説明

燃料タンクの部品接合構造

【課題】タンク本体が再生層を有していても、HC透過量を抑制し且つ十分な接合強度をもって付属部品を接合させる。
【解決手段】内層11、HCバリア層12、再生層13、および加熱溶着可能層14を内側からこの順に配置したタンク本体10に対し、環状のHCバリア部分23およびその外側の加熱溶着可能部分24を有するベントバルブ20を接合するために、端面15aがタンク外方へ向くとともに内周面15bが開口16を形成する環状壁部15をタンク本体10に形成し、環状壁部15の端面15aに露出したHCバリア層12にHCバリア部分23を整合させた状態で、環状壁部15の周囲における第1環状溶着部31と環状壁部15における第2環状溶着部32とをもって加熱溶着可能部分24を加熱溶着可能層14に溶着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの部品接合構造に関し、特に合成樹脂製のタンク本体の開口に付属部品を溶着するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量化が容易で高い生産性が得られる合成樹脂材の燃料タンクが種々開発されている。一般にブロー成型に用いられる高密度ポリエチレン(以下、HDPEと称する)は、炭化水素(HC)の不透過性(バリア性)が低いため、そのままガソリンタンク全体に適用することは大気汚染防止の観点から困難であり、エチレンビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと称する)などのHCに対するバリア性が高い材料をHDPE内にバリア層として介在させたものが知られている。
【0003】
この種の合成樹脂製の燃料タンクにおいては、フィラーネックやベントバルブなどの付属部品をタンク本体に接合する場合、接合強度を確保したうえで接合部からのHCの透過量を抑制する必要がある。HC透過量の抑制のためにバリア層に不連続部分が生じないようにした接合構造として、HDPEなどの加熱溶着可能材とHCバリア材との積層材からなる合成樹脂製タンク本体に対し、外向きに凸となる膨出部を形成し、膨出部を単一の平面に沿って切除して開口を形成し、HCバリア材層と加熱溶着可能材層とが同心的に露出した切断端面に、付属部品のHCバリア材層を対向させた状態で付属部品を加熱溶着させるようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−235624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、タンク本体の材料として純粋な(不純物の少ない)バージン材のHDPEではなく、不純物を多く含む再生材を用いることがある。ところが、再生材に付属部品を確実に接合することは困難なため、再生材を用いる場合には、付属部品を確実に溶着させるために、バリア層の外側に設けた再生材からなる再生層のさらに外側に純粋なHDPEからなる加熱溶着可能層を設け、加熱溶着可能層に付属部品を溶着することが考えられる。
【0006】
しかしながら、引用文献1の接合構造を上記再生層を有する燃料タンクに適用すると、膨出部を切断して形成した切断端面に露出する加熱溶着可能層の面積が小さくなるため、十分な接合強度を得ることができない。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、タンク本体に再生材からなる再生層が設けられても、HC透過量を抑制し且つ十分な接合強度をもって付属部品を接合することのできる燃料タンクの部品接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一側面によれば、燃料を収容する内層(11)、HCバリア層(12)、再生材からなる再生層(13)、および加熱溶着可能層(14)が内側からこの順に配置されたタンク本体(10)に付属部品(ベントバルブ20)を接合するための燃料タンク(1)の部品接合構造であって、タンク本体は、端面(15a)がタンク外方へ向くとともに内周面(15b)が開口(16)を形成する環状壁部(15)を備え、付属部品は、環状壁部の端面に露出するHCバリア層に整合する位置に配置された環状のHCバリア部分(23)と、当該HCバリア部分の外側に配置された加熱溶着可能部分(24)とを有し、環状壁部の端面に露出するHCバリア層に当接した状態で、加熱溶着可能部分が少なくとも環状壁部の周囲の第1環状溶着部(31)と環状壁部の端面の第2環状溶着部(32)とをもって加熱溶着可能層に溶着されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、環状壁部の端面に露出したHCバリア層にHCバリア部分を整合させ且つ付属部品が当該HCバリア層に当接した状態、つまりHCバリア部分がHCバリア層に連続した状態または溶融した加熱溶着可能部分を挟んでHCバリア部分がHCバリア層に連続した状態で、付属部品がタンク本体に接合されるため、HC透過領域を小さくしてHC透過量を抑制することができる。また、加熱溶着可能部分が環状壁部の周囲の第1環状溶着部と環状壁部の端面の第2環状溶着部とをもって加熱溶着可能層に溶着されるため、溶着面積を大きくとることで付属部品のタンク本体に対する接合強度を所望に得ることができる。
【0010】
また、本発明の一側面によれば、環状壁部の端面に露出するHCバリア層とHCバリア部分との間に加熱溶着可能部分の溶融物が介在することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、溶融した加熱溶着可能部分が、HCバリア層とHCバリア部分との間に充填された状態でHCバリア部分と内層とに溶着することとなるため、加工誤差などによってHCバリア層とHCバリア部分との間に空隙が生じてHC透過量が増大するのを防止できるとともに、付属部品のタンク本体に対する接着強度をさらに高めることができる。
【0012】
また、本発明の一側面によれば、第1環状溶着部と第2環状溶着部とが略同一平面上にあり、第1環状溶着部と第2環状溶着部との間に、加熱時に溶融した環状壁部の溶融材を受容する環状凹部(17)が形成されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1環状溶着部と第2環状溶着部とが略同一平面上にあるため、タンク本体および付属部品を溶融させるヒータを単純な平板状にすることができる。また、溶融時或いは溶着時に環状壁部の再生層などの溶融材が環状凹部に受容され、この空間部がトラップとして機能するため、溶融材の混入によって第1環状溶着部の溶着強度の低下することを防止できる。そのため、付属部品のタンク本体に対する所望の接合強度を確保することができる。さらに、タンク本体の開口部の周辺がリブ形状となるため、付属部品接合部の強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、タンク本体に再生材からなる再生層が設けられても、HC透過量を抑制し且つ十分な接合強度をもって付属部品をタンク本体に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料タンクの要部断面図
【図2】図1に示すタンク本体の製造手順の説明図
【図3】第1実施形態の変形例を示す燃料タンクの要部断面図
【図4】本発明の第2実施形態に係る燃料タンクの要部断面図
【図5】第2実施形態の変形例を示す燃料タンクの要部断面図
【図6】本発明の第3実施形態に係る燃料タンクの要部断面図
【図7】第3実施形態の変形例を示す燃料タンクの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る燃料タンク1の部品接合構造の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
≪第1実施形態≫
図1に示すように、燃料タンク1は、タンク本体10と、タンク本体10の上面に形成された開口16を塞ぐようにタンク本体10に接合された付属部品としてのベントバルブ20とを有している。
【0018】
タンク本体10は、ブロー成形によって製造され、内側から順に、燃料を収容するHDPEからなる内層11、EVOHからなるHCバリア層12、HDPEを主材料とする再生材からなる再生層13、およびHDPEからなる加熱溶着可能層14が配置された4層構造をなしている。なお、内層11とHCバリア層12との間、およびHCバリア層12と再生層13との間には、両層の接着性を確保するために図示しない接着層が形成されているが、接着層は複層構造を実現するためのタンク本体10の補助的機能を果たすものであるため、ここでは接着層を層と捉えないものとし、その説明も省略する。
【0019】
タンク本体10の開口16の周囲には、端面15aがタンク外方へ向くとともに内周面15bが開口16を形成する環状壁部15が形成されている。この環状壁部15の周囲には、環状壁部15の端面15aに比較してタンク内方へ凹んだ環状凹部17が形成されるとともに、さらにその周囲には、環状凹部17に比較してタンク外方へ膨出した環状膨出部18が形成されている。なお、環状膨出部18は、環状壁部15と同じ高さとなっている。つまり、環状膨出部18の外表面は環状壁部15の端面15aと同一面上に配置されている。
【0020】
なお、本実施形態では、環状膨出部18は、環状凹部17に比較してタンク外方へ膨出するとともにその周辺部位(ベントバルブ20との接合領域に対する周辺部位)に比較してもタンク外方へ膨出するように形成されているが、周辺部位に比較してタンク外方へ膨出している必要はなく、周辺部位の外面と同一平面をなす外面を有するようにしてもよい。
【0021】
ベントバルブ20は、射出成形によって製造され、バルブ本体21と、バルブ本体21を支持するとともに開口16を閉塞する蓋部22と、蓋部22の上面から延出するように一体形成され、キャニスターに接続される図示しないベントパイプとの接続に供されるノズル部25とを有している。蓋部22は、2色成形によって内側に環状に配置され、ポリアミド系樹脂(以下、PAと称す。)などのHCに対するバリア性が高い材料からなるHCバリア部分23と、外側に配置され、HDPEや変性ポリエチレンなどからなる加熱溶着可能部分24とを有しており、下端が開放された蓋付き筒形状をなしている。また、ノズル部25も、2色成形によって内側にバリア性の高い材料が配置され、外側にHDPEなどが配置されている。
【0022】
蓋部22のタンク本体10との接合面、すなわち筒状部分の下面は、タンク本体10の外面に沿う単一平面となっている。これにより、蓋部22とタンク本体10の環状凹部17との間に空間部Sが形成されている。また、蓋部22のタンク本体10との接合面においてHCバリア部分23および加熱溶着可能部分24が同心状に露出し、HCバリア部分23は、環状壁部15の端面15aに露出するHCバリア層12に対向(整合)する位置に配置されている。
【0023】
ベントバルブ20は、タンク本体10の環状壁部15の端面15aに露出するHCバリア層12にHCバリア部分23を対向(整合)させた状態で、加熱溶着可能部分24がタンク本体10の加熱溶着可能層14に溶着されることでタンク本体10に接合されている。より具体的には、ベントバルブ20の加熱溶着可能部分24は、タンク本体10の環状膨出部18の外面において加熱溶着可能層14に加熱溶着された第1環状溶着部31と、タンク本体10の環状壁部15の端面15aにおいて加熱溶着可能層14に加熱溶着された第2環状溶着部32とをもって溶着されている。そして、環状凹部17により形成された空間部Sは、タンク本体10の環状壁部15の端面15aおよび環状膨出部18の外面にベントバルブ20を加熱溶着したときのつぶれ代を受容できるようになっている。
【0024】
この燃料タンク1の製造方法は次の通りである。図2に示すように、環状膨出部18の内側に環状凹部17を挟んでタンク外方へ向けて突出するドーム部19を有するように4層構造のタンク本体10をブロー成形し、その後、環状膨出部18の外面高さに合わせてドーム部19を切断除去することにより、環状壁部15を有するタンク本体10を形成する。なお、図2においては、各層11〜14の図示を省略してタンク本体10の輪郭のみを示している。
【0025】
次に、環状壁部15の端面15aおよび環状膨出部18の上面(外面)と蓋部22の下面とを熱板ヒータで加熱溶融させ、環状壁部15の端面15aに露出するHCバリア層12にHCバリア部分23を対向(整合)させた状態で、蓋部22を環状壁部15の端面15aおよび環状膨出部18の上面に接触させて押圧した後、大気中に放置して冷却することで、加熱溶着可能部分24が第1環状溶着部31および第2環状溶着部32をもって加熱溶着可能層14に溶着された、ベントバルブ20のタンク本体10に対する接合構造を得ることができる。
【0026】
この燃料タンク1によれば、環状壁部15の端面15aに露出したHCバリア層12にHCバリア部分23を対向させた状態でベントバルブ20がタンク本体10に接合されることにより、HCバリア材に不連続部分が生じないため、タンク本体10とベントバルブ20との接合部からのHC透過量を少なくすることができる。また、加熱溶着可能部分24が、環状壁部15よりも外周側の第1環状溶着部31をもって加熱溶着可能層14に溶着されるため、接合面積を確保してベントバルブ20のタンク本体10に対する接合強度を所望に得ることができる。さらに、加熱溶着可能部分24が、第1環状溶着部31だけでなくその環状形状の内側に位置する第2環状溶着部32をも介して加熱溶着可能層14に溶着されるため、タンク本体10に対する接合強度を一層高めることが可能になっている。
【0027】
また、燃料タンク1の第1環状溶着部31と第2環状溶着部32との間に環状凹部17があることにより、第1環状溶着部31と第2環状溶着部32とが略同一平面上にある場合であっても、加熱溶着時に溶融した環状壁部15の再生層13および加熱溶着可能層14の溶融材が環状凹部17により形成された空間部Sに逃げ込めるため、HCバリア層12をベントバルブ20のHCバリア部分23に略密着させることができるとともに、環状凹部17がトラップとして機能することにより、溶融材の混入によって第2環状溶着部32の溶着強度が低下することを防止できるため、ベントバルブ20のタンク本体10に対する所望の接合強度を確保することができる。また、タンク本体10の開口16の周辺が環状壁部15および環状凹部17によってリブ形状となるため、ベントバルブ20接合部の強度を向上することもできる。
【0028】
<変形例>
次に、図3を参照して、上記実施形態に係る燃料タンク1の部品接合構造の変形例を説明する。本実施例では、(A)に示すように接合前の状態において、ベントバルブ20が、タンク本体10に対する接合面において加熱溶着可能部分24をHCバリア部分23よりも下方へ突出させた段差面をなすように構成されたことにより、図示しない平板状の熱板ヒータにより下面を加熱されたときに、(B)に示すように、溶融した加熱溶着可能部分24がHCバリア部分23の下方に回り込んでHCバリア部分23の環状の端面を覆い、この状態でタンク本体10に接合されている。
【0029】
したがって、ベントバルブ20は、環状壁部15の端面15aに露出したHCバリア層12にHCバリア部分23を整合させ、且つ当該HCバリア層12に加熱溶着可能部分24を当接させた状態、つまり溶融した加熱溶着可能部分24を挟んでHCバリア部分23がHCバリア層12に連続した状態でタンク本体10に接合される。
【0030】
このような形態の接合構造であっても、HCバリア層12とHCバリア部分23との非連続部分、すなわち両者に挟まれた加熱溶着可能部分24の厚さtが小さいために、再生層13や加熱溶着可能層14を透過してタンク外方へ透過するHC透過量を抑制することができる。
【0031】
また、溶融した加熱溶着可能部分24が、HCバリア層12とHCバリア部分23との間に充填された状態で、環状壁部15の端面15aにおいて第3環状溶着部33をもって内層11に溶着することとなるため、加工誤差などによってHCバリア層12とHCバリア部分23との間に空隙が生じてHC透過量が増大するのを防止できるとともに、ベントバルブ20のタンク本体10に対する接着強度をさらに高めることができる。
【0032】
≪第2実施形態≫
次に、図4を参照しながら第2実施形態に係る燃料タンク1を説明する。なお、第1実施形態と同一または同様な部材に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略する。以下の実施形態においても同様とする。
【0033】
図4に示すように、本実施形態では、タンク本体10が、環状壁部15の周囲に環状膨出部18を有さず平坦とされており、端面15aがタンク外方へ向く環状壁部15は周辺に比べて高くなっている点で、第1実施形態と相違する。言い換えれば、端面15aに比較してタンク内方へ凹んだ環状凹部17が、環状壁部15の周囲において蓋部22に比較して広範囲にわたって形成されている。
【0034】
一方、ベントバルブ20の蓋部22は、外周側が下方へ(タンク内方へ)向けて突出した環状凸部26を備えており、蓋部22のタンク本体10との接合面、すなわち筒状部分の下面が、環状壁部15の端面15aとその周辺部分の上面(外面)に接合すべく、これらの高低差に応じた段差を形成している。
【0035】
蓋部22の下面における低い側(タンク内側)には、加熱溶着可能部分24が露出し、蓋部22の下面における高い側(タンク外側)には、外周側に加熱溶着可能部分24が露出するとともに、内周側にHCバリア部分23が露出している。
【0036】
ベントバルブ20は、タンク本体10の環状壁部15の端面15aに露出するHCバリア層12にHCバリア部分23を対向(整合)させた状態で、環状壁部15の端面15aにおける第1環状溶着部31とその周辺部分の上面における第2環状溶着部32とをもって加熱溶着可能部分24が加熱溶着可能層14に溶着されることでタンク本体10に接合されている。
【0037】
環状凸部26の内周形状は環状壁部15の外周形状よりも大きくされており、環状凸部26と環状壁部15との間に形成される環状の空間部Sが、タンク本体10の環状壁部15の端面15aおよび周辺部分の上面にベントバルブ20の蓋部22を加熱溶着するためのつぶれ代を受容できるようになっている。
【0038】
燃料タンク1がこのように構成されても、環状壁部15のHCバリア層12とベントバルブ20のHCバリア部分23とが連続した状態となるため、タンク本体10とベントバルブ20との接合部からのHC透過量を少なくすることができる。また、加熱溶着可能部分24が、第1環状溶着部31だけでなくその内側の第2環状溶着部32をも介して加熱溶着可能層14に溶着されることにより、接合面積を確保してベントバルブ20のタンク本体10に対する接合強度を所望に得ることができる。
【0039】
<変形例>
図5は、第2実施形態に係る燃料タンク1の部品接合構造の変形例を示す。本実施形態においても第1実施形態と同様に、(A)に示すように接合前の状態において、ベントバルブ20が、タンク本体10に対する接合面のうち高い側(タンク外側)において加熱溶着可能部分24をHCバリア部分23よりも下方へ突出させた段差面をなすように構成されたことにより、図示しない段差を有する熱板ヒータにより下面を加熱されたときに、(B)に示すように、溶融した加熱溶着可能部分24がHCバリア部分23の下方に回り込んでHCバリア部分23の環状の端面を覆い、この状態でタンク本体10に接合されている。
【0040】
したがって、ベントバルブ20は、環状壁部15の端面15aに露出したHCバリア層12にHCバリア部分23を整合させ且つ当該HCバリア層12に当接した状態、つまり溶融した加熱溶着可能部分24を挟んでHCバリア部分23がHCバリア層12に連続した状態でタンク本体10に接合される。
【0041】
このような形態で接合されても、第1実施形態の変形例と同様に、HCバリア層12とHCバリア部分23との非連続部分、すなわち両者に挟まれた加熱溶着可能部分24の厚さtが小さいために、再生層13や加熱溶着可能層14を透過してタンク外方へ透過するHC透過量を抑制することができる。
【0042】
また、熱板ヒータで加熱された時やベントバルブ20が押し付けられた時に溶融材が空間部Sに押し出され、加熱溶着可能層14が再生層13によって覆われて環状壁部15の端面15aに露出しない状態になっているが、ベントバルブ20の加熱溶着可能部分24が環状壁部15の周囲の第1環状溶着部31をもって、すなわち所望の接合面積をもって加熱溶着可能層14に溶着されることにより、タンク本体10に対する所望の接合強度を確保できることは第1実施形態の変形例と同じである。
【0043】
さらに、溶融した加熱溶着可能部分24が、HCバリア層12とHCバリア部分23との間に充填された状態で、環状壁部15の端面15aにおいて第3環状溶着部33をもって内層11に溶着することとなるため、加工誤差などによってHCバリア層12とHCバリア部分23との間に空隙が生じてHC透過量が増大するのを防止できるとともに、ベントバルブ20のタンク本体10に対する接着強度をさらに向上可能であることも第1実施形態の変形例と同じである。
【0044】
≪第3実施形態≫
図6に示すように、本実施形態では、タンク本体10が、環状壁部15の周囲に環状膨出部18だけでなく環状凹部17をも有さず平坦とされており、端面15aがタンク外方へ向く環状壁部15はその周辺と同じ高さとなっている点で、上記実施形態と相違する。一方、ベントバルブ20は、第1実施形態と同様に、蓋部22のタンク本体10との接合面が、タンク本体10の外面に沿う単一平面となっており、この単一平面にHCバリア部分23および加熱溶着可能部分24が同心状に露出している。
【0045】
ベントバルブ20は、タンク本体10の環状壁部15の端面15aに露出するHCバリア層12にHCバリア部分23を対向(整合)させた状態で、実質的に連続した1つの領域となる環状壁部15の端面15aにおける第2環状溶着部32とその周辺部分の上面における第1環状溶着部31とをもって加熱溶着可能部分24が加熱溶着可能層14に溶着されることでタンク本体10に接合されている。
【0046】
燃料タンク1がこのように構成されても、環状壁部15のHCバリア層12とベントバルブ20のHCバリア部分23とが連続した状態となるため、タンク本体10とベントバルブ20との接合部からのHC透過量を少なくすることができる。また、加熱溶着可能部分24が、所望の接合面積とし得る第1環状溶着部31をもって接合されるとともに、その内側の第2環状溶着部32をも介して加熱溶着可能層14に溶着されることにより、ベントバルブ20のタンク本体10に対する接合強度を所望に得ることができる。
【0047】
<変形例>
図7は、第3実施形態に係る燃料タンク1の部品接合構造の変形例を示す。本実施形態においても第1および第2実施形態と同様に、(A)に示すように接合前の状態において、ベントバルブ20が、タンク本体10に対する接合面において加熱溶着可能部分24をHCバリア部分23よりも下方へ突出させた段差面をなすように構成されたことにより、図示しない平板状の熱板ヒータにより下面を加熱されたときに、(B)に示すように、溶融した加熱溶着可能部分24がHCバリア部分23の下方に回り込んでHCバリア部分23の環状の端面を覆い、この状態でタンク本体10に接合される。
【0048】
したがって、ベントバルブ20は、環状壁部15の端面15aに露出したHCバリア層12にHCバリア部分23を整合させ且つ当該HCバリア層12に当接した状態、つまり溶融した加熱溶着可能部分24を挟んでHCバリア部分23がHCバリア層12に連続した状態でタンク本体10に接合される。
【0049】
このような形態の接合構造であっても、第1および第2実施形態の変形例と同様に、HCバリア層12とHCバリア部分23との非連続部分、すなわち両者に挟まれた加熱溶着可能部分24の厚さtが小さいために、再生層13や加熱溶着可能層14を透過してタンク外方へ透過するHC透過量を抑制することができる。また、溶融した加熱溶着可能部分24が、HCバリア層12とHCバリア部分23との間に充填された状態で、環状壁部15の端面15aにおいて第3環状溶着部33をもって内層11に溶着することとなるため、加工誤差などによってHCバリア層12とHCバリア部分23との間に空隙が生じてHC透過量が増大するのを防止できるとともに、ベントバルブ20のタンク本体10に対する接着強度をさらに高めることができる。
【0050】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、タンク本体10は4層構造とされているが、4層構造に限定されるものではなく、少なくともこれら4層を含むものであれば4層以上であってもよい。なお、上記実施形態に示した本発明に係る燃料タンク1の部品接合構造の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 燃料タンク
10 タンク本体
11 内層
12 HCバリア層
13 再生層
14 加熱溶着可能層
15 環状壁部
15a 端面
15b 内周面
16 開口
17 環状凹部
20 ベントバルブ(付属部品)
23 HCバリア部分
24 加熱溶着可能部分
31 第1環状溶着部
32 第2環状溶着部
33 第3環状溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を収容する内層、HCバリア層、再生材からなる再生層、および加熱溶着可能層が内側からこの順に配置されたタンク本体に付属部品を接合するための燃料タンクの部品接合構造であって、
前記タンク本体は、端面がタンク外方へ向くとともに内周面が開口を形成する環状壁部を備え、
前記付属部品は、前記環状壁部の端面に露出するHCバリア層に整合する位置に配置された環状のHCバリア部分と、当該HCバリア部分の外側に配置された加熱溶着可能部分とを有し、前記環状壁部の端面に露出するHCバリア層に当接した状態で、前記加熱溶着可能部分が少なくとも前記環状壁部の周囲の第1環状溶着部と前記環状壁部の端面の第2環状溶着部とをもって前記加熱溶着可能層に溶着されたことを特徴とする燃料タンクの部品接合構造。
【請求項2】
前記環状壁部の端面に露出するHCバリア層と前記HCバリア部分との間に前記加熱溶着可能部分の溶融物が介在することを特徴とする、請求項1に記載の燃料タンクの部品接合構造。
【請求項3】
前記第1環状溶着部と前記第2環状溶着部とが略同一平面上にあり、
前記第1環状溶着部と前記第2環状溶着部との間に、加熱時に溶融した前記環状壁部の溶融材を受容する環状凹部が形成されたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の燃料タンクの部品接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−116558(P2012−116558A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270663(P2010−270663)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【Fターム(参考)】