説明

燃料ポンプ制御装置

【課題】センサによる衝突検知に基づいて燃料ポンプを停止して、良好な信頼性を有する燃料ポンプ制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る燃料ポンプ制御装置(100)は、車両の衝突の有無を検出し、衝突信号又は非衝突信号を送信する衝突検出手段(11,12)と、衝突信号を受信したとき、燃料ポンプ(4)を第1所定期間T1停止させる停止手段(17)とを備える。ここで第1所定期間T1は、停止手段(17)によって燃料ポンプ(4)を停止することによって、燃料配管(5)における燃料圧力が所定値となる期間内であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突検出時に燃料ポンプを停止させることにより、燃料タンクからエンジンに供給される燃料をカットする燃料ポンプ制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に走行用動力源として搭載されるエンジンは、ガソリンや軽油などの燃料を消費して駆動されるが、この燃料は予め燃料タンクに貯留されており、燃料ポンプによって燃料配管を介してエンジンに圧送されることにより供給される。このようなエンジンへの燃料供給は車両が正常に走行している間は継続的に行われるが、車両衝突時のように、燃料配管等の燃料供給系が破損して燃料が漏れ出すおそれが生じた場合には、燃料ポンプを停止させて燃料の流出を抑制する必要がある。
【0003】
このような車両衝突時の燃料ポンプの停止制御は、加速度センサなどを用いた車両衝突センサによって衝突を検出して自動的に行われる。ここで、衝突車両を現場から移動させる場合等のように、衝突後にエンジンを再始動させる必要が生じたときには、一度停止した燃料ポンプを再度作動させる必要がある。一方で、停止した燃料ポンプを作動する際には、燃料配管などの燃料供給系が破損して燃料漏れが生じないことを確認する必要がある。そこで、特許文献1では、燃料配管における燃料圧力(燃圧)を検出することによって、該燃料配管における燃料漏れの有無を判断し、燃料漏れが無い場合に限って燃料ポンプの作動を許可する、燃料ポンプの制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3612853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように燃料ポンプの停止制御は、センサを用いた衝突検知によって行われるが、このようなセンサによる衝突検知は誤検知が生じる場合がある。例えば間欠的に混入するノイズなどの影響によって衝突検知に誤情報が含まれると、誤った判定内容に基づいて燃料ポンプを停止させることとなり、正常な車両の走行状態に著しい支障をきたしてしまう場合がある。上記特許文献1ではこのようなセンサによる衝突の誤検知に対して対策がなされておらず、信頼性に問題点がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、センサによる衝突検知に基づいて燃料ポンプを停止しつつ、良好な信頼性を有する燃料ポンプ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料ポンプ制御装置は上記課題を解決するために、燃料タンク内からエンジンへ燃料を供給する燃料ポンプを制御する燃料ポンプ制御装置において、車両の衝突の有無を検出し、衝突信号又は非衝突信号を送信する衝突検出手段と、前記衝突検出手段から衝突信号を受信したとき、前記燃料ポンプを予め規定した第1所定期間停止させる停止手段とを備え、前記第1所定期間は、前記燃料ポンプの停止に伴う燃料配管における燃料圧力が、所定値となる期間内に設定されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、衝突検出手段から衝突信号を受信すると、停止手段が燃料ポンプを迅速に停止することにより、衝突時に燃料配管などの燃料供給系から燃料が漏れだすのを抑制することができる。ここで停止手段による燃料ポンプの停止期間である第1所定期間は、燃料ポンプの停止に伴う燃料配管における燃料圧力が、所定値となる期間内(すなわち、燃料配管中にエンジンの運転を継続可能な燃料が残存している期間)に設定される。これにより、仮に受信した衝突信号が誤検知によるものであっても、第1所定期間内に燃料ポンプを後発的に作動させれば、エンジンをストール(失火)させることなく復旧することができる。このように、衝突信号に基づく早急な燃料ポンプの停止と、後に誤検知が発覚した場合に燃料ポンプを作動させて復旧できるので、良好な信頼性を得ることができる。
【0009】
好ましくは、前記停止手段による前記燃料ポンプの停止の継続可否を判断する継続判断手段と、前記燃料ポンプの停止が前記継続判断手段によって継続不要と判断されたとき、前記第1所定期間内であっても前記燃料ポンプを作動させる作動手段とを更に備えるとよい。この態様によれば、継続判断手段によって燃料ポンプの停止が継続不要と判断されたとき(すなわち、受信した衝突信号が誤検知によるものであると判断されたとき)、作動手段によって燃料ポンプを迅速に作動させることで、燃料ポンプの不要な停止期間を短くして、早急に通常の運転状態に復旧することができる。
【0010】
また、前記継続判断手段は、前記衝突検出手段によって非衝突信号を受信したとき、前記燃料ポンプの停止を継続不要と判断するとよい。誤検知ではない真の衝突信号は所定期間継続して受信される特性を有するため、この態様では、燃料ポンプの停止開始後に非衝突信号を受信した場合には、先に受信した衝突信号が誤検知によるものと判定し、継続判断手段は燃料ポンプの停止継続は不要であると判断する。これにより、誤検知による衝突信号に基づく燃料ポンプの停止期間を効果的に短縮することができる。
【0011】
この場合、前記継続判断手段が前記第1所定期間の経過後に非衝突信号を受信することにより、前記燃料ポンプの停止を継続要と判断したとき、前記エンジンが停止するまでの第2所定期間の間、前記作動手段による前記燃料ポンプの作動を禁止する禁止手段を更に備えるとよい。第1所定期間の経過後の第2所定期間において非衝突信号を検出したとしても、当該非衝突信号が先に受信した衝突信号が誤検知であることを示しているのか、或いは、先に受信した衝突信号が信号線の断線などによって受信不能になった結果受信したものであるかを判断することができない。そのため、この態様では第2所定期間において非衝突信号を受信した場合であっても、燃料ポンプの作動を禁止し、より良好な信頼性を得ることができる。
【0012】
また、前記エンジンの状態を検出するエンジン状態検出手段を更に備え、前記継続判断手段は、前記エンジン状態検出手段によって異常が検出されたとき、前記燃料ポンプの停止を継続要と判断するとよい。この態様によれば、エンジン状態に異常(例えば燃料配管で燃料漏れが生じることによる燃圧低下など)が検出された場合には、仮に非衝突信号を受信したとしても燃料ポンプの停止を継続することでより良好な信頼性を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、衝突検出手段から衝突信号を受信すると、停止手段が燃料ポンプを迅速に停止することにより、衝突時に燃料配管などの燃料供給系から燃料が漏れだすのを抑制することができる。ここで停止手段による燃料ポンプの停止期間である第1所定期間は、燃料ポンプの停止に伴う燃料配管における燃料圧力が所定値となる期間内(すなわち、燃料配管中にエンジンの運転を継続可能な燃料が残存している期間)に設定される。これにより、仮に受信した衝突信号が誤検知によるものであっても、第1所定期間内に燃料ポンプを後発的に作動させれば、エンジンをストール(失火)させることなく復旧することができる。このように、衝突信号に基づく早急な燃料ポンプの停止と、後に誤検知が発覚した場合に燃料ポンプを作動させて復旧できるので、良好な信頼性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例に係る燃料ポンプ制御装置の全体構成を摸式的に示すブロック図である。
【図2】エンジンECUの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】本実施例に係る燃料ポンプ制御装置の制御内容を示すフローチャート図である。
【図4】実際に車両が衝突したケースにおける燃料ポンプ制御装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】衝突信号が誤検知によるケースにおける燃料ポンプ制御装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】ノイズ以外の要因(例えば断線)によって時刻t2〜t3の間に衝突信号が途切れた場合の燃料ポンプ制御装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0016】
図1は本実施例に係る燃料ポンプ制御装置100の全体構成を摸式的に示すブロック図である。エンジン1はガソリンを燃料とする4気筒4サイクルエンジンであり、各気筒にはシリンダ内に燃料を噴射するためのインジェクタ2が設けられている。エンジン1で燃焼されるガソリンは燃料タンク3に貯留されており、該燃料タンク3内に設けられた燃料ポンプ4によって、燃料配管5を介してインジェクタ2に圧送されるよう、燃料供給系が構成されている。尚、燃料配管5には、内部を流れる燃料の圧力を検出するための燃圧センサ6が設けられている。
【0017】
燃料ポンプ4はリレー7を介して電力源であるバッテリ8に接続されている。リレー7は励磁コイル7aと接点7b1、7b2とを含んで構成されている。励磁コイル7aには、イグニッションスイッチ9及びエンジンECU10を介してバッテリ8から電圧が印加され、励磁コイル7aの電磁作用によって接点7b1、7b2間の電気的な接続状態を切り替えることによって、リレー7のON/OFFが切り替え可能になっている。
【0018】
イグニッションスイッチ9はドライバーの操作によって、それぞれ「ON」「OFF」「スタート」の3点切り替え可能なロータリースイッチである。イグニッションスイッチ9が「OFF」に設定されているときは、バッテリ8からエンジンECU10側に電力が供給されないため、リレー7はOFF状態のまま維持される。このとき燃料ポンプ4にはバッテリ8から電力が供給されないので、燃料ポンプ4は停止状態にある。
【0019】
イグニッションスイッチ9が「ON」に切り替えられると、バッテリ8の電力がイグニッションスイッチ9及びエンジンECU10を介して励磁コイル7aに印加される。すると、励磁コイル7aの電磁作用によって接点7b1及び7b2間が電気的に接続され、リレー7がON状態となり、バッテリ8からの電力が燃料ポンプ4に供給されて、燃料ポンプ4が作動する。そして、イグニッションスイッチ9が「スタート」に切り替えられると、スタート信号がエンジンECU10に送信され、エンジン1が始動する。
【0020】
エアバックECU11は、不図示のエアバックの動作を制御するためのコントロールユニットであり、エアバック加速度センサ12の検知データに基づいてエアバック制御を行う。エアバック加速度センサ12は車体の加速度に関する測定データをエアバックECU11に送信し、エアバックECU11は受信した測定データに基づいて衝突の有無を判断する。そして、エアバックECU11は衝突があったと判断した場合には「衝突信号」、衝突がないと判断した場合には「非衝突信号」をそれぞれ送信する。すなわち、エアバック加速度センサ12及びエアバックECU11は、本発明における「衝突検知手段」の一例である。
【0021】
エンジンECU10はエンジン1及びその関連部位の動作を統括するコントロールユニットであり、本実施例に係る燃料ポンプ制御装置100の動作もまた、エンジンECU10の制御対象となっている。ここで図2は、エンジンECU10の機能的構成を示すブロック図である。
【0022】
エンジンECU10は、エアバックECU11から送信された衝突信号又は非衝突信号を受信する受信部13、該受信部13が受信した信号の種類に基づいて燃料ポンプ4の作動/停止を判断し、その判断結果に対応する指示信号を出力する指示部14、該指示部14から取得した指示信号に基づいて燃料ポンプ4の作動/停止を制御する制御信号を出力する制御信号出力部15、並びに、該制御信号出力部15から取得した制御信号に基づいて燃料ポンプ4をそれぞれ作動/停止する作動手段16及び停止手段17を備えてなる。また、エンジンECU10は、エンジン1の運転状態を取得する運転状態検出手段18を備えており、本実施例では特に運転状態検出手段18は燃圧センサ6から測定データを取得することにより、燃料配管5における燃料漏れの有無を判断することにより運転状態を検出するように構成されている。
【0023】
特に指示部14は、受信部13から取得した信号に基づいて燃料ポンプ4の停止を継続すべきか否かを判断するための継続判断手段14aと、該継続判断手段14aの判断内容に関わらず燃料ポンプ4の作動を禁止する禁止手段14bとを備えてなる。これにより指示部14では、後述する各種条件下において燃料ポンプ4の作動・停止を判断することで、衝突信号の誤検知を防止することができる。
【0024】
尚、上述のエンジンECU10及びエアバックECU11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備えて構成される電子制御ユニットであり、ROMに格納された制御プログラムに従って各種制御を実行するが、これらの各種の制御の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではない。
【0025】
続いて上記構成を有する燃料ポンプ制御装置100の制御内容について説明する。図3は本実施例に係る燃料ポンプ制御装置100の制御内容を示すフローチャート図である。
【0026】
まずエンジンECU10は、受信部14でエアバックECU11から衝突信号を受信したか否かを判定する(ステップS101)。衝突信号を受信した場合(ステップS101:YES)、エンジンECU10はリレー7をOFFに切り替え、燃料ポンプ4を停止させる(ステップS102)。このように衝突信号を受信した場合に、燃料ポンプ4を早急に停止することにより、衝突時に燃料供給系が破損して燃料が外部に漏れ出すことを迅速に防止できる。尚、衝突信号を受信しない場合(ステップS101:NO)、すなわち、非衝突信号を受信した場合には、エンジンECU10はステップS101の処理をループ処理し、衝突信号を受信するまでの間待機する。
【0027】
エンジンECU10は、ステップS102で燃料ポンプ4を停止した後、カウントを開始し、衝突信号を受信してから第1所定期間T1が経過したか否かを判定する(ステップS103)。ステップS102で燃料ポンプ4を停止すると、エンジン1は燃料配管5に残存している燃料を消費して少なからず運転を継続することができるが、時間の経過に従って残存燃料が減少し(燃料配管5における燃圧が低下し)、やがて運転の継続が困難となり、最終的にストール(失火)する。
【0028】
ここで第1所定期間T1は、燃料配管5における燃料の圧力が所定値となる期間内(すなわち、燃料配管5中にエンジン1の運転を継続可能な燃料が残存している期間)として設定される。すなわち、燃料ポンプ4を停止した後、第1所定期間T1の間はエンジン1の運転継続が可能であるが、第1所定期間T1を経過してしまうと、エンジン1がストール(失火)する。この第1所定期間T1は例えば100msに設定されるが、この値はエンジン1や燃料供給系の設計に依存するため、予め実験等によって取得したデータに基づいて個別に設定するとよい。
【0029】
第1所定期間T1が経過していない場合(ステップS103:NO)、エンジンECU10はエアバックECU11から非衝突信号を受信したか否かを判定する(ステップS104)。エアバックECU11から出力される衝突信号が真の衝突によるものである場合には、衝突信号は所定期間Ts(例えば10s)継続して出力される。つまり、真の衝突を示す衝突信号は所定期間Tsの間であれば出力され続けることになるが、外部からのノイズなどに起因して出力されたものである場合、衝突信号はこのように所定期間Ts継続して出力されることなく、例えばパルス的に短い期間だけ出力された後、非衝突信号が出力されることとなる。つまり、ノイズ等に起因する衝突信号は、第1所定期間T1内に非衝突信号に切り替わることとなる。ステップS104では、第1所定期間T1内に非衝突信号を受信したか否かを判定することによって、受信した衝突信号が真の衝突に起因するものであるか否かを判別する。
【0030】
第1所定期間T1内に非衝突信号を受信した場合(ステップS104:YES)、エンジンECU10は受信した衝突信号はノイズ等に起因するものであり、誤検知によるものと判定する。この場合、燃料ポンプ4の停止を継続すると、時間が経過するに従って燃料配管5の燃料圧力が低下していき、やがては誤った衝突判定に基づいてエンジン1がストール(失火)してしまう。そこで、本発明では受信した衝突信号が誤検知によるものと判定された場合には、エンジンECU10はエンジン状態の異常の有無を判断し(ステップS105)、異常がないと判断された場合に処理をステップS110に進めて、燃料ポンプ4を作動させる。このように、ステップS101で受信した衝突信号が誤検知によるものであった場合、第1所定期間T1内に燃料ポンプを後発的に作動させることによって、エンジン1をストール(失火)させることなく復旧することができる。このように、衝突信号に基づく早急な燃料ポンプ4の停止により燃料配管などの燃料供給系から燃料が漏れだすのを抑制しつつ、後に誤検知が発覚した場合に燃料ポンプ4を作動させて復旧できるので、良好な信頼性を得ることができる。
【0031】
尚、第1所定期間T1内に非衝突信号を受信しない場合(ステップS104:NO)、処理をステップS103に戻し、第1所定期間T1が経過するまで当該ループ処理を繰り返しながら待機する。
【0032】
そして第1所定期間T1が経過すると(ステップS103:YES)、エンジンECU10は燃料ポンプ4の停止継続が必要と判断し(ステップS106)、第2所定期間T2が経過するまでの間、燃料ポンプの作動を禁止する(ステップS107)。第1所定期間T1が経過すると、仮に非衝突信号を受信しても衝突信号がノイズによるものなのか否かを判別することが困難となる。また、第1所定期間T1の経過後は燃料配管5における燃料圧力が低下するため、エンジン1の停止(失火)がいつ生じるかわからなくなる。そのため、第1所定期間T1の経過後、第2所定期間T2が経過するまでの間は、受信した衝突信号がノイズに起因するものである可能性は少なからずあるものの、燃料ポンプ4の停止を継続する。
【0033】
続いてエンジンECU10は第2所定期間T2が経過したか否かを判定し(ステップS108)、第2所定期間T2が経過するまでの間ステップS107を繰り返しループ処理することによって、燃料ポンプ4の停止を継続する。
【0034】
そして第2所定期間T2が経過すると(ステップS108:YES)、エンジンECU10はイグニッションスイッチ9が「スタート」に切り替えられたか否かを判定する(ステップS109)。第2所定期間T2経過後、エンジン1は停止状態にあるので、エンジンECU10はイグニッションスイッチ9が「スタート」に切り替えられることを検知して、ドライバーがエンジン1を再始動する意思を確認できた場合に限って、燃料ポンプ4を作動(再始動)させる(ステップS110)。このようにイグニッションスイッチ9の操作によってドライバーの再始動意思が確認できた場合に限って、燃料ポンプ4を作動させることで、衝突後の車両を必要に応じて移動させることが可能となる。
【0035】
尚、イグニッションスイッチ9の操作が検知されなかった場合は(ステップS109:NO)、検出されるまでステップS109をループ処理して待機する。
【0036】
次に具体的事例に基づいて、燃料ポンプ制御装置100の動作を詳細に説明する。まず図4は実際に車両が衝突したケースにおける燃料ポンプ制御装置100の動作を示すタイミングチャートである。まず時刻t0にて、ドライバーは車両のイグニッションスイッチ9を「ON」及び「スタート」に切り替えて、燃料ポンプ4とエンジン1の運転を始動する。このとき、車両は衝突前であるため、エアバックECU11からは衝突信号は出力されず、非衝突信号が出力されている(尚、図4(b)では衝突信号の出力時を「ON」、非衝突信号の出力時を「OFF」で示している)。
【0037】
ここで時刻t1において車両が衝突したとすると、エアバックECU11はエアバック加速度センサ12からの測定データに基づいて衝突判定を行い、不図示のエアバックを作動させると共に、衝突信号を出力する。エンジンECU10は受信部14にて衝突信号を受信し、早急に燃料ポンプ4を停止させる(上記ステップS102を参照)。
【0038】
図4(b)に示すように、実際に車両が衝突したことに起因して出力される衝突信号は、衝突時刻t1から第1所定期間T1が経過した時刻t2を過ぎても出力信号が出力され続ける(衝突信号は衝突時刻から所定期間Tsの間、出力され続けるようになっている)。時刻t2以降も衝突信号が受信され続け、この間、燃料ポンプ4の停止は継続される。そして第2所定期間T2の間は、仮に非衝突信号を受信したとしても燃料ポンプ4の再始動は禁止される(上記ステップS107を参照)。そして第2所定期間T2の経過後は、ドライバーによるイグニッションスイッチ9の操作があった場合に限って、燃料ポンプ4が作動され、エンジン1の運転が再開される(上記ステップS110を参照)。
【0039】
続いて図5は衝突信号が誤検知によるケースにおける燃料ポンプ制御装置100の動作を示すタイミングチャートである。時刻t1で受信した衝突信号がノイズの混入などに起因する誤検知である場合であっても、エンジンECU10は受信した衝突信号に基づいて燃料ポンプ4を停止する(上記ステップS102を参照)。
【0040】
ここで、図5では時刻t1で受信した衝突信号は、時刻t1から間もなくOFFになっている(図4の場合のように所定期間Ts継続して出力されない)。上述したように、誤動作に起因する衝突信号は、実際に車両が衝突した際に受信される衝突信号と異なり、短時間しか出力されない。そのため、第1所定期間T1内に非衝突信号を受信した場合には、時刻t1で受信した衝突信号は誤検知に起因するものであると判断し、エンジンECU10は燃料ポンプ4を再始動させる(上記ステップS104:YES&S110を参照)。尚、衝突信号を受信している間は燃料ポンプ4が一時的に停止されているが、この停止期間は第1所定期間T1より短いので、燃料ポンプ4を再始動することによって、エンジン1はストール(失火)することなく、通常状態に復旧することができる。
【0041】
続いて図6はノイズ以外の要因(例えば断線)によって時刻t2〜t3の間に衝突信号が途切れた場合の燃料ポンプ制御装置100の動作を示すタイミングチャートである。衝突信号が実際の衝突に起因する場合には、図4に示したように、時刻t1のあと所定期間Tsの間、継続的に出力され続けるが、図6のケースでは時刻t2〜t3の間に衝突信号が途切れている。このようなケースの原因としては、例えば衝突時にエアバック加速度センサ12とエアバックECU11との間の配線や、エアバックECU11とエンジンECU10との間の配線が断線したことが考えられる。このような衝突信号を受信した場合は、通常形態とは異なり、車体に何らかの異常が存在する可能性もある。そこで、本実施例では燃料ポンプ4の再始動を禁止している。
【0042】
尚、図6の場合においても、時刻t3以降にイグニッションスイッチ9が操作された場合には、図4と同様に、燃料ポンプ4の再始動が許可される。
【0043】
以上説明したように、本実施例によれば、エアバックECU11から衝突信号を受信すると、燃料ポンプ4を迅速に停止することにより、衝突時に燃料配管5などの燃料供給系から燃料が漏れだすのを抑制することができる。ここで燃料ポンプ4の停止期間である第1所定期間T1は、燃料配管5における燃料の圧力が所定値となる期間内(すなわち、燃料配管5中にエンジン1の運転を継続可能な燃料が残存している期間)として設定される。これにより、仮に受信した衝突信号が誤検知によるものであっても、第1所定期間T1内に燃料ポンプ4を後発的に作動させれば、エンジン1をストール(失火)させることなく復旧することができる。このように、衝突信号に基づく早急な燃料ポンプ4の停止と、後に誤検知が発覚した場合に燃料ポンプ4を作動させて復旧できるので、良好な信頼性を得ることができる。
【0044】
尚、上記実施例では、第2所定期間T2の経過後は、ドライバーによるイグニッションスイッチ9の操作があった場合に限って燃料ポンプ4が作動される構成としたが、この限りではない。例えば、イグニッションスイッチ9の操作が無い場合でも、時刻t3以降に燃圧センサ6からの測定データにより燃料配管5における燃料漏れが無いと判断されるような場合では、燃料ポンプ4を自動的に再始動するようにしてもよい。このようにしておけば、仮に車体に何らかの異常が存在する場合でも、ドライバーの発進意思がある場合は、迅速に車両を発進させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、車両の衝突検出時に燃料ポンプを停止させることにより、燃料タンクからエンジンに供給される燃料をカットする燃料ポンプ制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 エンジン
2 インジェクタ
3 燃料タンク
4 燃料ポンプ
5 燃料配管
6 燃圧センサ
7 リレー
8 バッテリ
9 イグニッションスイッチ
10 エンジンECU
11 エアバックECU
12 エアバック加速度センサ
13 受信部
14 指示部
15 制御信号出力部
16 作動手段
17 停止手段
18 運転状態検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内からエンジンへ燃料を供給する燃料ポンプを制御する燃料ポンプ制御装置において、
車両の衝突の有無を検出し、衝突信号又は非衝突信号を送信する衝突検出手段と、
前記衝突検出手段から衝突信号を受信したとき、前記燃料ポンプを予め規定した第1所定期間停止させる停止手段と
を備え、
前記第1所定期間は、前記燃料ポンプの停止に伴う燃料配管における燃料圧力が、所定値となる期間内に設定されることを特徴とする燃料ポンプ制御装置。
【請求項2】
前記停止手段による前記燃料ポンプの停止の継続可否を判断する継続判断手段と、
前記燃料ポンプの停止が前記継続判断手段によって継続不要と判断されたとき、前記第1所定期間内であっても前記燃料ポンプを作動させる作動手段と
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ制御装置。
【請求項3】
前記継続判断手段は、前記衝突検出手段によって非衝突信号を受信したとき、前記燃料ポンプの停止を継続不要と判断することを特徴とする請求項2に記載の燃料ポンプ制御装置。
【請求項4】
前記継続判断手段が前記第1所定期間の経過後に非衝突信号を受信することにより、前記燃料ポンプの停止を継続要と判断したとき、前記エンジンが停止するまでの第2所定期間の間、前記作動手段による前記燃料ポンプの作動を禁止する禁止手段を更に備えたことを特徴とする請求項3に記載の燃料ポンプ制御装置。
【請求項5】
前記エンジンの状態を検出するエンジン状態検出手段を更に備え、
前記継続判断手段は、前記エンジン状態検出手段によって異常が検出されたとき、前記燃料ポンプの停止を継続要と判断することを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の燃料ポンプ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71573(P2013−71573A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211467(P2011−211467)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】