向に建築物の内外部の空間である炊事場、居間、寝室等の部屋の用途を定義するための室用途と行方向にその室用途の空間内の床、壁、天井の仕上げ指定(以後、室用途の空間内の床、壁、天井の仕上げ指定を内外装仕上げ指定と記す)をする内外装仕上げ指定および構造部材の柱、梁、筋交いの仕上げ指定(以後、構造部材の柱、梁、筋交いの仕上げ指定を構造部材仕上げ指定と記す)をする構造部材仕上げ指定で構成される直交表となっている室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いと室用途との交点に入力する仕上げ荷重を表す数値にマイナス符号の数値を入力し耐火仕上げの情報として保存し計算処理利用することを特徴とする燃え代設計計算装置。
【請求項2】
室用途/仕上げ荷重表の建築構造物の内外部の空間である室用途に建築物の外部の空間全体、すなわち、一般的には建築物をとりまく庭に相当する部分を一つの室用途ととらえ外部と呼ばれる空間概念を炊事場、居間、寝室等の建築物内部の部屋の用途と同じ室用途の概念として室用途/仕上げ荷重表に導入し、室用途/仕上げ荷重表の室用途の外部と構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いとの交点に入力する外装の仕上げ荷重を表す数値にマイナス符号の数値を入力することにより建築物の外装仕上げの耐火仕上げ情報を室用途/仕上げ荷重表の室用途の外部に保存し計算処理利用することを特徴とする燃え代設計計算装置。
【請求項3】
構造部材仕上げ指定の柱には、追加条件aとして、矩形の柱の四辺の一辺を考えた場合、その柱の一辺の一部でも耐火仕上げされていない場合、すなわち、その柱の一辺の一部でも室用途/仕上げ荷重表の室用途と構造部材仕上げ指定の柱との交点の数値がマイナスでない数値の室用途に面した場合は、その柱一辺全面を焼失面とすると言う条件を追加条件aとして加え、追加条件bとして梁に加える条件は、建築図面上一般的にZ軸方向を重力方向とするが、梁を基準にZ軸正方向の反重力方向を梁の上面、Z軸負方向の重力方向を梁の下面、Y方向に長手の軸方向を持つ梁には、X軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、あるいはX方向に長手の軸方向を持つ梁には、Y軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、多層階の建物の場合、梁の上面を上階と下階の室用途の境とし、(1)梁の上面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値の一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の上面全面が焼失面とし、(2)梁の左右側面については、梁の側面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の側面は焼失面とし、(3)梁の下面は下面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、下面全面が焼失面とし、(4)吹き抜けになっている室用途の中間梁は、一つの室用途に梁の全周が囲まれているため、その吹き抜けになっている中間梁が囲われている室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値で耐火仕上げされている、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がある場合を除き全面を焼失面とし、(1)から(4)の4条件を梁に対する追加条件bとして加え、さらに、追加条件cとして円柱および筋交いに対しては、円柱あるいは筋交いが面した全ての室用途/仕上げ荷重表の室用途の構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いの指定数値に一部でも耐火仕上げ指定がない、すなわち、構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いの指定数値に一部でもマイナスの符号がない室用途に面した場合、円柱あるいは筋交いの全周を焼失面とし、すなわち、円柱と筋交いは、全ての周および面が耐火仕上げされた室用途に面している、すなわち、全ての室用途の構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いにマイナスの符号がある数値の場合を除き全面を焼失面とし、構造部材の柱、梁、筋交いに対する追加条件a、追加条件bおよび追加条件cと断面表、室用途/仕上げ荷重表および伏図、軸図と呼ばれる室用途の構造部材の配置の位置関係情報図から情報を組み合わせ構造部材の燃え代パターンを自動生成し伏図、軸図の構造部材の柱、梁筋交いに対して焼失面を太線で、非焼失面を細線でPC画面に表示し、設計者は、PCの表示画面に表示された伏図、軸図を参考にPC画面に表示された構造部材の燃え代パターンの確認を行いながら構造部材を個別に仕上げ指定できる個別仕上げ指定で訂正する。個別仕上げ指定は、設計者が法、建築費用および技術的事項を総合的に判断し技術者の意思として自動生成された燃え代パターンに変更を加え決定訂正したことから自動生成された燃え代パターンの条件に優先して燃え代設計計算のデータとされ、その後、設計者によって火災発生から鎮火までの構造部材の燃焼時間の長短を想定した構造部材の焼失厚さに相当する燃え代pを入力され、自動生成された燃え代パターに設計者が最終訂正した燃え代パターンをもとに構造部材の燃え代p減少した断面寸法をPCより生成し、火災被災後に構造部材にかかる荷重等の条件から構造部材の圧縮応力、引張応力、せん断応力、曲げ応力等の許容応力度の検定値を求め燃え代設計計算の安全を評価し、燃え代設計計算の結果は、伏図、軸図あるいは単純化した伏図、軸図上の柱、梁、筋交いのわきに許容応力度を表示した応力図、あるいは、全ての柱、梁、筋交いの許容応力度を数値で表示した検定表と呼ばれる一覧にまとめたものに表示し、被災後許容応力度の検定値が1.0以上である場合には、応力図あるいは検定表に許容応力度の検定値を超えた構造部材を太線あるいは赤色等で表示し、さらにその許容応力度の検定値を赤色太字で表示し点滅させることによって設計者に注意が喚起され、この応力図および検定表を基に設計者は、構造部材の寸法の安全性の検討および耐火仕上げの見直し等の検討を行い燃え代設計計算結果に問題がなくなるまで繰り返し処理を行う、請求項1および請求項2を備え上記追加条件a、追加条件b、追加条件cから燃え代パターンを自動生成し、その後、個別仕上げ指定で修正し燃え代設計計算を行い、検定結果を表示することを特徴とする燃え代設計計算装置。
【請求項1】
設計者が建築物の構造部材である柱、梁、筋交いの断面寸法を定義する断面表に入力する構造部材の断面寸法定義データに対して、構造部材の断面が同一断面でありながら燃え代パターンが相違するデータは、火災によって焼失面が生じ焼失前の断面より小さくなり、構造部材の断面寸法が異なったものであると言う考えから、火災に遭遇する前、同一の構造部材の断面寸法にもかかわらず構造部材の断面定義データと燃え代パターンを一組のデータとし燃え代パターンごとに構造部材の断面寸法が相違するものとして断面表に入力定義していたが、断面表に構造部材の焼失前の断面寸法定義データのみを入力定義し燃え代パターンのデータを断面表から分離することにより、燃え代パターンのデータが相違しても焼失前同一断面の構造部材は、同一の構造部材として断面表へ一入力定義ですむようにし、そのために従来断面表に入力定義していた燃え代パターンの欠落する燃え代パターンの情報を建築物の部屋の用途である室用途とその室用途に使われている床、壁、天井等の仕上げ荷重を定義する室用途/仕上げ荷重表と呼ばれる表で、列方向に建築物の内外部の空間である炊事場、居間、寝室等の部屋の用途を定義するための室用途と行方向にその室用途の空間内の床、壁、天井の仕上げ指定(以後、室用途の空間内の床、壁、天井の仕上げ指定を内外装仕上げ指定と記す)をする内外装仕上げ指定および構造部材の柱、梁、筋交いの仕上げ指定(以後、構造部材の柱、梁、筋交いの仕上げ指定を構造部材仕上げ指定と記す)をする構造部材仕上げ指定で構成される直交表となっている室用途/仕上げ荷重表の構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いと室用途との交点に入力する仕上げ荷重を表す数値にマイナス符号の数値を入力し耐火仕上げの情報として保存し計算処理利用することを特徴とする燃え代設計計算装置。
【請求項2】
室用途/仕上げ荷重表の建築構造物の内外部の空間である室用途に建築物の外部の空間全体、すなわち、一般的には建築物をとりまく庭に相当する部分を一つの室用途ととらえ外部と呼ばれる空間概念を炊事場、居間、寝室等の建築物内部の部屋の用途と同じ室用途の概念として室用途/仕上げ荷重表に導入し、室用途/仕上げ荷重表の室用途の外部と構造部材仕上げ指定の柱、梁、筋交いとの交点に入力する外装の仕上げ荷重を表す数値にマイナス符号の数値を入力することにより建築物の外装仕上げの耐火仕上げ情報を室用途/仕上げ荷重表の室用途の外部に保存し計算処理利用することを特徴とする燃え代設計計算装置。
【請求項3】
構造部材仕上げ指定の柱には、追加条件aとして、矩形の柱の四辺の一辺を考えた場合、その柱の一辺の一部でも耐火仕上げされていない場合、すなわち、その柱の一辺の一部でも室用途/仕上げ荷重表の室用途と構造部材仕上げ指定の柱との交点の数値がマイナスでない数値の室用途に面した場合は、その柱一辺全面を焼失面とすると言う条件を追加条件aとして加え、追加条件bとして梁に加える条件は、建築図面上一般的にZ軸方向を重力方向とするが、梁を基準にZ軸正方向の反重力方向を梁の上面、Z軸負方向の重力方向を梁の下面、Y方向に長手の軸方向を持つ梁には、X軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、あるいはX方向に長手の軸方向を持つ梁には、Y軸の負正の方向の梁面を梁の左側面、梁の右側面とし、多層階の建物の場合、梁の上面を上階と下階の室用途の境とし、(1)梁の上面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値の一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の上面全面が焼失面とし、(2)梁の左右側面については、梁の側面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、梁の側面は焼失面とし、(3)梁の下面は下面に面した室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値に一部でも耐火仕上げがない、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がない場合、下面全面が焼失面とし、(4)吹き抜けになっている室用途の中間梁は、一つの室用途に梁の全周が囲まれているため、その吹き抜けになっている中間梁が囲われている室用途/仕上げ荷重表の室用途において構造部材仕上げ指定の梁の指定数値で耐火仕上げされている、すなわち、構造部材仕上げ指定の梁の指定数値にマイナスの符号がある場合を除き全面を焼失面とし、(1)から(4)の4条件を梁に対する追加条件bとして加え、さらに、追加条件cとして円柱および筋交いに対しては、円柱あるいは筋交いが面した全ての室用途/仕上げ荷重表の室用途の構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いの指定数値に一部でも耐火仕上げ指定がない、すなわち、構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いの指定数値に一部でもマイナスの符号がない室用途に面した場合、円柱あるいは筋交いの全周を焼失面とし、すなわち、円柱と筋交いは、全ての周および面が耐火仕上げされた室用途に面している、すなわち、全ての室用途の構造部材仕上げ指定の柱あるいは筋交いにマイナスの符号がある数値の場合を除き全面を焼失面とし、構造部材の柱、梁、筋交いに対する追加条件a、追加条件bおよび追加条件cと断面表、室用途/仕上げ荷重表および伏図、軸図と呼ばれる室用途の構造部材の配置の位置関係情報図から情報を組み合わせ構造部材の燃え代パターンを自動生成し伏図、軸図の構造部材の柱、梁筋交いに対して焼失面を太線で、非焼失面を細線でPC画面に表示し、設計者は、PCの表示画面に表示された伏図、軸図を参考にPC画面に表示された構造部材の燃え代パターンの確認を行いながら構造部材を個別に仕上げ指定できる個別仕上げ指定で訂正する。個別仕上げ指定は、設計者が法、建築費用および技術的事項を総合的に判断し技術者の意思として自動生成された燃え代パターンに変更を加え決定訂正したことから自動生成された燃え代パターンの条件に優先して燃え代設計計算のデータとされ、その後、設計者によって火災発生から鎮火までの構造部材の燃焼時間の長短を想定した構造部材の焼失厚さに相当する燃え代pを入力され、自動生成された燃え代パターに設計者が最終訂正した燃え代パターンをもとに構造部材の燃え代p減少した断面寸法をPCより生成し、火災被災後に構造部材にかかる荷重等の条件から構造部材の圧縮応力、引張応力、せん断応力、曲げ応力等の許容応力度の検定値を求め燃え代設計計算の安全を評価し、燃え代設計計算の結果は、伏図、軸図あるいは単純化した伏図、軸図上の柱、梁、筋交いのわきに許容応力度を表示した応力図、あるいは、全ての柱、梁、筋交いの許容応力度を数値で表示した検定表と呼ばれる一覧にまとめたものに表示し、被災後許容応力度の検定値が1.0以上である場合には、応力図あるいは検定表に許容応力度の検定値を超えた構造部材を太線あるいは赤色等で表示し、さらにその許容応力度の検定値を赤色太字で表示し点滅させることによって設計者に注意が喚起され、この応力図および検定表を基に設計者は、構造部材の寸法の安全性の検討および耐火仕上げの見直し等の検討を行い燃え代設計計算結果に問題がなくなるまで繰り返し処理を行う、請求項1および請求項2を備え上記追加条件a、追加条件b、追加条件cから燃え代パターンを自動生成し、その後、個別仕上げ指定で修正し燃え代設計計算を行い、検定結果を表示することを特徴とする燃え代設計計算装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−20327(P2013−20327A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151510(P2011−151510)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(711007699)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(711007699)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]