燃料供給制御システム
【課題】安価な構成で、燃圧、燃料噴射量の安定化を実現する燃料供給制御システムを得る。
【解決手段】燃料ポンプモータの回転速度を制御することにより燃料吐出量の制御を行う制御ユニット1を備えた燃料供給制御システムにおいて、燃料ポンプモータとしてステッピングモータを適用するとともに、制御ユニット1は、ステッピングモータを駆動するためのパルスの駆動パルスレートを、必要とする燃料噴射量に応じて制御する駆動パルスレート制御手段103と、ステッピングモータに印加する駆動パルスの印加時間を複数の期間に分割し、複数の期間のそれぞれのパルス変調制御デューティ比を変化させて電流制御を行うPWMデューティ比制御手段104とを備える。
【解決手段】燃料ポンプモータの回転速度を制御することにより燃料吐出量の制御を行う制御ユニット1を備えた燃料供給制御システムにおいて、燃料ポンプモータとしてステッピングモータを適用するとともに、制御ユニット1は、ステッピングモータを駆動するためのパルスの駆動パルスレートを、必要とする燃料噴射量に応じて制御する駆動パルスレート制御手段103と、ステッピングモータに印加する駆動パルスの印加時間を複数の期間に分割し、複数の期間のそれぞれのパルス変調制御デューティ比を変化させて電流制御を行うPWMデューティ比制御手段104とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ポンプにより燃料タンクからデリバリ配管まで圧送した燃料を、燃料噴射弁(インジェクタ)によりエンジン気筒内に噴射させる燃料供給制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料供給制御システムにおいては、燃料ポンプモータの回転速度を制御して燃料吐出量制御を行うために、モータをPWM制御するものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10-266920号公報
【特許文献2】特開2000-220548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には次のような課題がある。
上述のように、従来は、燃料ポンプモータをPWM制御により駆動し、デューティ比の設定によって、モータ回転速度を制御している。従って、多くの燃料吐出量が必要な場合には、デューティ比を高めて、モータ回転速度を上げる必要がある。この結果、消費電力が増加し、モータからの発熱量が増加することになり、燃料温度の上昇を招くことになる。
【0005】
このようにして燃料温度が上昇すると、燃料配管中において燃料が気化し、気泡(ベーパ)が発生しやすくなる。そして、気泡が発生した場合には、燃料を加圧できず、燃圧が不安定になり、インジェクタからの噴射量も不安定となる。
【0006】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、安価な構成で、燃圧、燃料噴射量の安定化を実現する燃料供給制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料供給制御システムは、燃料ポンプモータの回転速度を制御することにより燃料吐出量の制御を行う制御ユニットを備えた燃料供給制御システムにおいて、燃料ポンプモータとしてステッピングモータを適用するとともに、制御ユニットは、ステッピングモータを駆動するためのパルスの駆動パルスレートを、必要とする燃料噴射量に応じて制御する駆動パルスレート制御手段と、ステッピングモータに印加する駆動パルスの印加時間を複数の期間に分割し、複数の期間のそれぞれのパルス変調制御デューティ比を変化させて電流制御を行うPWMデューティ比制御手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料ポンプモータとしては、安価な構成で速度制御を可能とするステッピングモータを適用し、制御においては、要求燃料噴射量に応じて、モータに印加する駆動パルスレートを制御するとともに、パルス印加時間内を複数の期間に区分し、それぞれの期間ごとに所望のデューティ比を設定して電流制御を行うことで、燃料ポンプからの燃料吐出量を調整することにより、安価な構成で、燃圧、燃料噴射量の安定化を実現する燃料供給制御システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の燃料供給制御システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における燃料噴射制御システムの構成図である。この燃料供給制御システムは、制御ユニット1、スロットル弁2、スロットルポジションセンサ3、エンジン温度センサ4、クランク角センサ5、燃料タンク6、燃料供給装置7、圧力調整装置8、およびインジェクタ9で構成される。
【0011】
制御ユニット1は、エンジン全体の動作を制御するためのプログラムやマップを格納している。スロットルポジションセンサ3は、スロットル弁2の開度を計測する。エンジン温度センサ4は、エンジンの壁面温度を計測する。また、クランク角センサ5は、クランク位置計測やエンジン回転速度演算に使用される。
【0012】
そして、制御ユニット1は、スロットルポジションセンサ3、エンジン温度センサ4、クランク角センサ5、およびその他の吸入空気の温度を測定する吸気温センサ(図示せず)などの情報から、適切な燃料噴射時期、燃料噴射量を演算し、燃料噴射装置であるインジェクタ9に駆動信号を出力する。
【0013】
また、制御ユニット1は、各種センサの情報から適切なタイミングで点火信号を点火コイル(図示せず)に出力する。この結果、点火プラグで火花が発生し、エンジンシリンダ内の燃料と吸入空気の混合気が燃焼し、エンジンのピストンが押し出されることにより、クランクシャフトが回転する。
【0014】
燃料供給装置7は、制御ユニット1からの駆動信号により駆動され、フィルタを介して燃料タンク6から燃料を吸入し吐出する。吐出された燃料は、圧力調整装置8により所定圧に調整され、高圧燃料配管を通り、インジェクタ9に供給される。
【0015】
次に、燃料供給装置7内の燃料ポンプおよびその駆動モータについて説明する。
図2は、本発明の実施の形態1における燃料ポンプの構成図である。この燃料ポンプの駆動モータとしては、異物発生を回避するために、給電ブラシがないモータがよい。
【0016】
また、本発明の燃料ポンプは、複数のピストン20をロータ先端に設けたプレート19で押すことにより燃料を加圧する。従って、燃料の加圧に当たっては、一方向のみの連続回転ができればよく、駆動モータとしてステッピングモータを適用することが可能となる。本発明では、ユニポーラ駆動タイプのステッピングモータを適用する。
【0017】
ステッピングモータの固定子は、ステータ12、13、およびボビンに巻き線されたコイル14から構成される。そして、ステータ12、13間にコイル14を配置したものを1相分の固定子とする。ステータ12、13は、極歯を有しており、それら極歯は、ともにそれぞれのステータ12、13上に同じ形状で、同数だけ形成され、等ピッチで円周上に配置されている。
【0018】
同じ構成の固定子同士を、極歯ピッチの半分のピッチ分だけずらして積上げることで、2相の固定子が構成される。ステータとしては、鋼板をプレス加工で加圧成形し、ロータマグネット15と対向させる磁極面を形成するクローポールタイプを用いることで、モータの低コスト化を図っている。
【0019】
回転子は、シャフト16、ロータマグネット15、およびプレート19で構成される。プレート19は、シャフト16の先端に、ある角度だけ傾斜させて固定される。固定子から発生する回転磁束によって、ロータマグネット15が吸引され、回転子が回転する。
【0020】
ひとつの固定子は、2本の銅線を同時に巻くバイファイラ巻きで構成される。図3は、本発明の実施の形態1におけるステッピングモータの固定子と端子の関係を示した図である。図3に示す端子T1、T3、および端子T4、T6を電気角で90°位相をずらして、それぞれの相内で順次通電を切替えることで、ステッピングモータは、ステータの磁極面の個数とロータマグネット15の極数により決定されるステップ角度ずつ回転することができる。端子T2、T5は、バッテリ電源へ接続される。
【0021】
図4は、本発明の実施の形態1のステッピングモータにおける駆動パルスの通電パターンを示した図である。どの瞬間においても、いずれかの2つの相が常時通電される2相フルステップ通電となっている。本発明では、モータ制御回路として、ユニポーラ駆動方式を採用している。ユニポーラ駆動は、バイポーラ駆動に比べて、通電相の切替えに必要なパワー素子の数量を減らすことができる。これにより、モータ制御回路の低コスト化を図っている。
【0022】
先の図2において、ポンプ部分は、プレート19、ピストン20、吸入バルブ21、吐出バルブ22、シリンダ23、プレート24、およびスプリング28で構成される。吸入ポート26からポンプ内へ流入した燃料は、ロータの回転に伴って回転するプレート19によってピストン20が上下に駆動することで、吸入バルブ21を経てピストン20の下側に設けられた増圧室29に送り込まれる。そして、増圧室29に送り込まれた燃料は、加圧され、吐出バルブ22を経て吐出ポート27から圧送される。
【0023】
本実施の形態1においては、図4に模式的に示したように、PWM制御された駆動パルスがステッピングモータへ印加される単位時間に相当するパルス印加時間(図4に図示されたパルス印加時間に相当)は、前半期間と後半期間に区分される。そして、本発明においては、この前半期間と後半期間のそれぞれに対して個別に電流値の制御を行う点を特徴としている。
【0024】
電流値の制御は、PWM制御におけるデューティ比の設定で行う。このような2段階の電流制御の目的は、モータのトルクを確保しながら、消費電流を可能な限り抑えることで、モータの発熱を低減することにある。
【0025】
このような目的を達成するために、具体的には以下のような設定、制御を行っている。
1)時間区分は、前半期間が後半期間よりも長い時間に設定する。
2)前半期間の時間は、モータコイルの電気的時定数以上の時間を確保する。
3)前半期間のデューティ比を、後半期間のデューティ比よりも高い値に設定する。
【0026】
図5は、本発明の実施の形態1における1つのパルス印加時間内のデューティ比設定の模式図である。ロータとステータ極歯との負荷角が大きい前半期間においては、高いデューティ比を設定して電流を供給することにより、トルクを確保している。一方、後半期間においては、ロータの慣性を落とさない程度に低いデューティ比に設定して電流を抑えることにより、モータコイルのジュール熱を低減させている。
【0027】
このような制御を行うことにより、モータ発熱が抑えられ、燃温上昇を抑えることができる。また、コイルの温度上昇による抵抗値の増加が抑えられるので、高いトルクを確保できる。また、コイル温度の低下により、コイルの熱的な劣化を抑制し、燃料供給装置の信頼性を高めることができる。
【0028】
次に、制御ユニット1の内部構成および動作について説明する。図6は、本発明の実施の形態1における制御ユニット1に関する制御ブロック図である。制御ユニット1は、エンジン回転数算出手段101、要求燃料噴射量算出手段102、駆動パルスレート制御手段103、およびPWMデューティ比制御手段104を備えている。
【0029】
エンジン回転数やエンジン負荷(スロットル開度など)の状態に応じて、要求される燃料噴射量は変化する。そこで、制御ユニット1内の要求燃料噴射量算出手段102は、各種センサ入力に基づいて、この要求燃料噴射量を算出する。さらに、要求燃料噴射量算出手段102は、算出した要求燃料噴射量から、必要となる燃料ポンプからの燃料吐出量を演算することができる。
【0030】
次に、駆動パルスレート制御手段103は、要求燃料噴射量算出手段102によって求められた燃料吐出量を、モータの駆動パルスレートに変換する。駆動パルスレート制御手段103は、アイドル運転時など、要求される燃料噴射量があらかじめ決められた値よりも少ない場合には、低周波の駆動パルスレートに設定する。これにより、不用意にモータのトルクを低下させることがなく、モータの脱調を抑えることが可能となる。
【0031】
また、ステッピングモータは、パルスレートを増加させると、コイルのインダクタンスの影響によりインピーダンスが増加し、その結果、電流が低下し、トルクが低下することとなる。したがって、燃料ポンプ駆動開始時、つまり車両始動時での高いトルクを得るには、駆動パルスのパルスレートを低くして駆動させる方がよいことが分かっている。
【0032】
逆に、エンジン高回転時など、要求される燃料噴射量があらかじめ決められた値より多い場合は、高周波の駆動パルスレートを設定することになり、必要な燃料を確保することが可能となる。
【0033】
本実施の形態1では、要求燃料噴射量に応じた駆動パルスレート制御としたが、エンジン回転速度やスロットル開度量をセンサ等から検出し、それらに応じて駆動パルスレートを設定することも可能となる。このように設定することで、要求燃料噴射量から燃料ポンプの燃料吐出量を計算する場合における制御ユニット1の負荷を軽減することができる。
【0034】
本発明においては、車両始動時では、最小の駆動パルスレートを適用し、さらに、この時の電流値は、PWM制御デューティ比を100%に設定するなどして、各期間において設定可能な最大電流値を供給するものとする。これにより、燃料ポンプを高いモータトルクで確実に起動させることができる。
【0035】
この最小パルスレートでのステッピングモータ駆動を所定時間だけ実施した後は、エンジン回転速度や負荷に応じて、上述の通りにパルスレートを任意に設定する。
【0036】
また、水温センサや機温センサなどのエンジン温度センサ4の出力値があらかじめ決められた値よりも高い温度を示す場合には、燃料ポンプのモータも熱を帯びていることが考えられる。このため、気泡が発生し易い状態と言える。そこで、駆動パルスレート制御手段103は、モータの発熱を抑えるために、エンジン温度センサ4からの出力値があらかじめ決められた値よりも高い温度を示す場合には、駆動パルスレートを高く設定するか、もしくはデューティ比を低く設定する。この結果、モータの消費電流を低減させて、気泡発生を抑制することができる。
【0037】
また、水温センサや機温センサなどのエンジン温度センサ4の出力値があらかじめ決められた値よりも低い温度を示す場合には、燃料ポンプのモータが熱を帯びていると考える必要がない。このため、エンジン温度が高い場合のような制御は、特に必要としない。
【0038】
図7は、本発明の実施の形態1におけるPWMデューティ比制御手段104が備えているPWM制御デューティ比テーブルの一例を示した図である。PWMデューティ比制御手段104は、このテーブルを用いることで、エンジン温度と駆動パルスレートのそれぞれの値から、適切なPWM制御デューティ比を決定することができる。
【0039】
以上のように、実施の形態1によれば、燃料ポンプモータとしては、安価な構成で速度制御を可能とするステッピングモータを適用している。さらに、PWM制御においては、パルス印加時間内を前半期間と後半期間の2つに区分し、それぞれ個別の2段階の電流制御を行って燃料吐出量の制御を行っている。これにより、安価な構成で、燃圧、燃料噴射量の安定化を実現する燃料供給制御システムを得ることができる。
【0040】
上述のような構成による、より具体的な効果をまとめると、以下の点が挙げられる。
1)燃温上昇の抑制
2)燃料ベーパー発生量の低減
3)モータ発熱量の低減
4)モータの低コスト化
5)モータ制御回路の低コスト化
6)コイル温度低減によるモータトルクの向上、およびモータ信頼性の向上
7)モータの省電力化
8)燃圧、燃料噴射量の安定化
9)ステッピングモータの脱調の回避
10)モータ始動時のトルク確保
【0041】
なお、上述した実施の形態1では、以下のような3つの設定、制御を行っている場合について説明した。
1)時間区分は、前半期間が後半期間よりも長い時間に設定する。
2)前半期間の時間は、モータコイルの電気的時定数以上の時間を確保する。
3)前半期間のデューティ比を、後半期間のデューティ比よりも高い値に設定する。
しかしながら、本発明は、この3つの条件を全て満たす必要は、必ずしもない。最低限、3番目の条件である「前半期間のデューティ比を、後半期間のデューティ比よりも高い値に設定する」ことだけを満たせば、安価な構成で、燃圧、燃料噴射量の安定化を実現する燃料供給制御システムを得ることが可能である。
【0042】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2における燃料供給制御システムの構成図である。先の実施の形態1における図1の構成と比較すると、本実施の形態2における図8の構成は、燃料供給装置7と燃料噴射弁との間の高圧配管中に、圧力センサ10をさらに備えている点が異なっている。
【0043】
ステッピングモータは、エンジン回転速度や負荷に基づき設定される駆動パルスレートで駆動される。先の実施の形態1で説明したように、ステッピングモータが脱調すると、燃料ポンプの吐出量は、低下する。この結果、脱調している状態では、インジェクタの噴射タイミングによって発生する燃圧変動が、正常な状態の時よりも増加する。したがって、圧力センサ10により検出される圧力値に基づいて、燃圧の変動をモニタすることで、ステッピングモータの脱調を検知することができる。
【0044】
図9は、本発明の実施の形態2において、後半期間のデューティ比と燃料ポンプ吐出量との関係を実測した一例を示す図である。また、図10は、本発明の実施の形態2において、後半期間のデューティ比と燃圧変動量との関係を実測した一例を示す図である。
【0045】
この場合、後半期間のデューティ比が60%を下回ると、図9に示すように燃料吐出量の低下が始まり、ステッピングモータのトルクが不足気味になることを表している。その結果、図9における燃料吐出量の低下に対応して、図10に示すように燃圧変動が増加する。
【0046】
そこで、制御ユニット1は、燃圧の変動を検出することで、ステッピングモータの脱調を検知することができる。さらに、制御ユニット1は、燃圧変動が所定のしきい値以下となるように、後半期間のデューティ比を制御することにより、脱調を回避させることができる。具体的には、制御ユニット1は、燃圧変動が所定のしきい値以下となるように、後半期間のデューティ比をより高くすることにより、トルク不足を解消して脱調を回避させることができる。
【0047】
以上のように、実施の形態2によれば、圧力センサを用いて燃圧変動をモニタすることによっても、脱調状態を早期に検出することができるとともに、脱調を回避させて正常な回転状態へ復帰させることができ、先の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0048】
実施の形態3.
先の実施の形態1、2では、パルス印加時間を、前半期間と後半期間の2区分に分割する場合について説明した。本実施の形態3では、パルス印加時間を3区分以上の複数の期間に分割する場合について説明する。
【0049】
図11は、本発明の実施の形態3のステッピングモータにおける駆動パルスの通電パターンを示した図である。また、図12は、本発明の実施の形態3における1つのパルス印加時間内のデューティ比設定の模式図である。これら図11、12は、パルス印加時間を、第1の期間から第Nの期間(Nは3以上の整数)のN区分に分割した場合を例示している。
【0050】
基本的なシステム構成は、先の実施の形態1における図1の構成と同一である。本実施の形態3において、制御ユニット1は、図11、12に示したように、パルス印加時間内における駆動パルスのデューティを、分割されたN区分のそれぞれに応じて変化させて、電流制御を実施できる。なお、N区分された第1の期間から第Nの期間は、デューティ比ばかりでなく、それぞれの期間の長さも個別に設定することができる。
【0051】
先の実施の形態1、2では、パルス印加時間を、前半期間と後半期間の2区分に分割した。本実施の形態3におけるN分割を、先の実施の形態1、2における2分割と対応づけると、例えば、第1の期間が前半期間に相当し、第2の期間から第Nの期間が後半期間に相当すると考えることができる。すなわち、後半期間をさらに2区分以上に細分化したと考えることができる。
【0052】
このような区分に分割した場合には、細分化された後半期間に対して個別のデューティ比および期間の長さを設定することができ、より細かい制御をすることが可能となる。また、脱調を回避する際には、デューティ比を高めるための期間を特定するためにあらかじめ設定された所定のデューティ比を用いることができる。制御ユニット1は、先の実施の形態1または2で説明したようにして脱調が検出された場合には、第2の期間から第Nの期間の中で、あらかじめ設定された所定のデューティ比よりも低いデューティ比が設定されている期間のデューティ比をより高くして燃料吐出量の制御を行うことにより、トルク不足を解消して脱調を回避させることができる。
【0053】
なお、N区分された第1の期間から第Nの期間について、前半期間を第1の期間から第Mの期間(ただし、Mは、1≦M<Nの整数)に細分化し、後半期間を第(M+1)の期間から第Nの期間に細分化することにより、前半期間に対しても、細分化された期間ごとに個別のデューティ比および期間の長さを設定することができ、より細かい制御をすることが可能となる。
【0054】
以上のように、実施の形態3によれば、パルス印加時間を3区分以上の複数の期間に分割し、複数の期間のそれぞれに応じて駆動パルスのデューティを変化させ電流制御を行うことができる。これにより、可変設定できる自由度を増やした上で、先の実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料供給制御システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における燃料ポンプの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるステッピングモータの固定子と端子の関係を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態1のステッピングモータにおける駆動パルスの通電パターンを示した図である。
【図5】本発明の実施の形態1における1つのパルス印加時間内のデューティ比設定の模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1における制御ユニットに関する制御ブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるPWMデューティ比制御手段が備えているPWM制御デューティ比テーブルの一例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態2における燃料供給制御システムの構成図である。
【図9】本発明の実施の形態2において、後半期間のデューティ比と燃料ポンプ吐出量との関係を実測した一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2において、後半期間のデューティ比と燃圧変動量との関係を実測した一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態3のステッピングモータにおける駆動パルスの通電パターンを示した図である。
【図12】本発明の実施の形態3における1つのパルス印加時間内のデューティ比設定の模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 制御ユニット、2 スロットル弁、3 スロットルポジションセンサ、4 エンジン温度センサ、5 クランク角センサ、6 燃料タンク、7 燃料供給装置、8 圧力調整装置、9 インジェクタ、10 圧力センサ、12、13 ステータ、14 コイル、15 ロータマグネット、16 シャフト、19 プレート、20 ピストン、21 吸入バルブ、22 吐出バルブ、23 シリンダ、24 プレート、26 吸入ポート、27 吐出ポート、28 スプリング、29 増圧室、T1〜T6 端子、101 エンジン回転数算出手段、102 要求燃料噴射量算出手段、103 駆動パルスレート制御手段、104 デューティ比制御手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ポンプにより燃料タンクからデリバリ配管まで圧送した燃料を、燃料噴射弁(インジェクタ)によりエンジン気筒内に噴射させる燃料供給制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料供給制御システムにおいては、燃料ポンプモータの回転速度を制御して燃料吐出量制御を行うために、モータをPWM制御するものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10-266920号公報
【特許文献2】特開2000-220548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には次のような課題がある。
上述のように、従来は、燃料ポンプモータをPWM制御により駆動し、デューティ比の設定によって、モータ回転速度を制御している。従って、多くの燃料吐出量が必要な場合には、デューティ比を高めて、モータ回転速度を上げる必要がある。この結果、消費電力が増加し、モータからの発熱量が増加することになり、燃料温度の上昇を招くことになる。
【0005】
このようにして燃料温度が上昇すると、燃料配管中において燃料が気化し、気泡(ベーパ)が発生しやすくなる。そして、気泡が発生した場合には、燃料を加圧できず、燃圧が不安定になり、インジェクタからの噴射量も不安定となる。
【0006】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、安価な構成で、燃圧、燃料噴射量の安定化を実現する燃料供給制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料供給制御システムは、燃料ポンプモータの回転速度を制御することにより燃料吐出量の制御を行う制御ユニットを備えた燃料供給制御システムにおいて、燃料ポンプモータとしてステッピングモータを適用するとともに、制御ユニットは、ステッピングモータを駆動するためのパルスの駆動パルスレートを、必要とする燃料噴射量に応じて制御する駆動パルスレート制御手段と、ステッピングモータに印加する駆動パルスの印加時間を複数の期間に分割し、複数の期間のそれぞれのパルス変調制御デューティ比を変化させて電流制御を行うPWMデューティ比制御手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料ポンプモータとしては、安価な構成で速度制御を可能とするステッピングモータを適用し、制御においては、要求燃料噴射量に応じて、モータに印加する駆動パルスレートを制御するとともに、パルス印加時間内を複数の期間に区分し、それぞれの期間ごとに所望のデューティ比を設定して電流制御を行うことで、燃料ポンプからの燃料吐出量を調整することにより、安価な構成で、燃圧、燃料噴射量の安定化を実現する燃料供給制御システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の燃料供給制御システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における燃料噴射制御システムの構成図である。この燃料供給制御システムは、制御ユニット1、スロットル弁2、スロットルポジションセンサ3、エンジン温度センサ4、クランク角センサ5、燃料タンク6、燃料供給装置7、圧力調整装置8、およびインジェクタ9で構成される。
【0011】
制御ユニット1は、エンジン全体の動作を制御するためのプログラムやマップを格納している。スロットルポジションセンサ3は、スロットル弁2の開度を計測する。エンジン温度センサ4は、エンジンの壁面温度を計測する。また、クランク角センサ5は、クランク位置計測やエンジン回転速度演算に使用される。
【0012】
そして、制御ユニット1は、スロットルポジションセンサ3、エンジン温度センサ4、クランク角センサ5、およびその他の吸入空気の温度を測定する吸気温センサ(図示せず)などの情報から、適切な燃料噴射時期、燃料噴射量を演算し、燃料噴射装置であるインジェクタ9に駆動信号を出力する。
【0013】
また、制御ユニット1は、各種センサの情報から適切なタイミングで点火信号を点火コイル(図示せず)に出力する。この結果、点火プラグで火花が発生し、エンジンシリンダ内の燃料と吸入空気の混合気が燃焼し、エンジンのピストンが押し出されることにより、クランクシャフトが回転する。
【0014】
燃料供給装置7は、制御ユニット1からの駆動信号により駆動され、フィルタを介して燃料タンク6から燃料を吸入し吐出する。吐出された燃料は、圧力調整装置8により所定圧に調整され、高圧燃料配管を通り、インジェクタ9に供給される。
【0015】
次に、燃料供給装置7内の燃料ポンプおよびその駆動モータについて説明する。
図2は、本発明の実施の形態1における燃料ポンプの構成図である。この燃料ポンプの駆動モータとしては、異物発生を回避するために、給電ブラシがないモータがよい。
【0016】
また、本発明の燃料ポンプは、複数のピストン20をロータ先端に設けたプレート19で押すことにより燃料を加圧する。従って、燃料の加圧に当たっては、一方向のみの連続回転ができればよく、駆動モータとしてステッピングモータを適用することが可能となる。本発明では、ユニポーラ駆動タイプのステッピングモータを適用する。
【0017】
ステッピングモータの固定子は、ステータ12、13、およびボビンに巻き線されたコイル14から構成される。そして、ステータ12、13間にコイル14を配置したものを1相分の固定子とする。ステータ12、13は、極歯を有しており、それら極歯は、ともにそれぞれのステータ12、13上に同じ形状で、同数だけ形成され、等ピッチで円周上に配置されている。
【0018】
同じ構成の固定子同士を、極歯ピッチの半分のピッチ分だけずらして積上げることで、2相の固定子が構成される。ステータとしては、鋼板をプレス加工で加圧成形し、ロータマグネット15と対向させる磁極面を形成するクローポールタイプを用いることで、モータの低コスト化を図っている。
【0019】
回転子は、シャフト16、ロータマグネット15、およびプレート19で構成される。プレート19は、シャフト16の先端に、ある角度だけ傾斜させて固定される。固定子から発生する回転磁束によって、ロータマグネット15が吸引され、回転子が回転する。
【0020】
ひとつの固定子は、2本の銅線を同時に巻くバイファイラ巻きで構成される。図3は、本発明の実施の形態1におけるステッピングモータの固定子と端子の関係を示した図である。図3に示す端子T1、T3、および端子T4、T6を電気角で90°位相をずらして、それぞれの相内で順次通電を切替えることで、ステッピングモータは、ステータの磁極面の個数とロータマグネット15の極数により決定されるステップ角度ずつ回転することができる。端子T2、T5は、バッテリ電源へ接続される。
【0021】
図4は、本発明の実施の形態1のステッピングモータにおける駆動パルスの通電パターンを示した図である。どの瞬間においても、いずれかの2つの相が常時通電される2相フルステップ通電となっている。本発明では、モータ制御回路として、ユニポーラ駆動方式を採用している。ユニポーラ駆動は、バイポーラ駆動に比べて、通電相の切替えに必要なパワー素子の数量を減らすことができる。これにより、モータ制御回路の低コスト化を図っている。
【0022】
先の図2において、ポンプ部分は、プレート19、ピストン20、吸入バルブ21、吐出バルブ22、シリンダ23、プレート24、およびスプリング28で構成される。吸入ポート26からポンプ内へ流入した燃料は、ロータの回転に伴って回転するプレート19によってピストン20が上下に駆動することで、吸入バルブ21を経てピストン20の下側に設けられた増圧室29に送り込まれる。そして、増圧室29に送り込まれた燃料は、加圧され、吐出バルブ22を経て吐出ポート27から圧送される。
【0023】
本実施の形態1においては、図4に模式的に示したように、PWM制御された駆動パルスがステッピングモータへ印加される単位時間に相当するパルス印加時間(図4に図示されたパルス印加時間に相当)は、前半期間と後半期間に区分される。そして、本発明においては、この前半期間と後半期間のそれぞれに対して個別に電流値の制御を行う点を特徴としている。
【0024】
電流値の制御は、PWM制御におけるデューティ比の設定で行う。このような2段階の電流制御の目的は、モータのトルクを確保しながら、消費電流を可能な限り抑えることで、モータの発熱を低減することにある。
【0025】
このような目的を達成するために、具体的には以下のような設定、制御を行っている。
1)時間区分は、前半期間が後半期間よりも長い時間に設定する。
2)前半期間の時間は、モータコイルの電気的時定数以上の時間を確保する。
3)前半期間のデューティ比を、後半期間のデューティ比よりも高い値に設定する。
【0026】
図5は、本発明の実施の形態1における1つのパルス印加時間内のデューティ比設定の模式図である。ロータとステータ極歯との負荷角が大きい前半期間においては、高いデューティ比を設定して電流を供給することにより、トルクを確保している。一方、後半期間においては、ロータの慣性を落とさない程度に低いデューティ比に設定して電流を抑えることにより、モータコイルのジュール熱を低減させている。
【0027】
このような制御を行うことにより、モータ発熱が抑えられ、燃温上昇を抑えることができる。また、コイルの温度上昇による抵抗値の増加が抑えられるので、高いトルクを確保できる。また、コイル温度の低下により、コイルの熱的な劣化を抑制し、燃料供給装置の信頼性を高めることができる。
【0028】
次に、制御ユニット1の内部構成および動作について説明する。図6は、本発明の実施の形態1における制御ユニット1に関する制御ブロック図である。制御ユニット1は、エンジン回転数算出手段101、要求燃料噴射量算出手段102、駆動パルスレート制御手段103、およびPWMデューティ比制御手段104を備えている。
【0029】
エンジン回転数やエンジン負荷(スロットル開度など)の状態に応じて、要求される燃料噴射量は変化する。そこで、制御ユニット1内の要求燃料噴射量算出手段102は、各種センサ入力に基づいて、この要求燃料噴射量を算出する。さらに、要求燃料噴射量算出手段102は、算出した要求燃料噴射量から、必要となる燃料ポンプからの燃料吐出量を演算することができる。
【0030】
次に、駆動パルスレート制御手段103は、要求燃料噴射量算出手段102によって求められた燃料吐出量を、モータの駆動パルスレートに変換する。駆動パルスレート制御手段103は、アイドル運転時など、要求される燃料噴射量があらかじめ決められた値よりも少ない場合には、低周波の駆動パルスレートに設定する。これにより、不用意にモータのトルクを低下させることがなく、モータの脱調を抑えることが可能となる。
【0031】
また、ステッピングモータは、パルスレートを増加させると、コイルのインダクタンスの影響によりインピーダンスが増加し、その結果、電流が低下し、トルクが低下することとなる。したがって、燃料ポンプ駆動開始時、つまり車両始動時での高いトルクを得るには、駆動パルスのパルスレートを低くして駆動させる方がよいことが分かっている。
【0032】
逆に、エンジン高回転時など、要求される燃料噴射量があらかじめ決められた値より多い場合は、高周波の駆動パルスレートを設定することになり、必要な燃料を確保することが可能となる。
【0033】
本実施の形態1では、要求燃料噴射量に応じた駆動パルスレート制御としたが、エンジン回転速度やスロットル開度量をセンサ等から検出し、それらに応じて駆動パルスレートを設定することも可能となる。このように設定することで、要求燃料噴射量から燃料ポンプの燃料吐出量を計算する場合における制御ユニット1の負荷を軽減することができる。
【0034】
本発明においては、車両始動時では、最小の駆動パルスレートを適用し、さらに、この時の電流値は、PWM制御デューティ比を100%に設定するなどして、各期間において設定可能な最大電流値を供給するものとする。これにより、燃料ポンプを高いモータトルクで確実に起動させることができる。
【0035】
この最小パルスレートでのステッピングモータ駆動を所定時間だけ実施した後は、エンジン回転速度や負荷に応じて、上述の通りにパルスレートを任意に設定する。
【0036】
また、水温センサや機温センサなどのエンジン温度センサ4の出力値があらかじめ決められた値よりも高い温度を示す場合には、燃料ポンプのモータも熱を帯びていることが考えられる。このため、気泡が発生し易い状態と言える。そこで、駆動パルスレート制御手段103は、モータの発熱を抑えるために、エンジン温度センサ4からの出力値があらかじめ決められた値よりも高い温度を示す場合には、駆動パルスレートを高く設定するか、もしくはデューティ比を低く設定する。この結果、モータの消費電流を低減させて、気泡発生を抑制することができる。
【0037】
また、水温センサや機温センサなどのエンジン温度センサ4の出力値があらかじめ決められた値よりも低い温度を示す場合には、燃料ポンプのモータが熱を帯びていると考える必要がない。このため、エンジン温度が高い場合のような制御は、特に必要としない。
【0038】
図7は、本発明の実施の形態1におけるPWMデューティ比制御手段104が備えているPWM制御デューティ比テーブルの一例を示した図である。PWMデューティ比制御手段104は、このテーブルを用いることで、エンジン温度と駆動パルスレートのそれぞれの値から、適切なPWM制御デューティ比を決定することができる。
【0039】
以上のように、実施の形態1によれば、燃料ポンプモータとしては、安価な構成で速度制御を可能とするステッピングモータを適用している。さらに、PWM制御においては、パルス印加時間内を前半期間と後半期間の2つに区分し、それぞれ個別の2段階の電流制御を行って燃料吐出量の制御を行っている。これにより、安価な構成で、燃圧、燃料噴射量の安定化を実現する燃料供給制御システムを得ることができる。
【0040】
上述のような構成による、より具体的な効果をまとめると、以下の点が挙げられる。
1)燃温上昇の抑制
2)燃料ベーパー発生量の低減
3)モータ発熱量の低減
4)モータの低コスト化
5)モータ制御回路の低コスト化
6)コイル温度低減によるモータトルクの向上、およびモータ信頼性の向上
7)モータの省電力化
8)燃圧、燃料噴射量の安定化
9)ステッピングモータの脱調の回避
10)モータ始動時のトルク確保
【0041】
なお、上述した実施の形態1では、以下のような3つの設定、制御を行っている場合について説明した。
1)時間区分は、前半期間が後半期間よりも長い時間に設定する。
2)前半期間の時間は、モータコイルの電気的時定数以上の時間を確保する。
3)前半期間のデューティ比を、後半期間のデューティ比よりも高い値に設定する。
しかしながら、本発明は、この3つの条件を全て満たす必要は、必ずしもない。最低限、3番目の条件である「前半期間のデューティ比を、後半期間のデューティ比よりも高い値に設定する」ことだけを満たせば、安価な構成で、燃圧、燃料噴射量の安定化を実現する燃料供給制御システムを得ることが可能である。
【0042】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2における燃料供給制御システムの構成図である。先の実施の形態1における図1の構成と比較すると、本実施の形態2における図8の構成は、燃料供給装置7と燃料噴射弁との間の高圧配管中に、圧力センサ10をさらに備えている点が異なっている。
【0043】
ステッピングモータは、エンジン回転速度や負荷に基づき設定される駆動パルスレートで駆動される。先の実施の形態1で説明したように、ステッピングモータが脱調すると、燃料ポンプの吐出量は、低下する。この結果、脱調している状態では、インジェクタの噴射タイミングによって発生する燃圧変動が、正常な状態の時よりも増加する。したがって、圧力センサ10により検出される圧力値に基づいて、燃圧の変動をモニタすることで、ステッピングモータの脱調を検知することができる。
【0044】
図9は、本発明の実施の形態2において、後半期間のデューティ比と燃料ポンプ吐出量との関係を実測した一例を示す図である。また、図10は、本発明の実施の形態2において、後半期間のデューティ比と燃圧変動量との関係を実測した一例を示す図である。
【0045】
この場合、後半期間のデューティ比が60%を下回ると、図9に示すように燃料吐出量の低下が始まり、ステッピングモータのトルクが不足気味になることを表している。その結果、図9における燃料吐出量の低下に対応して、図10に示すように燃圧変動が増加する。
【0046】
そこで、制御ユニット1は、燃圧の変動を検出することで、ステッピングモータの脱調を検知することができる。さらに、制御ユニット1は、燃圧変動が所定のしきい値以下となるように、後半期間のデューティ比を制御することにより、脱調を回避させることができる。具体的には、制御ユニット1は、燃圧変動が所定のしきい値以下となるように、後半期間のデューティ比をより高くすることにより、トルク不足を解消して脱調を回避させることができる。
【0047】
以上のように、実施の形態2によれば、圧力センサを用いて燃圧変動をモニタすることによっても、脱調状態を早期に検出することができるとともに、脱調を回避させて正常な回転状態へ復帰させることができ、先の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0048】
実施の形態3.
先の実施の形態1、2では、パルス印加時間を、前半期間と後半期間の2区分に分割する場合について説明した。本実施の形態3では、パルス印加時間を3区分以上の複数の期間に分割する場合について説明する。
【0049】
図11は、本発明の実施の形態3のステッピングモータにおける駆動パルスの通電パターンを示した図である。また、図12は、本発明の実施の形態3における1つのパルス印加時間内のデューティ比設定の模式図である。これら図11、12は、パルス印加時間を、第1の期間から第Nの期間(Nは3以上の整数)のN区分に分割した場合を例示している。
【0050】
基本的なシステム構成は、先の実施の形態1における図1の構成と同一である。本実施の形態3において、制御ユニット1は、図11、12に示したように、パルス印加時間内における駆動パルスのデューティを、分割されたN区分のそれぞれに応じて変化させて、電流制御を実施できる。なお、N区分された第1の期間から第Nの期間は、デューティ比ばかりでなく、それぞれの期間の長さも個別に設定することができる。
【0051】
先の実施の形態1、2では、パルス印加時間を、前半期間と後半期間の2区分に分割した。本実施の形態3におけるN分割を、先の実施の形態1、2における2分割と対応づけると、例えば、第1の期間が前半期間に相当し、第2の期間から第Nの期間が後半期間に相当すると考えることができる。すなわち、後半期間をさらに2区分以上に細分化したと考えることができる。
【0052】
このような区分に分割した場合には、細分化された後半期間に対して個別のデューティ比および期間の長さを設定することができ、より細かい制御をすることが可能となる。また、脱調を回避する際には、デューティ比を高めるための期間を特定するためにあらかじめ設定された所定のデューティ比を用いることができる。制御ユニット1は、先の実施の形態1または2で説明したようにして脱調が検出された場合には、第2の期間から第Nの期間の中で、あらかじめ設定された所定のデューティ比よりも低いデューティ比が設定されている期間のデューティ比をより高くして燃料吐出量の制御を行うことにより、トルク不足を解消して脱調を回避させることができる。
【0053】
なお、N区分された第1の期間から第Nの期間について、前半期間を第1の期間から第Mの期間(ただし、Mは、1≦M<Nの整数)に細分化し、後半期間を第(M+1)の期間から第Nの期間に細分化することにより、前半期間に対しても、細分化された期間ごとに個別のデューティ比および期間の長さを設定することができ、より細かい制御をすることが可能となる。
【0054】
以上のように、実施の形態3によれば、パルス印加時間を3区分以上の複数の期間に分割し、複数の期間のそれぞれに応じて駆動パルスのデューティを変化させ電流制御を行うことができる。これにより、可変設定できる自由度を増やした上で、先の実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1における燃料供給制御システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における燃料ポンプの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるステッピングモータの固定子と端子の関係を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態1のステッピングモータにおける駆動パルスの通電パターンを示した図である。
【図5】本発明の実施の形態1における1つのパルス印加時間内のデューティ比設定の模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1における制御ユニットに関する制御ブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態1におけるPWMデューティ比制御手段が備えているPWM制御デューティ比テーブルの一例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態2における燃料供給制御システムの構成図である。
【図9】本発明の実施の形態2において、後半期間のデューティ比と燃料ポンプ吐出量との関係を実測した一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2において、後半期間のデューティ比と燃圧変動量との関係を実測した一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態3のステッピングモータにおける駆動パルスの通電パターンを示した図である。
【図12】本発明の実施の形態3における1つのパルス印加時間内のデューティ比設定の模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 制御ユニット、2 スロットル弁、3 スロットルポジションセンサ、4 エンジン温度センサ、5 クランク角センサ、6 燃料タンク、7 燃料供給装置、8 圧力調整装置、9 インジェクタ、10 圧力センサ、12、13 ステータ、14 コイル、15 ロータマグネット、16 シャフト、19 プレート、20 ピストン、21 吸入バルブ、22 吐出バルブ、23 シリンダ、24 プレート、26 吸入ポート、27 吐出ポート、28 スプリング、29 増圧室、T1〜T6 端子、101 エンジン回転数算出手段、102 要求燃料噴射量算出手段、103 駆動パルスレート制御手段、104 デューティ比制御手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ポンプモータの回転速度を制御することにより燃料吐出量の制御を行う制御ユニットを備えた燃料供給制御システムにおいて、
前記燃料ポンプモータとしてステッピングモータを適用するとともに、
前記制御ユニットは、
前記ステッピングモータを駆動するためのパルスの駆動パルスレートを、必要とする燃料噴射量に応じて制御する駆動パルスレート制御手段と、
前記ステッピングモータに印加する駆動パルスの印加時間を複数の期間に分割し、前記複数の期間のそれぞれのパルス変調制御デューティ比を変化させて電流制御を行うPWMデューティ比制御手段と
を備える燃料供給制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、前記電流制御を行う際に、最初の期間である第1の期間のデューティ比を、他の期間のデューティ比よりも高くなるように設定する
燃料供給制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記駆動パルスレート制御手段は、必要とする燃料噴射量が少ない傾向にある場合には、前記駆動パルスレートを低周波に制御する
燃料供給制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記駆動パルスレート制御手段は、必要とする燃料噴射量が多い傾向にある場合には、前記駆動パルスレートを高周波に制御する
燃料供給制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、前記ステッピングモータの始動時には、前記デューティ比を高く設定する
燃料供給制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、前記駆動パルスレートが低周波の場合には、前記パルス印加時間を前記複数の期間に分割した中で、後半期間に相当する期間のデューティ比を低く設定する
燃料供給制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、エンジン温度が高い傾向にある場合には、前記デューティ比を低く設定する
燃料供給制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、燃料ポンプからの吐出燃料の圧力検出値に基づいて燃圧変動量を算出し、前記燃圧変動量が所定値を超えたことを検出することで前記ステッピングモータの脱調を検出し、前記脱調を検知した場合には、前記燃圧変動量が前記所定値以内になるように、前記パルス印加時間を前記複数の期間に分割した中で、後半期間に相当する期間の電流値を制御する
燃料供給制御システム。
【請求項1】
燃料ポンプモータの回転速度を制御することにより燃料吐出量の制御を行う制御ユニットを備えた燃料供給制御システムにおいて、
前記燃料ポンプモータとしてステッピングモータを適用するとともに、
前記制御ユニットは、
前記ステッピングモータを駆動するためのパルスの駆動パルスレートを、必要とする燃料噴射量に応じて制御する駆動パルスレート制御手段と、
前記ステッピングモータに印加する駆動パルスの印加時間を複数の期間に分割し、前記複数の期間のそれぞれのパルス変調制御デューティ比を変化させて電流制御を行うPWMデューティ比制御手段と
を備える燃料供給制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、前記電流制御を行う際に、最初の期間である第1の期間のデューティ比を、他の期間のデューティ比よりも高くなるように設定する
燃料供給制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記駆動パルスレート制御手段は、必要とする燃料噴射量が少ない傾向にある場合には、前記駆動パルスレートを低周波に制御する
燃料供給制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記駆動パルスレート制御手段は、必要とする燃料噴射量が多い傾向にある場合には、前記駆動パルスレートを高周波に制御する
燃料供給制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、前記ステッピングモータの始動時には、前記デューティ比を高く設定する
燃料供給制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、前記駆動パルスレートが低周波の場合には、前記パルス印加時間を前記複数の期間に分割した中で、後半期間に相当する期間のデューティ比を低く設定する
燃料供給制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、エンジン温度が高い傾向にある場合には、前記デューティ比を低く設定する
燃料供給制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の燃料供給制御システムにおいて、
前記PWMデューティ比制御手段は、燃料ポンプからの吐出燃料の圧力検出値に基づいて燃圧変動量を算出し、前記燃圧変動量が所定値を超えたことを検出することで前記ステッピングモータの脱調を検出し、前記脱調を検知した場合には、前記燃圧変動量が前記所定値以内になるように、前記パルス印加時間を前記複数の期間に分割した中で、後半期間に相当する期間の電流値を制御する
燃料供給制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−121458(P2009−121458A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155452(P2008−155452)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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