説明

燃料改質触媒

【課題】内燃機関や固体酸化物型燃料電池の排気を熱源として前記燃料の改質を行うときに、触媒の耐久性を向上させることができる燃料改質触媒を提供する。
【解決手段】燃料改質触媒は、γ−アルミナからなる担体に貴金属触媒を担持させてなると共に、該担体の5〜30質量%の酸化セリウムを該担体に担持させてなる。前記貴金属は、ルテニウムが好ましく、また、前記酸化セリウムの10〜20質量%が酸化ジルコニウムで置換されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料改質触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体酸化物型燃料電池の燃料として、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン等を含むガスを用いることが知られている。前記ガスは、炭化水素やアルコールを水蒸気や空気と反応させて改質することにより製造されており、代表的な改質方法として、水蒸気改質、二酸化炭素改質、オートサーマル改質、部分酸化改質等を挙げることができる。
【0003】
ここで、前記炭化水素としては、例えば、都市ガス、バイオガス等の気体燃料、ガソリン、灯油、ディーゼル油等の石油系液体炭化水素燃料を挙げることができる。また、前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等を挙げることができる。
【0004】
従来、前記改質反応により燃料を改質する燃料改質触媒として、例えば、α−アルミナを担体として、Ru触媒を担持させたものが知られている。前記燃料改質触媒は、炭化水素、特に灯油の改質に用いられるものであり、反応温度を650〜800℃とすることが特に好ましいとされている(特許文献1参照)。
【0005】
また、前記改質反応により燃料を改質する燃料改質触媒として、γ−アルミナを担体として、Al,Cu,Zn,Pt,Pdのいずれかからなる触媒を担持させたものが知られている(特許文献2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4358405号公報
【特許文献2】特開平8−215576号公報
【特許文献3】特開2001−300315号公報
【特許文献4】特開2006−82996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の燃料改質触媒は、内燃機関や固体酸化物型燃料電池の排気を熱源として前記燃料の改質を行うと、炭素の析出により触媒が劣化して燃料転化率が低下したり、炭素数2以上の燃料の改質が難しいという不都合がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、内燃機関や固体酸化物型燃料電池の排気を熱源として前記燃料の改質を行うときに、触媒の耐久性を向上させると共に、炭素数2以上の燃料を容易に改質することができる燃料改質触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の燃料改質触媒は、γ−アルミナからなる担体に貴金属触媒を担持させてなる燃料改質触媒であって、該担体の5〜30質量%の酸化セリウムを該担体に担持させてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の燃料改質触媒では、γ−アルミナからなる担体の5〜30質量%の酸化セリウムを該担体に担持させてなることにより、前記貴金属触媒の低温活性が向上する。従って、本発明の燃料改質触媒によれば、内燃機関や固体酸化物型燃料電池の排気を熱源として前記燃料の改質を行うときにも、優れた燃料転化率を得ることができると共に、炭素の析出を抑制して触媒の耐久性を向上させることができる。
【0011】
また、前記酸化セリウムは酸素貯蔵能を備えており、前記燃料改質触媒上で局所的な酸化雰囲気が生じたときには酸素を貯蔵しておき、該燃料改質触媒上で局所的な還元雰囲気が生じたときには貯蔵している酸素を放出することができる。この結果、本発明の燃料改質触媒では、炭素数2以上の燃料を容易に改質することができる。
【0012】
本発明の燃料改質触媒において、前記担体に対する前記酸化セリウムの担持量が、5質量%未満であるときには、上述の効果を得ることができない。一方、前記担体に対する前記酸化セリウムの担持量が、30質量%を超えてもそれ以上の効果を得ることはできない。
【0013】
本発明の燃料改質触媒において、前記貴金属はルテニウムであることが好ましい。また、本発明の燃料改質触媒において、前記γ−アルミナは、100〜300m/gの範囲の比表面積と、0.2〜0.7cm/gの範囲の細孔容積と、0.4〜0.9g/cmの範囲の充填密度とを備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明の燃料改質触媒は、前記酸化セリウムの10〜20質量%が酸化ジルコニウムで置換されていることが好ましい。本発明の燃料改質触媒は、前記範囲の酸化セリウムが前記酸化ジルコニウムで置換されていることにより、内燃機関や固体酸化物型燃料電池の排気を熱源として前記燃料の改質を行うときに、さらに前記貴金属触媒の低温活性を向上させると共に、炭素の析出を抑制することができる。
【0015】
酸化ジルコニウムによる置換量が前記酸化セリウムの10質量%未満では、前記貴金属触媒の低温活性をさらに向上させ、炭素の析出を抑制する効果が十分に得られない。また、酸化ジルコニウムによる置換量が前記酸化セリウムの20質量%を超えてもそれ以上の効果を得ることはできない。
【0016】
また、本発明の燃料改質触媒では、前記範囲の酸化セリウムが前記酸化ジルコニウムで置換されていることにより、前記燃料改質触媒の耐熱性を向上させると共に、該燃料改質触媒の凝集を防ぐことができ、優れた耐久性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の燃料改質触媒を用いる燃料改質装置の一構成例を示すシステム構成図。
【図2】本発明の燃料改質触媒を用いる燃料改質における改質温度と燃料転化率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0019】
本実施形態の燃料改質触媒は、γ−アルミナからなる担体に貴金属触媒を担持させてなる燃料改質触媒であって、該担体の5〜30質量%の酸化セリウムを該担体に担持させてなる。
【0020】
本実施形態の燃料改質触媒は、燃料を、水蒸気改質、自己熱改質、二酸化炭素改質、部分酸化改質等により、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン等を含むガスに改質するために用いられる。
【0021】
本実施形態の燃料改質触媒の対象となる燃料としては、ガス状炭化水素燃料、液体状の石油系炭化水素燃料、アルコール燃料、それらの混合燃料、ガス状または液体状の合成燃料等を挙げることができる。前記炭化水素燃料としては、平均炭素数が1〜17程度のものを用いることができる。また、前記アルコール燃料としては、メタノール、エタノール、ブタノール等を用いることができる。前記アルコール燃料は、全量の1〜90質量%程度の水分を含んでいてもよい。
【0022】
本実施形態の燃料改質触媒において、前記貴金属触媒は燃料改質のための主触媒として作用する。前記貴金属触媒としては、Ru,Rh,Pt,Ir,Co,Fe,Ni,Mn,Mgからなる群から選択される1種の金属を用いることができるが、触媒活性と価格とのバランスが良いことからRuであることが好ましい。
【0023】
前記貴金属触媒は、前記担体に対し、例えば、該担体の0.1〜15質量%の範囲で担持させることができるが、1〜8質量%の範囲で担持させることが好ましい。また、前記貴金属触媒は、前記燃料改質に用いられるために、1〜30nmの範囲の平均粒子径を備えていることが好ましく、1〜10nmの範囲の平均粒子径を備えていることがさらに好ましい。
【0024】
前記γ−アルミナは、前記貴金属触媒の担体として、前記燃料改質に用いられるために、100〜300m/gの範囲の比表面積と、0.2〜0.7cm/gの範囲の細孔容積と、0.4〜0.9g/cmの範囲の充填密度とを備えることが好ましい。
【0025】
本実施形態の燃料改質触媒において、前記酸化セリウムは助触媒として作用し、前記貴金属触媒の低温活性を向上させることができる。従って、本実施形態の燃料改質触媒によれば、内燃機関や固体酸化物型燃料電池の排気を熱源として前記燃料の改質を行うときにも、優れた燃料転化率を得ることができると共に、炭素の析出を抑制して触媒の耐久性を向上させることができる。
【0026】
また、前記酸化セリウムは酸素貯蔵能を備えており、前記燃料改質触媒上で局所的な酸化雰囲気が生じたときには酸素を貯蔵しておき、該燃料改質触媒上で局所的な還元雰囲気が生じたときには貯蔵している酸素を放出することができる。この結果、本実施形態の燃料改質触媒では、炭素数2以上の燃料を容易に改質することができる。
【0027】
本実施形態の燃料改質触媒において、前記担体に対する前記酸化セリウムの担持量が、5質量%未満であるときには、上述の効果を得ることができない。一方、前記担体に対する前記酸化セリウムの担持量が、30質量%を超えてもそれ以上の効果を得ることはできない。
【0028】
また、本実施形態の燃料改質触媒は、前記酸化セリウムの10〜20質量%が酸化ジルコニウムまたは酸化ランタンで置換されていることが好ましく、酸化ジルコニウムで置換されていることがより好ましい。この結果、本実施形態の燃料改質触媒は、内燃機関や固体酸化物型燃料電池の排気を熱源として前記燃料の改質を行うときに、さらに前記貴金属触媒の低温活性を向上させると共に、炭素の析出を抑制することができる。
【0029】
酸化ジルコニウムまたは酸化ランタンによる置換量が前記酸化セリウムの10質量%未満では、前記貴金属触媒の低温活性をさらに向上させ、炭素の析出を抑制する効果が十分に得られない。また、酸化ジルコニウムまたは酸化ランタンによる置換量が前記酸化セリウムの20質量%を超えてもそれ以上の効果を得ることはできない。
【0030】
また、本実施形態の燃料改質触媒では、前記範囲の酸化セリウムが前記酸化ジルコニウムまたは酸化ランタンで置換されていることにより、前記燃料改質触媒の耐熱性を向上させると共に、該燃料改質触媒の凝集を防ぐことができ、優れた耐久性を得ることができる。
【0031】
本実施形態の燃料改質触媒は、次のようにして製造することができる。
【0032】
まず、担体となるγ−アルミナに助触媒となる酸化セリウムの被覆層を形成し、大気又は酸素含有ガス中、400〜750℃の範囲の温度で1時間以上の焼成を行うことにより、該担体に該助触媒を担持させる。前記酸化セリウムの被覆層形成は、含浸法、湿式吸着法、ロールミル吸着法、スプレー法、スパッタ法、CVD法、塗布法、メカノケミカル法、ゾルゲル法等のそれ自体公知の方法で行うことができ、前記方法のいずれの方法で行ってもよい。
【0033】
次に、前記助触媒が担持された担体に主触媒となる前記貴金属、例えばRuの被覆層を形成し、大気、酸素含有ガス又は不活性ガス中、100〜600℃の範囲の温度で、30分以上、好ましくは1時間以上の焼成を行うことにより、該担体に該主触媒を担持させる。前記貴金属の被覆層の形成は、前記助触媒の被覆層の形成と同様に、前記それ自体公知の方法のいずれの方法で行ってもよい。また、前記主触媒の焼成は、前記助触媒の焼成よりも低温で行うことが好ましい。
【0034】
そして、前記主触媒及び助触媒が担持された担体を、最終的に、還元雰囲気中、300〜700℃の範囲で加熱することにより、本実施形態の燃料改質触媒を得ることができる。尚、本実施形態の燃料改質触媒は、前記製造方法において、700℃以上の熱履歴を負わないようにすることが好ましい。700℃以上の熱履歴が与えられた場合、前記γ−アルミナが相変化を起こし、表面積が著しく減少して、製造された燃料改質触媒において所期の性能が得られないことがある。
【0035】
前記のようにして製造された本実施形態の燃料改質触媒は、球状体、粒状体、ハニカム状体、発泡体、繊維状体等のそれ自体公知の態様で用いることができる。
【0036】
次に、実施例及び比較例を示す。
【実施例1】
【0037】
本実施例では、まず、平均粒子径2mmのγ−アルミナ粒子に、硝酸セリウム6水和物(Ce(NO・6HO)を、担持量が酸化セリウム(CeO)換算で該γ−アルミナ粒子の10質量%となるように吸着させ、乾燥した。次に、硝酸セリウム6水和物を吸着させた前記γ−アルミナ粒子を、空気中、600℃の温度で3時間焼成し、該γ−アルミナ粒子に酸化セリウムを担持させた。
【0038】
次に、酸化セリウムが担持された前記γ−アルミナ粒子に、硝酸ルテニウム(Ru(NO)を、担持量がルテニウム(Ru)換算で該γ−アルミナ粒子の5質量%となるように吸着させた。次に、水酸化カリウムと純水とを用いて硝酸ルテニウムを分解した後、100℃の温度で乾燥し、大気中、350℃の温度で1時間焼成して、前記γ−アルミナ粒子にルテニウムを担持させた。
【0039】
次に、ルテニウム及び酸化セリウムが担持された前記γ−アルミナ粒子を、水素雰囲気中、650℃の温度で30分間還元焼成し、燃料改質触媒を得た。
【0040】
次に、図1に示す燃料改質装置1を用いて、本実施例で得られた燃料改質触媒の性能を評価した。
【0041】
図1に示す燃料改質装置1は、燃料供給部2から供給される燃料と水蒸気発生部3で発生される水蒸気とを混合する水/燃料混合部4と、水/燃料混合部4から供給される燃料と水蒸気との混合燃料の改質を行う燃料改質部5とを備えている。また、燃料改質装置1は、燃料改質部5で得られた改質燃料の流量を測定する湿式流量計6と、該改質燃料の組成を分析するフーリエ変換型赤外分光分析器(FT−IR)7及びガスクロマトグラフ装置(GC)8とを備えている。
【0042】
燃料供給部2は、液体燃料タンク21と、気体燃料供給系22とを備えている。液体燃料タンク21は、液体燃料導管21a、燃料導管23を介して水/燃料混合部4に接続されている。一方、気体燃料供給系22は、気体燃料導管22a、燃料導管23を介して水/燃料混合部4に接続されており、気体燃料導管22aは液体燃料導管21aと合流して燃料導管23となっている。
【0043】
前記液体燃料タンク21により供給される液体燃料としては、エタノール、ガソリン、灯油、軽油等を挙げることができ、燃料改質装置1では、供給する液体燃料に従って液体燃料タンク21を交換するようになっている。また、気体燃料供給系22により供給される気体燃料としては、都市ガス、バイオガス等を挙げることができ、燃料改質装置1では、供給する気体燃料に従って気体燃料供給系22を切り替えるようになっている。
【0044】
水蒸気発生部3は、水タンク31と、熱交換器32と、熱交換器32に排気ガスを供給する排気ガス導管33とを備えている。水タンク31は、水導管31aを介して水/燃料混合部4に接続され、途中に熱交換器32を備えている。水導管31aに流通する水は、熱交換器32で排気ガス導管33により供給される排気ガスと熱交換することにより水蒸気となって水/燃料混合部4に供給される。
【0045】
水/燃料混合部4は混合燃料導管41を備え、混合燃料導管41を介して燃料改質部5に接続されている。水/燃料混合部4は、燃料導管23により供給される燃料と、水導管31aにより供給される水蒸気とを混合し、例えば、S/C(スチームカーボンレシオ)=3の混合燃料を生成する。生成した混合燃料は混合燃料導管41を介して燃料改質部5に供給する。
【0046】
燃料改質部5は、燃料改質触媒を収容する燃料改質器51と、燃料改質器51を収容して燃料改質器51を加熱する電気炉52とを備えている。燃料改質器51は、例えば、内径16mm、長さ160mmのステンレス管であり、一端部に混合燃料導管41が接続されると共に、他端部に改質燃料を取り出す改質燃料導管53が接続されている。また、燃料改質器51は、出口側に温度センサ51aを備えている。燃料改質部51は、混合燃料導管41により供給される混合燃料を改質し、生成した改質燃料が改質燃料導管53から取出されるようになっている。
【0047】
改質燃料導管53は途中に水分凝縮器54を備え、水分凝縮器54の下流に湿式流量計6を備えると共に、下流側の端部がフーリエ変換型赤外分光分析器7に接続されている。一方、改質燃料導管53は水分凝縮器54と湿式流量計6との間から分岐するガスクロマトグラフ用導管55を備えており、ガスクロマトグラフ用導管55の下流側の端部がガスクロマトグラフ装置8に接続されている。
【0048】
次に、図1に示す燃料改質装置1を用いて、エタノールの改質を行った。本実施例では、エタノールを燃料供給部2から空間速度(LHSV)=1.5h−1で供給すると共に、水/燃料混合部4でS/C=3となるように水蒸気と混合し、得られた混合燃料を燃料改質部5に供給した。燃料改質部5は、燃料改質器51に本実施例で得られた燃料改質触媒15mlが充填されており、電気炉52により燃料改質器51を加熱して、燃料改質器51の出口側に設けられた温度センサ51aで検出される温度が200〜700℃の範囲となるようにした。そして、それぞれの温度で得られた改質燃料の流量を湿式流量計6で測定すると共に、該改質燃料の組成をフーリエ変換型赤外分光分析器7及びガスクロマトグラフ装置8により分析し、流量と組成とから燃料転化率を算出した。改質温度と燃料転化率との関係を図2に示す。
〔比較例1〕
本比較例では、市販のルテニウム触媒を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、燃料転化率を算出した。改質温度と燃料転化率との関係を図2に示す。
【0049】
尚、前記市販のルテニウム触媒は、α−アルミナを担体とし、該α−アルミナ粒子の5質量%のルテニウムが担持されているが、酸化セリウムは全く担持されていない。
【0050】
図2に示すように、実施例1の燃料改質触媒によれば、比較例の市販のルテニウム触媒より低温域でも燃料転化率が高くなっている。従って、本発明の燃料改質触媒によれば、γ−アルミナからなる担体に、該担体の10質量%の酸化セリウムを担持させることにより、ルテニウム触媒の低温活性が向上することが明らかである。
【実施例2】
【0051】
本実施例では、燃料改質器51の出口側に設けられた温度センサ51aで検出される温度が450℃となるようにした以外は、実施例1と全く同一にして、エタノールの改質を行った。そして、燃料改質装置1を100時間連続運転した後、燃料改質触媒を取り出して、該燃料改質触媒上に析出した炭素量を計量した。結果を、担体に対する質量の割合として表1に示す。
〔比較例2〕
本比較例では、比較例1で用いたものと全く同一の市販のルテニウム触媒を用いた以外は、実施例2と全く同一にして、該ルテニウム触媒上に析出した炭素量を計量した。結果、担体に対する質量の割合として表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から、本発明の燃料改質触媒によれば、γ−アルミナからなる担体に、該担体の10質量%の酸化セリウムを担持させることにより、従来より低温域でも炭素の析出を抑制できることが明らかである。
【実施例3】
【0054】
本実施例では、図1に示す燃料改質装置1を用い、都市ガス、エタノール、ガソリン、灯油、軽油の各燃料の改質を行い、転化率が99%以上となるときの温度を燃料改質器51の出口側に設けられた温度センサ51aで検出した。尚、前記各燃料は事前に脱硫を施し、硫黄濃度を200ppb以下にしたものを用いた。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2から、本発明の燃料改質触媒によれば、γ−アルミナからなる担体に、該担体の10質量%の酸化セリウムを担持させることにより、転化率が99%以上となる温度を500℃以下とすることができ、ルテニウム触媒の低温活性が向上することが明らかである。
【実施例4】
【0057】
本実施例では、酸化セリウムの一部を酸化ジルコニウム(ZrO)で置換した以外は、実施例1と全く同一にして燃料改質触媒を製造した。尚、酸化ジルコニウムは、0〜70質量%の範囲で変量した。
【0058】
次に、本実施例で得られた各種燃料改質触媒を用い、燃料改質器51の出口側に設けられた温度センサ51aで検出される温度が450℃となるようにした以外は、実施例1と全く同一にして、灯油の改質を行い、燃料転化率を算出した。結果を表3に示す。
【0059】
また、本実施例で得られた各種燃料改質触媒を用いた以外は、実施例2と全く同一にして、灯油の改質を行い、各燃料改質触媒上に析出した炭素量を計量した。結果を、担体に対する質量の割合として表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
表3から、酸化セリウムの10〜20質量%を酸化ジルコニウムで置換した本発明の燃料改質触媒によれば、前記範囲外の場合に比較して優れた燃料転化率を得ることができ、炭素の析出を抑制して触媒の耐久性を向上させることができることが明らかである。
【符号の説明】
【0062】
1…燃料改質装置、 2…燃料供給部、 3…水蒸気発生部、 4…水/燃料混合部、 5…燃料改質部、 6…湿式流量計、 7…フーリエ変換型赤外分光分析器、 8…ガスクロマトグラフ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−アルミナからなる担体に貴金属触媒を担持させてなる燃料改質触媒であって、
該担体の5〜30質量%の酸化セリウムを該担体に担持させてなることを特徴とする燃料改質触媒。
【請求項2】
請求項1記載の燃料改質触媒であって、前記貴金属はルテニウムであることを特徴とする燃料改質触媒。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の燃料改質触媒であって、前記γ−アルミナは、100〜300m/gの範囲の比表面積と、0.2〜0.7cm/gの範囲の細孔容積と、0.4〜0.9g/cmの範囲の充填密度とを備えることを特徴とする燃料改質触媒。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の燃料改質触媒であって、前記酸化セリウムの10〜20質量%が酸化ジルコニウムで置換されていることを特徴とする燃料改質触媒。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−218320(P2011−218320A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92441(P2010−92441)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】