説明

燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造

【課題】取り付け取り外しの際に、燃料噴射ポンプと、燃料油主管との接続部の損傷を防止するとともに、作業性を大きく向上しかつコストダウンできる燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造を提供すること。
【解決手段】燃料噴射ポンプ1の燃料噴射ポンプ本体10の中心軸Pと、燃料噴射ポンプ1の主管傾斜接続面13とを通る断面において、主管傾斜接続面13と、上記中心軸Pとの距離が、鉛直方向上方側に行くにしたがって大きくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関における燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関における燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造としては、図5に示す技管を用いたものがある。それに対して、部品数削減と構造を簡素化するために図4に示す技管を省略して出入口主管を一体化して直付したものがある。
【0003】
ここで、図4に示す燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造は、燃料噴射ポンプ201の主管接続面213と、燃料油主管202の接続面238とが、燃料噴射ポンプが内燃機関に取り付けられている状態で、鉛直方向に延在して互いに接続されているから、燃料噴射ポンプ201が、点検のために取り外されたり組み付けられたりされるときに、鉛直方向上方に吊り上げられたり吊り下げられる際、主管接続面213と、接続面238とが、接触したまま互いに引きずることを避けがたい。したがって、主管接続面213と、接続面238とが損傷する。および、主管接続面213と、接続面238との間のシール材が損傷して、燃料油が漏洩するという問題がある。
【0004】
ここで、この問題を回避するには、燃料油主管を先に取り外さなければならず、作業が非常に煩雑になるという問題がある。また、大型のエンジンでは、気筒ごとに分解できる主管が必要となり、部品数が多くなる。
【0005】
ここで、これらの問題を回避できる燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造としては、特開2003−269292号公報(特許文献1)に記載されているものがある。
【0006】
この取付構造は、燃料噴射ポンプと、燃料供給ラインにつながる燃料油主管ブロックとを、略水平面上に位置する接続面で接続しているから、燃料噴射ポンプの取り外しの際、燃料噴射ポンプを吊り上げた瞬間に、燃料噴射ポンプと、燃料油主管ブロックとを切り離すことができる。したがって、燃料噴射ポンプと、燃料油主管ブロックとの接続部が接触したまま互いに引きずることがなくて、損傷することがなく、上記問題を解消できると共に、取り外しの作業効率も向上させることができる。
【0007】
しかしながら、この取付構造では、燃料噴射ポンプに水平方向延在部を形成することが不可欠であるため、燃料噴射ポンプが大型化し、他の流体の通路の配置の自由度が過度に小さくなり、構造上で大きな制約を受けるという問題がある。
【0008】
また、既存のエンジンに対しては、燃料油主管ブロックを、燃料噴射ポンプの水平方向延在部の下方に配置することが必要不可欠になるから、燃料油主管ブロックの配置位置が、大きく変更されなければならず、燃料噴射ポンプ近傍の他の主要部材の配置変更が必要となり、現実的には適用できないという問題がある。
【0009】
また、一般に大形のディーゼル機関は振動が大きく、円筒差し込み部は相対振動が大きく発生する場合があり、そこをOリングでシールしていた場合は、Oリングが損傷し、漏れ、特に燃料系は燃料の噴出事故が発生する。そのため、Oリングは平面固定で使用する必要がある。もしくは相対振動を防ぐ特別な措置が必要となる。しかしながら、この取付構造は、平面固定ができず、また、特別な措置も講じられていないから、燃料油の漏れ等が発生する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−269292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の課題は、燃料噴射ポンプの取り付け取り外しの際に、燃料噴射ポンプと、燃料油主管との接続部の損傷が起こらず、取り外しの作業性に優れ、燃料油主管の部品点数を削減し、かつ、既存のエンジンに適用する場合にも他の主要部材の配置変更の必要もない燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この発明の燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造は、
燃料噴射ポンプと、
上記燃料噴射ポンプに燃料を供給するための燃料入口主通路および出口と、上記燃料噴射ポンプからの余分の燃料を受けるための燃料戻り主通路および入口とを有する燃料油主管と
を備え、
上記燃料噴射ポンプは、その燃料噴射ポンプの上方に行く程、上記燃料噴射ポンプの中心軸からの突出量が大きくなるように傾斜した傾斜接続面を有し、
上記燃料油主管は、
上記傾斜接続面に下側から接続される傾斜接続面を有することを特徴としている。
【0013】
尚、上記「上方」、「下側」とは、燃料噴射ポンプ本体を、所定位置に設置された内燃機関の所定の箇所に設置した場合における、上方、下側をさす。また、この明細書において、上方、上方側、上、下、下側、下方、水平面等の、鉛直方向や水平方向をさす表現を使用した場合、それは、燃料噴射ポンプ本体を、所定位置に設置された内燃機関の所定の箇所に設置した状態における方向をさすものとする。
【0014】
本発明によれば、燃料噴射ポンプの上方に行く程、燃料噴射ポンプの中心軸からの突出量が大きくなるよう傾斜した傾斜接続面を有しているから、メンテナンスの際、燃料噴射ポンプを内燃機関のフレームに取り付けている取付ボルト等を外した上で、燃料噴射ポンプを上方に移動させるだけで、傾斜接続面と、その傾斜接続面に接続している燃料油主管の傾斜接続面とを瞬時に切り離すことができる。したがって、燃料噴射ポンプの取り外しの際に、燃料噴射ポンプの傾斜接続面と、燃料油主管の傾斜接続面との角で引っかけたり引きずったりすることがないから、接続面及びシール材の損傷が起こることを確実に防止することができると共に、取り付け取り外しの作業性を大きく向上させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、燃料油主管を各筒ごとに分解する必要がないので、部品数を削減できる。
【0016】
また、本発明の燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造は、
燃料噴射ポンプと、
上記燃料噴射ポンプに燃料を供給するための燃料入口主通路および出口と、上記燃料噴射ポンプからの余分の燃料を受けるための燃料戻り主通路および入口とを有する燃料油主管と
を備え、
上記燃料噴射ポンプは、
燃料噴射ポンプ本体と、
この燃料噴射ポンプ本体の上方に行く程、上記燃料噴射ポンプ本体の中心軸からの突出量が大きくなるように傾斜した傾斜接続面を有するディスタンスと
を有し、
上記燃料油主管は、
上記ディスタンスの上記傾斜接続面に下側から接続される傾斜接続面を有することを特徴としている。
【0017】
本発明によれば、ディスタンスを介して傾斜接続面があるから、現在使用中の内燃機関において、レトロフィットが可能であり、大規模な改造をすることなく、既存の内燃機関を用いて、簡単、安価に実現されることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃料噴射ポンプの取り付け取り外しの際に、燃料噴射ポンプと、燃料油主管との接続部の損傷が起こらず、作業性に優れ、燃料油主管の部品点数を削減し、かつ、既存のエンジンに適用する場合にも他の主要部材の配置変更の必要もない燃料噴射ポンプの取付構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造を示す図である。
【図2】上記実施形態の燃料噴射ポンプの取付構造からの燃料噴射ポンプの取り外しを説明するための図である。
【図3】変形例の燃料噴射ポンプの取付構造の一部を示す模式図である。
【図4】従来の燃料噴射ポンプの取付構造を示す図である。
【図5】従来の燃料噴射ポンプの取付構造を示す図である。
【図6】従来の燃料噴射ポンプの取付構造における問題を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態の燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造を示す図である。
【0022】
この燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造(以下、単に、取付構造という)は、燃料噴射ポンプ1と、燃料油主管2とを備え、燃料噴射ポンプ1は、内燃機関としてのディーゼル機関において、シリンダ毎に設置されている。
【0023】
上記燃料噴射ポンプ1は、燃料噴射ポンプ本体10と、ディスタンス11とを有し、上記ディスタンス11は、燃料噴射ポンプ本体10の側面から燃料噴射ポンプ本体10の中心軸Pに略直交する方向に突出している。図1に示すように、上記ディスタンス11は、燃料油主管2に接続するための傾斜接続面としての主管傾斜接続面13を有する。上記燃料噴射ポンプ10の中心軸Pと、主管傾斜接続面13とを通る断面において、主管傾斜接続面13と、中心軸Pとの距離は、図1に矢印Aで示す鉛直方向の上方側に行くにしたがって大きくなっている。
【0024】
上記ディスタンス11は、その内部に燃料入口通路及び燃料戻り通路を有し、これらの通路は、燃料噴射ポンプ1内部から、燃料油主管2に通じる燃料通路を構成している。上記燃料噴射ポンプ1の燃料噴射ポンプ本体10は、ポンプ取付ボルト20,21によってディーゼル機関のクランクケースの上面25に固定されている。上記燃料噴射ポンプ1は、ディーゼル機関のシリンダ毎に設置されている。
【0025】
上記燃料油主管2は、全シリンダの燃料噴射ポンプ1に対して1つが設けられ、内部に燃料入口主通路31及び燃料戻り主通路32を有し、各シリンダのディスタンス11の主管傾斜接続面13に接続される傾斜接続面としてのディスタンス傾斜接続面38をそれぞれ有している。上記燃料油主管2は、取付ボルト39によって、図示しないOリングをはさむようにディスタンス11に固定されている。
【0026】
上記燃料油主管2がディスタンス11に固定されている状態で、燃料入口主通路31と、ディスタンス11の燃料入口通路とが連通し、燃料戻り主通路32と、ディスタンス11の燃料戻り通路とが、連通するようになっている。上記燃料入口主通路31及び燃料戻り主通路32の夫々は、図示しない燃料タンクおよび燃料供給ポンプなどからなる燃料供給ラインにつながっている。なお、主管傾斜接続面13の燃料通路の開孔部の周囲には、Oリング用の溝がある。この溝に配置した上記Oリングで、燃料油主管2と、ディスタンス11(燃料噴射ポンプ)を固定したときの、傾斜接続面13,38における燃料をシールする。
【0027】
上記構成において、燃料は、燃料油主管2の燃料入口主通路31と、ディスタンス11の燃料入口通路とを通流して、燃料噴射ポンプ1に入る。また、余剰分の燃料は、ディスタンス11の燃料戻り通路に流出して、燃料油主管2の燃料戻り主通路32に戻されるようになっている。
【0028】
尚、燃料噴射ポンプ1において、クランクケースとの接続面25より下側には、タペットローラに繋がるインロー部が存在している。このため、燃料噴射ポンプ1は、着脱の際には、上下方向にしか出し入れできないようになっている。
【0029】
図2は、上記実施形態の取付構造からの燃料噴射ポンプ1の脱着を説明するための図である。
【0030】
取り外しを行う際、取付ボルト39を取り外し、更に、ポンプ取付ボルト20,21のナットを外す。その後、燃料噴射ポンプ1を、矢印Bで示す方向に鉛直方向上方に吊り上げて、燃料油主管2から切り離す。
【0031】
上記実施形態の取付構造によれば、燃料噴射ポンプ本体10の中心軸Pと、主管傾斜接続面13とを通る断面において、主管傾斜接続面13と、中心軸Pとの距離が、上方側に行くにしたがって大きくなっているから、燃料噴射ポンプ1を上方に移動させるだけで、主管傾斜接続面13と、ディスタンス傾斜接続面38とを瞬時に非接触な状態に切り離すことができ、傾斜接続面13,38に摩擦力が働くことがない。また、図3に示すように、取付時に傾斜接続面において燃料通路穴の角とその接続面シールのOリングとが当たらないようになる角度をもたせているので、Oリングの損傷が起こることを確実に防止することができて、かつ、燃料油主管2を各筒毎に分解する必要がないので、取り外しの作業性を大きく向上させることができると共に、燃料油主管2の部品数削減によるコストダウンをはかることができる。
【0032】
これに対し、上述の図4に示す従来の取付構造における燃料噴射ポンプ着脱では、燃料油主管202と、燃料噴射ポンプ201との接続面が、鉛直方向に延在しているから、燃料噴射ポンプ201が、鉛直方向上方に吊り上げられた際、燃料油主管202と、ディスタンスとの接続面が、接触したまま互いに引きずることになって、それらの接続面213,238間に引きずるときに作用する動摩擦力によって、燃料油主管の接続面213,238と、それらの接続面213,238の間をシールしているOリングが損傷し易くなるのである。したがって、先に燃料油主管を分解する必要がある。
【0033】
また、上記実施形態の取付構造によれば、ディスタンス11を介して主管傾斜接続面13があるから、現在使用中の内燃機関において、レトロフィットが可能であり、大規模な改造をすることなく、既存の内燃機関を用いて、簡単、安価に実現されることができる。
【0034】
尚、上記実施形態の取付構造では、図3に示すように、主管傾斜接続面13の燃料通路の開孔部の周囲に、Oリング用の溝を形成したが、この発明では、Oリング用の溝57を、ディスタンス11の主管傾斜接続面13でなくて、燃料油主管2のディスタンス傾斜接続面38に形成しても良く、ディスタンス傾斜接続面38に形成した溝57にOリング60を配置しても良い。
【0035】
なお、図3(および図6)では、特に角とOリングの引っかかりを分かりやすく説明するために、Oリングを強調して大きく書いたが、実際にはもっと小さい。
【0036】
また、既存のポンプを使用するためにディスタンス11を用いたが、ポンプ本体10とディスタンス11は、一体であっても良い。
【0037】
また、上記実施形態では、燃料油主管は、燃料入口通路と、燃料戻り通路と、それらの出入口とを備えていたが、この発明では、燃料油主管は、燃料戻り通路を有していなくても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 燃料噴射ポンプ
2 燃料油主管
10 燃料噴射ポンプ本体
11 ディスタンス
13 主管傾斜接続面
31 燃料油主管の燃料入口主通路
32 燃料油主管の燃料戻り主通路
38 ディスタンス傾斜接続面
P 燃料噴射ポンプ本体の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射ポンプと、
上記燃料噴射ポンプに燃料を供給するための燃料入口主通路および出口と、上記燃料噴射ポンプからの余分の燃料を受けるための燃料戻り主通路および入口とを有する燃料油主管と
を備え、
上記燃料噴射ポンプは、その燃料噴射ポンプの上方に行く程、上記燃料噴射ポンプの中心軸からの突出量が大きくなるように傾斜した傾斜接続面を有し、
上記燃料油主管は、
上記傾斜接続面に下側から接続される傾斜接続面を有することを特徴とする燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造。
【請求項2】
燃料噴射ポンプと、
上記燃料噴射ポンプに燃料を供給するための燃料入口主通路および出口と、上記燃料噴射ポンプからの余分の燃料を受けるための燃料戻り主通路および入口とを有する燃料油主管と
を備え、
上記燃料噴射ポンプは、
燃料噴射ポンプ本体と、
この燃料噴射ポンプ本体の上方に行く程、上記燃料噴射ポンプ本体の中心軸からの突出量が大きくなるように傾斜した傾斜接続面を有するディスタンスと
を有し、
上記燃料油主管は、
上記ディスタンスの上記傾斜接続面に下側から接続される傾斜接続面を有することを特徴とする燃料噴射ポンプと燃料管との取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate