説明

燃料分離装置

【課題】 燃料から沸点及びオクタン価(着火性)の異なる成分を分離する。
【解決手段】 燃料配管2内に円筒状に形成した分離膜6を設けて、その内側を絞り通路4とすると共に、分離膜6の内周面をスーパーキャビテーション(S/C)発生部5とする。また分離膜6の外周側(透過側;低オクタン価燃料を分離)から外部へ延びる燃料取出通路7には、吸引ポンプ9が設けられている。更に吸引ポンプ9の上流側の燃料取出通路7からは分岐通路11が分岐している。制御手段(ECU)は、流量調節装置3により燃料配管2内の燃料流量を調節することでS/Cの発生を制御し、S/C発生時には吸引ポンプ9を作動させて燃料取出通路7により低沸点燃料を回収し、S/C非発生時には吸引ポンプ9を停止して分岐通路11により高沸点燃料を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料から性状の異なる成分を分離する方法として、燃料の蒸留特性を用いた方法が知られている。しかし、この蒸留特性を用いた燃料分離方法では、燃料を蒸発させる必要があり、この蒸発の際に多くのエネルギーを消費するので、この燃料分離方法を、エンジンを駆動源にした車両に適用することは困難である。
【0003】
そこで特許文献1記載の脱気装置では、キャビテーションの一形態であるスーパーキャビテーション(液体流路内にて液体の飽和蒸気圧に近い極低圧の停留空洞が発生する現象)を用い、燃料配管の内周面にてスーパーキャビテーションにより形成された空洞内に液体燃料中の気体を析出させ、この析出した気体を真空ポンプにより連続的に脱気(分離)している。
【0004】
一方、特許文献2記載の給油装置では、オクタン価(RON)の低い燃料と高い燃料とに分離可能な分離手段と、この分離手段にて分離されたオクタン価の低い燃料からオクタン価の高い燃料へ燃料改質する改質手段とを備えることで、供給燃料に比べオクタン価の高い燃料を得ている。
【特許文献1】特開2007−021500号公報
【特許文献2】特開2006−070148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばディーゼルエンジンの場合、低温始動時には、沸点が低く、かつ、オクタン価の低い燃料を使用すると、燃料の着火性が向上するので、不完全燃焼によるすすの発生などを抑制することが可能である。この場合において、特許文献1に記載の技術を用いて供給燃料から沸点の低い燃料を分離し、さらに、特許文献2に記載の技術を用いて、沸点の低い燃料からオクタン価の低い燃料を分離することにより、供給燃料に比べ沸点が低く、かつ、オクタン価の低い燃料を分離するという方法も考えられる。しかしながら、この方法にて供給燃料から沸点及びオクタン価の異なる燃料を分離しようとした場合、燃料分離装置が大きくなるので、この装置を車両に搭載するときにレイアウト上の問題が生じる。
【0006】
本願発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、供給燃料から沸点及びオクタン価(着火性)の異なる燃料を分離する、コンパクトな燃料分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明では、燃料配管に設けられ、スーパーキャビテーションを発生可能なスーパーキャビテーション発生部と、スーパーキャビテーション発生部に設けられ、スーパーキャビテーション発生部の燃料を分子構造に応じて透過もしくは非透過することで燃料を分離する分離膜と、分離膜を透過する燃料を取り出す燃料取出通路と、燃料取出通路に設けられ、透過燃料を吸引する負圧吸引手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料配管のスーパーキャビテーション発生部にて、供給燃料から沸点の低い燃料を分離し、キャビテーション発生部に設けられた分離膜にて、沸点の低い燃料からオクタン価(着火性)の異なる燃料を分離することにより、分離膜の透過側から、供給燃料に比べ沸点が低く、かつ、オクタン価の異なる燃料を取り出すことができる。また、燃料配管内に分離膜が設けられているので、分離膜を燃料配管外に設ける場合に比べ、コンパクトな燃料分離装置にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態における燃料分離装置の構成図である。
エンジンを駆動源にする車両に備えられた燃料タンク1には、外部から供給された燃料(供給燃料)が貯留されている。ここで、供給燃料の具体例として、ガソリン、エタノール混合ガソリン、軽油、合成軽油(GTL;Gas To Liquid)、バイオディーゼル燃料混合軽油などが考えられる。
【0010】
燃料タンク1には燃料配管2の両端が接続しており、この燃料配管2を介して、供給燃料が循環可能になっている。
燃料配管2には、この配管内の燃料流量を調節する流量調節装置(流量調節手段)3が備えられている。この流量調節装置3は、循環ポンプ(図示せず)と流量制御弁(図示せず)とにより構成され、この流量制御弁の開度を制御することにより、燃料配管2内の燃料流量を調節する。ここで流量調節装置3は上述の他、循環ポンプのみにて構成し、この循環ポンプの回転数を制御することにより、燃料配管2内の燃料流量を調節してもよい。また流量調節装置3は、燃料配管2の内周面近傍にて供給燃料が乱流になるように燃料流量を調節している。
【0011】
また燃料配管2には、その一部に断面積を急激に縮小させた一定の長さの絞り通路4が設けられている。燃料配管2を流れる供給燃料は、この絞り通路4にて流速(動圧)が急激に上昇するので、これに伴い、絞り通路4を流れる供給燃料の圧力(静圧)が急激に低下する。このため、絞り通路4を流れる供給燃料の圧力(静圧)が供給燃料に含まれる蒸気圧の高い燃料(低沸点燃料)の飽和蒸気圧を下回ると、この低沸点燃料が気化し始め、絞り通路4の上流側端部4a(剥離点)より下流側の絞り通路4の内周面に、低沸点燃料を含む停留空洞が形成される。この停留空洞を発生させる現象がスーパーキャビテーションであり、このスーパーキャビテーションを発生可能な絞り通路4の内周面が、スーパーキャビテーション発生部5になる。
【0012】
絞り通路4の内周面(スーパーキャビテーション発生部5)は、燃料の分子構造に応じて透過・非透過することで燃料を分離する分離膜6で構成されている。即ち、燃料配管2内に円筒状に形成した分離膜6を設けて、その内側を絞り通路4とし、また分離膜6の内周面をスーパーキャビテーション発生部5とする。そして、分離膜6の外周側は、分離膜6を介して燃料配管2内の燃料流路と隔てられた燃料取出空間とし、この燃料取出空間を燃料配管2外壁に設けた開口により開口させて、外部への燃料取出通路7としてある。
【0013】
分離膜6は、本実施形態において、燃料のうち、直鎖系炭化水素燃料(ノルマルパラフィン系炭化水素燃料)を透過し、直鎖系炭化水素以外の炭化水素燃料(環状炭化水素燃料、オレフィン系炭化水素燃料、側鎖系炭化水素燃料など)を非透過とする特性を有するものであり、具体的には、ゼオライト膜などを用いている。この特性により、本実施形態においては、分離膜6の透過側(外周側)にて、燃料取出通路7を介して、供給燃料に比べオクタン価の低い(着火性の高い)燃料を取り出すことが可能である。ここで、燃料取出通路7にて取り出される燃料は、スーパーキャビテーションの発生時は、蒸気圧の高い燃料(低沸点燃料)であり、スーパーキャビテーションの非発生時は、蒸気圧の低い燃料(高沸点燃料)である。
【0014】
燃料取出通路7には、圧力センサ(スーパーキャビテーション発生検知手段)8が備えられており、この圧力センサ8の出力信号に基づいて、絞り通路4の内周面(スーパーキャビテーション発生部5)にてスーパーキャビテーションが発生しているか否かの判定をすることが可能である。即ち、スーパーキャビテーションの発生時は、燃料取出通路7が主に気体で満たされている一方、スーパーキャビテーションの非発生時は、燃料取出通路7が主に液体で満たされているので、これら気体と液体との圧力差に基づいて、スーパーキャビテーションの発生の有無が判定可能になる。
【0015】
燃料取出通路7は、燃料を吸引する吸引ポンプ(負圧吸引手段)9を介して、第1の透過側燃料タンク10に接続している。また、吸引ポンプ9より上流側の燃料取出通路7から分岐する分岐通路11が備えられており、この分岐通路11は、逆止弁12を介して第2の透過側燃料タンク13に接続する。
【0016】
上述した流量調節装置3及び吸引ポンプ9は、制御手段であるエンジンコントロールユニット(ECU;図示せず)により作動制御される。またECUには、上述の圧力センサ8からの信号の他、エンジン回転数やエンジントルクなどエンジンの運転状態に関する信号が入力される。
【0017】
次に、本実施形態における燃料の分離方法について、図2に基づいて説明する。
図2は、本実施形態における燃料分離制御のフローチャートである。
ECUは、ステップS101にて、供給燃料から分離する燃料(要求燃料)が低沸点燃料であるか否かの判定を行う。ここで、要求燃料の判定は、第1の透過側燃料タンク10及び第2の透過側燃料タンク13の燃料残量に応じて行う他、エンジンの運転状態に応じて行うことも可能である。
【0018】
ステップS101にて要求燃料が低沸点燃料であると判定された場合は、ステップS102に進み、流量調節装置3を用いて、スーパーキャビテーション(S/C)発生時の燃料流量制御を行う。尚、このときの燃料流量は、後述するスーパーキャビテーション(S/C)非発生時の燃料流量に比べ、多くなるように設定される。
【0019】
この後、ステップS103に進み、圧力センサ8からの出力信号に基づき、スーパーキャビテーション(S/C)が発生しているか否かの判定を行う。スーパーキャビテーション(S/C)が発生していなければ、ステップS103に戻り、再度判定を行う。スーパーキャビテーション(S/C)が発生していれば、ステップS104に進む。
【0020】
ステップS104では、スーパーキャビテーション(S/C)が発生してから、予め設定された所定時間を経過しているか否かの判定を行う。ここで所定時間とは、スーパーキャビテーション(S/C)が発生した後、燃料取出通路7に残留した高沸点燃料がスーパーキャビテーション(S/C)発生部5にて生じた負圧により燃料配管2側へ吸い出されるまでの時間である。所定時間が経過していなければ、ステップS104に戻り、再度判定を行う。所定時間が経過していれば、ステップS105に進む。
【0021】
ステップS105では、吸引ポンプ9を作動させる。これにより、燃料取出通路7を介して第1の透過側燃料タンク10に低沸点・低オクタン価燃料が回収される。
また、ステップS101にて要求燃料が低沸点燃料ではないと判定された場合(即ち、要求燃料が高沸点燃料であると判定された場合)は、ステップS112に進み、流量調節装置3を用いて、スーパーキャビテーション(S/C)非発生時の燃料流量制御を行う。尚、このときの燃料流量は、上述したスーパーキャビテーション(S/C)発生時の燃料流量に比べ、少なくなるように設定される。これにより、燃料配管2内にスーパーキャビテーション(S/C)は発生しない。
【0022】
この後、ステップS113に進み、吸引ポンプ9を停止する。このとき、絞り通路4の内周面(スーパーキャビテーション発生部5)の燃料圧力は、燃料取出通路7の燃料圧力に比べて高いので、これら燃料圧力の差により供給燃料が分離膜6にて分離され、燃料取出通路7から分岐通路11を介して第2の透過側燃料タンク13に高沸点・低オクタン価燃料が回収される。
【0023】
このようにして、2つの燃料タンク(第1の透過側燃料タンク10、第2の透過側燃料タンク13)にはそれぞれ異なる沸点の燃料が回収される。これら燃料と、燃料タンク1に貯留されている燃料とは、エンジンの運転状態に応じて選択され、図示しない燃料供給手段を介してエンジンに供給される。
【0024】
尚、本実施形態においては、分離膜6の透過側燃料を多く取り出すほど、燃料配管2を流れる燃料(及び燃料タンク1に貯留される燃料)のオクタン価が高くなる。これは、分離膜6の透過側燃料のオクタン価が、燃料配管2を流れる燃料のオクタン価に比べて低いので、分離膜6の透過側燃料を多く取り出すほど、燃料配管2を流れる燃料に含まれる低オクタン価燃料の比率が低下し、相対的に高オクタン価燃料の比率が増加するからである。
【0025】
本実施形態によれば、燃料配管2に設けられ、スーパーキャビテーションを発生可能なスーパーキャビテーション発生部5と、スーパーキャビテーション発生部5に設けられ、スーパーキャビテーション発生部5の燃料を分子構造に応じて透過もしくは非透過することで燃料を分離する分離膜6と、分離膜を透過する燃料を取り出す燃料取出通路7と、燃料取出通路7に設けられ、透過燃料を吸引する負圧吸引手段(吸引ポンプ9)とを備えるので、コンパクトな装置にて、供給燃料から低沸点・低オクタン価燃料を取り出すことができる。また、スーパーキャビテーション発生部5に分離膜6が設けられていることにより、分離膜6のスーパーキャビテーション発生部5に対応する側の表面に燃料の乱流域が形成されるので、分離膜6にて効率よく燃料分離を行うことができる。
【0026】
また本実施形態によれば、スーパーキャビテーション発生部5でのスーパーキャビテーションの発生を制御する制御手段(ECU)と、負圧吸引手段(吸引ポンプ9)より上流側の燃料取出通路7から分岐する分岐通路11とを備え、制御手段(ECU)は、スーパーキャビテーション発生時には負圧吸引手段(吸引ポンプ9)を作動させて燃料取出通路7により低沸点燃料を回収し、スーパーキャビテーション非発生時には負圧吸引手段(吸引ポンプ9)を停止して分岐通路11により高沸点燃料を回収するを備えているので、分離膜6の透過側に吸引ポンプ9を複数備えることなく、供給燃料から高沸点・低オクタン価燃料と低沸点・低オクタン価燃料とを分離することができると共に、燃料タンク1に貯留された燃料のオクタン価を向上させることができる。また、これら3種類の燃料(供給燃料,高沸点・低オクタン価燃料,低沸点・低オクタン価燃料)を使い分けることにより、圧縮着火燃焼や火炎伝播燃焼など、あらゆる燃焼形態に応じた燃料をエンジンに供給することが可能になるので、エンジンの低燃費かつ低エミッションを実現することができる。更に、エンジンでの燃焼形態が圧縮着火燃焼や火花点火燃焼である場合、エンジンの燃焼室温度が十分に高いときは高沸点燃料を用い、エンジンの低温始動時は低沸点燃料を用いるというように燃焼室の温度に応じてエンジンに供給する燃料を使い分けたり、燃焼室中心部では高沸点燃料を用い、燃焼室壁面近傍の低温域では低沸点燃料を用いるというように燃焼室内の位置に応じて燃料を使い分けたりすることが可能であるので、燃焼室内にて良好な燃焼を実現することができ、すすの発生などを抑制することができる。
【0027】
また本実施形態によれば、スーパーキャビテーションの発生を検知するスーパーキャビテーション発生検知手段(圧力センサ8)を備え、制御手段(ECU)は、スーパーキャビテーション発生検知手段(圧力センサ8)にてスーパーキャビテーションの発生を検知してから所定時間を経過した後に、吸引ポンプ9を作動させるので、スーパーキャビテーションが発生した後、所定時間が経過するまでの間に、スーパーキャビテーション発生部5にて生じた負圧により、燃料取出通路7に残留した高沸点燃料が燃料配管2側へ吸い出されるため、スーパーキャビテーション発生部5から取り出される低沸点燃料に、高沸点燃料が混入するのを抑制することができる。
【0028】
また本実施形態によれば、燃料配管2内の燃料流量を調節する流量調節手段(流量調節装置3)を備え、制御手段(ECU)は、流量調節手段(流量調節装置3)の作動を制御することにより、スーパーキャビテーション発生部5でのスーパーキャビテーションの発生を制御するので、燃料流量を多くすることによりスーパーキャビテーションを発生させて低沸点燃料を分離し、燃料流量を少なくすることによりスーパーキャビテーションを発生させずに高沸点燃料を分離することができる。
【0029】
また本実施形態によれば、スーパーキャビテーション発生部5は、燃料配管2の一部に燃料配管2より小断面積に形成された絞り通路4の内側であるので、簡易な構成にて安定したスーパーキャビテーションを発生させることができる。
【0030】
尚、本実施形態では、分離膜6の透過側に燃料タンクを複数備え、分離膜6を透過側した燃料は、これら燃料タンクを介してエンジンに供給されているが、この他、透過燃料は、これら燃料タンクを介さずに直接エンジンに供給されるようにしてもよい。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について、図3及び図4に基づいて説明する。
尚、本実施形態において用いられる燃料分離装置の構成は、上述した第1の実施形態と同様であるが、本実施形態では、ECUは、要求燃料のオクタン価(着火性)に応じ、流量調節装置3を介して、燃料配管2内の燃料流量を調節することが可能である。
【0032】
図3及び図4は、本実施形態における燃料配管内の燃料流量と、供給燃料のオクタン価及び分離膜透過燃料のオクタン価との関係を示す図である。ここで、図3は、供給燃料としてガソリンを用いた場合の一例であり、図4は、供給燃料として軽油を用いた場合の一例である。また、図中の実線は供給燃料を示し、一点鎖線はスーパーキャビテーション(S/C)非発生時の透過燃料を示し、二点鎖線はスーパーキャビテーション(S/C)発生時の透過燃料を示す。
【0033】
図3及び図4において、燃料配管2内にてスーパーキャビテーション(S/C)が発生していない場合(即ち、燃料配管2内の燃料流量が低流量域である場合)、燃料流量の変化に対して、透過燃料(一点鎖線)のオクタン価は一定である。
【0034】
これに対し、燃料配管2内にてスーパーキャビテーション(S/C)が発生している場合(即ち、燃料配管2内の燃料流量が中・高流量域である場合)、燃料流量が多くなるほど、透過燃料(二点鎖線)のオクタン価は低くなる。この理由を以下に説明する。
【0035】
燃料流量が多くなるほど、燃料圧力(静圧)が低くなるため、スーパーキャビテーションにより形成された停留空洞内の負圧が強化される。これに伴い、停留空洞内に析出する燃料中に、飽和蒸気圧の低い(沸点の高い)燃料が多く含まれるようになる。ここで、停留空洞内に析出した燃料のうち分離膜6を透過する燃料は、上述の通り、直鎖系炭化水素燃料(ノルマルパラフィン系炭化水素燃料)であり、この燃料は一般的に、その炭素数が大きくなるほど、沸点が高くなり、オクタン価が低くなる特性を有する。このため、停留空洞内に析出する燃料中に、沸点の高い燃料が多く含まれるほど、透過燃料には炭素数の大きな直鎖系炭化水素燃料が含まれることになり、透過燃料のオクタン価は低下する。従って、燃料流量が多くなるほど、スーパーキャビテーションの停留空洞内の負圧が強化され、この停留空洞内に析出される燃料中に、沸点の高い燃料が多く含まれるようになり、透過燃料には炭素数の大きな直鎖系炭化水素燃料が含まれるようになるので、透過燃料のオクタン価は低くなる。具体的には、供給燃料にガソリンを用いた場合(図3参照)、燃料流量が多くなるほど、透過燃料は、炭素数4(n−ブタン)のみのものから、炭素数4(n−ブタン),炭素数5(n−ペンタン),炭素数6(n−ヘキサン)及び炭素数7(n−ヘプタン)を含むものへ連続的にシフトしていくので、透過燃料のオクタン価は低くなる。また、供給燃料に軽油を用いた場合(図4参照)、燃料流量が多くなるほど、透過燃料は、炭素数10(n−デカン)のみのものから、炭素数10(n−デカン),炭素数15(n−ペンタデカン),炭素数16(n−ヘキサデカン)及び炭素数20(n−エイコサン)を含むものへ連続的にシフトしていくので、透過燃料のオクタン価は低くなる。
【0036】
尚、本実施形態において、スーパーキャビテーション発生時の透過燃料を貯留する燃料タンク(第1の透過側燃料タンク10)は単数に限らず、所望のオクタン価(着火性)に応じて複数備えてもよい。また、透過燃料を直接エンジンに供給するようにしてもよい。
【0037】
特に本実施形態によれば、分離膜6は、燃料配管2の燃料流量が多くなるほど、透過燃料の着火性が高くなる(オクタン価が低くなる)特性を有し、制御手段(ECU)は、透過燃料の着火性を高くする(オクタン価を低くする)場合には流量調節手段(流量調節装置3)を用いて燃料流量を増加させ、透過燃料の着火性を低くする(オクタン価を高くする)場合には流量調節手段(流量調節装置3)を用いて燃料流量を減少させる制御を行うので、あらゆる燃焼形態に応じた燃料をエンジンに供給することが可能になり、エンジンの低燃費かつ低エミッションを実現することができる。
【0038】
また本実施形態によれば、燃料配管2を流れる燃料(ガソリン、軽油など)は少なくとも直鎖系炭化水素(ノルマルパラフィン系炭化水素)を含む燃料であって、分離膜6は直鎖系炭化水素(ノルマルパラフィン系炭化水素)を透過させ、直鎖系炭化水素以外の炭化水素(環状炭化水素、オレフィン系炭化水素、側鎖系炭化水素など)は非透過とさせる特性を有するので、一般に流通している燃料を用いて、簡易にオクタン価(着火性)の異なる燃料を分離することができる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施形態について、図5及び図6に基づいて説明する。
図5は第3の実施形態における燃料分離装置の構成図である。
図1にて示した第1の実施形態との相違点について説明する。
【0040】
エンジンを駆動源にする車両には、燃料タンク1とは独立して、供給燃料を貯留する燃料タンク21が備えられている。ここにおいて、燃料タンク1に貯留されている燃料の飽和蒸気圧は、燃料タンク21に貯留されている燃料の飽和蒸気圧に比べて高く(即ち、燃料タンク1に貯留されている燃料の沸点は、燃料タンク21に貯留されている燃料の沸点に比べて低く)なっており、本実施形態では、燃料タンク1にはガソリンが貯留され、燃料タンク21には軽油が貯留されている。また本実施形態では、燃料タンク1に貯留されている燃料(ガソリン)と、燃料タンク21に貯留されている燃料(軽油)とは、エンジンの運転状態に応じて選択され、図示しない燃料供給手段を介してエンジンに供給される。
【0041】
燃料タンク21には、燃料配管2とは独立した燃料配管22の両端が接続しており、この燃料配管22を介して、供給燃料が循環可能になっている。
燃料配管22には、この配管内の燃料流量を調節する流量調節装置(流量調節手段)23が備えられている。この流量調節装置23は、循環ポンプ(図示せず)と流量制御弁(図示せず)とにより構成され、この流量制御弁の開度を制御することにより、燃料配管22内の燃料流量を調節する。ここで流量調節装置23は上述の他、循環ポンプのみにて構成し、この循環ポンプの回転数を制御することにより、燃料配管22内の燃料流量を調節してもよい。また流量調節装置23は、燃料配管22の内周面近傍にて供給燃料が乱流になるように燃料流量を調節している。
【0042】
また燃料配管22には、その一部に断面積を急激に縮小させた一定の長さの絞り通路24が設けられており、この絞り通路24の内周面には、スーパーキャビテーションを発生可能なスーパーキャビテーション発生部25(負圧吸引手段)が設けられている。
【0043】
絞り通路24の中間部内周面(スーパーキャビテーション発生部25の中間部)には、分離膜6の透過側(外周側)から外部に延びた燃料取出通路7が接続・開口している。
燃料取出通路7において、分離膜6の透過側端と、スーパーキャビテーション発生部25側端とには、それぞれ圧力センサ(図示せず)が備えられており、これら圧力センサの出力信号に基づいて、分離膜6の透過側での燃料圧力P1と、スーパーキャビテーション25での燃料圧力P2とを測定することが可能である。
【0044】
流量調節装置3及び流量調節装置23は、制御手段であるエンジンコントロールユニット(ECU;図示せず)により作動制御される。またECUには、燃料取出通路7に設けられた2つの圧力センサからの信号の他、エンジン回転数やエンジントルクなどエンジンの運転状態に関する信号が入力される。
【0045】
次に、本実施形態における燃料の分離方法について、図6に基づいて説明する。
図6は、本実施形態における燃料分離制御のフローチャートである。
ECUは、ステップS201にて、燃料配管2内の燃料(ガソリン)から取り出す透過燃料(要求燃料)は低沸点燃料であるか、もしくは高沸点燃料であるかの判定を行う。この判定は、エンジンの運転状態に応じて行われ、例えば、低温始動時に揮発性の高い軽油が必要な場合は、透過燃料として低沸点燃料が要求され、高負荷・高回転時にオクタン価の高いガソリンが必要な場合は、透過燃料として高沸点燃料が要求される。
【0046】
ステップS201にて要求燃料が低沸点燃料であると判定された場合は、ステップS202に進み、流量調節装置3及び流量調節装置23を用いて、スーパーキャビテーション発生部5及びスーパーキャビテーション発生部25にてスーパーキャビテーション(S/C)を発生させるように燃料流量制御を行う。このとき、燃料配管2内の燃料(ガソリン)は燃料配管22内の燃料(軽油)に比べて飽和蒸気圧が高い(沸点が低い)ので、スーパーキャビテーション発生部5の燃料圧力は、スーパーキャビテーション発生部25の燃料圧力に比べて高くなる。このため、分離膜6の透過側での燃料圧力P1と、スーパーキャビテーション発生部25での燃料圧力P2との関係はP1>P2になるので、燃料配管2内の燃料(ガソリン)のうち、分離膜6を透過した低沸点・低オクタン価燃料が、スーパーキャビテーション発生部25により吸引されて、燃料配管22内の燃料(軽油)に混入される。これにより、燃料配管22内の燃料(軽油)の揮発性が向上する。
【0047】
尚、ステップS202において、燃料配管2内の燃料(ガソリン)から低沸点・低オクタン価燃料を取り出すほど、燃料配管2内の燃料(ガソリン)及び燃料配管22内の燃料(軽油)の組成が変わり、分離膜6の透過側での燃料圧力P1と、スーパーキャビテーション発生部25での燃料圧力P2との圧力差は小さくなる。この圧力差が減少し続け、分離膜6の透過側での燃料圧力P1と、スーパーキャビテーション発生部25での燃料圧力P2との関係がP1≦P2になった場合は、ステップS202にて、流量調節装置3を用いて、燃料配管2内の燃料流量を減少させる制御を行う。これにより、スーパーキャビテーション発生部5でのスーパーキャビテーションの発生が停止し、スーパーキャビテーション発生部5での燃料(ガソリン)の状態が液相になるので、分離膜6の透過側での燃料圧力P1が短期間に上昇する。この圧力上昇により、分離膜6の透過側での燃料圧力P1と、スーパーキャビテーション発生部25での燃料圧力P2との関係が短期間にP1>P2になるので、燃料配管22を流れる燃料(軽油)が、燃料取出通路7を介して、燃料配管2に流れるのを防止することができる。
【0048】
また、ステップS201にて要求燃料が高沸点燃料であると判定された場合は、ステップS212に進み、流量調節装置3及び燃料調節装置23を用いて、スーパーキャビテーション発生部5にてスーパーキャビテーション(S/C)を発生させず、かつ、分離膜6の透過側での燃料圧力P1と、スーパーキャビテーション発生部25での燃料圧力P2との関係がP1>P2になるように燃料流量制御を行う。これにより、燃料配管2内の燃料(ガソリン)のうち、分離膜6を透過した高沸点・低オクタン価燃料が、スーパーキャビテーション発生部25により吸引されるので、燃料配管2内の燃料(ガソリン)のオクタン価が向上する。尚、ステップS202において、P1>P2になるように燃料流量制御を行うのは、燃料配管22を流れる燃料(軽油)が、燃料取出通路7を介して、燃料配管2に流れるのを防止するためである。
【0049】
このようにして、スーパーキャビテーション発生部5及びスーパーキャビテーション発生部25にてスーパーキャビテーションが発生しているときは、ガソリンから取り出した低沸点・低オクタン価燃料を軽油に供給することにより、軽油の揮発性が向上するので、この揮発性が向上した軽油をエンジンの低温始動時に使用すると、着火性が向上し、不完全燃焼によるすすの発生を抑制することができる。また、スーパーキャビテーション発生部5にてスーパーキャビテーションが発生していないときは、ガソリンから高沸点・低オクタン価燃料を取り除くことにより、ガソリンのオクタン価が向上するので、このオクタン価が向上したガソリンをエンジンの高負荷・高回転時に使用することにより、エンジンの低燃費かつ低エミッションを実現することができる。
【0050】
また、本実施形態において、上述した第2の実施形態と同様に、ECUが、要求される透過燃料のオクタン価(着火性)に応じ、流量調節装置3を介して、燃料配管2内の燃料流量を調節することもできる。この場合、燃料配管2内の燃料流量(ガソリンの流量)が多くなるほど、透過燃料には炭素数の大きな直鎖系炭化水素燃料が含まれるようになるので、透過燃料のオクタン価は低くなる。具体的には、燃料配管2内の燃料流量(ガソリンの流量)が多くなるほど、透過燃料は、炭素数4(n−ブタン)のみのものから、炭素数4(n−ブタン),炭素数5(n−ペンタン),炭素数6(n−ヘキサン)及び炭素数7(n−ヘプタン)を含むものへ連続的にシフトしていくので、透過燃料のオクタン価は低くなる(図3参照)。
【0051】
特に本実施形態によれば、負圧吸引手段は、燃料配管2を一方として、これとは独立した他方の燃料配管22に設けられたスーパーキャビテーション発生部25であり、一方の燃料配管2を流れる燃料の飽和蒸気圧は、他方の燃料配管22を流れる燃料の飽和蒸気圧に比べて高いので、燃料取出通路7に吸引ポンプを備えることなく、分離膜6の透過燃料を他方の燃料配管22に供給することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、一方の燃料配管2を流れる燃料はガソリンであり、他方の燃料配管22を流れる燃料は軽油であるので、ガソリンに含まれる低沸点・低オクタン価燃料を取り出して軽油に供給することができる。このため、コンパクトな装置にてガソリンのオクタン価をさらに高く(着火性をさらに低く)することができると共に、軽油の揮発性を向上させることができる。
【0053】
また本実施形態によれば、一方の燃料配管2と他方の燃料配管22とは、各燃料配管ごとに、各々の燃料流量を調節する流量調節手段(流量調節装置3,23)を備え、制御手段(ECU)は、流量調節手段(流量調節装置3,23)の作動を制御することにより、一方の燃料配管2のスーパーキャビテーション発生部5でのスーパーキャビテーションの発生と、他方の燃料配管22のスーパーキャビテーション発生部25でのスーパーキャビテーションの発生とを制御するので、スーパーキャビテーション発生部5及びスーパーキャビテーション発生部25にてスーパーキャビテーションを発生させることにより、沸点の低い透過燃料を他方の燃料配管22に供給することができ、スーパーキャビテーション発生部5にてスーパーキャビテーションを発生させないことにより、沸点の高い透過燃料を他方の燃料配管22に供給することができる。
【0054】
また本実施形態によれば、制御手段(ECU)は、一方の燃料配管2のスーパーキャビテーション発生部5での燃料圧力が、他方の燃料配管22のスーパーキャビテーション発生部25での燃料圧力に比べて小さい場合、一方の燃料配管2の流量調節手段(流量調節装置3)を用いて一方の燃料配管2の燃料流量を減少させる制御を行うので、他方の燃料配管22側から一方の燃料配管2へ燃料が流れるのを防止することができる。
【0055】
また本実施形態によれば、分離膜6は、一方の燃料配管2の燃料流量が多くなるほど、透過燃料の着火性が高くなる(オクタン価が低くなる)特性を有し、制御手段(ECU)は、透過燃料の着火性を高くする(オクタン価を低くする)場合には一方の燃料配管2の流量調節手段(流量調節装置3)を用いて一方の燃料配管2の燃料流量を増加させ、透過燃料の着火性を低くする(オクタン価を高くする)場合には一方の燃料配管2の流量調節手段(流量調節装置3)を用いて一方の燃料配管2の燃料流量を減少させる制御を行うので、他方の燃料配管22内を流れる燃料にて要求されるオクタン価(着火性)に応じて、連続的に透過燃料のオクタン価(着火性)を変更することができる。
【0056】
また本実施形態によれば、一方の燃料配管2を流れる燃料(ガソリン)は少なくとも直鎖系炭化水素(ノルマルパラフィン系炭化水素)を含む燃料であって、分離膜6は直鎖系炭化水素(ノルマルパラフィン系炭化水素)を透過させ、直鎖系炭化水素以外の炭化水素(環状炭化水素、オレフィン系炭化水素、側鎖系炭化水素など)は非透過とさせる特性を有するので、一般に流通している燃料を用いて、簡易にオクタン価(着火性)の異なる燃料を分離することができる。
【0057】
次に、本発明の第4の実施形態について、図7及び図8に基づいて説明する。
図7は、絞り通路が複数設けられた燃料配管の詳細図であり、図8は、図7のA−A断面図である。
【0058】
図1にて示した第1の実施形態及び図5にて示した第3の実施形態との相違点について説明する。
燃料配管2の途中には、複数の連通口を有した仕切板41a,41bと、これら仕切板41a,41bに挟まれた空間に平行に並び、一方の開口端が仕切板41aの連通口と連通し、他方の開口端が仕切板41bの連通口と連通した複数の中空管状の分離膜61とにより、複数の絞り通路4が形成されている。また、絞り通路4の内側(中空管状の分離膜61の内側)にはそれぞれ、スーパーキャビテーション発生部5(図示せず)が設けられている。また、中空管状の分離膜61の透過側には、燃料を取り出すための燃料取出通路7が接続している。尚、本実施形態において、燃料取出通路7は、燃料配管2の内周面と仕切板41a,41bと中空管状の分離膜61の外周面とに囲まれた空間71と、燃料配管2に設けられた燃料取出孔72とを含んで構成される。
【0059】
特に本実施形態によれば、絞り通路4は複数並列に設けられているので、絞り通路4が単数である場合に比べてスーパーキャビテーション発生部5の表面積が大きくなり、高効率にて、実用的に低沸点燃料を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1の実施形態における燃料分離装置の構成図
【図2】第1の実施形態における燃料分離制御のフローチャート
【図3】第2の実施形態における燃料配管内の燃料流量と、供給燃料(ガソリン)のオクタン価及び分離膜透過燃料のオクタン価との関係を示す図
【図4】第2の実施形態における燃料配管内の燃料流量と、供給燃料(軽油)のオクタン価及び分離膜透過燃料のオクタン価との関係を示す図
【図5】第3の実施形態における燃料分離装置の構成図
【図6】第3の実施形態における燃料分離制御のフローチャート
【図7】第4の実施形態における絞り通路が複数設けられた燃料配管の詳細図
【図8】図7のA−A断面図
【符号の説明】
【0061】
1 燃料タンク
2 燃料配管
3 流量調節装置(流量調節手段)
4 絞り通路
5 スーパーキャビテーション発生部
6 分離膜
7 燃料取出通路
8 圧力センサ(スーパーキャビテーション発生検知手段)
9 吸引ポンプ(負圧吸引手段)
10 第1の透過側燃料タンク
11 分岐通路
12 逆止弁
13 第2の透過側燃料タンク
21 燃料タンク
22 燃料配管
23 流量調節装置(流量調節手段)
24 絞り通路
25 スーパーキャビテーション発生部(負圧吸引手段)
41a,41b 仕切板
61 分離膜(中空管状)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料配管に設けられ、スーパーキャビテーションを発生可能なスーパーキャビテーション発生部と、
このスーパーキャビテーション発生部に設けられ、前記スーパーキャビテーション発生部の燃料を分子構造に応じて透過もしくは非透過することで燃料を分離する分離膜と、
この分離膜を透過する燃料を取り出す燃料取出通路と、
この燃料取出通路に設けられ、前記透過燃料を吸引する負圧吸引手段と、を備えることを特徴とする燃料分離装置。
【請求項2】
前記スーパーキャビテーション発生部でのスーパーキャビテーションの発生を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の燃料分離装置。
【請求項3】
前記負圧吸引手段より上流側の前記燃料取出通路から分岐する分岐通路を備え、
前記制御手段は、スーパーキャビテーション発生時には前記負圧吸引手段を作動させて前記燃料取出通路により低沸点燃料を回収し、スーパーキャビテーション非発生時には前記負圧吸引手段を停止して前記分岐通路により高沸点燃料を回収することを特徴とする請求項2記載の燃料分離装置。
【請求項4】
スーパーキャビテーションの発生を検知するスーパーキャビテーション発生検知手段を備え、前記制御手段は、前記スーパーキャビテーション発生検知手段にてスーパーキャビテーションの発生を検知してから所定時間を経過した後に、前記負圧吸引手段を作動させることを特徴とする請求項3記載の燃料分離装置。
【請求項5】
前記燃料配管内の燃料流量を調節する流量調節手段を備え、前記制御手段は、前記流量調節手段の作動を制御することにより、前記スーパーキャビテーション発生部でのスーパーキャビテーションの発生を制御することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1つに記載の燃料分離装置。
【請求項6】
前記分離膜は、前記燃料配管の燃料流量が多くなるほど、前記透過燃料の着火性が高くなる特性を有し、前記制御手段は、前記透過燃料の着火性を高くする場合には前記流量調節手段を用いて前記燃料流量を増加させ、前記透過燃料の着火性を低くする場合には前記流量調節手段を用いて前記燃料流量を減少させる制御を行うことを特徴とする請求項5記載の燃料分離装置。
【請求項7】
前記燃料配管を流れる燃料は少なくとも直鎖系炭化水素を含む燃料であって、前記分離膜は直鎖系炭化水素を透過させ、前記直鎖系炭化水素以外の炭化水素は非透過とさせる特性を有することを特徴とする請求項6記載の燃料分離装置。
【請求項8】
前記負圧吸引手段は、前記燃料配管を一方として、これとは独立した他方の燃料配管に設けられたスーパーキャビテーション発生部であり、前記一方の燃料配管を流れる燃料の飽和蒸気圧は、前記他方の燃料配管を流れる燃料の飽和蒸気圧に比べて高いことを特徴とする請求項1記載の燃料分離装置。
【請求項9】
前記一方の燃料配管を流れる燃料はガソリンであり、前記他方の燃料配管を流れる燃料は軽油であることを特徴とする請求項8記載の燃料分離装置。
【請求項10】
前記一方の燃料配管のスーパーキャビテーション発生部でのスーパーキャビテーションの発生と、前記他方の燃料配管のスーパーキャビテーション発生部でのスーパーキャビテーションの発生とを制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項8又は請求項9記載の燃料分離装置。
【請求項11】
前記一方の燃料配管と前記他方の燃料配管とは、各燃料配管ごとに、各々の燃料流量を調節する流量調節手段を備え、前記制御手段は、前記流量調節手段の作動を制御することにより、前記一方の燃料配管のスーパーキャビテーション発生部でのスーパーキャビテーションの発生と、前記他方の燃料配管のスーパーキャビテーション発生部でのスーパーキャビテーションの発生とを制御することを特徴とする請求項10記載の燃料分離装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記一方の燃料配管のスーパーキャビテーション発生部での燃料圧力が、前記他方の燃料配管のスーパーキャビテーション発生部での燃料圧力に比べて小さい場合、前記一方の燃料配管の流量調節手段を用いて前記一方の燃料配管の燃料流量を減少させる制御を行うことを特徴とする請求項11記載の燃料分離装置。
【請求項13】
前記分離膜は、前記一方の燃料配管の燃料流量が多くなるほど、前記透過燃料の着火性が高くなる特性を有し、前記制御手段は、前記透過燃料の着火性を高くする場合には前記一方の燃料配管の前記流量調節手段を用いて前記一方の燃料配管の燃料流量を増加させ、前記透過燃料の着火性を低くする場合には前記一方の燃料配管の前記流量調節手段を用いて前記一方の燃料配管の燃料流量を減少させる制御を行うことを特徴とする請求項11又は請求項12記載の燃料分離装置。
【請求項14】
前記一方の燃料配管を流れる燃料は少なくとも直鎖系炭化水素を含む燃料であって、前記分離膜は直鎖系炭化水素を透過させ、前記直鎖系炭化水素以外の炭化水素は非透過とさせる特性を有することを特徴とする請求項13記載の燃料分離装置。
【請求項15】
前記スーパーキャビテーション発生部は、前記燃料配管の一部に前記燃料配管より小断面積に形成された絞り通路の内側に設けられることを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか1つに記載の燃料分離装置。
【請求項16】
前記絞り通路は、複数並列に設けられることを特徴とする請求項15記載の燃料分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−156237(P2009−156237A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338465(P2007−338465)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】