説明

燃料噴射装置

【課題】応答性を向上可能な燃料噴射装置の駆動部構造を提供する。
【解決手段】本発明では、磁気コア107の内周面に可動子102側へ向けて内径が次第に大きくなる磁気的な絞り201を設ける。コイルに電流を供給すると、渦電流の影響によってコイル105の近傍に位置する磁気コア107の外周面側から磁化が始まり、磁気コア107の内周面側へ向けて磁化が進行する。コイル105への電流供給を停止すると、磁気コア107の外周面側から消磁が始まる。磁気コア107の内周面に磁気的な絞り201を設けることで、コイル105に電流を供給してから磁束が立ち上がるまでの開弁時の磁気的な遅れ時間と、コイルへの電流供給を停止してから磁束が減少するまでの閉弁時の磁気的な遅れ時間の短縮が可能となり、開弁時及び閉弁時における動的な応答性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関に使用される燃料噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、固定コアの可動コアとは反対側の外径が、可動コアの外径よりも大きくなる大径部を有し、固定コアの可動コアと向き合う対向端面側が固定コアの大径部よりも径方向内側に凹み、固定コアの対向端面の外径が大径部の外径よりも小さくなることにより、固定コアの対向端面が可動コアの外周に設置されている磁性部材と向き合う面積を小さくして、固定コアと可動コアの間を流れる磁束の減少を低減し、吸引力を向上した燃料噴射弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−207412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動コアの動的な吸引力の応答性を決定づける因子として、磁気回路中に発生する渦電流がある。渦電流は、コイルに電流を供給することで発生する磁束を打ち消す方向に発生し、コイルへの電流供給を停止した際にも、磁束を打ち消す方向とは逆に発生し、常に磁界の変化を妨げる方向に発生する。電磁式の燃料噴射装置においては、コイルに電流を供給してから磁束が発生して吸引力が立ち上がるまでと、コイルへの電流の供給を打ち切ってから磁束が減少して吸引力が低下するまでには、磁気的な遅れが生じる問題となる。例えば特許文献1に記載された燃料噴射弁(燃料噴射装置)のように、固定コアの反可動コア側の外径を可動コアの外径よりも大きくすることで、固定コアの磁路断面積が増加し、吸引力は向上する。一方で、固定コアの磁路断面積が増加することで、電流をコイルに供給してから磁束が立ち上がるまでの磁気的な遅れ時間とコイルへの電流供給を停止してから磁束が切れるまでの磁気的な遅れ時間が増加する可能性がある。特許文献1に記載された燃料噴射弁では、動的な応答性を決定づける渦電流についての配慮が必ずしも十分でなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題を解決することを目的とし、動的な応答性に優れた燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、磁気コア(固定コア)の内周面に可動子側へ向けて内径が大きくなる磁気的な絞りを設ける。
【0007】
電磁石を用いた燃料噴射装置では、コイルに電流を供給すると、渦電流の影響によってコイルの近傍(内周面側)に位置する磁気コアの外周面側から磁化が始まり、コイルから遠く離れている磁気コアの内周面側へ向けて磁化が進行する。一方でコイルへの電流供給を停止すると、コイルに近い磁気コアの外周面側から消磁が始まる。本発明において、磁気コアの可動子側端面における内径側の肉厚を削ることで、すなわち、磁気コア(固定コア)の内周面に可動子側へ向けて内径が大きくなる磁気的な絞りを設けることで、コイルに電流を供給してから磁束が立ち上がるまでの開弁時の磁気的な遅れ時間とコイルへの電流供給を停止してから磁束が減少するまでの閉弁時の磁気的な遅れ時間の短縮が可能となり、開弁時及び閉弁時における動的な応答性を向上することができる。
【0008】
さらに、磁気コア(固定コア)の外径をノズルホルダにおける可動子の外周を包囲する部分の内径よりも大きくするとよい。このような構成によって磁気コアの磁気抵抗の低減と吸引面の磁束密度の向上を行い、磁気吸引力を向上させることが可能となる。
【0009】
具体的には以下のように構成するとよい。
(1)弁座と接することによって燃料通路を閉じ弁座から離れることによって燃料通路を開く弁体と、前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアとを備えた燃料噴射装置において、前記磁気コアは、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に形成された孔を有し、前記孔は、前記端面への開口部に、前記孔の奥側から前記端面向かって内径が次第に拡大していく内径拡大部を有し、前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成する。
(2)(1)において、前記可動子と前記磁気コアの少なくとも前記可動子側の一部とを内包する筒状部材を備え、前記筒状部材は、その内周面に形成された大径部と小径部とを有し、前記磁気コアは、前記筒状部材の前記小径部の内径よりも大きな外径を有し、前記大径部の内側に固定する。
(3)(2)において、前記内径拡大部が前記磁気コアの前記端面に開口する開口半径と磁気コアに形成された前記孔の半径との差は、前記大径部の半径と前記小径部の半径との差よりも大きくする。
(4)(3)において、前記筒状部材の前記大径部から前記小径部に変化する位置と前記磁気コアの前記端面との弁軸に沿う方向の距離を、閉弁状態で前記可動子と前記弁体とが静止した状態において、前記磁気コアの前記端面と前記可動子との間の距離よりも大きく設定する。
(5)(4)において、前記弁体と前記可動子とは相対変位可能に別部材で構成され、前記弁体は、前記可動子の前記弁体に対する開弁方向の相対変位を規制する規制部を有し、前記磁気コアに形成された前記孔の内径が最小となる部位は、前記規制部の位置よりも前記孔の奥部に形成する。
(6)(4)において、前記筒状部材は、その外周面に環状の凹部を有し、前記凹部の弁軸に沿う方向の位置は前記磁気コアの前記可動子と対向する端面の位置と重なるようにする。
(7)(4)において、前記可動子は弁軸に沿う方向に形成された燃料通路孔を有し、前記燃料通路孔の中心位置が前記磁気コアに形成された前記孔の最小径よりも外周側に設ける。
(8)(4)において、前記磁気コアの前記可動子と対向する側の端面の面積よりも前記可動子の前記磁気コアと対向する平面部の面積の方が大きく設定する。
(9)(4)において、前記可動子の磁気コアと対向する端面とは反対側の面に、外径方向に向かって内径が拡大する内径拡大部を設け、前記拡大部の半径方向における始点位置を前記磁気コアの前記可動子と対向する端面の内径よりも外周側に設ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、動的な応答性に優れた燃料噴射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る一実施例の燃料噴射装置の縦断面図である。
【図2】本発明の第一実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図3】図2における可動子の外径側下面部の拡大図Cである。
【図4】図2におけるノズルホルダ上端面と磁気コアとの接触部Aの拡大図である。
【図5】本発明の第二実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図6】図5における磁気コア外周部Bの拡大図である。
【図7】図5におけるノズルホルダ上端面と磁気コアとの接触部Eの拡大図である。
【図8】本発明の第三実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図9】図8における磁気コア外周部Dの拡大図である。
【図10】本発明の第四実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図11】本発明の第五実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図12】図8における可動子内径部Fの拡大図である。
【図13】本発明の第六実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図14】本発明の第七実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図15】本発明の第八実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。
【図16】本発明の第九実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。
【図17】本発明の第十実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図1〜図15を用いて、本発明の実施例による燃料噴射装置の動作および構成について説明する。
【実施例1】
【0013】
最初に図1を用いて本発明に係る第一の実施例における燃料噴射装置の構成と動作について説明する。図1は、本発明の燃料噴射装置の一実施例を示す縦断面図である。
【0014】
本実施例では、可動子(可動コア)102は弁体114に固定されておらず、弁体114に対して弁軸方向に相対変位可能に組み付けられている。可動子102は弁体114の規制部(ストッパ部)114aによって開弁方向への相対変位が規制されている。規制部114aは弁体114の弁ニードル部114cよりも大きな径を有する拡径部によって形成されている。可動子102は規制部114aに対して他端側に設けられ、弁座118と接触する接触部(シート部114b)側への相対変位、すなわち閉弁方向への相対変位は弁体114によって規制されることはない。
【0015】
このように構成された図1における燃料噴射装置は、通常閉弁型の電磁式燃料噴射装置であり、コイル105に通電されていない状態では、弁体114はスプリング(第1スプリング)110によって閉弁方向に付勢され、弁座118に密着し閉弁状態となっている。この閉弁状態においては、可動子102はゼロスプリング(第2スプリング)112によって弁体114の規制部114aに密着させられ、可動子102と磁気コア(固定コア)107との間に空隙を有している。燃料は燃料噴射装置の上部に設けられた燃料供給口123より供給され、弁座118で燃料をシールしている。閉弁時には、スプリング110による力および燃料圧力による力が弁体114に対して閉弁方向に作用し、弁体114は閉弁方向に押されている。スプリング(第1スプリング)110の弁体114と当接している端部とは反対側の端部はアジャスタピン120に当接しており、スプリング110のばね力がこのアジャスタピン120により調整される。
【0016】
開閉弁のための電磁力を発生させる磁気回路は、磁気コア107と、可動子102と、磁気コア107の少なくとも可動子102側の一部と可動子102とを内包するようにこれらの外周側に配置された筒状部材であるノズルホルダ101と、ハウジング103とによって構成されている。ハウジング103はその下端部に径方向に延びる径方向延設部103aが形成されており、この径方向延設部103aの内周面103bがノズルホルダ101における可動子102の外周面102aと対向する部分101aの外周面に接触している。また、ハウジング103はコイル105の外周を取り囲み、コイル105よりも上位となる部分103cの内周面が磁気コア107のフランジ部107aの外周面と接している。ハウジング103は磁気回路のヨーク部分を構成している。
【0017】
コイル105に電流が供給されると、磁気回路中に磁束が発生し、可動部品である可動子102と固定部品である磁気コア107との間に磁気吸引力が発生する。可動子102に作用する磁気吸引力がスプリング110による荷重と、燃料圧力によって弁体114に作用する力の和を超えると、可動子102が上方へ動く。このとき弁体114は可動子102と共に上方へ移動し、可動子102の上端面が磁気コア107の下面に衝突するまで移動する。その結果、弁体114のシート部114bが弁座118より離間し、供給された燃料が、複数の噴射口119から噴射される。なお、噴射口119の孔数は単孔であってもよい。なお、噴射口119及び弁座118はノズルホルダ101の先端部に取り付けられたオリフィスカップ116に形成されている。また、オリフィスカップ116の上流側には、弁体114をガイドするプランジャロッドガイド115が設けられている。
【0018】
次に、可動子102の上端面102bが磁気コア107の下面(可動子側端面)206に衝突した後、弁体114の規制部114aは可動子102から離脱し、オーバーシュートするが、一定の時間の後に弁体114は規制部114aが可動子102に接触することにより、可動子102上で静止する。コイル105への電流の供給が切れると、磁気回路中に発生していた磁束が減少し、磁気吸引力が低下する。磁気吸引力がスプリング110による荷重と、燃料圧力によって弁体114および可動子102が受ける流体力とを合わせた力よりも小さくなると、可動子102および弁体114は下方へ動き、弁体114が弁座118と衝突した時点で、可動子102の規制部114aは弁体114から離脱する。一方弁体114は弁座118と衝突した後に静止し、燃料の噴射が停止する。
【0019】
なお、可動子102と弁体114とは相対変位しない同じ部材として一体成形するかもしくは、別部材で構成し溶接もしくは圧入等の方法で相対変位しないように結合されていてもよい。可動子102と弁体114とが相対変位しない同じ部材である場合、ゼロスプリング112は構成上必要ない。このような構成であっても、本発明の効果は変わらない。
【0020】
次に、図1乃至4を用いて本発明における第一実施例の構成について説明する。図2は図1における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図であり、図3は図2における可動子102の外径側下面部Cの拡大図である。また、図4は図2におけるノズルホルダ101の上端面と磁気コア107との接触部Aの拡大図である。なお、図2,図3,図4において図1と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0021】
本発明に係る燃料噴射装置では、コイル105に電流を供給することにより、磁気コア107,可動子102,ハウジング103及びノズルホルダ101で構成される磁気回路に磁束が発生し、磁気コア107と可動子102との間に磁気吸引力が発生する。磁気コア107を通る磁束は、磁気コア107の可動子102側の端面206の位置で、ノズルホルダ101側へ流れる磁束と、磁気コア107の吸引面側、すなわち磁気コア107と可動子102との間の磁気ギャップ側に流れる磁束とに分配される。このとき、磁気コア107と可動子102との間を通る磁束の数と磁束密度が磁気吸引力を決定する。
【0022】
本実施例では、磁気コア107の可動子側端面206の内径側に、吸引面に向かって内径が拡大する内径拡大部201を設ける。磁気コア107にはその中央部に弁軸方向に貫通する貫通孔210が形成され、この貫通孔210が燃料通路を構成している。内径拡大部201はこの貫通孔210の出口部近傍に形成されており、可動子側端面206から燃料の流れ方向の上流側に向かって次第に内径が小さくなるように形成されている。この効果により、磁気コア107の可動子側端面206から可動子102に対して遠く離れる側の磁束が通過する箇所の断面積を確保しながら、可動子側端面206の面積を絞ることで、吸引面の磁束密度を高めることができ、磁気吸引力を向上できる。なお、内径拡大部201は、可動子102との弁軸に沿う方向の磁気的なギャップが、内径拡大部201の内径が小さくなるにつれて、すなわち磁気コア107の径方向の中心に近づくに従って、拡大するように構成するとよい。これは、内径拡大部201における磁気コア107と可動子102との磁気的なギャップ(弁軸方向の間隔)の大きさを、可動子側端面206と可動子102との磁気的なギャップの大きさよりも大きくし、磁気的な抵抗を大きくするためである。これにより、磁束は内径拡大部201を通過する磁束を減らし、可動子側端面206を通過する磁束を増やすことができ、可動子側端面206の磁束密度を高めることができる。また、コイル105上側に位置する磁気コア107の下面207と内径拡大部201の上端までの高さLAは、内径拡大部201の弁軸方向の高さLBよりも大きく設定すると効果が大きい。このように設定することで、コイル105の内径側に位置する磁気コア107の磁路断面積を確保しつつ、吸引面の絞りによって磁束密度を高める効果が得やすくなり、吸引力向上が向上できる。なお、内径拡大部201は例えばテーパーで構成するとよい。
【0023】
内径拡大部201をテーパーで構成する場合、加工の都合上、内径拡大部201の上流部と下流部に内径拡大部201のテーパーとは角度が異なるテーパーを設けるとよい。この場合、内径拡大部201を3段のテーパー部で構成するという見方もできる。そして下流側に位置するテーパー部ほど、弁軸心209と成す角度θが大きくなるようにする。この効果により、内径拡大部201の上流部と下流部に加工上のバリが発生しにくくなるため、加工コストを低減できる。
【0024】
また、コイル105に電流を供給すると、磁化は渦電流の影響によってコイル内側から外側へ向かって進行する。一方で、コイル105への電流供給を停止すると、コイル105に近い位置から磁束が消滅する。コイル105へ電流を供給した状態から電流の供給を停止する場合、コイル105から離れた位置にある磁気コア107の内径側には、最後まで磁束が残留する。従って、コイル105への電流供給を停止しても磁気吸引力が低下するまでには磁気的な遅れ時間が存在し、この磁気的な遅れ時間が閉弁時の応答性を悪化させる要因となる。そこで、磁性材料において磁化が進行する方向の幅を狭くすることにより、磁気的な遅れ時間を短縮することができる。
【0025】
本発明では、磁気コア107に内径拡大部201を設けることで、磁気コア107の可動子側端面206の肉厚が小さくなるように構成する。すなわち、内径拡大部201により磁気コア107の内周側(内径側)の磁性材料を削り、その分だけ磁気コア107の肉厚を薄くしている。この効果によって、コイル105に電流を供給してから磁束が立ち上がるまでの開弁時の磁気的な遅れ時間とコイル105への電流供給を停止してから磁束が減少するまでの閉弁時の磁気的な遅れ時間の短縮が可能となり、開・閉弁時における応答性を向上させることが可能となる。以上の理由により、本発明の第一実施例によれば、磁気吸引力と動的な応答性の向上を両立することが可能となる。
【0026】
ここで、磁気コア107の外側に筒状のノズルホルダ101を設ける構成においては、コイル105から磁気コア107までの距離がノズルホルダ101の厚さ分大きくなる。コイル105と磁気コア107の距離が大きくなると、渦電流の影響によって磁化が進行する速度および、消磁する速度が遅くなり、動的な応答性が悪化する。従って、渦電流の影響を低減できる磁気コア107の内径拡大部201の効果が顕著になる。
【0027】
また、磁気コア107に設けた内径拡大部201は下流方向に内径が拡大するように構成しているため、磁気コア107と弁体114との間に流体通路を確保することができる。なお、可動子102と弁体114とが相対変位可能に別部材として構成されている場合、内径拡大部201の範囲は、磁気コア107の可動子側端面206から弁体114に設けた規制部(ストッパ部)114aよりも上流部まで構成するとよい。この効果により、弁体114と磁気コア107の間に十分な流体通路を確保することが可能となる。なお、弁体114と磁気コア107の間を通る燃料は、可動子102に設けた燃料通路孔203を通過し、下流方向へ流れる。燃料通路孔203の中心位置は、磁気コア107の内径dcよりも外径側に配置することで、可動子102を通過する燃料の流体通路面積の確保が可能となる。また、可動子102の燃料通路孔203の中心位置は、磁気コア107の可動子側端面206の内径よりも内径側に配置するとよい。磁気コア107の可動子側端面206の内径よりも外径側が可動子102の磁束の主経路となるため、燃料通路孔203の中心位置を規定することで、可動子102の磁路断面積が燃料通路によって減少するのを抑える効果がある。なお、燃料通路孔は、可動子102ではなく、弁体114に設けてもよい。
【0028】
また、磁気コア107の可動子側端面206の内径よりも可動子102の磁気コア107と対向する平面部の内径の方が小さくなるように設定するとよい。この効果により、可動子102が中心位置からずれて偏心した場合であっても磁気コア107の可動子側端面206で吸引面積が決まるため、磁気吸引力のばらつきを抑制することができる。この効果により、噴射毎の噴射量のばらつきや個体差による噴射量のばらつきを抑制することが可能となる。
【0029】
また、磁気コア107と可動子102との間の磁気ギャップの弁軸方向における位置は、可動子102が弁体114の規制部114aと接触して静止した状態において、コイル105とボビン104とで構成されているコイルスペースの弁軸方向における位置と重なるようにするとよい。これは磁気ギャップが、コイルスペースよりも下部にくると、可動子102の側面部の面積が十分にとれないためである。可動子102の側面部とノズルホルダ101との間には、隙間があるため、可動子102の側面部の磁気抵抗は大きくなり易い。この部分の磁気抵抗を小さくするため、磁束が通過するための側面積を大きくする必要がある。このため、可動子102の側面部の面積、すなわち可動子102の高さを大きくする必要がある。従って、磁気ギャップの軸方向の位置をコイルスペース内にすることで、可動子102の高さを十分に確保しても、可動子側面がハウジング103の内径部分に近づくようにできるため、吸引力の向上が可能となる。
【0030】
また、図4に示すように、ノズルホルダ101の上端面の内径側に、磁気コア107と圧入ための逃げ部150を構成するとよい。ノズルホルダ101と磁気コア107を圧入などの方法によって組み立てる場合、ノズルホルダ101の上端面と接触する磁気コア107の隅部には、加工上のRが生じてしまうため、接触部に逃げを設ける必要がある。磁気コア107ではなく、ノズルホルダ101に逃げ部150を設けることで、磁気コア107の磁路断面積が圧入のための逃げによって縮小されるのを抑制し、吸引力を向上できる。一般的に、強度が必要になるノズルホルダ101には、磁気特性の劣る材料を使わざるを得ないが、このようにノズルホルダ101側に逃げを設けることで、磁気特性に優れる磁気コア107の断面積を縮める必要がなく、有利である。なお、ノズルホルダ101に設けた逃げ部150は例えばテーパーで構成するとよい。
【0031】
ここで、可動子102の磁気コア107と対向する端面とは反対側の面(裏面)には、外径方向に向かって内径が拡大する内径拡大部205を設けるとよい。ここで、吸引力を向上するための磁路断面積を確保する目的で可動子102の内径部の肉厚を増加させると質量が大きくなり、開・閉弁時における可動子102の加速度が小さくなるため、開閉弁に要する時間が増加してしまう。従って、可動子102では、磁路断面積の確保と質量低減を両立させることが望ましい。
【0032】
磁気コア107と可動子102の構成では、磁気コア107の可動子側端面206の内径側よりも外径側が、可動子102の磁束が通る主経路となるため、可動子102の外径側で磁路断面積が確保できるように、磁性体を配置する必要がある。従って、可動子102に設けた内径拡大部205の始点208が、磁気コア107の可動子側端面206の内径よりも外径側に位置するように構成することで、可動子102の必要な磁気路断面積を確保しながら質量も低減することができる。本発明では、磁気コア107に内径拡大部201を設けているため、内径拡大部205の体積を必要最小限に抑制することができ、可動子102の質量低減が可能になる。
【0033】
また、図3に示すように、可動子102の傾斜面302よりも下部に弁軸心に平行な周面である下部内径面303を設け、下部内径面303と対向する可動子102の外周面に凹部301を設けるとよい。ここで、磁気コア107と可動子102が接触する燃料噴射装置では、衝突面の耐久性を高めるため磁気コア107と可動子102の接触面にクロムなどのメッキ処理を行う場合がある。可動子102にメッキ処理を行う場合、可動子102の位置を固定するための溝が外径面に必要となる。しかし、可動子102の外径は、磁束が通過する磁路であるため、可動子102の凹部301の位置を可動子102の上部に構成すると、可動子102の外径とノズルホルダ101との間の磁気抵抗が増加し、吸引力が低下するという問題がある。上記構成によれば、吸引力の低下を抑制し、可動子102のメッキ処理が容易となる。
【実施例2】
【0034】
図5,図6,図7を用いて本発明に係る第二実施例について説明する。図5は第二実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図であり、図6は図5における磁気コアの外周部Bの拡大図である。また、図7は図5におけるノズルホルダ上端面と磁気コア接触部Eの拡大図である。なお図5,図6,図7において図1,図2と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0035】
図5,図6に示した例では、第一の実施例に加えて、ノズルホルダ101に内径の大きい内径大径部605と内径の小さい内径小径部606を設けている。これにより、磁気コア107の外径がノズルホルダ101の内径小径部606よりも大きくなる。ここで、断面積の幾何学的関係から、コイル105の内径側へ配置された磁気コア107の断面積を確保することは、コイル105の外径側に配置されたハウジング103の断面積を確保することよりも困難である。従って、磁気コア107の吸引面は磁路断面積が小さいために、ハウジング103に比べて先に磁気飽和する。そこで、本実施例では、磁気コア107の外径をノズルホルダ101の内径小径部606よりも大きくすることで、磁気コア107の径方向の断面積を確保しやすくした。また、磁気コア107の可動子側端面604の面積は、内径拡大部201よりも上流部の磁気コア107の断面積に比べて10%以上小さくするように構成するとよい。これは、磁気コア107が飽和磁束密度に達するのを抑制できる効果があり、磁気コア107の磁束密度を下げることで、磁気回路に発生する磁束数を増加することができる。
【0036】
また、磁気コア107に軟磁性体を用いる場合には、磁気コア107可動子側端面604の面積は、内径拡大部201よりも上流位置での断面積に比べて10%以上小さく絞るように構成するとよい。一般的な軟磁性体では、飽和磁束密度よりも10%程度磁束密度が小さくなると、磁気飽和の状態ではなくなって透磁率が大きくなる。したがって、磁気コア107の可動子側端面604の面積よりも大きい断面積を磁気コア107が持つことによって、磁気コア107の吸引面以外の部分の磁束密度を抑制でき、透磁率が大きい状態で吸引面だけを飽和磁束密度に近づけることができる。この効果によって、磁気コア107の磁気抵抗が低下し、吸引力を増大させることができる。また、磁気コア107の可動子側端面604の外径は、ノズルホルダ101の内径小径部606よりも大きくするとよい。これは、渦電流の影響により、コイル105の内径側から磁化するため、磁気コア107とコイル105の距離を小さくすることによって、磁化の速度を促進させて、動的な応答性を向上するためである。
【0037】
また、図6に示すように、ノズルホルダ101は、内径大径部605から内径小径部606へ切り替わる切替え位置607を有している。この切替え位置607と磁気コア107の可動子側端面604との軸方向のギャップhgは、閉弁状態において弁体114と可動子102とが静止した状態における磁気コア107と可動子102との距離Hstよりも大きく設定するとよい。これは、磁気コア107の外径をノズルホルダ101の内径小径部606よりも大きくすることで、磁気コア107の可動子側端面604から切替え位置607へ磁束が漏れやすい問題があるためである。このようにギャップhgを設定することで、磁気コア107の可動子側端面604からノズルホルダ101の切替え位置607に流れる磁束を最小限に抑制できる。つまり、磁気コア107と可動子102との間に流れる磁束を増加することができ、磁気吸引力の向上が可能となる。なお、ノズルホルダ101の切替え位置607の形状は、図6では平面状の例を示している。このように平面状にすることで、ノズルホルダ101の内径小径部606が可動子102の側面に近傍する範囲を大きくすることができ、可動子102と内径小径部606との間の磁気抵抗が小さくなるため、大きい磁気吸引力を得やすくなる。但し、切替え位置は、下流に向けて内径が小さくなるテーパーもしくは曲率を含んだ形状であってもよい。
【0038】
また、内径小径部606と内径大径部605との距離Δrは、可動子102とノズルホルダ101の内径小径部606とのギャップSgよりも大きくなるように構成するとよい。距離ΔrをギャップSgよりも大きくすることで、ギャップSgを小さくすることができ、可動子102とノズルホルダ101の間の磁気抵抗を低減することができる。この効果により、磁気吸引力を向上できる。
【0039】
また、図5,図7に示すように、寸法の幾何学的な関係から、コイル105の外側に位置する磁気コア107の磁路断面積よりも、コイル105の内径側に位置する磁気コア107の断面積を確保することが難しい。従って、磁気コア107に逃げを設ける場合、磁気コア107がノズルホルダ101の内径と接触する円筒面172ではなく、逃げ部170のようにノズルホルダ101の上端面と接触する接触面171に設けるとよい。この効果により、磁気コア107の磁路断面積の縮小を抑えることができ、磁気吸引力の向上ができる。
【0040】
内径拡大部201の開口径daと磁気コア107の内径(燃料通路210の直径)dcとの差の半分、すなわち内径拡大部201の開口の半径と磁気コア107の貫通孔210aの半径との差Δdは、内径小径部606と内径大径部605との距離Δrよりも大きくしている。Δdは内径拡大部201の開口円と磁気コア107の内周円との径方向(弁軸に直交する方向)における間隔でもある。径方向におけるこの間隔の範囲に内径拡大部201のテーパー部が設けられる。異なる半径を有する2つの円周の間に挟まれた部分の面積を、円の中心から遠い半径位置と近い半径位置とで同じにするためには、円の中心から遠い半径位置の方が近い半径位置の場合よりも2つの円周の半径の差を小さくすることができる。従って、磁気コア107の可動子102と対向する端面において内径拡大部201を設けるために減少する面積を磁気コア107の外周部で補う場合、Δdに対してΔrは小さくてもよい。逆の見方をすれば、確保できるΔrに対してΔdを大きくする必要がある。
【実施例3】
【0041】
図8,図9を用いて本発明における第三実施例について説明する。図8は本発明に係る第三実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図であり、図9は、図8における磁気コア外周部Dの拡大図である。なお、図5,図9において図1,図2,図5,図6と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0042】
図8,図9に示した例では、第二実施例に加えて、ノズルホルダ101の外周面にノズルホルダ101の外径よりも小さい外径小径部908を設け、磁気コア107と接触しているノズルホルダ101の内径大径部605と外径小径部908とで磁気的な絞り部909を構成したものである。外径小径部908はノズルホルダ101の外周面に弁軸心を取り巻くように形成された環状の凹部(溝部)を構成する。ノズルホルダ101に磁気的な絞り部909を設けることで、ノズルホルダ101を流れる磁束を減少させ、磁気コア107と可動子102との間を流れる磁束を増加させることができる。この磁束の増加によって磁気吸引力が向上できる。また、磁気コア107とノズルホルダ101を流れる磁束は、磁気コア107の可動子側端面604の位置で、可動子102へ流れる磁束とノズルホルダ101の磁気的な絞り部909に流れる磁束に分配される。ここで、外径小径部908の弁軸方向の位置を、磁気コア107の可動子側端面604の外径方向の延長上にすることで、磁気的な絞り部609に流れる磁束を抑えることができ、磁束を可動子102側へ多く流すことができるため、吸引力が向上できる。また、磁気的な絞り部909を設けることで、磁気的な絞り部909の磁路断面積を小さくすることができるため、電流をコイル105に供給してから磁気的な絞り部909が磁気飽和するまでの時間を短縮することが可能となる。この効果によって、磁気コア107と可動子102の内径側に磁化が進行する速度を上げることができ、動的な吸引力の応答性を向上できる。
【実施例4】
【0043】
図10を用いて本発明に係る第四実施例について説明する。図10は本発明に係る燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。なお、図10において図1,図2,図6と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0044】
図10に示した例では、第二実施例に加えて、磁気コア107の内径側に第一のテーパー701と第二のテーパー702の複数のテーパーを設けることである。ここで、本発明に係る燃料噴射装置では、磁気コア107の内径を燃料通路として使用するため、吸引力の向上のために必要な磁気コア107の磁路断面積と燃料通路のために必要な弁体114と磁気コア107の間の燃料通路断面積の確保の両立が望ましい。以上の理由により、磁気コア107の内径に設けたテーパーの角度を切替えることで、第一のテーパー701により、磁気コア107の可動子側端面604から離れた位置の磁路断面積を確保しつつ、第二のテーパー702により、下流方向へ向かって燃料通路断面積を大きくすることができ、燃料噴射装置の設計が容易となる。
【実施例5】
【0045】
図11,図12を用いて本発明に係る第五実施例について説明する。図11は第五実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図であり、図12は図11における可動子102の内径部Fの拡大図である。なお、図11,図12において図1,図2,図6と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0046】
図11に示した例では、第二実施例に加えて、磁気コア107の内周面に吸引面に向かって内径が拡大する内径拡大部201を、曲率を含む形状とした内径拡大部801とした。ここで、磁気コア107の内径側の燃料通路断面積が最も小さくなるのは、弁体114に設けた規制部114aと磁気コア107との間である。磁気コア107の内径側に設けた磁気的な絞りを内径拡大部801のような曲率を含む形状にすることで、燃料通路断面積が最も縮小される部分の磁気コア107の内径daを変化させずに、上流部と下流部の磁気コア107の磁路断面積を大きくすることができる。これにより、磁気コア107に発生可能な磁束の数が増加し、吸引力を向上できる。
【0047】
また、可動子102とノズルホルダ101内径の隙間は、可動子102が傾いても接触しない隙間を有することが望ましい。これは、可動子102とノズルホルダ101が接触すると、可動子102が受ける摩擦抵抗が大きくなり、開閉弁の応答性が低下するためである。
【0048】
また、可動子102には、弁体114と接触する摺動面を延長する摺動延長部810を設ける構成になっている。ここで、可動子102の弁体114に対する傾きは、可動子102と弁体114の摺動部の隙間および摺動高さで決定される。本実施例では、可動子102に摺動延長部710を設けることで、弁体114と可動子102の摺動高さが延長され、可動子102の弁体114に対する傾きおよび偏心を抑制できる。この効果により、可動子102とノズルホルダ101の隙間を小さくでき、可動子102の外径部の磁気抵抗が小さくなるため、磁気吸引力を向上できる。また、可動子102が偏心すると、可動子102の外径とノズルホルダ101内径との間を流れる流量が大きくなり、可動子102が受ける流体抵抗が変化する。この流体抵抗の変化によって、1噴射ごとに可動子102の挙動が異なり、噴射量ばらつきが大きくなる。以上の理由により、摺動延長部810を設けることで可動子102の偏心を抑制し、噴射量ばらつきを低減できる。また、摺動延長部810は、可動子102に設けた燃料通路よりも内径側に設けるとよい。これにより、摺動延長部810を設けたことによる可動子102の質量の増加を抑制できるため、開・閉弁時の応答性の低下を抑えることができる。
【実施例6】
【0049】
図13を用いて本発明に係る第六実施例について説明する。図13は、第六実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図13において、図1,図2と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0050】
図13に示した例では、第二実施例に加えて、可動子102と弁体114を同一部材で構成することである。可動子102と弁体114は別部材を組み合わせて構成してもよいが、可動子102と弁体114が一体部材130として構成できればよい。一体部材130を用いることで、部品点数を抑えることができ、コストを低減することが可能となる。
また、可動子102と弁体114が別体となっている構造においては、閉弁時において、弁体114が弁座118と衝突する際に、可動子102が弁体114から離脱するため、弁体114と弁座118の衝突により、弁体114がバウンドして、2次的な燃料の噴射が発生するのを抑制できる。その反面、弁体114が弁座118と衝突すると、可動子102が弁体114から離脱し、下向き方向に運動するため、可動子102が静止するまでの時間が長くなるというデメリットがある。可動子102が静止するまでの時間は、可動子102の質量および弁体114と弁座118の衝突時の速度、ゼロスプリング112のスプリング力や可動子102が受ける流体力の力のバランスによって変化する。可動子102が静止するまえに次回の噴射を行うと、弁体114が動き始めてから開弁するまでの時間が変動し、噴射量を正確に管理することが困難になる。本実施例によれば、閉弁時に弁体114が弁座118に衝突してから可動子102が静止するまでの時間を短縮することができるため、次の噴射を行うまでの時間を短縮でき、応答性が向上する。
【実施例7】
【0051】
図14を用いて本発明に係る第七実施例について説明する。図14は、第七実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図14において、図1,図2と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0052】
図14に示した例では、第二実施例に加えて、弁体114に燃料通路孔である燃料通路中心孔140を設け、可動子102の磁気コア107側端面に溝190を設けることである。溝190を設けることで、可動子102の磁気コア107側端面の面積が小さくなるため、吸引面の磁束密度が増加し、吸引力が向上できる。なお、溝190は例えば円環状にするとよい。
【0053】
本実施例では、燃料通路中心孔140は弁体の中心位置に設けている。このような構成により、磁気コア107と弁体114との間に燃料通路を確保する必要がないため、磁気コア107の磁路断面積を大きくし、吸引力を向上できる。また、弁体114の質量が小さくなるため、閉弁時に弁体114が弁座118に衝突する際の衝撃力が小さくなり、弁体114が弁座118に衝突後に発生するバウンドを低減でき、バウンドによって発生する2次的な燃料の噴射を抑制できる。
【実施例8】
【0054】
図15を用いて本発明に係る第八実施例について説明する。図15は、第八実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図15において、図1,図2と同一の構成部品には同一の符号を付す。
【0055】
図15に示した例では、第二実施例に加えて、磁気コア107の内径の肉厚を小さくする目的で設けたテーパー181の上流部に磁気コア107の内径dcよりも内径が大きい大径部180を設けることである。この効果により、磁気コア107からスプリング110への磁束漏れを低減することができ、吸引力の向上ができる。また、磁気コア107と弁体114の間は、燃料の流体通路であるため、大径部180を設けることで、流体通路を拡大する効果がある。
【実施例9】
【0056】
図16を用いて本発明に係る第九実施例について説明する。図16は、第九実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図16において、図1,図2と同一の構成部品には同一の符号を付す。
【0057】
図16に示した例では、第二実施例に加えて、磁気コア107の内径に内径拡大部550を設けている。本実施例では、内径拡大部550を単純なテーパー形状とするのではなく、段差面を少なくとも2つ以上有する階段状の形状としている。この階段状の形状により、実質的にテーパー形状としたのと同じような効果を得ることができる。尚、本実施例では、3段で構成している。
【実施例10】
【0058】
図17を用いて本発明に係る第十実施例について説明する。図17は、第十実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図17において、図1,図2,図11と同一の構成部品には同一の符号を付す。
【0059】
図17に示した例では、第二実施例に加えて、可動子102に弁体114との間で力を伝達する中面620を設け、可動子102に傾斜面621を構成する。すなわち、中面620は可動子102の磁気コア107との対向面102bに形成された凹部の底面を構成している。傾斜面621は、中面620と対向面102bとの間を繋ぐ面として形成されたものである。傾斜面621を設けることで、可動子102の磁気コア107側端面の面積が小さくなるため、吸引面の磁束密度が増加し、吸引力が向上できる。また、中面620を設けることで、可動子102の質量を小さくできるため、開・閉弁時における可動子102の加速度が大きくなり、開弁に要する時間を短縮できる。また、弁体114に設けた規制部114aと可動子102の接触面が可動子102の上端面より下側にくることで、磁気コア107と弁体114との間に設けていた燃料通路202の通路面積が大きくなる。従って、磁気コア107の磁路断面積を大きくとることができるため、磁気吸引力が向上する。また、弁体114と磁気コア107間の隙間を大きくすることで、可動子102に設けた燃料通路孔203の位置を内径側に設けることができるため、可動子102の磁路断面積が燃料通路孔203によって小さくなるのを抑制でき、吸引力の向上が可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、可動子102に傾斜面621を設けることで、コイル105から離れた位置にある可動子102の内径側の肉厚が小さくなるように構成する。この効果により、コイル105へ電流を供給した状態から電流の供給を停止する際に、可動子102の内径側に残る残留磁束を小さくすることができるため、閉弁時の応答性を向上することができる。
【0061】
このように、中面620を設けるような場合には、可動子102に摺動延長部810を設けるとよい。中面620を設けた場合には、弁体114との摺動長さが短くなってしまうが、摺動延長部810を設けることによって、可動子102の質量の増加を抑えながら摺動長さを確保でき、可動子102の傾きを抑制できる。
【0062】
また、磁気コア107の可動子側端面と対抗する可動子102の面よりも内径側に内径拡大部201を設けるとよい。この効果により、内径拡大部201と可動子102の中面620との距離が大きくなるため、磁気コア107の吸引面に効率よく磁束を流すことができ、吸引力の向上が可能となる。
【符号の説明】
【0063】
101 ノズルホルダ
102 可動子
103 ハウジング
104 ボビン
105 コイル
107 磁気コア
110 スプリング
112 ゼロスプリング
113 ロッドガイド
114 弁体
114a 規制部
115 プランジャロッドガイド
116 オリフィスカップ
118 弁座
119 噴射口
120 アジャスタピン
121 シール部材
123 燃料供給口
130 一体部材
180 大径部
181 テーパー
190 溝
201,205,550,801 内径拡大部
202 燃料通路
203 燃料通路孔
206,604 可動子側端面
210 貫通孔
301 凹部
302 傾斜面
303 下部内径面
605 内径大径部
606 内径小径部
701 第一のテーパー
702 第二のテーパー
810 摺動延長部
908 外径小径部
909 磁気的な絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座と接することによって燃料通路を閉じ弁座から離れることによって燃料通路を開く弁体と、前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアとを備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアは、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に形成された孔を有し、
前記孔は、前記端面への開口部に、前記孔の奥側から前記端面向かって内径が次第に拡大していく内径拡大部を有し、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成されたことを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記可動子と前記磁気コアの少なくとも前記可動子側の一部とを内包する筒状部材を備え、
前記筒状部材は、その内周面に形成された大径部と小径部とを有し、
前記磁気コアは、前記筒状部材の前記小径部の内径よりも大きな外径を有し、前記大径部の内側に固定されたことを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料噴射装置において、
前記内径拡大部が前記磁気コアの前記端面に開口する開口半径と磁気コアに形成された前記孔の半径との差は、前記大径部の半径と前記小径部の半径との差よりも大きいことを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記筒状部材の前記大径部から前記小径部に変化する位置と前記磁気コアの前記端面との弁軸に沿う方向の距離は、閉弁状態で前記可動子と前記弁体とが静止した状態において、前記磁気コアの前記端面と前記可動子との間の距離よりも大きく設定されたことを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料噴射装置において、
前記弁体と前記可動子とは相対変位可能に別部材で構成され、
前記弁体は、前記可動子の前記弁体に対する開弁方向の相対変位を規制する規制部を有し、
前記磁気コアに形成された前記孔の内径が最小となる部位は、前記規制部の位置よりも前記孔の奥部に形成されていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項6】
請求項4に記載の燃料噴射装置において、
前記筒状部材は、その外周面に環状の凹部を有し、前記凹部の弁軸に沿う方向の位置は前記磁気コアの前記可動子と対向する端面の位置と重なっていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項7】
請求項4に記載の燃料噴射装置において、
前記可動子は弁軸に沿う方向に形成された燃料通路孔を有し、
前記燃料通路孔の中心位置が前記磁気コアに形成された前記孔の最小径よりも外周側に設けられていることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項8】
請求項4に記載の燃料噴射装置において、前記磁気コアの前記可動子と対向する側の端面の面積よりも前記可動子の前記磁気コアと対向する平面部の面積の方が大きく設定されたことを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項9】
請求項4に記載の燃料噴射装置において、
前記可動子の磁気コアと対向する端面とは反対側の面に、外径方向に向かって内径が拡大する内径拡大部を設け、
前記拡大部の半径方向における始点位置を前記磁気コアの前記可動子と対向する端面の内径よりも外周側に設けたことを特徴とする燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−188977(P2012−188977A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52347(P2011−52347)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】