説明

燃料タンクの充填を制御する燃料システム及び方法

本発明は、燃料タンクを有し且つプロセッサによって管理される車両用燃料システムに関する。プロセッサは、それに記憶された少なくとも1つの情報を受信機に通信することができる送信機に接続される。また、本発明は、プロセッサによって管理される燃料システムの一部分を形成する燃料タンクの充填を制御する方法に関する。プロセッサは、少なくとも1つの情報を送信機を介して受信機に通信し、受信機は、タンク充填ステーションの制御システムに直接作用して、充填操作を有効にしたり阻止したりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料システムに関し、また、燃料タンクの充填を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクを充填するとき、種々のハプニングが起こることがあり、かかるハプニングは、違う種類の燃料を注入したり、燃料タンクを溢れさせたり、燃料キャップをなくしたり、燃料キャップを締め忘れたり、けがをしたり、汚したりすることである。
【0003】
使用者がこれらのいくつかの厄介を受けることを防止するためのいくつかの異なるシステムが、近年、開発されてきた。
【0004】
かくして、燃料をまるっきり自動的に充填すること(燃料の種類、自動領収等)を目的として、ガソリンスタンド内の受信機と通信するために、データベースと無線送信機を車両に組み込むことが、特に、国際公開WO99/53409号及び同WO00/55752号により知られている。しかしながら、かかるシステムは、無線送信機及びデータベースの追加により、比較的高価であるという欠点を有する。
【0005】
燃料の支払をガソリンスタンドで可能にするために、また、給油中に自動診断テストを行うために、また、車両の賃貸のために請求書を送付するため等に、無線送信機を、車両に既に搭載されているプロセッサに接続することも、特に米国特許第5,995,898号及び同第6,112,152号により知られている。
【0006】
最後に、車両に搭載されたプロセッサからきた情報を警察等の自動車修理工場のパーソナルコンピュータに通信するために、BLUETOOTH(登録商標)技術を使用することが、特に米国特許第6,408,232号で知られており、BLUETOOTH(登録商標)技術は、特定のチップを有する電子装置間の電波を介した安価な標準通信システムである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基本的な目的は、エンジン回路で使用される流体(燃料、オイル、添加剤)の充填を制御するために、そして、好ましくは標準BLUETOOTH(登録商標)技術を用いる送信機/受信機を介してかかる流体の充填を制御するために、特に、所謂「スマートな」燃料システムのプロセッサを使用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、燃料タンクを有し且つプロセッサによって管理される車両用燃料システムであって、プロセッサは、それに記憶された少なくとも1つの情報を受信機に送信することができる送信機に接続されることを特徴とする車両用燃料システムに関する。
【0009】
本発明による燃料システムは、揮発性液体燃料又は重液体燃料が供給される任意の内燃機関に適している。本明細書では、燃料システムは、原動機付き車両に組み込まれるように構成された構成要素の組立体であり、原動機付き車両は、例えば、自動車、トラック、オートバイ、川船、海洋船、又は飛行機である。これらの構成要素は、概略的には、燃料の貯蔵部(タンク、キャニスター等)及びエンジンへの燃料の供給部と接続された装置を有する。
【0010】
用語「燃料」が、内燃機関に供給するのに適した炭化水素を意味することを理解すべきである。用語「液体炭化水素」」が、エンジンの標準作動条件下で、燃料システムの燃料タンク内で液体状態にある炭化水素を示す。
【0011】
用語「揮発性液体炭化水素」は、293K(20℃)において、1バール(105Pa)よりも大きい飽和蒸気圧を有する液体炭化水素(上述した定義による)を意味する。原動機付き車両の内燃機関に供給するために通常使用される揮発性液体炭化水素は、火花点火式内燃機関のために「ガソリン」として商業的に販売されている揮発性液体炭化水素である。
【0012】
用語「重液体炭化水素」は、293K(20℃)において、1バール(105Pa)よりも小さい飽和蒸気圧を有する液体炭化水素を意味すると理解すべきである。原動機付き車両の内燃機関に供給するために通常使用される重液体炭化水素は、ディーゼルサイクルに従って作動する圧縮点火式内燃機関のために「ディーゼル」又は「軽油」として商業的に販売されている重液体炭化水素である。
【0013】
本発明による燃料システムの構成要素は、取扱いの影響を受けやすい液体炭化水素の各々と相性の良い材料で作られる。この材料は、標準の動作圧力及び温度において、揮発性液体炭化水素と重液体炭化水素の両方に対して化学的に不活性でなければならない。材料は、プラスチック又は金属であるのがよい。本発明による燃料システムの構成要素はまた、ハイブリッドであってもよく、即ち、金属部品とプラスチック部品を有するのがよい。
【0014】
本発明の範囲内においては、特に燃料システムの構成要素が複雑な形状を有しているとき、特に重量、強度、化学的耐性及び容易な処理のため、熱可塑性プラスチックが良い結果をもたらす。
【0015】
用語「プロセッサ」は、本発明の目的では、燃料システムを少なくとも部分的に管理することができる任意のコンピュータ、特に、燃料の貯蔵を管理し(燃料タンク充填、換気、計測等)、可能であればエンジンへの燃料の供給を管理することができる任意のコンピュータを意味すると理解すべきである。このプロセッサは、一般的には、燃料タンク内の燃料レベルに関するデータを燃料ゲージを介して記録又は管理し、燃料タンクの外側及び内側の温度及び圧力、エンジンの瞬間消費量、制御され得るタンクフラップの位置、制御され得る弁の開位置及び閉位置、内燃機関の状態(稼働、停止、負荷等)及び車速度等に関するデータを記録又は管理する。これを行うために、プロセッサは、上述した内容に対応するセンサ、例えば、レベルゲージ、温度計測器、圧力計測器等に接続される。
【0016】
好ましくは、本発明の目的のために使用されるプロセッサは、燃料システムに特別の、即ち、専用のプロセッサであり、このプロセッサは、一般的に、FSCU(燃料システム制御ユニット)と称される。FSCUによって、本発明の目的のために使用されるプロセッサを、車両の中央プロセッサ(CPU:中央処理ユニット)又は任意その他の搭載プロセッサ、例えば、一般的にECU(エンジン制御ユニット)と称されるエンジンの作動を管理するプロセッサから区別する。この場合、FSCUは、特に、燃料ポンプに又はOBDシステム(車載診断装置、又は、車載漏れ検出システム)等の燃料システムに依存するその他の装置の有効な制御を行うことをできるようにするために、一般的にはCPU及び/又はECUと通信するための手段を有する。
【0017】
本発明による燃料システムでは、プロセッサは、送信機に「接続」され、送信機は、それが記憶している少なくとも1つの情報、即ち、データを通信することができる。このことは、プロセッサがデータを適当な通信サポートを介して送信機に通信することを意味し、通信サポートは、PWM、CAN、LIN、FlexRay方式等の電気信号であるのがよい。
【0018】
本発明の利益は、いったんデータを送信機に通信したら、送信機がそれと相性がよい受信機にデータを効果的に通信することにあり、前記受信機は、上記データを理解し且つ使用することができるプロセッサに上述した通信サポートを介して接続される。
【0019】
この目的のために、任意の種類の送信機が適当である。送信機及び受信機は、一般的には、別々の支持部の上にあるので、送信機及び受信機は、電波を介して通信することが有利である。好ましくは、本発明の目的で使用される送信機は、電波、特に短い波長範囲の電波を送信する。特に好ましくは、この送信機は、2.40〜2.48GHzの周波数範囲で作動するBLUETOOTH(登録商標)技術を使用する。その理由は、かかるシステムは高価でなく、簡単であり、電気及び電話機器の多くの製造者が標準的な仕方で採用するからである。
【0020】
本発明による燃料システムは、特にディーゼルエンジンにおける粒子排出物及び一定の汚染ガス(NOx、CO等)の排出物を削減する目的で、燃料タンクに加えて、少なくとも1つの添加剤タンクを含むのがよい。有利なことには、本発明は、少なくとも1つの添加剤タンクを有する燃料システムに適用され、添加剤は、NOx排出物を減少させる目的で排気ガス中に注入する尿素、又は、ディーゼルエンジンのための微粒子フィルタの再生を促進する目的で燃料と直接混合される金属塩等であり、添加剤タンクの作動、即ち、添加剤の計量及び貯蔵はまた、上述したプロセッサ(燃料システムの中央プロセッサ)又は燃料システムのプロセッサとLIN等を介して通信可能な独立のプロセッサによって管理される。この場合、プロセッサに接続された送信機も、この添加剤タンクの作動に関連するデータを送信できることが有利である。
【0021】
本発明はまた、上述した燃料システムの一部分を形成する燃料タンクの充填を制御する方法に関し、それにより、プロセッサは、タンク充填ステーション(例えば、ガソリンスタンド)の制御システムと直接且つ積極的な仕方で通信し、好ましくは両システムの各々に組み込まれた、送信機/受信機によって通信する。言い換えれば、上述した情報は、燃料タンクの充填を効果的に制御することができる少なくとも1つのデータを含む。用語「制御する」は、充填がこのデータの値に応じて許されたり拒否されたりすることを意味する。
【0022】
この目的のために、本発明は、かくして、プロセッサによって管理される燃料システムの一部を形成する燃料タンクの充填を制御する方法に関し、プロセッサが、充填操作又は充填作業を有効にし又はそれを阻止するためにタンクとガソリンスタンドとの間の制御システムに直接作用する少なくとも1つの情報を送信機を介して受信機に通信することを特徴とする。
【0023】
プロセッサから、好ましくはBLUETOOTH(登録商標)タイプの、相互に適合する送信機/受信機を介してガソリンスタンドの制御システムまで送信される情報は、設計段階でプロセッサに導入される固定データ(作動の連続/独立)、例えば、燃料の種類、使用者の銀行口座の現在の残高等であるのがよい。特に手動充填の場合に間違った種類の燃料を選択したとき、制御システムが充填を阻止できることが有利である。
【0024】
変形例として、又はそれに加えて、このデータは、可変データ、例えば、タンクの最大充填レベルであるのがよく、その結果、この最大充填レベルに達したとき、ポンプが送出することを防止でき、更に、現在の手動ポンプにおいて可能性がある任意の過剰充填を防止する。更に好ましくは、この場合、情報は、燃料タンクの最大充填レベルと燃料タンクゲージによって読み取られた値との比較を含む。かかる情報を、タンクの同じ最大充填レベルを繰返し再生するのに利用することは、タンク内の圧力/減圧を管理する観点で、現在のタンクに使用されているバルブシステムを特に簡単化する。
【0025】
最後に、自動(ロボット制御)充填の場合、情報は、車両の種類(及び特にモデル及びその寸法)、車両のタンクフラップの位置、又はタンク充填ノズルをロボットに対して正しく位置決めすることを可能にする任意その他の情報を含むのがよい。
【0026】
本発明の目的で、燃料システムのプロセッサに既に利用可能であり且つ所定の目的でプロセッサに導入された情報(例えば、燃料の種類)及び充填操作の制御を改善することができる情報の最大量を使用することが有利である。
【0027】
1つの特定の有利な変形例では、燃料システムの実際のデータをプロセッサに導入することも可能であり、かかる実際のデータは、前記システムと共にすることを何も有してないが、充填操作の間及びその後、使用者の生活を容易にする目的を有している。かくして、例えば、独立のサポート/送信機のための従来技術に提案されているように、車両の操作と関連した情報(それをPCで管理するために)、自動的な支払のために使用者の銀行口座との直接の通信プロセッサに導入することも可能である。また、使用者の特定、賃貸車両又は会社車両の走行距離、上述した送信機/受信機システムを介したガソリンスタンドへのデータ通信に関するデータを、プロセッサが記録するように構成してもよい。この場合、ガソリンスタンドの制御システムが、この情報を関心のある団体/企業に送信することができる情報ネットワークと通信関係にあることも可能である。
【0028】
最後に、車両上に存在するその他のタンクの流体レベル、例えば、オイルレベル、冷却水レベル、ウインドウオッシャー流体レベルの全体管理をプロセッサに組み入れ、それらに関する情報も上述した送信機を介して使用者、ガソリンスタンドの受信機、又は、例えば車両に搭載された他の受信機に送信することを確保することも可能である。
【0029】
かくして、変形例によれば、燃料システムのプロセッサに接続された送信機は、少なくとも1つの情報(データ)を、自動充填の場合には、乗員室内に配置された視覚的又は聴覚的ディスプレイ装置に送信し、手動充填の場合には、燃料タンクフラップの近くに送信する。情報は、例えば、最新の充填以来の燃料タンクの充填レベル、走行距離、及び/又は平均燃料消費量、充填の終了/開始時のシステムの適正なロック/ロック解除等である。
【0030】
可能性のあるディスプレイの種類に関して、本願出願人名義のフランス国特許第07.07838号を参照するのがよく、かかるフランス国特許は、情報を積極的に使用者に通信するための情報システムを含む自動車両の燃料タンク用の充填ボウルに関する。
【0031】
本発明がまた、波の形態のコード化された情報のためのものであり且つかかるコード化された情報を表示するための装置に接続された受信機を有する自動車両用の充填ボウルに関することが、上述したことから続く。用語「充填ボウル」は、ノズルヘッド、燃料タンクフラップ及びこれら2つの構成要素の間に位置する空間によって形成される全体システムを意味することを理解すべきである。
【0032】
本発明のこの側面によれば、送信機、好ましくは、無線送信機、最も好ましくは、BLUETOOTH(登録商標)チップに集積された送信機を介してプロセッサによって通信された少なくとも1つの情報が、互いに適合するディスプレイ装置/受信機ペアによってこのボウルに表示される。
【0033】
このボウルは、更に、情報的な及び/又は快適な性質のその他の付属機能を有しており、付属機能には、例えば、移動電話の使用中におけるボウルを介する音通信、充填ボウルを介する音放送(ラジオ/音楽)、充填ボウルの追加照明、情報の一体化がある。
【0034】
移動電話の使用中におけるボウルを介する音通信に関して、この音通信は、充填ボウル内又は燃料タンクフラップ上に設置されたラウドスピーカーを介して行われるのがよい。
【0035】
充填ボウルを介する音放送(ラジオ/音楽)により、車両の内側にいるときと外側にいるときとの間を継続して音放送を聞くことが可能である。
【0036】
情報の一体化に関し、一体化される情報は、車両(エンジンオイル、冷却水、ウインドウオッシャー液等)に存在する燃料タンク内のレベルに関する視覚的情報(警報)又は聴覚的情報である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクを有し且つプロセッサによって管理される車両用燃料システムであって、
前記プロセッサは、それに記憶された少なくとも1つの情報を受信機に通信することができる送信機に接続される、車両用燃料システム。
【請求項2】
前記送信機は、BLUETOOTH(登録商標)技術を使用する、請求項1に記載の車両用燃料システム。
【請求項3】
更に、少なくとも1つの別のタンクを有し、その作動は、前記車両用燃料システムのプロセッサによって、又は、前記車両用燃料システムのプロセッサと通信することができる独立のプロセッサによって管理される、請求項1又は2に記載の車両用燃料システム。
【請求項4】
プロセッサによって管理される燃料システムの一部分を形成する燃料タンクの充填を制御する方法であって、
前記プロセッサは、少なくとも1つの情報を送信機を介して受信機に通信し、
前記受信機は、タンク充填ステーションの制御システムに直接作用して、充填操作を有効にしたり阻止したりする、方法。
【請求項5】
前記情報は、車両に使用される燃料の種類を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記情報は、前記燃料タンクの最大充填レベルと前記燃料タンクの燃料ゲージによって読み込まれる値との間の比較を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記タンク充填ステーションは、ロボットを含む自動充填ステーションであり、
前記情報は、前記燃料タンクを充填するためのノズルの、前記ロボットに対する位置に関するデータを含む、請求項4〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、車両に搭載されている1つ又は2つ以上のタンク内の燃料レベルに関するデータを記録し、そのデータを前記送信機を介して通信する、請求項4〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記送信機は、前記プロセッサ内に記憶された少なくとも1つの情報を受信機に通信し、前記受信機は、乗員室内に位置する又は車両の燃料タンクフラップに近接して位置する視覚又は聴覚表示装置に接続される、請求項4〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
車両用の燃料容器であって、
コード化された情報を波の形態で受け取るための受信機を有し、前記受信機は、前記コード化された情報を表示する装置に接続される、燃料容器。

【公表番号】特表2008−529911(P2008−529911A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555624(P2007−555624)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060071
【国際公開番号】WO2006/087376
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(502294138)イネルジー オートモーティヴ システムズ リサーチ (41)
【Fターム(参考)】