説明

燃料供給装置

【課題】ポンプの回転数を圧力センサによって間接的に検出する。
【解決手段】燃料供給装置4は、インタンクモジュール42を備える。インタンクモジュール42には、ポンプ43、フィルタ44、および圧力制御弁45が設けられている。さらに、インタンクモジュール42には、燃料の圧力を検出する圧力センサ35が設けられている。圧力センサ35は、ポンプ43の近傍に設けられるので、ポンプ43に起因する脈動成分を検出しやすい。燃料ポンプ制御器47は、回転数検出モジュール47bを備える。回転数検出モジュール47bは、圧力センサ35によって検出される圧力に含まれる脈動成分の周期に基づいて、ポンプ43の回転数Npを検出する。従って、ポンプの回転数を圧力センサによって間接的に検出することができる。検出された回転数Npは、制御モジュール47cおよびダイアグモジュール47eによって利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内の燃料を電動ポンプによって燃料消費装置へ供給する燃料供給装置に関する
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数のインジェクタが設けられた燃料レールに設けられた圧力センサと、圧力センサの出力に基づいて燃料ポンプへの供給電力を制御する制御回路とを備えた燃料供給装置を開示している。この従来技術は、インジェクタに供給されるパルス幅と、インジェクタから噴射される燃料量との線形性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−103105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、圧力センサによって検出可能な圧力の変動成分のうち、線形性を維持するという目的のために貢献する一部の成分だけを利用している。具体的には、インジェクタから噴射される燃料量に影響を与えるような、平均的な圧力を利用している。
【0005】
ところが、燃料供給装置によって供給される燃料の圧力には、燃料供給装置の作動状態を示す脈動成分が含まれている。例えば、電動ポンプの作動状態を示す高周波成分である。
【0006】
しかし、従来技術では、このような脈動成分が検出されていない。このため、従来技術では、圧力センサを十分に利用できていないという問題点があった。
【0007】
また、従来技術では、圧力センサが燃料レールに設けられている。このため、圧力センサの位置では、ポンプに起因する脈動成分が減衰していることがあった。また、インジェクタの作動に起因する脈動成分によって、ポンプに起因する脈動成分が隠されることもある。これらのため、ポンプに起因する脈動成分を検出しにくいという問題点があった。
【0008】
また、従来技術では、ポンプの回転数を検出する手段が提供されていない。このため、ポンプの回転数に基づく制御ができないという問題点があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポンプに起因する脈動成分を検出しやすい燃料供給装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、燃料供給装置に設けられた圧力センサを有効に利用する燃料供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0012】
請求項1に記載の発明は、タンク内の燃料を燃料消費装置(2)に供給する燃料供給装置(4)において、電動モータ(43a)を備えるポンプ(43)と、ポンプから燃料消費装置に供給される燃料の圧力に含まれるポンプに起因する脈動成分を検出する圧力センサ(35、235)とを備え、ポンプと圧力センサとは、タンク内に収容されていることを特徴とする。この発明によると、圧力センサがタンク内に収容される。このため、圧力センサは、ポンプに起因する脈動成分を検出しやすい位置に配置される。
【0013】
請求項2に記載の発明は、ポンプと圧力センサとは、タンクの開口部に設けられた蓋(41a)に支持されたインタンクモジュール(42)に設けられていることを特徴とする。この構成によると、圧力センサを容易に設置することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、圧力センサは、ポンプの吐出管(43m)と蓋(41a)に設けられた出口管(41c)との間に設けられていることを特徴とする。この構成によると、蓋の形状に制限されることなく、圧力センサを設置することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、さらに、ポンプと燃料消費装置との間に設けられ、燃料の圧力を設定圧力に調節する圧力制御弁(45)を備えるとともに、圧力制御弁はタンク内に収容されており、圧力センサは、ポンプと圧力制御弁との間の燃料の圧力を検出することを特徴とする。この発明によると、圧力センサを圧力制御弁よりもポンプに近い位置に設けることができる。このため、ポンプの構成に起因する脈動成分を検出しやすいという利点が得られる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、さらに、ポンプと燃料消費装置との間に設けられ、ポンプから燃料消費装置に供給される燃料を濾過するフィルタ(44)を備えるとともに、フィルタはタンク内に収容されており、圧力センサは、ポンプとフィルタとの間の燃料の圧力を検出することを特徴とする。この発明によると、圧力センサをフィルタよりもポンプに近い位置に設けることができる。このため、ポンプの構成に起因する脈動成分を検出しやすいという利点が得られる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、圧力センサは、フィルタのハウジング(44a、244a)に設けられていることを特徴とする。この発明によると、圧力センサを容易に設置することができる。
【0018】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関システムを示すブロック構成図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料供給装置のインタンクモジュールを示す側面図である。
【図3】第1実施形態に係る燃料供給装置のポンプアセンブリを示す部分断面図である。
【図4】第1実施形態に係る燃料供給装置の燃料の圧力を示すグラフである。
【図5】第1実施形態に係る燃料供給装置のフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る燃料供給装置のフローチャートである。
【図7】第1実施形態に係る燃料供給装置のフローチャートである。
【図8】第1実施形態に係る燃料供給装置のフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る燃料供給装置のインタンクモジュールを示す側面図である。
【図10】第2実施形態に係る燃料供給装置のポンプアセンブリを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る内燃機関システム1を示すブロック構成図である。自動車用の内燃機関システム1は、燃料消費装置としての内燃機関2と、エンジン制御システム3と、燃料供給装置4とを備える。内燃機関2は、イグニッション式のガソリン機関である。内燃機関2は、外燃機関または暖房装置などの燃料消費装置と置き換えることができる。
【0022】
エンジン制御システム3は、エンジン制御装置(ECU)31と、アクチュエータ群(SV)32と、センサ群(SS)33とを備える。ECU31は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体(MEM)31aを備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体31aは、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体31aは、メモリによって提供することができる。プログラムは、ECU31によって実行されることによって、ECU31をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するようにECU31を機能させる。
【0023】
アクチュエータ群32は、内燃機関2の可変装置を調節する複数のアクチュエータを含む。例えば、吸入空気量を調節するスロットルのアクチュエータ、点火時期を調節する点火回路などのアクチュエータを含むことができる。アクチュエータ群32には、燃料供給量を調節するインジェクタ34が含まれる。
【0024】
センサ群33は、内燃機関2の作動状態を検出する複数のセンサを含む。例えば、内燃機関2の回転数を検出する回転数センサ、内燃機関2の吸入空気圧を検出する圧力センサなどのセンサを含むことができる。センサ群33には、燃料供給装置4によってインジェクタ34に供給される燃料の圧力を検出する圧力センサ(PS)35が含まれる。圧力センサ35は、脈動検出手段である。
【0025】
燃料供給装置4は、液体燃料としてのガソリンを蓄えるタンク41を備える。燃料供給装置4は、タンク41内に収容されたインタンクモジュール42を備える。インタンクモジュール42は、タンク41の壁に支持されている。インタンクモジュール42は、ポンプ(FP)43と、フィルタ(FL)44と、圧力制御弁(PR)45とを備える。ポンプ43は電動ポンプとも呼ばれる。ポンプ43は、タンク41内の燃料を吸入し、加圧して、インジェクタ34に供給する。フィルタ44は、ポンプ43とインジェクタ34との間の燃料の通路に配置されている。フィルタ44は、通路を流れる燃料を濾過する。圧力制御弁45は、ポンプ43とインジェクタ34との間の通路に配置されている。圧力制御弁45は、余剰燃料を通路からタンク41内へ戻すことによって、インジェクタ34に供給される燃料の圧力を所定の圧力に調節する。インタンクモジュール42からタンク41を貫通して、燃料の配管46aが延び出している。配管46aは、複数のインジェクタ34へ燃料を分配する燃料レール46bに接続されている。この結果、インタンクモジュール42からインジェクタ34へ燃料を供給するためのリターンレス型の燃料供給系統が構成されている。
【0026】
ポンプ43は、モータ(MT)43aと、ポンプユニット(PU)43bとを有している。モータ43aは、電動モータとも呼ばれる。モータ43aは、ブラシを有する直流モータである。ポンプユニット43bは、再生ポンプである。ポンプユニット43bは、モータ43aによって回転駆動される。
【0027】
図2は、第1実施形態に係る燃料供給装置4のインタンクモジュール42を示す側面図である。インタンクモジュール42は、タンク41に形成された開口部を覆う蓋41aに連結されている。インタンクモジュール42は、蓋41aによってタンク41内に支持されている。インタンクモジュール42は、蓋41aに設けられた電気接続のためのコネクタ41bと、蓋41aに設けられ、蓋41aを貫通する燃料の通路を提供する出口管41cとを有する。出口管41cは、配管46aの一部を構成している。
【0028】
インタンクモジュール42は、サブタンク42aと、複数の支持ロッド42bと、スプリング42cと、ポンプアセンブリ42dと、配管42eと、配管42fとを有する。サブタンク42aには、タンク41内の燃料量を計測するための燃料量センサ36が装着されている。
【0029】
サブタンク42aは、タンク41内の燃料残量が減少したときにも、ポンプ43周辺の液面を高く維持する。サブタンク42aは、タンク41内の燃料をサブタンク42a内に汲み上げるサブポンプを備えることができる。サブポンプは、圧力制御弁45からの戻り燃料の流れによって作動するジェットポンプによって提供することができる。サブポンプは図示されない。連結部材としての複数の支持ロッド42bは、蓋41aとサブタンク42aとを連結している。複数の支持ロッド42bは、サブタンク42aと摺動可能に連結されることによって、蓋41aとサブタンク42aとの間の距離を調節可能としている。スプリング42cは、サブタンク42aをタンク41の底面に押し付ける。複数の支持ロッド42bとスプリング42cとは、タンク41の底面に変形が生じても、サブタンク42aを底面上に安定的に支持する。
【0030】
ポンプアセンブリ42dからは、配管42eが延び出している。配管42eの一端は、ポンプアセンブリ42dの出口管に接続されている。配管42eの他端は、圧力センサ35の入口に接続されている。さらに、圧力センサ35の出口は、配管42fの一端に接続されている。配管42fの他端は、出口管41cに接続されている。配管42e、42fは、樹脂製の可撓性をもつ管である。配管42e、42fは、いわゆる蛇腹管によって提供されている。ポンプアセンブリ42dから吐出した燃料は、圧力センサ35を通ってから、出口管41cに供給され、さらにインジェクタ34に供給される。
【0031】
コネクタ41bは、タンク41の壁を貫通する複数の電気的接続を提供している。コネクタ41bは、少なくとも圧力センサ35と、モータ43aとのための電気的接続を提供する。さらに、コネクタ41bは、燃料量センサ36のための電気的接続を提供する。圧力センサ35は、インタンクモジュール42の部品として配置されている。このため、圧力センサ35のための電気的接続が、モータ43aのために必要なコネクタ41bを利用して提供される。
【0032】
図3は、第1実施形態に係る燃料供給装置のポンプアセンブリ42dを示す部分断面図である。ポンプアセンブリ42dは、ポンプ43と、フィルタ44と、圧力制御弁45とを連結した組立体である。さらに、ポンプアセンブリ42dは、ポンプ43の吸入口に装着されたサクションフィルタ48を備える。
【0033】
ポンプ43は、モータ43aと、ポンプユニット43bとを有している。モータ43aは、固定子43cと、回転子43dとを有する。回転子43dは回転軸43eによって回転可能に支持されている。回転子43dは、整流子43fを有する。整流子43fは、ブラシ43gと接触している。回転子43dは、図示せぬ回転子巻線を有する。回転子巻線には、ブラシ43gと整流子43fとを介して電流が供給される。モータ43aは、FPC47から給電されると回転し、回転軸43eによってポンプユニット43bを回転駆動する。
【0034】
ポンプユニット43bは、非容積型ポンプのひとつである再生ポンプによって提供されている。ポンプユニット43bは、外縁に沿って複数のチャンネルを有する円板状のインペラ43hと、インペラ43hを収容するケーシング43kとによって構成される。ケーシング43kには、図示せぬ吸入ポートと吐出ポートとが形成されている。インペラ43hは、モータ43aの回転軸43eによって回転駆動される。ポンプユニット43bは、サクションフィルタ48を通してサブタンク42a内の燃料をポンプ43内に吸入し、吐出管43mから吐出する。
【0035】
モータ43aの回転数には、その構成に起因して発生する回転変動成分が含まれる。例えばブラシ43gと整流子43fとの接触状態の変化によって回転数が変動する。ブラシ43gと整流子43fとの接触状態は、回転子43dの回転に同期して周期的に変化する。よって、回転変動成分は、回転に同期している。この回転変動成分は、ポンプユニット43bの作動に変動を与える。この結果、ポンプユニット43bによって加圧された燃料の圧力にも、回転変動成分に対応した脈動成分が生じる。
【0036】
ポンプユニット43bによって加圧された燃料の圧力には、その構成に起因して発生する脈動成分が含まれる。脈動成分は、ポンプユニット43bの回転に同期している。例えば、インペラ43hに形成された複数のチャンネルと、吸入および吐出ポートとの連通状態の変化に起因する脈動成分が、燃料の圧力に含まれる。
【0037】
従って、ポンプユニット43bによって加圧された燃料の圧力には、ポンプ43の構成に起因する脈動成分が含まれている。この脈動成分には、モータ43aの構成に起因する脈動成分と、ポンプユニット43bの構成に起因する脈動成分とが含まれる。
【0038】
ポンプアセンブリ42dは、フィルタ44の樹脂製のハウジング44aをフレームとして利用している。ハウジング44aには、ポンプ43と圧力制御弁45とが固定されている。ハウジング44aは、サブタンク42aに固定されている。ハウジング44aは、C字型またはドーナツ型の同心円筒状に形成されている。ハウジング44aは、内筒44bと、外筒44cとを有する。内筒44bの内部には、ポンプ43を保持するポンプ室が形成されている。内筒44bの上端には、内部に向けて突出する入口管44dが形成されている。入口管44d内には、ポンプ43の吐出管43mが挿入されている。入口管44dと吐出管43mとの間には、Oリング42gとスペーサ42hとが配置され、必要なシールが提供されている。
【0039】
内筒44bの下端と外筒44cの下端とは、底板44eによって閉じられている。内筒44bと外筒44cとの間には、フィルタエレメント44fを収容するフィルタ室が形成されている。フィルタエレメント44fは、内筒44bと外筒44cとの間に配置されている。フィルタエレメント44fは、ハウジング44a内を流れる燃料を濾過する。外筒44cの上部開口端は、カバー44gによって閉じられている。外筒44cとカバー44gとは溶着によって液密に接続されている。フィルタエレメント44fより上流側には、上流ギャラリ44hが区画されている。フィルタエレメント44fより下流側には、下流ギャラリ44kが区画されている。
【0040】
ハウジング44aの側部には、圧力制御弁45を収容するための筒部44mと、出口管44nとが形成されている。筒部44m内には、制御ギャラリ44pとリターンギャラリ44rとが形成されている。筒部44m内には、圧力制御弁45が固定されている。筒部44mと圧力制御弁45との間には、Oリング42k、42m、およびスペーサ42nが配置され、必要なシールが提供されている。制御ギャラリ44pは、下流ギャラリ44kと連通している。制御ギャラリ44pは、出口管44n内の出口通路44sと連通している。リターンギャラリ44rは、図示せぬサブポンプを介してサブタンク内に連通している。
【0041】
ハウジング44aは、入口管44d、上流ギャラリ44h、フィルタエレメント44f、下流ギャラリ44k、制御ギャラリ44p、出口通路44sを順に経由する通路を形成する。ハウジング44aは、ポンプ43から出口通路44sまでの通路を形成するとともに、その通路内にフィルタ容器と、圧力制御弁の装着部とを形成している。
【0042】
圧力制御弁45は、制御ギャラリ44pの圧力を設定圧力に調節するように、制御ギャラリ44pからリターンギャラリ44rへ燃料を流出させる。この結果、制御ギャラリ44pおよびそれに連通する通路の燃料の圧力は、所定の設定圧力に調節される。
【0043】
図2および図3において、圧力センサ35は、タンク41内に収容されている。このため、ポンプ43とインジェクタ34との間の燃料の通路のうち、ポンプ43に近い位置に圧力センサ35は設置される。この結果、ポンプ43に起因する微小な脈動成分を検出することができる。また、燃料の通路には、インジェクタ34の断続的な噴射に起因する脈動成分が発生する。しかし、圧力センサ35は、インジェクタ34から離れたタンク41内に配置される。このため、インジェクタに起因する脈動成分が減衰した位置に、圧力センサ35が設けられる。このため、圧力センサ35から出力される圧力信号から、インジェクタに起因する脈動成分を低減することができる。
【0044】
また、圧力センサ35は、ポンプアセンブリ42dを出た後の配管42eと配管42fとの間に設けられる。このため、既存の装置に付加することができる。
【0045】
また、圧力センサ35は、インタンクモジュール42に設けられる。このため、圧力センサ35を少ない作業工数で設置することができる。さらに、インタンクモジュール42に設けられたポンプ43のためのコネクタ41bを利用して圧力センサ35の配線を設けることができる。さらに、タンク41および蓋41aの形状は、タンク41が搭載される車両ごとに異なる。しかし、圧力センサ35をインタンクモジュール42に設けたため、複数の車両に共通の構成を採用することができる。
【0046】
また、圧力センサ35は、ポンプ43の吐出管43mと蓋41aに設けられた出口管41cとの間に設けられている。圧力センサ35は、吐出管43mと出口管41cとの間の通路を形成する部材42e、42fに設けられ、その通路内の燃料の圧力を検出する。この構成は、蓋41aの形状に制限されることなく圧力センサ35を設けることを可能とする。
【0047】
図1に戻り、燃料供給装置4は、モータ43aの回転数を制御する燃料ポンプ制御器(FPC)47を備える。FPC47は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体(MEM)47aを備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体47aは、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体47aは、メモリによって提供することができる。プログラムは、FPC47によって実行されることによって、FPC47をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するようにFPC47を機能させる。
【0048】
FPC47は、複数のモジュールを提供する。回転数検出モジュール(DET)47bは、ポンプ43の構成に起因する周期的な脈動成分を圧力Pfから抽出し、抽出された脈動成分の周期に基づいて、モータ43aの回転数Npを検出する。制御モジュール(FC)47cは、圧力センサ35によって検出される圧力Pfが目標圧力に一致するようにモータ43aの回転数を制御する。制御モジュール47cは、回転数検出モジュール47bによって検出された回転数Npに基づいて、圧力Pfを目標圧力に維持するように、モータ43aをフィードフォワード制御するフィードフォワード制御モジュール(FFC)47dを含む。ダイアグモジュール(DIG)47eは、診断情報の出力を要求するダイアグ信号に応答して、回転数検出モジュール47bによって検出された回転数Npを出力する。
【0049】
図4は、第1実施形態に係る燃料供給装置の圧力Pfの変化を示すグラフである。図4は、燃料供給装置の定常運転状態を示している。圧力Pfには、周期的な脈動成分が含まれている。脈動には、異なる周期をもつ複数の成分が含まれている。脈動成分のうち、モータ43aの構造に起因する脈動は、比較的大きな周期TMを有する。この周期TMは、周期TMの半分に相当する時間DTを検出することによって求められる。時間DTは、圧力Pfがピーク値になる時刻T1と、圧力Pfがボトム値になる時刻T2とを検出することによって求められる。そして、時間DTに基づいて、モータ43aの回転数Npが求められる。脈動には、周期TMより短い周期TPをもつ複数の成分が含まれている。これらの短周期成分は、フィルタ処理によって除去することができる。
【0050】
図5は、第1実施形態に係る燃料供給装置のFPC47が実行するプログラムの一部を示すフローチャートである。圧力差算出処理100は、所定のサンプリング間隔で繰り返して実行される。圧力差算出処理100では、圧力センサ35が出力する圧力信号の所定時間における変化量DPfを算出する。ステップ101では、圧力センサ35の出力信号をサンプリングし、圧力Pf(i)を入力する。ステップ101は、フィルタ処理を備えることができる。このフィルタ処理では、検出対象である周期TMの近傍の周波数成分を通過させるフィルタ特性が用いられる。例えば、平均化処理を用いることができる。周期TMより高周波の成分を除去するフィルタ特性を用いることが望ましい。また、サンプリング周期は、周期TMの変化を反映するが、短周期TPの変化を反映しないように設定することができる。ステップ102では、前回のサンプリングにおける圧力Pf(i−1)と、今回の圧力Pf(i)との差を、変化量DPfとして算出する。
【0051】
図6は、第1実施形態に係る燃料供給装置のFPC47が実行するプログラムの一部を示すフローチャートである。回転数算出処理110では、圧力Pfの周期的な脈動成分を検出することによって周期を算出し、モータ43aの回転数Npを算出する。圧力差算出処理100と回転数算出処理110とは、回転数検出モジュール47bを提供する。
【0052】
ステップ111では、変化量DPfが所定値Kthを下回っているか否かを判定する。変化量DPfが大きいときは、ポンプ43を起動した直後などの過渡的な運転状態であると考えられる。そこで、変化量DPfが大きいときには、回転数Npの演算を行わない。従って、ステップ111は、ポンプ43の起動直後における回転数Npの検出処理を禁止する禁止手段を提供する。これにより誤った回転数Npを算出することが防止される。
【0053】
ステップ112では、変化量DPfが正(+)から負(−)へ反転したか否かを判定する。すなわち、圧力Pf(i)が上昇(+)から下降(−)に反転したか否かを判定する。言い換えると、ステップ112では、圧力Pf(i)のピークを検出する。ステップ112でピークが検出されると、ステップ113へ進む。ステップ113では、ピークが検出された時刻Timeを時刻T1として記録する。
【0054】
ピークが検出されない場合、ステップ114へ進む。ステップ114では、変化量DPfが負(−)から正(+)へ反転したか否かを判定する。すなわち、圧力Pf(i)が下降(−)から上昇(+)に反転したか否かを判定する。言い換えると、ステップ114では、圧力Pf(i)のボトムを検出する。ステップ114でボトムが検出されると、ステップ115へ進む。ステップ115では、ボトムが検出された時刻Timeを時刻T2として記録する。
【0055】
ステップ116では、ピークが検出された時刻T1とボトムが検出された時刻T2との差を時間DTとして算出する。ステップ117では、時間DTに基づいてモータ43aの回転数Npを算出する。時間DTを回転数Npに換算する関数fは、検出対象とした周期TMと、モータ43aの構造とに基づいて決定することができる。例えば、固定子43cの磁極数、回転子43dの磁極数、整流子43fの極数などの構造に基づいて設定することができる。ステップ117で算出された回転数Npは、FPC47の記憶装置に格納される。
【0056】
図7は、第1実施形態に係る燃料供給装置のFPC47が実行するプログラムの一部を示すフローチャートである。モータ制御処理120では、圧力Pfを目標圧力に維持するように、モータ43aに印加する電圧Vmを算出し、算出された電圧Vmをモータ43aに印加する。モータ制御処理120は、制御モジュール47cを提供する。
【0057】
ステップ121では、圧力センサ35によって検出された圧力Pfと、モータ43aの回転数Npとに基づいて電圧Vmが算出される。電圧Vmは、圧力Pfに基づいて算出されるフィードバック量FB(Pf)と、回転数Npに基づいて算出されるフィードフォワード量FF(Np)とに基づいて算出される。フィードバック量FB(Pf)は、PI制御、PID制御などのフィードバック制御によって算出される。フィードフォワード量FF(Np)は、フィードバック量FB(Pf)よりも高い応答性を提供するために、回転数Npに基づいて算出される。ステップ122では、算出された電圧Vmがモータ43aに印加される。
【0058】
図8は、第1実施形態に係る燃料供給装置のFPC47が実行するプログラムの一部を示すフローチャートである。ダイアグ処理130では、診断用の信号の出力を求めるダイアグ信号が入力されると、回転数Npを出力する。ダイアグ処理130は、ダイアグモジュール47eを提供する。
【0059】
ステップ131では、ダイアグ信号が入力されたか否かを判定する。ダイアグ信号が入力された場合にのみ、ステップ132に進む。ステップ132では、回転数算出処理110によって算出された回転数Npを出力する。回転数Npは、内燃機関システム1に付属する表示装置、または診断時に内燃機関システム1に接続される診断用機器に表示される。これにより、モータ43aが正常に機能しているか否かを診断することができる。
【0060】
以上に述べた実施形態によると、燃料供給装置に設けられた圧力センサによって検出された燃料の圧力Pfに基づいてポンプ43の回転数Npが検出される。このため、ポンプ43の回転数Npを、間接的に検出することができる。また、燃料の圧力をフィードバック制御するために設けられる圧力センサを利用してポンプ43の回転数Npが検出される。このため、圧力センサを有効に利用することができる。さらに、インジェクタ34に起因する脈動成分を低減しながら、ポンプ43に起因する脈動を圧力センサ35によって検出することができる。
【0061】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る燃料供給装置のインタンクモジュール242を示す側面図である。図10は、第2実施形態に係るポンプアセンブリ242dを示す部分断面図である。この実施形態では、圧力センサ235が、ポンプアセンブリ242dに装着されている。第2実施形態のインタンクモジュール242は、第1実施形態のインタンクモジュール42に代えてタンク41内に装着される。インタンクモジュール242は、ポンプアセンブリ242dの出口管と蓋41aの出口管41cとを接続する配管242eを備える。
【0062】
ポンプアセンブリ242dは、圧力センサ235を備える。圧力センサ235は、ハウジング244aに装着されている。圧力センサ235は、ハウジング244a内の燃料の通路に露出するように配置されている。圧力センサ235は、ハウジング244a内の燃料の圧力を検出する。この構成においても、圧力センサ235は、吐出管43mと出口管41cとの間の通路を形成する部材244aに設けられ、その通路内の燃料の圧力を検出する。
【0063】
具体的には、圧力センサ235は、カバー244gに固定されている。圧力センサ235は、上流ギャラリ44hに露出するように装着されている。圧力センサ235は、ポンプ43の吐出管43mの延長上に装着されている。圧力センサ235は、ポンプ43の吐出管43mの開口端と対向するように装着されている。
【0064】
圧力センサ235は、ポンプ43と圧力制御弁45との間の通路における燃料の圧力を検出する。具体的には、圧力センサ235は、ポンプ43とフィルタエレメント44fとの間の上流ギャラリ44hにおける燃料の圧力を検出する。さらに具体的には、圧力センサ235は、ポンプ43の吐出管43mから出た直後の燃料の圧力を検出する。
【0065】
この実施形態によると、ポンプ43に起因する脈動成分の減衰量が少ない位置に圧力センサ235を設けることができる。
【0066】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0067】
上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0068】
例えば、モータ43aは、ブラシレスレモータによって提供されてもよい。ポンプユニット43bは、トロコイド型ギヤポンプなどの容積型ポンプによって提供されてもよい。
【0069】
上記実施形態では、モータ43aの構成に起因する脈動成分を検出することによってポンプ43の回転数Npを検出した。これに代えて、ポンプユニット43bの構成に起因する脈動成分を検出することによってポンプ43の回転数を検出してもよい。また、モータ43aの構成に起因する脈動成分とポンプユニット43bに起因する脈動成分との合成成分を検出することによってポンプ43の回転数を検出してもよい。これらの変形態様は、回転数検出モジュール47bによって検出される周波数領域、振幅領域などを調節することによって設定することができる。
【0070】
FPC47が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、FPC47をアナログ回路によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 内燃機関システム
2 内燃機関
3 エンジン制御システム
4 燃料供給装置
31 エンジン制御装置(ECU)
32 アクチュエータ群
33 センサ群
34 インジェクタ
35、235 圧力センサ
41 タンク
42 インタンクモジュール
43 ポンプ
44 フィルタ
45 圧力制御弁
46a 配管
46b 燃料レール
47 燃料ポンプ制御器(FPC)
47a 記憶媒体
47b 回転数検出モジュール
47c 制御モジュール
47d フィードフォワード制御モジュール
47e ダイアグモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の燃料を燃料消費装置(2)に供給する燃料供給装置(4)において、
電動モータ(43a)を備えるポンプ(43)と、
前記ポンプから前記燃料消費装置に供給される燃料の圧力に含まれる前記ポンプに起因する脈動成分を検出する圧力センサ(35、235)とを備え、
前記ポンプと前記圧力センサとは、前記タンク内に収容されていることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記ポンプと前記圧力センサとは、前記タンクの開口部に設けられた蓋(41a)に支持されたインタンクモジュール(42)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記圧力センサは、前記ポンプの吐出管(43m)と前記蓋(41a)に設けられた出口管(41c)との間に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
さらに、前記ポンプと前記燃料消費装置との間に設けられ、燃料の圧力を設定圧力に調節する圧力制御弁(45)を備えるとともに、
前記圧力制御弁は前記タンク内に収容されており、
前記圧力センサは、前記ポンプと前記圧力制御弁との間の燃料の圧力を検出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の燃料供給装置。
【請求項5】
さらに、前記ポンプと前記燃料消費装置との間に設けられ、前記ポンプから前記燃料消費装置に供給される燃料を濾過するフィルタ(44)を備えるとともに、
前記フィルタは前記タンク内に収容されており、
前記圧力センサは、前記ポンプと前記フィルタとの間の燃料の圧力を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の燃料供給装置。
【請求項6】
前記圧力センサは、前記フィルタのハウジング(44a、244a)に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−174444(P2011−174444A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40703(P2010−40703)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】