説明

燃料フィルター装置

【課題】 導電性を有さない安価なフィルターエレメントを用いて、導電性を有する高価なフィルターケースを不要にしながら、フィルターエレメントの帯電を確実に防止する。
【解決手段】 フィルターエレメント20の内周面を導電性のパンチングメタル37で保持し、フィルターエレメント20に帯電した電荷をパンチングメタル37を介してアースするので、高価な導電性のフィルターエレメントや、高価な導電性フィルターケースを不要にし、コストダウンおよび耐久性向上に寄与することができる。またフィルターケース19とパンチングメタル37との間に導電性の板ばね40を配置し、フィルターエレメント20に帯電した電荷をパンチングメタル37および板ばね40を介してアースするので、板ばね40の弾発力でパンチングメタル37との間の接触不良を防止することができるだけでなく、板ばね40の弾発力でパンチングメタル37およびフィルターエレメント20のガタつきを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のフィルターエレメントと、前記フィルターエレメントを収納するフィルターケースとを備える燃料フィルターを燃料タンクの内部に配置した燃料フィルター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクから燃料ポンプでエンジンに供給される燃料を濾過して塵等の不純物を除去するフィルター装置において、フィルターケースに収納した円筒状のフィルターエレメントの径方向外側のダーティ室から径方向内側のクリーン室に燃料を通過させて濾過するものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特開2007−291942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、フィルターエレメントを燃料が通過すると、その摩擦力でフィルターエレメントが帯電し、帯電量がフィルターケースの静電容量を超えるとフィルターケースの近傍の部材に放電したり、フィルターケース自体が自己破壊してピンホールが形成される等の事象が発生することが知られている。
【0004】
これを防止するために、従来はフィルターエレメントに導電性を有するものを使用し、フィルターエレメントをアース線を介してアースする方法や、フィルターエレメントを収納するフィルターケースに導電性材料を使用し、フィルターケースをアース線を介してアースする方法が採用されていた。
【0005】
しかしながら、上記前者の方法では、導電性を有するフィルターレメントは高価であり、かつフィルターエレメントに対するアース線の接続が困難で接触不良が発生する可能性があった。また上記後者の方法では、導電性材料を用いたフィルターケースは高価であるばかりか、導電性材料を用いないものに比べて耐圧強度が低くなる問題があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、導電性を有さない安価なフィルターエレメントを用いて、導電性を有する高価なフィルターケースを不要にしながら、フィルターエレメントの帯電を確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、円筒状のフィルターエレメントと、前記フィルターエレメントを支持するフィルターケースとを備える燃料フィルターをタンク本体の内部に配置した燃料フィルター装置において、前記燃料フィルターは、前記フィルターエレメントの外周面あるいは内周面を保持する導電性のパンチングメタルを備え、前記フィルターエレメントに帯電した電荷を前記パンチングメタルを介してアースすることを特徴とする燃料フィルター装置が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記フィルターケースと前記パンチングメタルとの間に導電性の板ばねを配置し、前記フィルターエレメントに帯電した電荷を前記パンチングメタルおよび前記板ばねを介してアースすることを特徴とする燃料フィルター装置が提案される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、フィルターエレメントの外周面あるいは内周面を導電性のパンチングメタルをで保持し、フィルターエレメントに帯電した電荷をパンチングメタルを介してアースするので、高価な導電性のフィルターエレメントや、高価な導電性フィルターケースを不要にし、コストダウンおよび耐久性向上に寄与することができる。
【0010】
また請求項2の構成によれば、フィルターケースとパンチングメタルとの間に導電性の板ばねを配置し、フィルターエレメントに帯電した電荷をパンチングメタルおよび板ばねを介してアースするので、板ばねの弾発力でパンチングメタルとの間の接触不良を防止することができるだけでなく、板ばねの弾発力でパンチングメタルおよびフィルターエレメントのガタつきを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0012】
図1および図2は本発明の実施の形態を示すもので、図1は燃料タンクの要部縦断面図、図2は図1の2部拡大図である。
【0013】
図1に示すように、車両用燃料タンクTは合成樹脂でブロー成形されたタンク本体11を備えており、その上面に突設された円筒状の開口部11aにシール部材12を介して着脱自在にねじ結合されるキャップ13により、円板状の蓋部材14が挟まれて固定される。
【0014】
燃料ポンプモジュール15は、円筒状の容器で構成されてタンク本体11の内部空間に連通するリザーバ16と、リザーバ16の底部に配置されたストレーナ17と、リザーバ16の中央部に配置されたモータ一体型の燃料ポンプ18と、リザーバ16の上部に区画された合成樹脂製の環状のフィルターケース19に収納された環状のフィルターエレメント20と、フィルターケース19の下面に設けられた調圧弁21と、タンク本体11内の燃料液面を検出する液面センサ22とを備える。ストレーナ17は燃料ポンプ18の吸入側に接続され、吐出側が第1燃料ホース23を介してフィルターケース19のフィルターエレメント20の外側のダーティ室38に接続される。フィルターケース19の内側のクリーン室39は第2燃料ホース24を介して蓋部材14に設けた継ぎ手25に接続され、継ぎ手25は図示せぬフィードパイプを介してエンジンに接続される。またフィルターケース19の内周部は調圧弁21を介してリザーバ16の下部に連通する。
【0015】
液面センサ22は、リザーバ16の上面に固定されたポテンショメータよりなるセンサ本体26と、センサ本体26に揺動自在に支持されたL字状のアーム27と、アーム27の先端に設けられたフロート28とで構成される。センサ本体26から延びるリード線29と、燃料ポンプ18から延びるリード線30とが蓋部材14を貫通してタンク本体11の外部に引き出される。
【0016】
蓋部材14の下面から120°間隔で3本のガイドパイプ32…が下向きに突出しており、これらのガイドパイプ32…にリザーバ16の上面から120°間隔で上向きに突出する3本のガイドロッド33…が摺動自在に嵌合する。そしてガイドロッド33…の外周に支持した3本のコイルスプリング34…の両端がリザーバ16の上面およびガイドパイプ32…の下面に当接する。従って、コイルスプリング34…の弾発力で燃料ポンプモジュール14および蓋部材14は相互に離反する方向に付勢され、燃料ポンプモジュール15の下面がタンク本体11の底面に当接して位置決めされる。
【0017】
図2に拡大して示すように、フィルターエレメント20はシート状の濾紙をジグザグに折って円筒状にしたもので、その上端および下端が環状の上部ホルダ35および下部ホルダ36が嵌合して円筒状に保持される。上部ホルダ35および下部ホルダ36は、その内周面が導電性金属で円筒状に構成されたパンチングメタル37によって一体に接続されており、パンチングメタル37の外周面にフィルターエレメント20の内周面が当接する。下部ホルダ36はフィルターケース19の下部に形成された凹部19aに嵌合して保持される。この状態で、上部ホルダ35の上面に突設したリップ35aがフィルターケース19の上壁内面に弾発的に当接し、下部ホルダ36の下面に突設したリップ36aがフィルターケース19の下壁内面に弾発的に当接しすることで、フィルターエレメント20の外側のダーティ室38および内側のクリーン室39が区画される。
【0018】
フィルターケース19の内周壁19bとパンチングメタル37の内周面との間に導電性材料で構成した板ばね40が装着されており、板ばね40はパンチングメタル37に電気的に接触する。板ばね40の上端はピン41およびクリップ42でフィルターケース19の上壁19cに固定されており、フィルターケース19の上壁19cを貫通したピン41がアース線43で図示せぬ車体にアースされる。前記フィルターケース19、フィルターエレメント20、上部ホルダ35、下部ホルダ36およびパンチングメタル37は燃料フィルター31を構成する。
【0019】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0020】
燃料ポンプ18を駆動すると、リザーバ16内の燃料がストレーナ17を介して汲み上げられ、その燃料は第1燃料ホース23を介してフィルターケース19内のフィルターエレメント20の外側のダーティ室38に供給される。フィルターエレメント20を外周側から内周側に通過して濾過された燃料は、クリーン室39から第2燃料ホース24および図示せぬフィードパイプを介してエンジンに供給される。このとき、フィルターエレメント20を通過した燃料は調圧弁21で調圧され、余剰となった燃料は調圧弁21からリザーバ16内に戻される。
【0021】
さて、燃料がフィルターエレメント20を通過するとき、その摩擦によってフィルターエレメント20が帯電するが、その電荷はフィルターエレメント20の内周面に当接するパンチングメタル37から板ばね40、ピン41およびアース線43を介してアースされるため、フィルターエレメント20の帯電を確実に防止することができる。
【0022】
またパンチングメタル37はフィルターエレメント20に広い面積で接触するので、接触不良の発生がないだけでなく、パンチングメタル37でフィルターエレメント20の形状を保持することができる。板ばね40は自己の弾発力でパンチングメタル37に接触するので接触不良の発生がないだけでなく、板ばね40の弾発力がパンチングメタル37に作用するのでフィルターエレメント20のガタつきを防止することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0024】
例えば、実施の形態ではパンチングメタル37をフィルターエレメント20の内周面に配置しているが、それを外周面に配置しても良い。
【0025】
また実施の形態では、燃料フィルター31を燃料ポンプモジュール15の内部に配置しているが、それを燃料ポンプから分離して設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】燃料タンクの要部縦断面図
【図2】図1の2部拡大図
【符号の説明】
【0027】
11 タンク本体
19 フィルターケース
20 フィルターエレメント
31 燃料フィルター
37 パンチングメタル
40 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のフィルターエレメント(20)と、前記フィルターエレメント(20)を支持するフィルターケース(19)とを備える燃料フィルター(31)をタンク本体(11)の内部に配置した燃料フィルター装置において、
前記燃料フィルター(31)は、前記フィルターエレメント(20)の外周面あるいは内周面を保持する導電性のパンチングメタル(37)を備え、前記フィルターエレメント(20)に帯電した電荷を前記パンチングメタル(37)を介してアースすることを特徴とする燃料フィルター装置。
【請求項2】
前記フィルターケース(19)と前記パンチングメタル(37)との間に導電性の板ばね(40)を配置し、前記フィルターエレメント(20)に帯電した電荷を前記パンチングメタル(37)および前記板ばね(40)を介してアースすることを特徴とする、請求項1に記載の燃料フィルター装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−13997(P2010−13997A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173856(P2008−173856)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(503103383)TI Automotive Japan株式会社 (1)
【Fターム(参考)】