説明

燃料ガス制御弁のダスト除去装置

【課題】発電ユニットの運転中であっても、簡易な手法によって、ダストの付着、堆積によって発生する燃料ガス制御弁の作動不良および固着を確実に防止すること。
【解決手段】燃料ガスの経路となる弁箱53の内部に形成された上流空間USと下流空間DSとの間の導通状態を、弁箱53に対してスライド移動自在な弁棒57に固定されてこの弁棒57のスライド移動に伴い往復直線運動をする弁体56の弁座55に対する開閉によって制御する構造を基本とし、上流および下流の空間を形成する弁箱53の弁棒57と対面する端面にガス噴射口52(52a〜52f)を形成し、このガス噴射口52(52a〜52f)から燃料ガスを噴射し、弁箱53と弁棒57との対面箇所に付着し堆積するダストを除去できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス制御弁にダストが付着することにより発生する同制御弁の作動不良および固着を防止するためのダスト除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスの供給経路には、燃料ガス制御弁が設置されることがある。
【0003】
一例として、製鉄所副生ガスを使用する高炉ガス焚き発電設備では、燃料ガスを所定の発熱量とするために、高発熱量を有する混合ガスで高炉ガスを増熱して燃料ガス圧縮機へ供給している。このようなシステムでは、高炉ガスに対する混合ガスの混合の割合を制御するために、混合ガスの供給経路に燃料ガス制御弁が設置される。
【0004】
製鉄所副生ガスは、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)と比べて、ダスト(不純物)を多く含んでいる。このため、上記発電設備では、燃料ガス圧縮機の上流側に電気集塵装置を設置して発電設備を保護しているものの、混合ガス用の燃料ガス制御弁には生の混合ガスが導かれる。その結果、燃料ガス制御弁の内部にダストが付着して堆積し、作動不良を起こすことがある。燃料ガス制御弁に作動不良が発生すると、燃料ガスの発熱量が規定値を逸脱し、各種の不都合をもたらす。例えば、燃料ガス制御弁が完全に開放しきらない場合には、混合ガスの流量が不足して、発電ユニットの出力が低下してしまう。また、燃料ガス制御弁が完全に固着してしまったような場合には、ユニットトリップに至る場合さえ想定される。
【0005】
そこで、燃料ガス制御弁の使用に際しては、その内部に付着するダストを定期的にまたは必要に応じて除去する必要がある。この場合、燃料ガスは有毒な一酸化炭素を含んでいるために、発電ユニットの運転中に堆積したダストを掃除し除去することは極めて困難である。その一方で、定期点検時にのみ堆積したダストの掃除をする運用は、時宜にダストを除去できなかったり、定期点検のための労力が増大したりするので、あまり望ましい運用とは云えない。あるいは、混合ガスの経路中、燃料ガス制御弁の上流側に電気集塵装置を設置するという方策も考えられるが、プラント設備の追加となるため、設置スペース上の観点および経済上の観点から望ましくない。
【0006】
このようなことから、燃料ガス制御弁においては、発電ユニットの運転中であっても、簡易な手法によって内部に付着するダストを除去する技術の実現が望まれている。この出願の出願人は、こうした観点から特許調査を実施し、特許文献1〜4に掲げる文献を見出した。
【0007】
特許文献1に記載されている技術は、上下動する弁体にスクレーパを取り付けておき、オリフィス出口付近に付着するダストを弁体の上下動に伴いスクレーパによって掻き取る、というものである。
【0008】
また、特許文献2に記載されている技術は、弁体に付着するダストを、弁体を大きく駆動動作させることにより除去する、というものである。
【0009】
そして、特許文献3、4には、いずれにも、弁体と弁座との間の隙間にパージガスを供給することが記載されている。とりわけ、特許文献4に記載されている技術は、単に弁体と弁座との間の隙間にパージガスを供給するに過ぎない特許文献3に記載の技術に比べて、そのような掃除対象箇所にパージガスを直接的に噴射するという点で、より大きな効果をもたらすことであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平09−273638号公報
【特許文献2】特開2007−107686公報
【特許文献3】特開平11−195649号公報
【特許文献4】特開2005−026516公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された技術は、制御弁内において掃除対象箇所が限られることから、その採用に消極的にならざるを得ない。特許文献2に記載された技術も、その効果について懐疑的にならざるを得ず、同様に採用に踏み切り難い。
【0012】
この点、掃除対象箇所にパージガスを導く(特許文献3、4)、とりわけ局所的に噴射するという技術(特許文献4)は、その実現に大きな障害がなく、総じて魅力的に感じられる。
【0013】
もっとも、特許文献3、4は、掃除対象箇所として、弁体と弁座との間の隙間のみを教示しているところ、燃料ガス制御弁に作動不良を生じさせるダストの付着、体積箇所は、そのような弁体と弁座との間の隙間に限らない。むしろ、弁体を備える弁棒に付着し堆積するダストが、燃料ガス制御弁に作動不良および固着を引き起こす元凶であると云える。
【0014】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、発電ユニットの運転中であっても、簡易な手法によって、ダストの付着、堆積によって発生する燃料ガス制御弁の作動不良および固着を確実に防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、燃料ガスの経路となる弁箱の内部である弁室に形成された上流空間と下流空間との間の導通状態を、前記弁箱に対してスライド移動自在な弁棒に固定されてこの弁棒のスライド移動に伴い往復直線運動をする弁体の弁座に対する開閉によって制御するようにした燃料ガス制御弁において、前記弁室を形成する領域内であって前記弁箱の前記弁棒と対面する端面に配置されたガス噴射口と、前記ガス噴射口に前記燃料ガスを圧縮して導く圧縮燃料ガス供給装置と、を備えることによって上記課題を解決するようにした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上流および下流の空間を形成する弁箱の弁棒と対面する端面に形成されたガス噴射口から燃料ガスを噴射させることができるので、発電ユニットの運転中であっても、簡易な手法によって、ダストの付着、堆積によって発生する燃料ガス制御弁の作動不良および固着を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の一形態として、燃料ガス制御弁のダスト除去装置が適用される発電システムの概要を示す回路図。
【図2】燃料ガス制御弁のダスト除去装置の一部を構成する圧縮燃料ガス供給装置の回路図。
【図3】ガス噴射口を示す燃料ガス制御弁の縦断正面図。
【図4】上部のガス噴射口を拡大して示す縦断正面図。
【図5】下部のガス噴射口を拡大して示す縦断正面図。
【図6】中間上部のガス噴射口を拡大して示す縦断正面図。
【図7】中間下部のガス噴射口を拡大して示す縦断正面図。
【図8】圧縮燃料ガス供給装置がガス噴射口から吐出させる圧縮ガスのパルスパターンを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の一形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態は、製鉄所副生ガスを使用する高炉ガス焚きガスタービンコンバインドの発電設備1であって、燃料ガスを所定の発熱量とするために、高発熱量を有する混合ガスとしてコークス炉ガスや転炉ガス等を混合したMガスで高炉ガスを増熱して燃料ガス圧縮機11へ供給するようにしたシステムへの適用例である(図1、図2参照)。本実施の形態の燃料ガス制御弁51のダスト除去装置101は、Mガスの供給経路201に設置され、高炉ガスに対するMガスの混合の割合を制御するための燃料ガス制御弁51をダスト除去対象としている。
【0019】
図1は、燃料ガス制御弁51のダスト除去装置101が適用される発電設備1の概要を示す回路図である。発電設備1は、ガスタービン12と蒸気タービン13とで一つの発電機14を回転させて発電するコンバインド方式の発電ユニットを採用している。つまり、高炉ガスとMガスとを燃料とし、これらのガスを混合器15で混合して燃料ガス圧縮機11で圧縮し、これを燃焼器16で燃焼する。この際に発生する熱によってガスタービン12を動かすわけである。そして、ガスタービン12から排出される高温排ガスを排熱回収ボイラ17に導き、ここで蒸気を発生させて蒸気タービン13を動かす。これにより、一つの発電機14がガスタービン12と蒸気タービン13とによって回転させられ、発電がなされる。
【0020】
このような発電設備1において、混合器15から燃料ガス圧縮機11に供給する燃料は、電気集塵装置18によって集塵され、清浄化される。
【0021】
また、燃料ガス圧縮機11で圧縮された燃料ガスは、戻量制御A弁19とB弁20との開閉制御に応じてガス冷却器21に導かれ、再度、燃料ガス圧縮機11に導入される。これにより、燃焼器16に導く圧縮された燃料ガスの流量を制御することができる。
【0022】
また、燃料ガス圧縮機11によって圧縮された燃料ガスは、燃料遮断弁22の開閉制御に応じて燃焼器16に導かれる。そして、燃焼器16には、ガスタービン12に駆動されて動作する空気圧縮機23によって圧縮された空気が導かれる。空気圧縮機23が取り込む空気は、フィルター24によって予め清浄化されている。
【0023】
そして、混合器15に至るMガスの供給経路201(図2参照)には、燃料ガス制御弁51が設置されている。燃料ガス制御弁51を制御することによって、高炉ガスとMガスとの混合割合を調節することが可能となる。
【0024】
図2は、燃料ガス制御弁51のダスト除去装置101の一部を構成する圧縮燃料ガス供給装置102の回路図である。圧縮燃料ガス供給装置102は、燃料ガス制御弁51が有する後述するガス噴射口52に燃料ガスを圧縮して導く装置である。
【0025】
高炉ガスの供給経路301は、前述した混合器15よりも上流側にU字水封弁302とBガス遮断弁303とが配置されている。そして、混合器15に連絡するMガスの供給経路201には、前述した燃料ガス制御弁51よりも上流側にU字水封弁202とMガス遮断弁203とが配置されている。Mガスの供給経路201は、Mガス遮断弁203と燃料ガス制御弁51との間で分岐し、圧縮燃料ガス供給装置102に連なっている。
【0026】
圧縮燃料ガス供給装置102は、供給経路201の分岐位置から燃料ガス制御弁51に至る圧縮燃料ガス供給経路103を有している。この圧縮燃料ガス供給経路103には、上流側から下流側に向けて、入口弁104、フィルター105、圧縮機106、除湿装置107、貯蔵庫108、調節弁109、および出口弁110が配置されている。したがって、圧縮燃料ガス供給装置102は、入口弁104を開いた状態で圧縮機106を作動させると、供給経路201からMガスを引いてくることができる。圧縮燃料ガス供給経路103に引かれたMガスは、フィルター105で清浄化されて除湿装置107で除湿され、調節弁109または出口弁110のいずれか一方が閉じられているならば、貯蔵庫108に圧縮状態で蓄えられる。この状態で、出口弁110を開き、調節弁109の開度を調節することで、燃料ガス制御弁51に対して、必要な分だけ圧縮されたMガスを供給することが可能となる。
【0027】
図3は、ガス噴射口52を示す燃料ガス制御弁51の縦断正面図である。燃料ガス制御弁51は、弁箱53の内部に弁室54を形成する。弁室54は、Mガスの供給経路201をなし、この供給経路201を上流空間USと下流空間DSとに分離する。つまり、弁箱53は、管状の基本形態をなし、その一部にバブル状に膨らんだバブル部Bを有している。そして、このバブル部Bには、上流空間USをなす弁箱53の一部が舌片形状になって下流空間DSに入り込み、この入り込んだ部分に弁フレームVFが形成されている。弁フレームVFは、上流空間USを内部に形成し、この上流空間USと下流空間DSとを連絡させる弁孔VHを上下に形成している。これらの弁孔VHは、それらの上部にそれぞれ弁座55を形成している。上方に位置する弁体56は、下流空間DSに位置付けられ、下流空間DSの側から弁座55に接離する。下方に位置する弁体56は、上流空間USに位置付けられ、上流空間USの側から弁座55に接離する。このような一対の弁体56は、単一の弁棒57に固定されており、この弁棒57のスライド移動に伴い直線運動をし、これによって一対の弁座55を開閉する。
【0028】
弁箱53は、バブル部Bに位置させて、弁棒57を貫通させる上下一対の貫通孔58を形成している。弁棒57は、これらの貫通孔58に僅かな隙間を開けてスライド自在に保持されている。そして、弁箱53の外部上方位置には、上方に位置する貫通孔58を貫通する弁棒57を保持するホルダ59が固定されている。このホルダ59には、弁棒57に密着するように環状のグランドパッキン60が取り付けられており、弁室54をシールして気密に保っている。また、弁箱53の外部下方位置には、下方に位置する貫通孔58をシールして塞ぐ栓体61が固定されている。栓体61は、弁棒57を貫通させているわけではないので、グランドパッキン60と栓体61とによって、弁室54は気密に維持されている。こうして、ホルダ59および栓体61は、弁箱53とは別個の部材を弁箱53に固定したものであるが、概念的には、弁箱53の一部を構成することになる。
【0029】
そして、図3に示すように、燃料ガス制御弁51は、弁室54を形成する領域内の上部位置、下部位置、および中間位置のそれぞれに、二種類ずつの異なるガス噴射口52を複数個備えている。
【0030】
上部に位置するガス噴射口52は、一種類が弁箱53の一部をなすホルダ59の弁棒57と対面する端面に配置されており、もう一種類は弁箱53の一部をなすホルダ59の弁棒57と対面する端面に配置されている。以下、説明の便宜上、上記一種類目のガス噴射口52をガス噴射口52aと呼び、上記もう一種類のガス噴射口52をガス噴射口52bと呼ぶ。
【0031】
下部に位置するガス噴射口52は、一種類が弁箱53の弁棒57と対面する端面に配置されており、もう一種類が弁箱53の一部をなす栓体61の底面に配置されている。以下、説明の便宜上、上記一種類目のガス噴射口52をガス噴射口52cと呼び、上記もう一種類のガス噴射口52をガス噴射口52dと呼ぶ。
【0032】
中間部に位置するガス噴射口52は、一種類が上方に位置する弁孔VHの近傍に配置されており、もう一種類が下方に位置する弁孔VHの近傍に配置されている。以下、説明の便宜上、上記一種類目のガス噴射口52をガス噴射口52eと呼び、上記もう一種類のガス噴射口52をガス噴射口52fと呼ぶ。
【0033】
以下、上記各種のガス噴射口52(52a、52b、52c、52d、52e、52f)について掘り下げる。
【0034】
図4は、上部のガス噴射口52(52a、52b)を拡大して示す縦断正面図である。
【0035】
ガス噴射口52aは、弁箱53の一部をなすホルダ59の孔部端面に形成された凹部62に開口している。このようなガス噴射口52aは、ホルダ59に埋め込んだ中空のガス管路63aの端部開口部分である。ガス管路63aは、圧縮燃料ガス供給装置102に設けられた圧縮燃料ガス供給経路103の終端に連結され、圧縮燃料ガスの供給を受ける。
【0036】
ガス噴射口52bは、弁箱53の天井面のうち、上部に位置する貫通孔58の周辺部分に環状に形成された環状溝64bに配置された環状パイプ65bに複数個形成されており、ガス噴射方向を斜め下方に向けている。環状パイプ65bは、文字通り環状をなす中空部材であり、中空のガス管路63bを介して、圧縮燃料ガス供給装置102に設けられた圧縮燃料ガス供給経路103の終端に連結され、圧縮燃料ガスの供給を受ける。このような環状パイプ65bは、弁箱53における貫通孔58の周辺の天井面にねじ止めされた押えプレートHPと環状溝64bとの間の空間に挟みこまれて保持されている。
【0037】
図5は、下部のガス噴射口52(52c、52d)を拡大して示す縦断正面図である。
【0038】
ガス噴射口52cは、弁箱53が形成する下部に位置する貫通孔58の上端面に環状に形成された環状溝64cに配置された環状パイプ65cに複数個形成されており、ガス噴射方向を斜め上方に向けている。環状パイプ65cは、文字通り環状をなす中空部材であり、中空のガス管路63cを介して、圧縮燃料ガス供給装置102に設けられた圧縮燃料ガス供給経路103の終端に連結され、圧縮燃料ガスの供給を受ける。
【0039】
ガス噴射口52dは、栓体61の底面に開口している。このようなガス噴射口52dは、栓体61に埋め込んだ中空のガス管路63dの端部開口部分である。ガス管路63dは、圧縮燃料ガス供給装置102に設けられた圧縮燃料ガス供給経路103の終端に連結され、圧縮燃料ガスの供給を受ける。
【0040】
図6は、中間上部のガス噴射口52(52e)を拡大して示す縦断正面図である。
【0041】
ガス噴射口52eは、弁箱53のバブル部Bの内部に位置する弁フレームVFに形成されている上部の弁孔VHの周囲を取り囲む環状パイプ65eに複数個形成されている。環状パイプ65eは、文字通り環状をなす中空部材であり、中空のガス管路63eを介して、圧縮燃料ガス供給装置102に設けられた圧縮燃料ガス供給経路103の終端に連結され、圧縮燃料ガスの供給を受ける。このような環状パイプ65eは、弁フレームVFにねじ止めされた環状のパイプサポート66eによって、弁フレームVFの上面とパイプサポート66eとの間に固定されている。
【0042】
図7は、中間下部のガス噴射口52(52f)を拡大して示す縦断正面図である。
【0043】
ガス噴射口52fは、弁箱53のバブル部Bの内部に位置する弁フレームVFに形成されている下部の弁孔VHの周囲を取り囲む環状パイプ65fに複数個形成されており、ガス噴射方向を斜め上方に向けている。環状パイプ65fは、文字通り環状をなす中空部材であり、中空のガス管路63fを介して、圧縮燃料ガス供給装置102に設けられた圧縮燃料ガス供給経路103の終端に連結され、圧縮燃料ガスの供給を受ける。このような環状パイプ65eは、弁フレームVFにねじ止めされた環状のパイプホルダ67fと環状のプレート68fとの間に形成されている溝内に固定されている。
【0044】
このような構成において、ダスト除去装置101を構成する圧縮燃料ガス供給装置102は、入口弁104を開いた状態で圧縮機106を作動させることで、供給経路201からMガスを引いてくることができ、このMガスを貯蔵庫108に圧縮状態で蓄えることができる。この状態で、出口弁110を開いたまま、調節弁109の開度を調節すると、燃料ガス制御弁51が有している各所のガス噴射口52(52a〜52f)に対して、必要な量の圧縮されたMガスを供給することが可能となる。この際のMガスは、フィルター105によって濾過されているので、不純物が除去された後の清浄なMガスである。
【0045】
なお、燃料ガス制御弁51が有している各所のガス噴射口52(52a〜52f)に対して圧縮されたMガスを個別に供給したい場合には、個々のガス噴射口52(52a〜52f)のそれぞれに出口弁110を設置し、必要に応じてその開閉を制御するようにすればよい。また、個々のガス噴射口52(52a〜52f)に対するMガスの供給量の調節も所望の場合には、個々のガス噴射口52(52a〜52f)のそれぞれに調節弁109も設置し、調節弁109の開度を調節するようにすればよい。
【0046】
圧縮燃料ガス供給装置102の圧縮燃料ガス供給経路103からガス管路63aに供給されたMガスは、ガス噴射口52aにて圧力解放され、このガス噴射口52aから噴射して弁棒57の周面に吹き付けられる。また、圧縮燃料ガス供給経路103からガス管路63bに供給されたMガスは、個々のガス噴射口52bにて圧力解放され、このガス噴射口52bから噴射して弁棒57の周面に吹き付けられる。また、圧縮燃料ガス供給経路103からガス管路63cに供給されたMガスは、個々のガス噴射口52cにて圧力解放され、このガス噴射口52cから噴射して弁棒57の周面に吹き付けられる。そして、圧縮燃料ガス供給経路103からガス管路63dに供給されたMガスは、ガス噴射口52dにて圧力解放され、このガス噴射口52dから噴射して弁棒57の底面に吹き付けられる。
【0047】
したがって、弁棒57とこれを支持する弁箱53の端面等との間に付着するダストが吹き飛ばされ、当該箇所に対するダストの付着、堆積を確実に防止することができる。
【0048】
また、圧縮燃料ガス供給装置102の圧縮燃料ガス供給経路103からガス管路63eに供給されたMガスは、個々のガス噴射口52eにて圧力解放され、このガス噴射口52eから噴射して上部に位置する弁体56に吹き付けられる。そして、圧縮燃料ガス供給装置102の圧縮燃料ガス供給経路103からガス管路63fに供給されたMガスは、個々のガス噴射口52fにて圧力解放され、このガス噴射口52fから噴射して上部に位置する弁体56に吹き付けられる。
【0049】
したがって、二つの弁体56に付着するダストが吹き飛ばされ、当該箇所に対するダストの付着、堆積を確実に防止することができる。
【0050】
こうして、燃料ガス制御弁51では、弁棒57とこれを支持する弁箱53の端面や、弁箱53を構成する栓体61と弁棒57の下面との間に付着するダスト、それに二つの弁体56に付着するダストが吹き飛ばされ、これらの各部へのダストの付着、堆積が防止される結果、発電ユニットの運転中であっても、簡易な手法によって、ダストの付着、堆積によって発生する燃料ガス制御弁51の作動不良および固着を確実に防止することができる。
【0051】
図8は、圧縮燃料ガス供給装置102がガス噴射口52(52a〜52f)から吐出させる圧縮ガスのパルスパターンを示すグラフである。図8(a)に示すパルスパターン(パルスパターンA)は、燃料ガスであるMガスの定常流にパルス状のパターンを重畳させたパターンである。図8(b)に示すパルスパターン(パルスパターンB)は、基本的には図8(a)のパターンと同様であるが、定常流のガス量をより多くしたパターンである。これらのパルスパターン(パルスパターンA、B)は、圧縮燃料ガス供給装置102において、調節弁109の開度を適宜制御することによって、容易に実現可能である。
【0052】
こうして、本実施の形態では、図8(a)、(b)に例示するような定常流にパルスを重畳したパターンでガス噴射口52(52a〜52f)からMガスを噴射させる。これにより、ガス噴射口52a〜52dによるガス噴射位置においては、弁棒57とこれを支持する弁箱53の端面や、弁箱53を構成する栓体61と弁棒57の下面との間の空間がMガスの定常流によってシールされた状態となる。その結果、弁棒57およびその支持構造物に対するダストの付着そのものが抑制傾向となり、より一層、それらの箇所に対するダストの付着、堆積防止の効果を高めることができる。
【0053】
なお、図8(a)に例示するパルスパターン(パルスパターンA)と(b)に例示するパルスパターン(パルスパターンB)との使い分けについてであるが、単一のガス噴射口52を採用しているガス噴射口52aおよびガス噴射口52dについては、定常流の量がより多いパルスパターンBの採用が望ましい。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態のダスト除去装置101によれば、発電ユニットの運転中であっても、簡易な手法によって、ダストの付着、堆積によって発生する燃料ガス制御弁51の作動不良および固着を確実に防止することができるという、優れた作用効果が奏される。本実施の形態のダスト除去装置101は、その他にも、様々な工夫によってそれに応じた特有の作用効果を生じさせる。以下、その一部を紹介し、本実施の形態の説明を終了する。
【0055】
まず、本実施の形態によれば、ガス噴射口52aは、弁棒57に対面する弁箱53の一部をなすホルダ59の端面に形成された凹部62に開口している。これにより、凹部62がガス噴射口52aから噴射されたMガスの収納空間となり、弁棒57とその支持部分であるホルダ59との間の僅かな隙間に対しても、より円滑にMガスを送り込むことができる。
【0056】
次いで、本実施の形態によれば、ガス噴射口52b、52cは、弁箱53の端面に環状に形成された環状溝64b、64cに配置された環状パイプ65b、65cに複数個形成されている。これにより、複数個のガス噴射口52b、52cより、弁棒57の周面に満遍なくMガスを吹き付けることが可能となり、ダスト付着防止効果を高めることができる。
【0057】
次いで、本実施の形態によれば、圧縮燃料ガス供給装置102は、ガス噴射口52(52a〜52f)からパルス状に燃料ガスを噴射させる。これにより、弁棒57や弁体56に付着したダストの剥離効果を高めることができる。
【0058】
そして、本実施の形態によれば、圧縮燃料ガス供給装置102は、燃料ガス(Mガス)の経路である供給経路201中、燃料ガス制御弁51の上流側から取り出した燃料ガス(Mガス)を濾過してガス噴射口52(52a〜52f)に導く。これにより、圧縮燃料ガス供給装置102を別途に新調する必要をなくし、経済的でコンパクトな装置構成とすることができる。
【0059】
なお、ガス噴射口52の角度や環状パイプ65eを固定する構造としてパイプサポート66eを用いるかどうか等は、実施の一態様に過ぎず、本発明はそのような構造に限定されることがない。実施に際しては、各種の変形等が許容されることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0060】
51 燃料ガス制御弁
52 ガス噴射口
53 弁箱
54 弁室
55 弁座
56 弁体
57 弁棒
62 凹部
64b 環状溝
64c 環状溝
65b 環状パイプ
65c 環状パイプ
102 圧縮燃料ガス供給装置
DS 下流空間
US 上流空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスの経路となる弁箱の内部である弁室に形成された上流空間と下流空間との間の導通状態を、前記弁箱に対してスライド移動自在な弁棒に固定されてこの弁棒のスライド移動に伴い往復直線運動をする弁体の弁座に対する開閉によって制御するようにした燃料ガス制御弁において、
前記弁室を形成する領域内であって前記弁箱の前記弁棒と対面する端面に配置されたガス噴射口と、
前記ガス噴射口に前記燃料ガスを圧縮して導く圧縮燃料ガス供給装置と、
を備える、ことを特徴とする燃料ガス制御弁のダスト除去装置。
【請求項2】
前記ガス噴射口は、前記弁箱の前記端面に形成された凹部に開口している、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料ガス制御弁のダスト除去装置。
【請求項3】
前記ガス噴射口は、前記弁箱の前記端面に環状に形成された環状溝に配置された環状パイプに複数個形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料ガス制御弁のダスト除去装置。
【請求項4】
前記圧縮燃料ガス供給装置は、前記ガス噴射口からパルス状に前記燃料ガスを噴射させる、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載の燃料ガス制御弁のダスト除去装置。
【請求項5】
前記圧縮燃料ガス供給装置は、前記燃料ガスの定常流にパルスを重畳して前記ガス噴射口からパルス状に前記燃料ガスを噴射させる、ことを特徴とする請求項4に記載の燃料ガス制御弁のダスト除去装置。
【請求項6】
前記圧縮燃料ガス供給装置は、前記燃料ガスの経路中、前記燃料ガス制御弁の上流側から取り出した前記燃料ガスを濾過して前記ガス噴射口に導く、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一に記載の燃料ガス制御弁のダスト除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−57695(P2012−57695A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200778(P2010−200778)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】