説明

燃料ポンプ

【課題】製造技術上のより少ない費用で製造可能な燃料ポンプを提供すること。
【解決手段】金属製のポンプシリンダ(10)と、当該ポンプシリンダ内で移動可能にガイドされる金属製のポンプピストン(20)とを有する、燃料ポンプ(1)特にコモンレール燃料システムのための高圧燃料ポンプ。本発明によって、製造技術上のより少ない費用で製造可能な燃料ポンプが提供される。これはとりわけ、ポンプピストン(20)が、熱処理なしかつコーティングなしのベアリング材質から作られており、ベアリング材質は鍛錬用合金あるいは銅合金によって形成されていることによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きに記載の燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に記載された種類の燃料ポンプは、たとえば特許文献1から知られている。
【0003】
燃料ポンプは、ポンプピストンが中で移動可能に軸受もしくはガイドされているポンプシリンダを有する。ポンプピストンは1つあるいは複数のカムを介してポンプシリンダ内で上下に動かされ、それによって燃料が吸い上げられ、燃料ポンプから場合によっては(レールラインのような)中間貯蔵設備を介して、たとえば燃料システムの噴射弁のような消費物に供給される。
【0004】
燃料ポンプ特にコモンレール燃料システムのための高圧燃料ポンプは、たとえば特許文献2に記述されている。
【0005】
たとえば特許文献1に記述されているような鋼製のポンプピストンは通常硬化され、緊急運転特性を実現するために場合によってはコーティングされるが、これは製造技術上非常に費用がかかる。その上非常に硬い鋼の変形によっておよび/あるいは前損傷(熱処理による微細なひび割れ)によって、たとえばプロップフットあるいはピストンフットの領域において、ポンプピストンとひいては燃料ポンプの早期の機械的故障になりかねない、ひび割れもしくは裂け目が生じかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第60202042号明細書(欧州特許第1310577号明細書の翻訳)
【特許文献2】独国特許出願公開第10345061号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、製造技術上のより少ない費用で製造可能な、請求項1のおいて書きに記載の燃料ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これは、請求項1に記載の燃料ポンプによって達成される。本発明のさらなる形態は、従属請求項において定義されている。
【0009】
本発明に従えば、金属製のポンプシリンダと、当該ポンプシリンダ内で移動可能にガイドされる金属製のポンプピストンと、を有する、燃料ポンプ、特にコモンレール燃料システムのための高圧燃料ポンプが提供される。本発明に係る燃料ポンプは、ポンプピストンが熱処理なしに(特に硬化なしにおよび/あるいは焼入れなしに)かつコーティングなしに(特にスライドコーティングおよび/あるいは硬化コーティングなしに)形成されていることで優れている。
【0010】
代替的あるいは付加的に、ポンプピストンは、ガス窒化あるいは炭化のような、表面硬化を高めることを目指す表面処理なしに形成されている。
【0011】
あらゆる熱処理とコーティングおよび/あるいは表面硬化を高めることを目指すあらゆる表面処理をやめたことによって、ポンプピストンとひいては燃料ポンプを製造するための製造技術上の費用が著しく削減される。
【0012】
ポンプピストンは、少なくとも部分的に、しかしながら好ましくは完全に、ベアリング材質から作られている。
【0013】
ベアリング材質は、鋼よりも高い延性によって、冒頭に記述された欠点すなわち、変形によっておよび/あるいは前損傷(微細なひび割れ)によって、ひび割れもしくは裂け目が生じかねないという欠点を回避し、かつ、燃料ポンプを使用する場合に充分な強度の他にさらに鋼よりも良好な緊急運転特性を備える。それによってベアリング材質は、コーティングと充分な強度とによる望ましい機能性を併せ持ち、この機能性を、熱処理とコーティングを行うことなく、さらに良好にかなえる。それに従えば、そのように形成された燃料ポンプは、製造技術上の費用がより少ないという利点に加えてあるいはそれに代わって、故障の可能性がより低い、もしくは寿命がより長くかつ緊急運転特性がより良好であるという利点を備える。
【0014】
本発明に従えば、ベアリング材質は、合金すなわち2つの金属の混合物によって形成されており、ベアリング材質は鍛錬用合金あるいは銅合金によって形成されている。
【0015】
鍛錬用合金は有利には、その製造に左右されるさらに高い延性を備え、それによってひび割れもしくは裂け目がさらに確実に防止され得る。
【0016】
ベアリング材質が銅合金によって形成されている場合には、ベアリング材質は好ましくは、銅・アルミニウム合金あるいは銅・亜鉛合金によって形成されている。
【0017】
銅・アルミニウム合金と、銅・亜鉛合金とは、充分な緊急運転特性の他に、比較的高い強度を備えており、それによってこれらの合金は、高い負荷に特に適する。
【0018】
本発明の主旨におけるさらなるベアリング材質は、(望ましい強度と望ましい緊急運転特性とに応じて)たとえば鉛鋳造合金、錫鋳造合金、銅・鉛・錫鋳造合金と、片状黒鉛を有する鋳鉄であってよいであろう。
【0019】
本発明は明確に、請求項の詳細な引用からの特徴の組み合わせによってはもたらされない実施形態にも拡大し、それによって本発明の開示された特徴は、技術的に合理的である限りにおいて、任意に互いに組み合わされていてよい。
【0020】
以下に本発明が、好ましい実施形態に基づいてかつ添付の図に関連して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る燃料ポンプのかなり概略化された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示されているように、ここでは好ましくはコモンレール燃料システム(完全には示されず)の高圧燃料ポンプとして形成されている、本発明に係る燃料ポンプ1は、ポンプシリンダ10と、当該ポンプシリンダ10の凹部11に移動可能に軸受もしくはガイドされているポンプピストン20とを備える。
【0023】
ポンプピストン20は、回転駆動されるシャフト30に設けられた少なくとも1つのカム31を介して、ポンプシリンダ10内で上下に移動可能に制御され、ポンプピストン20の下方への動きによって、ポンプシリンダ10に形成された燃料流路12を介して、ポンプピストン20が占めていない、ポンプシリンダ10の凹部11の領域もしくはポンプ室11aに燃料が吸入され、ポンプピストン20の上方への動きによって、吸入された燃料が、燃料流路12と、表わされていない中間室(ここではレールラインのような)とを介して、燃料システムの噴射弁のような、表わされていない消費物の方向に搬送される。
【0024】
燃料の吸入と搬送の制御および燃料ポンプ1の機械的な構成に関するさらなる例示される詳細は、たとえば特許文献2に記述されている。
【0025】
本発明に従えば、ポンプシリンダ10は、たとえば鋼のような金属から作られている。ポンプシリンダ10内で移動可能にガイドされるポンプピストン20は、同様に金属から作られており、ポンプピストン20は、熱処理なしに(特に硬化なしにおよび/あるいは焼入れなしに)かつコーティングなしに(特にスライドコーティングおよび/あるいは硬化コーティングなしに)形成されている。
【0026】
代替的あるいは付加的に、ポンプピストン20は、ガス窒化あるいは炭化のような、表面硬化を高めることを目指す表面処理なしに形成されている。
【0027】
あらゆる熱処理とコーティングおよび/あるいは表面硬化を高めることを目指すあらゆる表面処理をやめたことによって、ポンプピストン20とひいては燃料ポンプ1を製造するための製造技術上の費用が著しく削減されている。
【0028】
付加的に、ポンプピストン20は、少なくとも、カム31と協働するプロップフット21の領域において、しかしながら好ましくは完全に(すなわち、プロップフット21からピストンヘッド22に一貫して至るまで)、ベアリング材質から作られている。
【0029】
ベアリング材質は比較的高い延性を備えており、それゆえ、直接あるいは回転可能に軸受けされているロール(示されず)と場合によっては別の中間部材を介してカム31と協働するプロップフット21での、変形によっておよび/あるいは前損傷(微細なひび割れ)によって生じるひび割れあるいは裂け目を回避する。
【0030】
その上ベアリング材質は、燃料ポンプ1を使用する場合に充分な強度の他に、注油不足(たとえば燃料内の水)の場合のための充分な緊急運転特性を備え、その結果注油不足時でも、たとえばポンプシリンダ10の凹部11に、完全にベアリング材質から作られているポンプピストン20が食い込むことを防ぐ。
【0031】
ベアリング材質は、コーティングと充分な強度とによる望ましい機能性を併せ持ち、この機能性を、製造技術上のより大きな費用を必要としかつ場合によってはひび割れあるいは裂け目を引き起こすかもしれない熱処理とコーティングを行うことなくかなえる。
【0032】
それに従えば、本発明に係る燃料ポンプ1は、製造技術上の費用がより少ないという利点に加えて、故障の可能性がより低い、もしくは寿命がより長くかつ緊急運転特性がより良好であるという利点を備える。
【0033】
本発明に従えば、ポンプピストン20のベアリング材質は、合金すなわち2つの金属の混合物によって形成されている。好ましくは、ポンプピストン20のベアリング材質は、その製造に左右されるさらに高い延性を備える鍛錬用合金によって形成されており、それによってひび割れもしくは裂け目がさらに確実に防止され得る。
【0034】
本発明の実施形態に従えば、ポンプピストン20のベアリング材質は、銅合金によって形成されている。好ましくは、ポンプピストン20のベアリング材質は、充分な緊急運転特性の他に、比較的高い強度を備える銅・アルミニウム合金あるいは銅・亜鉛合金によって形成されており、それによってこれらの合金は、高い負荷に特に適する。
【0035】
本発明の主旨における、ポンプピストン20のために使用可能なさらなるベアリング材質は、(望ましい強度と望ましい緊急運転特性とに応じて)たとえば鉛鋳造合金、錫鋳造合金、銅・鉛・錫鋳造合金と、片状黒鉛を有する鋳鉄であってよいであろう。
【符号の説明】
【0036】
1 燃料ポンプ
10 ポンプシリンダ
11 凹部
11a 領域/ポンプ室
12 燃料流路
20 ポンプピストン
21 プロップフット
22 ピストンヘッド
30 シャフト
31 カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のポンプシリンダ(10)と、該ポンプシリンダ内で移動可能にガイドされる金属製のポンプピストン(20)と、を有する燃料ポンプ(1)、特に高圧燃料ポンプにおいて、
前記ポンプピストン(20)が、熱処理なしかつコーティングなしのベアリング材質から作られており、該ベアリング材質は鍛錬用合金あるいは銅合金によって形成されていることを特徴とする燃料ポンプ(1)。
【請求項2】
前記ベアリング材質は、銅・アルミニウム合金によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ(1)。
【請求項3】
前記ベアリング材質は、銅・亜鉛合金によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ(1)。

【図1】
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【公開番号】特開2012−193734(P2012−193734A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−56903(P2012−56903)
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(510153962)マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー (65)
【Fターム(参考)】